186回_文教科学委員会(地方教育行政法案 参考人質疑)

2014-05-29 国会質問議事録

○矢倉克夫君
公明党の矢倉克夫でございます。
四人の参考人の先生方、お忙しいところ、大変にありがとうございます。それぞれの御経験と御識見に基づく非常に貴重な御意見、大変参考になりました。
時間もありますので早速お伺いさせていただきたいんですが、今回の改正案の一つのポイントは、教育長と教育委員長を一体化するという点があると思います。責任の明確化や、また判断の迅速化等が趣旨であると思うんですが、まず、今田参考人、加治佐参考人、そして三上参考人にお伺いをしたいのですが、この教育長と教育委員長を一体化させたことに対する評価、御意見をいただければと思います。

○参考人(今田忠彦君)
私、自分の陳述の中でも申し上げましたが、一つは、組織のありようとして、責任のありようみたいなことでどこか一つになるというような意味での分かりやすさというものがあるというふうに思います。
しかし一方で、私の横浜の経験でいきますと、これだけ大きな現場があり、そして教育という非常に大きな世界、奥深い世界、それの責任が何か一方に偏っちゃうというか一人だけになっちゃう。今までは、行政の部分は教育長、あるいは教育の少し大きな部分というのは委員長がフォローするというふうな格好で、大きな組織ですからそういう両方の協力でなっていたものが、一人教育長という格好になるということは、なかなか教育長になる人は力量がかなりないといけない。
そういう意味でその育成の大事さということを申し上げたんですけど、私は、この辺は本当は、都市の自主性、規模とか成熟度によって両方設けるというのも一つあるのではないかなというふうに個人的には思っておりまして、中教審の臨時部会でもそういう発言をさせていただいたことがございます。

○参考人(加治佐哲也君)
教育委員会制度というのは、元々いわゆるレーマンとプロフェッショナルの調和といいますか、そういうもので成り立っているわけですね。ですから、原則論からいうと、専門家が教育委員、つまり素人、レーマンを兼ねるということはあり得ないわけですね。アメリカの制度はそうなっているわけです。それが戦後日本に移入されて、当初はそうだったわけです。つまり、都道府県も市町村も教育委員と教育長は別です。教育委員長を兼ねるなんていうのはとんでもない、その当時は、ことであって、それが地教行法改正によって市町村は教育委員であって教育長になるようになったと。さらに、その後、都道府県についても、教育委員として特別職になって教育長を担当すると、こういうことになったわけですね。私は、制度理念からいうと全く矛盾していると思います。そのことは文科省もこれまで指摘してきたと思います。
ただ、最初に申し上げましたように、しかしながら、合議制教育委員会というのはもうどう考えても、私申し上げました、機能しません。実態としては、やはり教育委員でもある教育長が事実上地域の教育行政を取り仕切っていると、こういう現実があるわけですね。これは、理念からは反するかもしれないけど、日本的実態からいうと、もうこれ、致し方がないことなのだろうなというふうに判断せざるを得ません。
そこで、合議制の下では責任の所在がはっきりしないということですから、実質的にもう担当している教育長にそういう教育委員会の、教育委員長というよりも教育委員会を総理するということですよね。だから、そういう役割を与えたこと自体は決してもう間違っていないというか、ある意味仕方がないなというふうな思いをしております。
それによって、住民、民意を反映する教育委員と専門職である教育長という矛盾が解消されて、教育長が純然たる専門職だということになるということだということなんで、まあそれはそれでそういう面では前進かなという評価はしております。

○参考人(三上昭彦君)
私は加治佐さんとは全く違う評価ですね。反対でございます。
日本の教育委員会制度は、先ほど私の最初のあれでも言いましたけれども、一九五六年の地方教育行政法によって本当に理念もぐちゃぐちゃにされたというのが私のあれですよね。なぜかといったら、先ほど加治佐さんもおっしゃられていましたけれども、確かに教育委員会制度はアメリカで発達して日本に紹介されて、この行政委員会制度というのは確かに国際的に見てもそんなに数があるわけではない、やっぱりユニークな制度ではあると思います。その一つの理念がレーマンコントロールとプロフェッショナルリーダーシップと言われていますけれども、しかし、もしそれでいくならば、一九五六年の地方教育行政法は教育長は教育委員の中から、一般の市町村についてはですね、都道府県と政令指定都市は違いましたけれども、あの法律によって教育長は教育委員の中から選ぶという、つまり教育長は教育委員を兼ねるという制度を導入して、非常に理念的に訳が分からなくなってきたわけですね。
その流れでいいますと、しかも地教行法は、現行法がそうですけれども、教育長は教育委員長を兼ねられないというのを明記していますよね、現地教行法は。それを今我々のテーマにしているといいますか審議している一部改正法案は、教育長は事実上教育委員長と一本化するわけですから、兼ねるわけですよね。確かに、教育長は教育委員ではなくなるわけですけど、それは一本化という意味がどうも私もはっきりしないんですが、教育委員長というのはいなくなるわけでしょう、いわゆる。教育長が教育委員会を代表してその責任を持つわけですから、これは明らかに、教育委員会を開いて広く議論をしていくと、四人ですか、通常で四人の教育委員会は、教育長に対してはもう今まで以上に本当に影が薄くなると思いますよ。
もし影を薄くしないための唯一の方法があるならば、この教育委員に住民代表制を与えるということですよ。もしそうであるならば、しかもその教育委員が、やはりある一定の識見を持って、それから地域の教育問題についてもきちっとした現状分析と、それに対するやっぱり積極的なあれを持てるというふうな、これを教育委員も持つならば、これは教育長と大いに議論ができるでしょうけれども、今のまま、現在の今回の法案ではとてもそれは駄目です。マイナスの方向に行くだろうと。
つまり、教育委員会は、首長プラス教育長なんですね。独裁とまではいかないにしても、それが完全に主導する教育委員会になると、これは本来の制度から明らかに更に後退していくと、そういうふうなのが私の意見でございます。

○矢倉克夫君
ありがとうございます。大変参考になりました。
私個人的には、これまで教育委員会の形骸化と言われているのは、教育長の下に事務局があって、そのラインとは別のところに教育委員会があったことで情報の伝達等もなかったという部分も仮にあったとしたら、今回の一体化はそれを解決に資するものではないかとも思ってはおります。
ただ、今御指摘いただいたとおり、そもそも兼用することで、やはり一人きりになるということで濫用というおそれも出てくる可能性もひょっとしたらあるし、専門家がレーマンを兼ねるということがそもそもできるのかという部分もあり、結局は教育長がどのような方が養成されていくのかというところ、そこがやはり非常に大事になってくるなというのを今改めてお伺いしました。ちょっとそこを具体的に更にお伺いしたかったんですが、ちょっと時間がありませんので。
次、岸参考人にお伺いをしたいんですが、コミュニティ・スクール、ツールにしてスクール・コミュニティ、この方向性、本当に非常に大事であるし、お取組の一つ一つ、本当にすばらしいなと思いました。
ただ、現状、いろんな自治体がこのコミュニティ・スクールを何とか促進させようとしてもなかなかそれに幅が広がらないというところがあるかとは思っています。例えば、空き教室を使うとかという話、今の学童保育の問題とかでも出てきたりしているんですけど、何が問題かといえば、現場の教育委員会がなかなかそれに応じなかったりとか、あと、何といっても保護者との協力関係とかそういう部分での連携というのが大事であるなと思う。
その点では、教育現場とも保護者とも非常に連携が取れた形をされているんじゃないかというふうにお話をお伺いして改めて思ったんですが、このような教育委員会、若しくはまた更に保護者との連携の辺りで、ここは大事だと思うようなところがありましたらアドバイスをいただければと思います。

○参考人(岸裕司君)
僕がPTAの役員になったときに一番おかしいなと思ったのは、保護者が文句ばっかり言っているんですね、PTA。で、役員になりたがらない。つまり、僕は民間人ですから、PTAという団体は任意加入の社会教育団体なんですね、しかも大人の保護者と教職員が入る。嫌だったらやめればいいのにって。やめる勇気もなくて文句ばっかり言っている、こんな主体性のない親じゃ駄目じゃないかっていうのが第一点だったんです。だけれども、マーケティングしないと、ただ怒っただけになっちゃう。そこで、学校をいろいろ調べるわけですよ。
そうすると、例えば登下校、登下校というのはお城さんですよね、いまだに登下校って言うんですから。登下校時に子供が事故に遭ったときに責任誰にあるかって、学校にあるんですね。だから、寄り道するなと言うのが先生の仕事になっちゃうんですよ。で、さっき言ったように、百七十人が寄ってたかって一人の先生に文句言うよりも、その中の一〇%、例えば十七人でも登下校時に立とうよと言えば、ああ、そうか、先生大変なんだねって、じゃ、立とうねってなるわけですよ。
つまり、ウイン・アンド・ウインという考え方、学校だけがメリットを求めちゃ駄目なんです。関わる保護者、地域住民も一緒にメリットを求めていく。その中で主体的に動こうとする人が自分を鍛えて、そういう住民に秋津の人たちはどんどんなっていったと思うんですね。

○矢倉克夫君
岸参考人、あと、教育委員会とかそういうところとの連携についても、もし御意見があればいただければと思います。

○参考人(岸裕司君)
実は、年間一万三千人使っているコミュニティルームの教育委員会支出は年間三万円なんです。あと、水道光熱費は全て学校メーターですから我々の税金であると。
なぜ三万円で済むかというと、全て、四十ぐらいあるサークルは自己完結型で運営しているんですね。生涯学習というのは自分にメリットあることですから、例えば陶芸で粘土を使うとなれば自分で粘土買って当たり前ですよね。そういうふうなやり方をしながら、だから教育委員会にもメリットがあるから教育委員会も積極的に施策を進めてくれるわけです。
逆に言うと、三万円だったら要らないと言ったことがあるんですが、行政施策なので受け取ってくださいと言われたんです。だったら受け取りましょうということで、来年で二十年になりますが、開放して、もうずっと三万円です。行政にもメリットないと、新しい仕事はやりません。

○矢倉克夫君
ありがとうございます。
教育委員の人選の在り方にしても地域とのつながりにしても、やはり今後運用をどうしていくのかというのはまた非常に大きな視点であるなということを改めて教えていただきました。大変にありがとうございました。
以上で終わります。

かつおニュース VOL3

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