ダボスでの語らいと日米首脳会談

2017-02-10

矢倉かつおです。

立春は過ぎましたが寒さは本番。関東は昨日、雪も舞いました。インフルエンザも流行っております。どうか皆様、お気をつけください。

少し前になりますが、1月20日、「ダボス会議」開催中のスイス・ダボスに出張いたしました。

農水省を代表し、WTO(世界貿易機関)の大臣会合に参加、約30カ国の大臣と世界の貿易秩序について議論するためです。1泊3日の弾丸出張(10月のノルウェー1泊4日出張ほどではないですが)です。

ダボスの朝の気温はマイナス15度! しかし、風もなく澄み渡った青空が気持ちよかったです。

奇しくもその日はトランプ大統領就任の日(アメリカ現地時間)でした。
公式会合の前後の時間を使い、WTOのアゼベド事務局長を含む10カ国ほどの大臣と個別に懇談。

特にEUやニュージーランド、スイスの貿易や経済の担当大臣とは、トランプ大統領時代の世界貿易について突っ込んだ意見交換をしました。

そこで一致したのは、世界は「共に栄える」発想のもと、自由貿易秩序を推進・構築しなければいけないという点です。

国として自国優先は当然ですが、その手段が他国排斥、「むしろ、他国からいかに奪うか」だけであってはいけない。

「自分さえよければ」が経済活動の基本となり外国排斥が横行すれば、最終的に全ての国が損をします。また、自由経済のもと培われた国どうしの相互依存関係がくずれ、長年かけて築いた安定も平和も失われます。いまが正念場です。

トランプ大統領は20日の就任演説で、「(他国からの)保護によって偉大なる繁栄と強さを導くのだ。」と述べました。そのトランプ大統領といま、安倍総理が米国で首脳会談を行っています。

とりわけ、経済分野ではタフな交渉がつづくと思います。

総理におかれては是非、日本企業がいかに米国に貢献しているかの説明とともに、日米は、秩序維持をはかる責任ある立場として、経済的な「勝ち負け」という「取引思考」だけでなく、自由で公正なルールづくりなど「理念」を共有する必要がある、それが「日米共通の利益」となることを、是非、粘り強く訴えていただきたいと思います。

実はそれが、世界全体のためであるとともに、結局、日本の国益実現にもつながります。
共通益を訴えたことが日本の国益につながった例の一つが、TPP交渉でした。

交渉にあたり日本は圧倒的に不利な立場でした。まず、交渉に参加したのは最後です。

しかも、「自由貿易の優等生」といわれる日本は、すでに外国からのモノにかかる関税(WTO全加盟国に共通して適用される関税)を他国のそれより比較的低く設定しています。これは、他国との個別の関税交渉では切るべき「カード」が少ないことを意味し、不利に働きます。

にも関わらず、以前のメルマガ(http://www.yakura-katsuo.jp/archives/2764.html)でも指摘したように、有利な条件を勝ち取りました。

それは、「世界ルールをつくる」戦略的意図を共有し、その枠組みづくりには日本の存在が不可欠であると主張、その立場を武器にすることで、経済的な実利の部分では譲歩を勝ち取ったからです。なお、こちらのメルマガ(http://www.yakura-katsuo.jp/archives/2768.html)もご参照ください。

米国が、高すぎる要求(ボール)を投げ、落としどころとして有利な条件を勝ち取る交渉にでることは、今に始まったことではないです。

私も経産省在籍時、多国間の知的財産権条約の交渉に関与、オバマ政権時の米国の担当者などとも議論しましたが、自国の法律の条文をそのまま条約案に落とし込むかのような提案をしてくることがありました。(もちろん、拒否しました。)

取引思考を重視する相手の土壌に乗らないためにも、日本から、しっかりした共有理念を提示することが重要だと痛感します。

もうひとつ肝心なことは、米国の議会への働きかけを強めることだと思います。

ワシントンDCで働いていたとき、米国上院議員と接する機会に恵まれました。その経験から、「米国の民主主義の鍵は議会なのだ。」と実感しました。
議員交流、政党交流に関連し、外交専門家の宮家邦彦氏が雑誌にて、公明党の国会議員への期待を述べておられるのはありがたいと感じます。

いずれにしろ、国際秩序が大きく変わろうとしています。

ともすれば、アメリカか中国かといった議論に陥りがちな太平洋・アジア経済情勢ですが、安定政権の続く日本の立ち位置は、そのような従属的なものではないのです。むしろ、日本が、秩序の極として、米中以外の国の力も借り、地域をリードしなければなりません。

総理とトランプ大統領との会談に期待します。

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