190回 法務委員会(刑事訴訟法改正案)

2016-04-19

○矢倉克夫君

公明党の矢倉克夫です。
四人の参考人の先生方、貴重なお話、大変にありがとうございました。
主に可視化についてお伺いをしたいと思うんですが、私のこの問題に対しての基本認識をちょっと一言申し上げると、可視化は、その趣旨は、まずはやはり捜査の適正化だと思います。可視化をすることで捜査機関に心理的ないろんな要素等も与えて、やはり適正な捜査手続というものをしていくと。もう一方で、可視化した証拠、可視化することで供述証拠の任意性の立証が資すると。この二点があるんですけど、私の感覚としてもやはり前者の方を基調にしなければいけないと。供述調書の任意性立証のための可視化という位置付けはやはり良くないし、小池先生がおっしゃったとおりの、実質証拠としての頻発するというような事態になるという事態は良くないと思います。
その上で、この法案自体は、河津参考人がおっしゃったとおり、まさに第一歩として、今申し上げた捜査の適正化に資するための第一歩として非常に評価をするところであるし、他方で、今後、運用で捜査の適正化に資する形でしっかりと全面可視化ということをやっていかなければいけない、そのセットをもってやらなければいけないという理解であります。
その上で、ちょっとお伺いしたいのは、大澤参考人に三点ほどお伺いしたいんですが、先ほど小池参考人がおっしゃっていたところ、部分可視化というものの弊害というところは非常に重要なポイントでもあるかと思います。これを、どのようにこの弊害をなくしていくのかという部分の理解がやはり必要かなと思っておりまして、まず一点目ですけれども、先ほど小池参考人が弊害となる法律上の今回の改正法の根拠として、やはり例外事由のところであるというふうに挙げられていたと思います。具体的には、私の理解では被疑者の拒否の条項ですよね。拒否という明文のみならず、その他の被疑者の言動により、記録をすると被疑者が十分に供述できないと認めるときという文言があった。
先ほど、大澤参考人のお話だと、これは後に捜査機関の方でこの部分を立証するという、その立証の部分で担保できるからというお話だったんですが、この条文の解釈そのものもやはり拒否というものに準ずるようなものでなければいけないという解釈がやはりあるべきであると。明示に拒否したわけではなくて、録画はしてはいいけど、その代わり録画したら私はしゃべらないよとか、そういうようなことを言う被疑者の方もいたりとかする。
そういった録画によって結局捜査が進展しないというようなこともある場合に、どういうようなことなのかというような事情もやはりあると思うんですけど、まずお聞きしたいのが、その他の被疑者の言動により云々、これが裁量の余地がないようにやはり拒否というものと準ずるぐらいの厳格な定義であらなければならないというような解釈はあるべきだと思うんですけど、その辺り、どのようにお考えでしょうか。

○参考人(大澤裕君)

拒否を受けて、その他被疑者の言動とされているわけですから、それはやはり拒否に相当するようなということかと思います。
ただ、供述できないというのが、大事なことは、私は黙秘しますから供述しませんというのではなくて、やはり録音されているから供述したくてもできませんと、そういうふうに取れるような拒否なりあるいは言動だ、もう一つ、後ろの方からの掛かってくる部分もあるのかなというふうに思っております。

○矢倉克夫君

ありがとうございます。
じゃ、二点目、また済みません、大澤参考人に引き続きなんですが。
先ほどの小池参考人の御意見の中ですと、全面可視化というところでありますけど、結局、録画請求の場面では、やはり自白調書が作成されたとき、そこに関係するところだけ録画請求というような、要は裁量で一部分だけを表に出してきてというようなことがあるんじゃないかというようなお話もあったところであります。これについては改正法の中でどのように担保をされているか、その濫用のおそれをなくす担保をされているのか、あと運用上どういう工夫が考えられるのかという点について御意見賜れればと思います。

○参考人(大澤裕君)

自白の取調べが請求された場合に任意性が争われたというときには、その自白が獲得された取調べについて録音、録画の取調べ請求をせよということになっていますが、もちろん、任意性を疑う事由というのがその当該取調べよりも例えば前の取調べの中にある、そのように被疑者、被告人の側から主張をしていく、そういう場合というのは当然あるんだろうと思います。
その場合については当然そこが争点ということになってきますから、その点をきちっともし言っていって公判前整理手続ということになっていけば、恐らく争点関連証拠としてそこの部分の録音、録画というのが弁護人側に開示されるということにもなってくるでしょうし、また、それが弁護人の側で検討をして任意性を争う証拠として使えるということになれば、弁護人の側からそれを請求していくということもあり得るのかもしれません。
あるいは、ここの部分でこういう任意性を疑わせる事情がありましたと、当該取調べよりも前の部分にあって、それがずっと影響してきているんですということになれば、検察が、訴追側としては、そこにそういう本当に何か問題のある取調べがあったのかどうか、なかったのか、その点を立証する、あるいは、仮にあったとしても、それは当該取調べにはもはや影響していないんだということを立証するのか。それを立証していかなければいけないということになると思いますが、その際には、やはりその間の取調べの録音、録画というのは非常に有力な資料になるだろうと思います。
ですから、必要があれば検察側から取調べ請求をするということもあるでしょうし、先ほど申し上げましたように、はっきりと被告人側からその点に争いがあるんだということで公判前整理に持っていけば、それは証拠開示の対象にもなっていくんではないかというふうに認識しております。

○矢倉克夫君

今、弁護人の動きというものもお話あった。後ほど河津参考人にも、弁護人としてどのようにこの辺り実効性を確保していくのかということはちょっとお伺いしたいと思うんですが、ちょっともう一つ、大澤参考人に、済みません。
先ほど小池参考人がおっしゃっていた別件逮捕、これは対象事件じゃない、別件としては対象事件じゃないわけですけど、その別件の取調べのさなかに対象事件である余罪の取調べが開始をされる、このような事案があったわけですけど、今政府の答弁などでも、そのような別件逮捕中に余罪が、対象事件が取り調べられたときにもこれは録音、録画の対象になるというようなことはあったわけであります。ただ、どこからどこまでが切り分けが難しいかというようなお話があったというふうに理解しています。
先ほど大澤参考人、供述の中で録音・録画義務がない場合も任意性を立証させるためには録音、録画しないといけないという方針をお話をされていたんですけど、例えば今のような場合を想定すると、何といいましょうか、別件で取り調べている最中に対象事件の余罪が取り調べられるようになったというようなときに、そこから余罪を切り分けというのが難しければ、最初からそういうのを想定してできる限り幅広く録音、録画をしておくというような運用をすべきだというような意見もあると思うんですが、その辺りについてはどのようにお考えでありますでしょうか。

○参考人(大澤裕君)

もし捜査機関の側が初めから余罪を取り調べるつもりであったのだとすれば、それはやはり撮っておかなければいけないという方向になるんだろうと思います。
ただ、いきなりぽろっと出てきたとかいう場合については、ぽろっと出たものについて撮っておけというのはこれはなかなか難しいわけで、しかし、ぽろっと出たことについて更に今度はそこについて聞いていくということになれば、これは対象事件についての取調べだというふうに仕切っていかざるを得ないということでしょうから、一旦そこで止めて、もしそれについて更に聞くということならば録音、録画をしていくということになるんだろうと思います。
小池参考人が恐らく言われたようなケースというのは、余罪とそれから対象事件とがかなり密接に関連していて、実は余罪について質問していることが対象事件にも関わりを持ってくるような場合ということなのかもしれません。ここの部分はなかなか切り分けが確かに難しいということになりますけれども、結局どっちについて聞いているのかということで考えていくしかないということではないかと思います。

○矢倉克夫君

ありがとうございます。
では、河津参考人に、やはり法曹三者の中でどういうふうにこの適正化のための運用をしていくのかというところが大事だと思うんですが、とりわけ今の、先ほど小池参考人や桜井参考人の方からも部分可視化の危険というようなお話もあった。それは弁護人の立場から、どのようにそういうのがなくなるように実務を行っていくべきとお考えか、ちょっと御意見をいただければと思っております。

○参考人(河津博史君)

まず、やはり部分可視化が危険であり全面的な可視化がされるべきであるという点について、私もお二人と意見を同じくしております。
ただ、全面的な可視化がなされない、あるいは例外規定に当たるなどの理由で可視化されていない部分があるときにどのような弁護活動を行うのかということについて、私どもは専門家集団として検討しなければなりません。
具体的には、録音、録画された取調べの中に任意性を疑わせるような何か事情が記録されている場合には、私どもは当然、記録媒体について証拠開示請求をして開示を受け、その部分の証拠調べ請求をすることになるだろうと思います。
逆に、録音、録画されていない取調べにおいて任意性に疑問を生じさせるような言動等があった場合、例えば私どもは弁護人の接見記録であるとか、被疑者から受け取った手紙であるとか、あるいは被疑者ノートなどを活用して、そこで問題のある取調べがあったということを公判で立証していくことになるだろうと思います。
先ほど村木厚子さんの事件を御紹介しましたが、その事件の中では被疑者ノートというのが証人の供述の任意性、あるいは信用性の証拠として重要な役割を果たしました。

○矢倉克夫君

ありがとうございます。
桜井参考人にお伺いをしたいと思います。
先ほどのお話、やはり警察というものの潜在的な考えなければいけない点というのは、本当に胸に迫るようなところもあったと思います。これについて、職務として警察もやっている、ただ、それがなぜそういうような形になってしまうと思われるのか、率直に御意見がありましたら。

○参考人(桜井昌司君)

警察の側に立ってみますと、犯罪者ってうそつきなんですよね。私もちょっと昔悪いことをしたのでよく分かるんですけどね。そういう人を日常的に相手にしていると、多分真実を言う人の真実を見抜けなくなってしまうんじゃないかと思います。
警察官って人を信じませんよね。多分ここの表に立っている人も、誰か悪いことするやついないかって立っていますよね、あの連中は。いつもいつも人を疑う人格というのは、残念ながら、正義の思いを持って警察官になってもゆがんでしまうと、私これ確信を持っていますね。ですから、一人の警察官の正義感とか警察官の善意というのを疑うわけじゃないんです。あの方たちが組織に入ってしまったら、その組織に、論理にはまらなくちゃ生きていけないんですよ。
そして、多分、私これが一番大きな原因だと思うんですけど、あの方たちは逮捕したことをもって一〇〇%犯人と確信します、愛媛県警から流出したあの捜査規範でもお分かりになると思うんですけれども。その一〇〇%目の前の人間を犯人と思った場合が、この人を犯人にするのが社会正義、我々は正義を守る、だから多少の悪いことはしてもいい。社会の人も思いますよね、どうせ逮捕されたような人は何か悪いことをしているんだもん、少し厳しくしてもしようがないよと。私自身も実は逮捕されるまでそう思っていました。
ですから、警察という組織というのは残念ながらこういう違法行為を行ってしまう組織なんだと思うんですね、日常的な思いで。ですから、その部分に法律的なちゃんとした歯止めがない限り、こう解釈できる、ああ解釈できるというような法律では、多分この全面可視化とかいろんな部分で冤罪が防がれるような法律にはならないだろうなと思います。

○矢倉克夫君

濫用のおそれというのがないように運用していくというところがやはり非常に大事であるなというふうに改めて感じたわけですけど、最後、小池参考人と大澤参考人と河津参考人に、改めてこの可視化の部分について、それぞれのお立場はあると思うんですが、このような形でまずは一歩として法定義務化をしたということについての評価を一言ずついただければと思います。

○参考人(小池振一郎君) 先ほど大澤参考人が言われたことについてちょっと触れさせていただきたいと思うんですが、任意性立証のためにということで、録画されたよりもその前の録画を出すということでいいではないかという趣旨の御発言がありました。その前の録画を出すことによって、公判前整理手続の中で要求して、それを弁護側が出せばいいんだというお話がありました。もちろん、それはそうしなければならないと思うんですが、実は、しかしそれは録画があるという前提での話であって、録画がない場合はどうするんでしょうか。
先ほど愛媛県警の捜査マニュアルの話が出ましたけれども、この人が真犯人だと思えば、もう徹底的に気迫を持ってやれと、被疑者を弱らせるまでやれというのがその捜査マニュアルなんです。そういう場面、録画しませんよ。そういうときにどうするんですか。こんなのは公判前整理手続で録画出せと言ったって、ないものは出せませんよね。そういうときの対応ができなくなるというふうに思われます。
ということで、今回の法案はいろいろな抜け道、そういう場合にペナルティーがないわけですね、今のような場合に。全過程可視化していないから一つでも供述調書を出しちゃ駄目というのなら分かるんですが、そうでない限りは、この法案では欠陥があると言わざるを得ないと思います。

○参考人(大澤裕君)

今の点について一言だけ私も申し上げさせていただいてよろしいでしょうか。
仮に、そこの部分についてなかった、しかし被告人側からそこの部分にこういう問題があったというふうに言われたときに、そこが任意性立証の一つの争点となったとしますと、そこに正当な理由がないにもかかわらず録音、録画がないということは、これは多分訴追側にとってはかなり立証上大きなダメージになることではないかというふうに考えています。
その上で、今回の録音・録画制度ですけれども、先ほど来、特に警察の取調べが問題なんだということが御指摘がございました。
現在、運用あるいは試行という形で検察ではかなりの程度に録音、録画が行われつつあります。それに対して、警察の方はなかなかそこまで付いていっていないという状況です。そういう状況の中で、一定の限定された事件についてではありますけれども、原則全面的に録音、録画をする。そこにも、しかし、取調べが重要な証拠収集手段だからその機能を損ないたくないということで一定の例外がありますけれども、しかし、例外を残しつつも、一応原則としては全過程の録音、録画だ、それを警察についても導入することになっている、そこが一つこの法案の非常に重要な点であろうかと思います。私は、そういう点で一歩前進であろうというふうに思っているところです。

○参考人(河津博史君)

現在、六法を開いて刑事訴訟法の全ての条文を見ても、取調べの録音・録画義務というのはどこにも規定されていません。したがって、捜査機関が幾ら運用で録音、録画をしているといっても、彼らがある事件でしなくても、それは直ちに違法の評価を全く受けないということになります。しかしながら、今回の法律案が成立し、一定の限られた事件とはいえ録音・録画義務が刑事訴訟法の中に書き込まれれば、録音、録画をしないことは違法の評価を受けることになります。
しかも、今回の法律案では、対象事件については身柄事件に限定されていますけれども、全過程が原則という形で規定することになっています。これは恐らくほとんどの事件で多くの取調べが録音、録画の対象になるはずです。そうであるとすれば、それらの録音、録画されている取調べの中で不適正な行為が行われることは相当抑止できるはずです。そうであるとするならば、第一歩としてこの法律案を成立させることが重要であると私は考えております。

○矢倉克夫君

ありがとうございました。