185回 国家安全保障に関する特別委員会(参考人質疑)

2013-11-21 国会質問議事録

○矢倉克夫君

公明党の矢倉克夫でございます。
今日は、三人の先生方、大変お忙しい中、急なお呼び立てにもかかわらずお集まりをいただき本当にありがとうございます。また、先ほど来、それぞれの御専門また御経験に基づいて大変貴重な御意見を賜りましたことを感謝を申し上げます。本当にありがとうございます。
お説をお伺いしておりまして、今回のNSC法案、今の日本の力を弱めている一つの原因がまず縦割りである、特に政策や情報収集での縦割りであり、その打破に向けて意義はあるという点は皆様御一致されている御見解であると思います。あとは、その運用いかんをいかにするか、ここはまたこれからしっかり議論をしていかなきゃいけないところであるなという点を改めて実感した次第でございます。
私自身は、元々弁護士ではあったんですが、昨年の三月まで経済産業省に任期付職員として出向をいたしておりました。特に、貿易関係の国際交渉を担当しておりましたが、その中で、民間から来た役所の中に入った人間として、縦割りの一つの原因は、やはり情報の縦割りというのが非常に多いなと、役所自身もそれぞれの力を維持するためには情報をいかに出さないかというのを非常に腐心しているなというのを実感をした次第でございます。その意味で、私も、今議論をされている法案、方向性としては非常に重要であるし、作っていかなければいけないなと。ただ、今日、また改めてどうやってその制度設計をしていくのか御説明をいただきたいと思っております。
まず、春原先生にお伺いをしたいんですが、先ほど、特にこれまで余り議論がなかった、NSCは暴走を停止をするという機能があったと。今、アメリカの歴史も含めて六段階に分けて非常に詳細に御説明をいただいたところでございます。
お伺いしたいのは、NSCが一時期暴走をした、それが父親ブッシュのときに組織として機能をした要素に転換をしたと。これは、暴走すべき要素があったNSCが組織的に何か変革をして、有効に機能したというような変革がなされたというふうに私推測したんですが、今の、できれば、アメリカのNSCと日本版NSC、日本版NSCはむしろイギリスのNSCに似ているというふうに理解ではいるんですが、可能な限り日本版のNSCの組織に照らし合わせて、アメリカではどういう変革がなされたのか、どういう部分の機能を強化されたのかというのを御説明いただければと思います。

○参考人(春原剛君)

先ほど申し上げました、レーガン政権のときにイラン・コントラ事件がありまして、これは御案内の方も多いと思いますが、イランとはいまだにアメリカは国交断絶です。しかしながら、イランのお金、オイルマネーを使って、サンディニスタ政権という当時あった中米の政権、左派政権を打破するために、そこの反政府ゲリラ、コントラにお金を回すということでイランに武器を売ったと。これは、オリバー・ノース等々NSCの軍人スタッフが考えた仕組みでありました。
これは、当時、レーガン政権がある種二期目に入って少し求心力を失っていたということもあり、NSCが肥大化したこともあり、そういった暴走を招いたんだと思いますが、これに対して、先ほど申し上げたハワード・ベーカー首席補佐官、あるいは議会の方でジョン・タワーというやはり国防問題に詳しい方がタワー委員会というのを創設して、こちらでいろいろ検討しました。そうした検討を受けて、父親のブッシュ大統領のときのスコウクロフト補佐官が導入した最大の改善点はデピュティーズコミッティーというものを導入したことです。デピュティーというのは英語で言うと次席ですね。今も実はホワイトハウスを中心とした、NSCを母体とした政府運営はこのデピュティーズコミッティーの役割がかなり高いというふうに言われています。
これは具体的に何を言うかといいますと、NSC、アメリカの場合はデピュティー、副官がおります。この副官が主宰して、各省庁、国防総省、国務省、財務省、USTR、商務省等々、アメリカの有力省庁の次官クラスあるいは副長官クラスを集めまして、各省庁からの情報を吸い上げ、意見を統合し、ここで一つ政府としての意見をまとめるということですね。この上にあるのがプリンシプルミーティングという、よく彼らは言っていますけれども、長官クラス、大統領も出席する長官クラスのNSCの会議であります。ですから、日本とそういう意味では似ているようなところもありまして、昔、事務次官会議というのがありましたが、事務次官会議をもう少し、しゃんしゃんではなく、実質的に各々の情報を持ち合い、意見を統合し、政府の国家戦略として束ねるという、そういう性格を持たせたものがデピュティーズコミッティーであろうかと思います。
ですから、このデピュティーズコミッティーが今のアメリカのNSCにおいていかにうまく機能しているかというのを、今後、日本版のNSCを創設、運営していく上においていろいろ研究、勉強する必要はあるのではないかというふうに思っておりますし、実際、アメリカの多くのNSCの補佐官たちも、あのデピュティーズコミッティーをスコウクロフト、父親ブッシュ大統領が導入してからNSCは随分と近代化したと言われています。簡単な言葉で申し上げると、キッシンジャーの時代がキッシンジャーという非常にあくの強い人の個人商店であったNSCが、スコウクロフトの改革によって会社組織のようなものに変わったというふうに私は認識しております。

○矢倉克夫君

ありがとうございます。
今のデピュティーズコミッティー、これ日本版でいえば幹事とかが役回りをするということになり得るという理解でよろしいでしょうか。

○参考人(春原剛君)

恐らく、日本版のNSCの構想においても副官が二人候補になっていると思いますが、そのうちのいずれかが例えば委員長役となって関連各省庁の、先ほど申し上げました日本の例でいいますと局長クラスでしょうか、あるいはその上なのか分かりませんが、そういう方々を集めて随時機動的に議論を行うというイメージではないかと思います。

○矢倉克夫君

ありがとうございます。
今の暴走の関係にもあると思うんですけれども、近くはやはりイラク戦争のときの教訓として、今情報と政策の分離ということがよく言われておりますが、実際、何で大量破壊兵器があるというような情報の下、政策判断なされたかというと、情報発注側の意向が、やはりあることを想定した情報を集めるというような発注がなされていたんだろうなというような推測が成り立ちますし、日本版NSC設計するに当たっても、やっぱりそういう部分の危険性というのは常に監視をしなきゃいけないところであるなと思っております。
それでまた、続けて春原先生にお尋ねするんですが、制度的にこういうカスタマー、情報のカスタマーとしての、今回であれば国家安全保障局、いかに発注するか、その適正を図る制度設計みたいなのをアドバイスいただければと思います。

○参考人(春原剛君)

今議員御指摘になったとおり、日本におけるNSCの議論で少しごっちゃになっているなという印象があるのは、そのおっしゃられたインテリジェンスに関して、カスタマーであるNSCと提供元であるインテリジェンスコミュニティーの役割が少しごっちゃに議論されている。これは第一次安倍政権のときから少し見られた傾向なんですが、今御指摘があったとおり、NSCというのは、あくまで情報、上げられた情報に基づいて分析をし、戦略を考え、政策を総理大臣に提言するというのがファンクションであって、情報を集めるのが仕事ではないということです。
ただ、政府の諸機関からそれぞれが持っている、外務省、防衛省、あるいは警察なり経産省、財務省も含めまして、それぞれの有力省庁が持っている情報を吸い上げるという意味では情報を集めるということになろうかと思いますが、実際に、ローマテリアルとよくこの世界で言いますけれども、生の情報を収集するのは各省庁であって、NSCの役割ではありません。
ですから、どうもそこのところが、情報を政府の中から吸い上げるということからして、そういう表現があるので、NSCそのものが情報を集める、だから秘密保全法案が必要なんだというようなちょっと議論になっているようなところもあるかと思いますが、そこは明確に区別を付けなければいけないというのがまず第一点。
であるからこそ、NSCというのはカスタマーですから、情報には一切手を触れない、これが大原則だと思います。御指摘になったとおり、イラク戦争のときは、例の有名になったテネットというCIA長官がブッシュ大統領の執務室でスラムダンクですよという言葉を使ったと。つまり、絶対確実にサダム・フセインは大量破壊兵器を持っているというふうにミスリードをしたわけなんですが、そのミスリードしたと言われる原因も、今これも御指摘のあったとおり、恐らく当時戦争を、対イラク戦争を仕掛けたいと思っていた人たちのことをおもんぱかった、やっぱりバイアスが大分掛かっていたのではないかというふうに言われています。
ですから、日本がNSCをつくるに当たって最も気を付けなきゃいけないのは、政策判断をする、もちろん総理大臣、官房長官は当然のことながら、NSCの方々が自らの行いたい政策だけに適合する情報を集めるのではなく、全ての情報をあまねく集めた上で自らの政策なり方向性が正しいかどうかというのを判断する、そういうような役割分担をきちんとしていただきたいというふうに思います。

○矢倉克夫君

ありがとうございます。
やはり発注する側ですので、その発注の仕方いかんによって変なプレッシャーをインテリジェンスチームの方に与えないということも非常に大事な部分ではあるかなとは思っております。
それで、あと、逆に必要な情報がやはり集まらないというようなことも非常に重要な、大変な部分ではあるかなと思っております。私も先ほど、冒頭申し上げたとき、役所にいたとき、例えば係から課に、局から、どんどん上がっていくうちに情報というのはどんどん選別をされていく。いろんな理由があると思うんですけれども、やはり上げたくない心理の中で情報が選別されていってしまうというようなことは非常に大きいと思います。
今の法案の中では、情報共有、省庁を隔てた情報共有は官房長官をまた基点にして制度を設けているんですが、実際、行政機関の長から供与されたとき、行政機関の長に上がっている情報が選別をされて不十分な情報であれば法案自体も実効性がないかなとは思っております。
落合先生、先ほどまさに御経験の下、いかに情報というのが上げることが難しいかというようなことをおっしゃっていらっしゃいました。その御経験に基づいて、的確な情報をしっかり下から上に上げていくためにはどうすればよろしいのか、もし、アドバイスいただければと思いますが。

○参考人(落合洋司君)

いや、なかなか難しい問題なので、本当に非常に難しいことなんですが、ですから、情報というのはその辺に転がっているものではないので、やっぱり人が持っているといいますか、どうしても人というものが情報をそれぞれいろんな形で持っている、各省庁の中でも各段階でも持っていると。
ですから、私のやっぱりイメージとしては、そういう情報に対して日ごろから一つの人間関係、信頼関係というのを保ちながら、偉い人だけを相手にするんじゃなくて、必要に応じて少し下の方の人たちとも接するというふうな人をきちっと設けておく。私のイメージではそれが総理補佐官というふうな感じのイメージなんですけれども、例えばですね。別に総理補佐官でなくてもいいんですけれども、やっぱりそういう人が日ごろからよく見て、誰がどういう情報を持っているかというのも含めてきちんと把握をしていると。必要があれば、上の人だけじゃなくて、もうちょっと下に下がった人に対していろいろ働きかけをして、情報というのを持っていないかという形でいい意味で拾い上げていくと。
だから、下からぐっと上がってくるのだけをただ口開けて待っているというのではなくて、そういう積極的に働きかけていくというふうなことをやっぱりやっていかないと、なかなかいい情報というのは拾えないと。そういったことをやるには、やはり専従で誰かが、ステータスのそれなりに高い方がよく見ておくという体制が必要なんじゃないかなというイメージは持っていますね。
以上です。

○矢倉克夫君

ありがとうございます。
ちょっとまた話が戻るかもしれないですが、インテリジェンスチーム、やはり先ほど、情報を収集、要求をしたときに、ある程度の圧力を感じてインテリジェンスチームが上げる情報を仮に選別してしまうというようなことが、やっぱりプロ意識を持ったインテリジェンスのチームをつくっていくためにはどういうような組織の在り方、今やはりいろいろ問題になっているのは、省庁からの出向とかで来てしまって一時的に来ている人たちが集まると、元の省益をやはり維持をしたまま来てしまうと。そうではなくて、もうちょっと専門化、特化した恒常的な組織をつくるべきだという議論も一部あったと思うんですが、それについて、春原先生、御見解をいただければと思います。

○参考人(春原剛君)

インテリジェンスを集める手法として専門の人たちがよく言われるのは、ヒューミント、人的情報源ですね、それからテクニカルミーンズといって、例えば情報収集衛星であるとか電波とかシグナルとかそういうものをとらえるのと、いろんな種類があろうかと思います。
そうした中で、先ほど申し上げたアメリカの場合は、NSAのようにいわゆる電波とかネットとかそういうものを中心としたものに特化する組織と、CIAのようにある程度工作員を抱えるような組織というものがあろうかと思いますが、後者に関しては日本で僕はやれるとは思いませんし、やるべきではないというふうに思っております。ただし、今、内閣の中にある内閣情報調査室が必ずしも政府の持っている全ての情報をうまく統合できていないという面もあると思いますので、ここをどういうふうにこれから強化していくのか、オールジャパンの体制を取っていくのかということが一つの重要なポイントになるんではないかと思います。
その一方で、先ほど申し上げました、例えば防衛省の情報本部の特性を生かしつつ、ここをどういうふうに伸ばしていくか、そういった議論も必要ではないかというふうに思います。

○矢倉克夫君

ちょっとまだお伺いしたいことが実はあったのですが、時間が来ましたので。
三人の先生方、本当にありがとうございました。非常に貴重な御経験の、また基づく御専門のアドバイスをいただきまして誠にありがとうございました。質問を終わりたいと思います。

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