190回 法務委員会(刑事訴訟法改正案参考人質疑)

2016-04-28 国会質問議事録

○矢倉克夫君

公明党の矢倉克夫です。お三人の参考人の先生方、貴重な御意見、大変にありがとうございました。
私、今回の法改正の趣旨は、もう既に御指摘もある取調べ中心主義、供述調書への過度な依存、これを脱却するというところが原点の一つであるというふうに思っています。
そもそも、まずお三人に、豊崎参考人から順にお伺いしたいんですけど、なぜ供述調書に依存するかというところなんですね。これは、一つは、捜査機関その他が検挙率や有罪率を上げる、無実かもしれない人でも人権侵害をしてでも上げようというような、そういうような性質があるところからそういうふうになっているという意見もあり得るかもしれない。他方で、真実発見というものをこれしっかりと職務として行うと。ただ、その職務を行う上で、現実、なかなか証拠の収集という部分での制約が、これは評価あると思いますけれども、あったと、取調べに依存せざるを得ないような状況にあった、その結果依存していたという、この二つ、それ以外もあるかもしれないんですけれども、それの二つのうちどちらというふうにお考えであるのか、それ以外もあれば、豊崎参考人から順に御意見をいただければというふうに思います。

○参考人(豊崎七絵君)

今の御質問ですけれども、先ほどの報告で申し上げたことの重複になるかと思いますけれども、なぜやっぱり供述調書に依存するのかといえば、そのような供述調書を作るに当たっての取調べが捜査機関の言わば自由裁量に委ねられているからだというふうに私は考えるものであります。でありますので、先ほど申し上げたように、そこを抑制していくということが今回の課題であると。
確かに一線の警察の方々は個人的には一生懸命やられているかもしれませんけれども、しかし、原田参考人のお話にもあったかもしれません、私自身がそう考えるという意味で申し上げれば、やはり警察はそういうカルチャーを持っているということを前提にそこを抑制していくということしか私はないと考えております。
以上です。

○参考人(原田宏二君)

刑事司法全体、刑事訴訟法にずっと書いてあるわけですけど、警察の犯罪捜査というのはまさに刑事司法の入口にあるんですね。ですから、入口にあるので、刑事司法全体の何か仕組みというか裁判までに当然入口は左右されるということですよ。裁判で非常に自白が重視されるということになれば、当然のことながら警察もそう考える。
それと、私の体験なんかからいうと、よくあるんですけれども、例えば汚職事件等、それとか重要な大きな事件の捜査をやっていると、例えば被疑者をどうしようかと、裏付けがちょっとかなりきついなというような事件は結構実務上あるわけですよ。必ずしも裏付けが、物的な証拠や何かが完璧だと、客観情勢としてこいつは被疑者だというふうにがつっとやれる事件もあれば、そうでない事件もあるわけですね。そうすると、そのときにどういうことが起きるかというと、検事と連絡するわけですよ、検事と。そのときに条件付けられることが結構あるんです、検事から、落としてくださいよと。落としてください、落とせなかったら起訴できませんよという話は私は度々検事から言われていますよ、実際に。
ですから、警察としては、刑事司法の入口にある、重大な事件を逮捕して身柄を取って、取ってですよ、検事のところで、検事パイと我々は言うんですけれども、不起訴になったり処分保留で釈放になったら、私はもう完全に捜査失敗したというふうに思っていますからね。部内でもそういう評価を受けますから。そうすると、当然、捜査担当者、指揮している我々としては何とか落とせと、こういうことになるわけですね、それで自白をさせると。そういうシステムにあると思いますよ。

○参考人(小木曽綾君)

一般論としてですけれども、自白というのは、本人が不利益供述をすれば処罰されることが分かっていながらしかし不利益供述をするということで、信用性が高いというふうに言われているということがあります。それから、動機から背景事情から犯行の態様に至るまで全てストーリーとして語ってくれるというような側面を持っているということでも、それをまずきっかけにしてほかの証拠を集めようという動機が働くというので自白が追求されやすいということがあると思います。
また、これは臆測の範囲を出ませんけれども、真実を追求するとか、それから行為者の謝罪とか反省を求めるという、何といいますか、まさにカルチャーというか、国民感情というようなものが背景にあるように思っています。

○矢倉克夫君

ありがとうございました。
豊崎参考人の御意見は、捜査のカルチャーというふうにおっしゃっていた。そのカルチャーというのは、多分御趣旨は、さっき私二つ申し上げたうちの最初の方に、捜査が持っているというような御趣旨であったというふうに、要は人権侵害というものも起こり得るような、それでも検挙率を上げるとかそういうようなカルチャーだというふうに理解もしているんですが、原田参考人は、落としてくれというところ、それはある意味、私は、捜査機関が真実発見というところから、最終的にはこれはその真実発見のための供述というところを重視して、その上での落としてくれというような御趣旨であったかなと。
全般に見て、小木曽参考人の御意見も含めて、私は、供述調書に依存する部分というものの捜査機関の性質というのは、やはり真実発見というところ、それに、職務に追求する余りに行き過ぎ、その行き過ぎの背景はいろいろあると思うんですが、証拠の収集に当たっての供述というものに依存せざるを得なかったというところがやはりあるのではないのかなというふうに私は理解もしております。
その上で小木曽参考人にちょっとお伺いもしたいんですが、まず今のような前提で、他方で、供述に対する依存をやっぱりしっかりとなくしていくためには捜査の手法の在り方というものも考えなければいけないという御趣旨でパッケージというふうにおっしゃっていただいたというふうに理解をしていますけれども、そこの確認をまずさせていただきたいと思っております。

○参考人(小木曽綾君)

おっしゃるとおりです。

○矢倉克夫君

その上で、じゃ、今回いろいろ問題になっているのは、捜査の手法を広げることがそのまま捜査機関の自浄作用になって依存しないような捜査機関になるかということだけではないんじゃないかというところであると思います。そのために重要な役割を持っているのがやはり弁護人であるかなと。捜査機関として、今まで依存していた体制を改めるためにいろんな手法を広げたわけでありますが、そこがまた更に行き過ぎにならないように弁護人の役回りというのもこれ重要になっているという理解の上で今回設計はされているというふうに理解もしています。
一つ可視化の部分でやはりよく問題になっているのが、小木曽参考人にちょっとお伺いしたいと思うんですけれども、可視化の部分で問題になっているのは、今回、可視化も、供述調書の任意性を立証する部分で録音、録画が提出されるというところがよく言われております。それが、その部分だけを結局切り取った形で録音、録画になって、実際上、任意性が怪しまれるようなのは、その供述調書、供述をしたまさに供述調書以前の取調べの部分の録音、録画はされているんだけれども、そこの部分は排除して、余り問題ないような供述調書、まさにそのものの立証のためだけの録音、録画を出すというような話も批判としてはある。
他方で、それに対しての対処としては、弁護人から、まさに取調べというか供述調書が作成される以前の部分での録音、録画もこれは提出するように証拠調べ請求をするという、弁護人の立証活動でしっかりとやらなければいけないというような御意見も前回参考人等で御意見があったところであります。
そういう意味で、今回、検察が一覧表の交付などもこれ義務化いたしました、証拠の一覧表の交付なども。そして、公判前整理手続の請求権などもこれはしっかりと義務化した上で環境整備もしているというところはいろいろあるわけですけれども、その辺りを弁護人の可視化に関しての立証の点という関連でどういうふうに効果があるとお考えか、お答えをいただきたいというふうに思います。

○参考人(小木曽綾君)

先ほど冒頭でも申しましたけれども、被疑者段階の弁護人の役割というのは非常に重要であると考えます。取調べに当たってまず被疑者に助言をするということもありますし、今委員御指摘のように、公判になって、どのような証拠があって、例えば録画されている部分がここだけだけれども、しかしそれより前の部分を本当は見なければいけないんだとすれば、そういう証拠調べの請求をする、当然それに向けて公判準備、整理手続に臨むというような役割が弁護人に期待されているところだと思います。

○矢倉克夫君

後ほど、最後また小木曽参考人にもう一個、時間があればお伺いしたいんですけれども。
豊崎参考人に、ちょっと抽象的な話になるんですけれども、やっぱり公判中心主義というところは重視すべきであると。そのとき、豊崎参考人のイメージをされている捜査権というのはどういうものであるのか、ちょっと抽象的なことですけれども、お答えをいただきたいなというふうに思います。

○参考人(豊崎七絵君)

私自身は捜査権そのものがもちろんなくなるという話をしているわけではなくて、それは取調べ受忍義務を課さない形での、まさに真正な意味での任意の取調べというものが身体拘束をされている被疑者に対する取調べとしても行われるべきであるし、そういった捜査を前提として、しかし、そのような捜査であれば、正直申し上げて取調べはやりにくくなるでしょうし、そこでの供述は取りにくくなるかもしれませんが、それはいいことなのではないかということですね。やはりそこに依存せずに、公判で出てきた証拠できちんと勝負をするということが私は重要であると思います。
ついでながら、一つだけ、先ほどのお話につながるかもしれないんですけれども、弁護人の役割が重要というのはこの公判中心主義の下でもそうなわけですけれども、しかし、弁護人の役割が重要と言うのであれば、やはり取調べでの弁護人の立会いというものを抜きにしては、私は、非常にその手足というか縛ったままでの弁護活動を、言わばある種自己責任のように、あなたたちの努力でやりなさいと。それは、実際に運用の場面ではもちろん弁護士さんは頑張らなければいけないというのは百も承知ですが、今は法改正の場面であります。そうであるならば、やはりここはひとつ取調べへの弁護人の立会いということも、弁護人の役割が重要ならば考えていただきたいと思う次第です。

○矢倉克夫君

まさに私も、弁護人がやはり更に重要、その部分も運用も含めてしっかりと考えていくというところはまさにおっしゃるとおりであると思います。
また小木曽参考人にちょっと、あとは裁量保釈ですね。これまで罪証、証拠隠滅とか逃亡のおそれがないとき、それに今回加えて、裁量保釈として被告人の防御の利益の関係からの部分等もあったわけですけれども、今、弁護人の活動という意味で、この趣旨についても一言だけ御教示いただければというふうに思います。

○参考人(小木曽綾君)

捜査段階の身柄拘束というのは、まず理由があって、そして逃亡、罪証隠滅のおそれがあるということが要件とされているわけであります。ですから、それがまず必要であるということは絶対要求されることだろうと思うわけで、その身柄拘束が長引くということの理由に被疑者が自白しないからということがあるとすれば、専らその取調べを目的に身柄拘束が長引くというようなことがあるとすれば、これは法の定めに違反しているということになるだろうと思います。

○矢倉克夫君

ありがとうございます。

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