189回 法務委員会(裁判員裁判法案 国民理解への情報発信等)

2015-05-26

○矢倉克夫君
公明党、矢倉克夫です。
私が最後でございますので、あともう少しお付き合いいただければと思います。
今日は、先ほど来よりいろいろ御質問がありました。大体いろんな方がもう御質問されておりますので、谷先生と田中先生のいつもの心境がよく分かっている感じではあるんですが、六年を迎えた裁判員制度でございます。趣旨は、御案内のとおり、司法の国民的参加、私個人の評価としては、着実に成果も上げて、ただ改善すべきところはしっかり改善しなければいけないと、その点はあると思います。
国民参加を得るというところは当然ですけど、市民感覚というのをしっかり反映させて、それをまた国民の司法に対する理解と支持につなげていくことで司法が国民的基盤を得ていくことであるという理解でおります。
その上で、今回の法律案、一定の重大な、長期にわたることが予想されている、審議が長期にわたるようなことが予想されている事案については、この裁判員裁判制度、これを除外するということを主な内容の一つとしているわけですが、先ほどの司法への国民的参加という趣旨を踏まえた上で、今回このように除外をされたその理由について、当局からまず御説明いただきたいと思います。

○政府参考人(林眞琴君)
今後、公判前整理手続において十分な証拠の整理を仮に行ったといたしましても、審判に要する期間が著しく長期化するような事案でありますとか、その期間自体は著しく長期とは言い難いものの、週に四日ないし五日といった頻度で著しく多数回にわたりまして公判期日が開かれるような事案、こういったものがあることが想定されます。そのような事案につきましても例外なく国民に裁判員制度への参加を求めるとするならば、裁判員となる一般国民に負い切れない過重な負担を課すこととなりまして、国民の司法に対する理解や支持を損なうことにもつながりかねず、かえって司法に対する国民の理解の増進とその信頼の向上を図るという裁判員制度の趣旨に反してしまうという事態が考えられます。
また、そのような事案におきましては、裁判員の選任等に要する期間も長期に及ぶ場合が生じ得ますが、その結果、公判前整理手続が終了して争点と証拠の整理が終了しているにもかかわらず、被告人とは無関係の事情で公判が長期間にわたって開始できなかったり、あるいは公判は開始されたものの判決に至るまでの期間がいたずらに長期化したりするなどの事態が生じた場合には、迅速な裁判を受けるべき被告人の利益を不当に損なうことにもなりかねず問題がございます。
そこで、こういった事案につきましては、裁判員の参加する合議体ではなく、裁判官のみから構成される合議体による審判を可能とすることが必要かつ適切であると考えまして、今回の法改正を行うこととしたものでございます。

○矢倉克夫君
裁判員裁判の制度の本来の趣旨を確保するために今回除外をするというような御説明であったかと思います。
先ほど林刑事局長、谷先生の質問に対して、これまで可能であった事案については引き続き裁判員制度を導入するというような御趣旨の発言もされたかと思います。
私、今日の問題点、端的に申し上げますと、何が今まで実施できた体制であったのかということを、これは過去の例だけで簡単に判断するわけではなくて、やはり不断に調査はしていかなければいけないと。これまでできたから今後もできるかというような話ではなくて、やはり国民への負担ということもしっかりこれからもチェックをしていって、不断にチェックをしていくこの過程がやはり大事であるんじゃないかなというところが私の今日の問題点の一つであります。
それでお伺いもしたいんですが、除外理由、先ほど来お話もありましたとおり、幅広く国民から裁判員となることを確保するために除外をするということであります。これに適合するような程度の、今回の法文であれば、著しく長期にわたる又は著しく多数に上るというのは一体どの程度のものであるのか、また裁判所始め、この除外決定について今後どのように判断をしていくのか、大臣から御発言をいただければと思います。

○国務大臣(上川陽子君)
委員も御指摘をいただきました裁判員裁判、この趣旨に鑑みますと、広く裁判員裁判を実施していくということが大変大原則であります。例外の中で今回お願いをしているところでございます。したがいまして、これまで裁判員の参加する合議体で審判をすることが可能であった事案と同程度の審判期間となる事案につきましては、今後も通常の裁判員の参加する合議体で取り扱われるということであるというふうに考えます。
ただ、何日以上であれば著しく長期であるというような形で具体的になかなか明示しにくいということでございまして、その意味で、施行後の当分の間は、実際に裁判員等の選任手続を実施をして、辞退申立て状況あるいは選任状況をしっかりと考慮をした上で判断をすることになろうかというふうに想定をしているところでございます。さらに、この事例が一定程度蓄積をされた後につきましては、実際に裁判員等選任手続を実施せずに、過去の同種事例における裁判員の選任等の状況を考慮して判断をされるということが想定をされるということでございます。
まさに、不断のチェックをしていくということが極めて重要であるというふうに考えております。

○矢倉克夫君
ありがとうございます。
大臣今おっしゃったとおり、一つの基準をはっきり決めていくという方向であると、それ以外のまた弊害等もやはり生じてくる部分はあるかと思っております。個々の判断に照らしてノウハウを共有していくこと、これも一つはやはり大事であるかとは思っております。
他方、今回の、要は、先ほど来も強調しますけれども、国民参加というその理念を実現するためには、国民の負担というものがどういうものであるかということもやはりチェックをしなければいけないと。参加をいろいろ確保するためには参加を一部否定をしなければいけないというこの矛盾している状況、これも一つ、この制度維持するためには、国民の責任とまた負担というものがやはり全体として生じざるを得ないというところは一つの前提であるかと思っております。
これをどう調整するかというところですが、一つ明確に言えることは、国民の皆様に不可避的な負担はあるわけですけれども、やはりそれ以上にやってよかったと意義を感じていただくというような部分というのは、これは、いかなる事案があって辞任をされるか、そういう事実もあるかもしれないですけれども、やはり大事な部分であるかと思っております。
その部分では懸念が出ているのは、先ほど来からもお話のある、辞任する率というのが非常に増えてきているというところであるかと思います。率の部分での増加の部分はもう既に御説明もあったところではあるんですが、これにつきましてはどうすればよいかというところですけれども、他方で、最高裁のアンケートなどによると、裁判員を経験された方は、もう何度も出ていますが、よい経験だったということを九五%もおっしゃっている。この部分での経験のノウハウというのをやはりこれから裁判員として経験される方に対しても共有していく、候補となられた方、また、それ以外の一般の市民の方にもやはり共有をしていくということが、この裁判員として参加をすることの意義というものを広く伝えていって、それが裁判員として活動していこうという動機付けにもやはりなっていく。これが広くは、最終的には国民の参加という裁判員制度をしっかり維持していくことにもなっていくかと思っております。
その点でまたお伺いをしたいんですが、やはり実際に裁判員を経験された方の知識等を、これは裁判員間同士でコミュニティーで話し合うことも大事なんですが、これから経験をされるという方に対してもしっかりと共有をしていくということも、これは大事であるかと思っております。これについてどのように取組をしていくおつもりであるのか、こちらは最高裁からお伺いをしたいと思います。辞退率の増加の原因等の分析は結構でございますので、今の点のみよろしくお願いします。

○最高裁判所長官代理者(平木正洋君)
お答え申し上げます。
委員御指摘のように、裁判所といたしましても、より多くの国民の皆様方に裁判員制度を御理解いただき、高い参加意欲を持っていただくことが重要と考えまして、裁判官等が裁判所外の会社や団体などへ赴き、実際に裁判員裁判を経験した方の多くが肯定的な評価をしていることなど裁判員経験者の声をお伝えするとともに、裁判員裁判の運用の現状と改善への取組状況などを説明するなどして、不安なく審理及び評議に参加してもらえるよう、裁判員制度に関する正確な情報の発信に努めておるところでございます。
裁判所といたしましては、今後とも、裁判員制度に対する理解が広がるよう、適切な情報発信等に努めてまいりたいと考えております。

○矢倉克夫君
今のような裁判員として経験された方の経験をやはりいろんな分野で伝えていくときには、既にもう問題提起もされております守秘義務の関係なども明確にしていく、話していいというような安心感を与えていくためにも、その部分では、今後の継続の検討事項として是非やっていただきたいというふうに思っております。
続きまして、もう一個議論をさせていただきたいのは、やはり裁判員の判断、とりわけ量刑との関係でございます。先ほど来も田中先生の御質問の中でも話もありました。これに関しましては、昨年七月の最高裁判決がありまして、それ以降で一審の裁判員裁判の裁判例破棄がその判決以降続いたというような事態がありました。これを受けまして、一部には、市民感覚というものがこれ制限されているのではないかというようなお声もあるわけであります。
先ほど来から議論しています、市民の方が裁判員として判断をするというような意欲を持っていただくためには、裁判員制度に関心を持っていただかなければいけないと思います。この市民感覚が仮に量刑等に反映されていないということが共通認識になってしまったら、裁判員制度に対する関心そのものがやはり薄れてしまうというような部分は危惧しなければいけないところであるかと思います。
この点、まず、日本の裁判員制度、こちらは量刑判断もこれをすることのように規定もされております。アメリカなどでは、州によっては事実認定のみが陪審員はやるというようなこともあるわけですが、日本の裁判員制度が量刑も判断するようにしたこの趣旨、これをまた御説明をいただきたいと思います。

○政府参考人(林眞琴君)
裁判員制度の制度設計に当たりまして裁判員に量刑判断の権限も与えた趣旨でございますが、まず、裁判員が裁判に関与する意義は、裁判官と裁判員が責任を分担しつつ、法律専門家である裁判官と非法律家である裁判員とが相互のコミュニケーションを通じてそれぞれの知識、経験を共有し、その成果を裁判内容に反映させるという点にあるとされました。
このような意義は、犯罪事実の認定ないし有罪、無罪の判定の場面にとどまらず、それと同様に国民の関心が高い刑の量定の場面にも妥当するので、いずれにも裁判員が関与し、健全な社会常識を反映させることとすべきであると考えられたことによるものでございます。

○矢倉克夫君
今お話もありました、やはりもう刑罰というものも国民にとってはこれは重大な関心事であると。それを踏まえた上で裁判員の判断に委ねたという部分、これは意味もあるところであるかと思っております。
昨年の七月の最高裁判断が、これが提起したものは何かというところでありますが、昨年の七月の最高裁判断、求刑が十年であったものが裁判員の判断によって求刑を超える十五年刑が行われた、それが最終的には破棄をされたというような案件でございました。
私、判旨の方も見てみたんですが、一部の報道では、この裁判員制度による量刑というもの、これをいかにも否定したかのような判旨のようにも報道している部分もあるんですが、よくよく読んでみますと、そうではなくて、やはり判旨、この裁判員の判断自体は非常に尊重もした上で、ただ、先例の集積それ自体は直ちに法規範を帯びるものではないが、目安とされるという意義を持っていると。
その上で、大事なことは、量刑判断の客観的な合理性を確保するため、裁判官としては、評議において、当該事案の法定刑をベースにした上で、参考となる大まかな量刑の傾向を紹介し、裁判官全員の共通の認識とした上で評議を進めるべきであり、その上で、必要性があれば裁判員の判断が尊重される場合もあると。やはりベースとなることが量刑判断の客観的な今までの傾向であるというところを言っているかと思っております。
その上で重視すべきは、やはり裁判官と裁判員の協議というのが大事だというところを言っているのが判旨のポイントであると思っております。刑の公平性を確保するために量刑の傾向というのは大事なんですが、それを踏まえた上で、裁判員の意思がしっかりと把握できるようにちゃんと協議をしていきなさいというところ。
問題は、当然ですけど、この協議の仕方をどうあるべきかなんですが、最終的に裁判官が先例を押し付けるような協議をしてしまっては、これは最高裁の判旨の趣旨も没却してしまうわけですので、この辺りはしっかり考えていかなければいけないと思います。
その上で、最高裁として、協議の在り方という点についてどのようにお考えであるのか、御意見をいただきたいというふうに思います。

○最高裁判所長官代理者(平木正洋君)
お答え申し上げます。
裁判員裁判においてどのような評議をするのか、あるいはどのような量刑を判断をするのかは、個々の事件で各裁判体が判断することでございますので、事務当局としてはお答えする立場にございません。
もっとも、例えば裁判員制度の運用等に関する有識者懇談会で、現場の裁判官は次のような評議の進め方の例を紹介しております。裁判官から裁判員に対し公平な裁判の要請があるので、同じようなことをやった人にはある程度同じような刑が科されるべきであり、量刑傾向を参照してもらうこと、ただし、事件は一つ一つ個性があり、また裁判員裁判は事件ごとに選ばれる裁判員の方々の感覚を反映させる制度なので、量刑傾向はあくまでも大枠、傾向としてもらいたいことなどを説明している、このように紹介されております。
評議の在り方につきましては、裁判官同士の協議会等で意見交換が行われているところでございまして、事務当局としましても、引き続きそのような議論の場を設けるなどして、より良い評議がなされるよう配慮していきたいと考えております。

○矢倉克夫君
先ほど引用した、補足意見でございました。補足意見の方で、やはり裁判員に対して、同種事案においてどのような要素を考慮し量刑判断が行われてきたのか、あるいは、そうした量刑の傾向がなぜ、どのような意味で出発点となるべきなのかといった事情を適切に説明する必要があると。その上での判断というのが、実質的な意見交換というのが大事だというような補足意見がありました。
裁判員制度において量刑をしっかり判断をするというような趣旨が没却することもないように、他方で、刑の公平性という今までのノウハウの蓄積もやはり実績も、着実にやっていくためには、この協議をしっかりやっていく必要は非常に重要であるかと思っております。その意味でも、このような協議をしっかり充実させた上で、そのようなノウハウを広く国民全般に広げていくというような方策もまたしっかり考えていくことが裁判員制度の更なる充実に私も発展していくと思っております。
いろいろ多方面で、全般的に今後の改善という部分は非常に多いかと思いますが、今回の法改正をまた一つの契機として更なる充実を図っていただきたいことをお願い申し上げまして、質問終わりたいと思います。
ありがとうございます。