190回 法務委員会(ヘイトスピーチ解消法案答弁)

2016-04-19

○矢倉克夫君

ただいま議題となりました本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律案につきまして、発議者を代表いたしまして、提案の趣旨及び主な内容を御説明申し上げます。
近年、本邦の域外にある国又は地域の出身であることを理由として、適法に居住するその出身者又はその子孫を我が国の地域社会から排除することを扇動する不当な差別的言動が行われ、その出身者又はその子孫が多大な苦痛を強いられる事態が頻発化しております。かかる言動は、個人の基本的人権に対する重大な脅威であるのみならず、差別意識や憎悪、暴力を蔓延させ地域社会の基盤を揺るがすものであり、到底許されるものではありません。
もとより、表現の自由は民主主義の根幹を成す権利であり、表現内容に関する規制については極めて慎重に検討されなければならず、何をもって違法となる言動とし、それを誰がどのように判断するか等について難しい課題があります。
しかし、こうした事態をこのまま看過することは、国際社会において我が国の占める地位に照らしても、ふさわしいものではありません。
本法律案は、このような認識に基づき、憲法が保障する表現の自由に配慮しつつ、本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組について、基本理念を定め、及び国等の責務を明らかにするとともに、基本的施策を定め、これを推進しようとするものであり、いわゆるヘイトスピーチを念頭に、本邦外出身者に対する不当な差別的言動は許されないとの理念を内外に示し、かかる言動がない社会の実現を国民自らが宣言するものであります。その主な内容は次のとおりです。
第一に、前文を置き、我が国において、近年、不当な差別的言動により、本邦の域外にある国若しくは地域の出身である者又はその子孫であって適法に居住するもの、すなわち本邦外出身者が多大な苦痛を強いられるとともに、地域社会に深刻な亀裂を生じさせており、このような事態を看過することは、国際社会において我が国の占める地位に照らしてもふさわしいものではないという本法律案の提案の趣旨について規定するほか、このような不当な差別的言動は許されないことを宣言することとしております。
第二に、本邦外出身者に対する不当な差別的言動の定義を置き、専ら本邦外出身者に対する差別的意識を助長し又は誘発する目的で公然とその生命、身体、自由、名誉又は財産に危害を加える旨を告知するなど、本邦の域外にある国又は地域の出身であることを理由として、本邦外出身者を地域社会から排除することを扇動する不当な差別的言動をいうこととしております。
第三に、基本理念として、国民は、本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消の必要性に対する理解を深めるとともに、本邦外出身者に対する不当な差別的言動のない社会の実現に寄与するよう努めなければならないこととしております。
第四に、本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組に関する施策の実施について国及び地方公共団体の責務を規定することとしております。
第五に、基本的施策として、国は、相談体制の整備、教育の充実等及び啓発活動等を実施することとしております。また、地方公共団体は、国との適切な役割分担を踏まえて、当該地域の実情に応じ、これらの基本的施策を実施するよう努めることとしております。
以上がこの法律案の提案の趣旨及び主な内容であります。
本邦外出身者に対する不当な差別的言動が許されず、その解消に向けた取組が必須であることについては、参議院法務委員会において、実際にかかる言動が行われたとされる現地への視察や真摯な議論を通じ、与野党の委員の間で認識が共有されたところであると考えます。
何とぞ御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。

○委員長(魚住裕一郎君)

以上で趣旨説明の聴取は終わりました。
これより質疑に入ります。
質疑のある方は順次御発言願います。

○仁比聡平君

日本共産党の仁比聡平でございます。皆さん、おはようございます。
我が党は、ヘイトスピーチの根絶は政治の重大な責任であって、立法措置を含めた国会での大いな議論を求めてまいりました。そうした下で、このヘイトスピーチを社会的に包囲し、根絶の先頭に立つという政治の責任も強調をしてきたわけですけれども、昨年来、当委員会で議題となってきた、当時の民主党の皆さん始めとした野党の提出法案に続いて、今日こうして与党案が提出をされ、実質審議に入るということになったわけです。
これは、このヘイトスピーチを根絶をしようという運動、何よりヘイトスピーチによる被害の深刻さと当事者の皆さんの身を振り絞るような声を受けて行われているものであって、そうした意味で本当に大きな歴史的な意味を持っていると理解をしております。私たち参議院の法務委員会のこうした取組がヘイトスピーチ根絶の実りを上げるように、我が党としても力を尽くしていきたいと思うんです。
こうして与党の案が提出をされた下で当委員会を中心にして各党の協議が始まるに当たって、今日は、この与党案の意味するところについて様々な立場からの御意見が寄せられている中で、今日は与党案のその趣旨、意味というものをできる限りまず確認をさせていただきたいと思うんですね。特に三点について、法案の柱について御質問したいと思っております。
まず、その第一は、理念法の法たるゆえんということに関してです。先ほどの趣旨説明でも明らかですが、法案は、不当な差別的言動を、あってはならず、そして許されないことを宣言すると、そうした趣旨を前文で規定をされるとともに、第一条で本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消が喫緊の課題であるという認識を規定をした上で、第三条、基本理念として、国民の言わば努力義務という趣旨なのかと思うんですけれども、努めなければならないという規定ぶりで基本理念を記しておられるわけですが、このような規定にされた理由は一体どういうことでしょうか。

○西田昌司君

仁比委員の質問にお答えさせていただきます。
まず、この法律は、理念法という形で、禁止という形を取っておりません。その一番大きなのは、要するに、憲法上の表現の自由の保障をしっかりしなければならない、これは、やっぱりどうしてもこれは一番守らなければならない、そういう価値であるということを考えた結果、我々がこういう前文において本邦外出身者に対する不当な差別的言動は許されないということを宣言をし、更なる人権教育と人権啓発などを通じて国民に周知を図り、その理解と協力を得つつ不当な差別的言動の解消に向けた取組を推進するものであります。
表現内容を規制するのは、先ほども言いましたけれども、表現行為の萎縮効果をもたらすおそれがありますから、このような不当な差別的言動の禁止や、その禁止に違反した場合の罰則を定めるということはあえてしていないわけであります。もっとも、御指摘のとおり前文で不当な差別的言動を許されないと宣言しましたが、法律でそういうメッセージを発信すること自体が非常に私は重要な意義があるものだと考えております。
さらに、三条においては、国民に周知を図ってその理解と協力を得つつ、不当な差別的言動の解消に向けた取組を推進することとすることを受けて三条は書いているわけでありますけれども、この中で、いわゆる憲法の保障する表現の自由に関わる問題でありますから、警察などの公権力、ここで規制をして強制的に進めるのではなくて、まず国民全体が、国民一人一人が理解をしてそういう差別的言動のない社会の実現に寄与していくと、そういうことを図るべきであるということをこの法律によって示すことによって、国民にもその努力義務があるということを示させていただいているわけであります。
この効力でありますけれども、これらの規定と併せて、国に本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組に関する施策の実施義務や、地方公共団体にその実施の努力義務がまた掛かることになります。
この法律は、こうした結果、表現の自由に萎縮効果が生じないようにするためにこのような内容にしたものでありまして、禁止規定がないからといってヘイトスピーチを認めるとか、また我々与党側がヘイトスピーチに対して及び腰でやっているとかそういう姿勢ではなくて、憲法の保障する表現の自由との兼ね合いの中で最大限効果が発揮でき、国民にも理解を求めていくと、そういう趣旨でこの前文と併せて作ったということを御理解いただきたいと思います。

○仁比聡平君

今、自民党西田発議者からは、禁止規定は置いていないのであるというまず御発言が、御説明があっているわけですけれども、この点について強い意見がとりわけ当事者団体から上がっているのは御承知のとおりだと思います。
例えば、私たち国会議員に在日本大韓民国民団の主催をされる緊急集会が呼びかけられていますけれども、その呼びかけ文には、ヘイトスピーチによって自らの尊厳を傷つけられた当事者である私たちとしてはこの法案内容に対する極めて深い失望感を禁じ得ません、罰則規定を設けないいわゆる理念法であるにしてもヘイトスピーチが違法であるという明確な規定が不在だからであり、これではとても容認できないのですというくだりがあるんですけれども。
先ほど、公明党矢倉発議者からの趣旨説明の中では、ヘイトスピーチといいますか、この法が対象とする言動というのは違法であるという前提の認識が示されているようにも思うんですね。つまり、先ほどの提案理由説明の第三段落目ですが、何をもって違法となる言動とするのかということがこの法案の提出の意義として語られているわけですけれども。
この禁止規定は置かないということと、この法案が対象とする言動が違法であるということとの関係というのは、これはどういうふうに理解をしたらいいんですか。

○矢倉克夫君

ありがとうございます。
こちらの趣旨説明において何をもって違法となる言動としという文言は、そもそも表現の内容についての規制をするとき、我々認識しているヘイトスピーチというのは具体的にイメージできるんですが、規制となるとどこが外延かというのがやはりどうしても見えなくなるという問題があると思います。そのような表現の内容を、禁止という形で規制をすることに内在している本質的な問題が、やはり違法となるというところがどこまでかという問題であるので、そのような問題があるというところであります。
これをもって、今回、理念法で違法かどうかという判断をこれは提示をしたという趣旨ではないというふうに御理解をいただければと思います。

○仁比聡平君

ここ、これからの法案の議論をしていく上で極めて大事だと思うんですけれども。
提案者は、つまり与党は、定義の明確性、つまり違法かそうでないかという外延が明確であることが重要であるというのはそのとおりだと思うんです。その外延が明確であるという定義をすることができるのであれば、その定義に当たる言動、これは法違反である、違法であるという、その書きぶりはいろんな書きぶりがあるのかもしれませんけれども、違法であるということは宣言する、あるいは法で定めるべきであると、そういうお考えなんでしょうか。

○西田昌司君

そこが一番大事なこの法律の核心部分なんですけれどもね。
我々の与党側の考え方といいますのは、要するに、このヘイトスピーチを厳格に定義をして、それを国が例えば認定をして、違法行為であるからこの行為はすべきでない、禁止規定になってくるわけですね。また、禁止規定、罰則がなくても、そういう認定を公権力がするということはできないというのが我々の発想であります。
といいますのは、それについては、違法であるか違法でないか、それがヘイトになるかどうかというのは結局は司法の場で判断されるべきもので、公権力の行政側のところでこの部分は違法だということをしちゃいますと、かつての、これは戦前のいわゆるあの治安維持法のように、国の方が決めた言論や思想や表現にたがうようなことをすればたちまち取締りになると。若しくは、禁止規定がなくてもそのことを国が違法性を認定してしまいますと、様々なことが行政の方からそのした本人にいろんな形で圧力と申しましょうか、掛けられるわけです。
もちろん、そういう規定があった方がヘイトスピーチそのものには禁止ができて、圧力が掛かっていいじゃないかということはもちろんあると思うんですよ。しかし、同じように、ヘイトかどうか微妙な部分のところで、そこを国が規定して、そしてまた国の方がその個人に関与しているということになりますと、違う事態が想定されますね。つまり、ヘイトだということを理由に行政の方が違う形で市民に圧力を掛けてくるということが、ほかの法律でも同じような枠組みで作られることも考えられます。
我々は、そういう公権力が個人の表現の自由や内心の自由に関わるようなところに入っていくべきではないというのが自民、公明のこの法律を作る上での一番最初の入口の部分であります。そして、その部分は、ヘイトであったかどうかという認定は、これはむしろ裁判の場で、司法の場でやっていただくんです。
じゃ、この法律は一体何の意味があるのかというと、こういう理念を掲げて、そもそも国民がこういうヘイトはすべきでないんだと、また、そういう差別のない社会をつくるのが国民も努力していかなければならない、そしてそのことを国と地方公共団体が教育や啓発、相談などを通じて広げていこうということを示すことによって行政側が様々な判断するときの一つの指針になるのではないかと思います。
もちろん、その指針によって、された行為、例えばデモをやっていたり、道路使用許可を止めろとかいう話も当然出てくると思いますよね。そのときに仮にそういう指針によって止められたら、逆にやった側がこれはおかしいじゃないかということを訴えることも当然想定されます。しかし、そのことを彼らが訴えて、結局それがヘイトであったかどうかというのは最終的に司法の場で判断をしていただかなければならないと思っているんです。それをまず第一義的に行政の方が線引きをしてここから先はヘイトだどうだという、公権力側にその権力行使を与えてしまうと、私は違う事態が出てくるということを大変恐れているわけでございます。そのことを御認識いただきたいと思います。

○仁比聡平君

我が国において、とりわけ国家権力によって思想、表現が抑圧、弾圧された歴史があり、そして、戦後、憲法が公布されてから七十年に至りながら、法を濫用した行政、警察による人権侵害というのは後を絶たないわけです、今日現在も。その認識というのは私は前提にもちろんあるわけですけれども、ですが、この法でヘイトスピーチの許されないということをどう規定するかということは、その定義の明確性と併せて真剣な探求が必要だと思うんですよね。
今の西田発議者の御答弁で、つまり、この法案が民事裁判や行政処分を争うそうした裁判においての法規範たり得るということをおっしゃっているんだと思うんですけれども、それはつまり許されないとされる言動が法違反であるという前提認識に立ったものなのであって、これはヘイトスピーチはしてはならないなどの、これを禁止という用語を使うのが与党としていろいろごちゅうちょがあるのかもしれないんだけれども、このあってはならないとか、許されないという表現、文言ではない書きぶりというのはこれはあり得るのではないかなとも思うんですが、これは今、西田委員に伺いましたので、矢倉発議者、いかがですか。

○矢倉克夫君

ありがとうございます。
まず、今、西田委員がおっしゃった部分というのは、これまでは特定人に対しての規制というものはあった、ただ、今回我々は不特定人に対してのこのような言動も許されないものであるという理念を、これにより明確にしたわけであります。それがいろんな裁判の場で出てくる。場合によっては、損害賠償であるとか、そういうような民法の規定の文脈などで違法等の話が出てくるかもしれないですけれども、そういう文脈での違法を判断するときに、この法律により、許されないものであるということを理念として表した、国として姿勢を表したということが裁判所の判断に影響を与えるだろうという部分の説明であると思います。このような意味合いで、これを違法判断かどうかというところはまた違う考慮があると思いますが、いずれにしろ違法判断に対してある程度影響を与える判断にはなるであろうというところであると思います。
書きぶりの問題なんですけれども、これは、してはいけないという禁止規定にしますとどういうことになるかといえば、先ほども申し上げたとおり、表現内容の規制という形にやはりこれはなってしまう。それはどういうことをいうかといえば、憲法の検閲の禁止などにも抵触する可能性も出てくる。また、表現内容は、御案内のとおり、憲法上は非常に厳格な基準がない限りは合憲とならないというような、そのような制約があり、してはならない言論が何かということを定義付けなければいけない。じゃ、その概念がどこまでかということもこれは明確にしなければいけないというような制約も出てくるところであります。そのような判断から、してはいけないというのは、憲法の問題を克服できないというところで、我々は取るべきではないという判断をいたしました。
他方で、実効性を確保する意味では、やはり許されないものだということを宣言して、その許されないものを排除する社会を、国民全般がこれをつくっていこうということを主体的にうたっていくという在り方の方が、むしろ実効性は上がるのではないかということで判断をしたところであり、この表現が我々としては正しいというふうに認識をしております。

○仁比聡平君

少し議論をしてしまうことになるんですけれども、そうした憲法上の表現の自由の保障との関係も十分考慮をされた上で全国で様々な取組がされてきていると思うんです。その一つの例として、大阪市ヘイトスピーチへの対処に関する条例における対象行為の定義規定についての評価を今のお話の流れで矢倉さんにお尋ねしたいんですが、この大阪市条例はヘイトスピーチとされる表現活動を具体的に三つの条文に分けて規定をしているわけです。
第一は、次の三つの目的のいずれかを目的とすること。つまり、人種若しくは民族に係る特定の属性を有する個人又は当該個人により構成される集団を社会から排除すること、あるいは権利又は自由を制限すること、憎悪若しくは差別の意識又は暴力をあおることのいずれかを目的として行われ、表現の内容又は表現活動の態様が相当程度侮辱し又は誹謗中傷するものであること、脅威を感じさせるものであることのいずれかに該当すること、そして三つ目に、不特定多数の者が表現の内容を知り得る状態に置くような場所又は方法で行われるものであること、こうした定義によって外延を明確にしていると思うし、私はその規定ぶりというのはよく理解ができるというふうにも思っているんですが、矢倉さんはいかがですか。

○矢倉克夫君

大阪のヘイトスピーチの条例について、こちらが詳細に定義をしたというのは、やはり効果との関係から考えなければいけないと思うんですよね。これ、大阪市長が表現活動について拡散防止の措置及び公表措置をとることにしたと、そのような行政権、公権力が関係するようなことを前提にしている以上は、やはり定義を明確に厳格にしなければいけないというところもあるかと思います。
これは出発点の問題もあり、先ほど西田理事からもお話もあったとおり、むしろ我々としてはこのような、何かこれがいけない言論だということをある程度定義をして公権力が規制をするというような話ではなくて、むしろこのような不当な言動、地域社会から排斥するような言動があってはならない、そういう社会をつくるんだという理念を定めて、そのような社会に向けた国民全体の協力義務というものをこれを規定する、そのような理念法を定めた上で、それを全体で実現していこうという理念を定めた法律であり、そういう部分での概念の定め方というところの出発点がそもそも違うというところは御認識をいただきたいというふうに思います。

○仁比聡平君

その点はよくこれから議論をしていく必要があるのかなと思うんですね。
少し先ほどの西田発議者の御答弁に戻りますと、行政がこの表現あるいは言動の違法的方法を直接審査するのかどうかという、そうした問題をおっしゃったわけですけれども、仮にそうした措置を置かないとしても、国民の皆さんに、こうした言動はあってはならない、してはならないというふうに呼びかけるのかどうか、違法であることをはっきりさせるのかどうか、これはつまり社会的に根絶していく上で極めて重要だと思うんです。そうして、この法案によっても、努力義務とはいえ、そうしたものを課すわけであり、この外延を明確にするということはとても大事なことなのではないかと思うんですね。そこはどうお考えですか。

○西田昌司君

外延をまず定義、つまり定義を明確化してやっていくとかいう話になってきますと、新たな問題が実は出てくると思うんですね。といいますのは、定義した、定義を明確にすればするほど、その定義の外側に隠された言葉は、じゃいいのかと。つまり、ここからここまでは駄目だけれどもここから外側はいいんだよということを、逆にヘイトスピーチをする方々にお墨付きを与えるようなことにもなりかねないんです。ですから、我々、そこは全体の文脈の中で判断すべきことだと思っております、そもそも。だから、そういうことも含め、禁止規定を設けたり定義をまた明確にしたりすると、そういったまた別の次元の問題が出てくるわけですね。
もっと言いますと、我々はこのヘイト問題というのは、実際に現場を見たり、また映像を見たりもしておりますけれども、断じて許すことはできないと思っております。そして、この法律が、我々が法的措置をしましても、それに対して彼らは挑戦的な行動をするかもしれませんよ。だから、そのことも含めて我々は、彼らがやってくる行動は最終的にはこのヘイト法によって抑え込まねばならないと思いますけれども、最終的にはやっぱり裁判の場でこれを、彼らの行動は恥ずべき行為であるのだと、行政のやった措置がこれは適法だったのだという、そういう形のやっぱり文脈になっていくと思うんです。
したがいまして、そういう意味で我々は、禁止規定ではなくてまずモラル、それから啓発、教育、こういうことは恥ずかしいことなんだということをやっぱり国民全体でこれ共有して、そしてそういう意識の中で国が、また地方公共団体が啓発活動していく、そこが一番大事だと思うんです。つまり、やっている人間が、自分たちがやっている行為は恥ずべき行為なんだという、やっぱりそういう認識に立ってもらわないと、これはヘイトスピーチというのはなくならないんです。
そして、現に私は視察に行って感じましたのは、在日一世、二世、いろんな方の話を聞きましたけれども、我々が小さいときも、戦後、いわゆる在日韓国・朝鮮人の方に差別的な言動があったり、目の当たりに見たりしましたよ。しかし、今やっぱりどんどんそういうのは少なくなってきたというお話をされました。しかし、この二十一世紀、平成の時代になって、またもう一度突然こういったヘイトスピーチを公然として扇動していくような目に余る行為が出てきたわけですよね。
だから、我々は、こういったことは改めて恥ずべき行為だということを宣言すると同時に、やっぱり教育、啓発、この効果というのを大いに私は期待しなければならないし、そのことを通じてしか私はヘイトというのは根源的になくすことはできないのだと思っているんです。

○仁比聡平君

この禁止あるいは違法という法の規定のありようについて、これもっともっと議論が必要だと改めて明らかになってきているように思うんですけれども、ちょっと残る時間が五分ほどになってきているので、法案について具体的に、定義に関わってお尋ねしたいことがあります。三点、ちょっとまとめて質問します。
先ほど来お話のある本邦外出身者という規定が第二条に置かれているわけですが、一つ目の質問は、この本邦外出身者という、我が国領域を言わば基本的な概念にした内外というこの考え方は、人種差別撤廃条約の理念と異なるのか、それとも含んでいるのか。国籍あるいは民族、人種というものによる差別ということを意味しているのかどうなのかということが一点。よろしいですかね。
二点目は、そうした下で、専ら適法に居住するものという規定ぶりになっています。これは、例えば在留の適法性が争われているというオーバーステイだったり、あるいは難民申請が政府の不当な判断によって認められなかったりといった方々に対するヘイトスピーチが許されるというものではまさかないと思うんですけれども、あわせて、アイヌ民族に対するヘイトスピーチということも公然と行われています。これを許すというものではないと思うんですが、この適法に居住するということの意味がどうかが二つ目。
最後、三つ目は、そうした本邦外出身者を地域社会から排除するというふうにお書きになっておられるんですが、私たちが視察で訪ねた桜本のような集住地域ではない場所、大都会の例えば銀座だとか新宿だとか、こうしたところで発せられる言動というのはこの地域社会から排除するということに当たるのかどうなのか。
この三つが御質問ですが、いかがでしょうか。

○西田昌司君

まず、いわゆるこのヘイトスピーチですけれども、現在も問題となっているヘイトスピーチ自身は、いわゆる人種差別一般のように人種や人の肌とかいうのではなくて、特定の民族、まさに在日韓国・朝鮮人の方がターゲットになっているわけですよね。ですから、そういう立法事実を踏まえて、この法律に対して対象者が不必要に拡大しないように、立法事実としてそういう方々が中心となってヘイトスピーチを受けているということで、本邦外出身者ということを対象として限定しているわけでございます。
したがいまして、先ほどのアイヌの問題ありますけれども、我々は実は、アイヌに対するヘイトスピーチがあるという、そういう立法事実を今、問題把握しているわけではございません。ですから、この中にはアイヌの話は入っておりませんが、もとよりアイヌ民族に対するヘイトが許されるものではないということは申すまでもございません。
それからもう一点、何でしたっけ。

○仁比聡平君

在留が違法な場合。

○西田昌司君

それと、在留の話ですけれども、適法にというのは当然の話でありまして、例えば不法に入国したりした場合は、当然入管法によりましてこれは本国に送還される、そういうことになるわけでございます。ですから、そういう方々は本来不法に滞在していたら本国に、我が日本にはおれないわけでございますし、その方々は当然戻ってもらわなきゃなりませんので、ヘイトスピーチのこの法律の対象にはなっておりません。しかし、その方々に対するもちろんヘイトスピーチを肯定するものでもございません。
それから、いわゆる難民認定をされている、その今手続中であるとかそういう方々は、これはここで規定する適法に居住する方々に該当すると考えております。

○仁比聡平君

地域社会の話はないの。

○矢倉克夫君

例えば、銀座から出ていけとかそういうものですよね、桜本とかではなく、居住しているところではなく、ただそういう一定の場所から出ていけというような話でもあると。
今回の我々が捉えている不当な差別的言動というのは、要するに、ある方々の存在自体を否定して、そこから出ていけというような、その存在を否定するという理解の下で出ていけというようなことを扇動するような言動というふうに理解をしています。
具体的な地域社会かどうかというのはやはり前後の文脈等も見ながらということになると思うんですが、そのような趣旨に合うような発言であれば該当するというふうに理解はしたいと思っています。

○委員長(魚住裕一郎君)

仁比君、時間ですが。

○仁比聡平君

あともう一点質問したかったのは国、地方公共団体の責務に関わるものなんですが、もう時間が参ってしまいました。
いよいよ、もっともっと議論が必要だというふうに思うんですね。とりわけ、不法入国の場合などの議論もありましたけれども、そうした場合だからといって法の保護が与えられないということには私はならないと思うんですね。一層の議論を求めて、質問を終わります。

○小川敏夫君

民進党・新緑風会の小川敏夫です。
時間がないので端的にお尋ねしますが、三条で努力するということが定められていますけれども、努力をするつもりがない人あるいはそもそもその努力に反する行動を取ろうとする人に対してはどういうふうに効果が及ぶんでしょうか。

○矢倉克夫君

まさにそういう人が出ないようにするということで理念を訴えているところであると思います。
この前も視察に行きましたときに、視察でお話をされた方がおっしゃっていたのは、昔は例えばヘイトスピーチのようなことが起きても対抗するような方がいらっしゃらなかったけれど、最近やっぱりそういうような声を上げてくださる方がいるようになったと、これは日本が成熟している社会であるということをおっしゃっていたと思います。
今回の法律は、まさに国民全体、国民の中でも当然このヘイトスピーチが良くないことだということは頭では分かっていても声を上げられなかったという方がやっぱりいらっしゃる、そういうような方も含めて国民全体でこういうのがない社会をつくろうという理念をしっかりとうたって、前向きに、さらに主体的に動いていこうということを宣言する、それをすることで、今おっしゃったような、努力をする気持ちもないような方もそういうような渦に巻き込んでいって変えていくというようなことをうたっているというふうに御理解をいただきたいというふうに思います。

○小川敏夫君

いや、御理解できないですね。
要するに、多くの国民はこういうヘイトスピーチは好ましくないということは分かっていて行動しているし理解しているわけですよ。だけど、そういう理解を全く無視して今ヘイトスピーチが行われているわけですよ、国民の気持ちを無視して。
だから、私が聞いているのは、そのうちに国民が理解すればそういう人たちに及ぶでしょうなんという話じゃなくて、法律の効果として、努力するつもりがない人、努力に反する行動を取る人に対してどういうことが対応できるのかと聞いているわけです。法律の効果を聞いているわけです。

○西田昌司君

小川委員の御質問でございますけれども、努力のする気がない人にどうするのかと、それを法律で強制できるのかということだと思うんですね。まさにそれを強制してしまうことが戦前の治安維持法に通ずる、公権力が個人の思想、信条、そういうところに介入してきて、結局はヘイトスピーチをそれで止められたとしても重大なこれ人権侵害という事案になってしまう可能性があるわけなんです。
そしてまた、そういう法制度を我々がつくり上げていくと、同じように気に食わないことがあったら、このヘイトスピーチだけに限らず、様々な法律、これを法律で作ってやめなさいと、その一つ一つの事実は正しい正義によるものかもしれません、しかし、結局正しいか悪いかというその線引きの部分でまた微妙な、ケース、ケースによって事態が出てくるわけですね。一瞬、一見するとそういう差別的言動であったけれども、実はその方々とのその裏にあったのは非常に愛情を持った行動であったということもあるかもしれません。そういうふうに事態、事態によって違うわけなんですよね。
ですから、一概にこのヘイトを禁止してやっていくということにやってしまうと、これは違う問題が出てくる、人権侵害になってくる。弁護士、そしてまた検事、裁判官、法曹の三つの仕事をされてきた小川委員なら御理解いただけると思います。

○小川敏夫君

全く理解はできませんですね。私の質問は、この法律の効果を聞いているんです。この法律によって、ですから、努力をするつもりがない人、そもそも努力に反する行動を取ろうとする人に対してどういう効果がありますかと聞いているわけです。
私は、結局はそういう人に対しては法律上の効果は何もないというのがこの法律だと思うんです。そうしますと、もっと端的に言いますと、全く努力するつもりもない人、今もそういう国民の気持ちに反して、地域の人の気持ちに反してやっているわけですよ、ヘイトスピーチ、ヘイトデモが。そういうヘイトデモを規制することもできないわけですね。ですから、この法律が通ってもヘイトデモは全くやまないと、こういう状況になるんじゃないですか。

○西田昌司君

それは、そうではないと思いますね。
具体的に言うと、恐らく先ほど私、仁比委員のときにも答えましたけれども、今ヘイトをやっている方は、この法律ができてもヘイトをする可能性はございます。当然、彼らは挑戦してくるかもしれませんね。そのことをおっしゃっているわけですよ。
しかし、この法律ができたことによって、行政側が、国権の最高機関としての国会が、このヘイトというのは許されない行為であるということを決め、そして宣言し、そしてそのことを、国民とともに差別のない社会をつくろうという、そういう姿勢を、国としての、国民としての姿勢を示した以上、やっぱりそこは行政側が我々のこの法律に、指針を受けて行政判断をしていただけると思うし、そしてそのことによって、例えば行政側がヘイトを禁止する行為をしたとしましょう。したときに、今度はヘイトをした側が、それは我々の表現の自由を何で行政側が制限するんだ、何でデモを許可しないんだと、内容でするのはおかしいじゃないかという当然裁判になると思いますよ。その裁判になってきたときにも、結局は、我々が出したこの法律が成案したことにより、裁判所も我々の、国権の最高機関のこの法律、この成案をベースにした判断がされるものと私は期待しております。
そして、そういう判例が積み重なっていくことによって、公権力がいわゆるヘイトかヘイトでないかというそこの線引きをするのではなくて、司法の場でそういうものが確定されてくる。そして、結局は、そういうことが積み重なってくると、ヘイトスピーチをしようと思っても、行政側が仮に道路の使用許可を出さないと、そういう判断をして、そしてそれが裁判になり、その裁判が行政側の勝訴になった、それが確定していくと。これは今後、そういうヘイトスピーチをしようと思ってもできないということが司法と行政によって確定してくるわけなんですよ。
だから、そういう手続を踏んでいかなければならないということなんです。その手続を経ずに、司法の手続を経ずに、先に行政側の方が公権力行使で禁止をして云々という規定になると、私はまた別の人権侵害というのが出てくる可能性があるから、我々はその人権侵害のないように、また新たなヘイト事案が出ないように、こういう形の規定をしているということを御理解いただきたいと思います。

○小川敏夫君

ですから、全く理解できないんですよ。裁判、裁判、行政が何らかの処分をするから裁判というけれども、行政が何らかの処分をするための根拠となり得る法律なんですか。だから聞いているわけです。努力する義務がある、じゃ努力する義務を守らなかった人に対して行政がこの法律を根拠に何らかの処分ができるんですか。何らかの処分ができるんだったら、その処分に対して不服申立てという裁判になるけどね。
これ、行政が何らかの処分をする、じゃ、もっと端的に聞きましょう、もっと分かりやすく。ヘイトデモが行われるときのデモの許可申請がある。それに対して、この法律を根拠に公安委員会はデモを不許可にすることができるんですか。

○矢倉克夫君

今、小川委員がおっしゃったようなことは、要するに、何が禁止される表現かどうかを解釈する権限を行政に与えるということだと思うんですね。それこそ、我々の価値判断としては、そのような規制、私たちがイメージしているヘイトデモ、これはもう許されないし絶対禁止すべきだということはあるわけですけど、そこに法規制になると解釈が出てくるわけなんです、どうしても文言ですから。その解釈権限を行政権に与えるということが危険だという理解でまず発しています。
ですので、そうではなくて、そのような形の文言ではなく、実効性を担保する上では、このような理念法として、国民全体でこういうような社会をつくるために全力でやっていこうと、許されないということを宣言するというところから入ったということであります。
出発点がそもそもそのような形で、何が表現内容、許される内容かどうかということを行政権が判断するということは憲法上問題があるというところ、そこがまず出発点であり、そこがちょっと認識として違うところであるというふうに思っております。

○小川敏夫君

ですから、最初の質問と同じことで、答えが出ていないから何回も何回も聞くわけです。
まず、答えを言ってくださいよ、先に。すなわち、この法律ができても、この法律を根拠にデモを不許可にすることはできないんでしょう。できないという前提で、そのことを答えないで、何かいろいろ、やれ表現の自由だとか何かあれこれあれこれ言うから分からない。
まず、私が聞いているのは、この法律ができたら、この法律を根拠にヘイトデモの不許可を、許可をしないという処分を公安委員会ができるのかどうか、できるのかどうかをまず答えてください。

○西田昌司君

これは、今、我々提案者側の方ですから、これは公安委員長、警察側が答弁すべきことだと思いますけれども、原則的な話で言いますと、今、矢倉委員がお話ししましたように、要するに、事前にこの表現内容、デモ内容にチェックして道路使用許可を与えるかどうかという仕組みには今なっておりません。しかし、この法律ができましたからといって直ちにこのヘイトスピーチやるんだったら禁止だという話にはならないと思います。
しかし、大事なのはそこから先でして、こういう理念法、これ宣言することによって、我々は行政も含めてこういうことはさせてはならないと。そうすると、実際にはいろんな法律がまだまだあるわけですよ。その法律の運用規定につきましても、例えば騒音防止条例とかそれから名誉毀損とか、様々なものがありますよね。そういうことも含め、我々はヘイトスピーチを公然とやっていることを許すことはできないという、このことを宣言することによって、様々な法律の解釈の指針も、また我々は指針を与えることになると思っています。そういう合わせ技を含めて、行政がこのヘイトスピーチに対して抑止力を発揮できるものだと考えております。

○小川敏夫君

法律の提案者が、この法律ができたときに公安委員会が不許可にするかどうか、それは自分は知らない、公安委員会が決めることだと言われちゃ困るんですよ。法律の提案者ですから、この法律の効果はどこまで及ぶかということは大変重要なことです。
今日は、熊本での大地震ということで、公安委員長が防災担当大臣ということで、本来ならこの席に来て答弁していただくところを出席しないということになったわけでありますけれども、その公安委員長が先般言っておりました。ヘイトデモ、何で不許可にしないんだと、その質問に対して公安委員長はこういうふうに言っていました。不許可にする根拠の法律がないからしようがないんだと、これが公安委員長の答弁でした。ですから私は聞いているわけです。公安委員長は、不許可にする根拠となる法律がないから不許可にできないんだと。だったら、不許可にできるその根拠となる法律を作ればいいじゃないかという議論になるわけですけれども、この法律はそういう根拠には全くならない法律だと私は思います。
であるならば、元々国民の多くの声を無視して、世論からどんなに批判受けても堂々と法律に違反しないからといってヘイトデモを繰り返している、この人たちが更にこの法律が通った後もヘイトデモを繰り返すときに何の規制もできない、何の効果も法的には及ばないですねと私は聞いているわけです。

○矢倉克夫君

まず、そもそも不許可にするにしても、表現内容を理由にして不許可にするということは、これは憲法上許されないということは改めて申すまでもないことだと思います。
仮に不許可にするとしたらどういう場合かというと、時とか場所とか時間とかそういう外形的なところを判断の材料としてやると。その判断、これはいろんな法律の文脈もあるかと思います、今、西田発議者からもお話もあった。その判断をする際に、このヘイトデモの時、場所等の判断をする際にこれが禁止されるべきものかどうかということを判断するしんしゃく材料として、この理念法が、許されないものであると言うところが、どのような態様のものが許されないかというところの判断に当然しんしゃくされる部分はあるかと思います。ただ、これがあるからこれだけを根拠にして禁止する、表現内容を根拠にして禁止するということはあってはならないというふうに思っております。

○小川敏夫君

この法案に対して本当に多くの質問するべき事項がございます。だけど、今日は一点のことしか議論できませんでした。大変残念ですけれども、また改めて機会があると思いますので、そのときに質問させていただきます。
今日は終わります。

○有田芳生君

民進党・新緑風会の有田芳生です。
まず、お二人に端的にお聞きをします。
四月八日にこの法案が提出されて以降、当事者である民団あるいは長くこの問題に携わってきた外国人人権法連絡会あるいはヒューマンライツ・ナウなど、少なくとも十の団体が与党案についてのコメントを出しておられます。評価をしつつも、実効性がないのではないかというような指摘がありますが、その様々な団体のコメント、お読みになりましたでしょうか。そしてまた、そこに何が書かれていたか、どのように理解されているのかをまずお二人からお聞きをします。

○西田昌司君

そういうような意見が表明されているということは大まか知っておりますけれども、個別的な話は、つぶさに見ておりませんので、承知しておりません。

○矢倉克夫君

私も、直接民団の方等と話をされた方からいろいろ話も聞いたり、私も聞いたりはしております。ただ、どういうような文書があるかとかそういうのは詳細は把握はしておりません。

○有田芳生君

事務所に送られていると思いますので、是非お読みをください。
さらに一方で、これまでずっとヘイトスピーチを続けてきた、例えばアドルフ・ヒトラー生誕百二十五周年を祝うそういう日本版ネオナチなどは与党案に対して大歓迎であると、お墨付きをもらったというふうにコメントを出しておりますが、御存じですか。お二人、お答えください。

○西田昌司君

それも有田委員から教えていただきまして、そういうことがあるのは知っておりますけれども、つぶさには詳細は知りません。

○矢倉克夫君

私も詳細には知りません。ただ、お墨付きをあげた法案では絶対ありません。

○有田芳生君

御自身が積極的に出された法案ですから、様々な関係団体及び一方のヘイトスピーチを繰り返し今でもやっている人たちのコメントを是非お読みになっていただきたいというふうにお願いしたいというふうに思います。
おととい、岡山市内でも、在特会の前会長が来て、ヘイトスピーチのデモと集会、街宣が行われました。江田五月議員と私もそこに抗議のために参加をしましたけれども、彼らは端的にこう言っておりました、自分たちは適法的にデモと集会を申請をしてやっているんだと。言っていることはもうヘイトスピーチのオンパレードですよ。
じゃ、そういうものを本当に制限できるようなものになるのかということを与野党一致してこれから充実したものにしていかなければならないと思いますが、日本版ネオナチと私はあえて言いますけれども、ナチスそれからアドルフ・ヒトラーを今でも称賛している人物は、与党案に対してこう語っております。この定義の中に、つまり与党案の定義の中に適法に居住するものの文言が盛られたことは大きい、なぜならば、このように決まった以上、適法に居住していない外国人に対しての言動はヘイトスピーチに当たらないことになります。もう少し紹介します。我々は、これまでイラン人追放やカルデロン一家のフィリピン送還を訴えてきましたが、そのような活動はこの与党案ではヘイトになりません。
あるいは、別の常習的なヘイトスピーカーがこう言っております。在留資格を有さない不法滞在外国人であれば、子供であろうと老人であろうと、日本からの排除を主張し又は扇動しても決して差別、ヘイトには該当しないというお墨付きだと、そのように書いております。
あるいは、別の差別の扇動を今でもやっている人物。我々レイシストにとって一番良い状態ができ上がる、やりたい放題である、笑い。その後とんでもないことを言っています。在日シナ・チョンは首つって死ね。これは、彼らが、公明党の有力な議員がこの法案についてツイッターで書き込んだその下にこういう文言を書いておりますが、どのように思われますか。

○西田昌司君

今おっしゃったような発言は、私、聞くだに本当に吐き気がするほど恥じるべき言動だと思っております。もちろん、ですから、この法律の中で、いわゆる違法にオーバーステイされているとかそういう方々に対する、不法滞在だから、これヘイトスピーチをしても我々の言っていることは適法とされるというか認められるということには当然なりません。
これはもう全体の文脈で考えるべきものでありまして、この法律を元々作ったのは、立法事実として、いわゆる在日韓国・朝鮮人の方々、その方々に対する不当な差別的な言動があったということから作っておりますけれども、しかし、だからといって、その方々以外の方に何を言ってもいいんだとか、そんなことには当然ならないわけでありまして、一番大事なのは、ここで言っているのは、理念法でやっているわけですよ。理念法でやっているというのは禁止規定もなければ何もないじゃないかとおっしゃるけれども、しかし、逆に言うと、そういう理念を掲げているからこそ、我々はそういうヘイトスピーチは不法滞在者に対してやっていいんだという形で限定されてこない、むしろ、もっとそういう理念を生かして、教育も啓発もそうだし、行政が様々な判断するときの指針として扱ってくれるものと考えております。

○有田芳生君

今、西田委員は、在日韓国・朝鮮人の方々に対する差別扇動、ヘイトスピーチをなくすための法案だとおっしゃいましたけれども、この二〇〇八年以降、例えば在特会が日本で行ってきたヘイトスピーチの実態というのは、在日コリアンの方々だけではなくて、一番目立った最初の時点は二〇〇八年に埼玉県蕨市で行われたフィリピン人一家に対する追放デモなんですよ。在日コリアンだけではなくてフィリピン人、中国人、あるいはアイヌ民族などなど、様々なヘイトスピーチが吹き荒れてきたというのが現実なんですよね。
これだと、在特会が行ったフィリピン人一家追放デモというのは不当な差別的扇動に当たらなくなってしまうんではないですか。先ほどヒトラー、ナチス礼賛者が言っていたように、不法と付ければ差別してよいというお墨付きを与えられるんだと、むしろ差別の扇動を推進してしまうことになりませんか。

○西田昌司君

これは、特定の人に対してそういうことをすると当然別の法律で罰せられることになってきますよね、いわゆる名誉毀損なり侮蔑的なことをやってきたりすると。ですから、そうじゃなくて、もう少し大きなくくりでこの法律はヘイトスピーチを規制するためにやっているわけです。
いずれにしましても、私たちは、有田理事がおっしゃいますように、そういうことを本当に、ヘイトをするのが楽しみのようにやっている人間がいるんですよね。これ許されるべきものじゃありません、本当に恥ずべき行為でありますけれども。しかし、それを強制力を持って法律で排除するということが、なかなか現実問題、この憲法の保障している基本的人権を考えるとできないわけなんですよ。
じゃ、我々が何ができるかというと、立法府の中でこの議論をして、そういうやっている人間というのが、本当に恥ずべき行為であって、そしてまた一般の社会の中からも当然認められるものではないと、そういうことを我々がお墨付きを与えることによって、彼ら自身が言動に自ら恥じ入る行為はしないように持っていくということ以外なかなか、その表現内容、言っていることで直ちにそれで取り締まって禁止をしてという形にはなれないと、むしろ逆さまの、それが、そういう規定があれば違うことに使われてしまう。
これは、民進党、旧民主党が出された人種差別撤廃法に対して参考人質疑をさせていただきましたけれども、そのときに参考人の方々が指摘されていたということを皆さん方も覚えておられると思いますけれども、予期せぬ、本来ヘイトをやめさせようと思ったその禁止規定行為が逆にほかのことに使われてしまって公権力の暴走につながってしまうと、それを我々、一番警戒しなければならないと思っております。同時に、その枠の中でいかにしてヘイトを止めるかと。
ですから、これは、まずこの法律を作って、そして国が宣言することによって国民のモラルを高めていくという、そういう方法で我々はヘイトを抑え込んでいきたいと思っております。

○有田芳生君

第二条、定義のところにある適法に居住するというところなんですけれども、もう一度具体的にお聞きをしますけれども、在日コリアンに対する差別的表現の本質というのは、国籍ではなくて民族的出身に基づく排除であるというのは京都朝鮮第一初級学校襲撃事件の最高裁判決でも明らかなことですけれども、それは何度も強調をされております。ましてや、在留資格というのは無関係じゃないですか。

○西田昌司君

在留資格無関係というのは、つまり、私が言っているのは、適法に居住している人は当然ここで、日本の国に居住する権利があるわけでございます。しかし、適法でない方は、これは国の法律によって本国に送致されてしまうという形になるわけであります。ですから、法律がしっかり機能していますと、本来不法な方はおられない形になってくるわけなんですね。
今現在またやっているのも、現実問題起こっている立法事実としては、適法に住んでおられる在日コリアンの方々がそういうヘイトスピーチの被害を受けておられると。ですから、そういう立法事実に鑑みこの法律を作っているわけでありまして、もとより、だからといって、先ほどから言っていますように、適法に住んでいない方々にヘイトスピーチをやってもいいとか、そういうことを言っているわけではもちろんございません。

○有田芳生君

先ほどの仁比委員への答弁だったと思いますけれども、難民認定申請中の方はそれは当たらないというお話でしたけれども、それは法務省は知っているけれどもヘイトスピーチをやる連中は知らないわけですから、これまでどおり排除のデモをやるということを、それを止めることはできないというふうに思います。
もう一点、人種差別撤廃委員会の一般的勧告の三十第七項にはこう書かれております。人種差別に対する立法上の保障が、次です、出入国管理法令上の地位に関わりなく市民でない者に適用されることを確保すること、及び立法の実施が市民でない者に差別的な効果を持つことがないよう確保すること。
与党案ではそれに反することになりますので、人種差別撤廃条約の違反だと、そういう国際的な指摘がなされる可能性があると思いますが、いかがですか。

○矢倉克夫君

まず、与党案がというか、人種差別撤廃条約上の義務というのは、もう既に現行法で担保されているという理解であります。そもそも一般的勧告ですので、これは特定人、特定国に対しての勧告ではないという理解でありますが、どの部分を指していらっしゃるのかはちょっと定かではないんですが、今回の法律がこれに違反するというような認識には立っておりません。

○有田芳生君

そういう認識に立ってもらわなければ困ります。
もう一点最後に、時間が来ましたので、アイヌ民族に対するヘイトスピーチです。
二〇一四年からずっと続いております。二〇一四年八月十一日、アイヌ民族、今はもういない、二〇一四年八月二十二日、アイヌ利権がある、二〇一四年の十一月八日には銀座でアイヌをターゲットにしたヘイトスピーチデモが行われました。そういう事態が現実にあるわけですから、これはもうアイヌ民族へのヘイトスピーチについては立法事実があるんですよね。ところが、与党案では外国籍者あるいは外国の出身者が不当な差別的言動の対象になっておりますけれども、アイヌ民族については除外されている。
やはり、人種差別撤廃条約の定義に基づいて民族というものを外してはならないのではないかというのがこのヘイトスピーチ問題の核心的部分だと思いますが、いかがでしょうか。

○西田昌司君

我々側としましては、今目の前で行われてきたこの在日コリアンの方々に対するヘイトスピーチをいかにして食い止めるかという、そこを立法事実としてこの法律を作ってきたわけでございます。
もとよりアイヌの方に対する差別が、またヘイトが許されるものではありません。しかし、そこはこの法律を議論していく中で、いわゆる行政のこの法律の運用面含めて、この国会の議論の中で、アイヌの方々も含めヘイト許されないということは運用面で、運用面と申しましょうか、要するにこれ理念法でございますから、宣言することによって可能ではないかと思っております。附帯決議始め、そこにも当然含まれるんだと、そういう御意見は是非先生方からお寄せいただいて、実りある立法にさせていきたいと思っております。

○有田芳生君

時間が来たので終わりますけれども、小川委員からも多くの質問、残したままになっております。今、西田委員からも、この法案を審議する過程でとおっしゃいましたので、是非とも今日で終わりにすることなく、与党案をより良いものに変えていき、日本からヘイトスピーチをなくしていく、その大きな力にしていきたいという思いを表明して、質問を終わります。

○三宅伸吾君

おはようございます。自由民主党の三宅伸吾でございます。質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。
質問の少し順番を変えまして、今ずっと議論になっておりますこの定義と申しますか、この法律は第一条に目的書いてありまして、本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組について、基本理念を定め、及び国等の責務を明らかにするとともに、基本的施策を定め、これを推進することを目的とすると、こういうふうに書いております。
この法律の肝は、もう何度も議論になっておりますけれども、「本邦外出身者に対する不当な差別的言動」、これがキーワードでございます。法案のタイトルを含めまして法文全部で十四回この言葉が出てまいります。この「本邦外出身者に対する不当な差別的言動」が何かということが一番大事なことでございまして、これは皆さんも御案内のように、第二条にこの定義の規定がございます。
ただ、この定義規定、じっくり読みませんとなかなか難しいのではなかろうかと思います。もう何度も読み上げられておりますけれども、ちょっともう一度読みますけれども、第二条、「この法律において「本邦外出身者に対する不当な差別的言動」とは、専ら本邦の域外にある国若しくは地域の出身である者又はその子孫であって適法に居住するもの(以下この条において「本邦外出身者」という。)に対する差別的意識を助長し又は誘発する目的で公然とその生命、身体、自由、名誉又は財産に危害を加える旨を告知するなど、本邦の域外にある国又は地域の出身であることを理由として、本邦外出身者を地域社会から排除することを煽動する不当な差別的言動をいう。」と、このように第二条書いてございます。
この第二条の肝は、私二つあると思いまして、まず第一は、第二条で言うと四行目でございますか、「本邦の域外にある国又は地域の出身であることを理由として、」、これが第一の要件ではなかろうかと思います。そして、第二の要件が次の「本邦外出身者を地域社会から排除することを煽動する不当な差別的言動」と、こういうふうに書いてございます。
じゃ、この第二条の最初の方に書いてあるものはこれ何だということでございます。最初の方には、専らから始まりまして、いろいろ書いてありますが、最後に、名誉又は財産に危害を加える旨を告知するなどと書いてございます。これは、典型例をここに示して、これを中核として、その中核の行為を含んで、本邦の域外にある国又は地域の出身であることを理由として、本邦外出身者を地域社会から排除することを扇動する不当な差別的言動と、こういうふうに私は読むんであろうと思うんですけれども、発議者の矢倉さん、いかがですか。

○矢倉克夫君

ありがとうございます。
今、三宅理事から、これ典型例だというふうにお話もありました。まさに理念法として、我々が理念として掲げているのは、あのような不当な差別的言論があることで地域社会、共生社会を分断する、そして暴力を誘発するような社会があってはいけないと、まさにそういうようなものをなくしていこうというところであります。でありますので、概念として広く逆に捉えることもできる。これが、先ほど来からの話ですと、禁止規定とかですと、公権力がどこまで介入できるかということをきっちり決めなければいけないので、逆に言うと反対解釈というようなことも余地が出てくる。それ以外のところは公権力が介入していいんだというような反対解釈があるわけですけど、そのようなことはこのような法案ではないと。
今おっしゃったような形で、理念の下で、我々としては、まず大きなくくりとして、本邦の域外にある国又は地域の出身者であることを理由とした本邦外出身者を地域社会から排除することを扇動する不当な差別的言動ということを挙げました。それを表す典型例として、今申し上げたような話も申し上げたわけであります。
でありますので、じゃ、ここに公然と書いているから、それ以外のものが全く差別的言動をしていいものかというような解釈があるわけではなく、当然、文脈上、我々が理念として掲げている社会、それを侵害するような言動であればそれは許されないという方向の解釈になるかと思います。
具体例ということでありますが、例えば公然でないということでありますので、その公然でないような状況での言論ということになる。ただ、その前後の文脈で、最終的に地域社会の分断となるような言論であればそれは対象になるという方向に行き着くというふうに理解しております。

○三宅伸吾君

私の次の質問までお答えいただきまして、ありがとうございました。
私が次にお聞きしようとしたのは、この専らから告知するなど、これが典型例だと、要するにここの部分は誰がどう考えてもけしからぬヘイトスピーチの表現行為だろうということを確認をさせていただいた上で、この典型例の中を読みますと公然とという言葉があるものですから、じゃ、公然じゃないものはもう関係しないのかと。そうじゃないという可能性も典型例であるならば、例外として公然でない差別的言動もあるんではないかという御質問に対するお答えを今、矢倉発議者からいただいたというわけでございます。
じゃ、この関係でもう一点お聞きさせていただきます。この典型例の中に適法に居住するものという、適法にという言葉が入っております。先ほど来、西田委員が、違法に日本に入ってきた方はどうするんだということに対して、原則ということでお答えになったと理解をしております。
ただ、極めて例外的なことを私これから申し上げます。これは、専ら適法にという方々をこの概念のコアとして例示をしているわけでございますので、原則、適法に日本に住んでいる方に対するヘイトスピーチは良くありませんよというのはもう当然でございますし、それを前提に西田委員がお答えになったのもよく分かりますけれども、ちょっと重箱の隅をつつくようなことを申し上げますけれども、この第二条をきちっきちっと重箱の隅をつつくような目で読みますと、適法に居住していないものを対象にしても、場合によっては不当な差別的言動にはならないんでしょうか。

○矢倉克夫君

適法でないものに対しての言動が不当な差別的言動になる、今申し上げたとおり、これはその文脈によって、ただ、ヘイトスピーチ、不当な、じゃ、適法にいない者に対してこのような非常に許されないような態様でやっていいかということを、お墨付きをあげているものでは当然ございませんで、それは全て文脈上によると。この定義というか、我々が理念としている、地域社会の分断とかそういうものを許されてはいけないという、そういうようなものに該当し得るものであればやはりそれは該当し得るし、ただ、正当な言論として、これはいろいろな言論はあると思いますし、政治的な表現として様々な意見もありますので、そういうようなものに該当するというような判断がなされればそれは当たらないということであると思います。
ただ、当然ですけれども、何度も言います。今、ヘイトスピーチをやっているような人たちがこれに反対解釈をして、そのような人たちに対してのヘイトスピーチを、これお墨付きを与えたものだということは、これは一切当たらないというふうに改めてお伝えしたいと思います。

○三宅伸吾君

まさに今、矢倉委員がおっしゃったとおりだと思うんですね。ここに「専ら」と入れて典型例だというふうに書いておけば、典型例以外のものも極めて例外的には差別的言動に当たると、こう読めるわけでございますので、禁止規定がないからといってお墨付きを与えているわけではないというふうに私は解釈をした次第でございます。
それで、ちょっと第三条でございますけれども、本法案は、いわゆるヘイトスピーチの解消を目指して新法の制定を目指す法律案であります。法律である以上、公権力に対して何らかの作為、不作為の行為規制をかけたり、国民等の権利と義務について新たな法的規範を創設したりするのが普通の法律案だろうと思うわけでございます。
この法案が成立すれば国民にとってどのような権利義務の変更があるのか、第三条を踏まえてお答えいただけないでしょうか。

○矢倉克夫君

ありがとうございます、三宅理事がおっしゃっていた、権利義務というふうにおっしゃっている念頭のものは、恐らく公権力等、一般的な概念でいえば、公権力等が国民の権利を、行為を抑止させるであるとか、そういうような部分の文脈であろうかと思います。そういう意味合いの上での権利義務というところであれば、これは変更はないというふうに理解はできるところであります。
他方で、この三条にのっとってという話ですが、三条は、先ほど来からも申し上げましたとおり、やはりヘイトスピーチというものがない社会を、これは許されないという価値判断をまず宣言した上で、そのようなものがない社会を国民がしっかりつくっていく、主体者となってしっかりとつくっていくという、これは宣言であります。既に先ほどもお話もしたところですけれども、国民の大多数の人はこのようなヘイトスピーチは許されないということをこれは理解はされているわけですが、それを更に一歩進めて、行動にもつながるような行為をしていってこれを根絶していこうという、それを一体としてつくっていこうというその宣言である。
そういう意味での、このような社会をみんなでつくっていこうということを、方向性を国民の行為として定めたものとしては、義務という形よりは努力義務という形になるかもしれませんが、規定をさせていただいたということになります。

○三宅伸吾君

次に、第四条から七条についてお聞きをしたいと思います。
四条以下は国と地方公共団体について定めたものでありますけれども、国につきましては、第四条一項で、最後の文末のところですけれども、「措置を講ずる責務を有する。」と書いてございます。第五条を読みますと、「必要な体制を整備する」、第六条、第七条は、最後、「取組を行う」とあります。これは国に関する規定でございますけれども、一方で、地方公共団体については、第四条から七条の二項全ての文末が「努めるものとする。」と、こういうふうに書いてありまして、大分ニュアンスが違う書き方をしております。
国に対する法律の要請対象と地方公共団体に対する法律の書きぶりと違う書きぶりをしてありますけれども、この国と地方公共団体の書きぶりの違いはどういう意図を持たれているのか、御説明いただけますでしょうか。

○矢倉克夫君

国においては、例えば、法務省を中心に本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた様々な施策を実施する責務を有するということであります。とりわけ啓発活動でありますとか、これも理念としてこういうヘイトスピーチは許されないということを初めて国としてうたったわけであります。その方向性に従って、啓発活動とかその他の人権擁護施策等は、これ広く国民一般に向けられたものとして国が主体的にやる責務があるというところであります。
他方で、地方公共団体等、その本邦外出身者の方が人口の中でどれくらい占めるかとか、もろもろな事情もあります。あと、こういう言動が行われている頻度等もある。そういった実情に応じて、その解消に向けた取組に関して施策を講じるように努めたと。これは、要するに、国と地方公共団体が果たすべき役割の違いを踏まえて書き分けを行ったというところであります。
ただ、その上で、この前も視察に行って現場の方がおっしゃっていたのは、地方公共団体とかに話を持っていっても、やはり国が何かしら方向性を示していないから我々は何もできないんだというようなお声があったというところもあります。
今回、このような形で理念法として、国の法律としてヘイトスピーチは許されないという姿勢をしっかり表したことは、今後、地域の住民の方が地方自治体に対して様々な施策を訴えるときの後押しをすることにはなるというふうに理解もしております。

○三宅伸吾君

ありがとうございました。
私は、この法案は、ヘイトスピーチに対する我が国、そして国民の取組を加速する貴重なリーガル・イノベーションの一歩だというふうに高く評価をしたいと思います。
最後に、ヘイトスピーチをめぐって様々な裁判例等が過去もあったと思いますけれども、野党提案の法案も含めまして、一つの契機となった事件があったと思います。もう有田委員が何度もこの委員会で取り上げていらっしゃる京都での朝鮮人学校に対する示威活動に関する裁判例でございます。これ、学校関係者を原告として、在日特権を許さない市民の会などを被告とする損害賠償と街頭宣伝差止め請求事件が民事の分野では提起をされて、判決ももう確定しているところでございます。
私がこの判決を読ませていただいて、またニュースも読んで一つだけ、余り話題になっていないことを一つ取り上げたいと思います。平成二十五年の京都地裁判決によりますと、朝鮮人学校に対する三回目の示威活動は実は仮処分の決定を無視してなされております。その仮処分の内容は、学校の北門中心点から半径二百メートルの範囲内での示威活動はやるなという仮処分が出ておったんでございます。しかし、それを明白に認識した上で、無視してやっちゃえというような事実認定が判決に書いてあります。
最高裁にお聞きしたいんでありますけれども、我が国では、裁判所の命令を無視しても、その命令無視それゆえをもって身体拘束をされたり罰金を科す制度がないと私は理解をいたしております。一定の金銭を支払わせる民事執行法の間接強制というのはありますけれども、これは後日の損害賠償の保証的な制度だと理解をしております。
英米法では法廷侮辱罪をもって裁判所の権威を守り、司法判断を維持していると。日本は英米法体系とは違いますので、まあ英米の話かなと思っておりましたけれども、実は大陸法のドイツにも同じような制度がございます。若干アメリカとは違いますけれども、罰金刑、身体拘束も可能でございます。それから、中国においてもドイツと似た制度があるというふうに聞いております。
そこで、最高裁判所にお聞きいたします。
仮処分命令が無視される状況は過去どのぐらいあるのでございましょうか。例えば、私が知っているだけでも、日教組とあるホテルの会場を使う使わないという問題がございまして、あのときも仮処分命令を無視して使わせなかったということがございました。その司法判断の無視される事案ということは、司法の権威を軽んじているというか、ちょっと言葉は下品でございますけれども、裁判所がというか、日本の司法権がなめられているんじゃないかというふうにも受け取れるわけでございます。
その仮処分命令が無視される状況の程度と、それから、こうしたことが起きていることについてどのように最高裁として受け止めていらっしゃるか、御所見をお聞きいたします。

○最高裁判所長官代理者(菅野雅之君)

お答え申し上げます。
裁判所の仮処分命令に違反する事例につきましては統計がございませんので把握しておりませんが、委員御指摘のとおり、公刊物に登載されている裁判例の中に仮処分命令違反があったことがうかがわれるものがあることは十分承知しているところでございます。
一般論といたしますと、裁判所の仮処分命令の効力が生じている以上はこれが遵守されるべきことは当然であり、仮処分命令に違反する事例が存在することにつきましては誠に遺憾であると申し上げるほかないところでございます。

○三宅伸吾君

遺憾でなかったら困るわけでございます。遺憾であるだけでとどまって、果たして司法改革をしようとずっと二十年近くやってきたこの日本国政府はこれでいいと思っているのかどうか、ちょっとお聞きしたいと思うのでございます。
ちょっと法務省にお聞きいたしますけれども、法廷等の秩序維持に関する法律というのが既にあるんでございますけれども、この法廷外での不作為等を内容とする仮処分決定とか差止め判決を無視する行為は本法の対象にならないということをまずちょっと確認をさせていただいた上で、対象外であるなら、先ほど最高裁の方から遺憾であるという御発言がございましたけれども、遺憾である状態がずっと続いているわけでございますけれども、司法の権威を守る何らかの法制度整備の必要性について法務省としてどう考えているか、お聞かせいただけますか。

○政府参考人(萩本修君)

御紹介のありました法廷等の秩序維持に関する法律、この規定に沿って御説明しますと、この法律は、第一条で、民主社会における法の権威を確保するため、法廷等の秩序を維持し、裁判の威信を保持することを目的としておりまして、第二条で、裁判所又は裁判官が法廷又は法廷外で事件につき審判その他の手続をするに際し、その面前その他直接に知ることができる場所で、秩序を維持するため裁判所等が命じた事項を行わず若しくはとった措置に従わない行為又は不穏当な言動で裁判所等の職務の執行を妨害し若しくは裁判の威信を著しく害する行為を制裁の対象としているものでございまして、委員御指摘のような裁判所の仮処分決定に従わない、無視することにつきましては、この法律の制裁の対象に当たらないというように考えております。
御指摘のとおり、司法の権威を守るという観点からは、これも御紹介がありましたが、英米法における法廷侮辱、裁判所侮辱のこの思想を参考に、我が国でも裁判所の仮処分決定や判決に当事者が従わない場合に制裁を科す制度を導入すべきという意見が、意見といいますか見解があることは承知しております。
もっとも、我が国の民事裁判手続におきましては、一方当事者が裁判所の仮処分決定や判決に従わない場合に、裁判の実効性を確保をする方策としましては、その相手方当事者の判断により仮処分決定や判決に基づく執行手続を取ること、別途損害賠償請求訴訟等を提起することなどが予定されているところでございます。
このような法体系の下で、司法の権威を守ることを目的として裁判結果に従わないことにつき制裁を科す制度を導入することにつきましては、制裁までの必要があるかどうか、司法の権威を制裁によって保持することが手段として適切、妥当か、司法の権威は国民の理解と信頼に支えられるべきではないか、そういった種々の観点から慎重に検討を要するものと考えております。

○三宅伸吾君

ありがとうございました。
ヘイトスピーチの対策関連法を含めても、その法律を作りました、しかし、最後一番大事なのは、その運用、それから執行、最後は司法救済でございますけれども、その司法救済の司法判断が無視されるようなことではそもそも良くないのではないかということでございます。
今おっしゃいましたその民事分野の日本の法体系の過去のいろいろ積み上げはあるというのはよく分かりますけれども、そんなことを言っておりましたら裁判員制度はできなかったということになりますし、ロースクールもできなかったということになります。それから、可視化法案もできなかった。それから、様々な司法改革、二十年間のこの議論の前と後とは、私は世界が本来であれば違うべきではなかろうかと思っております。
裁判所の権威をいかにして守るか。ちょっと言い過ぎかもしれませんけれども、二割司法とか日本社会の日陰、片隅で、司法はそれでいいんだと、余り出しゃばるなという世界であれば、私は、今法務省の方がおっしゃったような、これまでの体系の上でやっておればよかったということかもしれませんけれども、少しずつ世界が変わってきているように思いますので、また機会を見てこの点は議論をさせていただきたいと思います。
今日はありがとうございました。