186回_文教科学委員会(地方教育行政法案 参考人質疑)

2014-05-29 国会質問議事録

○矢倉克夫君
公明党の矢倉克夫でございます。
四人の参考人の先生方、お忙しいところ、大変にありがとうございます。それぞれの御経験と御識見に基づく非常に貴重な御意見、大変参考になりました。
時間もありますので早速お伺いさせていただきたいんですが、今回の改正案の一つのポイントは、教育長と教育委員長を一体化するという点があると思います。責任の明確化や、また判断の迅速化等が趣旨であると思うんですが、まず、今田参考人、加治佐参考人、そして三上参考人にお伺いをしたいのですが、この教育長と教育委員長を一体化させたことに対する評価、御意見をいただければと思います。

○参考人(今田忠彦君)
私、自分の陳述の中でも申し上げましたが、一つは、組織のありようとして、責任のありようみたいなことでどこか一つになるというような意味での分かりやすさというものがあるというふうに思います。
しかし一方で、私の横浜の経験でいきますと、これだけ大きな現場があり、そして教育という非常に大きな世界、奥深い世界、それの責任が何か一方に偏っちゃうというか一人だけになっちゃう。今までは、行政の部分は教育長、あるいは教育の少し大きな部分というのは委員長がフォローするというふうな格好で、大きな組織ですからそういう両方の協力でなっていたものが、一人教育長という格好になるということは、なかなか教育長になる人は力量がかなりないといけない。
そういう意味でその育成の大事さということを申し上げたんですけど、私は、この辺は本当は、都市の自主性、規模とか成熟度によって両方設けるというのも一つあるのではないかなというふうに個人的には思っておりまして、中教審の臨時部会でもそういう発言をさせていただいたことがございます。

○参考人(加治佐哲也君)
教育委員会制度というのは、元々いわゆるレーマンとプロフェッショナルの調和といいますか、そういうもので成り立っているわけですね。ですから、原則論からいうと、専門家が教育委員、つまり素人、レーマンを兼ねるということはあり得ないわけですね。アメリカの制度はそうなっているわけです。それが戦後日本に移入されて、当初はそうだったわけです。つまり、都道府県も市町村も教育委員と教育長は別です。教育委員長を兼ねるなんていうのはとんでもない、その当時は、ことであって、それが地教行法改正によって市町村は教育委員であって教育長になるようになったと。さらに、その後、都道府県についても、教育委員として特別職になって教育長を担当すると、こういうことになったわけですね。私は、制度理念からいうと全く矛盾していると思います。そのことは文科省もこれまで指摘してきたと思います。
ただ、最初に申し上げましたように、しかしながら、合議制教育委員会というのはもうどう考えても、私申し上げました、機能しません。実態としては、やはり教育委員でもある教育長が事実上地域の教育行政を取り仕切っていると、こういう現実があるわけですね。これは、理念からは反するかもしれないけど、日本的実態からいうと、もうこれ、致し方がないことなのだろうなというふうに判断せざるを得ません。
そこで、合議制の下では責任の所在がはっきりしないということですから、実質的にもう担当している教育長にそういう教育委員会の、教育委員長というよりも教育委員会を総理するということですよね。だから、そういう役割を与えたこと自体は決してもう間違っていないというか、ある意味仕方がないなというふうな思いをしております。
それによって、住民、民意を反映する教育委員と専門職である教育長という矛盾が解消されて、教育長が純然たる専門職だということになるということだということなんで、まあそれはそれでそういう面では前進かなという評価はしております。

○参考人(三上昭彦君)
私は加治佐さんとは全く違う評価ですね。反対でございます。
日本の教育委員会制度は、先ほど私の最初のあれでも言いましたけれども、一九五六年の地方教育行政法によって本当に理念もぐちゃぐちゃにされたというのが私のあれですよね。なぜかといったら、先ほど加治佐さんもおっしゃられていましたけれども、確かに教育委員会制度はアメリカで発達して日本に紹介されて、この行政委員会制度というのは確かに国際的に見てもそんなに数があるわけではない、やっぱりユニークな制度ではあると思います。その一つの理念がレーマンコントロールとプロフェッショナルリーダーシップと言われていますけれども、しかし、もしそれでいくならば、一九五六年の地方教育行政法は教育長は教育委員の中から、一般の市町村についてはですね、都道府県と政令指定都市は違いましたけれども、あの法律によって教育長は教育委員の中から選ぶという、つまり教育長は教育委員を兼ねるという制度を導入して、非常に理念的に訳が分からなくなってきたわけですね。
その流れでいいますと、しかも地教行法は、現行法がそうですけれども、教育長は教育委員長を兼ねられないというのを明記していますよね、現地教行法は。それを今我々のテーマにしているといいますか審議している一部改正法案は、教育長は事実上教育委員長と一本化するわけですから、兼ねるわけですよね。確かに、教育長は教育委員ではなくなるわけですけど、それは一本化という意味がどうも私もはっきりしないんですが、教育委員長というのはいなくなるわけでしょう、いわゆる。教育長が教育委員会を代表してその責任を持つわけですから、これは明らかに、教育委員会を開いて広く議論をしていくと、四人ですか、通常で四人の教育委員会は、教育長に対してはもう今まで以上に本当に影が薄くなると思いますよ。
もし影を薄くしないための唯一の方法があるならば、この教育委員に住民代表制を与えるということですよ。もしそうであるならば、しかもその教育委員が、やはりある一定の識見を持って、それから地域の教育問題についてもきちっとした現状分析と、それに対するやっぱり積極的なあれを持てるというふうな、これを教育委員も持つならば、これは教育長と大いに議論ができるでしょうけれども、今のまま、現在の今回の法案ではとてもそれは駄目です。マイナスの方向に行くだろうと。
つまり、教育委員会は、首長プラス教育長なんですね。独裁とまではいかないにしても、それが完全に主導する教育委員会になると、これは本来の制度から明らかに更に後退していくと、そういうふうなのが私の意見でございます。

○矢倉克夫君
ありがとうございます。大変参考になりました。
私個人的には、これまで教育委員会の形骸化と言われているのは、教育長の下に事務局があって、そのラインとは別のところに教育委員会があったことで情報の伝達等もなかったという部分も仮にあったとしたら、今回の一体化はそれを解決に資するものではないかとも思ってはおります。
ただ、今御指摘いただいたとおり、そもそも兼用することで、やはり一人きりになるということで濫用というおそれも出てくる可能性もひょっとしたらあるし、専門家がレーマンを兼ねるということがそもそもできるのかという部分もあり、結局は教育長がどのような方が養成されていくのかというところ、そこがやはり非常に大事になってくるなというのを今改めてお伺いしました。ちょっとそこを具体的に更にお伺いしたかったんですが、ちょっと時間がありませんので。
次、岸参考人にお伺いをしたいんですが、コミュニティ・スクール、ツールにしてスクール・コミュニティ、この方向性、本当に非常に大事であるし、お取組の一つ一つ、本当にすばらしいなと思いました。
ただ、現状、いろんな自治体がこのコミュニティ・スクールを何とか促進させようとしてもなかなかそれに幅が広がらないというところがあるかとは思っています。例えば、空き教室を使うとかという話、今の学童保育の問題とかでも出てきたりしているんですけど、何が問題かといえば、現場の教育委員会がなかなかそれに応じなかったりとか、あと、何といっても保護者との協力関係とかそういう部分での連携というのが大事であるなと思う。
その点では、教育現場とも保護者とも非常に連携が取れた形をされているんじゃないかというふうにお話をお伺いして改めて思ったんですが、このような教育委員会、若しくはまた更に保護者との連携の辺りで、ここは大事だと思うようなところがありましたらアドバイスをいただければと思います。

○参考人(岸裕司君)
僕がPTAの役員になったときに一番おかしいなと思ったのは、保護者が文句ばっかり言っているんですね、PTA。で、役員になりたがらない。つまり、僕は民間人ですから、PTAという団体は任意加入の社会教育団体なんですね、しかも大人の保護者と教職員が入る。嫌だったらやめればいいのにって。やめる勇気もなくて文句ばっかり言っている、こんな主体性のない親じゃ駄目じゃないかっていうのが第一点だったんです。だけれども、マーケティングしないと、ただ怒っただけになっちゃう。そこで、学校をいろいろ調べるわけですよ。
そうすると、例えば登下校、登下校というのはお城さんですよね、いまだに登下校って言うんですから。登下校時に子供が事故に遭ったときに責任誰にあるかって、学校にあるんですね。だから、寄り道するなと言うのが先生の仕事になっちゃうんですよ。で、さっき言ったように、百七十人が寄ってたかって一人の先生に文句言うよりも、その中の一〇%、例えば十七人でも登下校時に立とうよと言えば、ああ、そうか、先生大変なんだねって、じゃ、立とうねってなるわけですよ。
つまり、ウイン・アンド・ウインという考え方、学校だけがメリットを求めちゃ駄目なんです。関わる保護者、地域住民も一緒にメリットを求めていく。その中で主体的に動こうとする人が自分を鍛えて、そういう住民に秋津の人たちはどんどんなっていったと思うんですね。

○矢倉克夫君
岸参考人、あと、教育委員会とかそういうところとの連携についても、もし御意見があればいただければと思います。

○参考人(岸裕司君)
実は、年間一万三千人使っているコミュニティルームの教育委員会支出は年間三万円なんです。あと、水道光熱費は全て学校メーターですから我々の税金であると。
なぜ三万円で済むかというと、全て、四十ぐらいあるサークルは自己完結型で運営しているんですね。生涯学習というのは自分にメリットあることですから、例えば陶芸で粘土を使うとなれば自分で粘土買って当たり前ですよね。そういうふうなやり方をしながら、だから教育委員会にもメリットがあるから教育委員会も積極的に施策を進めてくれるわけです。
逆に言うと、三万円だったら要らないと言ったことがあるんですが、行政施策なので受け取ってくださいと言われたんです。だったら受け取りましょうということで、来年で二十年になりますが、開放して、もうずっと三万円です。行政にもメリットないと、新しい仕事はやりません。

○矢倉克夫君
ありがとうございます。
教育委員の人選の在り方にしても地域とのつながりにしても、やはり今後運用をどうしていくのかというのはまた非常に大きな視点であるなということを改めて教えていただきました。大変にありがとうございました。
以上で終わります。

かつおニュース VOL3

2014-05-29 かつおニュース

【矢倉かつお】文教科学委員会質問_20140527

2014-05-27 矢倉かつおチャンネル

186回 文教科学委員会(地方教育行政法案 教育委員会への期待)

2014-05-27 国会質問議事録

○矢倉克夫君
公明党の矢倉克夫です。よろしくお願いいたします。
今回の改正に至る経緯には、教育委員会への不信と期待の交錯があったと思っております。大津の事件などを契機に、教育委員会というのはそもそもその求められる役目、責任を果たしていなかったんじゃないかと、特に危機管理対応を非常勤、合議体の教育委員会に任せるのはどうかという議論が巻き起こりまして、不信が極限まで達し、ならば廃止してしまえと、首長に任せればいいじゃないかということになったと思います。
ただ、特に教育の分野に関しては首長が体現している民意だけで判断してしまって本当にいいのか、教育介入への不信、不安と言ってもいいと思います。そこから政治的中立性を考える契機となりまして、結果、これまで何度も確認してまいりましたが、首長と教育委員会の権限配分は一切変えず、円滑な意思疎通を図る趣旨で総合教育会議というのを今回の改正案で設置をいたしております。この方向性、私は正しいと思っております。この前提で、まず大臣より、これまでの教育委員会に対する評価、これをいただければと思います。

○国務大臣(下村博文君)
現在の教育委員会制度は、これまで約六十年にわたって教育の政治的中立性、継続性、安定性の確保を制度的に担保しつつ、地域の多様な立場の人たちの視点を反映する観点から重要な役割を果たしてまいりました。
一方、現行制度については、教育委員長と教育長のどちらが責任者か分かりにくい、また、いじめ等の問題に対して必ずしも迅速に対応できていない、あるいは、地域の民意が十分に反映されていない、さらに、地方教育行政に問題がある場合に国が最終的に責任を果たせるようにする必要があると、そのような課題も指摘されているということから、今般これらについての見直しを行うための抜本的な改革を行うものであります。

○矢倉克夫君
地域の声を反映する、他方でやはり形骸化があったという大臣の評価であったかと思います。
教育委員会に期待される役割を担う理念としてレーマンコントロールという言葉がございます。今回の改正、改めてこの意義を考える契機だと思います。なかなか分かるようで分かりにくい概念ではあるんですが、改めて御説明をいただきたいと思います。

○政府参考人(前川喜平君)
レーマンコントロールとは、専門家の判断のみによらず、広く地域住民の意向を反映した教育行政を実現するため、基本的に教育の専門家や行政官ではない住民が専門的な行政官で構成される事務局を指揮監督するという仕組みでございます。
今回の改正案におきましては、教育行政の責任者としての教育長のリーダーシップが高まるわけでございますけれども、教育委員の職業等に偏りがないよう配慮するとの現行法の規定も維持しておりまして、教育の専門家ではない一般の住民の意向を教育行政に反映していく必要があることから、いわゆるレーマンコントロールの考え方を基本的に引き続き維持しているものでございます。

○矢倉克夫君
専門家の判断のみによらず、広く意見を受けるという点であると思います。
教育政策が、レーマン、この定義がなかなか様々あるようで、そこが問題でもあると思うんですが、このレーマンに求めるものは何か。今参考人の方からも御説明ありましたが、言い換えれば、教育政策が専門家の意見だけに偏ってしまってはいけないという趣旨、この点を特にまた改めて御説明をいただければと思います。

○政府参考人(前川喜平君)
教育はそもそも住民の日常生活に関係の深い地域的活動であり、地域住民の教育に対する期待も極めて大きいものがございます。このため、専門家の判断のみに任せるのではなく、幅広い地域住民の意向を十分に反映できる仕組みとする必要があるわけでございます。また、教育委員には、大局的立場に立って教育行政の方針を決定し得る識見と能力を有することも求められるところでございます。
こうしたことから、教育委員につきましては、教育の専門的知識や経験を有する者のみにより構成されることがないよう、委員の任命に当たっては、委員の職業等に著しい偏りが生じないように配慮する旨の規定が設けられているところでございます。

○矢倉克夫君
私も弁護士という立場で世間的には専門家と言われている職種だったわけですが、その経験からいえば、やはり当然いろんな分野で専門的知識、経験等は非常に重要なんですが、専門家というのは非常に勉強した方がやはり多くて、物事を考えるとき、自らが勉強した論理、逆に言えば、ある意味Aの場合はBだというような公式、定理と言ってもいいと思うんですが、そういうものを過信してしまう場合がやはりあるんじゃないかなと個人的には思っています。場合によっては人にそれを押し付けてしまう、そういうような傾向もあるんじゃないかと、これが正しいんだということで。ただ、事教育に関しては、私の感覚ではあるんですが、そういうような専門家の弊害が仮に起きた場合の悪影響が余りに多いんじゃないかと。
我々公明党、常に訴えているところは、教育の本質とは子供の幸福のためにある。これをもう少し別の言葉でいえば、個々人が持てる力を最大に発揮をして、あるいは潜在的に有している、何というか、本質みたいなものをちゃんと現実に現すことを助けるものがこれが教育であると、私はそのように思っております。これは相当大変な作業でありますし、そうであれば、究極を言えば、その人ごとに教育の在り方というのはあるんじゃないかなと思っております。そういう観点から考えると、むしろ、余り自らの論理だけにこだわらずに、相手が何を求めているのか、真剣に聞く姿勢や、それを反映していこうという謙虚さ、これが専門家だけではなし得ない民意の反映でもあるかと思っております。
ここに、私の考えでは、教育委員会の権威の根拠というのもある。レーマンコントロールというのも、文部科学省がホームページでレーマンとは何かと書かれておりましたが、素人という意味合いがこれまで強かった意味ではあるが、むしろ予断や偏見を排して事柄に臨む人たちであると。あらゆる意見をしっかりと多様に吸い上げるレーマン、ここから反映される民意というのを教育に反映させていこうというのがレーマンコントロールの意味でもあり、教育委員会に求められる役割ではないかと、私はこのように思っております。
では次に、対首長という関係から考えたいと思うんですが、やはり教育委員会によるレーマンコントロールというのを考えたいと思います。
まず、あらかじめ申し上げますと、これまで議論で、首長を教育から遠ざければ遠ざけるほど政治的中立性というのが保たれるんじゃないかというような風潮も一部にはあったのかもしれないんですが、私自身はそうは思っておりません。午前の石井委員の質問にもあったんですが、秋田の事例も、私も秋田に行きまして、やはり大事なのは連携であるというふうに非常に思っております、首長も民意を体現した方でもあるわけですし。ただ、他方で、私は、首長の体現する民意と教育の在り方というものは、ある種良い意味で緊張感というものが当然なければいけないと思っております。
今回の改正は、少なくとも教育に関しては、経緯から考えますと、選挙による民意を反映した首長の意思だけが絶対であるという考えは採用しないということがより明らかになったかと思っております。
改めて、教育が首長による民意だけで判断されるべきではない、この理由についてどのようにお考えか、御意見をいただければと思います。

○政府参考人(前川喜平君)
教育行政に多様な民意を反映するということは非常に大事だと考えております。今回の改正によりまして、民意を代表する立場の首長の意向の反映がより図られるものになるということは事実でございます。
しかしながら、教育行政には政治的中立性、継続性、安定性を確保することが求められるわけでございまして、より一層多様な民意を反映し、地域の状況に応じた教育行政の展開を図るという観点からは、合議制の教育委員会が教育行政の管理、執行に当たるということが適切であるという考え方でございます。

○矢倉克夫君
様々理由はあると思います。私の意見としては、まず首長が反映している民意というのは、究極、五一%の可能性もある。これは京都の門川市長もおっしゃっていることではあるんですが、五一%だけで決めてしまった場合は学校教育への信頼感というものもやはりなくなってしまう可能性がある。また、やはり選挙の過程で教育だけを政策として訴えるわけではありませんので、パッケージとして訴えますから、そこで得られた民意というのが全て教育に全部当てはまるというようなことも、ひょっとしたらもう一考慮があるんじゃないかというのはやはり考えなければいけないと思います。
さらに、もっと言えば、政治はどうしても短期の結果を求めたがってしまう、次の選挙もあるということもあり。やはり、教育は子供の人格の形成に関わるものでもありますし、短期的視点だけから判断するのは危険だと、こういうような部分から、政治的中立性というのは様々やはり求められるところではないかというふうに、このように思っております。
以上を前提にして、今回も教育委員会廃止論などというものもありましたが、最終的に首長と教育委員会の権限配分は変更しないということを明確にいたしました。改めて、その趣旨、理由についてお願いをいたします。

○政府参考人(前川喜平君)
学校教育につきましては、多数の者に対して強い影響力を持ち得ることから、一党一派に偏した政治的主義主張が持ち込まれないよう政治的中立性を確保する必要がございます。
今回の改革案は、地方教育行政における責任の明確化、迅速な危機管理体制の構築、首長との連携の強化を図るものでございますが、教育の政治的中立性、継続性、安定性の確保の重要性に鑑みまして、教育委員会を執行機関として残し、現行の教育委員会の職務権限を変更しないとしたところでございます。

○矢倉克夫君
まず前提を確認させていただいたんですが、ちょっと大臣から、ここまでについて御意見がございましたら是非お願いいただきたいことと、あと、何度も確認していることではあるんですが、地方教育行政について最終的な責任を負うのは合議体の教育委員会であるということを再度御確認をいただければと思います。

○国務大臣(下村博文君)
今回の改正におきましては、教育の政治的中立性、継続性、安定性を確保する観点から、引き続き教育委員会を合議制の執行機関として残すとともに、教育委員会の職務権限は変更しないこととしたわけであります。したがって、今回の改正後も、地教行法第二十一条に規定する教育に関する事務の管理、執行については教育委員会が最終責任者であるわけであります。

○矢倉克夫君
ありがとうございます。
以上、前提を確認させていただきましたので、次の問題意識に移りたいと思います。
レーマンコントロールという理念は分かりますが、結局やはりそれに沿うことができなかった教育委員会が多かったのではないかというような現実も今まであって、それが今回の改正の議論に係っている部分であるかと思います。
そこで、やはりこちらも大臣にお願いしたいんですが、教育委員会がレーマンコントロールというものに沿った組織として機能するには何が必要か、御意見をいただければと思います。

○国務大臣(下村博文君)
教育、学術及び文化に関して識見を有するものとの教育委員会の資格要件はもとより、教育委員の職業等に偏りが生じないよう配慮するとともに、保護者を含まなければならないとの現行法の規定は変更しないこととしておりまして、教育行政の責任者としての教育長のリーダーシップは高まりますが、一般の住民の意向を教育行政に反映するのと、レーマンコントロールの趣旨は引き続き維持していくということが必要であるというふうに考えます。
こうした観点から、教育委員会において地域の多様な民意が反映されるよう、例えばコミュニティ・スクールや学校支援地域本部の代表を教育委員に選任するなど、地域の幅広い関係者から教育委員を人選する工夫を一層進めることが有効であると考えます。また、教育委員会会議は原則公開とすることと法定されており、改正後もこの取扱いに変更はなく、引き続き公開されることとなります。さらに、改正案においては、より一層の教育委員会会議の透明性の向上を図り、住民によるチェック機能を強化する観点から、教育委員会会議の議事録の作成及び公表を努力義務としているところであります。

○矢倉克夫君
今大臣おっしゃったように、教育委員会が求められている役割、原点に立ち返りますと、民意をいかに吸い上げていくか、吸い上げるような仕組みをつくっていくことがやはり大事。そして、情報公開、公開制ということをおっしゃっていましたが、この公開を通じて住民を巻き込んでいくこと、これがやはり大事であると思っております。
その地域の声を集約する、そのための手足として動いていくべきが、先ほど石橋委員から話もありましたが、教育委員会の事務局がこの役割を担うべきではないかと私は思っております。この点、大臣より御意見をいただければと思います。

○国務大臣(下村博文君)
現在、教育委員会が自らに期待されている機能を十分に果たしていくということのためには、教育委員会を支える事務局職員の資質、能力を更に御指摘のように向上させていく必要があると考えております。
各教育委員会においては、幅広い地域住民の意向を反映するため、教育職、行政職、いずれの職員についても、一層の行政能力の向上の観点から、教育内容等専門的な内容と管理的業務の双方についてバランス良く職務を経験させるなど、計画的な人事異動を行うとともに、職員に対する研修の充実に努めていくことが必要であると考えます。
また、教育行政に高い専門性を有する職員を確保するため、教育委員会プロパーとして地域の実情に詳しい職員を育成することも一つの方法でありまして、教育委員会事務局と首長部局が連携して人材育成の方針を検討することが重要であると考えます。国としては、現在、様々な研修を実施しているところでありますが、今後、各都道府県教育委員会等とも連携して更にその充実方策について検討してまいりたいと考えております。

○矢倉克夫君
専門性を持つ専門家や、また多数決の意思という民意を持っている首長と教育委員会がより良い緊張感を保っていかなければいけない。協議、調整を通じてより良い教育をつくっていくというためには、やはり教育委員会にもいい意味で対抗できる武器となるようなものが必要であると思っております。これがない限り、幾ら責任がどこにあるか、権限はどうかなどと抽象的なことを言っても余り意味はないのではないかなと。
私も、その武器と言っていいのがやはり地域や父兄、教員などとのつながりですね、教育委員会にとっては。あと、それから集約された現場の声、これがやはり大事であって、そのための手足となるのが事務局、その活性化であると思います。大臣から今、その事務局の活性化、人材育成、様々な点がございました。この事務局をどうやって活性化させていくのか、これが非常に大きな問題になると思います。
今回いろいろと制度改正をしたわけですが、同時並行でこの事務局の在り方そのものをやはり考えていかないと魂がやはり入らないものになる可能性もある、そこはしっかり考えなければいけない。様々いろんな事例を私、参考になるものを見てきたんですけど、その中で面白いなと思ったのが福岡県の春日市の実例でございます。
今、私の手元には毎日新聞の記事があります。この記事の中で、事務局活性化に向けてどういうのが必要かいろいろ考えた中で、一つヒントがあったので紹介させていただきたいんですけど、まず読んで驚いたのが、この事務局改革、教育委員会改革の起点というのが、忙し過ぎる事務局、これを楽にさせてあげるというところから入っていたというところであります。
私も知らなかったんですが、教育委員会の事務局というのは非常にやはり多忙みたいでして、例えば学校予算も処理しなければいけない、また文部科学省や県の教育委員会から調査依頼の文書が山のように降ってくる、そういうようなことが毎日毎日のルーチンで行われているということ。特に、予算に関しては、あるAという学校がホッチキスを買いたいとか、やはりそういう部分を含めて予算の使い方ということで、学校から依頼が来てそれを処理するであったりとか、そういうような書類の処理で一日忙殺されてしまうというようなことがありました。
福岡の春日市、これがまず何を始めたか。この予算について、教育委員会が担っている部分の権限というのをどんどん現場に下ろしていったというようなことが紹介をされております。まず、予算執行権を学校に委譲して、ある金額以下は校長が決裁できるように改めたと。その執行権の委譲というところから更に進みまして、最終的には教育委員会が決めるのは総額だけで、そして内訳は学校の裁量に任せたと、このようなことが言われております。学校予算総枠配当方式と言われているようですが、これによって教育委員会の事務局の負担は更に軽減をされたと。
これが実際どういう副次的効果といいますか、これを生じさせたかというと、記事等によれば、この負担の軽減は教育委員会事務局の職員の意識を変えることになったと。それまでは、自分たちは事務屋であると、文部科学省や県の教育委員会の下請だというような、そういう感覚があったわけですが、事務がなくなって負担が軽くなったことでより良く頭を働かす方向になり、諸問題を学校とともに改善していこうという積極的姿勢が高まったと言われております。特に学校に頻繁に足を運ぶような事務局の姿勢になっていった。
先ほど来から話にもあるコミュニティ・スクール、春日市は全小学校、中学校がコミュニティ・スクールになっているという、そこもいろんな経緯があったようですが、現状そのようになっているんですが、このコミュニティ・スクールの一員としてもこういう教育委員会の事務局が入っていっている。もうまさに地域でしっかりいろんな方が集まっているところに事務局が入っていって、そこで意見を交換して集約をしていく、まさに地域の声を集約する手足として事務局が働いているという部分があります。この起爆剤が、先ほどから冒頭申し上げた、まず事務局の負担を軽減していくというような部分があったというところは非常に示唆に富むところであるかなと思っております。
こういう点では、もう一方は、ちょっと長くなって恐縮なんですけど、このような春日市の教育委員会の主導をしたのが工藤さんという方なんですが、私の手元にもう一個この方の手記があるんですが、タイトルはずばり、「教育委員会事務局の改革が地域の活性化につながる」、この事務局を改革することがコミュニティ・スクール等を通じた、更に地域との連携、教育を一体化していこうというような動きにしっかりつながっていったというようなことがはっきり表れているタイトルでございました。
そこで、文部科学省にお伺いしたいんですが、春日市のように事務局定型業務をスリム化して事務局の政策形成機能を育てる、こういう方向性とともに、学校の自立化を目指し権限を委譲していく、このような委譲によって、先ほど御紹介もした部分の中に一部書いてあったのは、これまで上と下の関係であった教育委員会と学校というのが、むしろ支持し合える、お互いが話し合えるような横の関係になったというのも一つの効果として挙げられています。
こういうような効果が上げられる一つの取組というのは、特殊な事例ではなく、全国的にも広がり得る普遍性のあるものでもあるかと思っております。国としても各自治体に、同様の施策を行っていくように、権限委譲等も含めた積極的な関わりを促していくべきである、このように考えますが、この点いかがでしょうか、御所見をいただければと思います。

○政府参考人(前川喜平君)
御指摘のとおり、春日市は、学校への予算執行権の委譲によりまして教育委員会事務局の定型業務が効率化され、政策形成機能の強化が図られた優れた事例であると承知しております。
このため、文部科学省としては、学校の自主的、自律的な運営を促進するとともに、教育委員会事務局の事務負担軽減を図る観点から、予算執行権限の委譲や裁量的経費の措置といった予算面における学校裁量の拡大などの取組につきまして、説明会やフォーラム、広報誌等を通じて事例の紹介や啓発に努めているところでございます。
引き続き、こうした取組を通じまして、教育委員会が自らに期待されている機能を十分に果たせるよう指導してまいりたいと考えております。

○矢倉克夫君
引き続きよろしくお願いいたします。
この教育委員会事務局の改革、先ほどの毎日新聞の記事や工藤さんの手記から、さらに次どうなったかというような話が書いてあったんですが、改革を経た事務局が次行ったのは、それまで教育委員会というのが実は事務局案の追認機関にすぎなかったという現実、これがあったわけです。その教育委員会の現状に違和感を感じ始めた、そういう状況がある。そこから、身軽になった教育委員会の事務局が知恵を絞りまして、教育委員会の在り方の見直しにも着手をしていった。様々な取組を生んだわけですが、その一つとして、春日市の教育委員会、挙げられているもの、またほかの例では立川などもあるようですが、言われているのが、出張、出前トークと言われているものです。
これまで、よく教育委員会は学校訪問という形で様々現場の声を聞く取組をしていたわけなんですが、現実としては、教育委員会、教育長も含めて大挙押し寄せていき、学校の幹部の方とだけ話をすると。ほとんど、学校側の意見を聞くというよりは、上から何かを言うというようなタイプのやはりものがどうしてもあったと。現場の教育、学校の関係者の方のお話ということであるが、まるで一つのショーだったというようなことがあったという御意見がありました。これでは、やはり儀式でもあるし、意見交換にならないと。
そこで、春日市等は、そうではなくて、同じような態様かもしれないんですが、視察ではなく意見交換に重点を置いて、通常夏休みに十八校回るわけですけれども、学校側は全教職員が参加もして、教育委員会側も事務局全員も加わった上で、本当に一対一で対面をしながら話し合うような、そのような意見交換の場を積極的に設けるようにしたと。
立川などは、大挙押し寄せるのではなく、教育委員一人でも行って意見を聞いていくというような取組をどんどんするようになった。そのための事務局として、教育委員会の事務局がしっかりと機能を果たしているというようなことの報告がなされております。
私としても、今後、教育委員会活性化のためにどうしても大事なことは、先ほどのレーマンコントロールの前提からも考えましても、こういう現場に入るような教育委員会の在り方をつくっていくこと、これが非常に大事であるかとは思っております。その点、今後どのように進められるのか、御意見をいただければと思います。

○副大臣(西川京子君)
今先生がおっしゃいました春日市の例、立川市の例など、教育委員が自ら現場に出向いて地域住民と意見交換を行う、あるいは地域住民の意見を聞く機会を設ける、大変重要なことだと考えております。
平成二十四年度の調査によりますと、保護者や地域住民の意見、要望、苦情等を聴取し、意見交換を行う機会を設けた教育委員会は、都道府県、指定都市で全体の五一・五%あります。そして、市町村で全体の三〇・六%という状況になっております。
また、改正案においては、総合教育会議を実効性あるものとするために、協議、調整を行うに当たって必要があると認めたときは、先ほども申し上げましたように、学識経験者や関係者、それらの方々の意見を聴くことができることとしておりまして、具体的には学校運営協議会委員やPTA関係者、地元の企業人等からの意見聴取が行われることも想定しているということでございまして、総合教育会議だけでなくて、日頃からやはりそれに類するそういう地元民との意見交換、こういうことによって教育委員さんの資質も向上していきますし、地域の状態の理解も深まると思いますので、文部科学省としては、今後とも広く地域住民の意見を反映できる機会を設けるよう教育委員会に促してまいりたいと思っております。

○矢倉克夫君
やはり教育委員会一人一人の意識の問題もあると思います。その辺り、地道な取組、また促しも必要だと思いますので、引き続きよろしくお願いいたします。
そういう点では、教育委員会がどのような資質を持つかというのは非常に大事な部分ではあるかと思います。首長さんの意向を酌むことを考えるような教育委員会だけでは当然いけないし、一方で、やはり現場に入ってという熱意と情熱を持っているような方、これをどのように選任していくのかというのはやはり大事なことであるかと思います。
この点、様々これから取組が各地域でなされるところではあるかと思うんですが、よく参考に言われているのは、公募の方式、これをやはり採用していく実例がもろもろあるというところであります。
例えば大阪の箕面市などは、この前、教育委員六名のうち四名公募されていたわけですが、地域の方が非常に熱意があったというか、応募されたのが三十名以上応募をされて、そこから四次選考をして、最終的に四人の方が教育委員として公募に合格されたと。その上で任命を受けたというような話も聞いております。四名の方皆さん女性で、三十代、四十代の方ばかり、取締役をされている人もいれば、やはり学校教育関係をずっと従事して、またさらには海外で教えられたりとかされた方、もうお一人お一人様々な立場でしっかり識見、見識を持った方で、何といっても教育に対しての情熱、自分から応募をされているわけですので、どうあるべきかというような問題意識を非常に持った方が多くいたというようなお話もしております。
やはり委員のこの選任の在り方というのも、これはやはり地域個々ごとに決めなきゃいけないところではあると思うんですが、このような公募の方式ということも文部科学省として積極的にある意味推進をしていく部分もあるかとは思うんですが、この辺りについて御意見をいただければと思います。

○副大臣(西川京子君)
先生の今御指摘のように、今教育を取り巻く環境の中には、いじめ問題を始めとして本当に様々な問題が山積しております。そういう中で、当然、この教育委員になる方もあらゆる方面の方から代表を選ぶということは大変大事なことだと思っております。地域の多様な民意が反映されますように、保護者や地域の関係者、そういう方々を教育委員として選任することも大事ですし、また、いわゆる専門的知識を持っていらっしゃる方を入れるということも大事だろうと思います。
そういうことで、幅広く人材を求めるということでは、公募制を活用するということは、教育委員会の活性化のための大きな有効な一つの方策だと考えておりまして、平成二十五年度三月一日現在、全国で二十三団体において公募制で教育委員が選任されております。
文部科学省としても、今後ともこの教育委員の人選の工夫、こういうことを一層工夫を進めていきますように促してまいりたいと思っております。

○矢倉克夫君
是非よろしくお願いいたします。幅広く、偏りもなく、本当に優秀な方々、熱意のある方々が委員になるということで、やはり起点であるかと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
様々今いろいろ御紹介したとおり、全国各地でいろいろ教育委員会、先進的な取組というのがあるなと、そういう部分は感じられる部分です。では、こういうのが共有されているのかどうかというようなところを事前に文部科学省に確認をしたんですが、教育委員会研究協議会というのがあるというふうに回答をいただきました。
しかし、やはり現状、例えば大きな会議室で全国から一堂に集まって、そういう方が講演を聞くと。ただ、初めてお会いするような方の成功事例とかを、なかなか、聞いてもすぐに身に付くかというと、やはり難しい部分はあるのかなと。参加者の立場から立ってみたら、聞いてきたというだけで大体終わってしまうんじゃないかなというような部分はやはりあるかと思います。
私としては、せっかくいろんな先進事例が、恐らくいろんな教育委員会が現場で悩みながらいろいろなやり方を模索しているのであれば、それを多くが共有し合って、接触し合って切磋琢磨し合うというような枠組みをやはりつくっていかなければいけないんじゃないかなと思います。
そのためには、やはり顔の見える関係、近隣の教育委員会同士でお互いの活性化策をちゃんと議論し合うような、そういうようなスタイルもつくっていく必要があるかと思います。その前提には、当然、近隣同士のつながりを密にする必要性もあるわけですし、そういった教育委員会メンバー同士がつながりを強化し合って、連携し合って情報を共有していくこと、こういうことを含むような研修制度の構築、少々ちょっと抽象的な問いかけになってしまうんですが、このようなものをしっかりつくっていって、教育委員会同士がお互いをしっかり切磋琢磨し合うような関係をつくっていくことが大事だと思うんですが、この辺りについて大臣の御所見をいただければと思います。

○国務大臣(下村博文君)
非常にいい考えだというふうに思います。
今、矢倉委員のお話を聞いていて私も思い出したんですが、私も国会議員になる前に都議会議員をしていたときがありまして、そのときに文教厚生委員長をしていたんですね。私が委員長になって初めて東京都の教育委員と一緒に議論する場が、初めて提案して、非公式だったんですが、あったんですね。それだけ議会と東京都の教育委員が一緒に平場で議論したこともなかったというのも、今から考えるとやっぱり相当閉鎖的だったんじゃないかなと思って聞いていたわけでありまして、それだけこれから新しい教育委員会については、地域住民の多様化の中で一人一人のもちろん能力を高めていくことも必要ですし、議会や住民の方々ともっと接点を持つことによって、今教育委員会で議論されていること、あるいは地域の中で、あるいは議会の中で何が問題なのかということをよく把握をしてもらうということも必要だと思います。
そして、もちろん研修でありますけれども、文部科学省におきましては、毎年、都道府県、指定都市の新任教育委員に対して研修を行っていることに加え、文部科学省と都道府県教育委員会の共催で市町村教育委員会委員等を対象とした研修会を実施しております。そして、都道府県においては、平成二十三年度の調査によれば、全市町村の教育委員を対象とした研修を年平均一・二回行っているほか、自らの教育委員に対する研修を年平均六・七回行っているということだそうであります。市町村においても、自らの教育委員に対する研修を年平均四・六回行っているということでありますが、ただの座学的な研修ではそれほど成果、効果は上がらないのではないかというふうに思います。
今の矢倉委員の指摘も踏まえて、より成果、効果の上がる研修の在り方、充実について検討してまいりたいと思います。

○矢倉克夫君
大臣、御自身の御経験に基づく御答弁、ありがとうございます。
やはり教育委員、閉鎖的閉鎖的と言われていた部分はあるんですが、一つ、様々、事務局の活性化であるとか、そういう外部環境を変えることで本来教育委員の方々が持っている教育を何とかしようという思いがやはり解き放たれることができるんじゃないかなと、それをやっぱりサポートするのが政治の分野であるかなと思っております。
教育委員の様々な、先ほどの出張トークをされたときの方の経験ということで新聞が報道しているのが、現場でやっぱり話してみると、教員の方と教育委員の壁が取り外されて一緒にいい教育をつくっていこうという信頼感ができてきたと。そういうような信頼感をどんどん醸成していくことがやはり大事であるかなと、その点は私もしっかりと今後も議論も含めて貢献してまいりたいと、このように思っております。
次に質問を移らせていただきます。教育長の資質についてでございます。
先ほども確認いたしましたが、専門的な教育長がレーマンで集まりである教育委員会を支配してしまうというようなことが仮にあっては、教育委員会によるレーマンコントロールの制度趣旨に反してしまうわけでございます。その上で今回の法案の文言に立ち返りますと、教育長の任務については、委員会を代表するとともに、会務を総理するという言葉があります。この総理するという文言が代表するとは別に書かれている点、これはいかなる意味か、御見解をいただければと思います。

○政府参考人(前川喜平君)
今回の改正案において新たに置くこととされております教育長は、教育委員会会議を主宰するという現行の教育委員長の役割に加えまして、事務局の事務を統括し、所属の職員を指揮監督する現行の教育長の役割も果たすことになることから、これらを総体として表現いたしまして、改正案におきましては教育委員会の会務を総理すると規定したものでございます。
改正案では、常勤の教育長が会議の主宰者となることによりまして、会議の招集や議題を適切に判断することや、委員への迅速かつ適切な情報提供が可能となり、教育委員会の活性化に資するものと考えております。

○矢倉克夫君
事務局を総括する立場としての総理であるという答弁であったと思います。
その事務局は、先ほども確認いたしましたとおり、非常勤である教育委員が現場の声を聞く、そのための手足ともなるべき存在でもあり、吸い上げる役割も持っている調査員のような、場合によってはシンクタンクのような役割もこれから担っていかなければいけない、このように思います。それを総括するのが教育長でもあると。
以前も、今回の法改正前も、そのシンクタンクであるべき事務局は、要は事務局長は言わば教育長であったという認識でございます。しかし、事務局が吸い上げた、あるいは吸い上げるべき情報若しくは地域の声という共有すべき対象、これを共有すべき対象である教育委員会、これを主宰するのは、法の建前上は教育長とは別の教育委員長だったと、これが今回の法改正前の、今現状ですね、現状がそういう状態であるということだと思います。それによっては、教育長がいかに事務局を通じて収集した情報などを教育委員会に開示したくても、会合自体が開会されないというようなこともあり得た。これをやはり解消する意味では、今回教育委員長と教育長が一体化したという点は非常に意味はあるという点ではないかなと私は思っております。
ただ、その新しい教育長の役割は何か。繰り返しになりますけど、一つには、集約した多様な民意を専門家ではない教育委員に議論してもらうときの専門的見地からの論点整理その他を行う方であるわけですが、何よりも重要なのは、つなぎ役としての教育長、やはり学校現場と行政、また教育委員会を代表する、総理する立場として、その教育委員会とやはり子供の懸け橋になるようなことが教育長は、この一体化の議論を経てスーパー教育長とも言われているわけですが、新しく担わなければいけない役割として非常に重要であると思っております。総理というこの言葉を解釈する上でも、このつなぎ役という意識を持った人であるという部分の思いというのは大事であるかなと思っております。
そこで、改めて、このような重要な役回りが期待されている教育長に求められている資質というものはどのようなものか、御意見をいただければと思います。

○政府参考人(前川喜平君)
現行法におきましては、教育長の要件につきましては、教育、学術、文化に関し識見を有するものという教育委員としての要件のみが法定されておりまして、一般職としての教育長の要件は法律上の規定がないわけでございます。
改正案におきましては、教育行政の責任体制を明確化する趣旨から、現行の教育委員長と事務局を統括する教育長を一本化した新たな職を設けるものでございまして、新教育長は行政法規にも通じ、組織マネジメントにも優れるなどの資質が求められるわけでございます。そういったことから、法律上、教育行政に識見があるものという要件を定めているところでございます。なお、この場合において教育行政に識見があるものとは、教育委員会事務局や教職員の出身者だけではなくて、教育行政を行うに当たり必要な資質を備えていれば幅広く該当するものと考えております。

○矢倉克夫君
そのような資質を有している教育長か否かについてどのように判断するか、先ほど来の質問もあったんですが、議会における同意に当たっての所信表明なども挙げられているところであります。この所信を表明する、まあ、どのような所信を表明するのか、今お話も聞いていても、これはやはり大変な能力を持った方でないとなかなか務まらないところがあるかなと思います。識見だけではない、知識だけではない、しっかりしたマネジメント能力もなければいけない。現場に入るというような意欲も持っている方でなければいけない。どのような所信をまた述べていただくかというような部分もあるかと思います。
この辺りについて、どのように更に判断をしていくのか、御意見をいただければと思います。

○政府参考人(前川喜平君)
新教育長は、現行の教育長と教育委員長の職務を一本化した職でございまして、教育行政に大きな権限と責任を有し、従来に比べましてその職責が重くなることから、その資質、能力を議会において丁寧にチェックするということが必要であると考えております。
そのため、議会同意に当たって、例えば地方公共団体において、教育長候補者が所信表明を行うなど丁寧な手続を定めることも一つの方策ではないかと考えております。法案が成立した場合には、施行通知や改正法の説明会等を通じまして、議会同意に当たっての所信表明など、教育長の資質、能力をチェックするための様々な工夫について周知してまいりたいと考えております。

○矢倉克夫君
所信表明、どういう所信になるかという部分もあるかと思うのですが、やはり教育長に求められているのはこういうものだというのを周知徹底することは大事であるかと思います。やはり判断する側が、教育長というのはどういうことを、役割を求められていて、どういう資質を求められているのかというのが分からないと、やはり所信を聞くだけでは判断ができない部分はあるかなと思っておりますので、その辺りも含めて、施行通知等でしっかりと、施行通知に限らず現場にしっかりと徹底をしていただければと思います。
その上で問題なのは、やはり教育長として役割を担っていく人、非常に能力もまた様々経験等も重要な部分であり、理想的な方というのを探すことはなかなか難しい部分はあるんじゃないかというぐらいに大変な役職だと思います。ただ、他方で、教育長に値するような方々をやはり養成をしていくというような視点もしっかりと考えていかなければいけないと思います。
この辺り、教育長がいかにあるべきか、そういう部分の、養成の制度等も含めて、どのように今後進められていくのか、大臣から御所見をいただければと思います。

○副大臣(西川京子君)
大変大きな権限を持っている教育長の、今、資質をどうするかと、そして今後どうやってそれを更に高めていくかという責任があると思います。
その中で、昨年の十二月の十三日に中央教育審議会答申においては、教育長には、強い使命感を持ち常に自己研さんに励む人材が求められ、学び続ける教育長の育成を担保することが大事だと言われております。国、都道府県、大学などが主体となって、現職の教育長の研修を積極的に実施することが必要である、その際、教育の専門的知識だけではなくて、福祉、雇用、産業、環境など様々な分野に関する知識の習得が求められるとされております。
例えば京都市の教育委員会におきましては、行政職の職員を長期にわたって教育委員会事務局に勤務をさせまして、教育内容や学校運営を理解し、教員出身の職員とともに政策立案、学校の運営指導ができる専門性を持った職員として育成し、その中から教育長となる人材を確保している。現京都市の生田教育長そして門川市長、共に教育委員会事務局の御出身でいらっしゃるという、そういう経験を基にして大変きめ細かな人材育成をやっていらっしゃるところもあります。
教育長のリーダーとしての資質や能力を高めるための方策としては、現在、国や大学において市町村の教育長を対象とした研修会を実施しておりまして、今後、国、都道府県、大学などによる研修のプログラムについて充実をしっかりと図ってまいりたいと思っております。

○矢倉克夫君
最後に、大臣、通告していないんですが、新しい教育長に求めるもの、大臣、是非御意見をいただければと思います。

○国務大臣(下村博文君)
先ほどもちょっと答弁させていただきましたが、今度、兵庫教育大学で教育長を養成するための大学院コースを設定する、これを全国のほかの大学、大学院と連携するということでありまして、そういう意味で、今まで述べてきたような識見、能力だけでなく、さらに、新しい時代に対応する教育行政あるいは教育の在り方についても熟知をしていただきたいと思いますし、今、私の下だけでも四十七項目の教育改革同時工程表を作って進めておりまして、その時代に合った、今、教育がどんなふうにタイムリーで国が行っていて、それをそれぞれの自治体でどうするかということについても常に学び続けていただかないと、ちょっと前までの感覚ではずれが出てくると思いますし、それだけ教育長に求めることは多いわけでありますが、是非、日本が教育立国を目指すためには大変重要な立場であるというふうに思いますし、是非それぞれの教育委員会がすばらしい教育長を選任していただいて、そしてその教育長の下ですばらしい教育行政が行われるような教育委員会、対応できるように国としてもフォローしてまいりたいと思います。

○矢倉克夫君
ありがとうございます。以上です。

与党としての公明党の役割

2014-05-23 メルマガ

矢倉かつおです。

150日間の通常国会も、6月22日の会期末まであと一か月を切りました。いよいよ終盤戦です。衆議院で審議・可決された法案がどんどんと参議院に送られてくるため、特に忙しい時期となります。「良識の府」参議院が真価を発揮するときです。実のある審議をして参ります。

ところで、昨年の臨時国会と今年の通常国会を経験し実感することがあります。それは、与党内議論の熾烈さです。

たとえば、軽減税率導入をめぐる議論です。

昨年12月制定の与党税制大綱は、「軽減税率を導入する。」とはじめて明記しました。ポイントは、何らの条件も付さずに「導入する。」と記されたことです。つまり、軽減税率は必ず導入されます。もとより、その時期や範囲等をいつにするかが次の課題で、勝負はこれから半年間ですが、単に「検討する。」と記載されていた当初案からは大きな第一の勝利でした。これは、与党内でも当初多数を占めていた軽減税率反対意見に対し、公明党が地道に説得、説明した成果です。

また、昨年末のメルマガで詳細にご報告した特定秘密保護法もそうです。

当初の政府案が、「知る権利」保護の観点から改善すべき点の多いものだったため、公明党が主導し、野党の意見も取り込んで大幅に修正をいたしました。専門家を呼んだ独自会合を10回以上開催し協議した結果を、与党内でぶつけ反映していく、公明党の地道な努力・経緯等は昨年のメルマガで記載したとおりです。

この特定秘密保護法成立の際、「知る権利」の更なる確保のため、なすべき事項を与野党内で合意しました。そのなかの一つが、「国会」内に、「行政がなした秘密指定が正しくなされたか否か」を「常時監視」する機関を「創設」することでした。今、私はこの創設を担う与党プロジェクトチームの一員として活動しております。

先日、この「常設」の「秘密監視機関」の具体的中身について、与党内で大筋合意をいたしました。実は、この与党内協議においても与党の一部から「常時監視機関」の創設そのものを否定する意見が出されました。しかし、これは「知る権利」を守るための国民への約束であると公明党が強く主張し、激しい議論の結果、ほぼ公明党の主張に沿った形で与党案が最終的に合意される見込みとなりました。これが成立すれば、これまで事実上、国会が関与できなかった行政の秘密のあり方(42万件以上と言われた秘密のあり方に国会が異を唱えることはほぼ出来ませんでした)に、はじめて、国会のメスが入ることになります。

なかなか外から見えることのない与党内議論ですが、公明党がいるから安心だ、そう思っていただける実績をこれまで地道につくってまいりました。公明党が与党にいる責任は、この安心をいかにつくるかです。今後も様々な局面で、与党内にいる公明党の責任が問われることもあるかと思います。頑張ってまいります。

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2014-05-14 メルマガ

矢倉かつおです。

5月です。木漏れ日射す新緑の色が、目に鮮やかです。
ゴールデンウィーク明けのゆったりした雰囲気も瞬時に吹き飛び、昨日は文教科学委員会にて質問、本日は先ほどまで参議院本会議と、慌ただしく動いています。

ゴールデンウィークの最中、オーストラリアを訪問、連邦議会や政党本部、政策研究所、教育機関(シドニー大学等)を訪ねるとともに、同国の国会議員や州議会議員など10数名と個別に会談や会食し、友好を深めてまいりました。

この訪問は、「日豪若手政治家交流プログラム」という公式事業の一つです。訪問団は私のほか、自民党2人、民主党1人、みんなの党1人の国会議員計5名、ほぼ同世代の組み合わせでした。超党派で深い人間関係をつくることが出来たことは、非常によかったです。

オーストラリアは今、秋真っ盛り。緑と赤と黄色という三色に彩られた一本の木が、ぬけるような青空に溶け込む姿は一幅の名画でした。夜は南十字星に迎えられ、あっ!ここは南半球だ!!と改めて実感しました。

様々驚くことがありました。オーストラリアの選挙制度は特殊で(詳細は省きます)、投票用紙の長さが、なんと1メートルに及ぶこともあります。ところ変われば、常識も常識でなくなることがあります。

町を歩き、特に驚いたのは、賃金の高さでした。マクドナルドで働く人に時給を尋ねたところ、なんと22オーストラリアドル以上(ほぼ2000円)です。これが休日には2倍となります。資源の輸出で外貨を稼いでいることが大きな要因ですが、高い物価(コンビニエンスストアで買う水が4オーストラリアドルほどします)で売り、利益をあげた企業がそれを賃金に反映し、また買ってもらう、という経済の好循環が存在することも見逃せません。

オーストラリアの国会議員の方々とは、外交・防衛・経済・教育・文化等、様々な議論をしました。私にとって収穫の一つは、日本とオーストラリアの繋がりが、とくにアジア太平洋地域における秩序維持に重要であるとの認識を共有した点です。

経済産業省時代、決して大国とは言えないオーストラリアの交渉団が、アメリカやヨーロッパの主張に負けず多国間の貿易ルール交渉について主導権を握る姿をみて、驚いたことがあります。オーストラリアのこの姿勢、交渉力を日本も良い意味で利用し、「アメリカか中国か」といった単純な構造で議論しがちなアジア・太平洋地域における外交議論とは違う角度の議論を提供できないか、そんな直感を受けたことがありました。多くのオーストラリア議員に伝えたところ、大きく頷いていました。

そのオーストラリアが日本に望むことは、中国との友好です。オーストラリアにとって、両国は主要な貿易相手、仲良くしてくれるに越したことはないのです。

日豪関係は、アジア・太平洋地域の安定にとって重要です。今後は、日豪友好議員連盟の幹事としても活動していきたいと思います。

186回 文教科学委員会(給付型奨学金等)

2014-05-13 国会質問議事録

○矢倉克夫君

公明党の矢倉克夫です。よろしくお願いいたします。
このゴールデンウイーク、オーストラリアに滞在いたしまして、多くの国会議員と会談をしてまいりました。日豪若手政治家交流プログラムという二十三年間続いている公式プログラムに基づくもので、大臣も過去に行かれていた。私も後輩という形になりますが、滞在の合間にシドニー大学を訪問いたしまして、教授陣や留学している日本人学生さん二十人弱と議論する機会を得ました。そこで感じたことを中心に、まず二、三御質問をしたいと思います。
最初に、社会人の留学サポートについてです。
留学生二十人弱のうち、四名ほどが会社を辞めて留学されている方でありました。女性が大半です。元の職場では自分輝くことができなかったので、自分の人生を自分で切り開こうと思ったと、力強く語ってくれました。
日本学生支援機構が二〇一二年三月に十八日間掛けて無作為に抽出した留学経験者千五百人ほどから行った海外留学者追跡調査によりますと、約二三%の留学生が会社を辞めて無職の状態で留学をしている。今や個人での社会人留学は当たり前の時代になったと思います。
その社会人出身の女性の方から言われたのが、日本は社会人留学に決して優しい国ではないと。例えば、日本学生支援機構が貸与型として留学支援金を提供していますが、学生支援機構によるものという面もあるんですが、卒業後二年以内の人が対象でありまして、社会人留学は門前払いだと訴えられました。
終身雇用も崩れまして、若者が自分の力でキャリアをつくっていかなければいけない時代になりまして、企業を辞めて留学する方への支援も充実させるべきと考えますが、この点、いかがでございましょうか。

○政府参考人(吉田大輔君)

社会経済のグローバル化に伴いまして日本企業等が世界に展開している中、個々の能力を高めましてグローバル化した社会で活躍する人材を育成することは喫緊の課題であるというふうに認識をしております。
今御指摘の、企業を辞めて留学をする社会人につきましては、そのような方も含めまして申請可能な奨学金制度といたしまして、海外の大学院で修士又は博士の学位取得を目的として一年以上の期間留学する者への支援制度を設けております。平成二十六年度の予算におきましても、この制度による支援を拡充したところでございまして、二十五年度までの二百人の枠を二百五十人に拡大をしてきているところでございます。
私どもとしては、昨年閣議決定されました第二期教育振興基本計画、あるいは日本再興戦略におきまして、二〇二〇年までに日本人の海外留学の倍増を目指すという目標がございますので、その点も踏まえながら海外留学の促進に取り組んでまいりたいと思っております。

○矢倉克夫君

今御説明いただいたのは、給付型の奨学金であると認識しております。その方向性、正しいと思いますので、是非一層受給者の数を増やすよう、よろしくお願いいたします。
留学という観点に限らず、社会人始め学ぶ人全ての学ぶ意欲を手助けするためには、可能な限り給付型の奨学金を増やすべきであると思います。返済に苦しむ人の話を多く聞くにつれまして、貸与型ではやはり夢をかなえる手助けにはなかなかならないのではないかという実感があります。
国の財政的制約の問題からやむを得ず貸与ということになったとしても、例えば条件を満たせば返還を猶予する、免除する、そういう条件付貸与や条件付給付と言ってもいいかもしれませんが、イメージとしては、昔あった教員になられた方には奨学金免除をされるというような制度があったと思います。ああいう形でのより柔軟な奨学金の設計の在り方、これも一層社会人含めた学ぶ人への支援のために考えるべきであると考えますが、大臣の御所見をいただければと思います。

○国務大臣(下村博文君)

私も、五月の連休、アメリカのワシントン、それからASEANではシンガポール、インドネシア、マレーシアに行きまして、二〇二〇年までに、これから六年後ですが、留学生を送り出しも倍にする、また迎え入れも倍にするということで、各国の担当大臣等と協議をしてまいりました。そのために、このバッジを付けていますが、「トビタテ!留学JAPAN」、これは官民ファンドですね。政府も、文部科学省も、今年、留学予算を倍増いたしましたが、民間からもファンド、寄附を積極的に今協力をいただいているところでありまして、このことによって、今年、取りあえず大学生対象に、これは給付型で奨学金で海外に送り出すということを始めました。
是非、これを将来的には拡充をして、矢倉議員御指摘のように、社会人まで広げていくようにすることによって、日本の、もう一度輝く自分を取り戻したい、それを留学によってチャンスをつかみたい、そういう意欲のある、志のある若者に対してフォローアップするような体制を考えていくことは非常に重要なことだというふうに思います。
まずはそういうふうな、今の学生から給付型の奨学金で留学生枠を広げていきたいと思っておりますが、将来は社会人まで広げていくことも視野に置いて検討してまいりたいと思います。

○矢倉克夫君

学ぶ人の意欲を満たしていく、夢をかなえるという意味合いで、是非今の大臣の御決意のまま御対応いただければと思います。
続きまして、同じまたシドニー大学での懇談に話を戻しますが、やはり多く受けた相談は、就職が心配であるという点です。就職活動をしたいが、留学生用のキャリアフォーラムについての情報もない、日本に帰る期間も短い中で就職する機会もない、卒業しても学位を尊重してくれないと、不安の声が非常に多くありました。
今、留学しよう留学しようという形で若者に促しているわけですが、留学した先のその後が就職難という点になりますと、無責任な対応というふうに言われかねない部分も出てくるかと思います。その辺りの留学生に対する就職支援、これについての国の対応を御回答いただければと思います。

○政府参考人(吉田大輔君)

御指摘のように、帰国後の就職支援を充実させることは大変重要でございます。
独立行政法人日本学生支援機構では、大学と企業の関係者が一堂に会し、学生等の就職及び採用活動について情報交換を行います全国就職指導ガイダンスを開催しているほか、厚生労働省ではハローワークを中心とした就職支援などを実施してきているところでございます。
また、国家公務員採用試験におきましても、外国の大学を卒業した者を採用する機会を増やすことを念頭に置きまして、秋に試験を実施する試験区分も設けられたところでございます。
また、就職・採用活動時期の関係につきましても、再チャレンジ担当大臣、文部科学大臣、厚生労働大臣及び経済産業大臣の連名で、主要な経済団体や業界団体の長に対しまして、海外留学からの帰国者の就職活動の改善を図ることを目的とした、就職・採用活動開始時期の変更を要請したところでございまして、二十七年度からそれが変わってくるということになりますけれども、この要請に沿った運用が徹底されるよう、引き続き周知に努めることとしております。
また、先ほど大臣から御発言がございましたけれども、若者の海外留学支援制度ということで新たに官民ファンドを用いたプログラムを設けておりますけれども、この中で、社会が求める資質、能力を持ったグローバル人材の育成を図ることとしておりますが、このプログラムの中には、帰国後のインターンシップですとか、あるいは企業説明会の開催など、就職支援につながるような取組も盛り込んでいるところでございます。
文部科学省としては、これらの取組を通じまして、関係府省庁、産業界、大学等と連携し、日本人留学生の就職活動に対する不安を解消し、日本人の海外留学数の増加に努めてまいりたいというふうに考えております。

○矢倉克夫君

最後に、話題を変えまして、学童保育の問題、質問をしたいと思います。
小一の壁、小四の壁という言葉があります。子供が小学校に入る、あるいは学童保育の多くが対象は小学校三年までですので、これを過ぎると預け先がなくなり、親が仕事を辞めざるを得ないという問題がございます。この解消のため期待されるのが、学校の空き教室、この利用、学童保育所としての活用でございます。
予算委員会の場で、我が党の山本香苗議員からの質問に対し、大臣は、教室利用が現状まだ進まない、この理由につきまして、教育と福祉の関係間における意識の壁、言及くださいました。その過程の中でまた教育委員会の問題も言及されていたわけですが、この問題について具体的にどのように対策をお考えか、御所見をいただければと思います。

○国務大臣(下村博文君)

放課後児童クラブ等への学校の余裕教室等の活用については、今年三月の産業競争力会議において私の方から、厚生労働省と連携を図りながら、一体型を中心とした放課後児童クラブと放課後子ども教室の整備等を通じて最大限進めていきたいというふうにプレゼンをいたしまして、また今、政府としてそのように厚労省と一緒になって進めているところでございます。
教育と福祉の関係間における意識の壁、これがやはりあると。これを越えるために、さらに、今これ衆議院の方で審議中でありますが、教育委員会制度抜本改革案、この中で総合教育会議を設けるということになっております。これは、首長とそれから教育長が一体となってその地域における教育行政を進めるということでありますが、このような首長と教育委員会が十分に協議する機関を設けるということによって、学校の余裕教室等の積極的な活用が更に促進されるということに制度設計の中でなってくるというふうに期待をしております。
こうした学校の余裕教室等の活用の促進と併せまして、全ての子供たちを対象とした放課後の学習支援や多様なプログラムの充実も含めた総合的な放課後対策を推進してまいりたいと考えております。

○矢倉克夫君

特に少子化はオールジャパンで取り組む問題ですので、縦割り等の意識がもし仮に存在するのであれば、打破する対策を引き続きよろしくお願いいたします。総合教育会議について今お話もありました。行政の縦割り解消という意味合いでのこの運用の在り方も、また引き続き議論をさせていただきたいと思います。
最後、一言だけ。
オーストラリアに行ってお土産いろいろ渡してきたんですが、一番実は喜ばれたのが、二〇一九年のラグビーのワールドカップのバッジを非常な興奮で皆さん受け取ってくださいましたので、二〇二〇年のオリンピック・パラリンピックとともに日本が世界に非常に発信するスポーツ大会として二〇一九年のラグビー大会、こちらの大成功もまた大臣のリーダーシップで是非よろしくお願いいたしますとお伝えして、質問を終わらせていただきたいと思います。

【矢倉かつお】文教科学委員会質問_20140513

2014-05-12 矢倉かつおチャンネル

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