生活再建、復旧へ全力

2016-04-30 ニュース

公明新聞:2016年4月30日(土)付

 

 

 

 

 

 

 

避難所で被災者を励ます山口代表(中央)ら=29日 熊本・西原村

熊本地震 現場の安心第一に
山口代表、被災者励ます

公明党の山口那津男代表は29日、熊本地震で大きな被害が出ている熊本県入りし、被災状況を調査するとともに、避難生活を送る被災者を見舞った。また、蒲島郁夫県知事ら自治体関係者から要望を受けた。党熊本県本部代表の江田康幸衆院議員らが同行した。

同県災害対策本部の発表によると、29日午後1時30分現在、県内27市町村に444カ所の避難所が設置され、3万629人が身を寄せている。

倒壊したアパートを調査する山口代表(左端)ら=29日 熊本・南阿蘇村

最大震度7を観測した西原村の避難所を訪れた山口代表は、「家は立っているだけでもう住めない」と訴える被災者に対し、「生活再建に向け、村や県とも力を合わせて頑張ります。お体を大事にしてください」と励ました。2歳の子どもを抱える母親には、「お子さんは余震を怖がっていませんか」と気遣った。また、多くの家屋が損壊した村内の集落も調査した。

震度7を2度観測し、一連の地震で最も揺れが激しかった益城町役場では、駐車場に炊き出し用のテントが設置され、多くの被災者が列をつくっていた。山口代表は作業に汗を流すボランティアらに感謝を述べるとともに、「物資が届いているが、水道の復旧が遅れている」との声に耳を傾けた。

その後、山口代表らは、阿蘇大橋が崩落し、現在も行方不明者1人の捜索が続く南阿蘇村へ。16日の本震でアパートが倒壊し、11人が生き埋めとなった現場を訪れ、亡くなった大学生2人の冥福を祈った。

調査を終えた山口代表は、「当面は補正予算をしっかり組んで

、財政的な支援は揺るぎないとの安心感を提供することが大事だ」と指摘。避難者の支援と生活再建に向け、政府とも連携して取り組むと力説した。

埼玉・嵐山支部党員会へ!

2016-04-30 ブログ

党の嵐山支部の会合にて、西田まこと参議院議員になりかわり、西田まこと参議院議員のすすめる『埼玉を要とした「広域地方計画」』について主に語りました。
ヒト・モノ・情報の対流を促す拠点としての埼玉の姿、潜在力を描き日本の未来を語る夢のあるビジョンです。
3月の予算委員会で西田議員が安倍総理に提案し、総理から「西田委員とともに連携の嵐を巻き起こす!」と力強い決意をいただきました。
役員の皆様、山口さん、高橋さん、畠山さん、小島さん、本当にありがとうございました!

西田まこと参議院議員による『埼玉を要とした「広域地方計画」』の関連記事です。
防災を中心によくまとめていただいてます。ご参考まで。
http://biz-journal.jp/2016/03/post_14484.html

埼玉県福祉事業協会フェスティバル

2016-04-29 ニュース

いつもお世話になっている埼玉福祉事業協会さんのフェスティバルに参加しました。風が強かったですが、大晴天のもとに開催。こちらのフェスティバルは、いつも晴天です。

ここの福祉施設に入所されている方々のつくるパンは絶品なのです!いつも楽しみにしています。そのほか、手打ち蕎麦やステーキなど盛りだくさんの出店が並んでいました。
今年の1月に開催された公明党の埼玉県本部賀詞交歓会にてお配りした「コメ助」クッキーもこちらに入所されている方々の手作りです。美味しいと大好評でした。

障害をお持ちの方が活き活きと過ごせる社会のために。頑張ります。

埼玉福祉事業協会さんのフェスティバル

190回 法務委員会(刑事訴訟法改正案参考人質疑)

2016-04-28 国会質問議事録

○矢倉克夫君

公明党の矢倉克夫です。お三人の参考人の先生方、貴重な御意見、大変にありがとうございました。
私、今回の法改正の趣旨は、もう既に御指摘もある取調べ中心主義、供述調書への過度な依存、これを脱却するというところが原点の一つであるというふうに思っています。
そもそも、まずお三人に、豊崎参考人から順にお伺いしたいんですけど、なぜ供述調書に依存するかというところなんですね。これは、一つは、捜査機関その他が検挙率や有罪率を上げる、無実かもしれない人でも人権侵害をしてでも上げようというような、そういうような性質があるところからそういうふうになっているという意見もあり得るかもしれない。他方で、真実発見というものをこれしっかりと職務として行うと。ただ、その職務を行う上で、現実、なかなか証拠の収集という部分での制約が、これは評価あると思いますけれども、あったと、取調べに依存せざるを得ないような状況にあった、その結果依存していたという、この二つ、それ以外もあるかもしれないんですけれども、それの二つのうちどちらというふうにお考えであるのか、それ以外もあれば、豊崎参考人から順に御意見をいただければというふうに思います。

○参考人(豊崎七絵君)

今の御質問ですけれども、先ほどの報告で申し上げたことの重複になるかと思いますけれども、なぜやっぱり供述調書に依存するのかといえば、そのような供述調書を作るに当たっての取調べが捜査機関の言わば自由裁量に委ねられているからだというふうに私は考えるものであります。でありますので、先ほど申し上げたように、そこを抑制していくということが今回の課題であると。
確かに一線の警察の方々は個人的には一生懸命やられているかもしれませんけれども、しかし、原田参考人のお話にもあったかもしれません、私自身がそう考えるという意味で申し上げれば、やはり警察はそういうカルチャーを持っているということを前提にそこを抑制していくということしか私はないと考えております。
以上です。

○参考人(原田宏二君)

刑事司法全体、刑事訴訟法にずっと書いてあるわけですけど、警察の犯罪捜査というのはまさに刑事司法の入口にあるんですね。ですから、入口にあるので、刑事司法全体の何か仕組みというか裁判までに当然入口は左右されるということですよ。裁判で非常に自白が重視されるということになれば、当然のことながら警察もそう考える。
それと、私の体験なんかからいうと、よくあるんですけれども、例えば汚職事件等、それとか重要な大きな事件の捜査をやっていると、例えば被疑者をどうしようかと、裏付けがちょっとかなりきついなというような事件は結構実務上あるわけですよ。必ずしも裏付けが、物的な証拠や何かが完璧だと、客観情勢としてこいつは被疑者だというふうにがつっとやれる事件もあれば、そうでない事件もあるわけですね。そうすると、そのときにどういうことが起きるかというと、検事と連絡するわけですよ、検事と。そのときに条件付けられることが結構あるんです、検事から、落としてくださいよと。落としてください、落とせなかったら起訴できませんよという話は私は度々検事から言われていますよ、実際に。
ですから、警察としては、刑事司法の入口にある、重大な事件を逮捕して身柄を取って、取ってですよ、検事のところで、検事パイと我々は言うんですけれども、不起訴になったり処分保留で釈放になったら、私はもう完全に捜査失敗したというふうに思っていますからね。部内でもそういう評価を受けますから。そうすると、当然、捜査担当者、指揮している我々としては何とか落とせと、こういうことになるわけですね、それで自白をさせると。そういうシステムにあると思いますよ。

○参考人(小木曽綾君)

一般論としてですけれども、自白というのは、本人が不利益供述をすれば処罰されることが分かっていながらしかし不利益供述をするということで、信用性が高いというふうに言われているということがあります。それから、動機から背景事情から犯行の態様に至るまで全てストーリーとして語ってくれるというような側面を持っているということでも、それをまずきっかけにしてほかの証拠を集めようという動機が働くというので自白が追求されやすいということがあると思います。
また、これは臆測の範囲を出ませんけれども、真実を追求するとか、それから行為者の謝罪とか反省を求めるという、何といいますか、まさにカルチャーというか、国民感情というようなものが背景にあるように思っています。

○矢倉克夫君

ありがとうございました。
豊崎参考人の御意見は、捜査のカルチャーというふうにおっしゃっていた。そのカルチャーというのは、多分御趣旨は、さっき私二つ申し上げたうちの最初の方に、捜査が持っているというような御趣旨であったというふうに、要は人権侵害というものも起こり得るような、それでも検挙率を上げるとかそういうようなカルチャーだというふうに理解もしているんですが、原田参考人は、落としてくれというところ、それはある意味、私は、捜査機関が真実発見というところから、最終的にはこれはその真実発見のための供述というところを重視して、その上での落としてくれというような御趣旨であったかなと。
全般に見て、小木曽参考人の御意見も含めて、私は、供述調書に依存する部分というものの捜査機関の性質というのは、やはり真実発見というところ、それに、職務に追求する余りに行き過ぎ、その行き過ぎの背景はいろいろあると思うんですが、証拠の収集に当たっての供述というものに依存せざるを得なかったというところがやはりあるのではないのかなというふうに私は理解もしております。
その上で小木曽参考人にちょっとお伺いもしたいんですが、まず今のような前提で、他方で、供述に対する依存をやっぱりしっかりとなくしていくためには捜査の手法の在り方というものも考えなければいけないという御趣旨でパッケージというふうにおっしゃっていただいたというふうに理解をしていますけれども、そこの確認をまずさせていただきたいと思っております。

○参考人(小木曽綾君)

おっしゃるとおりです。

○矢倉克夫君

その上で、じゃ、今回いろいろ問題になっているのは、捜査の手法を広げることがそのまま捜査機関の自浄作用になって依存しないような捜査機関になるかということだけではないんじゃないかというところであると思います。そのために重要な役割を持っているのがやはり弁護人であるかなと。捜査機関として、今まで依存していた体制を改めるためにいろんな手法を広げたわけでありますが、そこがまた更に行き過ぎにならないように弁護人の役回りというのもこれ重要になっているという理解の上で今回設計はされているというふうに理解もしています。
一つ可視化の部分でやはりよく問題になっているのが、小木曽参考人にちょっとお伺いしたいと思うんですけれども、可視化の部分で問題になっているのは、今回、可視化も、供述調書の任意性を立証する部分で録音、録画が提出されるというところがよく言われております。それが、その部分だけを結局切り取った形で録音、録画になって、実際上、任意性が怪しまれるようなのは、その供述調書、供述をしたまさに供述調書以前の取調べの部分の録音、録画はされているんだけれども、そこの部分は排除して、余り問題ないような供述調書、まさにそのものの立証のためだけの録音、録画を出すというような話も批判としてはある。
他方で、それに対しての対処としては、弁護人から、まさに取調べというか供述調書が作成される以前の部分での録音、録画もこれは提出するように証拠調べ請求をするという、弁護人の立証活動でしっかりとやらなければいけないというような御意見も前回参考人等で御意見があったところであります。
そういう意味で、今回、検察が一覧表の交付などもこれ義務化いたしました、証拠の一覧表の交付なども。そして、公判前整理手続の請求権などもこれはしっかりと義務化した上で環境整備もしているというところはいろいろあるわけですけれども、その辺りを弁護人の可視化に関しての立証の点という関連でどういうふうに効果があるとお考えか、お答えをいただきたいというふうに思います。

○参考人(小木曽綾君)

先ほど冒頭でも申しましたけれども、被疑者段階の弁護人の役割というのは非常に重要であると考えます。取調べに当たってまず被疑者に助言をするということもありますし、今委員御指摘のように、公判になって、どのような証拠があって、例えば録画されている部分がここだけだけれども、しかしそれより前の部分を本当は見なければいけないんだとすれば、そういう証拠調べの請求をする、当然それに向けて公判準備、整理手続に臨むというような役割が弁護人に期待されているところだと思います。

○矢倉克夫君

後ほど、最後また小木曽参考人にもう一個、時間があればお伺いしたいんですけれども。
豊崎参考人に、ちょっと抽象的な話になるんですけれども、やっぱり公判中心主義というところは重視すべきであると。そのとき、豊崎参考人のイメージをされている捜査権というのはどういうものであるのか、ちょっと抽象的なことですけれども、お答えをいただきたいなというふうに思います。

○参考人(豊崎七絵君)

私自身は捜査権そのものがもちろんなくなるという話をしているわけではなくて、それは取調べ受忍義務を課さない形での、まさに真正な意味での任意の取調べというものが身体拘束をされている被疑者に対する取調べとしても行われるべきであるし、そういった捜査を前提として、しかし、そのような捜査であれば、正直申し上げて取調べはやりにくくなるでしょうし、そこでの供述は取りにくくなるかもしれませんが、それはいいことなのではないかということですね。やはりそこに依存せずに、公判で出てきた証拠できちんと勝負をするということが私は重要であると思います。
ついでながら、一つだけ、先ほどのお話につながるかもしれないんですけれども、弁護人の役割が重要というのはこの公判中心主義の下でもそうなわけですけれども、しかし、弁護人の役割が重要と言うのであれば、やはり取調べでの弁護人の立会いというものを抜きにしては、私は、非常にその手足というか縛ったままでの弁護活動を、言わばある種自己責任のように、あなたたちの努力でやりなさいと。それは、実際に運用の場面ではもちろん弁護士さんは頑張らなければいけないというのは百も承知ですが、今は法改正の場面であります。そうであるならば、やはりここはひとつ取調べへの弁護人の立会いということも、弁護人の役割が重要ならば考えていただきたいと思う次第です。

○矢倉克夫君

まさに私も、弁護人がやはり更に重要、その部分も運用も含めてしっかりと考えていくというところはまさにおっしゃるとおりであると思います。
また小木曽参考人にちょっと、あとは裁量保釈ですね。これまで罪証、証拠隠滅とか逃亡のおそれがないとき、それに今回加えて、裁量保釈として被告人の防御の利益の関係からの部分等もあったわけですけれども、今、弁護人の活動という意味で、この趣旨についても一言だけ御教示いただければというふうに思います。

○参考人(小木曽綾君)

捜査段階の身柄拘束というのは、まず理由があって、そして逃亡、罪証隠滅のおそれがあるということが要件とされているわけであります。ですから、それがまず必要であるということは絶対要求されることだろうと思うわけで、その身柄拘束が長引くということの理由に被疑者が自白しないからということがあるとすれば、専らその取調べを目的に身柄拘束が長引くというようなことがあるとすれば、これは法の定めに違反しているということになるだろうと思います。

○矢倉克夫君

ありがとうございます。

決算委員会・法務委員会

2016-04-27 ニュース

2016年4月27日
熊本地震から10日以上経過しました。一昨日の決算委員会質問の冒頭で石井大臣に住まいを含めた早期対応を求めたところ、大臣より5分間に及ぶ決意あふれる答弁をいただきました(あとの時間のやり繰りが大変でしたが、、)決算委員会の内容については後日また。

この1週間半、これまで以上に忙しい日程となりました。
特に、刑事訴訟法改正案とヘイトスピーチ法案という二つの意見の対立法案をかかえる法務委員会では、刑事訴訟法に関する1時間にもおよぶ質問を三回やり、参考人質疑を二回やり、そしてヘイトスピーチ法案では、発議者として、野党の方々からの質問に対し答弁し、という感じ。そこに決算委員会の準備が重なり、と。夜は会合が連日あるので、机に向かい準備をする時間はほとんどない状態でしたが、全てやりきりました。

刑事訴訟法は、取り調べのビデオ録画やテロや組織犯罪対応のための通信傍受などを内容とします。
そして、ヘイトスピーチ法案は、不特定人に向けられた差別的言動を国がはじめて「許されない」ものであるとし、他の裁判などに影響を与えうる重要な法案です。成立させます。

190回 法務委員会(ヘイトスピーチ解消法案答弁)

2016-04-26 国会質問議事録

○委員長(魚住裕一郎君)

本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律案を議題とし、質疑を行います。
質疑のある方は順次御発言願います。

○小川敏夫君

民進党・新緑風会の小川敏夫でございます。
まず、公安委員長にお尋ねいたします。
先般の質疑の中で、ヘイトスピーチを規制できないか、あるいはヘイトスピーチを公然と行うヘイトデモをこれを不許可にできないかというような趣旨の議論がある中で、公安委員長は、そのデモを不許可にする、それは根拠となる法律がないからできないんだと、このような趣旨の御発言をいただいたというふうに思いますが、その趣旨についてもう一度改めて御説明いただけますでしょうか。

○国務大臣(河野太郎君)

公安条例というものがございますが、過去、最高裁判所がこの公安条例の合憲性を認めるに当たって、許可することが義務付けられており、不許可の場合が厳格に制限されているので、この許可制は実質において届出制と異なることがないというふうに判示しております。
そういうことを考えますと、表現しようとしている主張の内容においてこのデモを不許可にすることはなかなかできないのではないかというふうに承知をしております。

○小川敏夫君

その表現の内容においてということでありますが、その表現する行為が具体的に違法であるという行為であるということであれば、いかがでございましょうか。

○国務大臣(河野太郎君)

名誉毀損ですとか侮辱罪に当たるような違法行為があれば、これは警察として法と証拠に基づいて厳格に対応いたしてまいりたいと思います。

○小川敏夫君

違法行為であればという答弁を貴重に受け止めさせていただきますが、そうすると、例えば今審議しているこの法案は、ヘイトスピーチ等に対して努力義務でしないようにと、あるいはなくすように努めなさいということでございます。違法という評価がなくて、単に国民に努力を課したというだけの法律では、やはりそうしたデモの不許可にするという根拠にはなり得ないと、私はそういうふうに理解をするんですが、そういうことでよろしいでしょうか。

○国務大臣(河野太郎君)

同じように、表現しようとしている主張の内容だけによって不許可にすることはできないというふうに思います。

○小川敏夫君

公安委員長はこれで御退席いただいて結構でございます。

○委員長(魚住裕一郎君)

じゃ、御退席いただいて結構でございます。

○小川敏夫君

外務省の副大臣にお越しいただきました。
ヨーロッパ、特に例とすればドイツとフランスにおきましてヘイトスピーチを犯罪として処罰する法整備がなされておるようでございますが、その状況について御説明いただけますでしょうか。

○副大臣(武藤容治君)

他国の法律について、各国はそれぞれ固有の歴史的な体験を背景に憲法を始めとする法制度、法体系を有しております。このため、必ずしもその制度の詳細について把握できているものではございません。
その前提で申し上げさせていただきますが、外務省において把握している範囲では、ヘイトスピーチという用語は用いられておりませんが、これに当たると思われる行為について、先生おっしゃられたドイツ、フランスのいずれにおいても罰則規定が設けられていることと承知しております。
具体的には、ドイツでは刑法において、国籍、民族、宗教又は人種的起源によって特定される集団等に対しまして、特定の集団や個人等に属していることを理由に憎悪をかき立てるような行為に対し三か月以上五年以下の自由刑、いわゆる直訳でございますが、いわゆる拘禁刑に当たるものと思いますけれども、設けられていることと承知しております。
また、フランスにおいては、刑法及び出版の自由に関する法律において、出自、特定の民族、国籍、人種、宗教への帰属等を理由とする差別、憎悪又は暴力の扇動に対して一年の拘禁刑又は罰金刑が設けられているものと承知しております。

○小川敏夫君

ありがとうございます。
外務副大臣はこれで退席していただいて結構でございます。

○委員長(魚住裕一郎君)

どうぞ。

○小川敏夫君

さて、本法案の内容でございますが、それにちょっと先立ちまして、じゃ、法務大臣から、今、法務省としてはヘイトスピーチを許さないということで取り組んでいらっしゃいますが、その取り組んでいる、許さないというヘイトスピーチ、これを法務省としてはどのようなものがヘイトスピーチと考えているでしょうか。

○国務大臣(岩城光英君)

お答えいたします。
ヘイトスピーチの定義は必ずしも確立したものではございませんが、昨年度、法務省が公益財団法人人権教育啓発推進センターに委託して実施した調査におきましては、一般的にヘイトスピーチと指摘されることの多い内容として、一つに、特定の民族や国籍に属する集団を一律に排斥するもの、二つに、特定の民族や国籍に属する集団の生命、身体等に危害を加えるもの、三つに、特定の民族や国籍に属する集団を蔑称で呼ぶなどして殊更に誹謗中傷するものという三つの類型があることを念頭に調査が実施されております。
ヘイトスピーチの対象とされている方々などに御協力いただきました聞き取り調査におきましても、多くの方々がヘイトスピーチと聞いてイメージするものとしてこれらの内容を中心に挙げられていたものと承知をしております。

○小川敏夫君

それで、提案者にお尋ねしますが、この法案の第二条で、いわゆるヘイトスピーチの定義、本邦外出身者に対する不当な差別的言動というものについて定義してございますが、どうも今法務省が説明された、今現に法務省がヘイトスピーチの対象として取り扱っているそうした類型の行為よりもかなり狭いように感じるんですが、これはいかがでしょうか。

○西田昌司君

我々が挙げましたのは一つの例示でありまして、それ以外も、「など、」という言葉にありますように、その周辺のいろんな、著しく侮蔑するなど、様々なことがその中に入ってくると思います。例示のこの中に外れているからといってヘイトスピーチを我々は認めるものでもありませんし、またその以外のところのことを我々は認めるものでもないと。
ですから、要はこれ理念法でありますから、具体的なこういう例示を挙げまして、こういうことに関連するようないわゆるヘイトスピーチはやるべきでないということを宣言して、そして国民と一緒にそういう差別のない社会をつくっていこうということを目指すものであります。御理解いただきたいと思います。

○小川敏夫君

この条文からは侮蔑的な表現というのはどうもヘイトスピーチに入るとはちょっと読めないんですがね。
ちょっとこの条文に沿ってお尋ねしますが、この「差別的意識を助長し又は誘発する目的で」と、まあそこまではいいとして、その後、「公然と」、そこまでいいとして、その後ですね、「その生命、身体、自由、名誉又は財産に危害を加える旨を告知するなど、本邦の域外にある国又は地域の出身であることを理由として、本邦外出身者を地域社会から排除することを煽動する不当な差別的言動をいう。」というふうに書いてあります。
まず、そうすると、この書き方は、生命、身体、自由、名誉又は財産に危害を加えるというだけじゃ足らなくて、そういう危害を加える旨などを告知するなどして、かつ地域社会から排除することを扇動するというこの二つの要件が両方とも満たしたときに初めてこの二条の定義に当たると、こういう文章だと思うんですが、いかがですか。

○西田昌司君

まず皆さん方に御理解いただきたいのは、この法律の目的はあくまで理念法であります。そして、そのためにわざわざ禁止規定を書いていない。それはなぜかというと、そういう禁止規定で書いた場合には、今、小川委員が御指摘なさったように、その定義から外れた場合、それは禁止されていないのじゃないか、そしてそういうヘイトスピーチは逆に言えばお墨付きになるんじゃないかと、そういう解釈も生まれ得るわけであります。
しかし、我々は、これを禁止規定を設けずに宣言をして理念法という形にしたために、その周辺も含めて当然にこれはヘイトスピーチというものに全体の文脈から認められると。ですから、一言一句で、この言葉言ったらいいとかこの言葉は使わなければヘイトスピーチにならないとか、そういうことを私もインターネット上で言っている人を見たことあるんですけれども、それは大きな思い違いであります。
そうじゃなくて、これは総合的な文脈の中で解釈するものでありますし、そして、これは理念法であるからこそ、そういった解釈で、国民全体にいわゆるヘイトをやめようじゃないかと、そういうことは恥ずべき行為なんだということを呼びかけることができるわけで、余り細かい、これとこれとが重なったらこうじゃないかというような私は解釈は我々も提案者としてするつもりもありませんし、そうすべきではないと思っております。

○小川敏夫君

いやいや、そう解釈すべきじゃないし、そうすべきじゃないというんだったら、そう解釈できないような法律にすればいいんでね。
例えば、法務省は言っていましたよね、排斥、危害、誹謗という三つの類型と言ったわけですよ。三つの条件が重なったらヘイトとは言っていないんで、三つの類型があると言っているわけです。
この第二条の書き方はこの類型になっていないんですよ。だから、文章は、さっきも言ったけど、危害を加える旨を告知するなどというだけじゃヘイトに当たるんじゃなくて、さらに本邦外出身者を地域社会から排除することを扇動すると。だから、危害を加えるという告知するということと地域社会から排除するということが、二つこの要件を満たしたときに初めてヘイトになるという、そういう日本語の文章なんですよ。これ、理念法だからいいんだとか禁止法だからという話じゃなくて、やっぱり法律ですから、法律は文章によって決まるんでね。
今、西田委員が当然おっしゃられたように、法律で規定すると、ここでは、いわゆる不当な差別的言動とは、つまり国民がそういうことは許されないからしないように努めましょうというふうに努力義務を課した行為というのはこういう行為だというふうに規定すれば、そこに規定された以外の行為は別に法律は何も触れていないんで、逆に言えば許されるという反対解釈ができる余地があるわけですよ。ですから私は聞いているわけで、こういう書き方ですと、いわゆるヘイトスピーチの定義を非常に厳しく限定しているものですから、厳しく限定した分、例えば法務省が今普通にヘイトスピーチとして扱っているものも実はヘイトスピーチでないと、そういう扱いに読めるという条文になるから私は聞いておるわけです。
じゃ、どうぞ。

○矢倉克夫君

こちらの二条の読み方ですが、こちらは定義として、そのまさに定義の部分は、この「本邦の域外にある国又は地域の出身であることを理由として、」以下がこちら定義でありまして、「など、」より以前はこれは典型例というふうな位置付けでございます。というのも、今、法務省の方も実態調査などもいたしました。いろんなヘイトスピーチの内容なども調査して、今、三分類という形であったわけですが、とりわけ多かったのが、排斥をするものとやはり危害を告知する言動というのが多かった、そのような事情も踏まえて典型例としてはこちらを挙げているわけであります。
ただ、西田発議者からもありましたとおり、こちらは、当然ですが、この理念法で理念として、もうこのような排斥することを扇動する言動というのはこれは許されないということを理念として訴えた、それに文脈上該当するようなものはこれは広く捉えるということが、理念法であるが以上のこの立て付けになっております。
他方で、禁止規定等の、逆に反対解釈という話があったんですが、禁止規定、あらゆる人に義務が及ぶというような規定にすると、これは公権力がそれぞれの行為に介入をすることになって、どこまでがいけない言動かということをこれ明確にしなきゃいけない、そういうようなときになったときに初めてそれに対しての反対解釈という議論があるわけですが、理念法という立ち位置を取る以上は、反対解釈ということは法解釈としてはもうないという理解で発議をいたしております。

○小川敏夫君

例えば、この文章の結論は、いいですか、いろいろ告知するなど云々、理由としてとあるけれども、それで、「本邦外出身者を地域社会から排除することを煽動する不当な差別的言動をいう。」というふうに、これが結論ですよね。ここに、などは入っていませんよね。
そうすると、本邦外出身者を地域社会から排除することを扇動するというのがこれ結論的な要件じゃないですか。などが入っていないから、例えば地域社会から排除するということを言わないで、ただ単に侮蔑するような言葉は要件に入らないと思うんですが、どう読んでも入らないと思いますよ。どうでしょう。

○矢倉克夫君

その地域社会から排除するという言葉、それはまた、更に言えば、その人の、相手の存在を否定しているというような部分もある。その表現の対応いかんも全て含めて文脈上捉えるわけですが、根底にある部分は、その目の前の人の人格を排除して、そこの地域社会に存在するに値しないんだというような意図も当然入ってくるわけであります。そういうものと併せて、扇動の対応等も踏まえて、当然該当し得る表現であるというふうに理解もいたしております。

○小川敏夫君

お気持ちは分かりますが、文章はそうなっていないので、法律ですから。
例えば、細かい話を言いますと、地域社会から排除すると。じゃ、桜本から出ていけとか東京から出ていけという、地域社会から出ていけというのは分かるけど、日本から出ていけというのは、日本は地域社会ですか。

○西田昌司君

日本というのは社会であって、地域社会という、そういう小さなくくりではありませんが、当然日本から出ていけということは地域社会から出ていけということも含まれてきますので、当然それも入ってくると思うんです。
それで、小川先生の方から個別にいろいろ御質問あるんですけれども、私元々、何度も言いますけれども、皆さん方がかつて、今も出されているいわゆる人種差別撤廃法、これは禁止規定でされているわけであります。しかし、禁止規定でされているけれども、実はその実、中身的にはこれは禁止規定だけど理念法なんだということも前回の国会で御答弁、御説明されているわけなんです。そういう意味でいうと、私は余りその中身的には大きな差はないと思うんです。
しかし、問題は、禁止規定を作ってしまうと、先ほど、今、小川先生がおっしゃったように、明確にどれが、何が禁止の対象になるかという定義、そこが非常にはっきりさせなきゃならないわけです。しかし、我々が提案している方は禁止規定を設けずに理念法にとどめている。しかし、この理念法にとどめていることが、逆にいろんなそういう周辺のことも含めて、理念ですから、こういうことはすべきでないという話になってくる。
ただ、これを禁止規定していない、それは、何度も言いますけれども、いわゆる憲法の保障する表現の自由ですよね、思想信条の自由、様々なそういう基本的人権の一番根幹に関わるところを公権力が規定したり制限したりするということは、逆に言うと、いつ、誰もが、逆のことで同じように公権力からそういう制限を受けることだってあり得るわけなんです。だから、そういうことを考えて我々はあえて理念法にして、そしてもっと広く、法律の運用によってこの法律の目指すものを一つの解釈指針にして様々なこの法律を使っていただく。
先ほど河野委員長は、出られましたけれども、河野委員長もおっしゃっているのは、要するに、この法律ができたらしっかりとこの法律の理念にのっとって当然警察官にもそういう教育をしなければなりませんし、そうなってくると、様々な侮蔑罪とかそれから脅迫とか、そういう様々な法律の解釈をするに当たってもしっかりとそれを厳正に対応していくということになると、そのことを我々は期待しているわけであります。

○小川敏夫君

私は地域社会が日本に当たるのかと聞いただけなのに、何か延々と自分の法律を宣伝されていて、余りにもテーマが多過ぎて議論が困るんですけど。
ただ、西田議員は、河野委員長が云々かんぬんでちょっと重要な点を言いましたですね。侮蔑罪、まあ多分侮辱罪の間違いだと思うんだけれども、侮辱とか名誉毀損とか、特定の人に対する行為であれば現行法で対応できるんですよ。今困っているのは、そうした特定人を相手にする行為ではなくて、まさに刑法の侮辱罪あるいは名誉毀損に当たらない、まさに今、不特定多数に不快感を与える、あるいは排外的な言葉を浴びせ付けるというような行動をして練り歩くというような行為、不特定多数に対するこうしたヘイトが何らの対応もできないから困っているわけで、そうした立法を考えているわけですから。だから、侮辱罪の云々かんぬん、それで警察は一生懸命やるといっても、全く議論がかみ合っていないんですがね。
で、何か西田さんのお話しの長い長いお話の中で、何か私どもが出した案と今与党が出している案が大して変わらないというような御発言もありましたけれども、大して変わらないどころじゃなくてひどく変わるわけでありまして、先ほど公安委員長に確認しました。違法ということでなければ警察はデモの不許可もできないし、規制もできないということでありました。与党案のこの法律は、これ定義したいわゆるヘイトスピーチを違法とは宣言していないわけで、そうすると、この法律ができても、従来行われているこのヘイトデモ、これを不許可にする根拠には全くなり得ないし、それから今まで行われているヘイトスピーチが同じ形で繰り返されたとしても警察は何も規制ができない。
そうすると、この法律で、前回も質問しました、この法律について努力をしようとする気もない人、あるいはこの法律に逆らって殊更やろうという人に対して何の効果も及ぼさないですねと私は聞いたわけですが、そういう結論になりますね。
じゃ、聞き方を変えましょう。今行われているヘイトスピーチあるいはヘイトデモ、これをやめさせることができる法律なんですか。

○矢倉克夫君

やめさせることに寄与する法律であると思います。
今、小川委員がおっしゃったとおり、まさに問題点は、これまで特定人に対してのこのような差別的言動については法は意識を明確にしていたわけであります、どういうものであるのか。ただ、不特定については何も言っていなかった。これを今回初めて、不特定に対しての侮蔑的な表現等であってもこれは許されないものであるということ、これをしっかりと宣言したわけであります。
これがどのような役割をするかといえば、例えば騒音防止条例であるとか、様々な文脈で表現に対して規制をするとき、この規制の対象になるかどうかの価値判断にこれは当然影響してくる。いろんな既存の法律を解釈し、またその解釈が裁判で問題になったときに、このような理念法があり、不特定多数に対してのこのような言動というのは許されないものであると国がしっかりと言及をしたということが必ず裁判の方で判断をされるという理由があります。こういうような部分を含めて、おっしゃられているような効果をしっかりと発揮していくというふうに理解をしております。

○小川敏夫君

今行われているヘイトスピーチ、ヘイトデモ、これを防止することに寄与するというお話でしたけど、どういうふうに寄与するのか全く具体性がない話でして、この法案ができても、施行されても、ヘイトデモ、何一つ変わらずに行われますよ。行われたとして、それを何もこの法律を根拠に規制することができないと。
ただ、提案者がおっしゃる趣旨は、この許されないという精神が様々なところで、行政なりなんなりで反映されるでありましょうから、そうした精神が広まればいいですねぐらいの話であって、ヘイトスピーチをやめようと思っていない人がヘイトスピーチをやる、ヘイトデモをやろうとしているわけですから、法律で規制されなければ構わないといってやっているわけですから、そういう人たちに対して何の法律効果も及ぼさないですね。
ですから、寄与するとか、風が吹けばおけ屋がもうかるみたいな話じゃなくて、この法律の効果として私は聞いているわけです。ヘイトデモが申請されたらデモを不許可にする根拠になり得るかどうか、あるいはヘイトスピーチが行われている、それを規制するということの根拠になり得るかどうか、その法律効果、これについてもう一言でお答えください。私の質問について何かえらく長々と答弁するんで、私の質問について一言で端的にお答えください。

○西田昌司君

なかなか一言で答えられるような質問をされていないんですね。
それで、先ほど私は、民進党が出されているのと変わらないというのは、その方向性の話なんですね。それで、ちょっと思い出していただきたいんですが、平成二十七年の八月六日、参議院法務委員会、この本委員会で、これは仁比議員から質問があって、小川議員がこういうふうに答えられているんですよね。
してはならないという差別的行為をしたということがあっても、この法律で、つまり皆さん方が出された法律で、直ちに刑罰を科するという構造にはなっておりません。また、刑罰を科さないというだけでなくて、この法律をもって直ちに何らかのそうした差別的行為が行われたことに対する行政的な措置がなされるという意味の規制があるという趣旨でもございません。これは、ですから、具体的な処分がなされるというのではなくて、あくまでも、してはならないという理念を定めて、その理念に基づいて、これからの国の施策あるいはこれからの立法や条例の制定におきまして、様々なそうした行政の分野、立法の分野におきまして、この理念を生かした形で行ってほしい、こういう意味で理念を定めた理念法でございますと答弁をされているのは小川委員であります。まさに我々が言っているのも同じことを言っているわけです。
そして、なぜここで、それじゃ禁止じゃなくて理念にしたかというと、もし禁止規定を置きましたときには、しっかりとした定義をしなければならない、違法それから合法の判断をしなければならない、その外れるところの問題、それが出てきますし、また、まさに違法行為があった場合にはそれを排除しないと、違法と国が定めていることを放置するのかという話が次出てまいりますね。ですから、そういう様々な立法上の問題が出てくることを踏まえて我々は理念法にしていると。
そして、この効果はあるのかないのかということを一言でおっしゃれというふうにおっしゃいましたけれども、先ほど申しましたように、理念法でも行政の判断に、そこに作用して防止ができるという、そういう趣旨の発言を小川委員がおっしゃったように、我々もこの理念法で一つ一つ対応していく、そのことを申し上げたいと思います。

○小川敏夫君

私の発言の趣旨は、様々な場面で、行政で、そうした趣旨が浸透して効果が及ぶでしょうということは言いました。それしかできないとは言っていません。今回の与党の法案はそれしかできないんです。だから全然違うでしょう。
要するに、最後に結論らしきものをお話しされたけど、また重ねて聞きます。あるいはもう分かっているのかもしれないけれども、この法律ができても今行われているような形のヘイトデモ、このデモをこの法律を根拠に不許可にすることはできない、それから、今現に行われているようなヘイトスピーチがまた公道上公然と行われても、警察はそれを規制することができないと。このことは、今、西田委員も首を縦に振っていらっしゃるから、そういう趣旨でよろしいわけですよね。
ただ、そのことについて端的に答えないで、またあれこれあれこれいろいろ言うから私の質問時間がなくなっちゃうわけで。ですから、一言で言ってくれればいいんですよ。今、私は聞いているんですよ、この法律ができても今行われているこの態様のヘイトデモ、これを不許可にすることの根拠法律にはならないし、そして、今行われているような態様の公然と行われているヘイトスピーチ、これを警察が規制することができないと。
ですから、そういう場面においては法的な効果は持たないですねと聞いているわけだから、はいか、はいならもうその一言でいいんですよ。違うなら違うという理由を説明してください。

○西田昌司君

これは、イエスかノーか、クイズじゃないですから、そういうことじゃないんです。
つまり、今大事なことを委員おっしゃって、要するに、確かにこの法律ができても、また、もっと言えば、民進党の法律がもし成立したとしても、そういうヘイトデモをやる人は恐らくいるでしょう、これは。そういう方がいるのも事実だと思います。
しかし、我々は、この法律を成立させることによって、我々日本国民がそういうことは許さないと言っているわけなんですよ。そして、国権の最高機関である国会がそのことを法律として認めたと。この意味は物すごく大きくて、その結果、何が起こるかというと、先ほど言いましたように、様々な行政の立法や条例を作ったり、また、解釈することに大いに影響を当然与えていくことになると。
その結果、要はヘイトデモというのは、まず一つは、禁止じゃなくて、そういう方々に改心をしていただかなければなりませんから、結局、教育そして啓発、そういうことになるわけですけれども、世の中にはそれを幾らやっても直らない人がいますよ。しかし、これは、それを刑罰で直すんじゃなくて、やっぱり最後は、こういうばかなことをしてはいけないと彼らが悔い改めてもらわなければいけない問題でありますから、やはり、我々は、国会がこういう議論をして、この法律を皆さんと一緒に成立させていただいたと、その我々国会のこの意思が彼らの行動に私は影響を与えるものだと確信をしております。

○小川敏夫君

ヘイトスピーチをやって世論から非難を受けながら何とも思わずにヘイトスピーチをやっている人たちが悔い改めるのを待っていたら、いつになるんでしょうかね、終わるのは。終わらないと思いますよ。
それから、与党の法案と私どもの法案の大きな違い、決定的な違いは、私どもは刑罰は科していないけれども、いわゆるヘイトスピーチは違法だと、ですから禁止しているんですよ。与党の案は、違法だからといって禁止はしていないんです。ただ、なくなるように努力しましょうというお話ですから。
公安委員長も言いました、違法であれば対応できると。ですから、私どもの法案は、ヘイトスピーチは違法だ、国民はしてはならないといって法律で禁止したんです。ただ、刑罰は科していないだけです。与党の法案は、あなた方の法案は、本文の方で何か「許されない」というような表現があるけれども、結局、第三条で「努めなければならない。」と、ここに終わっているわけで、国民に対して禁止していないんですよ。ですから、もう何回も何回も議論させていただきました。努力をしない人、努力をあざ笑って繰り返す人には何の効果もないじゃないですかということを繰り返し質問させていただいたわけであります。
私の質問聞いているときにはうんうんうんうん首を縦に振るから、私の考えを賛成してくれるのかと思うと、何か話し始めると違うことをおっしゃるので、まあ、どうぞ、答弁してください。

○西田昌司君

つまり、小川委員が目指しておられることも我々が目指していることも大して変わりはないと思うんです。ただ、手法が、先生方のおっしゃるように禁止規定をもし書いてしまうと本当にいいんでしょうか。国家がこのことはしてはいけないと。その定義が、じゃ、ヘイトとは何かという話が非常に厳格に決めなきゃならなくなってきますね。そして、その決めたことは、まさに言論を国家が統制してしまうわけですよ。これはかなり大きな問題になりますし、私は、間違いなくこれは憲法違反問題だといって訴えられる可能性は大いにありますよ。そうなってしまうと、これは元も子もない。逆に言えば、もうヘイトは野放しでどうしようもないじゃないかという話に逆になっちゃうんですね。
そうじゃなくて、あえて禁止規定を設けないことによって、もう少し教育や啓発や、そういうモラルに訴えることによって広くヘイトスピーチを包み込んで、そして、国民の中でこういうことは恥ずべきことだからやめようと、そういう機運を盛り上げていくと、まさにそのことを小川先生自身も御自分の答弁で同じような趣旨のことをおっしゃっているわけですよ。だから、そこは……(発言する者あり)いや、もう一度読ませていただいてもいいんですけれども。やはりこうした種類の差別の禁止理念が法としてあるということが踏まえて、この法律や条例、規則等が定められていくと、十分その意義はあると、こういうことをおっしゃっております。
是非、御理解いただきたいと思います。

○小川敏夫君

提案者は、まさかヘイトスピーチそのものが表現の自由だとして許されるのか、ヘイトスピーチそのものが表現の自由として許されるものだとは考えていないと思いますがね。
質問時間がなくなりましたので。
先ほどドイツとフランスの立法例を紹介していただきました。ここではもう時間があと一分しかないので具体的に言いませんけれども、非常にざくっとした内容の規定でありますけれども、これで実際に刑罰法規として機能しているわけで、ドイツ、フランスがこういうようなヘイトスピーチを刑罰をもって禁止する規定があるからといって、ドイツやフランスが表現の自由を侵害する国だとは思いませんが。
どうでしょう、やはり最後の結論として言わせていただければ、みんなで努力しましょうといってみんな国民の多くがヘイトスピーチやめようとして努力をしているときに、努力をしないで努力する人をあざ笑うようにやっている人に対して、また改心するのを待っているようでは何の効果もないですねということを繰り返し質問させていただきました。それに対して明確な答弁がなかったのは残念でありますけれども、時間が来ましたので、私の質問は終わります。

○仁比聡平君

日本共産党の仁比聡平でございます。
前回に続いて法案の意味するところを発議者にお尋ねをしていきたいと思うんですが、まず、法案の第四条で国と地方公共団体の責務を定めようとしておられます。特にその二項についてお尋ねをしたいんですけれども、地方公共団体に何を求めるか、あるいは期待をするかという法律上の用語として当該地域の実情に応じた施策という概念がありますが、この当該地域の実情に応じた施策というのは発議者はどのようなものを考え、具体的にはどのようなことを想定をしておられるのでしょうか。

○矢倉克夫君

ありがとうございます。
当該地域ごと、それぞれこのような言論の対象になる方が人口の中でどれくらい比率があるかであるとか、どれくらい頻繁に行われているか、それぞれ地域ごとにあると思います。日本の中ではこのようなヘイトデモが行われていないような場面もある。そのような事情、事情を考慮して、例えばその事情に合った相談体制であるとか、そういうものを整備することを一つ考えております。

○仁比聡平君

もう少しお尋ねしたいんですけれども、つまり、例えば在日コリアンの集住地区が自治体の中に歴史的に存在するという自治体や、あるいはよくコリアンタウンというふうに称されるような大きな町があると、そこがにぎわいの場でもあるという地域もありますよね。一方で、そうした集住地区などはないんだけれども、けれども、そこでヘイトスピーチが許されていいはずももちろんないということだと思うんです。
ですから、地域によって様々な実情があるといいますか、実情がそれぞれであると。それから、戦前戦後にわたる歴史的な在日外国人の皆さんとの共生の取組あるいは過去排斥をしてきた経過などがそれぞれの地域で、歴史もあるいは取組の到達点も違うと。であるから、どんな取組を行うのかというのは、それぞれの地方自治体ごとにいろんな取組があり得るというような意味なのかどうか。改めて、法文の用語は「当該地域の実情に応じた施策」となっているわけで、これがどれほどの深みを持って発議者が提起をしておられるのか、もう一度お尋ねいたします。

○矢倉克夫君

仁比委員おっしゃるとおりの趣旨であります。
例えば、桜本などこの前も視察へ行かせていただいた、やはり外部からわあっと人が来て、元々そこで共生をしていた社会が分断されていく、子供たちの間でも友達であった同士が謝り謝られというような関係に追いやられる、こういう卑劣な行為、許されてはいけないと。そういうような場面では、相談体制通して、やはり共生という社会をどうやってつくっていくのかということをこれはしっかり行政と一体になって考えていくというような施策もまた考えなければいけない、その後の体制もつくらなければいけない。
他方で、この前お話のあった銀座とかで、じゃ、こういうようなヘイトデモがあった場合どういう対応があるのか。当然、銀座だから許されるという話ではありませんで、まさにこういうような言動はそういうような場面でも許されないということをこれは理念法として表した。
で、その理念法の文脈といいますか、これを、例えば騒音防止であるとか公安の、やはり全体の平和を乱す行為に対してどのように対処をするかというような文脈でこのような法律が作られる、そしてそれに応じて、その場の、銀座であるとかその辺りの自治体がしっかりと対応すると、それぞれごとの、地域ごとの対応の仕方はあるわけでありますし、それに応じた措置をとるということを趣旨としてこの法文は規定しているという理解であります。

○仁比聡平君

つまり、確認をすると、地域によって、この地域では許されないが別の地域では許されるという意味ではそれは毛頭ないと。で、地域の実情に応じて、法案の用語で言いますと、「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組」、この解消に向けた取組の内容といいますか、講ずべき対応措置についてこれはいろんなことがあるだろうと、そういうことなのかなとも思うんですけれども、それぞれの地域においてヘイトスピーチは許されない、断固として許されないという立場に立って、そこそこの自治体が取り得ることを行うべきであると、そういう意味でしょうか。

○矢倉克夫君

まさに許されないということをここでしっかりと規定をし、その思いの下で地域も社会も、そして個人も一体となってこのような社会、そういうようなものを根絶していこうというところを訴えた理念であります。先生のおっしゃるとおりであります。

○仁比聡平君

ということであれば、その地方公共団体が取り組むその措置というのは、法的な根拠も、あるいは手法もいろんなことがあり得るんだろうと思うんです。
私たちが訪ねた桜本のような集住地域に迫ってくる、踏み込んでくる、そうしたデモ申請を許すのかという許可の問題があるでしょうし、あるいは公園などの使用許可という問題もあるでしょうし、あるいは、そうした集住地区ではないんだけれども、一般的に、公民館などの公的会館をヘイトを行っている集団が使用許可申請をしてきたときにどう対応するのか、あるいは、先ほど騒音防止条例などというお話もありましたけれども、銀座や新宿をそうしたヘイトデモを行うという行為に対してどう対処するのかなどなど、場面によっていろいろでしょう。
そのそれぞれの場面に応じた施策にこの提案されておられる理念法が生かされる施策というのが、この当該地域の実情に応じた施策の意味ということでしょうか。

○矢倉克夫君

おっしゃるとおりであります。

○仁比聡平君

そのそれぞれの、つまり、地方自治体とそのデモ申請者などとの関係で見ると、これは言わば法的関係になるんですよね。この許可、不許可というのは、これはつまり行政処分ということになって、西田発議者も前回からよくおっしゃられるように、これが、例えば不許可にしたことが不当であるといって争われる、そのことが裁判になり得るというような場面なわけですが、つまり、与党発議者がおっしゃりたいのは、そうした行政判断を行うとき、そしてその行政判断の当不当、あるいは適法、不適法が争われるときにこの理念法が規範として働くはずであるという、そういうことでしょうか。

○西田昌司君

まさに今、仁比委員がおっしゃったことを我々は期待しているわけであります。
ですから、要するに、表現の自由を公権力が規制したり、直接的にそういうことをすること自体はやっぱり憲法に抵触してくる。しかし、この理念を設けることによって、それぞれ具体的な行政が許可、不許可、道路使用許可だってそうですね。ただ、内容で一概に駄目だということはなかなかできないわけでありますけれども、トータルで総合的に判断してきたときにある一定の行政判断が出てくる。そのときの行政判断をしていただくときに、我々は、いわゆるヘイトは許さない、あってはならないというこの理念法を設けたことによって行政判断がなされて、そして、そのことについて、そのヘイトを行っている側がそれは不当な行政判断なんだと、我々の表現の自由、集会の自由を行政がそういう公権力によって禁止することはおかしいという裁判が出る場合も当然考えられますね。出てきたときに、我々が、国権の最高機関としての国会がこういう理念法を定めて、そういうヘイトというのはあってはならないのであると、そういうことを基に行政が判断し、そして裁判所も同じく我々の立法趣旨を基にして判断がされていくものと期待しております。

○仁比聡平君

まず、西田議員がよく御答弁の中で使われる公権力という言葉なんですけれども、広い意義でいいますと裁判所も公権力の一環だということになるんだと思うんです。今ずっとお使いになられている意味は、つまり行政機関が、国であれ、あるいは地方公共団体であれ、行政として表現の内容に立ち入って当不当の審査をする、そういうことはやるべきではないという、そういう意味合いで使っておられるわけですよね。

○西田昌司君

まさにそういうことです。行政府の側が当不当の判断をすべきではないと。あくまでそれは、最終的には司法の方の場の話になってくると思います。ですから、最終的には司法判断になるでしょうけれども、行政の側が自分たちで基準を設けて、こういうことはしてはいけない、してもいいとかいう、そういうところの形のことをすることは私は憲法違反になってくると思っています。

○仁比聡平君

今の点について各会派のところでいろんな議論があるということはもちろん一つのテーマなわけですが、ちょっと先に進みたいと思うんですけれども。
今、西田議員がおっしゃった意味で、つまり行政機関が表現内容にわたって審査をすることはない、そういう意味で理念法であるということと、今私がお尋ねしている地方公共団体の責務ですね、つまり、四条の二項の最後の部分を「努めるものとする。」という表現にしていること、つまり国は責務を有するんだが地方公共団体は施策を講ずるよう努めるものとすると、言わば努力義務のような形に規定をしていることとの間に私、論理的必然はないんだと思うんですよ。
といいますのは、先ほど来確認をしているとおり、求められる施策というのは、これは当該地域の実情に応じてそれぞれなわけですよね。これは当然なんです。それが憲法の定める地方自治の本旨に直接かなうものであるし、私たちが訪ねた川崎の取組を踏まえても、つまり、共生というものを実現をしていくのは、地域社会においていろんな闘いがあり歴史があって前進をしてくるわけで、それはつまりそれぞれのコミュニティー、自治、共生を大切にするという取組の中で行われるわけですよね。そうしたものとして当該地域の実情に応じた施策というものが求められるのであれば、それは、自治体それぞれがそれぞれですよというのは、それはそうなんだから、別に努めるものとするというふうに引かずに、腰を引くのではなくて、国と同じように責務を有するとはっきり書いても差し支えはないのではないかと思うんですが、いかがですか。

○西田昌司君

仁比委員がおっしゃるところもそのとおりだと私も思います。
ただ、これ一般論として、国はそういう様々な規則や法律で、ある種公権力として行政府として仕組みをつくって、ある種のこういう強制的な面がありますよね。ところが、いわゆる地方自治体の場合には、コミュニティーの、その社会の皆さんの中の仕組みでありますから、どちらかというと、そういう言葉よりも柔らかい言葉の方がなじみやすいのではないかと、そういう意味で使っているわけでありまして、だからといって、国はやるけれども地方公共団体はしなくてもいい、まあ努めるようにしてくれたらいいというような、何か腰の引けたつもりで言っているわけではもちろんございません。
ただ、今委員がおっしゃるように、要するに、地域社会というのは余り四角四面な法律で縛り付けるというよりも、皆さんがやっぱり長い間そこに住んでコミュニティーを築いてこられた、それをいかにして安寧な社会を続けていくかという、お互いがお互い、お互いさまで協力し合うという、そういう社会でありますよね。だから、努力義務のような形をしておりますけれども、我々が思っているのは、それを国の方には義務があるけれどもこちらの方には義務がないとか、そういうつもりで使っているわけではございません。

○仁比聡平君

ということであれば、これから行われる協議においてもきちんと検討の余地は十分あるなというふうに今受け止めたんですけれども。
地方自治体といっても、これはやっぱり大きな力を持っているんですよね。例えば、私の、九州、地元の例えば福岡市あるいは北九州市ということを考えたときに、市がどんなスタンスで物事に臨むのかというのは、これは決定的です。このときに、この大切な法案において、国は責務があるが地方公共団体は努めるものとするとされているというこの表現一つで地方公共団体の構えが変わるようなことになるならば、それは法案提案者の意図とも違うのだなと今改めて思ったわけですね。
例えば、前回も申し上げましたが、札幌市議会で当時の市会議員さんがアイヌ民族なんていないという趣旨の発言をされて、これがアイヌ民族に対する極めて悪質な、しかも政治家による、公人によるヘイトであるということが大問題になり、辞職勧告決議が出されたという経過があります。
こうした地方議会も含めて、あるいは首長がそうした言動を行うなんてもってのほかだと思いますけれども、特定の民族や人種に属することを理由にしてこうした社会から排斥するというような言動から守らなければならない行政の側が自らヘイトを行うということは絶対にあっちゃならぬということをはっきりさせる上でも、私はもう責務ときっぱりはっきりさせた方がいいと思うんですが、いかがですか。

○西田昌司君

今おっしゃったことは一考するべきところがあると私も思います。

○仁比聡平君

そうした中で、協議を続けていくことを求めて次のテーマに移りたいと思うんですけれども。
対象となる言動についてどのように定義をするか、これは法案の大きな課題なわけですが、私どもの法務委員会で、せんだって国連人権理事会特別報告者のデビッド・ケイ教授とお会いをいたしました。委員長始め理事の中心メンバー、私も含めて懇談をさせていただいた中で、このヘイトスピーチの規制をどう考えるのかということが大きなテーマになり、後、デビッド・ケイさんが記者会見をされた中で、ヘイトスピーチの定義が曖昧なまま規制すれば表現の自由に悪影響を及ぼす可能性があるというふうに指摘していると報じられています。また、獨協大教授の右崎正博さんが、不当な差別的言動という言葉は曖昧であり、言論と行為を区別すべきだというふうに指摘もされているんですね。
不当なという概念が、これが評価も含めて広範、曖昧ではないか、それから差別的という表現が、用語がこれ曖昧ではないかというこの懸念は、これは以前から示されているわけですけれども、このデビッド・ケイさんや右崎先生の指摘に発議者はどのようにお答えになるでしょうか。

○矢倉克夫君

まさにこのデビッド・ケイ氏のおっしゃっているところはそのとおりであるかなと。我々も懸念しているところはまさにこの点でありまして、表現のとりわけ内容に関する規制というもの、これが外延が明確でなければ、どこまでが公権力が介入する言論かというところの外延が明確でなければ、全ての言論の規制にもなるし言論に萎縮効果を生むと、ひいては民主主義に甚大な影響を与えるというところであります。まさにそういう問題点に立って、私たちは、表現の内容というものに着目した禁止に基づく法律ではなく理念法として法の立て付けをすることが、表現の自由をしっかりと遵守しながらこのような卑劣な言動というものをなくす社会をつくる上で唯一の手段であると、最善の手段であるというふうに理解もしてこのような形で法規をさせていただいた、そういう点では、デビッド・ケイ氏の発言はそのとおりであるというふうに思います。
そして、もう一つ、右崎先生の御発言であります不当な差別的言動というところでありますが、こちらの法律は不当な差別的言動というものをこれ定義付けておりまして、本邦外出身者を地域社会から排除することを扇動する不当な差別的言動という形であります。この不当なとか、そういった文言の曖昧さという部分ではなく、まさに扇動であるとかそのような形での定義も入れているところでありますので、曖昧であるという御批判はこれは当たらないというふうに理解をしております。

○仁比聡平君

今のお話は、つまり、不当なというのが、その裸で不当なというふうに評価される概念ではないという意味なんでしょうか。つまり、本邦の域外にある国又は地域の出身であることを理由として本邦外出身者を地域社会から排除することを扇動するものが不当なのであると、そういう意味でしょうか。

○矢倉克夫君

まさにそういう意味を込めて二条で定義条項という形で加えさせていただいたところであります。先生おっしゃるとおりです。

○仁比聡平君

先ほど、侮蔑あるいは侮辱というような概念をここで、この部分に盛り込めないのかという趣旨の議論もありますし、この定義をどう明確にしていくのかというのは協議の大きなテーマなんだと思うんですね。
そうすると、今の与党としては、この法文のここの部分をきちんと議論していくことで、許されないヘイトスピーチを明らかにし、外延を明確にしたいと、そういうことでしょうか。

○西田昌司君

この法案を提出しまして、民進党から、また御党、共産党からも修正項目の要求があったわけでございますが、実は今日の四時から我々与党のワーキングチームでそのことについて協議をすることになっております。その中で、今おっしゃったようなことも含め考えていきたいと思っております。

○仁比聡平君

ということなのですけれども、念のため確認をしておきたいと思うんですが、我が国の法制でこの不当な差別的言動という用語は極めてまれです。
法制局においでいただいていますが、この用語例というのはどのようなものがあるでしょうか。

○法制局参事(加藤敏博君)

不当な差別的言動という語句でございますが、これは一つの法令用語として用いているわけではございませんで、不当、差別的、それに言動という三つの用語を組み合わせた語句でございます。
その上で、不当な差別的言動という語句を用いた立法例としましては、いわゆる障害者虐待防止法、この法律の中で、定義規定の中で、「障害者に対する著しい暴言、著しく拒絶的な対応又は不当な差別的言動その他の障害者に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと。」というふうに定義規定を置いているところはございます。

○仁比聡平君

今お話しの、つまり、今御紹介のあったいわゆる障害者虐待防止法に唯一例があるということなわけですね。
近年制定をされたわけですけれども、この障害者虐待防止法における不当な差別的言動という概念が法制上どんなふうに位置付けられているか、つまり何のための規定として設けられ運用されているか、厚労省、お答えください。

○政府参考人(藤井康弘君)

お答え申し上げます。
いわゆる障害者虐待防止法第二条第七項及び第八項におきましては、虐待の通報義務の対象となってまいります障害者福祉施設従事者等又は使用者による障害者虐待に当たる行為が定義をされております。
この中で、いわゆる心理的虐待につきましては、「障害者に対する著しい暴言、著しく拒絶的な対応又は不当な差別的言動その他の障害者に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと。」と定義をされておりまして、この不当な差別的言動は著しい心理的外傷を与える言動の例として規定をされてございます。

○仁比聡平君

つまり、今の現行法で例のある規定は、障害福祉事業を利用する方、その事業者からサービスの提供を受ける方、いわゆる利用者ですね、利用される障害者、高齢者の場合もあるでしょうけれども、そうした方に対してその事業を行っている側、それを従業員というふうに呼んでいるわけですが、つまり、サービスを提供される、しかも、介護度や障害の度合いにもよりますけれども、極めて弱い立場にある方々に対してサービスを提供する、言わば支配をする側による不当な差別的言動という意味で主体が限定をされているわけですね。あるいは、障害者を雇用している使用者がその雇用関係にある従業員、障害のある従業員に対して虐待をする、ここを捉まえて不当な差別的言動という概念がある、そうした場合に通報義務があると。
そういう意味では、不当な差別的言動という概念は主体の面でも限定をされているということだと私は理解するんですが、厚労省、そういう理解でおおむね間違いないですか。

○政府参考人(藤井康弘君)

先ほど御答弁申し上げたとおりでございますが、この障害者虐待防止法におきましては、障害者福祉施設従事者等又は使用者による障害者虐待に当たる行為が定義をされておりまして、その中で、いわゆる心理的虐待につきまして、その一つの例示としてこの不当な差別的扱いということが規定をされてございます。

○仁比聡平君

つまり、私の指摘はそうは間違ってはいないという趣旨なんだと思うんですよ。ですから、対象となる許されない行為を、言動をきちんと明確にするというのは、これまで与党発議者がお話しになっていた基本的なお立場を踏まえながら、やっぱりもっともっと議論して、きちんと定めていかなければならないと改めて私思うんです。
ちょっとそことの関わりもあって、この二条の定義に与党の皆さんは「公然と」という用語を使っておられます。具体的に言うと、「公然とその生命、身体、自由、名誉又は財産に危害を加える旨を告知する」という文案になっていまして、ここに言う「公然と」という意味が何なのか。私は、不特定多数の者が表現の内容を知り得る状態に置くような場所又は方法による言動というふうに捉えるべきだと思うんですけれども、与党の皆さんの意味するところはどうなんでしょうか。

○矢倉克夫君

一般に、公然とというのは、不特定又は多数人が認識できる状態という意味であるというふうに解釈されているというふうに理解もしております。ですので、こちらの「公然と」という意味は先生の御指摘のとおりであると思います。

○仁比聡平君

不特定多数の者が表現の内容を知り得る状態に置くような場所又は方法というのは様々なものがあるわけですけれども、矢倉発議者、そういう理解でよろしいですか。

○矢倉克夫君

そのような見解で結構です。

○仁比聡平君

あと、具体的な中身については、各党協議の中で更に詰めた上で、こうした委員会の場で確認をできるように議論していきたいなと思います。
そうした中で、私どもとしては、前回に指摘をさせていただいた、例えばアイヌ民族に対するヘイトスピーチ、あるいは難民認定や在留資格が争われている外国人に対するヘイトスピーチ、これが許されないということは当然であって、まずここ確認しましょう。
自民党、公明党、それぞれ発議者、許されないと、規定の仕方をどうするかはおいておいて、アイヌ民族や難民認定、在留資格が争われている外国人に対するヘイトスピーチが許されないと、この認識は同じですね。

○西田昌司君

そのとおりであります。許されるものではありません。

○矢倉克夫君

全く許されるものではありません。

○仁比聡平君

そのことを明確にする必要がやっぱりあるんですよ。適法に居住するという要件を法律上の文言にしてしまうと、つまり適法に居住するという要件が在留資格をめぐって争われているときにはその者に対するヘイトスピーチは許されるのではないか、この許されないという対象に入らないのではないかというような議論が現にあるわけですよね。
ですから、この適法に居住するというこの文言そのものは、これは私は削除すべきだと思うんですが、それは私の提案であって、日本共産党の提案であって、与党はお立場がいろいろあるんだ、これから協議をされるんだと思うんですけれども、ここはやっぱり議論をしていく課題だという御認識ではあるんですか。

○西田昌司君

今、仁比委員がお示しになったような議論がインターネット上でされていると。つまり、適法に住んでいない人ですね、いわゆる不正に入国されたとか、そういう方だったらヘイトスピーチをしてもいいんだというようなことをインターネット上で情報が蔓延していることを私も承知しております。しかし、当然のことでありますけれども、それを我々は認めるものではありません。要するに、適法であるかないかというのは、適法でない場合には入国管理法違反ですから、そのことはそのこととしてその法律でしっかりとした措置をされるというのは、これ当然だと思っております。
しかし、だからといって、その方々にヘイトスピーチを浴びせかけて、それがいいのかというとそれはまた別の話でして、これは禁止規定ではありませんから禁止はしておりませんけれども、当然そういうことは許されるものではないと。要するに、これはモラルの話なんですよね。日本人としてのモラルをこの理念法で掲げているわけであります。
したがいまして、今おっしゃいましたように、我々が立法事実として想定していたことのほかにも、今おっしゃっているような様々な、アイヌの方々の話もそうでありましょう、そういう事実があることは私も事実だと思います。ですから、ここは、この法律は理念法でありますから、今私が発議者として申し上げているこの答弁も含め、この法律の運用の仕方、これを理念法として運用していくときに、様々な皆さん方からの意見も踏まえて、例えばこの法律の運用に対する附帯決議を付けていただくなり、また今我々が発議者として申し上げていることを踏まえて運用していただければ、私は法律のその隙間は埋まっていくものと期待しております。

○仁比聡平君

協議を続けたいと思うんですけれども、つまり西田議員がおっしゃらんとするモラルの問題というこの言葉なんですけれども、私なりに翻訳しますと、民主主義社会、市民社会の根底である互いの人格を尊重するというこのモラルなり、あるいは憲法用語で言えば人格権ということにもなるでしょうし、あるいは良心、あるいは倫理というふうに置き換えてもいいんだと思うんですけれども、これを踏みにじって、社会から排除しよう、排斥しようとするヘイトスピーチに対して我々がどう根絶のために力を尽くすのかということが問われている下で、法の規定ぶりということはこれは極めて重要だと。
ですから、いや、この部分は許されるんじゃないか、これは大丈夫じゃないかというふうに抜け穴だとかを探そうとするような、そういうやからに対して駄目だということをこれははっきりさせると、そういう規定に仕上げようじゃないかと私呼びかけたいと思うんですが、いかがですか。

○西田昌司君

おっしゃることは全く私も賛成であります。また、そういうつもりでこの法律を提案させていただいております。
つまり、立法事実は、先ほど言いましたように、元々はいわゆる在日の方々に対するヘイトスピーチであったわけですけれども、それ以外にもあることは事実であります。それをやっていく場合に我々が一番感じましたのは、要するにモラルでありますから、モラルだから理念法にしておりますが、モラルを法律の規制にしたり、それを行政府側が、ここから外側は駄目だという禁止規定を作ったり、それを排除するような措置をつくったりするのは、今度は逆に公権力が個人の生活を縛ったり規制したりする、そういう表現の自由に関わることになってくる。
ですから、そこはあえてしていないわけでありますけれども、今言われたような様々な我々が想定していなかったことも含め、それは広くこの理念法の中で包み込んで解釈していくべきだと思っておりますし、そういう形の解釈は当然ここから私は読み取っていけるものだと思っております。

○仁比聡平君

その今の後段の部分がいろんな議論になっているところなんだと思うんですよ。
例えば、西田議員が繰り返しておっしゃるような戦前の治安維持法体制というのはどんなものだったかと。最高刑死刑と、極刑をもって、しかも特高警察が私ども日本共産党を始めとした国民の思想、そして結社そのものを弾圧すると。予防拘禁含めて身柄を拘束して絶対に外に出さないという弾圧体制なんですよね。これをイコール言論統制になってはならないというふうに引っ張ってこられると、この規制のありようの問題がちょっと議論がしにくいんじゃないのかなと思ったりもするんです。
というのは、この法案も前提にしている教育あるいは啓発というのも、教育でいいますと、例えば子供たちが中心でしょうけれども、子供たちの人格に直接働きかけるというとてもデリケートで大切な営みなのであって、この教育の場面で例えば教師が子供たちに、何を許されない、なぜ許されない、それをなくすためにはどうしたらいいという、そうしたことを語りかけ、そしてその子たち一人一人のものに本当にしていく、これは教室の中で教えればいいというものではないですよね。教科書に書いてあるのを覚えればいいということじゃないじゃないですか。そうではないということを私たち桜本の取組でも学んできていると思うんですけれども、そういう意味では、教育というのはとても深い取組ですよね。
これを例えば地方公共団体立の、市町村立の学校などで行っていくことということになる、私立だって求めることになるでしょうと。というときに、何が許されないのかということを定義を明確にするということは、この教育においても、あるいは啓発においてもですけれども、これは大事なのであって、罰則の構成要件の明確性というのとは意味合いの違うものとして、私は、ヘイトスピーチの明確性、何が許されないのかをはっきりさせるということは大事だと思うんですよね。そこはいかがですか。

○西田昌司君

非常に大事な御指摘だと思います。しかし、そこを定義してとやったところで、私はこれは本当に外側、外側が出てくると思っています。
しかし、一番私は大事なのは、教育の話、啓発の話もそうですけれども、もう少しこれかいつまんで言うと、やっぱり思いやりだと思うんですね。自分がその相手の立場になったときにどうかということですよ。だから、ヘイトをしている人に私は申し上げたいのは、もしあなた方がヘイトをされる側にいた場合、何を感じるかですよね。何もしていない、平穏な、そして合法的に、適法に暮らしておられる方に向かってそういう言葉が浴びせかけられたときに、普通の人間ではやっぱり耐えられないですよね。そういうことは許されない。それを彼らやっている方が感じていただくべきなんですね。それを我々教育とか啓発という言葉で表しておりますけれども、だから、その相手の立場になって考える思いやりですよね、そういうところがやっぱり大事なことだと思うんです。
だから、それはまさにモラルの問題であり理念の問題であり、そして国民全体がそういう差別のない社会をつくらなければならないという、国民全体がそういう努力義務があるという、そういう意味でここに書かせていただいたのは、私が言いましたように、そういう思いやりの心、お互いさまなんですから、我々のこの日本の国で、地域社会で平穏に暮らしている、それはどなたにもあるわけですよ、そういう暮らすことができる権利は。それをしっかり守っていくというのを我々は目指しているわけであります。
したがいまして、余り細かい規定で、このヘイトの定義というのは私はこの法律の趣旨からすると小さな問題で、むしろ思いやりの心という方を我々は訴えるべきではないでしょうか。その方がより理解ができるんだと思うんです。

○仁比聡平君

法とは何かという、これ、委員長、是非我々の中でよく議論して定めていかなきゃいけないんじゃないでしょうかと御提案をしておきます。
私どもが与党の皆さんに御提案をしている定義というのを改めて申し上げると、ヘイトスピーチとは、人種若しくは民族に係る特定の属性を有する個人又は集団、例えば民族などというふうに呼ぶとして、その民族などの社会からの排除、権利、自由の制限、民族などに対する憎悪又は差別の意識若しくは暴力の扇動を目的として、不特定多数の者がそれを知り得る状態に置くような場所又は方法で行われる言動であって、その対応が民族等を著しく侮辱、誹謗中傷し、脅威を感じさせるものをいうといった定義、この一字一句こだわるわけじゃないんですが、こうしたものに置き換えてはどうかなという提起をしております。
それは、人種、民族による差別という人種差別撤廃条約にも通ずる理念を折り合える形でこの法文の中に盛り込むということ、それから、社会からの排斥、権利、自由の制限、憎悪又は差別の意識若しくは暴力の扇動という、こうした要素を明記することによって、人間の尊厳の根底にあるアイデンティティーを排斥しようとするもの、攻撃し排斥しようとするものであるというヘイトスピーチの本質をきちんと明らかにできるからだと私は考えているんですね、是非御検討いただきたいと思うのですが。
最後に、そうした定義を明確にしながら、行政機関が直接言論の違法性を認定するという仕組みは取らないという理念法なわけで、教育、啓発についても、これやっぱり違法であると。与党の皆さんの案でも、前文において、あってはならず、あるいは許されないことを宣言するというふうにおっしゃっているのであって、それはつまり違法だと、この法には反するよと言っていることと私はほぼもう同義なんじゃないかと思うんですけれども、先ほど来の議論のように禁止規定は置かないとおっしゃるんですが、これは、そのようにおっしゃって門前払いするつもりではないと思うんですが、これから行われる協議でもきちんと議論をするべき大きなテーマだと思うんですが、いかがですか。

○西田昌司君

このところは我々も一番公明党との間で、二党協議で一番実は詰めてきたところであります。禁止規定を置かない、あくまで理念法であると。それはなぜかといえば、法律で言論の自由を規定して禁止するということをやってしまうというのは、この法律に限らず、全ての法律において私たち問題だと思っております。
今、日本には、かつてはそういう治安維持法があったかもしれませんが、今そういう法律はありません。これからも作るべきではないと思っています。ですから、この法律においてもあえて禁止規定に係るようなものは作らなかったというところで、このところだけは我々譲ることができないと思っています。
しかし、かといって、禁止規定を設けていないからといってヘイトを許しているわけではない。これは、理念においてしっかり駄目だということを宣言して、そして教育、啓発、先ほど言ったように思いやりの心ですよね、そういうことをみんなが持ち合えば、結果としてこのヘイトを根絶できるのではないかと、そういう思いで作っているというところを御理解いただきたいと思います。

○仁比聡平君

禁止規定を置かない、あくまで理念法であると西田議員が繰り返されるんですけれども、野党案、民進党さんたちを中心にした案にあるように、理念法で禁止規定を置くというようなこと、当然あるんですよ。これ、だから、理念法だから禁止規定を置かないという理屈にはならない。それは論理必然ではない。やっぱりそのことを前提として、ここの点は本当に極めて重要な点ですから、大いに議論をしていかなきゃいけないと思っています。
私たち日本共産党は、民族差別をあおるヘイトスピーチを根絶するために、立法措置を含めて政治が断固たる立場に立つことが必要であると政府にも求め、私たち自身も政治家としてその先頭に立つべきだと、議論と運動を求めてまいりました。
今回、与党案が提出をされ、こうやって実質審議に入る中で、いわゆる野党案、そして与党案とともに刑訴法案がこの委員会で並行審議をされるという状況になっているのは極めて異例のことだと思うんですけれども、それは、何よりヘイトスピーチによる被害の深刻さとその根絶を求める当事者、国民の皆さんの強い声によって動かされてきた大きな一歩だと思います。
だからこそ、私たちは、このヘイトスピーチ根絶に向けた第一歩、一歩前進を実らせるために、今国会でより良い法律案をできる限り全会一致で成立をさせるという立場で、深い協議をしっかり行っていくべきだという立場でこれから臨んでいきたいと思いますので、よろしくお願いを申し上げて、質問を終わります。

○有田芳生君

民進党・新緑風会の有田芳生です。
昨日、高松高裁で画期的な判決が下されました。二〇〇六年に在特会などが徳島県教組を襲撃をしてヘイトスピーチのあらん限りを尽くし、さらには、そのときには拉致問題までもが利用されました。それに対して、昨日の判決では、損害賠償額が一審よりも二倍近くになったということと同時に、大事なのは、人種差別撤廃条約の精神に基づいて、在特会などの行為、言動というものが人種差別的であると、そう認定されたことです。
今日、与党案の審議が行われていて、今ずっと拝聴しておりまして、問題点、課題というのはかなり明らかになったというふうに思います。一つは、後で詳しくお聞きをしますけれども、与党案にある適法居住要件。
さらには、小川委員からも話がありました、私たちの野党案には明記をされていたヘイトスピーチは違法なんだと、そういう規定がないところなんですが、ただ、人種差別撤廃条約をこの問題を考えるときの精神にした場合、与党案にある、先ほども仁比委員が指摘をされておりました、前文のところで「このような不当な差別的言動はあってはならず、」というのがあり、さらに数行後に「このような不当な差別的言動は許されない」とあります。
許されないということを人種差別撤廃条約の規定に基づいてその精神を生かすならば、例えば人種差別撤廃条約第二条一項の(d)にありますように、国と地方公共団体はこういう差別を、人種差別も禁止し、終了させると。これは、日本が人種差別撤廃条約に加入をしているわけですから、国と地方公共団体の責務になっているんですよね。
ですから、その精神を生かすならば、この与党案の差別的言動はあってはならず許されない、法務省の言うヘイトスピーチ許さないと、そのことを条約の精神に基づいて判断するならば、これは違法だという理解でよろしいですね。提案者にお聞きします。

○西田昌司君

人種差別撤廃条約の精神は、我々、もちろん尊重しております。ただ、今おっしゃったように、禁止規定のことについては我々留保しているわけなんですよね。ですから、その部分についてその条約は、我々はこの禁止規定を置いてやるという形にはなっていないというふうに理解しております。

○有田芳生君 人種差別撤廃条約で日本政府が留保しているのは四条の(a)項、(b)項であって、今お示ししたのは第二条の一その(d)、各締約国は、全ての適法な方法、状況により必要とされるときは立法を含む、により、いかなる個人、集団又は団体による人種差別も禁止し、終了させると。
ですから、これからやはり人種差別撤廃条約の精神をこの与党案をこれから考えるときにも基本にすべきだなというふうに判断しているということを初めに指摘をしておいて、河野太郎国家公安委員長来てくださっておりますので、実効ある中身にしていくために何が必要なのかということについてお聞きをしたいというふうに思います。
その前に、一つ前提ですけど、今年三月二十七日、東京新宿の職安通りでヘイトスピーチのデモが行われました。そのとき、女性たち四人が、少なくとも私が確認しているだけで、傷害、けがを負いました。それに対して、警視庁新宿署にこの当の女性たち三人が氏名不詳の警察官三名を刑事告訴いたしました。警察官が刑事告訴され、さらには、私が確認しているだけでも既に現場検証なども行われておりますけれども、現場警察官が、そこにも写真を示しておきましたけれども、喉輪で女性の首を絞める、あるいは後頭部を打つというような事態が起きたことに対して、国家公安委員長としてどのような所感をお持ちでしょうか。

○国務大臣(河野太郎君)

この三月二十七日のデモに関しましては、今警視庁において事案の解明に向けて必要な捜査が行われているというふうに認識をしております。
デモですとかあるいはそのデモに対する抗議活動の中で違法な状況が発生をした場合には、この解消をしなければなりませんが、それに当たっては、関係者の皆様の安全にきちんと配慮できるように警察をしっかり指導してまいりたいと思います。

○有田芳生君

違法な状況が起きていないときに警察官によって喉輪が行われ、首を絞められた。明確な写真もあります、動画もあります。韓国のテレビでも放送されました。それについてどうお考えですか。

○国務大臣(河野太郎君)

今、この事案につきましては警視庁が捜査をしていると思いますので、個別の事案についてお答えをするのは差し控えたいと思います。

○有田芳生君

喉輪で首を絞めるというのがいいというわけはないというのが前提ですけれども、写真を示したので、上の方の二枚を御覧ください。左側は、今年の三月二十七日、東京都新宿区、職安通りですね、喉輪が行われた現場、右側は、四月十七日、岡山市で行われたやはり在特会の前会長桜井誠氏などが行ったヘイトスピーチの警備の状況です。
見ていただいたら分かりますように、国連の人種差別撤廃委員会で委員から何度も、日本のヘイトスピーチの現状については警察が差別主義者たちを守っているようにしか見えない、そのような現実があります。新宿署の左側の写真を見ていただいたら一目瞭然です。
一方で、右側は岡山県警ですけれども、ヘイトスピーチをやっている集団、それに抗議をする集団、警察官が交互にお互いを見ながら事故が起こらないような対応を取っております。更に言えば、東京新宿で女性たちが傷害を負ったのと同じことですけれども、岡山県警の四月十七日の現場の状況は、女性たちに対しては女性警察官が対応されているという、そういう丁寧な取組が行われていたんです。
これは私が確認するだけでも、札幌あるいは福島では、ヘイトスピーチをやる人たち、それに反対をする人たち、警察官交互に見ているものですから、先ほど申しましたように、国連の人種差別撤廃委員会の委員の皆様のように、日本では差別をしている人たちを警察官が守っているというふうにしか見えないんですよね。だから、そのようなきめの細かさが大事だというふうに思います。
今日は、資料のもう一枚に、四月十九日に院内集会、今こそ人種差別撤廃基本法の実現をパートフォー、ここに中根寧生さん、中学二年生ですけれども、発言をされたその全文を御紹介をいたしました。その中学生の目から見ても、桜本にやってきたヘイトスピーチ集団は、ゴキブリ朝鮮人、たたき出せ、死ね、殺せと警察に守られながら叫んでいました、さらに、警察はそんな大人を注意してくれませんでした、さらに、警察がヘイトスピーチをする人を守りながら桜本へ向かってきました。やっぱりそのように見られている現状があるんですよね。
一方で、河野大臣にお聞きをしたいんですけれども、やはり警察官にヘイトスピーチあるいはヘイトクライムについての教育というのがなされているのかどうかなんですよね。差別をやっている者と差別に反対する者、どっちが悪いのかというような基本的なことから、例えばアメリカなんかでは、連邦レベル、州レベル、地方自治体レベルでヘイトクライムについての研修プログラムがある。それで皆さん研修をなさっている。あるいは、ニュージャージーでは、新任の警察官には全員にヘイトクライム対応の歴史などの研修が行われている。だから、日本でもうずっとこういうヘイトスピーチあるいはヘイトクライムが起きている現状の下で、これからの課題として、警察官に対してもそういった教育が必要だと思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(河野太郎君)

警察職員に対しましては、人権の尊重あるいは関係法令に関する教育のほか、デモ現場における対応などに関する教育をこれまでも行ってきたところでございます。
こうしたヘイトデモのようなものが多く見られるようになった今日、その実情に合わせた教育をしっかりやってまいりたいと思っております。

○有田芳生君

先ほど、小川委員からもこれで、与党案でヘイトスピーチのデモを止めることができるんだろうかと率直なお考え述べられたというふうに思います。
そのことについて幾つか細かくお聞きをしていきたいんですが、まず現実の問題として、東京の新大久保、コリアン、在日コリアンの方々が商売をなさっているところに、二〇一三年の二月、三月を頂点にしてずっと毎週のようにヘイトスピーチのデモが行われてきました。しかし、多くの抗議あるいは警察の指導もあったんでしょう、二〇一三年の九月をもって新大久保でヘイトスピーチのデモはできなくなっております。
しかし、不思議なことに、二〇一五年の十二月二十日、そして写真でもお示しをしました今年の三月二十七日、東京の新宿の職安通りで、ずっと焼き肉店とかコリアンショップがあるその横をヘイトスピーチのデモが通っていったんです。私たちもそこで抗議をしましたけれども、そういうときに、先ほど大臣は、公安条例に基づいてデモの許可制で、実質上届出制であって、したがって最高裁も合憲だとしているというふうに答弁されました。
しかし、明らかに在日コリアンたちが御商売なさっている、日本人も含めて多くの買物客がいるところに、そういう確実にヘイトスピーチをやるデモが通ろうとしたときに、デモの指導、コースの変更というのはなされるべきだと思うんですが、いかがでしょうか。

○国務大臣(河野太郎君)

交通の円滑な確保ですとか、違法行為、犯罪行為を防止する観点から助言をするということはございますが、最終的には申請者の意思が尊重されることになりますので、条例等の要件を満たしていれば、これは許可をしなければならないということになっております。

○有田芳生君

それは現実とは違いますね。新大久保でヘイトスピーチのデモができなくなったのは、警察の方から明らかなデモコースの指導があったからだと理解していますが、まあ細かいことは御存じないでしょうから、そういうことができるんだということを指摘をしておいて。
もう一つ、先ほど小川委員に対して国家公安委員長は、最高裁も合憲だとしているから、デモの許可制であって、表現内容のいかんで不許可とすることはできないとおっしゃいました。しかし、この与党案がもし法律になったとき、表現内容を根拠にして不許可にできないにしても、表現内容というものを特定して、これを使わないことを条件にして許可をするという運用できるでしょうか。

○国務大臣(河野太郎君)

それはなかなか難しいと思います。

○有田芳生君

そうしたら、ヘイトスピーチのデモはなくなっていかないんですよ。公安条例を変えるとか、あるいは公園を使用したいというときに公園の使用条件を変えるとか、あるいは約束をして条件を付けて、それを破った場合には次はデモもさせない、あるいは公園使用もさせない、そういう運用できるんじゃないんですか。

○国務大臣(河野太郎君)

犯罪行為の防止やあるいは円滑な交通の確保ということを考えて助言等をすることはできますが、最終的には申請者の意思を尊重して許可をしなければならぬということになっております。

○有田芳生君

京都朝鮮第一初級学校襲撃事件の最高裁の決定でも、ヘイトスピーチは何かということが、人種差別撤廃条約に基づいて具体的にこれはヘイトスピーチだという確定はしているんですよ。だから、そういうことと、今度与党案が通ったときの各地の公安条例あるいは公園使用条件というものが変わっていかなければ、ヘイトスピーチのデモは終わらないですよ、確信犯でやるわけですから。西田委員、いかがでしょうか。

○西田昌司君

先ほどから答弁をさせていただいておりますが、我々のこの与党案には禁止規定はございません。しかし、理念、前文でしっかりそのことをうたい、国民として差別のない社会をつくっていこうという責務を我々は負っているわけであります。
それが成案されました場合は、当然のことながら、警察においてもこの法の趣旨が警察の現場の警察官にも教育され、そのことを受けて、この法律で禁止はできなくてもほかの様々な法律があるわけでございます、そして騒音防止条例から、侮蔑じゃなくて侮辱罪ですよね、それから様々なそういう法律を駆使して私は警察が取締りもやってくれるものと期待しております。

○有田芳生君

繰り返しになりますけれども、もう一度西田委員に、ヘイトスピーチのデモをなくしていく、減らしていくイメージとしてお聞きをしたいんですが、例えばこの与党案が成立をしたとする、そうすると、先ほども言いましたけれども、ヘイトスピーチをする集団というのは、まず公園の使用許可を求める、そしてさらにはデモ申請を公安委員会に行うわけですよね。だけど、そこで、例えばこの間の岡山にしたって拉致問題をテーマにしているわけですから、それは河野大臣がおっしゃるように許可されますよ。だけど、現場にいればヘイトスピーチ丸出しのデモが続くわけですよ。あるいは、二年前ですけれども、東京の新宿でも、公園使用許可で、そこでは集会やってはいけないという条例になっているんだけれども、実際には集会やってからデモに向かっているんですよね。新宿区の職員に、あれ、約束違うじゃないと言っても、いや、そうなんですけれどもと言うだけで口を濁してしまう。
だから、そこで、この法案が成立したならば、やはりそういう公園使用許可あるいはデモ申請についても、これは各地方自治体が決めていくことでしょうけれども、やはりこれまでどおりのやり方はやりにくくなるということを広げていかなければいけないと思っているんですが、そのイメージとして、西田委員、いかがでしょうか。

○西田昌司君

これも再三答弁させていただいておりますが、この法律でスピーチの内容で規制するということはできないわけであります。しかし、ヘイトスピーチ自体を我々はあってはならないと、こう宣言しているわけでありますから、その教育を受けた警察官が、この法律では禁止できなくても様々なほかの法律の違反規定が、もしそれに抵触する行為があれば、当然のことながら警察官がその警察権を行使してそれなりの対応をしてくれるものと思っております。
そして、そういうことがされた場合、今度はそのことについて、多分相手方は確信犯でありますから、自分たちの言論が不正に止められたと、そういう形の裁判があるかもしれませんよね。そういう裁判を通じて、今度は、我々が作ったこの法律が、裁判官にも、国権の最高議決機関がヘイトスピーチというのは駄目だということを言っているわけでありますから、そのことを受けた判例が重なってくると、そういうことの積み重ねが結局はヘイトスピーチというものを社会から根絶させていくことになるのではないかということを期待しているわけであります。

○有田芳生君

河野国家公安委員長に一般的なイメージとしてお聞きをしたいんですけれども、今、多くの当事者を何年にもわたって苦しめてきているヘイトスピーチの街宣やデモなんですけれども、それをなくしていく、少なくしていくためにはどんなことができ得るとお考えでしょうか。

○国務大臣(河野太郎君)

このヘイトスピーチというのは大変恥ずべき行為であるというふうに認識をしておりますが、現在もこうしたデモに当たっては違法行為がないように助言をしているところでございます。こうしたデモの中で刑罰に触れるような違法行為、犯罪行為があれば、あらゆる法令を駆使して厳正に対処するよう警察を指導しているところでございまして、引き続きしっかりとやってまいりたいと思っております。

○有田芳生君

そこで、提案者にお聞きをしますけれども、違法行為があればそれは現行法で対処できるわけですけれども、ヘイトスピーチというのは、特定の個人になされる場合もありますけれども、不特定多数の集団に対して行われるわけですよね、民族あるいは国籍も含めてですけれども。そのときに一番大きな課題だろうと思いますのは、やはり適法居住要件だと思うんです。
今日の委員の皆様方には、昨日、法務大臣も含め、河野太郎国家公安委員長も含め、この数年間行われてきた適法居住要件に関する映像、ヘイトスピーチの実態をお配りをいたしました。西田委員も見てくださったということで、ほかの委員の方からも見ましたよということをお聞きしましたけれども、要するに、例えば今年、与党案が出てから二日後に浦和駅の東口で行われた外国人犯罪対策本部なるもののヘイトスピーチだと、短いですから御紹介しますけれども、こう言っている。日本に不法に滞在する外国人に対する糾弾、不法滞在外国人の追放、外国人犯罪者の糾弾、こうしたものはね、ヘイトスピーチだとかヘイト規制とか、そういったものはね、全くあの規制の対象外ですと。
つまり、不特定の多数に行うものがヘイトスピーチなんだから、その不特定多数の人たちが適法居住しているかどうかなんていうのは分からないじゃないですか。いかがでしょうか。

○矢倉克夫君

私もDVD見させていただいた、本当にこういう言動は許せないなという思いをしたところであります。
今、問いは、そのような不法な滞在した者に対してのものでも該当するというような問いということでよろしいんでしょうか。

○有田芳生君

時間の関係で早口になってしまうものですから、もう一度お尋ねしますと、ヘイトスピーチというのは不特定多数の人に向けられているものですよね。だけれども、その不特定多数の人たちが適法に居住しているかどうかというのは誰が分かるんですか。

○矢倉克夫君

まず、そもそも今回の法律は、適法に居住するというような文言が今入っております。ただ、これは、立法事実として我々が想定していたのは、まさに在日の方々に対してのこのような許されない言動、そのような形からこういうような形もしました。ただ、何度も申し上げているとおり、理念法として、こういった言動が許されるような社会はあってはならないと、排斥するような言動はあってはならないという理念を掲げて、その理念を実現するためにあらゆる施策を取っていくということをこれ訴えたわけであります。
ということで、今おっしゃってくださったようなデモが対象にならないというようなことではございません。その不特定の者が適法かどうかというところは、判断という部分は、そういう部分では必要もないという理解であると思います。

○有田芳生君

皆さんにお配りしたDVDの中で、昨年十二月六日のこれは鶯谷で行われたときのシュプレヒコール、一つだけ御紹介しますと、不法入国外国人の在日を日本からたたき出せ、これは与党案では許されるんでしょうか、許されないんでしょうか。

○矢倉克夫君

許されない言動であると思います。

○有田芳生君

ですから、与党案、素直に読むとやはりそういう疑問が出てきてしまうんですよね。だから、そこのところをやはり穴埋めをしていって実効性のあるものにしていかなければならないというふうに私は考えております。
私たちは六項目にわたる修正要求をお出しをしております。日本共産党からも修正要求が出ておりますので、今日の審議などで明らかになって、ああ、そこはそうだなというところがあれば、是非ともより良い方向に持っていっていただきたいというふうに思います。
矢倉委員にもう一点だけ確認をしておきたいんですが、その適法居住要件についてですけれども、不法入国者イコール非適法居住者ではないと、そういう理解でよろしいですね。

○矢倉克夫君

不法入国者イコール非適法入国者、それは概念の範囲として一体ではないということで、それはそういうことであると思います。

○有田芳生君

だから、不法入国者、つまり皆さんの法律案では適法に居住する人を対象にしているわけですよね、これ、法案は。適法に居住するその出身者又はその子孫に対して排除することを扇動する不当な差別的言動はあってはならないということですよね。だから、適法に居住する人でなければ、ヘイトスピーチ、だけど、いけないとおっしゃっているわけですよね。だから、そこをやはりもう少しきっちりと区別をされるべきだと思うんですよ。

○西田昌司君

先ほどこれも質問に答えたんですけれども、要するに、適法に居住していない違法入国者の方々がもしおられたら、それは当然入国管理法で本国に送還なり法的な措置がされるべきことだと思っています。しかし、だからといって、その方々に罵声を浴びせることが許されるものかといえば、そうではないということなんです。
ですから、その方々に対して、例えば私がヘイトをする側として、私は違法入国者、不法入国者に対してけしからぬと言ってがなり立てることは許されるんだというような論法をインターネット上で言われたりなんかしているようでありますけれども、それは全く通用しないと。我々は、そういうヘイトスピーチはもちろん許されるものではないということをこの法律の適用するときに考えなければならないということです。

○有田芳生君

この間の質疑でもお尋ねしましたけれども、与党案が出て直ちに反応があった大きな特徴の一つは、ヘイトスピーチをもう職業的にやっている連中がお墨付きをもらったと、そう言っているわけなんですよ。だから、そこのところをしっかりと対応しなければ、ヘイトスピーチをやっているレイシストたちに抜け道を与えることになると思うんですよね。ですから、そこをはっきりさせたいんですけれども。
難民申請者の中には不法入国をせざるを得ない方が、これは日本だけじゃありませんけれども、シリアの問題を含めて国際問題になっている難民問題というのはそういう本質ですよね。そこに対して、適法居住者じゃないからヘイトスピーチ幾らでもやっていいんだというふうにやっている連中は理解してしまっている、そのことについてどうお感じですか。

○矢倉克夫君

まず、反対解釈という手法そのものがおかしいんであります。これは、申し上げましたとおり、禁止規定というのは、何人も何々してはいけないとか、そういう禁止規定である場合はここまでが公権力が禁止をする範囲の言論だという、そうすると、それ以外は禁止されないんだねという反対解釈はあり得るかもしれないですけど、これは理念法として、まさにこのような社会をつくっていこうと、こういうような排斥するような言論はなくしていこうという社会を理念としてうたって、それに向けたあらゆる施策をやっていくというところであります。だから、そもそもが、立て付けとして、ここに適法と書いてあるからそれ以外はやっていいんだというようなことをお墨付きを与えたということは法としてはあり得ない話であります。
その上で、今の難民申請の部分などは、まず適法かどうかというところの問題としてちょっと限定してお答えをさせていただければ、これは当然いろんな事情があるから不法に来られるという部分もある。ただ、それも仮滞在という立場もありますし、一時庇護上陸とか様々な立場でいらっしゃっているわけであります。そういう部分ではまさに適法というふうにこれは言っていいというふうに思います。

○有田芳生君

だから、適法に居住するということをお書きになったからそういう疑問が生まれ、さらにはヘイトスピーチの職業的な人たちがお墨付きをもらって、これから幾らでもこれまでどおりできるんだと、結果的にヘイトスピーチを行う人たちに対して本当にお墨付きを与えてしまっているというふうに捉えられているという、現実なんですよ、それは。
ですから、適法居住要件という問題は、要するに、誰に対してもヘイトスピーチは駄目なんですよ。だから、それはもう人種差別撤廃条約に基づいて、それは基本の基本なんですよね。だけど、この法案のままだと、今のままだと非正規滞在者に対する差別が助長されるおそれもあるからこういう質問をしているんです。
ですから、もう一点確認したいんですけれども、矢倉委員あるいは西田委員、どちらでも構いませんけれども、要するに、今お二人がおっしゃっていることを違った言葉で言うならば、在留資格に関わりなく外国の出身であることを理由とする不当な差別的言動は許されない、そう理解してよろしいですか。

○西田昌司君

難民申請とか今おっしゃいましたけれども、我々がなぜ適法かというのを書いたかというと、まず、先ほど言いましたように、やはり違法に不正に国内に入国されること自体を我々は認めるわけにはいかない、これは当然のことだと思います。それを認めてしまうと、これは法律として成り立たないし、我々の国民生活自身の秩序安寧が保たれないおそれも出てくる。ですから、これはやっぱり適法かどうかというのは、この入国管理法等様々な法律の適用はしっかりしなければならないと思っております。
しかし、逆に、だからといってそういう方々に対してヘイトをすることを、それを公然と認めるということでもないわけなんですね。ですから、これは、先ほど矢倉委員から説明ありましたけれども、我々が理念法としていることと関連しているわけでございますが、要するに、この理念の掲げているところを拡大解釈をして、そういう方々も含めて我々はヘイトは許さないということは、国民の言論の自由とかそういうことを制限するものではありません。むしろ、モラルをしっかり高めて日本人として恥ずべき行為をしないようにしようという、こういう倫理規定でありますから、そのことに拡大的に解釈することには何ら問題はないと思っています。
逆に、今おっしゃっているような議論というのは反対解釈論をされているわけですけれども、それはあくまで禁止規定、皆さん方が禁止規定を設けるべきだというところから発想をされている発想でありまして、そういう禁止規定を設ける場合には、禁止規定があるからそこから外れたものはやってもいいということになるじゃないかという、そういう解釈されているんですが、我々は禁止規定を設けていませんから、そうじゃなくて、あくまで理念でありモラルであり啓発であると、こういうことですから、ここは拡大的に解釈をしていただいて私は対応すべきだと思っております。

○有田芳生君

適法居住要件を入れているから、ややこしくなるんですよ。
じゃ、違った視点からお尋ねをします。
適法に居住するかどうかというのは個々人が、例えば難民にしても脱北者でもそうですけれども、入ってくるときは不法な形かも分からないけれども、個人個人が日本の法律に基づいて適法な手続に従って最終的には裁判所が判断するものですよね、違いますか。だから、対象とする集団を適法に居住するかどうかという条件で線引きするところから混乱が生じているわけで、やはり多くの当事者の方々もこの適法居住要件というのが一番気になるというふうにおっしゃっている。
もう時間来ますので、だから、そこのところも、今日四時からだそうですけれども、与党の協議の中で私たちの修正についても是非とも検討していただきたい。
もう一つ、第二条の、先ほどもお話出ましたけれども、定義についても修正を是非ともお願いしたいというふうに思います。
先ほどるる指摘がありました第二条の定義の中では「公然とその生命、身体、自由、名誉又は財産に危害を加える旨を告知するなど、」ということで、排除、扇動、不当な差別的言動をいうという第二条の定義なんですが、法務省がこの間発表されましたヘイトスピーチに関する実態調査報告書、ここの中では、ヘイトスピーチについての定義はいまだ未確立だけれども、しかし法務省の文書の中では、先ほど小川委員も指摘をされました、一つは特定の民族などに対する排斥、そしてさらには生命、身体等に危害を加える、もう一つ、三番目の類型として特定の民族等に属する集団を蔑称で呼ぶなどして殊更に誹謗中傷する内容、その三点目が与党案では明確ではないんですよね。
ですから、私たちはそこは修正要求として、是非とも定義はそこのところは変えていただきたいというお願いをしておりますので、その検討も是非ともお願いいたします。いかがでしょうか。

○西田昌司君

しっかり検討したいと思います。

○有田芳生君

もう時間が来てしまって、岩城法務大臣あるいは人権擁護局長などにもお尋ねをしたかったんですけれども、もう一つ与党案に課題があると思いますのは、インターネット対策なんです。
私たち野党の法案には、インターネット上のヘイトスピーチ、あるいは差別の扇動というものをどう対処していかなければいけないのかという、なかなか難しい課題ではあるんですけれども、やはりこれも新しい時代の課題として迅速に対応しないと差別の扇動がまき散らされたままになる。在特会などを始めとするヘイトスピーチをもう職業的にやっている人たちが、この間、数年間にわたって、今でもインターネット上で差別の扇動、ヘイトスピーチが流れているわけですから、これに対する的確な対応というものもこれはお互いに考えていかなければいけないことだと思いますが、いかがでしょうか。

○西田昌司君

大変問題があるということは承知しております。これはヘイトに限らず、様々な分野でインターネット上の情報というのは問題があるということは承知しておりますが、しかし同時に、非常にこの規制というのは難しいということもあり、これからの課題だと考えております。

○有田芳生君

仁比委員も語っていましたけれども、この法案審議、そして私たち野党案も含めて、人種差別撤廃条約をこの日本でようやく具体化していく半歩、それが始まったというふうに思いますので、これからさらに、いろんな委員会を含めて、日本から人種差別、ヘイトスピーチをなくすためにお互いに努力をしていきたいということをお伝えして、質問を終わります。

190回 法務委員会(刑事訴訟法改正案参考人質疑)

2016-04-26 国会質問議事録

○矢倉克夫君

矢倉克夫です。
四人の参考人の先生方、貴重なお話、本当にありがとうございます。私からは、まず渕野参考人に二問お答えを、その後、西村参考人にちょっとまずお伺いもしたいと思います。
まず一点目ですが、通信傍受、私、やはりこのようなことを考えざるを得ないような理由というのは、当然ですけれども、話のあった組織犯罪が非常に増えている、とりわけ上層部に対しての立証というのが難しいという現実はあるという部分はあると思います。渕野先生、先ほども、今回の対象犯罪について罪名という観点から御意見をいただいたわけであります。今回、御意見としては、新しく入った罪名のものには軽微な犯罪が多いからというようなこともあったと思うんですが、他方で、おれおれ詐欺であったり児童ポルノであったり、非常に組織的な犯罪となり得る罪名もあると。そのような事案について、じゃ、現実にどのように立証していけばいいというふうにお考えであるのか。これがまず一点目であります。
もう一点目は、やっぱりプライバシーとの関係、個々のプライバシーの侵害というところ、これはもう大変に重視をしなければいけない問題であります。他方で、それの担保として令状主義というのがある。今回新しく加わった組織性の要件も含めて、令状でしっかりと記載していって裁判官の目で見るというところで適正を担保するというところでありますが、先生の御意見は、その令状主義自体が機能をしていないと。先ほども無関係なものも入るというところもあったわけですけれども、じゃ、例えばその令状の特定の在り方にしても、現実に、なかなかこのときに関係する通信を得るとかそういうことはやっぱり分からないから、ある程度概括にしなければいけない。じゃ、どの程度の令状の在り方であれば機能しているというふうにお考えであるのかをちょっと御意見をいただいて、それを受けて西村参考人から御所見をいただければと思います。

○参考人(渕野貴生君)

まず、組織的犯罪について上層部までたどり着くための立証をどうするかということですけれども、これは、二つの観点からお答えをしたいと思います。
一つは、やはり現在、捜査機関が現在の刑事訴訟法の下で与えられている捜査権限を本当に的確に、そして最大限に活用したときに、本当にこういった組織犯罪について解明できないというような事実があるのかどうかということをまずはしっかりと検証する必要があるかと思います。
現在、捜査機関は、伝統的な捜索、差押えだけではなくて、例えばサーバーに対する差押えというような新しい手法、これは二〇一一年だったと思いますけれども、の刑事訴訟法改正で新たに認められた、サーバーからデータを送ってもらってそれを差し押さえるというような、そういった手法も与えられておりますので、こういった手法を駆使して本当に摘発できないのかということをやはり一件一件きちんと検証していく必要があるであろうというふうに思います。
それから、令状主義との関係で、どこまで令状に書き込めば特定したことになるのかということですが、これは、率直に申しますと、特定をすることは不可能であるというふうに考えます。どうしても会話というのは、まだ発生していないものに対してそういう会話が行われるかどうかの判断を強いるものでありますので、令状だけで特定性を完全にカバーするということは非常に極めて難しいというふうに思います。であるからこそ、そこを、規範的な令状の厳格な要件だけでは絞り切れないというところを立会い等の物理的な障害を設けて濫用にわたらないようにするという、これはいささか変則的なやり方ではあるんですけれども、そうしなければ結局適切なコントロールができないという通信傍受の特性を踏まえて議論をする必要があるというふうに考えます。

○矢倉克夫君

じゃ、今の御意見を受けて、西村参考人、御所見をいただければと思います。

○参考人(西村幸三君)

私は、二年前にもやはり訪米調査をいたしまして、通信傍受によって組織犯罪がどのように上層部まで摘発される流れになるのかということをヒアリングしてまいりました。
アメリカの捜査機関が現在非常に重視しているのは、いかに組織犯罪の上層部の犯罪収益を剥奪してしまうか、当然、懲役刑だけではなくて、いかに剥奪するかということを重視していると。それには、実行犯段階と上層部あるいはその周辺者の人のつながりをどれだけ解明するかが決定的に重要であるというふうに捜査官はほぼ口をそろえて言われております。
その人と人とのつながりを、じゃ、通信傍受だけで実現できるかというと、実はそうではありません。でも、通信傍受は決定的に重要な役割を果たしています。
例えば、通信傍受だけではなくて、アジトを突き止めるGPS傍受なども併せて、あるいは張り込みですね、物理的な張り込み、これによってアジトを突き止める。そうすると、そこに出入りする者、そのアジトの賃貸借を契約している者、車で乗り付ける者、じゃ、その車の所有者は誰なのか、その車に乗った者は誰なのか、こういうことが次第次第に解明されていきます。振り込め詐欺のアジトを突き止めてほしいと私がさんざん警察に言っても、できないんですという、もうパンクしてできないんですというのが十年前の話でした。
これは一つの本当に例えなんですけれども、通信傍受が万能ではありません。でも、大変重要な一つの捜査手段としてアメリカの捜査官は、もう伝統的な捜査手法として、張り込みなどの一つとしてこれは必要なんだと、組織犯罪を本当に解明して上層部の逃げ得をなくすのにはやはり必要な捜査手法であると当然のように言われていたのが大変印象的でした。
以上です。

○矢倉克夫君

ありがとうございます。
西村参考人にもう一点、令状の関係、もし何かございましたら御所見をいただければ。

○参考人(西村幸三君)

通信傍受で拡大されました罪状、今回の通信傍受法において拡大されました罰条につきましては、あらかじめ定められた役割分担に基づく数人の共謀という規定になっております。これは大変厳格な定めだと考えます。もちろん、団体が何なのかとか団体が継続しているのかという要件までは、これは入っていませんね。
ただ、通信を利用して犯罪が遂行されているその団体を特定せよといっても、それが本当にその団体なのかが分からない中で通信傍受を始めないと、現に行われている振り込め詐欺、恐喝、こういったものに取りかかることすら許さないと。団体を証明しなさい、一体どういう団体で、それがどういう継続性を持つのか疎明しないと摘発してはいけませんと言っている間に大量の振り込め詐欺が迅速に遂行されます。迅速な着手、これをしていただかないといけないわけです。
そういう意味では、余りに過剰な要求をしたら捜査が当然潰れてしまう、できなくなってしまう。だから、振り込め詐欺の被害者も、当然、適用罰条どころか、余り厳しくしたら結局救済されない。立会人の確保をしないといけなくて、日程調整に数週間を要するこれまでの現状を放置しては、結局、やり得、逃げ得を許すということになるわけです。
令状の要件というのは、こういう立法事実をよく考えて決めていただかないといけないというふうに私は考えております。

○矢倉克夫君

ありがとうございます。渕野参考人もありがとうございます。
川出参考人にちょっとお伺いしたいんですけど、今の渕野参考人の御意見の中で、立会人の位置付けについて、特定の要件との関係で微妙なバランスを取るための立会人の位置付けというような御意見があったわけですけど、現行法に基づいてこの立会人はどのような理論的な位置付けであるのか、今の渕野参考人の御意見について、御所見をいただければと思います。

○参考人(川出敏裕君)

立会人がいることで事実上の障害になって、本来的に特定が難しい通信傍受というものなので、それが、何というんですか、事実上抑制されているという御意見だったんですが、まず、例えば特定が十分にできていない、それで本来正当な理由のないような会話についてまで傍受されてしまうと、そういう前提で、ただ、その立会いがあることで事実上それが制約されるといっても、結局、それは無関係な通話が聞かれるという部分がなくなるわけではありませんから、その意味での総量規制というのは、私は、元々の出発点というのと必ずしも整合していないというふうに思います。
それともう一つは、意見の中で申し上げましたが、事実上障害があるということによって補充性が担保されているというのは、そもそも補充性の要件の解釈としてはおかしいだろうというふうに思いますので、そこは渕野先生と意見を異にするということになると思います。

○矢倉克夫君

最後、浜田参考人、いろんな法律を作る上で、やはり当然ですけど、捜査機関が信用できないから法律を作ってはいけないというわけにはこれはいかないとは思うんですね。
ただ、他方で、しっかりと法律を作って制度はしっかり確立しながら、捜査機関の濫用というのは、これはしっかりと確認しなければいけない、この両方でやっていかなければいけないと思うんですが、特に、そういう部分での今後の運用の在り方について、大変時間が短くて申し訳ありません、一言ちょっと御示唆をいただければと思います。

○参考人(浜田寿美男君)

法の人間じゃないのでかみ合う話なのかどうか分かりませんけれども、これまでの自白の問題に関して言いますと、任意性、信用性で判断するというところで、その部分をくぐり抜けた形で冤罪事件が頻繁に起こり、かつ、それが再審段階に至ってもなおかつ正されないままに至っている事件が相当あるというふうに思うんですね。
その意味では、任意性、信用性判断でチェックするという在り方が、これまでの在り方はある部分破綻をしているんじゃないかと私は思う。その点で可視化がなされるというのは非常に大事なことだと思うんですが、もう一つ、それに加えて、先ほどちょっと言ったことですけれども、捜査官は、無実の主張があったときに、それの裏付けをするということを、つまり消極証拠に対して誠実に対応するということを是非具体的な、こういう訴訟法という法律で規定できるかどうか分かりませんけれども、推定無罪という原則があるぐらいですから、無実の方向の主張に対する裏付けを、言わば一つの文化としてだけじゃなくて一定の規制として、その主張があったときにはそれを裏付けることをしなきゃいけないというようなことを組み込んでいただけたら随分変わるのになというふうなことを思っております。

○矢倉克夫君

丁寧にありがとうございました。

【矢倉かつお】決算委員会(ソーシャルインパクトボンドの導入等)_20160425

2016-04-25 矢倉かつおチャンネル

190回 決算委員会(熊本地震の早期復旧/ソーシャル・インパクト・ボンド/政府開発援助等)

2016-04-25 国会質問議事録

○矢倉克夫君

公明党の矢倉克夫です。よろしくお願いいたします。
私からは、行政的課題解決に向けての民間資金の活用の意義等、また特に、とりわけ交通インフラ、そちらをハード、ソフト一体で開発していくことの意義を主にお伺いしたいと思うんですが、まず初めに、その前に、熊本の地震発災から十日余りとなりまして、今現在でも震度一以上の地震がもう九百回近く起きているという状態でありまして、現地で被災されている方は本当に御心痛等がある状態であると思います。我々公明党も、連日のように現地入り、国会議員、地方議員、させていただいております。
国土交通省を始め関係省庁の方々の御尽力で交通インフラ等は徐々に徐々には復旧はしているところでありますが、まだ例えば支援物資もなかなか届かないというような状況もある。今既に、車の方でまだお暮らしになっている方もいらっしゃるという状態であります。住まいの確保というのも、今後また現地のニーズも踏まえながらしっかりと検討していかなければいけないところであると思います。
まず、国土交通大臣より、早期の復旧、そして対応についての御決意をいただければと思います。

○国務大臣(石井啓一君)

熊本地震によりまして四十八名以上の方が亡くなられ、千三百名以上の方が負傷されました。そのほか、熊本県によりますと、避難生活等における身体的負担による疾病により亡くなったと思われる方が十二名いらっしゃるということでございます。お亡くなりになられた方の御冥福をお祈りするとともに、被災された方に心よりお見舞いを申し上げます。
被災地では、現在でも約六万人の方が避難をしておられ、避難所での不自由な生活等による影響でお亡くなりになる方も出るなど、二次的避難所と応急的な住まいの確保が急務となっております。
二次的避難所の確保としまして、九州全域の旅館、ホテルへの被災者の受入れを関係団体に要請をし、二十一日より熊本県内において高齢者、体調の悪い方を中心に順次受入れを開始しているところであります。
応急的な住まいの確保につきましては、被災建築物の応急危険度判定、御自宅へお戻りになれる可能性があるかどうかということの判定ですが、これは、昨日までに益城町及び菊陽町において当初予定分を完了いたしまして、八市町村全体において一万八千百四十二件が実施済みとなっております。
公営住宅等につきましては、四月の二十二日時点で、全国で八千六百五十九戸の提供を発表し、九州では百九十二名の方の入居が決定をしております。
応急仮設住宅の建設につきましては、熊本県においては西原村の建設候補地五か所を確認をし、さらに、県の優良住宅協会において約百戸、プレハブ建築協会において約二千九百戸について工事に着手する準備があることを確認をしております。
また、交通インフラにつきましては、地震発生直後には高速道路、鉄道、空港の多くが通行止め又は運行休止となっておりました。
高速道路につきましては、最大七路線五百九十九キロメートルで通行止めでありましたが、復旧工事の進捗を見極めながら順次一般開放の見通しを発表しておりまして、九州自動車道につきましては四月中に全線を一般開放する見込みとなりました。
九州新幹線につきましては、現在、熊本―新八代間の応急復旧工事が全力で進められておりまして、作業が順調に進めば試験走行を経まして数日中に全線で運転が再開される見込みとなっております。
熊本空港につきましては、十九日から民間旅客便の運航を再開し、現時点で約七割、一日五十便程度を運航しているところであります。
このように、交通インフラにつきまして、今後も九州自動車道の全線一般開放や九州新幹線の全線運転再開など、一日も早い復旧に努めてまいります。
このほか、リエゾン、連絡員五十九名を二県十三市町村等に派遣し、被災自治体において情報収集や支援ニーズの把握を積極的に行っております。また、テックフォース、緊急災害対策派遣隊等を北海道から沖縄まで全ての地方整備局等から四百五名を派遣し、ドローンや無人施工機械等を活用しながら、自治体所管施設の被害状況調査の代行、救援ルートの確保、約一千百か所の土砂災害危険箇所の点検など、全力で被災自治体の支援に取り組んでいるところであります。
今後も、国土交通省といたしまして、住まいの確保を含め、被災地の復旧に全力で取り組んでまいりたいと存じます。

○矢倉克夫君

ありがとうございます。引き続き、大臣の力強いリーダーシップをよろしくお願いいたします。
今日は決算委員会であります。決算委員会はお金の使われ方を審議するところでもある。とりわけ我々は決算の参議院と言われている。任期も長いし解散もないというところで長期的な視点に立ったお金の使われ方というのを議論をする場としても使命も与えられているというふうに理解もしています。
長期的な課題に即したお金の使われ方ということで今日一つ注目したいのが、ソーシャル・インパクト・ボンドであります。私、先日もこれ予算委員会で取り上げたんですが、ちょっと時間がなくて途中で止まってしまいましたので、こちらをまず先にやらせていただきたいというふうに思います。
資料一枚目から御覧をいただきたいというふうに思います。
こちらは幾らか簡略化した、また一部省略したソーシャル・インパクト・ボンドの概念図なんですが、要するに、ボンドと言われているんですけど、これは有価証券の債券ではございませんで、このような、ここに書かれている行政や出資者、NPOとか利用者、これ辺りで結ばれる成果に連動した形の投資契約であります。
何に投資をするかといえば、ここに書いてあるとおり、再犯率の低下や医療費の削減、養親探しなど、こういった社会的な課題、これに対しての成果が生じた場合についてはそれに応じて行政のコストが一部削減されると。その削減されたコストを一部出資者に償還をするというような、そういうような仕組みになっている、まさに官民連携の資金の出し方の一つだと思います。
このような革新的な取組なんですが、二枚目見ていただいて、こちらはイギリスで世界で初めてソーシャル・インパクト・ボンド、これを導入したときの概要であります。軽犯罪者再犯防止プログラムということで、再犯防止のために導入されたのが一番最初なんですね。私、党の方でも再犯防止強化プロジェクトチームの事務局長をさせていただいております。日本でも再犯防止は法務省の少ない予算の中で一生懸命やりくりしている、その中でどうすればいいかと悩んでいるときに、世界ではこういう形で民間資金を使ってこのような社会的課題を解決しているんだという、これは目からうろこな事案であったわけであります。
三枚目見ていただければ、日本の方でもだんだんと取組が拡大をしている。横須賀ではこれは特別養子縁組、福岡では認知症予防、尼崎では就労支援という形であります。このように、可能性を秘めたプロジェクトであります。課題は、どうやって社会的課題解決の成果を数量化、定量化して計算をしていくのかというような基準作りであるというふうに思っております。
今申し上げた課題の部分も含めて、まずこの点に関しての検討状況含めて、ソーシャル・インパクト・ボンドに対しての現状の取組とともに、この取組についての期待という部分について内閣府の方はどのように御認識をされているのか、答弁いただければと思います。

○政府参考人(浜田省司君)

お答え申し上げます。
現在、国、地方の財政が厳しい制約にある中にございまして、複雑化、多様化いたします社会的課題を解決いたしますためには、行政の対応のみでは限界がございます。民間の資金、人材、ノウハウを活用することが不可欠な状況にあると思っております。
こうした中で、御指摘ございましたいわゆるソーシャル・インパクト・ボンドにつきましては、既に経済産業省あるいは民間団体がパイロット事業に取り組んでおりますほか、厚生労働省の方でも検討を開始される段階にあるというふうに承知をいたしております。昨年の骨太の方針におきましても、いわゆる公共サービスのイノベーションを進めていくということが非常に重要なテーマとなっておりますので、こうした社会的課題の解決を図っていく新しい手法の一つとして我々としても大変注目をいたしているところでございます。
このソーシャル・インパクト・ボンドを含めまして、民間の資金を社会的課題解決に呼び込んでまいりますためには、問題解決に向けました活動の成果を定量的、定性的に把握し評価をすることが不可欠でございます。こうした社会的インパクト評価と言われる取組が民間公益活動のインフラとして定着していくことが必要であると考えてございます。
このため、内閣府におきましては、昨年末に共助社会づくり懇談会の下に社会的インパクト評価のためのワーキンググループを設けまして、この基本概念でございますとか普及に向けた課題、対応策をまとめた報告書を先般取りまとめましたところでございます。
この報告書におきましては、具体的な対応策といたしまして、例えば評価普及のために民間主体の推進フォーラムを立ち上げるということ、あるいはシンポジウムの開催をするというようなことなどが提言されていまして、現在、民間におきましてその実施に向けた検討が進められておるところでございます。
内閣府といたしましても、こうした取組に積極的に参画をいたしますとともに、評価事例を蓄積するために、本年度、この評価のためのモデル事業に取り組むことといたしているところでございます。
以上でございます。

○矢倉克夫君

今、内閣府の方から、このソーシャル・インパクト・ボンド、イノベーションを進めていく上でもというような御説明もあったところであります。評価の在り方についても今着実に進められているというような状況をお伺いもいたしました。
それで、麻生大臣に、まずこのソーシャル・インパクト・ボンド、ちょっとSIBと略させていただきたいと思うんですけど、SIBを例に、まず私からは、民間資金を行政サービスの提供の原資として活用する意義についてちょっと感じることを述べさせていただいた上で、大臣には後ほど、行政的課題解決に向けて民間資金を活用することの意義、どのようなものとお考えかをちょっとお尋ねしたいというふうに思っております。
まず、私、ソーシャル・インパクト・ボンドを通じて感じた民間資金を使う意義、一般的に感じることは、国家財政が非常に厳しくなっている中、それを歯止めをするという期待、増え続ける社会保障についての対策費という部分での期待というのはあると思います。ただ、それだけではなくて、先ほど内閣府からも話もありました。私が感じたのは、民間資金活用をするということの本質というのは、社会的課題解決に向けた様々な手法を生み出していくイノベーションの創造力だというふうに理解もしております。
その内容を二つほどちょっと申し上げたいというふうに思うんですけど、まず、行政がお金の出し手であると、やはりどうしても限界があるんですね。これは、行政というのは平等や公平でなければならないと。あと、税金を扱っている部分で失敗も許されないという雰囲気の中で、お金を掛けるにしても、ここに掛けるべきだというところを必要以上に選別をせざるを得ないようなところがやはり可能性としてはあるんだなというふうに思います。
それで、資料、また二にちょっと戻っていただきたいと思うんですけど、先ほどの資料を見て、イギリスの再犯防止の事例なんですけど、これ見て思うんですけど、元本償還の条件というところがどういうものかといえば、受刑者を三つのグループに分けて、一つのグループでも再犯率がこのプログラムを受けなかった同種の犯罪者と比較して低下をするかどうかというところがこれは償還になっている。
これは、あるサービスを受ける人と受けない人というその二つの部類に分かれて比較検証をしていく。逆を言えば、一部の人にしか行政サービスは受けれないというような事態であるわけですけど、これも聞いた話では、当初もイギリスでは、こういった一部の人にだけ受益させるようなプログラムというのは、やはり税金を使うとか、平等、公平を重んじるという立場からなかなか踏み出せなかったようですけど、やはり民間の資金を使うということで踏み出すことができて、結果、下に書いてあるとおり、全国平均に対して再犯率が二三%下回ったというのがあります。
重要なことは、やはり行政などでは、発想にとらわれない柔軟さで資金を投じることができるという、これが民間資金を使う一つのいい面でもあるかなというふうに思います。あともう一個は、ちょっと長くなって恐縮なんですけど、やっぱり民間から資金を集めるためには、行政成果を先ほど内閣府が言ったように見える化しなければいけないと。その結果、効果が上がらなかった場合なんですけど、原因を検証することができて、その次につなげることができる、失敗から学ぶことができるというところもこれは大きいと思います。
こちら、ちょっと資料にはなくて恐縮なんですけど、同じような再犯防止の事例で、アメリカの方でライカーズ島という刑務所に収監されている人、それについて施されたプログラムがありました。再犯減少を一〇%達成できれば払い戻すという条件だったんですけど、最終的には八・四%しか、八・四%でもすごいと思うんですけど、できなかったと。投資としては払戻しができないのでこれは失敗だったわけなんですが、ただ、客観的な状況を数値として把握して、ここまでしかできなかったということが見えることで、その後の課題解決にもやっぱりつながっていくという。
行政がお金を出したプロジェクトだったら、そこまで検証はしないでそのまま続けていくか、それとも知らないうちにやめていくのか、やはりそういうような事態がある。これは民間がやったから、客観化をして、それについての事後のいろいろと検証というのができるようになるというところであります。ちなみに、こういうようなお金を集めるには、当然、ただの経済価値を生むようなことだけを目的としているお金だけではなくて、社会的な課題というものを公益実現をするというお金を集めなければいけないわけですけど、こういった性質のお金を民間から集めることで失敗から学ぶということも可能になると。
長くなりましたが、ちょっとまとめますと、結局、民間資金の活用というのは、政府負担の肩代わりというだけではなくて、行政的課題解決のために民間からお金を受けるという流れをつくる、加速させていって、それがサービスを提供する側の人々のリスク許容度を広げていくと。言わば人々の行動に働きかけていってイノベーションを生んでいく余地というものをどんどん与えていく、そういうものであると思います。
組織とか活動に関しての学びや改善というものを生んでいくというふうに、こういうところに民間資金を活用する意味があるというところを私は申し上げたいというふうに思うんですが、そこで麻生大臣にお尋ねいたしますが、行政的な課題解決に向けてこういった民間資金のお金の流れをつくる、活用するということについてどのようにお考えか、御所見をいただければと思います。

○国務大臣(麻生太郎君)

PFI、プライベート・ファイナンス・イニシアティブという似たような、民間の金を集めて公的な施設を造るプライベート・ファイナンス・イニシアティブというものが今あります。このソーシャル・インパクト・ボンド、これソーシャル・インパクト・ローンとも言うんですが、これはイギリスで別名SILとも言っているんですが、これ始まってまだ五、六年しかたっていないんだと記憶しますが、これが定量的な成果をどう計算するかというところが、これは矢倉先生、一番要求されているところで、結果をきちんと検証できるようなものにしか使えないということになってくるんだと思いますので、出している人はこれ大体五百万ポンドですから、あれは五億円か五億四千万円ぐらいの金を集めたんだという話でしたけれども、こういったようなものをきちんとやっていくときに当たっては、少なくともいわゆる客観的な評価を担保できるかとか、いわゆる定量的にきちんとできるかとかいうところが一番継続的にやっていくときに難しいので、今、刑務所の再犯率の話を例に取られましたけれども、何もこれに限らずいろんなものに応用できると思いますので、公設民営とかいろんな形で、税によって行われる歳出に頼らず、若しくは公的な資金、税金に頼らず、こういったものでやった方がより効果的に、効率的に、柔軟にやれる、いろんないい面もあるという面はもう間違いないと思っておりますが、傍ら、今申し上げたような成果の評価というところがどうやって評価するかというのをきちんとするシステムをきちんと確立しないと、これは金を出している方のいわゆる投資なり、若しくは篤志家の方々の立場としては納得できないということになると非常に話が込み入るという点も、お金を預かってこれを運営する立場の方は、役人も入れたりNPOも入れたり、いろんな人が入れてやった場合の責任等々がきちんとやるという制度を確立しておくところが一番肝腎かなと、聞いていてそう思いました。

○矢倉克夫君

ありがとうございます。民間資金を活用することが一定の意味はあるという前提の上で、今課題というところを御指摘いただいたところであると思います。
おっしゃるとおり、どのようにこれを定量化していくのかというところは大きな課題でありまして、今、内閣府の方でもいろいろとやってくださっている。それはなぜかといえば、やはり投資をする人が、その投資についての意欲というのを、まずは投資をしようと意欲をさせるためのインフラとして必要だというところであります。
次に、ちょっと麻生大臣にお伺いしたいのが、まさにそのような環境整備をする上では、やはり国がしっかりと関与もしていかなければいけないところはあるかと思います。最初からモデルケースができてそのままできるというよりは、いろんな事業者が関わる中で国が環境整備をするところはやっぱりしっかり関わっていくという、その辺りの役割分担もこれは一つである。
今おっしゃってくださった評価のところはそうであると思いますし、他方でまた、投資家がお金をしっかりとこれは出すような形に仕組みをするには諸外国もどういうことをやっているかといえば、やはり投資家の投資意欲を減退するようなものであってはいけないと。それで、例えばアメリカなどでも、ブルームバーグの財団とかがお金も入れて、投資家だけではなくて、そこで一緒にファンドをつくったりであるとか、また宝くじとか、そういうような資金を入れていくとか、いろんなクッションを入れて投資家が入りやすくするというような部分もこれは必要である。当然、評価が定まるというところがまず大前提にあるわけですけど、その上で資金の出し方というところもまた考えなければいけないし。
そこで、ちょっと一つお尋ねしたいのが、諸外国では、例えば最初の段階で、いろんなパイロット事業をやる中で、成果によらず行政が一定の額を支払うスキームであるとか官民ファンドをつくるとか、そういうような部分もあるわけなんですが、このような事業を自治体の方にも理解もいただく、いろんな方々に理解をいただくには、やっぱりいろんな成功事例をどんどん作っていかなければいけない。成功事例を作るためには案件がどんどんと進まなければいけない。そのためには、行政がある程度の呼び水をもって人にいろいろ来てもらうというような仕組みもやはり必要であるかと思います。
これから日本も、先ほど資料三の方で話したいろんな事業がある、パイロット化されていく事業がある中で、成功に導くために、そしていろんな方が関与していただくという呼び水のためにも、また、国がいろんな部分での初動の部分では関与というところも必要であるというふうに理解もしておりますが、麻生大臣の御所見をいただければと思います。

○国務大臣(麻生太郎君)

投資をする側なり、ローンなり、まあボンドとかいろんな表現があるんでしょうけど、こういったものをやる方の側に立てば、そこに少なくとも政府がかんで、政府のファンドが一部入っていますというのは一つの安心料みたいなもので、ああ、これ政府もやっているのか、何だ財務省がかんでいるのか、ああ、経産省がかんでいるのかとかいうようなものは、間違いなく一つの安心感を与えるネタにはなりますよ。まだそれくらいの信用はありますから、経産省でも。だから、そこは大事にされておかにゃいかぬところだと思いますので。
これは法務省で刑務所の再犯の話をしておられましたけれども、日本の場合は、これはアメリカと再犯の勘定はもう全然比率も違いますし、犯罪になって刑務所の中に入っている人の人口比が全く違いますので、アメリカと日本の場合は。なかなかそういった例としては少ない例なのかもしれませんけれども、少なくともこういったようなもので組むときには、間違いなく定量的なものという、先ほど第三者の評価という点については、これはやっぱり民間だけでやるよりは、政府なり公的機関のものを一部入れたものの方がより金も集めやすいし、評価というものに対して納得もしてもらいやすいという両面の効果はあるというのはうまく使ってしかるべきなので、これは法務省でいろいろ考えられるんだと思いますが、何も法務省に限った話じゃなくて、いろんなところで使える話だと思います。

○矢倉克夫君

大臣から、法務省に限らず、私も、これ全省的にいろんな部分で該当するようなサービスもあれば、ないと思います、その辺りの選別も必要だと思うんですが、それをやった上で、しっかりと着実にいい流れのお金の流れができる上でも国の方でもしっかりと関与をしていくべきであるし、そのような御趣旨でお話をいただいたと思っておりますので、引き続き是非御検討をいただければと思います。
それでは、時間もかなり少なくなってきておりますが、ちょっと次の質問に行きたいと思います。
資料でいうと、これ四番目を飛ばして五番目に行っていただきたいんですけど、こちらは、私、ODAの委員派遣で主にインドとベトナムに行ってまいりまして、インドでは百年に一度の大雨に遭って、身をもって現地でのインフラ整備を感じていたわけですけど、これ、ベトナムで広まっている写真であります。
これは何だと思われるかもしれないんですけど、上が日本企業が造られた橋であると。下は、特段国名は言いませんが、ほかの国だと。言わばこういうような写真が、これがどのような比較かという部分はまた詳細は分からないんですけど、このような写真が現地に広まっているというのは非常に意味があるなと。要するに、日本の技術はすばらしいということを私たち日本だけではなくて現地の方もよく理解もしてくださっている、これは誇らしいなというふうに私、思いました。
とともに、途上国の開発の利益は何か、現地の声は何かという、これ開発の文脈では追求するわけであります。時折、その開発の文脈というところでは日本企業の進出というものを考えてはいけないというような意見もひょっとしたら出てくるかもしれない。だけど、そうではなくて、やっぱりその開発の文脈においても、これはやっぱり優れた日本企業の海外進出を意図的にでも探求していく観点というのは私は重要なのではないかなという理解でおります。とりわけ、今こういった交通インフラとかの部分、人の安全、安心に関わるというようなところは大きいなというふうに思います。
それで、ちょっと時間もありませんので、国交大臣にお伺いもしたいんですが、今申し上げたような視点の中で、じゃ、どうやって開発の文脈で日本の優れた技術を外に出していくのかということを追求するそのやり方なんですけど、お金を付けるという部分では、国際開発協力の中でアンタイド化とか、いろいろそういう議論もある、なかなか制約がある中ではありますけど、私は、お金だけじゃなく、やはり人の力を、日本の優れた技術、能力を持っている人の力をどうやって現地の開発につなげていくのかという視点が重要であると思います。特に制度構築ですね。例えば、現地の方とお会いしたときには、現地の入札の在り方なんかも総合評価にするためにいろいろと検討されている日本の方もいらっしゃいました。
あと、やはり技術協力であります。ベトナムに行ったんですけど、ベトナムのハノイの鉄道が、これ日本の企業の方々が技術協力をした、システム等も含めて技術協力をしたことでフランスではなく日本になったという、そういう事実もある。一体として、パッケージとして支援をするということがやはり現地のニーズにも合うし、最終的には日本の優れたものがしっかりと広がっていくというようなことになるかと思っております。
国交大臣にお伺いもして、できれば麻生大臣にも、じゃ、国交大臣にちょっとお伺いしたいと思うんですが、やはりこういった川上からのソフト面、制度構築とか人材育成という、技術支援というもの、これも含めた総合パッケージを通じての支援というものが非常に重要であるというふうに思っておりますが、大臣の御所見をいただければと思います。

○国務大臣(石井啓一君)

インフラの海外展開は、海外の旺盛な需要を取り込み、我が国経済の活性化を図るため、政府を挙げて取り組んでいる課題であります。この課題につきましては、ハード面の整備に併せて、制度構築、人材育成まで含めたソフト面の支援を行うことが我が国の強みとなっております。
国土交通省といたしましては、建設関連制度や都市計画制度、自動車検査・登録制度等の制度構築や鉄道、道路、港湾など多岐にわたる分野における相手国政府等へのJICA専門家の派遣、相手国政府の研修員の受入れなど、積極的に取り組んでいるところであります。
今後とも、ハード面と、制度構築、人材育成等のソフト面をパッケージとしてより効果的に組み合わせ、インフラ海外展開をより一層強力に推進してまいりたいと思っております。

○国務大臣(麻生太郎君)

ハードだけではなくてソフトというような漠然とした言い方だと分かりにくいところはあろうかと思いますが、オペレーション、運転をやる。
新幹線というのを例に引かせていただければ、できて五十年間で、何百万本電車が通っているんだか知りませんが、一日の平均の遅れは全交通量足して五十一秒ですから、今に至るも。五十年間で一日の遅れが五十一秒ですよ。こんなものほかにありませんから。ほとんどもう正気の沙汰じゃないと思うぐらい正確に動くんですが、それが今、日本の持っている新幹線の技術。しかし、それは、技術をやるのは電車がすごいとか運転手がすごいとかいうんじゃなくて、それをオペレーションするという、そこがソフトの一番のものだと思うのが一つ。
今度、タイでODAの鉄道が取れていますけれども、タイがシーメンスを蹴って日本に取った最大の理由は駅中です。駅中、分からぬ人も多いと思いますので、それはちょっと別のときに調べてみてください。駅中、これがタイ政府が飛び付いた最大の理由です。したがって、これで就職ができる、一般の人が就職ができるというのが一番大きな理由。
だから、そういったものを含めて、日本の持っている技術というのは日本人より外国人の方が評価しているという点が多いと。私どもが今後とも大事にしておかなきゃならぬところはそこかなと思っております。

○矢倉克夫君

力強いお言葉をいただきました。
技術支援、制度構築等、人の派遣の部分についてもしっかりとまた財政措置も含めて是非御対応いただきたいというところをお願い申し上げまして、質問を終わりたいと思います。
ありがとうございます。

かつおニュース VOL8

2016-04-25 かつおニュース

【矢倉かつお】法務委員会_20160421

2016-04-21 矢倉かつおチャンネル

190回 法務委員会(刑事訴訟法改正案)

2016-04-21 国会質問議事録

○矢倉克夫君

こんにちは。公明党の矢倉克夫です。よろしくお願いいたします。
今日は、まず可視化についてお伺いをしたいと思います。
一昨日、参考人の方、四方いらっしゃいまして、まず、この問題について私の立場がやはりこの方と合っているなと思った部分、基本的なところは河津参考人がおっしゃっていたところが私も同意見のところが多かったと思います。今回の可視化については、やはり録音、録画が義務付けされたということ、そして捜査の全過程についてという形で規定をされているというところ、これは大きな一歩であるなと。河津参考人もおっしゃっていたわけですが、これを一歩として今後どのように広げていくのかというところに期待を込めた上で、方向性としてはこの方向であろうかというふうに私も認識をしているところです。
他方で、一昨日も四人の方のお話をお伺いをしていて改めて印象的だったのは、河津参考人と大澤参考人は賛成の方向、小池参考人と桜井参考人は反対という方向であった。ただ、可視化自体はやるべきだという御意見があったわけですが、じゃ、何が違うのかというと、やはりこの可視化の制度についての検察、警察、捜査の姿勢に対しての信頼というか、そういうところが基本的に違っていたのかなというふうに思ったところであります。法案の内容もそうなんですけど、まずはこの法律について運用される方々がどういう姿勢を持って、背景の思想的なものもどういうようなものを思いながらやっていらっしゃるのかというところが確認をすべき重要なポイントではないのかなと、一昨日の参考人の質疑をして思った次第であります。
それで、ちょっと質問の通告の順序を少し変えさせていただきたいと思っております。通告の順でいうと四つ目、五つ目という形になるか、項目としては、まず可視化と取調べについてのところをお伺いをしたいと思うんですが、まずは警察庁の方にお伺いをしたいと思います。
今回の可視化は、趣旨としては、取調べに対しての過度な依存を排する趣旨であるということであります。他方で、過度な取調べに対しての脱却というところ、ただ、全体として、やはり取調べというものそのものは引き続き有用だという御判断もあるというふうに理解もしております。
この可視化以後も、取調べというものについてはどのような役割があると御認識をされているのか、警察庁から答弁いただければと思います。

○政府参考人(三浦正充君)

御質問にもございましたように、過度に取調べや供述調書に依存をするということは、これはもとより避けなければならないわけでありますけれども、一方で、被疑者の取調べは、故意や目的など犯罪の主観的要素、共犯関係における謀議状況等の解明、真犯人のみが知り得る犯罪の全容の解明、供述によって新たな客観的証拠の発見に至ることなど、事案の真相解明のため非常に重要な役割を果たしているものでございます。新制度の下においても、証拠収集手段の適正化、多様化を図りつつも、必要な範囲で適正に被疑者の取調べを行うことは引き続き重要と考えております。
警察といたしましては、適正に捜査を進めつつ、事案の真相解明を図り、安全、安心を願う国民の期待に応えてまいりたいと考えております。

○矢倉克夫君

今、警察庁の取調べに対しての今後のまた改めての姿勢というのがありました。
法務省の方にお伺いをしたいと思うんですが、そのように引き続き取調べというのはある、ただ、それに過度に依存をしてはいけない、このような思想の下で法改正ということであります。
今回の法改正、その可視化という部分に限られずでも結構ですが、この法改正によって、全般的なものも含めて、過度な取調べからどのように脱却されるというふうに認識をされているのか、答弁いただければと思います。

○政府参考人(林眞琴君)

今回の法改正、法律案のまず出発点というものが、やはり検察の在り方検討会議の提言、それからそれに引き続きます法制審議会の審議であったかと思います。そこで指摘されておりますのは、やはり現在の捜査、公判、これまでの捜査、公判が、取調べとさらに取調べで作られる供述調書、これに過度に依存した状況にある、そして、このような状況は取調べにおける手続の適正確保というものが不十分になったり事実認定を誤らせるおそれがある、こういうふうに考えられると、このような指摘があったわけでございます。
そこで、このような状況を改めて、公判廷において事実が明らかにされる刑事司法、こういったものをつくるためには、まず一つには、捜査段階では取調べのみに頼るのではなく、適正な手続により十分な証拠が収集されるように、取調べを含む捜査全般の適正を担保しつつ取調べ以外の適正な捜査手法をも整備すること、すなわち証拠収集手段の適正化、多様化が必要であるということ、さらに、公判段階におきましては、必要な証拠ができる限り直接的に公判廷に顕出されて、それについて当事者間で攻撃、防御を十分に尽くすことができるようにすること、すなわち公判審理の充実化が必要であると、こう考えられるに至ったわけであります。
こうしたことから、本法律案に盛り込まれている様々な諸制度はそれぞれ、証拠収集手段の適正化、多様化という点と公判審理の充実化という点という、この目的に資するものでございまして、それらが一体として刑事司法制度に取り入れられることにより取調べ及び供述調書に過度に依存した状況が改められて、より適正で機能的な刑事司法制度を構築することができるものと考えているところでございます。

○矢倉克夫君

公判廷というところから説明がありました。その公判廷に今まで、過度に依存した取調べ、ある意味不適切な取調べも含めたものがあった上での証拠というのが出てきたと。その根源は、やはり取調べというものの適正化をまず図らなければいけないというような部分であったというふうに私は理解もしております。
今のお話も聞いていて、やはりこの法律の中で一番肝は可視化の部分であるなと。可視化をすることで捜査の適正化というものも図っていく。ただ、従来取調べで依存をしていたところが、逆に様々な立証の部分で、真実発見のところでは意味もあったところも、効果という部分もあったのかもしれないけど、そこが縮減されることで、それが真実発見に害しないような形で証拠収集の多様化も図るというような全体の流れもあって、肝はやはり可視化であるなというふうに理解もしているところであります。
それで、録音、録画における取調べの可視化の効果を改めて私の方で理解をしている限りお伝えをしたいと思うんですが、今申し上げたとおり、一つは、取調べ可視化によって、それが捜査機関等にもいろんな心理的な影響等も与え、それが最終的には適正化につながるという点が一点目、二点目が、可視化、録画等をしたことにより供述調書の任意性の立証に有益であるという点、この二点であるというふうに理解もしております。ただ、何度も申し上げる、基本は捜査の適正化というところであり、供述調書の任意性の立証等が目的ということを余りに強調するのは法改正の趣旨が伝わらない部分も出てくるんじゃないかなというところは一つの問題点であります。
その上で、次の質問、ちょっとまた法務省の方にお伺いもしたい可視化の位置付けというところですが、今回の法改正ですけど、この可視化の規定が置かれているのは証拠能力のところであります。証拠能力のところにこれ規定されているということを捉えて、これは結局、自白調書を使うということ、これをどのように立証に使っていくのかとか、そういうところを基本にした制度設計であるというような御批判もある。捜査の適正化というよりは、違う方向で制度設計をしているのではないかというような御批判もあるところであり、これは供述調書への過度な依存を排するという議論の出発点と異なるのではないかという御意見もあるわけですが、それについてはどのようにお考えでしょうか。

○政府参考人(林眞琴君)

本法律案の取調べの録音・録画義務は、法制的な観点から、供述調書の任意性が争われたときの録音・録画記録の証拠調べ請求義務を前提として、その確実な履行に備えて捜査機関に録音・録画記録を作成しておくことを義務付けるものとして位置付けております。
これは、その理由でございますが、被疑者の供述の任意性等の的確な立証判断に資する、あるいは取調べの適正な実施に資する、こういった録音、録画の効果は、いずれも記録すること自体から生じるわけではなく、事後的に記録内容が吟味される、こういう録音・録画記録の利用又はその可能性によるものでありますから、そのことからすると、法制的な観点からは、まずは検察官に公判段階における録音・録画記録の証拠調べ請求を義務付けるということが合理的であり、その上で当該義務の履行を確保するための措置として捜査機関に捜査段階における録音、録画を義務付けることが合理的であると、このように考えられたことによるものでございます。
こういった法制的な理由から、法律案の刑事訴訟法三百一条の二におきまして、まず第一項として取調べの録音・録画記録の証拠調べ請求義務を規定し、そして第四項として取調べの録音・録画義務を定めておりますが、録音・録画義務は原則として逮捕、勾留中の取調べの全過程について録音、録画を義務付けるものでありまして、このような法制的な位置付けいかんによってこの録音・録画義務の範囲でありますとか例外事由の解釈、判断に影響するものではなく、この制度が取調べの適正な実施に資する、こういうものであることに何ら変わることはないわけでございます。
本法律案の取調べの録音・録画制度は、被疑者の供述の任意性等についての的確な立証を担保するとともに、さらに取調べの適正な実施に資する、こういった二つのことを通じまして公判審理の充実化及び証拠収集手段の適正化に資するものでございまして、取調べ及び供述調書に過度に依存した状況を改めるという趣旨にかなうものであると、こう考えているところでございます。

○矢倉克夫君

大臣にちょっとお伺いしたいんですが、今の林刑事局長からのお話ですと、録画をすること自体が適正化ということではなく、やはり事後にその立証の観点から、という側面から最終的に録画ということが検察官等の立証活動にも影響を与え、それが捜査の適正化につながるというような御意見だった、これは私も理解もするところであります。ただ、これは、あくまで立証のためのものがというところはこれは手段であり、目的はやはり捜査の適正化であるなという理解が私はしております。
昨年の本会議で、私は代表質問で要するに今回の可視化のところについての趣旨をお尋ねをいたしたところです。捜査の適正化と任意性の立証の有用性という二つがあるが、やはり基本は捜査の適正化というところに力点を置くべきだというような質問をさせていただいたんですが、そこの辺りはまだ明確には御答弁をいただいていなかったわけですが、大臣の御所見としてはどのようにお考えでいらっしゃいますでしょうか。

○国務大臣(岩城光英君)

取調べの録音、録画には、お話がありましたとおり、被疑者の供述の任意性等についての的確な立証に資する、あるいは取調べの適正な実施に資するという有用性があり、これらはいずれも重要なものであると考えております。
本法律案の録音・録画制度の趣旨、目的は、これらの録音、録画の有用性を我が国の刑事司法制度に取り込むことによりまして、より適正、円滑かつ迅速な刑事裁判の実現に資することにありまして、真犯人の適正、迅速な処罰ととともに誤判の防止にも資するものであると、そのように考えております。

○矢倉克夫君

ありがとうございます。まさに、真犯人の発見と誤判の防止、両方これやらなければいけないというところが私も先日の質問では申し上げたところであり、そのところはまさにそのとおりであるかなと思っております。
その上で、この可視化の位置付けというところを政府として改めてどのようにお考えなのかというところに関連してまたいろいろお伺いもしたいと思うのですが、今お話もあったこのような今回の法の体系を取ることで、供述調書を作成したものだけがまず録音・録画資料の証拠調べ請求の対象となるということには明文上はなっていると。でありますので、この部分で、証拠調べの関連で可視化というものがこれは担保されているわけですけど、これは法務省の方にお伺いもしますが、それ以外についてはどのように担保されているというふうに御理解されているか、答弁いただければ。

○政府参考人(林眞琴君)

御指摘のとおり、本法律案におきましては、捜査機関に対してまず、供述調書を作成するかどうかを問わず、原則として逮捕、勾留中の被疑者の取調べの全過程を録音、録画することを義務付けるとしておるわけでございます。
〔委員長退席、理事西田昌司君着席〕
もとより、捜査機関としては、取調べのこれは任意性が争われた場合の取調べ請求義務の対象範囲いかんにかかわらず、そのような法律の規定、すなわち全過程の録音、録画、こういうものが義務付けられており、これを遵守することになると考えております。その意味で、任意性の立証に資するというこの録音・録画制度のメリットのみならず、やはりその手続の適正ということに資する制度であるということがこの全過程の義務付けであるというところに表れているものと考えております。
その上で、では、その取調べ請求義務が掛かっていない取調べにおける録音・録画義務、これがどのように守られるのか、あるいは守られない場合にどうなのかと、こういった御質問でございますけれども、まず、証拠調べ請求義務の対象は確かに任意性の争われた供述調書が作成された取調べの録音・録画義務とされているわけでございますが、各回の取調べで、取調べを開始する時点ではその取調べで供述調書を作成する予定が仮になかったとしても、急遽、供述調書を作成する必要が生ずるということはあり得るわけでございます。その場合に、録音・録画記録の証拠調べ請求義務違反となって、その取調べで作成した供述調書が却下されてしまうことがないようにするためにも、取調べ開始時点で、供述調書作成の予定の有無にかかわらず、捜査機関といたしましては取調べ開始当初から録音、録画を各回において実施しておかなければならないことになると考えられます。
〔理事西田昌司君退席、委員長着席〕
そして、検察官は、任意性が争われた供述調書が作成された取調べの録音・録画記録の証拠調べ請求をすれば証拠調べ請求義務を履行したということにはなりますけれども、それによって直ちに供述調書の任意性が立証できるわけではございません。検察官は、立証責任を負う立場として、例えば供述調書を作成した取調べの前日の取調べにおいて利益誘導があったなどとして供述調書の任意性が争われた場合、その場合には、その前日の取調べの録音・録画記録、これを用いるなどして供述調書の任意性を的確に立証していくことが求められるわけでございますが、前日の取調べについては録音、録画を義務に違反して実施していなかった場合、検察官としては任意性についての最も的確な立証方法であるところの録音・録画記録を用いることができなくなる上に、合理的な理由なく録音・録画義務に違反しておれば、そのこと自体が取調べの任意性を疑う事情として考慮され得ることとなるわけでございます。
したがいまして、録音・録画記録の証拠調べ請求義務の対象が限られておりましても、全体の全過程における必要十分な録音、録画が行われないということにはならないものと考えております。

○矢倉克夫君

今のお答えとまた関連するところであります。重なった質問になるかもしれませんが、まさに今のような現実的な実務の上からの可視化の拡大というところは、これは期待をされるところである。
一昨日、小池参考人が、やはり自白調書の取調べの関連のみで、これまた法務省にお伺いします、関連でちょっとお伺いもしたいんですけど、やはりこのような録音、録画ということが書かれていると、結局、捜査としても録音、録画しているのはその取調べ請求する供述調書の部分だけになるんじゃないかというような御懸念があったわけですが、これについてはどのようにお考えでしょうか。林局長、よろしくお願いします。

○政府参考人(林眞琴君)

ただいまも御答弁いたしましたけれども、録音・録画義務を欠いていた場合、果たしていなかった場合、まずその任意性の立証という点で非常に大きなリスクを負うことになるわけでございまして、その点でも当然、その録音、録画というものを必ず履行するということになろうかと思います。
その上で、任意性の立証に必要な場合にのみ、その当該取調べにおいて録音・録画義務が履行されたかどうか、これだけが公判で問題になるわけではございませんで、やはり証拠開示を通じまして、被疑者、被告人に対していつ、どういう取調べが、何回取調べが行われたということは開示されますし、その上で実際に録音・録画記録媒体が存在するかどうかということも開示されるということになりますので、その意味で、問題となっている供述調書が作成された取調べ以外の取調べにおける録音、録画の履行状況につきましても当然公判の中で問題とされ得るわけでございますので、捜査機関といたしましては、法定の義務を当然履行しなければそういった将来の公判でそのようなことが問題とされ得るということから、履行はされるものと考えております。

○矢倉克夫君

実際の立証戦略の中で様々なケースを考え、そのケースに資するというところからやはり可視化が、法定は一部かもしれないが、様々な部分まで広がっていくという実務的な感覚であったと思います。
一昨日も大澤参考人などが、検察側の立証の観点のみならず、例えば弁護側なども、供述の任意性等が争われた場合、その争われた事情が、それによっては、供述調書そのものではなく、その供述調書をする前に任意性を争うような事情があるとすれば、その事実についての録音、録画なども公判前の整理手続とかで弁護人からはこれを請求してくる可能性もある、そういう場合も含めてやはり考えなければいけないというような御趣旨もあった。その部分でも更に可視化はやはり広がっていく方向ではあるというふうに私は理解もしております。
その一方で、今のような立証の観点からとともに、これはまた後ほど大臣に政治の決意として、このような可視化を通じて、現場の立証の感覚というのみならず、これをしっかりと捜査の適正化につなげていくというような部分での御決意的なものはちょっとまた後でお伺いもしたいと思っておりますが、ちょっとまず先に進めさせていただきたいというふうに思います。
その上で、今のような一部だけ切り取る、供述調書に関しての部分での録音、録画だけを請求してきて、それだけが担保されるんじゃないかというようなところは一つ現実の立証の中ではあるかもしれないんですが、他方で、一昨日懸念があったところは、小池参考人からもう一つとして、抜け穴として言われるところは例外事由のところであると思います。一昨日も話もありました。
例としては、例外事由の中で、こちらも法務省の方にお伺いもいたしますが、例外事由の中で、言われているところは、記録に必要な機器の故障、このような場合は可視化ができないと。ただ、それだけではなくて、その他やむを得ない事情によりという部分の例外もございます。もう一つは、被疑者による拒否。拒否をした、録音、録画は嫌だと明示的に拒否をした場合に加えて、その他の被疑者の言動により、記録をすると被疑者が十分に供述できないと認めるときという要件がございます。
これについて、とりわけ被疑者の拒否の部分については、大澤参考人もこの辺りの解釈というところに関しては、拒否とほぼ同じような、供述できないということが大事な、私は黙秘しますから供述しませんというのではなくて、やはり録音されているから供述したくてもできませんと、そういうふうに取れるような拒否なりあるいは言動だというような一つの解釈の指針も出されていたわけですけれども。
この二つ、その部分について、やはり捜査機関の広範な裁量に委ねられるのではないか、これが結局、部分可視化を導く根拠にもなるんじゃないかというような御懸念があったわけですが、そのような解釈、御懸念について法務省はどのようにお考えか、答弁いただければと思います。

○政府参考人(林眞琴君)

まず、捜査機関がこの例外事由に当たると判断して録音、録画をしなかった場合、これにつきましては、公判でその例外事由の存否が問題となり得ます。その場合には、それが裁判所の審査の対象となります。
裁判所においてこの例外事由が存在したかどうかを裁判所の立場で判断しますので、捜査機関側としては、その段階で例外事由が確かに存在したということを立証しなければなりません。そういった意味におきまして、捜査機関としましては、例外事由を十分に立証できる見込みがない限り、例外事由に当たるとして録音、録画をしないということはできないわけでございまして、この例外事由の解釈が捜査機関の広範な裁量に委ねられるという余地はないものと考えております。
この点、捜査機関が自分の側として例外事由に当たると思っていたとしても、仮に裁判において例外事由には当たらないという判断がなされた場合には、その取調べにおける供述調書の任意性についてはこれは証拠調べ請求が却下されてしまうわけでございますので、そういったリスクを負った上でこの例外事由を判断しなければならないという立場にございますので、恣意的な裁量に委ねられる余地はないものと考えております。
その上で、若干その中身について申し上げますと、例えば今回、被疑者が記録を拒んだことその他の被疑者の言動により、記録したならば被疑者が十分な供述をすることができないと、こういった場合が例外事由になっておるわけでございますが、この点につきましても、被疑者が十分な供述をすることができないと認める、第一次的な認める判断は捜査機関、取調べ官が行うわけでございますが、単にそのような十分な供述ができない、記録をしたならば被疑者が十分な供述をすることができないと認めるのでは足りないわけでございまして、法文上、被疑者が記録を拒んだことその他の被疑者の言動によりという要件が掛かっております。すなわち、この十分な供述をすることができないかどうかの判断する認定の事情、材料を、外部に表れた被疑者の言動に限定されておるわけでございます。
すなわち、その被疑者の言動というものは、一つの例示といたしましては、被疑者が記録を拒んだことというものが例示として挙げられておりまして、その他の被疑者の言動という点につきましても、外部に表れた言動で被疑者が録音、録画を明示的に拒否したときと同程度の根拠を持って、やはり記録をしたならば被疑者が十分な供述をすることができない、こういった認定ができるような必要があると、こういう趣旨での法律の規定となっております。
したがいまして、こういったその外部に表れた被疑者の言動というものをもって、この例外事由を捜査機関といたしましては後の公判において立証しなければ例外事由が認められないという関係にございますので、この意味におきましても恣意的な裁量で例外事由を広く認定するということはできないものと考えております。

○矢倉克夫君

今、立証のリスクというところとともに、解釈として、特に拒否の部分で、明示的な拒否と同程度のという明確な方針もあったかというふうに理解もいたしました。その部分では、これが恣意的に運用されるというようなリスクは相当程度低まったというふうに私は理解もいたすところであります。
また重ねての質問になるわけですけど、法務省にまたお尋ねします。この例外事由に当たることの証明はどのようにされるのか、重なる部分もありますが、改めてお尋ねをしたいと思います。

○政府参考人(林眞琴君)

この取調べ録音・録画義務の例外事由の立証については、当然事案に応じて様々な方法があると思いますけれども、まず、例えば警察署の取調べ室における取調べの際に、録音・録画記録の故障を理由として例外事由に該当するという判断がなされた場合には、その取調べ室に配備されております録音・録画機器が故障していることとともに、その警察署に他に使用できる録音・録画機器がなかったこと、こういったことを捜査報告書や捜査担当者の証言等の証拠によって立証することが考えられます。
また、例えば記録をしたならば被疑者が十分な供述をすることができないと認めて例外事由に該当すると判断がなされた場合には、この点につきましては、先ほども申し上げましたが、拒否とかそれに同程度のその他の言動、外部に表れた言動というものが、そういった言動がなされるまでの間は当然その全過程録音・録画義務が掛かっておりますので、録音、録画がなされている場合が多いと思われます。そうすれば、被疑者が録音、録画の下でそれを拒否する旨発言している状況でありますとか、あるいは録音、録画の下では十分な供述ができないんだという旨の発言をしているという状況はその記録媒体に記録されていると思われますので、こういったことを取調べの録音、録画の記録媒体でその例外事由の存在を立証したり、あるいはあらかじめ被疑者から拒否の上申書が出ていたとか、そういう場合もございましょうし、そういった場合にはそういった証拠によってこの例外事由の立証をすることが考えられると思います。

○矢倉克夫君

今法務省の方から例外事由の立証について答弁があったわけですが、これをまた認定する最高裁としては、最高裁といいますか裁判所としてはいかがな態度で臨むのか、こちら最高裁から答弁いただければと思います。

○最高裁判所長官代理者(平木正洋君)

取調べの録音・録画義務の例外事由があるかどうかの判断につきましては、裁判体におきまして検察官及び弁護人の主張、立証を吟味し、個別具体的な事情を踏まえて判断すべき事柄でございますので、一般論としても最高裁判所の事務当局としてお答えする立場にはございませんが、最高裁判所といたしましては、今国会での議論の状況等を全国の裁判官に確実に情報提供するということを努めてまいりたいと考えておるところでございます。

○矢倉克夫君

今の様々な議論の中での状況をお伝えすると。最後は裁判所がどのように運用していくのかというところも非常に重要であると思っております。どのような理念でこの法律が与えられているのかというところを踏まえて、是非引き続きの御対応をお願いしたいと思います。
その上で、またちょっと次の質問に行かせていただきたい。
引き続き可視化でありますが、可視化を今適正な捜査につながるような形でどのように効果があるのかという観点でお話もしたわけでありますが、もう一つ、やはり今回この可視化の部分を含めた法がやはり重要であるなと思うのは、これが重要な一歩としての位置付けがあるというところであると思います。可視化に関しては、今回法定された部分を一歩にして、やはり今後更にこれを広げていくところが一つ見込まれているというところが私は重要な点であるかなというふうに思っているところであります。
その議論の前提で、また法務省の方にお伺いもしたいと思いますが、対象事件に今回選定されたのが裁判員裁判と検察官独自捜査事件、このそれぞれについて、必要性の観点からというふうな御答弁も以前あったと思いますが、この内容も含めて、なぜここが対象事件となるのかというところを法務省の方から答弁いただければと思います。

○政府参考人(林眞琴君)

今回の法律案の録音・録画制度は、原則として被疑者取調べの全過程を録音、録画を義務付けることを内容とするものでございますが、全ての事件一律にこの制度の対象とすることにつきましてはその必要性また合理性に疑問があり、また制度の運用に伴う人的、物的な負担も甚大なものとなります。また、録音・録画制度は捜査機関にこれまでにない新たな義務を課すものでございますので、捜査への影響を懸念する意見もございます。そこで、検察等における運用で録音、録画が行われることも併せ考慮した上で、法律上の制度といたしましては取調べの録音、録画の必要性が最も高い類型の事件を対象とすることとしたものでございます。
この点、まず裁判員制度対象事件につきましては、いずれも重い法定刑が定められている重大な事件でありまして、取調べ状況をめぐる争いが比較的生じやすいという点がございます。また、裁判員制度対象事件につきましては、取調べ状況について公判で裁判員にも分かりやすい立証が求められるという点がございます。こういった点を比較考量しますと、この裁判員制度対象事件は録音、録画の必要性が最も高い類型の事件として考えられたわけでございます。
もう一つ、検察官独自捜査事件について対象としているわけでございますが、この検察官独自捜査事件につきましては、通常の警察送致事件とは異なりまして、被疑者の取調べが専ら検察官によって行われます。したがいまして、被疑者が異なる捜査機関の取調べによりそれぞれ別個の立場から多角的な質問や供述の吟味を受ける機会というものが欠けております。したがいまして、その取調べ状況をめぐる争いが生じた場合、裁判所においては異なる捜査機関に対する供述状況を踏まえて事実認定をするということができない、そういった材料に乏しい類型の事件となります。その点で、司法警察員送致・送付事件と比較しまして取調べ状況に関する事実認定に用いることができる資料に制約があるわけでございます。このほかに、この検察官独自捜査事件についても、他と比較しまして取調べ状況をめぐる争いが比較的生じやすいという点もございます。こういったことから、これについてもこの録音・録画制度の対象事件とすることとしているわけでございます。

○矢倉克夫君

ちょっとまた質問の順序を少し変えてというか、後ほどお伺いする予定であった法務省にまたお尋ねをしますが、弁護士会からの意見で、衆議院の参考人質疑などでも実務的運用を重ねた全面的可視化への期待というものが述べられております。
今、林刑事局長からは、一律には難しい、これは例外事由等もあるという部分も含めてだと思いますが、あと人的、物的な、そういう物理的なところがあると。もちろん、これは考慮もしなければいけない。ただ、それらがどんどん、これは段階を追って、急にというものではなくて徐々に徐々に克服されていって、一定段階においては更に広げていくということも考えなければいけないと思っておりますが、弁護士会からもこの実務的運用を重ねた全面的可視化への期待が述べられているわけですけど、それについては御意見はどのようにありますでしょうか。

○政府参考人(林眞琴君)

今回導入しようとしております録音・録画制度については、これまでにない新しい制度でございますので、その効果でありますとか課題につきましては実際に制度を運用してみなければ分からないところが少なくないわけでございます。
この法律案の附則九条第一項におきまして、取調べの録音・録画制度について施行後三年が経過した後に必要な見直しを行うといった見直し条項が、いわゆる検討条項が設けられておるわけでございますが、この方向性についてあらかじめ現時点で確たることを申し上げることは困難でございますが、いずれにしましても、捜査機関による運用によるものも含めまして実際の取調べの録音、録画の実施状況、すなわちその運用のものと今度義務付けられる制度としての実施と、こういった実施状況全部を勘案しながら、実際の今回の制度の趣旨、すなわち、先ほど来あります被疑者の供述の任意性の的確な立証の判断に資する、あるいは取調べの適正な実施に資するという、こういった取調べの録音・録画制度の有用性というものは今回の法案の中にも、附則の中にも書き込まれておりますので、こういった趣旨を十分に踏まえて検討することが重要であろうかと考えております。
これまでの経緯等を踏まえますと、取調べ録音、録画についての取組が後退するようなことはないものと考えております。

○矢倉克夫君

今既に検察の方でも、法定対象されたもの以外のものもどんどんと試行で広げられているところであります。
また法務省の方にお尋ねをします。
現場の運用が重要であるというところの御意見もございました。更にまたお尋ねしますけど、具体的にどのように取り組まれるのかというところをまず法務省にお尋ねもして、その後、警察庁にも御答弁いただければと思います。

○政府参考人(林眞琴君)

検察につきましては、当初四つのカテゴリーについて録音、録画をするということを行っていた時代がございましたけれども、さらに、既にそのカテゴリーを超える、すなわち罪名を問わず録音、録画に取り組むと、こういった方針の下、積極的に録音、録画を運用として実施しているところでございます。こういったまた録音、録画の対象を、被疑者だけではなく参考人に対しても広げておるわけでございます。
こういった取組というのは、やはりこれから法律案が施行されれば義務として行われる録音、録画というものがございますが、一方で、先ほど来ありますように、やはり任意性の立証というものに資するという点はこの義務の範囲を超えて様々な取組を行う一つの考え方の柱になっておりますので、そういった観点からも録音、録画の実施に積極的に更に取り組んでいくものと考えられます。

○政府参考人(三浦正充君)

警察におきましても取調べの録音、録画の試行に積極的に取り組んでいるところでございまして、直近の速報値による数字でありますけれども、平成二十七年度中における裁判員裁判対象事件等に係る取調べの録音、録画の実施件数は二千八百九十七件、一事件当たりの実施時間も前年比プラス七時間の二十一時間余となるなど、制度化も見据えながら確実に実績を積み重ねているところであります。
しかしながら、警察におけます年間の裁判員裁判対象事件の検挙は三千件を超えておりまして、延べ四万回を超える被疑者取調べが行われているという状況でございまして、まだいわゆる対象事件の全過程について録音、録画を試行で実施をしたという比率はおおむね五割程度、半分程度というところにとどまっているところであります。
この後まだ、法案が成立をいたしますればこの録音、録画が義務付けということになりますので、今半分程度のものを原則一〇〇%に近づけていくという大変重い課題を負っているわけでありまして、まずはこの裁判員裁判対象事件で確実に実施ができるようにするということを最大の課題と捉えておりまして、そのための運用を積み重ねているところでございます。
今後は現場レベルで具体的かつ実践的なノウハウも積み重ねられていくわけでございまして、その制度対象外の事件につきましても、個別の事件ごとに検討いたしまして、供述の任意性等をめぐる争いが事後想定されるような場合には録音、録画を実施していくといった運用は十分に考えられるところでございますけれども、まずは現在の対象範囲の中で録音、録画をしっかりと行えるようにしてまいりたい、まずそれを最優先で取り組んでまいりたいと考えております。

○矢倉克夫君

今警察の方からも制度対象外もという部分のお話もあった。まずは対象部分についての一〇〇%というところはおっしゃるとおりであると思います。
その上で、それ以外についてもどんどん広げていくというところの趣旨の話もあったわけでありますが、一昨日の参考人の質疑のときに一つ話題になっていたのが、録音、録画の対象事件以外で逮捕、勾留されている被疑者を余罪である録音、録画の対象事件で取り調べるときに録音、録画がどこまで及ぶのかというような話もありました。
警察としては、このような事案についてはどのような形で録音・録画義務というものを履行するために運用をされていらっしゃるお考えか、御答弁をいただければと思います。

○政府参考人(三浦正充君)

例えば、殺人事件の立件に先立って死体遺棄事件の捜査を行っているといった場合など、両事件の関連性が高く、公判においても審理が併合されることが見込まれるような場合には、当初の事件、すなわち今の例で申し上げますと死体遺棄事件でありますけれども、当初の事件についての取調べの段階から録音、録画を広く行うという運用が想定をされるところであります。この点、現在警察において取り組んでいる録音、録画の試行においても既に同様の運用がなされているところでございます。
他方、これは余り例は多くないとは思いますけれども、仮に裁判員裁判対象事件以外の事件で逮捕、勾留中の被疑者が、したがって録音、録画を行っていない場合もあるわけでありますけれども、その中で、捜査機関側の予期しないような場面で裁判員裁判対象事件に関する供述を始めたといったような場合には、それ自体を録音、録画するということはこれは物理的にできないわけでありますけれども、その後、その対象事件に関する取調べを行う時点では録音、録画を行っていなければならない、この部分には義務付けが掛かるというように承知をしております。
いずれにしましても、こうした録音・録画制度の運用を捜査員が適切に行うことができるように教養を徹底するとともに、捜査幹部の適切な指揮の下で法の定める録音・録画義務を確実に履行できるような体制を構築をしてまいりたいと考えております。

○矢倉克夫君

別件と本件といいますか、それぞれの関連性の認定などもいろいろあると思います。ただ、後々の捜査等、また立証等にも支障のないという観点からも含めて、幅広にどんどん録音、録画していくという点はやはり大事であるというところは期待をしたいと思います。
大臣に、最後一言だけ、また改めて同じ質問をするところでありますが、やはり、先ほども法務省の方からも、任意性の立証という部分からの観点からこの義務を超えてやっていくという柱が大事だったと、そのとおりであると思います。
それを理解した上で、大臣の御認識として、やはり録音、録画というものが、立証という部分も当然有用性はあるわけですけど、まずは捜査の可視化、適正化というものにしっかりと資するものであり、その観点から更に進めていくというような部分での御意見についてどのようにお考えかということを御質問をさせていただきたいというふうに思います。

○国務大臣(岩城光英君)

重ねてのおただしでありますけれども、取調べの録音、録画には、任意性についての的確な立証に資するとともに、御指摘のとおり、取調べの適正に資するという有用性、それら二つがあるものと認識をしております。これによりまして、より適正、円滑かつ迅速な刑事裁判の実現に資することができるものと考えております。
私といたしましても、録音、録画の持つ有用性は非常に重要なものであると考えておりますので、検察におきましても積極的に録音、録画に取り組んでいくものと、そのように承知をしております。

○矢倉克夫君

ありがとうございます。大臣の御期待どおりの運用を是非現場でもしていただきたいというふうに思います。
改めて、今回の可視化については、やはり義務という形で法定されたというところ、これに違反するところはやはり違法という評価を受けるということが明確になったというところは非常に重視もしなければいけないし、そういう観点から現場の方々もしっかりと法の運用をしていただきたいというふうに思います。それがしっかりと続くことで、様々な御意見もあるわけですが、やはりしっかりと現場が運用をしていくんだという安心感が法についての更なる理解に私はつながっていくという理解でおります。
以上申し上げまして、質問を終わりたいと思います。ありがとうございます。

【矢倉かつお】法務委員会(質問)_20160419

2016-04-19 矢倉かつおチャンネル

【矢倉かつお】法務委員会(答弁)_20160419

2016-04-19 矢倉かつおチャンネル

190回 法務委員会(ヘイトスピーチ解消法案答弁)

2016-04-19 国会質問議事録

○矢倉克夫君

ただいま議題となりました本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律案につきまして、発議者を代表いたしまして、提案の趣旨及び主な内容を御説明申し上げます。
近年、本邦の域外にある国又は地域の出身であることを理由として、適法に居住するその出身者又はその子孫を我が国の地域社会から排除することを扇動する不当な差別的言動が行われ、その出身者又はその子孫が多大な苦痛を強いられる事態が頻発化しております。かかる言動は、個人の基本的人権に対する重大な脅威であるのみならず、差別意識や憎悪、暴力を蔓延させ地域社会の基盤を揺るがすものであり、到底許されるものではありません。
もとより、表現の自由は民主主義の根幹を成す権利であり、表現内容に関する規制については極めて慎重に検討されなければならず、何をもって違法となる言動とし、それを誰がどのように判断するか等について難しい課題があります。
しかし、こうした事態をこのまま看過することは、国際社会において我が国の占める地位に照らしても、ふさわしいものではありません。
本法律案は、このような認識に基づき、憲法が保障する表現の自由に配慮しつつ、本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組について、基本理念を定め、及び国等の責務を明らかにするとともに、基本的施策を定め、これを推進しようとするものであり、いわゆるヘイトスピーチを念頭に、本邦外出身者に対する不当な差別的言動は許されないとの理念を内外に示し、かかる言動がない社会の実現を国民自らが宣言するものであります。その主な内容は次のとおりです。
第一に、前文を置き、我が国において、近年、不当な差別的言動により、本邦の域外にある国若しくは地域の出身である者又はその子孫であって適法に居住するもの、すなわち本邦外出身者が多大な苦痛を強いられるとともに、地域社会に深刻な亀裂を生じさせており、このような事態を看過することは、国際社会において我が国の占める地位に照らしてもふさわしいものではないという本法律案の提案の趣旨について規定するほか、このような不当な差別的言動は許されないことを宣言することとしております。
第二に、本邦外出身者に対する不当な差別的言動の定義を置き、専ら本邦外出身者に対する差別的意識を助長し又は誘発する目的で公然とその生命、身体、自由、名誉又は財産に危害を加える旨を告知するなど、本邦の域外にある国又は地域の出身であることを理由として、本邦外出身者を地域社会から排除することを扇動する不当な差別的言動をいうこととしております。
第三に、基本理念として、国民は、本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消の必要性に対する理解を深めるとともに、本邦外出身者に対する不当な差別的言動のない社会の実現に寄与するよう努めなければならないこととしております。
第四に、本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組に関する施策の実施について国及び地方公共団体の責務を規定することとしております。
第五に、基本的施策として、国は、相談体制の整備、教育の充実等及び啓発活動等を実施することとしております。また、地方公共団体は、国との適切な役割分担を踏まえて、当該地域の実情に応じ、これらの基本的施策を実施するよう努めることとしております。
以上がこの法律案の提案の趣旨及び主な内容であります。
本邦外出身者に対する不当な差別的言動が許されず、その解消に向けた取組が必須であることについては、参議院法務委員会において、実際にかかる言動が行われたとされる現地への視察や真摯な議論を通じ、与野党の委員の間で認識が共有されたところであると考えます。
何とぞ御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。

○委員長(魚住裕一郎君)

以上で趣旨説明の聴取は終わりました。
これより質疑に入ります。
質疑のある方は順次御発言願います。

○仁比聡平君

日本共産党の仁比聡平でございます。皆さん、おはようございます。
我が党は、ヘイトスピーチの根絶は政治の重大な責任であって、立法措置を含めた国会での大いな議論を求めてまいりました。そうした下で、このヘイトスピーチを社会的に包囲し、根絶の先頭に立つという政治の責任も強調をしてきたわけですけれども、昨年来、当委員会で議題となってきた、当時の民主党の皆さん始めとした野党の提出法案に続いて、今日こうして与党案が提出をされ、実質審議に入るということになったわけです。
これは、このヘイトスピーチを根絶をしようという運動、何よりヘイトスピーチによる被害の深刻さと当事者の皆さんの身を振り絞るような声を受けて行われているものであって、そうした意味で本当に大きな歴史的な意味を持っていると理解をしております。私たち参議院の法務委員会のこうした取組がヘイトスピーチ根絶の実りを上げるように、我が党としても力を尽くしていきたいと思うんです。
こうして与党の案が提出をされた下で当委員会を中心にして各党の協議が始まるに当たって、今日は、この与党案の意味するところについて様々な立場からの御意見が寄せられている中で、今日は与党案のその趣旨、意味というものをできる限りまず確認をさせていただきたいと思うんですね。特に三点について、法案の柱について御質問したいと思っております。
まず、その第一は、理念法の法たるゆえんということに関してです。先ほどの趣旨説明でも明らかですが、法案は、不当な差別的言動を、あってはならず、そして許されないことを宣言すると、そうした趣旨を前文で規定をされるとともに、第一条で本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消が喫緊の課題であるという認識を規定をした上で、第三条、基本理念として、国民の言わば努力義務という趣旨なのかと思うんですけれども、努めなければならないという規定ぶりで基本理念を記しておられるわけですが、このような規定にされた理由は一体どういうことでしょうか。

○西田昌司君

仁比委員の質問にお答えさせていただきます。
まず、この法律は、理念法という形で、禁止という形を取っておりません。その一番大きなのは、要するに、憲法上の表現の自由の保障をしっかりしなければならない、これは、やっぱりどうしてもこれは一番守らなければならない、そういう価値であるということを考えた結果、我々がこういう前文において本邦外出身者に対する不当な差別的言動は許されないということを宣言をし、更なる人権教育と人権啓発などを通じて国民に周知を図り、その理解と協力を得つつ不当な差別的言動の解消に向けた取組を推進するものであります。
表現内容を規制するのは、先ほども言いましたけれども、表現行為の萎縮効果をもたらすおそれがありますから、このような不当な差別的言動の禁止や、その禁止に違反した場合の罰則を定めるということはあえてしていないわけであります。もっとも、御指摘のとおり前文で不当な差別的言動を許されないと宣言しましたが、法律でそういうメッセージを発信すること自体が非常に私は重要な意義があるものだと考えております。
さらに、三条においては、国民に周知を図ってその理解と協力を得つつ、不当な差別的言動の解消に向けた取組を推進することとすることを受けて三条は書いているわけでありますけれども、この中で、いわゆる憲法の保障する表現の自由に関わる問題でありますから、警察などの公権力、ここで規制をして強制的に進めるのではなくて、まず国民全体が、国民一人一人が理解をしてそういう差別的言動のない社会の実現に寄与していくと、そういうことを図るべきであるということをこの法律によって示すことによって、国民にもその努力義務があるということを示させていただいているわけであります。
この効力でありますけれども、これらの規定と併せて、国に本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組に関する施策の実施義務や、地方公共団体にその実施の努力義務がまた掛かることになります。
この法律は、こうした結果、表現の自由に萎縮効果が生じないようにするためにこのような内容にしたものでありまして、禁止規定がないからといってヘイトスピーチを認めるとか、また我々与党側がヘイトスピーチに対して及び腰でやっているとかそういう姿勢ではなくて、憲法の保障する表現の自由との兼ね合いの中で最大限効果が発揮でき、国民にも理解を求めていくと、そういう趣旨でこの前文と併せて作ったということを御理解いただきたいと思います。

○仁比聡平君

今、自民党西田発議者からは、禁止規定は置いていないのであるというまず御発言が、御説明があっているわけですけれども、この点について強い意見がとりわけ当事者団体から上がっているのは御承知のとおりだと思います。
例えば、私たち国会議員に在日本大韓民国民団の主催をされる緊急集会が呼びかけられていますけれども、その呼びかけ文には、ヘイトスピーチによって自らの尊厳を傷つけられた当事者である私たちとしてはこの法案内容に対する極めて深い失望感を禁じ得ません、罰則規定を設けないいわゆる理念法であるにしてもヘイトスピーチが違法であるという明確な規定が不在だからであり、これではとても容認できないのですというくだりがあるんですけれども。
先ほど、公明党矢倉発議者からの趣旨説明の中では、ヘイトスピーチといいますか、この法が対象とする言動というのは違法であるという前提の認識が示されているようにも思うんですね。つまり、先ほどの提案理由説明の第三段落目ですが、何をもって違法となる言動とするのかということがこの法案の提出の意義として語られているわけですけれども。
この禁止規定は置かないということと、この法案が対象とする言動が違法であるということとの関係というのは、これはどういうふうに理解をしたらいいんですか。

○矢倉克夫君

ありがとうございます。
こちらの趣旨説明において何をもって違法となる言動としという文言は、そもそも表現の内容についての規制をするとき、我々認識しているヘイトスピーチというのは具体的にイメージできるんですが、規制となるとどこが外延かというのがやはりどうしても見えなくなるという問題があると思います。そのような表現の内容を、禁止という形で規制をすることに内在している本質的な問題が、やはり違法となるというところがどこまでかという問題であるので、そのような問題があるというところであります。
これをもって、今回、理念法で違法かどうかという判断をこれは提示をしたという趣旨ではないというふうに御理解をいただければと思います。

○仁比聡平君

ここ、これからの法案の議論をしていく上で極めて大事だと思うんですけれども。
提案者は、つまり与党は、定義の明確性、つまり違法かそうでないかという外延が明確であることが重要であるというのはそのとおりだと思うんです。その外延が明確であるという定義をすることができるのであれば、その定義に当たる言動、これは法違反である、違法であるという、その書きぶりはいろんな書きぶりがあるのかもしれませんけれども、違法であるということは宣言する、あるいは法で定めるべきであると、そういうお考えなんでしょうか。

○西田昌司君

そこが一番大事なこの法律の核心部分なんですけれどもね。
我々の与党側の考え方といいますのは、要するに、このヘイトスピーチを厳格に定義をして、それを国が例えば認定をして、違法行為であるからこの行為はすべきでない、禁止規定になってくるわけですね。また、禁止規定、罰則がなくても、そういう認定を公権力がするということはできないというのが我々の発想であります。
といいますのは、それについては、違法であるか違法でないか、それがヘイトになるかどうかというのは結局は司法の場で判断されるべきもので、公権力の行政側のところでこの部分は違法だということをしちゃいますと、かつての、これは戦前のいわゆるあの治安維持法のように、国の方が決めた言論や思想や表現にたがうようなことをすればたちまち取締りになると。若しくは、禁止規定がなくてもそのことを国が違法性を認定してしまいますと、様々なことが行政の方からそのした本人にいろんな形で圧力と申しましょうか、掛けられるわけです。
もちろん、そういう規定があった方がヘイトスピーチそのものには禁止ができて、圧力が掛かっていいじゃないかということはもちろんあると思うんですよ。しかし、同じように、ヘイトかどうか微妙な部分のところで、そこを国が規定して、そしてまた国の方がその個人に関与しているということになりますと、違う事態が想定されますね。つまり、ヘイトだということを理由に行政の方が違う形で市民に圧力を掛けてくるということが、ほかの法律でも同じような枠組みで作られることも考えられます。
我々は、そういう公権力が個人の表現の自由や内心の自由に関わるようなところに入っていくべきではないというのが自民、公明のこの法律を作る上での一番最初の入口の部分であります。そして、その部分は、ヘイトであったかどうかという認定は、これはむしろ裁判の場で、司法の場でやっていただくんです。
じゃ、この法律は一体何の意味があるのかというと、こういう理念を掲げて、そもそも国民がこういうヘイトはすべきでないんだと、また、そういう差別のない社会をつくるのが国民も努力していかなければならない、そしてそのことを国と地方公共団体が教育や啓発、相談などを通じて広げていこうということを示すことによって行政側が様々な判断するときの一つの指針になるのではないかと思います。
もちろん、その指針によって、された行為、例えばデモをやっていたり、道路使用許可を止めろとかいう話も当然出てくると思いますよね。そのときに仮にそういう指針によって止められたら、逆にやった側がこれはおかしいじゃないかということを訴えることも当然想定されます。しかし、そのことを彼らが訴えて、結局それがヘイトであったかどうかというのは最終的に司法の場で判断をしていただかなければならないと思っているんです。それをまず第一義的に行政の方が線引きをしてここから先はヘイトだどうだという、公権力側にその権力行使を与えてしまうと、私は違う事態が出てくるということを大変恐れているわけでございます。そのことを御認識いただきたいと思います。

○仁比聡平君

我が国において、とりわけ国家権力によって思想、表現が抑圧、弾圧された歴史があり、そして、戦後、憲法が公布されてから七十年に至りながら、法を濫用した行政、警察による人権侵害というのは後を絶たないわけです、今日現在も。その認識というのは私は前提にもちろんあるわけですけれども、ですが、この法でヘイトスピーチの許されないということをどう規定するかということは、その定義の明確性と併せて真剣な探求が必要だと思うんですよね。
今の西田発議者の御答弁で、つまり、この法案が民事裁判や行政処分を争うそうした裁判においての法規範たり得るということをおっしゃっているんだと思うんですけれども、それはつまり許されないとされる言動が法違反であるという前提認識に立ったものなのであって、これはヘイトスピーチはしてはならないなどの、これを禁止という用語を使うのが与党としていろいろごちゅうちょがあるのかもしれないんだけれども、このあってはならないとか、許されないという表現、文言ではない書きぶりというのはこれはあり得るのではないかなとも思うんですが、これは今、西田委員に伺いましたので、矢倉発議者、いかがですか。

○矢倉克夫君

ありがとうございます。
まず、今、西田委員がおっしゃった部分というのは、これまでは特定人に対しての規制というものはあった、ただ、今回我々は不特定人に対してのこのような言動も許されないものであるという理念を、これにより明確にしたわけであります。それがいろんな裁判の場で出てくる。場合によっては、損害賠償であるとか、そういうような民法の規定の文脈などで違法等の話が出てくるかもしれないですけれども、そういう文脈での違法を判断するときに、この法律により、許されないものであるということを理念として表した、国として姿勢を表したということが裁判所の判断に影響を与えるだろうという部分の説明であると思います。このような意味合いで、これを違法判断かどうかというところはまた違う考慮があると思いますが、いずれにしろ違法判断に対してある程度影響を与える判断にはなるであろうというところであると思います。
書きぶりの問題なんですけれども、これは、してはいけないという禁止規定にしますとどういうことになるかといえば、先ほども申し上げたとおり、表現内容の規制という形にやはりこれはなってしまう。それはどういうことをいうかといえば、憲法の検閲の禁止などにも抵触する可能性も出てくる。また、表現内容は、御案内のとおり、憲法上は非常に厳格な基準がない限りは合憲とならないというような、そのような制約があり、してはならない言論が何かということを定義付けなければいけない。じゃ、その概念がどこまでかということもこれは明確にしなければいけないというような制約も出てくるところであります。そのような判断から、してはいけないというのは、憲法の問題を克服できないというところで、我々は取るべきではないという判断をいたしました。
他方で、実効性を確保する意味では、やはり許されないものだということを宣言して、その許されないものを排除する社会を、国民全般がこれをつくっていこうということを主体的にうたっていくという在り方の方が、むしろ実効性は上がるのではないかということで判断をしたところであり、この表現が我々としては正しいというふうに認識をしております。

○仁比聡平君

少し議論をしてしまうことになるんですけれども、そうした憲法上の表現の自由の保障との関係も十分考慮をされた上で全国で様々な取組がされてきていると思うんです。その一つの例として、大阪市ヘイトスピーチへの対処に関する条例における対象行為の定義規定についての評価を今のお話の流れで矢倉さんにお尋ねしたいんですが、この大阪市条例はヘイトスピーチとされる表現活動を具体的に三つの条文に分けて規定をしているわけです。
第一は、次の三つの目的のいずれかを目的とすること。つまり、人種若しくは民族に係る特定の属性を有する個人又は当該個人により構成される集団を社会から排除すること、あるいは権利又は自由を制限すること、憎悪若しくは差別の意識又は暴力をあおることのいずれかを目的として行われ、表現の内容又は表現活動の態様が相当程度侮辱し又は誹謗中傷するものであること、脅威を感じさせるものであることのいずれかに該当すること、そして三つ目に、不特定多数の者が表現の内容を知り得る状態に置くような場所又は方法で行われるものであること、こうした定義によって外延を明確にしていると思うし、私はその規定ぶりというのはよく理解ができるというふうにも思っているんですが、矢倉さんはいかがですか。

○矢倉克夫君

大阪のヘイトスピーチの条例について、こちらが詳細に定義をしたというのは、やはり効果との関係から考えなければいけないと思うんですよね。これ、大阪市長が表現活動について拡散防止の措置及び公表措置をとることにしたと、そのような行政権、公権力が関係するようなことを前提にしている以上は、やはり定義を明確に厳格にしなければいけないというところもあるかと思います。
これは出発点の問題もあり、先ほど西田理事からもお話もあったとおり、むしろ我々としてはこのような、何かこれがいけない言論だということをある程度定義をして公権力が規制をするというような話ではなくて、むしろこのような不当な言動、地域社会から排斥するような言動があってはならない、そういう社会をつくるんだという理念を定めて、そのような社会に向けた国民全体の協力義務というものをこれを規定する、そのような理念法を定めた上で、それを全体で実現していこうという理念を定めた法律であり、そういう部分での概念の定め方というところの出発点がそもそも違うというところは御認識をいただきたいというふうに思います。

○仁比聡平君

その点はよくこれから議論をしていく必要があるのかなと思うんですね。
少し先ほどの西田発議者の御答弁に戻りますと、行政がこの表現あるいは言動の違法的方法を直接審査するのかどうかという、そうした問題をおっしゃったわけですけれども、仮にそうした措置を置かないとしても、国民の皆さんに、こうした言動はあってはならない、してはならないというふうに呼びかけるのかどうか、違法であることをはっきりさせるのかどうか、これはつまり社会的に根絶していく上で極めて重要だと思うんです。そうして、この法案によっても、努力義務とはいえ、そうしたものを課すわけであり、この外延を明確にするということはとても大事なことなのではないかと思うんですね。そこはどうお考えですか。

○西田昌司君

外延をまず定義、つまり定義を明確化してやっていくとかいう話になってきますと、新たな問題が実は出てくると思うんですね。といいますのは、定義した、定義を明確にすればするほど、その定義の外側に隠された言葉は、じゃいいのかと。つまり、ここからここまでは駄目だけれどもここから外側はいいんだよということを、逆にヘイトスピーチをする方々にお墨付きを与えるようなことにもなりかねないんです。ですから、我々、そこは全体の文脈の中で判断すべきことだと思っております、そもそも。だから、そういうことも含め、禁止規定を設けたり定義をまた明確にしたりすると、そういったまた別の次元の問題が出てくるわけですね。
もっと言いますと、我々はこのヘイト問題というのは、実際に現場を見たり、また映像を見たりもしておりますけれども、断じて許すことはできないと思っております。そして、この法律が、我々が法的措置をしましても、それに対して彼らは挑戦的な行動をするかもしれませんよ。だから、そのことも含めて我々は、彼らがやってくる行動は最終的にはこのヘイト法によって抑え込まねばならないと思いますけれども、最終的にはやっぱり裁判の場でこれを、彼らの行動は恥ずべき行為であるのだと、行政のやった措置がこれは適法だったのだという、そういう形のやっぱり文脈になっていくと思うんです。
したがいまして、そういう意味で我々は、禁止規定ではなくてまずモラル、それから啓発、教育、こういうことは恥ずかしいことなんだということをやっぱり国民全体でこれ共有して、そしてそういう意識の中で国が、また地方公共団体が啓発活動していく、そこが一番大事だと思うんです。つまり、やっている人間が、自分たちがやっている行為は恥ずべき行為なんだという、やっぱりそういう認識に立ってもらわないと、これはヘイトスピーチというのはなくならないんです。
そして、現に私は視察に行って感じましたのは、在日一世、二世、いろんな方の話を聞きましたけれども、我々が小さいときも、戦後、いわゆる在日韓国・朝鮮人の方に差別的な言動があったり、目の当たりに見たりしましたよ。しかし、今やっぱりどんどんそういうのは少なくなってきたというお話をされました。しかし、この二十一世紀、平成の時代になって、またもう一度突然こういったヘイトスピーチを公然として扇動していくような目に余る行為が出てきたわけですよね。
だから、我々は、こういったことは改めて恥ずべき行為だということを宣言すると同時に、やっぱり教育、啓発、この効果というのを大いに私は期待しなければならないし、そのことを通じてしか私はヘイトというのは根源的になくすことはできないのだと思っているんです。

○仁比聡平君

この禁止あるいは違法という法の規定のありようについて、これもっともっと議論が必要だと改めて明らかになってきているように思うんですけれども、ちょっと残る時間が五分ほどになってきているので、法案について具体的に、定義に関わってお尋ねしたいことがあります。三点、ちょっとまとめて質問します。
先ほど来お話のある本邦外出身者という規定が第二条に置かれているわけですが、一つ目の質問は、この本邦外出身者という、我が国領域を言わば基本的な概念にした内外というこの考え方は、人種差別撤廃条約の理念と異なるのか、それとも含んでいるのか。国籍あるいは民族、人種というものによる差別ということを意味しているのかどうなのかということが一点。よろしいですかね。
二点目は、そうした下で、専ら適法に居住するものという規定ぶりになっています。これは、例えば在留の適法性が争われているというオーバーステイだったり、あるいは難民申請が政府の不当な判断によって認められなかったりといった方々に対するヘイトスピーチが許されるというものではまさかないと思うんですけれども、あわせて、アイヌ民族に対するヘイトスピーチということも公然と行われています。これを許すというものではないと思うんですが、この適法に居住するということの意味がどうかが二つ目。
最後、三つ目は、そうした本邦外出身者を地域社会から排除するというふうにお書きになっておられるんですが、私たちが視察で訪ねた桜本のような集住地域ではない場所、大都会の例えば銀座だとか新宿だとか、こうしたところで発せられる言動というのはこの地域社会から排除するということに当たるのかどうなのか。
この三つが御質問ですが、いかがでしょうか。

○西田昌司君

まず、いわゆるこのヘイトスピーチですけれども、現在も問題となっているヘイトスピーチ自身は、いわゆる人種差別一般のように人種や人の肌とかいうのではなくて、特定の民族、まさに在日韓国・朝鮮人の方がターゲットになっているわけですよね。ですから、そういう立法事実を踏まえて、この法律に対して対象者が不必要に拡大しないように、立法事実としてそういう方々が中心となってヘイトスピーチを受けているということで、本邦外出身者ということを対象として限定しているわけでございます。
したがいまして、先ほどのアイヌの問題ありますけれども、我々は実は、アイヌに対するヘイトスピーチがあるという、そういう立法事実を今、問題把握しているわけではございません。ですから、この中にはアイヌの話は入っておりませんが、もとよりアイヌ民族に対するヘイトが許されるものではないということは申すまでもございません。
それからもう一点、何でしたっけ。

○仁比聡平君

在留が違法な場合。

○西田昌司君

それと、在留の話ですけれども、適法にというのは当然の話でありまして、例えば不法に入国したりした場合は、当然入管法によりましてこれは本国に送還される、そういうことになるわけでございます。ですから、そういう方々は本来不法に滞在していたら本国に、我が日本にはおれないわけでございますし、その方々は当然戻ってもらわなきゃなりませんので、ヘイトスピーチのこの法律の対象にはなっておりません。しかし、その方々に対するもちろんヘイトスピーチを肯定するものでもございません。
それから、いわゆる難民認定をされている、その今手続中であるとかそういう方々は、これはここで規定する適法に居住する方々に該当すると考えております。

○仁比聡平君

地域社会の話はないの。

○矢倉克夫君

例えば、銀座から出ていけとかそういうものですよね、桜本とかではなく、居住しているところではなく、ただそういう一定の場所から出ていけというような話でもあると。
今回の我々が捉えている不当な差別的言動というのは、要するに、ある方々の存在自体を否定して、そこから出ていけというような、その存在を否定するという理解の下で出ていけというようなことを扇動するような言動というふうに理解をしています。
具体的な地域社会かどうかというのはやはり前後の文脈等も見ながらということになると思うんですが、そのような趣旨に合うような発言であれば該当するというふうに理解はしたいと思っています。

○委員長(魚住裕一郎君)

仁比君、時間ですが。

○仁比聡平君

あともう一点質問したかったのは国、地方公共団体の責務に関わるものなんですが、もう時間が参ってしまいました。
いよいよ、もっともっと議論が必要だというふうに思うんですね。とりわけ、不法入国の場合などの議論もありましたけれども、そうした場合だからといって法の保護が与えられないということには私はならないと思うんですね。一層の議論を求めて、質問を終わります。

○小川敏夫君

民進党・新緑風会の小川敏夫です。
時間がないので端的にお尋ねしますが、三条で努力するということが定められていますけれども、努力をするつもりがない人あるいはそもそもその努力に反する行動を取ろうとする人に対してはどういうふうに効果が及ぶんでしょうか。

○矢倉克夫君

まさにそういう人が出ないようにするということで理念を訴えているところであると思います。
この前も視察に行きましたときに、視察でお話をされた方がおっしゃっていたのは、昔は例えばヘイトスピーチのようなことが起きても対抗するような方がいらっしゃらなかったけれど、最近やっぱりそういうような声を上げてくださる方がいるようになったと、これは日本が成熟している社会であるということをおっしゃっていたと思います。
今回の法律は、まさに国民全体、国民の中でも当然このヘイトスピーチが良くないことだということは頭では分かっていても声を上げられなかったという方がやっぱりいらっしゃる、そういうような方も含めて国民全体でこういうのがない社会をつくろうという理念をしっかりとうたって、前向きに、さらに主体的に動いていこうということを宣言する、それをすることで、今おっしゃったような、努力をする気持ちもないような方もそういうような渦に巻き込んでいって変えていくというようなことをうたっているというふうに御理解をいただきたいというふうに思います。

○小川敏夫君

いや、御理解できないですね。
要するに、多くの国民はこういうヘイトスピーチは好ましくないということは分かっていて行動しているし理解しているわけですよ。だけど、そういう理解を全く無視して今ヘイトスピーチが行われているわけですよ、国民の気持ちを無視して。
だから、私が聞いているのは、そのうちに国民が理解すればそういう人たちに及ぶでしょうなんという話じゃなくて、法律の効果として、努力するつもりがない人、努力に反する行動を取る人に対してどういうことが対応できるのかと聞いているわけです。法律の効果を聞いているわけです。

○西田昌司君

小川委員の御質問でございますけれども、努力のする気がない人にどうするのかと、それを法律で強制できるのかということだと思うんですね。まさにそれを強制してしまうことが戦前の治安維持法に通ずる、公権力が個人の思想、信条、そういうところに介入してきて、結局はヘイトスピーチをそれで止められたとしても重大なこれ人権侵害という事案になってしまう可能性があるわけなんです。
そしてまた、そういう法制度を我々がつくり上げていくと、同じように気に食わないことがあったら、このヘイトスピーチだけに限らず、様々な法律、これを法律で作ってやめなさいと、その一つ一つの事実は正しい正義によるものかもしれません、しかし、結局正しいか悪いかというその線引きの部分でまた微妙な、ケース、ケースによって事態が出てくるわけですね。一瞬、一見するとそういう差別的言動であったけれども、実はその方々とのその裏にあったのは非常に愛情を持った行動であったということもあるかもしれません。そういうふうに事態、事態によって違うわけなんですよね。
ですから、一概にこのヘイトを禁止してやっていくということにやってしまうと、これは違う問題が出てくる、人権侵害になってくる。弁護士、そしてまた検事、裁判官、法曹の三つの仕事をされてきた小川委員なら御理解いただけると思います。

○小川敏夫君

全く理解はできませんですね。私の質問は、この法律の効果を聞いているんです。この法律によって、ですから、努力をするつもりがない人、そもそも努力に反する行動を取ろうとする人に対してどういう効果がありますかと聞いているわけです。
私は、結局はそういう人に対しては法律上の効果は何もないというのがこの法律だと思うんです。そうしますと、もっと端的に言いますと、全く努力するつもりもない人、今もそういう国民の気持ちに反して、地域の人の気持ちに反してやっているわけですよ、ヘイトスピーチ、ヘイトデモが。そういうヘイトデモを規制することもできないわけですね。ですから、この法律が通ってもヘイトデモは全くやまないと、こういう状況になるんじゃないですか。

○西田昌司君

それは、そうではないと思いますね。
具体的に言うと、恐らく先ほど私、仁比委員のときにも答えましたけれども、今ヘイトをやっている方は、この法律ができてもヘイトをする可能性はございます。当然、彼らは挑戦してくるかもしれませんね。そのことをおっしゃっているわけですよ。
しかし、この法律ができたことによって、行政側が、国権の最高機関としての国会が、このヘイトというのは許されない行為であるということを決め、そして宣言し、そしてそのことを、国民とともに差別のない社会をつくろうという、そういう姿勢を、国としての、国民としての姿勢を示した以上、やっぱりそこは行政側が我々のこの法律に、指針を受けて行政判断をしていただけると思うし、そしてそのことによって、例えば行政側がヘイトを禁止する行為をしたとしましょう。したときに、今度はヘイトをした側が、それは我々の表現の自由を何で行政側が制限するんだ、何でデモを許可しないんだと、内容でするのはおかしいじゃないかという当然裁判になると思いますよ。その裁判になってきたときにも、結局は、我々が出したこの法律が成案したことにより、裁判所も我々の、国権の最高機関のこの法律、この成案をベースにした判断がされるものと私は期待しております。
そして、そういう判例が積み重なっていくことによって、公権力がいわゆるヘイトかヘイトでないかというそこの線引きをするのではなくて、司法の場でそういうものが確定されてくる。そして、結局は、そういうことが積み重なってくると、ヘイトスピーチをしようと思っても、行政側が仮に道路の使用許可を出さないと、そういう判断をして、そしてそれが裁判になり、その裁判が行政側の勝訴になった、それが確定していくと。これは今後、そういうヘイトスピーチをしようと思ってもできないということが司法と行政によって確定してくるわけなんですよ。
だから、そういう手続を踏んでいかなければならないということなんです。その手続を経ずに、司法の手続を経ずに、先に行政側の方が公権力行使で禁止をして云々という規定になると、私はまた別の人権侵害というのが出てくる可能性があるから、我々はその人権侵害のないように、また新たなヘイト事案が出ないように、こういう形の規定をしているということを御理解いただきたいと思います。

○小川敏夫君

ですから、全く理解できないんですよ。裁判、裁判、行政が何らかの処分をするから裁判というけれども、行政が何らかの処分をするための根拠となり得る法律なんですか。だから聞いているわけです。努力する義務がある、じゃ努力する義務を守らなかった人に対して行政がこの法律を根拠に何らかの処分ができるんですか。何らかの処分ができるんだったら、その処分に対して不服申立てという裁判になるけどね。
これ、行政が何らかの処分をする、じゃ、もっと端的に聞きましょう、もっと分かりやすく。ヘイトデモが行われるときのデモの許可申請がある。それに対して、この法律を根拠に公安委員会はデモを不許可にすることができるんですか。

○矢倉克夫君

今、小川委員がおっしゃったようなことは、要するに、何が禁止される表現かどうかを解釈する権限を行政に与えるということだと思うんですね。それこそ、我々の価値判断としては、そのような規制、私たちがイメージしているヘイトデモ、これはもう許されないし絶対禁止すべきだということはあるわけですけど、そこに法規制になると解釈が出てくるわけなんです、どうしても文言ですから。その解釈権限を行政権に与えるということが危険だという理解でまず発しています。
ですので、そうではなくて、そのような形の文言ではなく、実効性を担保する上では、このような理念法として、国民全体でこういうような社会をつくるために全力でやっていこうと、許されないということを宣言するというところから入ったということであります。
出発点がそもそもそのような形で、何が表現内容、許される内容かどうかということを行政権が判断するということは憲法上問題があるというところ、そこがまず出発点であり、そこがちょっと認識として違うところであるというふうに思っております。

○小川敏夫君

ですから、最初の質問と同じことで、答えが出ていないから何回も何回も聞くわけです。
まず、答えを言ってくださいよ、先に。すなわち、この法律ができても、この法律を根拠にデモを不許可にすることはできないんでしょう。できないという前提で、そのことを答えないで、何かいろいろ、やれ表現の自由だとか何かあれこれあれこれ言うから分からない。
まず、私が聞いているのは、この法律ができたら、この法律を根拠にヘイトデモの不許可を、許可をしないという処分を公安委員会ができるのかどうか、できるのかどうかをまず答えてください。

○西田昌司君

これは、今、我々提案者側の方ですから、これは公安委員長、警察側が答弁すべきことだと思いますけれども、原則的な話で言いますと、今、矢倉委員がお話ししましたように、要するに、事前にこの表現内容、デモ内容にチェックして道路使用許可を与えるかどうかという仕組みには今なっておりません。しかし、この法律ができましたからといって直ちにこのヘイトスピーチやるんだったら禁止だという話にはならないと思います。
しかし、大事なのはそこから先でして、こういう理念法、これ宣言することによって、我々は行政も含めてこういうことはさせてはならないと。そうすると、実際にはいろんな法律がまだまだあるわけですよ。その法律の運用規定につきましても、例えば騒音防止条例とかそれから名誉毀損とか、様々なものがありますよね。そういうことも含め、我々はヘイトスピーチを公然とやっていることを許すことはできないという、このことを宣言することによって、様々な法律の解釈の指針も、また我々は指針を与えることになると思っています。そういう合わせ技を含めて、行政がこのヘイトスピーチに対して抑止力を発揮できるものだと考えております。

○小川敏夫君

法律の提案者が、この法律ができたときに公安委員会が不許可にするかどうか、それは自分は知らない、公安委員会が決めることだと言われちゃ困るんですよ。法律の提案者ですから、この法律の効果はどこまで及ぶかということは大変重要なことです。
今日は、熊本での大地震ということで、公安委員長が防災担当大臣ということで、本来ならこの席に来て答弁していただくところを出席しないということになったわけでありますけれども、その公安委員長が先般言っておりました。ヘイトデモ、何で不許可にしないんだと、その質問に対して公安委員長はこういうふうに言っていました。不許可にする根拠の法律がないからしようがないんだと、これが公安委員長の答弁でした。ですから私は聞いているわけです。公安委員長は、不許可にする根拠となる法律がないから不許可にできないんだと。だったら、不許可にできるその根拠となる法律を作ればいいじゃないかという議論になるわけですけれども、この法律はそういう根拠には全くならない法律だと私は思います。
であるならば、元々国民の多くの声を無視して、世論からどんなに批判受けても堂々と法律に違反しないからといってヘイトデモを繰り返している、この人たちが更にこの法律が通った後もヘイトデモを繰り返すときに何の規制もできない、何の効果も法的には及ばないですねと私は聞いているわけです。

○矢倉克夫君

まず、そもそも不許可にするにしても、表現内容を理由にして不許可にするということは、これは憲法上許されないということは改めて申すまでもないことだと思います。
仮に不許可にするとしたらどういう場合かというと、時とか場所とか時間とかそういう外形的なところを判断の材料としてやると。その判断、これはいろんな法律の文脈もあるかと思います、今、西田発議者からもお話もあった。その判断をする際に、このヘイトデモの時、場所等の判断をする際にこれが禁止されるべきものかどうかということを判断するしんしゃく材料として、この理念法が、許されないものであると言うところが、どのような態様のものが許されないかというところの判断に当然しんしゃくされる部分はあるかと思います。ただ、これがあるからこれだけを根拠にして禁止する、表現内容を根拠にして禁止するということはあってはならないというふうに思っております。

○小川敏夫君

この法案に対して本当に多くの質問するべき事項がございます。だけど、今日は一点のことしか議論できませんでした。大変残念ですけれども、また改めて機会があると思いますので、そのときに質問させていただきます。
今日は終わります。

○有田芳生君

民進党・新緑風会の有田芳生です。
まず、お二人に端的にお聞きをします。
四月八日にこの法案が提出されて以降、当事者である民団あるいは長くこの問題に携わってきた外国人人権法連絡会あるいはヒューマンライツ・ナウなど、少なくとも十の団体が与党案についてのコメントを出しておられます。評価をしつつも、実効性がないのではないかというような指摘がありますが、その様々な団体のコメント、お読みになりましたでしょうか。そしてまた、そこに何が書かれていたか、どのように理解されているのかをまずお二人からお聞きをします。

○西田昌司君

そういうような意見が表明されているということは大まか知っておりますけれども、個別的な話は、つぶさに見ておりませんので、承知しておりません。

○矢倉克夫君

私も、直接民団の方等と話をされた方からいろいろ話も聞いたり、私も聞いたりはしております。ただ、どういうような文書があるかとかそういうのは詳細は把握はしておりません。

○有田芳生君

事務所に送られていると思いますので、是非お読みをください。
さらに一方で、これまでずっとヘイトスピーチを続けてきた、例えばアドルフ・ヒトラー生誕百二十五周年を祝うそういう日本版ネオナチなどは与党案に対して大歓迎であると、お墨付きをもらったというふうにコメントを出しておりますが、御存じですか。お二人、お答えください。

○西田昌司君

それも有田委員から教えていただきまして、そういうことがあるのは知っておりますけれども、つぶさには詳細は知りません。

○矢倉克夫君

私も詳細には知りません。ただ、お墨付きをあげた法案では絶対ありません。

○有田芳生君

御自身が積極的に出された法案ですから、様々な関係団体及び一方のヘイトスピーチを繰り返し今でもやっている人たちのコメントを是非お読みになっていただきたいというふうにお願いしたいというふうに思います。
おととい、岡山市内でも、在特会の前会長が来て、ヘイトスピーチのデモと集会、街宣が行われました。江田五月議員と私もそこに抗議のために参加をしましたけれども、彼らは端的にこう言っておりました、自分たちは適法的にデモと集会を申請をしてやっているんだと。言っていることはもうヘイトスピーチのオンパレードですよ。
じゃ、そういうものを本当に制限できるようなものになるのかということを与野党一致してこれから充実したものにしていかなければならないと思いますが、日本版ネオナチと私はあえて言いますけれども、ナチスそれからアドルフ・ヒトラーを今でも称賛している人物は、与党案に対してこう語っております。この定義の中に、つまり与党案の定義の中に適法に居住するものの文言が盛られたことは大きい、なぜならば、このように決まった以上、適法に居住していない外国人に対しての言動はヘイトスピーチに当たらないことになります。もう少し紹介します。我々は、これまでイラン人追放やカルデロン一家のフィリピン送還を訴えてきましたが、そのような活動はこの与党案ではヘイトになりません。
あるいは、別の常習的なヘイトスピーカーがこう言っております。在留資格を有さない不法滞在外国人であれば、子供であろうと老人であろうと、日本からの排除を主張し又は扇動しても決して差別、ヘイトには該当しないというお墨付きだと、そのように書いております。
あるいは、別の差別の扇動を今でもやっている人物。我々レイシストにとって一番良い状態ができ上がる、やりたい放題である、笑い。その後とんでもないことを言っています。在日シナ・チョンは首つって死ね。これは、彼らが、公明党の有力な議員がこの法案についてツイッターで書き込んだその下にこういう文言を書いておりますが、どのように思われますか。

○西田昌司君

今おっしゃったような発言は、私、聞くだに本当に吐き気がするほど恥じるべき言動だと思っております。もちろん、ですから、この法律の中で、いわゆる違法にオーバーステイされているとかそういう方々に対する、不法滞在だから、これヘイトスピーチをしても我々の言っていることは適法とされるというか認められるということには当然なりません。
これはもう全体の文脈で考えるべきものでありまして、この法律を元々作ったのは、立法事実として、いわゆる在日韓国・朝鮮人の方々、その方々に対する不当な差別的な言動があったということから作っておりますけれども、しかし、だからといって、その方々以外の方に何を言ってもいいんだとか、そんなことには当然ならないわけでありまして、一番大事なのは、ここで言っているのは、理念法でやっているわけですよ。理念法でやっているというのは禁止規定もなければ何もないじゃないかとおっしゃるけれども、しかし、逆に言うと、そういう理念を掲げているからこそ、我々はそういうヘイトスピーチは不法滞在者に対してやっていいんだという形で限定されてこない、むしろ、もっとそういう理念を生かして、教育も啓発もそうだし、行政が様々な判断するときの指針として扱ってくれるものと考えております。

○有田芳生君

今、西田委員は、在日韓国・朝鮮人の方々に対する差別扇動、ヘイトスピーチをなくすための法案だとおっしゃいましたけれども、この二〇〇八年以降、例えば在特会が日本で行ってきたヘイトスピーチの実態というのは、在日コリアンの方々だけではなくて、一番目立った最初の時点は二〇〇八年に埼玉県蕨市で行われたフィリピン人一家に対する追放デモなんですよ。在日コリアンだけではなくてフィリピン人、中国人、あるいはアイヌ民族などなど、様々なヘイトスピーチが吹き荒れてきたというのが現実なんですよね。
これだと、在特会が行ったフィリピン人一家追放デモというのは不当な差別的扇動に当たらなくなってしまうんではないですか。先ほどヒトラー、ナチス礼賛者が言っていたように、不法と付ければ差別してよいというお墨付きを与えられるんだと、むしろ差別の扇動を推進してしまうことになりませんか。

○西田昌司君

これは、特定の人に対してそういうことをすると当然別の法律で罰せられることになってきますよね、いわゆる名誉毀損なり侮蔑的なことをやってきたりすると。ですから、そうじゃなくて、もう少し大きなくくりでこの法律はヘイトスピーチを規制するためにやっているわけです。
いずれにしましても、私たちは、有田理事がおっしゃいますように、そういうことを本当に、ヘイトをするのが楽しみのようにやっている人間がいるんですよね。これ許されるべきものじゃありません、本当に恥ずべき行為でありますけれども。しかし、それを強制力を持って法律で排除するということが、なかなか現実問題、この憲法の保障している基本的人権を考えるとできないわけなんですよ。
じゃ、我々が何ができるかというと、立法府の中でこの議論をして、そういうやっている人間というのが、本当に恥ずべき行為であって、そしてまた一般の社会の中からも当然認められるものではないと、そういうことを我々がお墨付きを与えることによって、彼ら自身が言動に自ら恥じ入る行為はしないように持っていくということ以外なかなか、その表現内容、言っていることで直ちにそれで取り締まって禁止をしてという形にはなれないと、むしろ逆さまの、それが、そういう規定があれば違うことに使われてしまう。
これは、民進党、旧民主党が出された人種差別撤廃法に対して参考人質疑をさせていただきましたけれども、そのときに参考人の方々が指摘されていたということを皆さん方も覚えておられると思いますけれども、予期せぬ、本来ヘイトをやめさせようと思ったその禁止規定行為が逆にほかのことに使われてしまって公権力の暴走につながってしまうと、それを我々、一番警戒しなければならないと思っております。同時に、その枠の中でいかにしてヘイトを止めるかと。
ですから、これは、まずこの法律を作って、そして国が宣言することによって国民のモラルを高めていくという、そういう方法で我々はヘイトを抑え込んでいきたいと思っております。

○有田芳生君

第二条、定義のところにある適法に居住するというところなんですけれども、もう一度具体的にお聞きをしますけれども、在日コリアンに対する差別的表現の本質というのは、国籍ではなくて民族的出身に基づく排除であるというのは京都朝鮮第一初級学校襲撃事件の最高裁判決でも明らかなことですけれども、それは何度も強調をされております。ましてや、在留資格というのは無関係じゃないですか。

○西田昌司君

在留資格無関係というのは、つまり、私が言っているのは、適法に居住している人は当然ここで、日本の国に居住する権利があるわけでございます。しかし、適法でない方は、これは国の法律によって本国に送致されてしまうという形になるわけであります。ですから、法律がしっかり機能していますと、本来不法な方はおられない形になってくるわけなんですね。
今現在またやっているのも、現実問題起こっている立法事実としては、適法に住んでおられる在日コリアンの方々がそういうヘイトスピーチの被害を受けておられると。ですから、そういう立法事実に鑑みこの法律を作っているわけでありまして、もとより、だからといって、先ほどから言っていますように、適法に住んでいない方々にヘイトスピーチをやってもいいとか、そういうことを言っているわけではもちろんございません。

○有田芳生君

先ほどの仁比委員への答弁だったと思いますけれども、難民認定申請中の方はそれは当たらないというお話でしたけれども、それは法務省は知っているけれどもヘイトスピーチをやる連中は知らないわけですから、これまでどおり排除のデモをやるということを、それを止めることはできないというふうに思います。
もう一点、人種差別撤廃委員会の一般的勧告の三十第七項にはこう書かれております。人種差別に対する立法上の保障が、次です、出入国管理法令上の地位に関わりなく市民でない者に適用されることを確保すること、及び立法の実施が市民でない者に差別的な効果を持つことがないよう確保すること。
与党案ではそれに反することになりますので、人種差別撤廃条約の違反だと、そういう国際的な指摘がなされる可能性があると思いますが、いかがですか。

○矢倉克夫君

まず、与党案がというか、人種差別撤廃条約上の義務というのは、もう既に現行法で担保されているという理解であります。そもそも一般的勧告ですので、これは特定人、特定国に対しての勧告ではないという理解でありますが、どの部分を指していらっしゃるのかはちょっと定かではないんですが、今回の法律がこれに違反するというような認識には立っておりません。

○有田芳生君

そういう認識に立ってもらわなければ困ります。
もう一点最後に、時間が来ましたので、アイヌ民族に対するヘイトスピーチです。
二〇一四年からずっと続いております。二〇一四年八月十一日、アイヌ民族、今はもういない、二〇一四年八月二十二日、アイヌ利権がある、二〇一四年の十一月八日には銀座でアイヌをターゲットにしたヘイトスピーチデモが行われました。そういう事態が現実にあるわけですから、これはもうアイヌ民族へのヘイトスピーチについては立法事実があるんですよね。ところが、与党案では外国籍者あるいは外国の出身者が不当な差別的言動の対象になっておりますけれども、アイヌ民族については除外されている。
やはり、人種差別撤廃条約の定義に基づいて民族というものを外してはならないのではないかというのがこのヘイトスピーチ問題の核心的部分だと思いますが、いかがでしょうか。

○西田昌司君

我々側としましては、今目の前で行われてきたこの在日コリアンの方々に対するヘイトスピーチをいかにして食い止めるかという、そこを立法事実としてこの法律を作ってきたわけでございます。
もとよりアイヌの方に対する差別が、またヘイトが許されるものではありません。しかし、そこはこの法律を議論していく中で、いわゆる行政のこの法律の運用面含めて、この国会の議論の中で、アイヌの方々も含めヘイト許されないということは運用面で、運用面と申しましょうか、要するにこれ理念法でございますから、宣言することによって可能ではないかと思っております。附帯決議始め、そこにも当然含まれるんだと、そういう御意見は是非先生方からお寄せいただいて、実りある立法にさせていきたいと思っております。

○有田芳生君

時間が来たので終わりますけれども、小川委員からも多くの質問、残したままになっております。今、西田委員からも、この法案を審議する過程でとおっしゃいましたので、是非とも今日で終わりにすることなく、与党案をより良いものに変えていき、日本からヘイトスピーチをなくしていく、その大きな力にしていきたいという思いを表明して、質問を終わります。

○三宅伸吾君

おはようございます。自由民主党の三宅伸吾でございます。質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。
質問の少し順番を変えまして、今ずっと議論になっておりますこの定義と申しますか、この法律は第一条に目的書いてありまして、本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組について、基本理念を定め、及び国等の責務を明らかにするとともに、基本的施策を定め、これを推進することを目的とすると、こういうふうに書いております。
この法律の肝は、もう何度も議論になっておりますけれども、「本邦外出身者に対する不当な差別的言動」、これがキーワードでございます。法案のタイトルを含めまして法文全部で十四回この言葉が出てまいります。この「本邦外出身者に対する不当な差別的言動」が何かということが一番大事なことでございまして、これは皆さんも御案内のように、第二条にこの定義の規定がございます。
ただ、この定義規定、じっくり読みませんとなかなか難しいのではなかろうかと思います。もう何度も読み上げられておりますけれども、ちょっともう一度読みますけれども、第二条、「この法律において「本邦外出身者に対する不当な差別的言動」とは、専ら本邦の域外にある国若しくは地域の出身である者又はその子孫であって適法に居住するもの(以下この条において「本邦外出身者」という。)に対する差別的意識を助長し又は誘発する目的で公然とその生命、身体、自由、名誉又は財産に危害を加える旨を告知するなど、本邦の域外にある国又は地域の出身であることを理由として、本邦外出身者を地域社会から排除することを煽動する不当な差別的言動をいう。」と、このように第二条書いてございます。
この第二条の肝は、私二つあると思いまして、まず第一は、第二条で言うと四行目でございますか、「本邦の域外にある国又は地域の出身であることを理由として、」、これが第一の要件ではなかろうかと思います。そして、第二の要件が次の「本邦外出身者を地域社会から排除することを煽動する不当な差別的言動」と、こういうふうに書いてございます。
じゃ、この第二条の最初の方に書いてあるものはこれ何だということでございます。最初の方には、専らから始まりまして、いろいろ書いてありますが、最後に、名誉又は財産に危害を加える旨を告知するなどと書いてございます。これは、典型例をここに示して、これを中核として、その中核の行為を含んで、本邦の域外にある国又は地域の出身であることを理由として、本邦外出身者を地域社会から排除することを扇動する不当な差別的言動と、こういうふうに私は読むんであろうと思うんですけれども、発議者の矢倉さん、いかがですか。

○矢倉克夫君

ありがとうございます。
今、三宅理事から、これ典型例だというふうにお話もありました。まさに理念法として、我々が理念として掲げているのは、あのような不当な差別的言論があることで地域社会、共生社会を分断する、そして暴力を誘発するような社会があってはいけないと、まさにそういうようなものをなくしていこうというところであります。でありますので、概念として広く逆に捉えることもできる。これが、先ほど来からの話ですと、禁止規定とかですと、公権力がどこまで介入できるかということをきっちり決めなければいけないので、逆に言うと反対解釈というようなことも余地が出てくる。それ以外のところは公権力が介入していいんだというような反対解釈があるわけですけど、そのようなことはこのような法案ではないと。
今おっしゃったような形で、理念の下で、我々としては、まず大きなくくりとして、本邦の域外にある国又は地域の出身者であることを理由とした本邦外出身者を地域社会から排除することを扇動する不当な差別的言動ということを挙げました。それを表す典型例として、今申し上げたような話も申し上げたわけであります。
でありますので、じゃ、ここに公然と書いているから、それ以外のものが全く差別的言動をしていいものかというような解釈があるわけではなく、当然、文脈上、我々が理念として掲げている社会、それを侵害するような言動であればそれは許されないという方向の解釈になるかと思います。
具体例ということでありますが、例えば公然でないということでありますので、その公然でないような状況での言論ということになる。ただ、その前後の文脈で、最終的に地域社会の分断となるような言論であればそれは対象になるという方向に行き着くというふうに理解しております。

○三宅伸吾君

私の次の質問までお答えいただきまして、ありがとうございました。
私が次にお聞きしようとしたのは、この専らから告知するなど、これが典型例だと、要するにここの部分は誰がどう考えてもけしからぬヘイトスピーチの表現行為だろうということを確認をさせていただいた上で、この典型例の中を読みますと公然とという言葉があるものですから、じゃ、公然じゃないものはもう関係しないのかと。そうじゃないという可能性も典型例であるならば、例外として公然でない差別的言動もあるんではないかという御質問に対するお答えを今、矢倉発議者からいただいたというわけでございます。
じゃ、この関係でもう一点お聞きさせていただきます。この典型例の中に適法に居住するものという、適法にという言葉が入っております。先ほど来、西田委員が、違法に日本に入ってきた方はどうするんだということに対して、原則ということでお答えになったと理解をしております。
ただ、極めて例外的なことを私これから申し上げます。これは、専ら適法にという方々をこの概念のコアとして例示をしているわけでございますので、原則、適法に日本に住んでいる方に対するヘイトスピーチは良くありませんよというのはもう当然でございますし、それを前提に西田委員がお答えになったのもよく分かりますけれども、ちょっと重箱の隅をつつくようなことを申し上げますけれども、この第二条をきちっきちっと重箱の隅をつつくような目で読みますと、適法に居住していないものを対象にしても、場合によっては不当な差別的言動にはならないんでしょうか。

○矢倉克夫君

適法でないものに対しての言動が不当な差別的言動になる、今申し上げたとおり、これはその文脈によって、ただ、ヘイトスピーチ、不当な、じゃ、適法にいない者に対してこのような非常に許されないような態様でやっていいかということを、お墨付きをあげているものでは当然ございませんで、それは全て文脈上によると。この定義というか、我々が理念としている、地域社会の分断とかそういうものを許されてはいけないという、そういうようなものに該当し得るものであればやはりそれは該当し得るし、ただ、正当な言論として、これはいろいろな言論はあると思いますし、政治的な表現として様々な意見もありますので、そういうようなものに該当するというような判断がなされればそれは当たらないということであると思います。
ただ、当然ですけれども、何度も言います。今、ヘイトスピーチをやっているような人たちがこれに反対解釈をして、そのような人たちに対してのヘイトスピーチを、これお墨付きを与えたものだということは、これは一切当たらないというふうに改めてお伝えしたいと思います。

○三宅伸吾君

まさに今、矢倉委員がおっしゃったとおりだと思うんですね。ここに「専ら」と入れて典型例だというふうに書いておけば、典型例以外のものも極めて例外的には差別的言動に当たると、こう読めるわけでございますので、禁止規定がないからといってお墨付きを与えているわけではないというふうに私は解釈をした次第でございます。
それで、ちょっと第三条でございますけれども、本法案は、いわゆるヘイトスピーチの解消を目指して新法の制定を目指す法律案であります。法律である以上、公権力に対して何らかの作為、不作為の行為規制をかけたり、国民等の権利と義務について新たな法的規範を創設したりするのが普通の法律案だろうと思うわけでございます。
この法案が成立すれば国民にとってどのような権利義務の変更があるのか、第三条を踏まえてお答えいただけないでしょうか。

○矢倉克夫君

ありがとうございます、三宅理事がおっしゃっていた、権利義務というふうにおっしゃっている念頭のものは、恐らく公権力等、一般的な概念でいえば、公権力等が国民の権利を、行為を抑止させるであるとか、そういうような部分の文脈であろうかと思います。そういう意味合いの上での権利義務というところであれば、これは変更はないというふうに理解はできるところであります。
他方で、この三条にのっとってという話ですが、三条は、先ほど来からも申し上げましたとおり、やはりヘイトスピーチというものがない社会を、これは許されないという価値判断をまず宣言した上で、そのようなものがない社会を国民がしっかりつくっていく、主体者となってしっかりとつくっていくという、これは宣言であります。既に先ほどもお話もしたところですけれども、国民の大多数の人はこのようなヘイトスピーチは許されないということをこれは理解はされているわけですが、それを更に一歩進めて、行動にもつながるような行為をしていってこれを根絶していこうという、それを一体としてつくっていこうというその宣言である。
そういう意味での、このような社会をみんなでつくっていこうということを、方向性を国民の行為として定めたものとしては、義務という形よりは努力義務という形になるかもしれませんが、規定をさせていただいたということになります。

○三宅伸吾君

次に、第四条から七条についてお聞きをしたいと思います。
四条以下は国と地方公共団体について定めたものでありますけれども、国につきましては、第四条一項で、最後の文末のところですけれども、「措置を講ずる責務を有する。」と書いてございます。第五条を読みますと、「必要な体制を整備する」、第六条、第七条は、最後、「取組を行う」とあります。これは国に関する規定でございますけれども、一方で、地方公共団体については、第四条から七条の二項全ての文末が「努めるものとする。」と、こういうふうに書いてありまして、大分ニュアンスが違う書き方をしております。
国に対する法律の要請対象と地方公共団体に対する法律の書きぶりと違う書きぶりをしてありますけれども、この国と地方公共団体の書きぶりの違いはどういう意図を持たれているのか、御説明いただけますでしょうか。

○矢倉克夫君

国においては、例えば、法務省を中心に本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた様々な施策を実施する責務を有するということであります。とりわけ啓発活動でありますとか、これも理念としてこういうヘイトスピーチは許されないということを初めて国としてうたったわけであります。その方向性に従って、啓発活動とかその他の人権擁護施策等は、これ広く国民一般に向けられたものとして国が主体的にやる責務があるというところであります。
他方で、地方公共団体等、その本邦外出身者の方が人口の中でどれくらい占めるかとか、もろもろな事情もあります。あと、こういう言動が行われている頻度等もある。そういった実情に応じて、その解消に向けた取組に関して施策を講じるように努めたと。これは、要するに、国と地方公共団体が果たすべき役割の違いを踏まえて書き分けを行ったというところであります。
ただ、その上で、この前も視察に行って現場の方がおっしゃっていたのは、地方公共団体とかに話を持っていっても、やはり国が何かしら方向性を示していないから我々は何もできないんだというようなお声があったというところもあります。
今回、このような形で理念法として、国の法律としてヘイトスピーチは許されないという姿勢をしっかり表したことは、今後、地域の住民の方が地方自治体に対して様々な施策を訴えるときの後押しをすることにはなるというふうに理解もしております。

○三宅伸吾君

ありがとうございました。
私は、この法案は、ヘイトスピーチに対する我が国、そして国民の取組を加速する貴重なリーガル・イノベーションの一歩だというふうに高く評価をしたいと思います。
最後に、ヘイトスピーチをめぐって様々な裁判例等が過去もあったと思いますけれども、野党提案の法案も含めまして、一つの契機となった事件があったと思います。もう有田委員が何度もこの委員会で取り上げていらっしゃる京都での朝鮮人学校に対する示威活動に関する裁判例でございます。これ、学校関係者を原告として、在日特権を許さない市民の会などを被告とする損害賠償と街頭宣伝差止め請求事件が民事の分野では提起をされて、判決ももう確定しているところでございます。
私がこの判決を読ませていただいて、またニュースも読んで一つだけ、余り話題になっていないことを一つ取り上げたいと思います。平成二十五年の京都地裁判決によりますと、朝鮮人学校に対する三回目の示威活動は実は仮処分の決定を無視してなされております。その仮処分の内容は、学校の北門中心点から半径二百メートルの範囲内での示威活動はやるなという仮処分が出ておったんでございます。しかし、それを明白に認識した上で、無視してやっちゃえというような事実認定が判決に書いてあります。
最高裁にお聞きしたいんでありますけれども、我が国では、裁判所の命令を無視しても、その命令無視それゆえをもって身体拘束をされたり罰金を科す制度がないと私は理解をいたしております。一定の金銭を支払わせる民事執行法の間接強制というのはありますけれども、これは後日の損害賠償の保証的な制度だと理解をしております。
英米法では法廷侮辱罪をもって裁判所の権威を守り、司法判断を維持していると。日本は英米法体系とは違いますので、まあ英米の話かなと思っておりましたけれども、実は大陸法のドイツにも同じような制度がございます。若干アメリカとは違いますけれども、罰金刑、身体拘束も可能でございます。それから、中国においてもドイツと似た制度があるというふうに聞いております。
そこで、最高裁判所にお聞きいたします。
仮処分命令が無視される状況は過去どのぐらいあるのでございましょうか。例えば、私が知っているだけでも、日教組とあるホテルの会場を使う使わないという問題がございまして、あのときも仮処分命令を無視して使わせなかったということがございました。その司法判断の無視される事案ということは、司法の権威を軽んじているというか、ちょっと言葉は下品でございますけれども、裁判所がというか、日本の司法権がなめられているんじゃないかというふうにも受け取れるわけでございます。
その仮処分命令が無視される状況の程度と、それから、こうしたことが起きていることについてどのように最高裁として受け止めていらっしゃるか、御所見をお聞きいたします。

○最高裁判所長官代理者(菅野雅之君)

お答え申し上げます。
裁判所の仮処分命令に違反する事例につきましては統計がございませんので把握しておりませんが、委員御指摘のとおり、公刊物に登載されている裁判例の中に仮処分命令違反があったことがうかがわれるものがあることは十分承知しているところでございます。
一般論といたしますと、裁判所の仮処分命令の効力が生じている以上はこれが遵守されるべきことは当然であり、仮処分命令に違反する事例が存在することにつきましては誠に遺憾であると申し上げるほかないところでございます。

○三宅伸吾君

遺憾でなかったら困るわけでございます。遺憾であるだけでとどまって、果たして司法改革をしようとずっと二十年近くやってきたこの日本国政府はこれでいいと思っているのかどうか、ちょっとお聞きしたいと思うのでございます。
ちょっと法務省にお聞きいたしますけれども、法廷等の秩序維持に関する法律というのが既にあるんでございますけれども、この法廷外での不作為等を内容とする仮処分決定とか差止め判決を無視する行為は本法の対象にならないということをまずちょっと確認をさせていただいた上で、対象外であるなら、先ほど最高裁の方から遺憾であるという御発言がございましたけれども、遺憾である状態がずっと続いているわけでございますけれども、司法の権威を守る何らかの法制度整備の必要性について法務省としてどう考えているか、お聞かせいただけますか。

○政府参考人(萩本修君)

御紹介のありました法廷等の秩序維持に関する法律、この規定に沿って御説明しますと、この法律は、第一条で、民主社会における法の権威を確保するため、法廷等の秩序を維持し、裁判の威信を保持することを目的としておりまして、第二条で、裁判所又は裁判官が法廷又は法廷外で事件につき審判その他の手続をするに際し、その面前その他直接に知ることができる場所で、秩序を維持するため裁判所等が命じた事項を行わず若しくはとった措置に従わない行為又は不穏当な言動で裁判所等の職務の執行を妨害し若しくは裁判の威信を著しく害する行為を制裁の対象としているものでございまして、委員御指摘のような裁判所の仮処分決定に従わない、無視することにつきましては、この法律の制裁の対象に当たらないというように考えております。
御指摘のとおり、司法の権威を守るという観点からは、これも御紹介がありましたが、英米法における法廷侮辱、裁判所侮辱のこの思想を参考に、我が国でも裁判所の仮処分決定や判決に当事者が従わない場合に制裁を科す制度を導入すべきという意見が、意見といいますか見解があることは承知しております。
もっとも、我が国の民事裁判手続におきましては、一方当事者が裁判所の仮処分決定や判決に従わない場合に、裁判の実効性を確保をする方策としましては、その相手方当事者の判断により仮処分決定や判決に基づく執行手続を取ること、別途損害賠償請求訴訟等を提起することなどが予定されているところでございます。
このような法体系の下で、司法の権威を守ることを目的として裁判結果に従わないことにつき制裁を科す制度を導入することにつきましては、制裁までの必要があるかどうか、司法の権威を制裁によって保持することが手段として適切、妥当か、司法の権威は国民の理解と信頼に支えられるべきではないか、そういった種々の観点から慎重に検討を要するものと考えております。

○三宅伸吾君

ありがとうございました。
ヘイトスピーチの対策関連法を含めても、その法律を作りました、しかし、最後一番大事なのは、その運用、それから執行、最後は司法救済でございますけれども、その司法救済の司法判断が無視されるようなことではそもそも良くないのではないかということでございます。
今おっしゃいましたその民事分野の日本の法体系の過去のいろいろ積み上げはあるというのはよく分かりますけれども、そんなことを言っておりましたら裁判員制度はできなかったということになりますし、ロースクールもできなかったということになります。それから、可視化法案もできなかった。それから、様々な司法改革、二十年間のこの議論の前と後とは、私は世界が本来であれば違うべきではなかろうかと思っております。
裁判所の権威をいかにして守るか。ちょっと言い過ぎかもしれませんけれども、二割司法とか日本社会の日陰、片隅で、司法はそれでいいんだと、余り出しゃばるなという世界であれば、私は、今法務省の方がおっしゃったような、これまでの体系の上でやっておればよかったということかもしれませんけれども、少しずつ世界が変わってきているように思いますので、また機会を見てこの点は議論をさせていただきたいと思います。
今日はありがとうございました。

190回 法務委員会(刑事訴訟法改正案)

2016-04-19 国会質問議事録

○矢倉克夫君

公明党の矢倉克夫です。
四人の参考人の先生方、貴重なお話、大変にありがとうございました。
主に可視化についてお伺いをしたいと思うんですが、私のこの問題に対しての基本認識をちょっと一言申し上げると、可視化は、その趣旨は、まずはやはり捜査の適正化だと思います。可視化をすることで捜査機関に心理的ないろんな要素等も与えて、やはり適正な捜査手続というものをしていくと。もう一方で、可視化した証拠、可視化することで供述証拠の任意性の立証が資すると。この二点があるんですけど、私の感覚としてもやはり前者の方を基調にしなければいけないと。供述調書の任意性立証のための可視化という位置付けはやはり良くないし、小池先生がおっしゃったとおりの、実質証拠としての頻発するというような事態になるという事態は良くないと思います。
その上で、この法案自体は、河津参考人がおっしゃったとおり、まさに第一歩として、今申し上げた捜査の適正化に資するための第一歩として非常に評価をするところであるし、他方で、今後、運用で捜査の適正化に資する形でしっかりと全面可視化ということをやっていかなければいけない、そのセットをもってやらなければいけないという理解であります。
その上で、ちょっとお伺いしたいのは、大澤参考人に三点ほどお伺いしたいんですが、先ほど小池参考人がおっしゃっていたところ、部分可視化というものの弊害というところは非常に重要なポイントでもあるかと思います。これを、どのようにこの弊害をなくしていくのかという部分の理解がやはり必要かなと思っておりまして、まず一点目ですけれども、先ほど小池参考人が弊害となる法律上の今回の改正法の根拠として、やはり例外事由のところであるというふうに挙げられていたと思います。具体的には、私の理解では被疑者の拒否の条項ですよね。拒否という明文のみならず、その他の被疑者の言動により、記録をすると被疑者が十分に供述できないと認めるときという文言があった。
先ほど、大澤参考人のお話だと、これは後に捜査機関の方でこの部分を立証するという、その立証の部分で担保できるからというお話だったんですが、この条文の解釈そのものもやはり拒否というものに準ずるようなものでなければいけないという解釈がやはりあるべきであると。明示に拒否したわけではなくて、録画はしてはいいけど、その代わり録画したら私はしゃべらないよとか、そういうようなことを言う被疑者の方もいたりとかする。
そういった録画によって結局捜査が進展しないというようなこともある場合に、どういうようなことなのかというような事情もやはりあると思うんですけど、まずお聞きしたいのが、その他の被疑者の言動により云々、これが裁量の余地がないようにやはり拒否というものと準ずるぐらいの厳格な定義であらなければならないというような解釈はあるべきだと思うんですけど、その辺り、どのようにお考えでしょうか。

○参考人(大澤裕君)

拒否を受けて、その他被疑者の言動とされているわけですから、それはやはり拒否に相当するようなということかと思います。
ただ、供述できないというのが、大事なことは、私は黙秘しますから供述しませんというのではなくて、やはり録音されているから供述したくてもできませんと、そういうふうに取れるような拒否なりあるいは言動だ、もう一つ、後ろの方からの掛かってくる部分もあるのかなというふうに思っております。

○矢倉克夫君

ありがとうございます。
じゃ、二点目、また済みません、大澤参考人に引き続きなんですが。
先ほどの小池参考人の御意見の中ですと、全面可視化というところでありますけど、結局、録画請求の場面では、やはり自白調書が作成されたとき、そこに関係するところだけ録画請求というような、要は裁量で一部分だけを表に出してきてというようなことがあるんじゃないかというようなお話もあったところであります。これについては改正法の中でどのように担保をされているか、その濫用のおそれをなくす担保をされているのか、あと運用上どういう工夫が考えられるのかという点について御意見賜れればと思います。

○参考人(大澤裕君)

自白の取調べが請求された場合に任意性が争われたというときには、その自白が獲得された取調べについて録音、録画の取調べ請求をせよということになっていますが、もちろん、任意性を疑う事由というのがその当該取調べよりも例えば前の取調べの中にある、そのように被疑者、被告人の側から主張をしていく、そういう場合というのは当然あるんだろうと思います。
その場合については当然そこが争点ということになってきますから、その点をきちっともし言っていって公判前整理手続ということになっていけば、恐らく争点関連証拠としてそこの部分の録音、録画というのが弁護人側に開示されるということにもなってくるでしょうし、また、それが弁護人の側で検討をして任意性を争う証拠として使えるということになれば、弁護人の側からそれを請求していくということもあり得るのかもしれません。
あるいは、ここの部分でこういう任意性を疑わせる事情がありましたと、当該取調べよりも前の部分にあって、それがずっと影響してきているんですということになれば、検察が、訴追側としては、そこにそういう本当に何か問題のある取調べがあったのかどうか、なかったのか、その点を立証する、あるいは、仮にあったとしても、それは当該取調べにはもはや影響していないんだということを立証するのか。それを立証していかなければいけないということになると思いますが、その際には、やはりその間の取調べの録音、録画というのは非常に有力な資料になるだろうと思います。
ですから、必要があれば検察側から取調べ請求をするということもあるでしょうし、先ほど申し上げましたように、はっきりと被告人側からその点に争いがあるんだということで公判前整理に持っていけば、それは証拠開示の対象にもなっていくんではないかというふうに認識しております。

○矢倉克夫君

今、弁護人の動きというものもお話あった。後ほど河津参考人にも、弁護人としてどのようにこの辺り実効性を確保していくのかということはちょっとお伺いしたいと思うんですが、ちょっともう一つ、大澤参考人に、済みません。
先ほど小池参考人がおっしゃっていた別件逮捕、これは対象事件じゃない、別件としては対象事件じゃないわけですけど、その別件の取調べのさなかに対象事件である余罪の取調べが開始をされる、このような事案があったわけですけど、今政府の答弁などでも、そのような別件逮捕中に余罪が、対象事件が取り調べられたときにもこれは録音、録画の対象になるというようなことはあったわけであります。ただ、どこからどこまでが切り分けが難しいかというようなお話があったというふうに理解しています。
先ほど大澤参考人、供述の中で録音・録画義務がない場合も任意性を立証させるためには録音、録画しないといけないという方針をお話をされていたんですけど、例えば今のような場合を想定すると、何といいましょうか、別件で取り調べている最中に対象事件の余罪が取り調べられるようになったというようなときに、そこから余罪を切り分けというのが難しければ、最初からそういうのを想定してできる限り幅広く録音、録画をしておくというような運用をすべきだというような意見もあると思うんですが、その辺りについてはどのようにお考えでありますでしょうか。

○参考人(大澤裕君)

もし捜査機関の側が初めから余罪を取り調べるつもりであったのだとすれば、それはやはり撮っておかなければいけないという方向になるんだろうと思います。
ただ、いきなりぽろっと出てきたとかいう場合については、ぽろっと出たものについて撮っておけというのはこれはなかなか難しいわけで、しかし、ぽろっと出たことについて更に今度はそこについて聞いていくということになれば、これは対象事件についての取調べだというふうに仕切っていかざるを得ないということでしょうから、一旦そこで止めて、もしそれについて更に聞くということならば録音、録画をしていくということになるんだろうと思います。
小池参考人が恐らく言われたようなケースというのは、余罪とそれから対象事件とがかなり密接に関連していて、実は余罪について質問していることが対象事件にも関わりを持ってくるような場合ということなのかもしれません。ここの部分はなかなか切り分けが確かに難しいということになりますけれども、結局どっちについて聞いているのかということで考えていくしかないということではないかと思います。

○矢倉克夫君

ありがとうございます。
では、河津参考人に、やはり法曹三者の中でどういうふうにこの適正化のための運用をしていくのかというところが大事だと思うんですが、とりわけ今の、先ほど小池参考人や桜井参考人の方からも部分可視化の危険というようなお話もあった。それは弁護人の立場から、どのようにそういうのがなくなるように実務を行っていくべきとお考えか、ちょっと御意見をいただければと思っております。

○参考人(河津博史君)

まず、やはり部分可視化が危険であり全面的な可視化がされるべきであるという点について、私もお二人と意見を同じくしております。
ただ、全面的な可視化がなされない、あるいは例外規定に当たるなどの理由で可視化されていない部分があるときにどのような弁護活動を行うのかということについて、私どもは専門家集団として検討しなければなりません。
具体的には、録音、録画された取調べの中に任意性を疑わせるような何か事情が記録されている場合には、私どもは当然、記録媒体について証拠開示請求をして開示を受け、その部分の証拠調べ請求をすることになるだろうと思います。
逆に、録音、録画されていない取調べにおいて任意性に疑問を生じさせるような言動等があった場合、例えば私どもは弁護人の接見記録であるとか、被疑者から受け取った手紙であるとか、あるいは被疑者ノートなどを活用して、そこで問題のある取調べがあったということを公判で立証していくことになるだろうと思います。
先ほど村木厚子さんの事件を御紹介しましたが、その事件の中では被疑者ノートというのが証人の供述の任意性、あるいは信用性の証拠として重要な役割を果たしました。

○矢倉克夫君

ありがとうございます。
桜井参考人にお伺いをしたいと思います。
先ほどのお話、やはり警察というものの潜在的な考えなければいけない点というのは、本当に胸に迫るようなところもあったと思います。これについて、職務として警察もやっている、ただ、それがなぜそういうような形になってしまうと思われるのか、率直に御意見がありましたら。

○参考人(桜井昌司君)

警察の側に立ってみますと、犯罪者ってうそつきなんですよね。私もちょっと昔悪いことをしたのでよく分かるんですけどね。そういう人を日常的に相手にしていると、多分真実を言う人の真実を見抜けなくなってしまうんじゃないかと思います。
警察官って人を信じませんよね。多分ここの表に立っている人も、誰か悪いことするやついないかって立っていますよね、あの連中は。いつもいつも人を疑う人格というのは、残念ながら、正義の思いを持って警察官になってもゆがんでしまうと、私これ確信を持っていますね。ですから、一人の警察官の正義感とか警察官の善意というのを疑うわけじゃないんです。あの方たちが組織に入ってしまったら、その組織に、論理にはまらなくちゃ生きていけないんですよ。
そして、多分、私これが一番大きな原因だと思うんですけど、あの方たちは逮捕したことをもって一〇〇%犯人と確信します、愛媛県警から流出したあの捜査規範でもお分かりになると思うんですけれども。その一〇〇%目の前の人間を犯人と思った場合が、この人を犯人にするのが社会正義、我々は正義を守る、だから多少の悪いことはしてもいい。社会の人も思いますよね、どうせ逮捕されたような人は何か悪いことをしているんだもん、少し厳しくしてもしようがないよと。私自身も実は逮捕されるまでそう思っていました。
ですから、警察という組織というのは残念ながらこういう違法行為を行ってしまう組織なんだと思うんですね、日常的な思いで。ですから、その部分に法律的なちゃんとした歯止めがない限り、こう解釈できる、ああ解釈できるというような法律では、多分この全面可視化とかいろんな部分で冤罪が防がれるような法律にはならないだろうなと思います。

○矢倉克夫君

濫用のおそれというのがないように運用していくというところがやはり非常に大事であるなというふうに改めて感じたわけですけど、最後、小池参考人と大澤参考人と河津参考人に、改めてこの可視化の部分について、それぞれのお立場はあると思うんですが、このような形でまずは一歩として法定義務化をしたということについての評価を一言ずついただければと思います。

○参考人(小池振一郎君) 先ほど大澤参考人が言われたことについてちょっと触れさせていただきたいと思うんですが、任意性立証のためにということで、録画されたよりもその前の録画を出すということでいいではないかという趣旨の御発言がありました。その前の録画を出すことによって、公判前整理手続の中で要求して、それを弁護側が出せばいいんだというお話がありました。もちろん、それはそうしなければならないと思うんですが、実は、しかしそれは録画があるという前提での話であって、録画がない場合はどうするんでしょうか。
先ほど愛媛県警の捜査マニュアルの話が出ましたけれども、この人が真犯人だと思えば、もう徹底的に気迫を持ってやれと、被疑者を弱らせるまでやれというのがその捜査マニュアルなんです。そういう場面、録画しませんよ。そういうときにどうするんですか。こんなのは公判前整理手続で録画出せと言ったって、ないものは出せませんよね。そういうときの対応ができなくなるというふうに思われます。
ということで、今回の法案はいろいろな抜け道、そういう場合にペナルティーがないわけですね、今のような場合に。全過程可視化していないから一つでも供述調書を出しちゃ駄目というのなら分かるんですが、そうでない限りは、この法案では欠陥があると言わざるを得ないと思います。

○参考人(大澤裕君)

今の点について一言だけ私も申し上げさせていただいてよろしいでしょうか。
仮に、そこの部分についてなかった、しかし被告人側からそこの部分にこういう問題があったというふうに言われたときに、そこが任意性立証の一つの争点となったとしますと、そこに正当な理由がないにもかかわらず録音、録画がないということは、これは多分訴追側にとってはかなり立証上大きなダメージになることではないかというふうに考えています。
その上で、今回の録音・録画制度ですけれども、先ほど来、特に警察の取調べが問題なんだということが御指摘がございました。
現在、運用あるいは試行という形で検察ではかなりの程度に録音、録画が行われつつあります。それに対して、警察の方はなかなかそこまで付いていっていないという状況です。そういう状況の中で、一定の限定された事件についてではありますけれども、原則全面的に録音、録画をする。そこにも、しかし、取調べが重要な証拠収集手段だからその機能を損ないたくないということで一定の例外がありますけれども、しかし、例外を残しつつも、一応原則としては全過程の録音、録画だ、それを警察についても導入することになっている、そこが一つこの法案の非常に重要な点であろうかと思います。私は、そういう点で一歩前進であろうというふうに思っているところです。

○参考人(河津博史君)

現在、六法を開いて刑事訴訟法の全ての条文を見ても、取調べの録音・録画義務というのはどこにも規定されていません。したがって、捜査機関が幾ら運用で録音、録画をしているといっても、彼らがある事件でしなくても、それは直ちに違法の評価を全く受けないということになります。しかしながら、今回の法律案が成立し、一定の限られた事件とはいえ録音・録画義務が刑事訴訟法の中に書き込まれれば、録音、録画をしないことは違法の評価を受けることになります。
しかも、今回の法律案では、対象事件については身柄事件に限定されていますけれども、全過程が原則という形で規定することになっています。これは恐らくほとんどの事件で多くの取調べが録音、録画の対象になるはずです。そうであるとすれば、それらの録音、録画されている取調べの中で不適正な行為が行われることは相当抑止できるはずです。そうであるとするならば、第一歩としてこの法律案を成立させることが重要であると私は考えております。

○矢倉克夫君

ありがとうございました。

【矢倉かつお】法務委員会_20160414

2016-04-14 矢倉かつおチャンネル

認知症高齢者の事故責任を明確に

2016-04-14 ニュース

公明新聞:2016年4月14日(木)付

米村東大准教授が党プロジェクトチームで講演

 

 

 

 

 

米村東大准教授が党プロジェクトチームで講演

公明党「認知症高齢者の支援と補償のあり方に関する検討プロジェクトチーム(PT)」(座長=佐藤茂樹衆院議員)は13日、参院議員会館で会合を開き、東京大学大学院の米村滋人准教授から、認知症高齢者による列車事故で、家族に損害賠償責任がないとした3月1日の最高裁判決に関する講演を聞いた。

米村准教授は、今後の課題として「認知症高齢者が関わる事件や事故で誰が責任を負うかという範囲を明確にすべき」と指摘した。

190回 法務委員会(刑事訴訟法改正案)

2016-04-14 国会質問議事録

○矢倉克夫君

こんにちは。
刑事訴訟法審議入りということで、先日、可視化の状況とまた通信傍受の関係、視察へ行きまして、様々示唆をいただいたわけであります。今日は時間の関係もあり、通信傍受の方をお伺いしようと思っております。質問の通告、ちょっと順序を変えまして、まずは通信傍受の必要性、最後の方に予定していたところからお伺いをしようと思っています。
質問に入る前に一言ですが、当然、刑事裁判の原則というのは、十人の真犯人を逃すとも一人の無辜を罰するなかれと、十人真犯人が仮に逃れたとしても一人の無罪の人を罰してはいけないというのがこれ大原則だと思うんですが、悩ましいのは、私も刑事訴訟法を考える上で一つ考えているところは、やっぱり立法府にいる限りはそれだけではいけないのかなと。当然一人の無実の人も罰してはいけないわけなんですが、やはり国民に対しての安心、安全を守るという意味合いでは両方、人権保障と真実発見、これをやらなければいけないと。要するに、十人の真犯人を決して逃すこともなく一人の無罪の人も決して罰しないと、両方やらなきゃいけないというのはやはり悩ましい、難しいところであるなと。そういう制度設計をどうすればいいのかというところが課された課題であると思っています。
今回の刑事訴訟法についてですが、まず無罪の方を、無実の方を罰しないということのためには何が課題だったかといえば、やはり供述調書の過度な依存、これが自白強要、先ほど人質司法といいますか、そういうお言葉もあったわけですが、そういうようなものを排除するために今回可視化をやった。ここが第一の起点であって、他方で、それをやることで、従来は首謀者の人とかを検挙するにはやはり取調べしかなかったという経緯があってそういう取調べの過酷さが出たわけですけれども、今回それを可視化することで、他方で、取調べに依存していた部分を今度は合意制度という形で対応もし、また様々な事情に応じた通信傍受の拡大というところもやり、真実発見というところもしっかりと担保もする。手続的な適正は弁護人が様々な国選弁護についても関与する対象を広げるという意味合いでは、全体として見れば、冒頭申し上げた真実発見と人権保障というところを両方しっかりやっていくという、パッケージとしては非常にバランスの取れた法制になっているのではないかなというふうに私は個人的には理解をしているところであります。
以上申し上げた上で、冒頭申し上げたとおり、まず警察の方にお伺いをしたいんですが、今回の通信傍受、この必要性、とりわけ、従来対象犯罪は四種に、薬物、銃器、集団密航、組織的犯罪にこれ限定していたわけですけれども、今回これを拡大するというところになると思います。
私も、この四個に限定をしていた経緯部分、当然様々いろんな御意見がある中で、その当時にやはりとりわけ必要性を感じられたものに限定をしていたという経緯はあるというふうに認識しています。集団密航などもまさにそうであったと思いますが、ただ他方で、そうであれば、時代の流れに応じてこの必要性というものが更に広がっていけば、それに応じた考えも広がっていくというところは理解もできるところである。
それを前提にした上で、今回は特におれおれ詐欺、特殊詐欺を一つ、そして暴力団であったりあとテロ組織による組織犯罪を二つ目、最後、児童ポルノ、これが念頭にあるというふうに理解をしておりますが、それぞれについて拡大をした理由、その妥当性についてどのようにお考えか、警察庁、答弁をいただきたいと思います。

○政府参考人(三浦正充君)

まず、組織的な犯罪一般ということで申し上げますと、組織的な犯罪におきましては、その準備及び実行が密行的に行われまして、犯行後にも証拠を隠滅したり実行犯を逃亡させたりするといった工作が組織的に行われることも少なくなく、それらを実行するための手段としてしばしば携帯電話等の通信手段が悪用されております。また、末端被疑者を検挙しても、組織による報復等を恐れて、組織実態や上位者の関与の状況について供述を得ることは容易ではなく、通常の捜査手法によっては犯行の全容解明や真に摘発すべき犯罪組織中枢の検挙が困難であるといった捜査の実情がございます。
例えば、特殊詐欺につきましては、首魁や中核メンバーの下で掛け子、受け子等の複雑な構造の犯行グループにより組織的に敢行をされているわけでありますが、掛け子、受け子といった末端被疑者についてはある程度の数検挙できるわけでありますけれども、なかなかその上位の者、特に首魁、中核メンバーといったところの検挙がなかなか難しいというのが現状であり、それが、なかなか被害の拡大が収まらないという、そういう原因になっているというように認識をしております。
また、殺傷犯関係で申しますと、取調べにおいて自己や組織の上位者の関与について否認をすることが多いということでありますし、また、児童ポルノにつきましては、海外のサーバーに販売サイトを持つ、頻繁にアドレスの変更を行うなど被疑者らの特定や追跡が困難であるという事情がございます。
また、連続爆破テロのテロリストグループが更なる犯行を予告している場合や、テロに関連する爆発物原材料の組織窃盗を認知した場合等において通信傍受を捜査に活用することも想定をされるところでありますが、テロ組織につきましても、組織による報復のおそれ、あるいは組織的な隠蔽工作を行うために供述や情報を得にくいという実情がございます。
こうした理由から、通常の捜査手法だけでは犯罪組織中枢の検挙が困難であるという捜査の現状がございまして、通信傍受の対象犯罪をこうした犯罪類型にも拡大をしてその全容解明に資する証拠の収集を可能とする必要があると、このように考えているところでございます。

○矢倉克夫君

高齢化とともにいろんな、振り込め、おれおれ詐欺で被害に遭われた方も増えている。テロの世界的な脅威というのもありますし、また通信技術高度化で児童ポルノの問題もある。それぞれ御説明があったと思います。
今、一つ、上層部に対しての捜査というところがありました。他方で、携帯電話等を使うのは、まさに上層部の人が使うわけではなく、最末端でもないにしても、それよりもちょっと上ぐらいの人がというような部分もある。上層部に果たして検挙できるのかというようなところもあります。
警察庁にお伺いしますが、今までの通信傍受でどのような形で上の方にまでしっかりと捜査が行ったのか、過去に例があればお伝えいただければと思います。

○政府参考人(三浦正充君)

通信傍受の施行から平成二十七年までの間に、通信傍受を実施した事件に関して逮捕した人員数は計六百四十人でございます。その中で、これは網羅的に把握をしているものではございませんけれども、平成二十五年から二十七年までに警察が通信傍受を実施した事件に関して二十六年及び二十七年中に逮捕した人員数は二百十八名であったところ、そのうち、暴力団の幹部に当たるとして都道府県警察から報告を受けた者は三十名でありまして、通信傍受が暴力団等の犯罪組織中枢の検挙や組織の実態解明に一定の効果を上げていると考えております。
ちなみに、この逮捕人員数に占める暴力団幹部の割合は約一四%でありますが、刑法犯における暴力団員等被疑者検挙人員のうち幹部の占める割合の過去三年の平均が約八%でございますので、こうしたものと比べても、通信傍受によって幹部を比較的多く検挙できているという実績がございます。
あと、若干の事案で申し上げますと、この通信傍受を行った事案については、公判や捜査への支障等もございますのでなかなか具体的に申し上げることは難しいのでありますけれども、少し概略的に申しますと、例えば暴力団による薬物密売事案におきまして、組織的に複数件にわたって薬物密売を繰り返している実態を解明をするなどし、組長を始め配下の構成員等計二十六名の逮捕に至ったものを始めとして、大掛かりな薬物密売事案におきまして、組長を始めとする多くの構成員を逮捕した事例などがあるところでございます。

○矢倉克夫君

今、データと一般的な例を挙げて御説明いただきました。
他方で、もう既に議論もあるとおり、やはり通信傍受、一番の問題はプライバシーの問題、これ憲法上の問題でもあると思います。これについてはどのように担保をされていらっしゃるのか。無関係な会話等も混入しないような、不必要なところで通信傍受はしないようなというところでありますが、制度を設計されている法務省にお伺いもいたしますが、こちらについては、まず補充性という要件が一般的に課されております。これは従来もある要件ですけど、他の方法では著しく困難な場合でのみこのような手法が許されるというところですが、どのように認定をされるものであるのか、答弁いただければと思います。

○政府参考人(林眞琴君)

現行では、この補充性というものは、他の方法によっては、犯人を特定し、又は犯行の状況若しくは内容を明らかにすることが著しく困難であると、こういった場合に限り傍受をすることができるとされておるものでございます。
〔委員長退席、理事西田昌司君着席〕
この場合の他の方法によってはという部分でございますけれども、これは、犯人を特定したり犯行の状況若しくは内容を明らかにすることが著しく困難という場合に、その傍受令状請求の時点までにこの事案に応じて可能な限り取調べあるいは捜索、差押え、各種の照会、こういった捜査手段を尽くしてその捜査を行ってきたけれども、なおこの犯人を特定し、又は犯行の状況若しくは内容を明らかにするに至っていないと、そして、今後も通信傍受以外の手段によってはこういった犯人を特定したりすることができない、またあるいはそれが著しく困難であると、こういった場合をいうことになります。
この要件を満たすかについてどのように判断するかにつきましては、やはりそれまでにどのような捜査手法で具体的にどのような証拠が収集されどのような事実までが明らかになっているか、こういったことを踏まえまして、さらに、欠けている、それまで明らかになっていない部分というものを考えまして、それらを裁判所に対して具体的な事情に即して疎明資料で疎明をすることによって初めてこの補充性が満たされるかどうかが認定されるということになります。

○矢倉克夫君

今、どのように認定をするか、これまでどういうような証拠で認定をされたかとか、そういう情報の蓄積とか、そういう部分を前提にした上で、やはり内部でもしっかりこれは指導を徹底しなければいけない話であると思います。その辺りは今日は質問するわけではありませんが、別途、引き続きしっかりと体制を組んでいただきたいというふうに思います。
もう一つ要件として今回新たに加えられたのが、これは組織性の要件であります。これについては、あらかじめ定められた役割の分担に従って行動する人の結合体でなければいけないという要件にこれはなっている。これは法務省にまたお伺いしますが、なぜこれが必要であるのか、この認定はいかに図るのかを答弁いただければと思います。

○政府参考人(林眞琴君)

まず、この組織性の要件を改めて付け加えた部分につきましては、これはやはり通信傍受というものにつきまして、これが組織犯罪における対応をすると、そういった法の趣旨を全うするためにこのようなものを付け加えているわけでございます。
〔理事西田昌司君退席、委員長着席〕
その上で、当該罪に当たる行為があらかじめ定められた役割の分担に従って行動する人の結合体により行われるものということの意義でございますけれども、まず一つには、その対象犯罪が人の結合体、すなわち二人以上の者が結合して形成された集団により行われるものであること、そして次に、人の結合体を構成する者が、犯罪の実行に限らず、その準備や証拠隠滅等の事後措置も含めまして犯罪の遂行に向けて必要となる役割を分担し、またそれに従って行動すること、さらには、その役割分担があらかじめ定められたものであること、こういった三つの要件が必要となるものと考えております。

○矢倉克夫君

今のに関連してもう一つだけ林局長にお伺いしますが、例えば、今回、暴力団、テロ、そちらについての組織犯罪も入ったわけですけど、特に最近のテロ組織とかは、昔アルカイダなどは中央の指令があってそこから組織的に指令をするという、そういう縦の組織というのがしっかりしていたわけなんですけど、この前のベルギーの件なども、よく巷間言われているところでは、テロが起きたわけですけど、やはり現地ですよね。最近のテロ組織というのも思想を媒体にした緩やかな連合体みたいな形になっていて、やはりもう、ホームグローンと言われているんですけど、現地でその思想の感化された組織が動かしたと。後で犯行声明があったわけですけど、後付けのような犯行声明だったというふうに言われている。要するに、中央からの指揮命令系統というのがしっかりしていない中での連合体のようなものがあるわけですけど、そういうようなものが今の組織体という要件の中ではどのように評価をされるのか、これ一般論で結構ですけど、御答弁をいただければと思います。

○政府参考人(林眞琴君)

先ほど申し上げました組織性の要件の中で、まず一つ、通常、組織の場合の上下における指揮関係、指揮監督関係があるかどうか、こういったことについては今回のこの組織性の要件の中には含まれておりません。したがいまして、上下での指揮監督関係がなくても、先ほど申し上げた三つの要件の組織性の要件を満たせばこの要件に該当するということでございます。
また、組織ということで、継続的な結合体であることまでは要しておりません。したがいまして、例えば構成員の一部の変更が集団の同一性に影響を及ぼさないという意味での継続性までは不要と考えております。そういった意味におきまして、臨時的に形成される結合体ということでも、この今回の組織性の要件は満たすということになります。

○矢倉克夫君

現実の部分もそうですし、あと、今言ったような形の解釈であると思います。他方で、広がり過ぎないような形で、これは傍受令状に対しての疎明の在り方とか、そういう部分でしっかり指導をしていくというところであると思いますので、是非よろしくお願いいたします。テロの問題に対処するという意味合いでの必要性はあるというふうに私も理解もしております。
じゃ、次に、質問に移りたいと思います。これもまた法務省の方にお伺いもしたいと思うんですが、通信傍受手続の合理化についてになります。
冒頭申し上げましたとおり、全体の中で人権保障と真実発見というのをこれは確保する上での位置付けとして、通信傍受というのはこれ非常に必要であると思います。時代の状況に応じて必要性の部分があるので、当然濫用を避けなければ、やらなければいけない話なんですが、今まで通信傍受が、じゃ、どれくらい行われていたかというと、これ平成二十五年では実施事件は十二件という、諸外国に比べればやはり少なかったということがあります。
これはどういう背景かといえば、法制度上できなかったというよりは、法制でできた部分もあるけど、実際、現実なかなかできなかったというところがある。それは、なかなか立会人の方の負担であるとか、やはりそういうようなものもあったのではないかと、事実上の制約というところでありますね。そういう、現行が、今行っている通信傍受手続から生じた事実上の制約というものをどのように今回捉えられて、改正法によってどういうふうに対応されているのか、説明をいただければと思います。

○政府参考人(林眞琴君)

御指摘の現行法の運用上の問題点等につきましては、まず一つとしましては、現行法では通信傍受を実施する間は例外なく通信事業者が常時立ち会うということが必要とされておりまして、傍受の実施場所や立会人をする職員等の確保が一つには通信事業者の大きな負担となっている点がございます。また、傍受の実施場所や立会人の確保等のために、傍受を行う数週間前から捜査機関と通信事業者とで協議をする必要がございます。これが一つには通信傍受を迅速に行うことの上での障害ともなっている実情がございます。さらには、捜査員や立会人は、実際に立ち会いますと、実際に通話が行われるまでの著しく長い時間を多くは待機、電話が掛かってくる間の待機のために費やすと、こういった極めて非効率的な事情が生じているわけでございます。
そこで、今回は通信傍受法施行後の通信暗号技術の発展を踏まえまして、この手続の点で合理化、効率化を図るということを考えたものでございまして、これが実際に、一つには一時的な保存を命じて行う通信傍受という一つの方式でございますし、さらには特定電子計算機を使う場合におきましては、通信事業者の施設ではなくて捜査機関の施設においても、これを一つにはリアルタイムで特定電子計算機を用いて行う通信傍受、あるいは同じく特定電子計算機を用いて一時的保存を行いつつ行う通信傍受、こういった形で、現行も合わせますと四つの手法で行うことができるようにすることにしまして、この手続合理化あるいは効率化を図ることとしているものでございます。

○矢倉克夫君

今四つのというふうにおっしゃいました。一つが現行で、残りは、一つは一時的保存方式、残り二つはいわゆる特定装置を用いるものでありますが、特定装置を用いるリアルタイムの方式と一時的保存方式であると思います。ただ、他方で、現行はリアルに、まさにずっと立会人が常駐をしているということがあった、今回それが外れたというのはやはり一つ大きな変わり方であると思います。
また法務省、局長にお伺いもしたいんですが、この現行方式における適正化担保の手法の最たるものは、これは立会人であります。様々立会人が果たされた役割、これからも果たしていく役割はあると思うんですが、その役割について御説明いただければと思います。

○政府参考人(林眞琴君)

現行の通信傍受法におきまして、この立会人の役割でございますが、具体的に申し上げますと、一つは、傍受のための機器に接続する通信手段がこの傍受令状により許可されたものに間違いがないか、これを確認すること、二つ目には、許可されている期間、傍受令状で許可されている期間というものが実際に守られているのかどうか、三つ目には、該当性判断のための傍受が適正な方法で行われているかどうか、四つ目が、傍受をした通信等について全て録音等の記録がなされているかどうか、こういった四つの事項につきましてチェックするということがまずございます。それから、さらには、傍受の中断又は終了の際に裁判官に提出されることになります傍受をした通信を記録した記録媒体につきまして、改変を防止するために封印を行うこと、これが役割とされております。
以上の役割を果たすことによって、通信傍受の実施についてその適正を確保することとされております。

○矢倉克夫君

今、封印とともに、現場の傍受の適正化を立会人がまさに五感をもって図るというようなお話であったと思います。
とりわけ、いわゆるスポット傍受と言われているものであります。これもまた局長にお伺いもしますが、この前視察に行って現場見させていただいた。捜査官がヘッドホンで聞かれるわけですけど、捜査官が聞かれているところで立会人が近くでこれを見ているわけですけど、やはり現状、距離が離れている中において、本当にスポットで傍受をしているのかというところは果たしてすぐに見えるのかどうかというところは一つ多くの方が思われるところだと思うんですが、このスポット傍受をそういう形で外形的にチェックをしているということですけど、これ実際、本当に何をしているのか分からないというような確認できないような状態で、どのようにその適正化担保の手法を立会人の方が果たされているのか、その辺りについて御説明いただければと思います。

○政府参考人(林眞琴君)

現行の通信傍受法の下で、立会人は外形的にいわゆるスポット傍受、これは具体的にはその機器のスイッチのオン、オフをしているかどうか、こういったことをチェックしているわけでございますけれども、御指摘のとおり、仮に捜査官が傍受機器のスイッチのオン、オフを行っていないことをこの立会人が認識してそのことを指摘することができるという場合があるにしましても、実際に必要最小限で該当性の判断をするという、そのいわゆるスポット傍受が適正に行われているのかどうかということにつきましては、最終的にはこれは通信の内容を踏まえなければ判断できないわけでございます。
したがいまして、現行通信傍受法のやはりこの該当性判断のための傍受の適正というものは、基本的には傍受をした通信はこれは全て傍受の原記録に記録されて、それが裁判所にそのまま提出されて保管される、そのことを通じて事後検証が可能になるということによって初めて担保されているものと考えております。

○矢倉克夫君

まさに、その場ですぐに、例えば傍受の内容がどういうものかとか立会人も聞けるわけではありませんので、すぐになかなか判断できない、最終的には事後チェックだというような部分もあったかと思います。
それも後ほど、その事後チェックの辺りはまた後ほどお伺いもするといたしまして、他方で、また、そのような形での事後チェックの運用というのはしっかりこれ確保しなければいけないんですが、もう一つ、立会人の方がいらっしゃることによる効果というものでよく言われるのは、やはりその場に人がいるということが現場の捜査官に心理上の抑止、事実上の抑止になると。法的にいろいろと事後的にチェックをするという部分での抑止もあるんですが、そこに人がいるということで捜査官の心理にも働きかけて適正な傍受をするという事実上の抑止があるというような話もありますが、これについて、これも含めまして、立会人の今回果たした役割というのはどのように代替されるとお考えであるのか、これ局長にお伺いをしたいと思います。

○政府参考人(林眞琴君)

これまでの立会人の役割というものが、今回、特に特定電子計算機を用いる通信傍受の実施手続においてどのように代替されていくのかということでございますけれども、これにつきましては、まずは一つは、この特定電子計算機を用いる通信傍受の実施手続におきますと、通信事業者が傍受令状により許可された通信手段を用いた通信を、その令状で許可された期間に即して特定電子計算機へ伝送するということとされております。これによりまして、先ほど申し上げました立会人の役割のうち、傍受のための機器に接続する通信手段が傍受令状により許可されたものに間違いないかどうか、あるいは許可された期間が守られているかどうか、こういった点の適正はこれによって担保されると考えております。
また、現行通信傍受法におきまして、立会人が傍受をした通信等について全て録音等の記録がなされているかをチェックして裁判官に提出する記録媒体の封印を行うという、この役割につきましては、特定電子計算機で、法律で定めた仕様によりまして、傍受をした通信の全てとその傍受の経過を含めて、これが自動的に、かつ改変できないように暗号化されて記録される、こういったことによって担保されると考えております。
さらに、先ほど申し上げました、立会人は外形的な形で、実際にスポット傍受のための機器のスイッチのオン、オフを行っているかどうかということを外形的にチェックしているわけでございますが、この点につきましては、この特定電子計算機を用いる通信傍受の実施の手続におきまして、その該当性判断のために傍受したものも含めて、傍受をした通信が全て改変できない形で自動的に記録媒体に記録されて裁判官に提出される、それによって事後的に検証され得るということが確保されますので、立会人がいる場合と同様にその傍受の実施の適正が確保されるものと考えておりまして、こういった形で、立会人がいなくても通信傍受の適正を担保できる手当ては、この現行通信傍受法との比較におきまして手当てはなされていると考えております。

○矢倉克夫君

原記録のチェック、事後的チェックということですが、またこれ局長にお伺いしますけど、それを手続的に機会としてどのように確保されているのか、それも御答弁いただければと思います。

○政府参考人(林眞琴君)

裁判官が保管する原記録の事後的な検証でございますが、幾つかの場面がございます。
まず一つは、職権による審査という場合がございます。通信傍受法におきましては、他の犯罪の実行を内容とする通信の傍受が行われた場合、傍受の実施状況を記載した書面の提出を受けた裁判官は、職権で当該書面に記載された通信が現行通信傍受法の十四条に規定する通信に該当するかどうかの審査を行うこととしております。その際には、提出されております傍受の原記録などが用いられるということになります。
続きまして、通信当事者等による審査の場合がございます。これは、傍受をされた通信の当事者は、裁判官に提出された傍受の原記録を聴取、閲覧し、あるいは複製を作成して、この原記録から捜査官が不適正な傍受を行っていないかどうかをチェックすることができるわけでございます。
さらには、不服申立てに基づく審査がございます。検察官若しくは検察事務官又は司法警察職員がした通信の傍受に関する処分に不服がある場合、その者は裁判所にその処分の取消し又は変更を請求することができまして、その際、当該裁判所におきましては、提出された傍受の原記録を用いるなどして通信の傍受の適正か否かを審査することとなります。
さらには、公判手続を通じた審査がございます。これは、検察官が傍受記録の内容を公判手続において証拠として用いようとする際には、その事件の被告人やその弁護人は傍受記録の正確性の確認などのために傍受の原記録の聴取等をすることができ、その際、不適正な傍受が行われていなかったかどうかがチェックされ得ることとなります。そして、公判手続におきましては、傍受の過程に重大な違法があった場合には、違法収集証拠と判断されて傍受記録を証拠とすることができないこととなり得るわけでございます。
こういったことで、現行通信傍受法におきましては、各場面におきまして傍受が適正に行われたか否かを提供されている傍受の原記録を用いるなどして事後的に審査する手続を整備しているところでございます。

○矢倉克夫君

最終的には証拠の扱いとしてもチェックがあるということでありますが、一つ挙げていただいた不服申立ての件数です。これ最高裁にお伺いしたいと思うんですけれども、件数といいますか、不服申立てについてどのような件数があるのか、お答えいただければと思います。

○最高裁判所長官代理者(平木正洋君)

お答え申し上げます。
平成二十四年一月一日から平成二十八年三月十五日までの期間における通信傍受法二十六条に基づく不服申立ての件数を調査しましたところ、平成二十四年がゼロ件、平成二十五年が二百五十六件、平成二十六年が三件、平成二十七年及び平成二十八年がいずれもゼロ件となっております。

○矢倉克夫君

今、ゼロであったり二百五十六であったりかなり変動が、二百五十六件ですね、ゼロであったり、かなり変動があるというところであります。
いろんな要因があると思うんですが、今回、これも踏まえた上で衆議院の方でも修正があったかと思いますが、特に通信傍受に関しての当事者に通知すべき事項を加えたということであります。この趣旨をまた法務省の方から御説明いただきたいと思います。

○政府参考人(林眞琴君)

現行通信傍受法及び今回の最初の政府案におきましては、この通信の当事者に対する通知の際に、傍受記録の閲覧、聴取等をすることができる旨を通知することとはしておりません。これに対しまして、今般の修正におきまして、通信当事者に対する通知を行う際には、傍受記録の聴取、閲覧等ができること、傍受の原記録の聴取、閲覧等もできること、また不服申立てができること、こういったことを併せて通知することとしたものと理解しております。
この修正は、傍受の実施の適正を一層確保するという観点からのものであると理解しておりまして、捜査機関としては、当然のことながらこの規定に従いまして通信当事者に対する通知を適切に行うことになるものと承知しております。

○矢倉克夫君

事後チェックがやはり必要である、そのための手続、担保のための手続であるというふうに、妥当な修正であるというふうに思います。
今回、特に通信傍受の手続の合理化でこれ一番変わるのは、従来であれば通信事業者の施設のみだったのが、これ捜査機関の方の施設でも行えるというところが変わりであると思います。四六時中、捜査員がほかの人がいない中で作業をするというところです。
これを受けて、警察庁にお伺いしたいんですけれども、警察庁としても、通信傍受の開始前、実施期間中、そして終了の各段階における必要に応じた必要な指導を行うということを各種答弁でおっしゃっているんですけれども、それ具体的にまた改めて御説明いただきたいと思います。

○政府参考人(三浦正充君)

まず、前提として申し上げておきたいと思いますのは、警察施設で通信傍受を行う場合でありましても、全ての傍受結果を機械的かつ確実に暗号化処理をして記録するなどの特定電子計算機の有する機能によりまして現行法で立会人が果たす役割は漏れなく代替をされることから、傍受の適正性は確実に担保をされるというふうに考えております。
もっとも、新たな方式による通信傍受におきましては技術的に高度な機器を使用することなどから、その適正かつ効果的な実施を担保するため、専門的知見を有する職員が必要な指導を行う体制を整えるということを検討をしております。体制や指導方法を含む具体的な運用の在り方につきましては今後検討をしてまいりたいと考えておりますけれども、例えば、警察本部の適正捜査の指導を担当する警察官等で通信傍受を実施する事件の捜査に従事していない者、その事件を直接担当していない者に、必要に応じて、傍受の実施の現場等において法令、手続面の指導や機器の設定、接続等技術面の指導を行わせることなどを想定をしているところでございます。

○矢倉克夫君

内部での監視監督体制徹底という部分もそうですし、また、いろんな第三者からもしっかりとチェックを受けるような体制というのもやはりちゃんと取っていただきたいと思います。
その上で、次、特定電子計算機と言われているものに関連してちょっと御質問をしたいと思うんですが、先ほど通信傍受の手続の合理化で四種挙げていただいたうち、一つは現行、もう一つは一時的保存方式ですが、もう一つはその特定電子計算機、これ二つあります、それを利用したものであると。特徴としては、通信事業者の施設で傍受をされたものをこれ暗号化して、それを捜査機関の方に送るという形になります。
通信データをこれ送信して捜査機関の施設で傍受できるわけですけれども、これは警察庁の方にお伺いをいたしますが、送信時に通信が漏れないようにするにはこれはどのように工夫されているのか、工夫される予定であるのか、御答弁いただければと思います。

○政府参考人(三浦正充君)

警察におきましては、個人情報を始め多くの機密情報を保有をしておりますけれども、それらを取り扱う業務に用いるネットワークはそもそもインターネットとは接続をしておりません。したがいまして、近時大きな問題となっている標的型メール等のセキュリティーリスクとは遮断をされております。
新たな方式による通信傍受では、いわゆる閉域網というものを用いまして、ネットワークのインターネットからの分離等、これらの措置を講じることに加えまして、送受信される通信傍受に係る情報それ自体にも強固な暗号化を行うこととなっておりまして、セキュリティーについては万全を期しているところでございます。
なお、こういった方式につきましては、その安全性について、先日御視察をいただきましたように、IT技術を専門とする民間コンサルティング会社であるデロイトトーマツコンサルティング合同会社に調査研究を委託して確認を求めましたところ、情報漏えい対策の観点についても技術的に実現可能であり、これによる対策を漏れなく取ることによって通信傍受の適正性の担保が可能と結論付けられたものと承知をいたしております。

○矢倉克夫君

ありがとうございます。
法務省にまたお伺いしたいと思うんですけれども、やはり現場でいろいろと改ざんされるおそれもある部分はある、人がやることでありますので。それをどう制度的に担保するかというところですが、今回それを特定電子計算機の機能の部分でいろいろ担保されているという制度設計であると思います。法務省として、改ざんの危険性に対して今回の機能がどのように適正化を図るとお考えであるのか、御答弁いただければと思います。

○政府参考人(林眞琴君)

先ほど来申し上げましたように、傍受の適正を最終的に担保するものが、この原記録がそのまま、傍受した内容が全て原記録に記録されて、それが裁判官に提出される、そして保管されると、これが非常に最終的な担保でございますので、その間での原記録の改ざん防止というのは非常に重要な点でございます。
この点につきましては、現行法では立会人が封印をするというような形でこれを担保しているわけでございますが、それに代わるものといたしまして、今回法律案の中に特定電子計算機が備えるべき機能というものを法律で定めることとした上で、これによりまして、傍受した通信の内容と傍受の経過、こういったものを併せて記録媒体に自動的に記録する、そしてそれが即時に裁判所の職員が作成する暗号によって暗号化されて、その後、捜査機関がその改変を不可能とする機能、こういったものを法律に定めまして、こういった法律の定める機能を持つ特定電子計算機によって傍受を実施することによりまして改ざん、改変というものを防止するということとしておるところでございます。

○矢倉克夫君

警察庁にお伺いしますが、先ほど三宅理事の質問の中で、事後チェックがやはり大事である、であれば直接に裁判所の方に原記録をというような質問であったと理解もしておりますが、それに対して法務省の方からの答弁が、やはり今とかぶる部分は、自動的に暗号化しているから大丈夫であると、要するに機械が改ざんを許さないような形で設計されているから必要はないというような答弁であったと思います。
他方で、今回もう傍受が捜査機関の施設の中で行われている以上、理論的には、信頼性がある機械であってもそれを改造する可能性も当然ある、幾ら技術的、機能的に適正化を担保しても、その機械自体が改造されて機能を無力化するようなことが仮にあったとしたら問題であると思うんですけれども、それに対しては警察はどのようにお考えでしょうか。

○政府参考人(三浦正充君)

特定電子計算機の機能は通信傍受法改正法の第二十三条第二項に列挙されているわけでありまして、これは法定の要件ということでございます。
したがいまして、実際に通信傍受に使用する特定電子計算機にはそれ自体にも強固なプログラムの改変防止措置が講じられるわけではございますが、このほか、裁判所も関与する暗号システムなどとも連動をするものでございまして、したがって、警察において装置の改変やすり替えを行うといった余地はないというように考えております。また、よしんばそうしたことが行われたとしても、通信事業者との正常な暗号の送受信等ができなくなるわけでありまして、通信の傍受自体を行うことができない仕組みとなっております。
そうしたことで、そうした改ざん、機械の改変ということは物理的にも行われ得ないものというように考えております。

○矢倉克夫君

また警察にお伺いしますけれども、実際の機械が正常な機械であるかどうかというところ、これを裁判所が判断するには、警察としては裁判所の判断の前提としてどのようなことをされるのでしょうか。

○政府参考人(三浦正充君)

警察庁としましては、信頼できるメーカーにその機器の製造を発注をするとともに、仕様書どおりに当該機器が製造され、必要なセキュリティーシステムも導入をされていることなどについてメーカーから証明書を発行してもらうことを検討をしております。
通信傍受を実施する場合には、捜査機関は裁判所に対し、通信傍受に使用する特定電子計算機等の技術的な事項を含め、裁判官が新たな傍受の方法を許可するのが相当であると判断するに足りる資料を提供することが求められているところ、メーカーから発行された証明書などを用いてこれを説明することを想定をしております。
機器の適正性について、説明を受けた裁判官におきまして、当該機器の信用性、適正性について御判断をいただくこととなると考えております。

○矢倉克夫君

ちょっと最後の質問になりますけれども、通信事業者の負担についてであります。
法務省にお伺いしますけれども、今回、対象事件が拡大することによって負担も当然増える一方で、常時立会いの必要がなくなるわけであります。その部分では負担は減少するわけですけど、総じて事業者の負担というのをどのようにお考えになっていらっしゃるか、答弁いただければ。

○政府参考人(林眞琴君)

まず、今回の新方式の導入によりましては、特定電子計算機を用いる場合におきまして、現行法で必要とされている常時立会いというものが不要になりますので、その立会人となる職員の負担、あるいは立ち会わせる職員を確保する通信事業者の負担、あるいは傍受の実施場所を提供する通信事業者等の負担というものがなくなるものと考えております。
また、一時的保存というものを命じて行う通信傍受の実施手続におきましては、立会いの時間というものが、その待機時間が省かれますので大幅に短縮されることになりまして、こういった面での人員面等での負担は大きく軽減されるものと思います。
他方で、一方で、あわせて、対象事件が拡大するということに伴う負担がどのように増加するかということにつきましては、やはりこの点につきましては、対象事件の発生件数については様々な事情に左右されますので、それについて一概に確たることを申し上げることは困難であると承知しております。

○矢倉克夫君

最後、警察庁に。
今、制度としての事業者に対しての負担をどう考えるかというところありましたが、例えば具体的には、今回、特定装置を用いた方式もある、そうすると送信装置などいろんな設備的な投資の部分も出てくるわけですけど、このような設備負担について警察庁としては事業者負担をどのようにお考えか、最後、答弁いただいて、質問を終わりたいと思います。

○政府参考人(三浦正充君)

特定電子計算機を用いる通信傍受を実施するためには、裁判所が用いる鍵の作成装置でありますとか捜査機関が用いる特定電子計算機のほか、通信事業者が通信の暗号化や伝送に用いる機器や伝送のための回線等のシステム整備が必要になります。
これらの整備すべきシステムの中には、これはもとより国で負担、整備をすべきものもございますし、また通信事業者に一定程度の負担をお願いせざるを得ないものもあると考えておりますけれども、通信事業者にお願いをする場合には、その負担が過度なものとならないように配慮をいたしまして、事業者との十分な協議、調整を行ってまいりたいと考えております。

○矢倉克夫君

終わります。

認知行動療法が有効

2016-04-13 ニュース

公明新聞:2016年4月13日(水)付

東本特任助教から話を聞く党PT=12日参院議員会館

東本特任助教(左手前から4人目)から話を聞く党PT=12日 参院議員会館

党再犯防止PT
性犯罪対策で意見交換

公明党再犯防止対策強化プロジェクトチーム(PT、遠山清彦座長=衆院議員)は12日、参院議員会館で性犯罪者の再犯防止に向けた取り組みの実情と課題について、千葉大学社会精神保健教育研究センターの東本愛香特任助教から話を聞き、意見交換した。

性犯罪者の再犯防止に向けた取り組みについて東本特任助教は、刑事施設で実施されている、犯罪傾向の強い考え方や行動の改善を図る認知行動療法に基づいた再犯防止プログラムに言及。「再犯防止に効果が出ている」と指摘した。

一方、東本特任助教は、課題として、プログラム実施者の育成や、性犯罪傾向の強い人が早い段階でプログラムを受けるための仕組みづくりなどを挙げた。

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