189回 法務委員会(船主責任制限法案 第三者被害の救済等)

2015-04-23

○矢倉克夫君
おはようございます。公明党の矢倉克夫です。よろしくお願いいたします。
今日の法案、今議題になっている法案、これは日本も批准をしている海事債権責任制限条約、こちらが改正された、それに対応する改正という部分であります。その部分では基本賛成というふうに思っております。今日は、それをまた前提とした上で、このような海難事故、それに当たっての被害者救済というものはどうあるべきかというところを議論させていただきたいというふうに思っております。
先ほども小川委員の方からも話のありました平成二十年の三月に起きました明石海峡船舶衝突事件における主に漁業被害、非常に多かったわけですけど、こちらの状況と、またどのような形で補償されたのか、その部分をちょっと簡単に御説明いただければと思います。

○政府参考人(水田正和君)
お答えいたします。
平成二十年の明石海峡での事故につきまして地元の漁業者団体から聞いたところによりますと、ノリの養殖業やイカナゴなどの漁船漁業などに約四十億円の漁業被害があったところでございます。しかしながら、船舶所有者の責任限度額を超えたということから、漁業者に支払われた賠償金は約四億円にとどまったというふうに承知しております。
水産庁といたしまして、こういった事態は漁業者の生計に関わる重大なものであると認識しておりまして、明石海峡での事故の際には、漁業共済の共済金約五億円の支払などによりまして漁業被害者への支援を行ったところでございます。
当時、この事故で被害を受けた兵庫県のノリ養殖業者の方々におかれましては、漁業共済への加入率が低く、また補償額の低い契約を選択されていた方が多かったということから十分に被害をカバーできなかったところでございますが、現在では、兵庫県のノリ養殖業者の共済加入率は九割を超えておりまして、補償額の高い契約が選択されていると承知しております。

○矢倉克夫君
現実的な対応として漁業共済の普及を更に進める、これは大事な部分であるので、引き続きしっかりやっていただきたいと思います。
ただ、今お話もありました、漁業権が侵害されて生活基盤が非常に苦しくなっている住民の方というのがいらっしゃる。私は、今やはり気になっている部分は、船主の責任制限という、これ原則的なように言われている。これ自体は合理性はある部分ではあると思うんですが、所与のものとして強調され過ぎてしまうことで被害者の保護というのが軽視されてしまうという傾向はやはりよくないと思います。両方をしっかりと両立させるという部分がやはり大事であるかと思っております。
今、とりわけこの船主の損害賠償の責任というのは、やはり注視すべきは過失責任であるわけですよね。無過失責任ではなくて、過失があって、それに相当因果関係がある損害について損害を賠償するという責務がある。これが民法の原則どおりの対応でありまして、この法律はやはりその民法の原則に対しての、いろんな政策上の理由もあると思うんですけど、特例を設けているという部分。そういう部分の中で、被害に遭っている被害者の方への救済という部分が、今メーンで御説明いただいたところは漁業共済になりますけど、これはやはり自己責任という部分になりますから、果たしてそれだけでいいのかというところはやはり議論はしていかなければいけないところであるかと思います。
国交省さん、今日来ていただいております。やはり同じような、明石海峡の事件を受けて、平成二十三年二月に、対応をどのようにするのか中間取りまとめをされていらっしゃる。いろいろなオプション、どういう方策があるのかというのを考えられた上で、やはり最終的には一つ一つなかなか難しいというような結論になっていた中間取りまとめであるというふうに理解もしております。
一つ一つ今検証するのはちょっと時間がないので幾つかだけですけど、まず、中間取りまとめの中で挙げられていた船主による国際基金の創設、これが現状難しいというふうに判断をされている理由を御説明いただきたいというふうに思います。

○政府参考人(櫻井俊樹君)
お答え申し上げます。
海運業の国際性に鑑みれば、責任限度額を超える被害について被害者を救済する制度を創設する場合には、国際的枠組みを前提として取り組むべきと考えております。そのような考え方から、二〇〇八年三月に発生しました明石海峡におきます船舶多重衝突事故を受けまして、関係省庁及び有識者から成ります船舶燃料油被害の補償制度に関する検討会を二〇〇九年十一月、国土交通省において立ち上げました。
今、先生御指摘のとおり、この検討会におきましては、複数の救済の方策、船主責任制限条約の簡易改正手続による責任限度額引上げ、今回の改正の部分でございますけれども、そのオプションのほか、船主責任制限条約の全面改正、バンカー条約において燃料油被害に特化した責任限度額を設定する、そして基金制度創設を含む複数の救済の方策について検討いたしました。
そして、御指摘の二〇一一年二月の中間取りまとめでは、国際的な船主の責任制度の枠組みがあることから、船主に対し更に拠出を求めて基金を創設することは船主責任制限制度が崩れることになると指摘されておりまして、国際的な枠組みの中で条約締約国の理解を得ることは相当に難しいと思われます。
また、油タンカーの場合には、荷主である油の受取人を拠出とする国際油濁補償基金に基づく救済制度があることを踏まえまして、船舶燃料油被害に対する基金制度の創設について、油の受取人のような拠出を求め得る者を検討しましたが、負担を正当化できる者も見出し得ないとの結論に至った経緯がございます。
今次、責任限度額の引上げ改正の採択以降、IMOに対しまして、責任限度額を超える事故の被害報告はございません。しかし、IMOにおきまして、引き続き、国際的な事故や条約締約国の制度改正の考え方について情報収集に努め、各国の動向を踏まえつつ、関係省庁とも連携して適切な対応をしてまいる所存でございます。

○矢倉克夫君
今、油タンカーにおける基金の話がありました。油タンカーは、同じような形で事故が、油漏れが起きたときの被害については、油タンカーというか、タンカー船、油漏れ、それについては基金があると。ただこれは、要は、荷主、石油会社等が元々基金の枠組みをつくっていて、それを国際条約に格上げしたという形であったと。私、事前に聞いた限りでは、今回のような明石のような事故、タンカー以外の事故の場合においては、そのような枠組みが現状ないからゼロからつくり上げなければいけないと、それは非常に大変だというようなお話でありました。
ただ私は、中間報告なんかは、そういうような認識もありつつなんですけど、船主以外の人は誰も責任拠出するような人、妥当な人がいないからという理由だけで否定しておりますが、であれば、船主でしっかりとそのような基金を、枠組みをゼロからであってもつくっていくというような姿勢はやはり持っていかなければいけないんじゃないかと、その部分はまず御指摘をさせていただきたいというふうに思います。
ただ、今お話もありました、では、基金では無理、じゃ今の現状の枠組みをどうやってつくり上げて改正していくのかというような観点からの中間取りまとめもあったわけですが、海事債権責任制限条約、この中間取りまとめの中で書かれていたものの一つに、今の条約に規定されている物的損害、これから環境損害という形のものを独立させてみて、それについては締約国が責任限度額を独自に設定する。要は、油漏れのような被害はまた別途の枠をつくって独自の責任制限額というのもつくっていくというような条約の改正の在り方もあるという話もありましたが、それについて簡単に、なぜこれが否定されたのか、御説明いただきたいというふうに思います。

○政府参考人(櫻井俊樹君)
お答え申し上げます。
中間取りまとめにおきましては、今御指摘の環境損害だけに限った限度額の設定引上げということに関しましては、船主の保険料の負担増などにより、独自の責任制限額を設定する締約国の海運、港湾の国際競争力への影響も懸念されるということ、一点。そして二点目に、さらに、その実現には、簡易改正手続によらない通常の海事債権責任制限条約の改正が必要となると。この二点を踏まえまして、同条約の締約国や海事関係などとの意見交換を通じ、理解を深めながら慎重に進めていくべき事項とされております。

○矢倉克夫君
慎重に進めるということは、これからまた進めるというところではありますが、やはり全体のトーンとしては、考えてもなかなか難しいというようなところで、入口のところで断念しているという部分がやはり多いかと思うんですよね。そこはしっかりまた進めていただきたいとは思います。
であれば、じゃ責任制限のこの額を条約上上げていくというような話になるわけですけど、御案内のとおり、この一・五一となる前にはオーストラリアから二・三倍というような提案があった、それは否定された上で一・五一という形になったというところです。結局、オーストラリアのような、日本と同じように油の被害に遭ったところは、より補償の充実というところを考えて倍率を考えたわけですけど、最終的には今回のように、物価の上昇を調整するという部分、そこのみでの調整で一・五一になったと。これは議論も分かれると思いますけれども、被害者救済という観点からどれだけ考慮がされていたのかというところは、やはり議論すべき部分はあるかと思っております。
時間がもうありませんので、ちょっと最後、大臣にまたお伺いしたいと思うんですが、この油の問題というのはやはり特殊性があって、要は責任制限というところで、通常やはり考えられる相手方というのは荷主と荷受人、このクローズな関係、契約関係にあったりとかする部分、そこら辺りの関係で責任制限というのがまず発生すると。この原則ができてきた時代もやはりそこを中心に考えていたんだと思うんですが、時代がどんどん変遷していって、あの油漏れのような、近隣住民のような第三者、関係していない第三者に対しての被害というのが発生してきていると。そういうような関係についてまで同じような原則原則というところだけでいってしまっていいのかというようなところは、やはり現実的にこれは考えていかなければいけない話であるかと思います。
今回、条約の枠組みをどうするかという難しい議論があるので、その難しい議論、ここを変えるというところは国際的な合意の枠組みを変えるというところでもあるし、原則自体を変えて条約を変えるというようなこと、なかなかこれは難しいということは分かる。その部分はあると思うので。
今日お伝えしたいのは、であれば、そこは変えるという選択肢とはまた別に、国内の問題として、この第三者に対しての被害救済という部分はやはりもっとしっかりと考えていくという姿勢。原則がこうだからというところで、あとは共済の保険、漁業共済でとか、そういう部分だけで終わってしまうような形じゃなくて、もう少し被害者救済というのを、とりわけ第三者との間の被害に対する救済というのをやはり考えていかなければいけないというふうに思っております。
ちょっと一言、もう少ししゃべらせていただきますけど、法務省の管轄というのはやはりいろんな官庁と共管する部分が非常に多くて、とりわけ、今回もそうなんですけど、基本法を所管している立場から法務省が所管をされて、そこにまた政策的な観点からいろんな省庁が入ってくると。ただ、いろんな省庁、ほかの省庁からの観点というのは、どうしてもやはりマクロ的な分野の視点というのが非常に多くなってくる。それはそれで大事なんですけど、法務省の存在意義というのは、そこで拾い切れなかったミクロ的なところを個別に拾っていって政策実現をしていくというところがやはり大事かと思っています。
法律の枠組みで今回のような被害者救済というのを変える変えないというような話は別にして、この法律は法律として、じゃそれ以外のところでこぼれた被害者の救済というのをやっぱり法務省が他省と連携をしてしっかりしていくべきでもあるし、法務省の役割であるというふうに私は思っておりますが、その辺りを、他省との連携も含めて法務大臣として御所見をいただければと、最後に一言、お願いいたしたいと思います。

○国務大臣(上川陽子君)
今回の船主責任制限法の趣旨につきましての、今改正をお願いするということでございますが、基本的にはやはり被害者に対して救済を進めていくと、これは国際的にも全体的な潮流であるというふうに考えております。そういう意味で、今の枠組みの中では第三者の部分についても制限が課されるということでありますけれども、やはりIMOの機関におきましても、様々なテーマでの、新しいテーマでも議論が進められておりますので、そうした方向に向けての取組については関係省庁としっかりと連携をしながら進めていきたいというふうに考えているところでございます。
先ほど来の話で、燃料油等におきまして漁業者等の被害額が発生していると、それに対して責任限度額を超える部分についてはなお被害が救済できないということ、このことについては大変重要な課題であると。これは、日本の国内のみならず、恐らく他の国も同じように抱えているというふうに考えておりまして、先ほど国土交通省からも御指摘がありましたけれども、IMOの場におきましても、国際的な事故あるいは制度改正の考え方、様々に情報収集をしながら、そしてその動向を踏まえながら対応し、また、国内的にもそれにふさわしいものにしていくべく関係省庁と連携をしてまいりたいというふうに考えております。

○矢倉克夫君
国内のまた問題としても、さらに、被害者救済という観点を法務省がまた主導してしっかりと訴えていただくということを改めて要望させていただいて、質問を終わりたいと思います。
ありがとうございます。