211回 政府開発援助等及び沖縄・北方問題に関する特別委員会

2023-04-28 国会質問議事録

○矢倉克夫君

公明党の矢倉克夫です。
四人の参考人の先生方、大変貴重な御意見、誠にありがとうございました。
まず、中西参考人にお伺いしたいと思うんですが、今ほども話があった人間の安全保障、有識者懇談会の報告書でも、開発協力のあらゆる側面に通底する基本理念というふうにお書きになっておりました。その重要性を改めてお伺いするとともに、あわせて、私たち公明党も、三月十四日に外務大臣に大綱について申入れしたとき、この人間の安全保障を重視すべきだと訴えたんですが、今回の大綱案で私注目したのは、UNDPが報告書で書いていたこの新たな要素としての連帯という言葉を人間の安全保障の新たな要素として加えていたことがあるかと思います。有識者懇談会では連携という言葉はよく出ていたわけでありますが、そことはまた異なる言葉としてのこの連帯という言葉の先生のお考えになる意味合いを。
それに関連して、私は、この連帯というのは、その連帯を実現するためには、自国と他国の成長、幸福が一致する領域をどんどん広げていく、共通の利益になるような領域を広げていく能動的な活動だというふうに理解はしているところなんですが、先生も先ほど、まさに人類公益と国益を一致させていく過程が大事だというふうにおっしゃっておりました。先生のお考えで、レジュメの方でもこういった国益と国際公益の長期的一致という言葉もあるわけでありますが、このお考えと連帯という言葉で重なり合う部分があれば是非御教示をいただきたいと思います。

○参考人(中西寛君)

御質問ありがとうございます。
お話ありましたとおり、人間の安全保障というのが、私が座長を務めた有識者懇談会報告書の中心概念、日本の開発協力の基本理念として改めて掲げるべきだというふうに書き込みました。これは、有識者のメンバー、皆さんいろいろな立場から御参加をされていたんですけれども、初回に皆さんの総括的な御意見を伺ったときに、基本的に全ての委員からそういうような御発言があったというふうに記憶をしております。
人間の安全保障という言葉が何を意味するかということについては、いろいろな考え方があろうかと思います。先ほど若林委員からお考えがありましたけれども、若林委員のような捉え方も一つではあろうかと思いますが、私は、必ずしもそれに限られるものではない。あえて申しますと、まあいささか曖昧であるけれども、人間という言葉と、つまり個人であったり社会であったり、場、様々なつながりでありますけれども、国家ではなくてそうした人間そのものに焦点を当てるということ、そして、広い意味での安全を高めるということについてコンセンサスが得られやすいということが重要だと思います。
例えば、ミャンマーのような民主化が進んでいると思われた国で、その状況が残念ながら後退してしまうということは現在の国際政治では生じてしまうわけですが、そのときに援助を止めてしまうというのも確かに一つの考え方だろうと思います。しかし、現地でその民主化の支援やそうした政治変動で苦しむ人々がいることも確かですので、そうした人々を助け続けるということも日本の開発協力の在り方ではあると思います。
そういう場合に、その政府を支援するのではなくて、人々を助けるんだという理念そのものを維持しながらどのように対応すべきかということをある程度実践的な観点から検討するということが必要ではないかという、そういう御意見もあったかと思います。
今お話にありました連帯ということについて、UNDPがどのような意味で言っているか、私は詳細に残念ながら承知しないんですが、あるいは、従来の、とりわけ西側が言ってきました人権を重視するという考え方は、個人の人権というのを重視するという考え方が根底にあるわけで、それは確かに一つの理念として正しいものであると思いますけれども、世界的に見たときに、必ずしも個人単位で人々の安全というのを考えるわけではなくて、家族であるとかコミュニティーでありますとか様々なつながりの中で個人が安全を得るという考え方もあろうかと思います。
改めて、UNDPがそういう点を見直すことを言うためにこの連帯という言葉を重視するという話であるとすれば、日本が掲げようと我々が提案しました人間の安全保障という考え方と重なり得るものだと思います。

○矢倉克夫君

ありがとうございました。
次に、佐藤参考人にお伺いをしたいと思うんですが、今の連帯というところの続きにもなるんですが、あわせて、佐藤参考人の方でもお話として、例えば自助努力というところから良い依存関係をつくるというこの発想転換が大事、非常に重要なメッセージであると私も思っております。
この先生が込められたメッセージとこの大綱にある連帯という言葉の関係の考えみたいなのを、先生もほかの文献でも、例えば、日本のこれまでについて、人類益と国益の二項対立のはざまでたくましく行き来して折り合いを付けるというようなお言葉もあったわけでありますけど、そういった先生のこれまでの発信も踏まえつつ、この連帯と先生のこの依存、良い依存関係というものの関連性について御教示いただけるところがあれば是非お願いしたいと思います。

○参考人(佐藤仁君)

ありがとうございます。
すごく難しい問いだと思うんですけど、まず、今直前に話題になっていた人間の安全保障の話についてちょっと一言だけ言わせてください。
人間の安全保障を本気でやるということは、相手国政府が嫌だと言ってもやりますかということなんですよね、まあちょっと乱暴に言えば。
日本の援助というのは、御承知のように基本的に要請主義なので、相手国政府から要請が来て、それを大使館やJICA等でもんで、そこに優先順位を付けて、東京で許可を出して、援助を送り出すと。そうすると、じゃ、政府と反対の、政府と対抗しているような勢力からは、基本的にはその政府ルートでは要請は来ないわけですよね。にもかかわらず、そこに物すごく深刻な人間の安全保障のリスクがあるときにそこに踏み込んでいくのかどうかという話だと思うんです。
これは、物すごく、その日本のODAの歴史の中で、もしこれを本当にやるんであればこれは大転換だと思うので、私は、この人間の安全保障というのは理念はもちろん理解しますし、誰もそのことに反対する人はいないと思いますけれども、ODAの仕組み上それをどうやってやるのかということはかなり慎重な検討が必要なんじゃないかなと思っています。
もちろん、日本政府がというよりも、例えば、その人間の安全保障を推進する現地の団体を、あるいは現地でどちらかというと政府と話ができる団体から申請、要請を出させるというような、そういう様々な裏技はあるかもしれませんが、そういうことも含めて考えないと、現在のそのガバメント・ツー・ガバメントの仕組みの中で人間の安全保障が一番深刻に表れている、つまり、その深刻というのは、政府が自国民に対して暴力を働いているときにどうするのかということなんですね。
これは決してレアなケースではなくて、東南アジアなんかでは、スハルトとかマルコスのお父さんとか、あるいは極端な例でポル・ポトとかですね、物すごい暴力を自国民に対して働いていたわけですから、こういうことに対してODA踏み込むのかというのは大問題だと思います。中西先生おっしゃったように、ミャンマーのことについても日本の態度が迫られるところだと思います。
そういった中で、連帯とか依存というのは、どちらかというと、将来困ったときに助け合えるような関係を今からつくっておくと。その今からつくるための触媒の一つとして、それは全てではないですけど、触媒の一つとしてODAを使っていくということであって、何かやっぱり、私の冒頭の発言で申し上げましたけど、自立というと、何か自分で全部、自分ができるようになる、それは推し進めていけば、ある種の孤立というか、ほかと関係がなくてもやっていけるような、そういうニュアンスがあると思うんです、そこまで考えている人は余りいないとは思うんですけれども。
なので、困ったときに助け合えるような関係を日常的につくっていくということで連帯という言葉が使われているのであれば、私はそれは賛成です。
以上です。

○矢倉克夫君

ちょっと続いてもう一つだけ、佐藤先生に。
事後検証というのは非常に重要だと私も思っておりまして、ODAの。先ほど申し上げた党の提言でも、モニタリングと事後評価のシステムを強化すること、ODAについてというようなことは申し上げ、結果を公開することというふうに申し上げたんですけど、今後、具体的に、では、今までのODA、これ事後評価をするに当たって、どういう、誰がどのような形で評価をし得るのか、ちょっと制度設計についてのアイデア、もしございましたらちょっと教えていただければと思います。

○参考人(佐藤仁君)

ありがとうございます。
これは、本当にやろうとするとすごく難しいと思います。
というのは、現状ですと、例えば事後評価というのは三年とか五年でやるわけですよね。それの意味というのは、比較的そのプロジェクトが始まってからそんなに時間がたっていないので、何か変化があったときに、それはプロジェクトによって起こされた変化であるという同定が比較的しやすいというのはあると思いますし、その結果を今オンゴーイングのプロジェクトにフィードバックするということができるようになるということなんですね。
ただ、十年、二十年という時間がたつと、そのプロジェクトの結果何か変化が起きたのか、ほかの要素によって変化が起きたのかというのはだんだん分かりにくくなってくるわけです。そうなってくると、そこで学んだことというのの教訓は、プロジェクトに返すというよりも開発協力全体の在り方について返すしかなくなってくるわけですね。
こういったことについて、今、人が少ないJICAみたいなところが人を割いて、十年、二十年のレビューをやりましょうって一生懸命やってくれるかというと、多分やってくれないと思います。それ、今やっているプロジェクトとか来年の予算に役に立つんですかと言われて、いや、それはちょっと分かりませんといって、なくなっちゃうような話ではないかと思うので、こういったところは、まさに市民社会とか研究者とか、いわゆるODA実務の外にいる人たちがまさに連携をする形で長期的にもモニタリングをしていくということが大事だと思います。
日本では、幸いなことに、いろんな地域の地域研究者がいます。アフリカの例えばウガンダを三十年見ていますとか、ラオスの専門家ですとか、そういう地域研究者を、地域をずっと見ている人たちをうまく使いながら、長期的に開発が持つ意味というのを検討して、その検討結果を実務機関と共有するような仕組みというのがいいんじゃないかなと思います、JICAにやらせるというよりも。

○矢倉克夫君

大変ありがとうございます。
若林先生に、今、市民社会の言葉も出ておりましたが、人間の安全保障というものを実現していく上で、社会的に、市民社会の役割について先生の御所見をもしお伺いできればと思います。

○参考人(若林秀樹君)

ありがとうございます。
今の御質問の流れの中で、連帯ということを市民社会としてどう捉えるかというところを含めてお答えしたいんですけれど、例えば、我々の団体は中国のNGOと連帯しています。国際的に二国間ではテンションが高くてまともな話もできないという中で、市民社会の役割というのは、国境を越えて人間の安全保障というところでつながるんですね。彼らも日本の経験を知りたい、日本に、取られている政府との関係、国際協力をどうやっているのかと。その前提は、彼らも人間なんですよ。彼らも大事にしているのは基本的な人権なんです。その重要性は彼らも分かっている。だから、我々は連帯をして、いろんな交換をしたりだったり、いろんなイベントをやったりして共有をしていると。最終的にどういう政治体制を選ぶかは彼らなんです。
ですから、その前に我々はできることは、国境を越えて政治観を超えて、市民社会としてつながって連帯して、国際平和、人権たる、何物か、どういう形が望ましいのかという経験を、それをベースに話す、で、最終的に向こうが選ぶというのが今の我々の役割ではないかなという意味では、連帯ということは非常に重要な言葉ですね。我々の役割はそこに発揮できるんじゃないかなと思っています。
よろしいでしょうか、以上です。

○矢倉克夫君

私もそのとおりだと思います。
最後、時間ですかね、失礼しました。
じゃ、済みません、焼家参考人、ちょっと食品ロスとかの関係の日本の課題とかもお伺いしたかったところはあったんですけど、時間ですので、申し訳ありません。
本当に様々な、特に、あともう一件だけ。あと、先ほどの紛争の地でのやっぱり安全を確保されるということは非常に重要だと私も思っていて、そこについての政府としての役回りなどもまた私たちもいろいろ検討しながら、しっかり安全も確保して、共に世界の安全に、確保に、食料飢餓を、困難回復に尽くしていきたいと思いますので、よろしくお願いします。
済みません、以上でございます。ありがとうございます。

211回 国土交通委員会

2023-04-20 国会質問議事録

○矢倉克夫君

公明党の矢倉克夫です。よろしくお願いします。
今回、改正法でありますけど、この地域公共交通活性化再生法、二〇〇七年に制定されてから十五年強になります。その間も人口減少やコロナなどで廃線は続いて、公共交通の需要減少も続いているわけでありますが、まず政府に、この現行の活性化再生法に基づくこれまでの取組の効果について国土交通省としてどのように評価をしているのか、また、その評価を本改正案においてどのように反映しているのかをお伺いしたいと思います。

○政府参考人(鶴田浩久君)

お答えします。
十五年前に制定されましたこの法律によりまして、協議会それから地域公共交通計画、これらが制度化をされまして、これまでに全国で七百余りの計画が作成されております。このように、地域における公共交通の将来像について自治体を中心に議論をして決定していくと、こういった動きが広まってきていると認識しております。
一方で、長期的な需要減に加えて新型コロナの影響もあって多くの事業者が大変厳しい状況にありますけれども、こういった状況は交通事業者の経営努力だけでは避けられないものでありますので、地域の関係者の共創によって、共創を強化することが必要と考えております。
このため、今般の改正法案におきまして、連携、協働について法律上の各種規定に明記をする、またローカル鉄道の再構築について連携、協働の仕組みを創設する、また自治体とバス事業者等が連携、協働するエリア一括協定運行事業を位置付けるなどを盛り込んでございます。

○矢倉克夫君

また個別には時間があれば議論したいと思いますけど。
交通全体の持続可能性の問題として、この地域公共交通に限らず、大事な担い手の問題についてお伺いしたいと思います。
特にバス、タクシーの自動車運転業は、全産業に比べても労働時間が長くて年間所得も低くなっており、若年層の就業が敬遠されております。バスも第二種大型自動車運転免許の保有者は十五年間で二四%減少、タクシーも十五年間で四〇%運転手も減少をしていて、高齢化も進んでいると。男性労働者の全産業平均が四十・八歳であるのに、タクシーは六十・九歳。
国土交通省として、まずバスやタクシーの運転手不足に対してどのように対処していくのかをお伺いしたいと思います。

○政府参考人(堀内丈太郎君)

お答え申し上げます。
バス・タクシー業界におきましては、若年層の雇用、そして低い賃金水準の改善、これが大きな課題であると認識をしております。
このため、国土交通省では、現在、多くのバス・タクシー事業者からいただいております運賃改定申請に対して迅速に対応し、早期の賃上げや安心で快適な職場環境の整備を促進するとともに、令和四年度補正予算において創設いたしました二種免許の取得に対する支援など、事業者による人材確保、行政の取組を支援、これを使っていただけるように促してまいります。引き続き、バス・タクシー業界における人材確保に向けてしっかりと取り組んでまいります。

○矢倉克夫君

地域のバス会社の方なども非常にこれは懸念をしております。是非しっかりやっていただきたいと。
その中で、声のある一つが外国人運転手の解禁ということであります。この運転手不足の改善、これは物流の二〇二四年問題にも関係をいたしますが、この外国人運転手を解禁するということも考えてもよいのではないか。
報道によりますと、外国人技能実習制度の中間報告のたたき台では、この制度の廃止、改善というのも議論されているというふうに聞いておりますが、この新制度に組み込むか、あるいは、現在のこの十二種ある特定技能に新たに運転手なども加えるということも考えられると思います。
大臣にお伺いしたいと思うんですが、今のこの外国人運転手の解禁、今、バス、タクシーに加えて、とりわけトラックドライバーについても二〇二四年問題を扱う閣僚会合で議論をしてもよいと思いますが、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

○国務大臣(斉藤鉄夫君)

バス、タクシー、トラックの三つの業界団体においても、各団体の今年度の事業計画に外国人材の活用が盛り込まれたものと承知しております。これは、事業者としても人材確保に関して大きな危機感をお持ちであることの表れと受け止めております。
国土交通省としては、現時点で外国人材の活用に関して具体的な対応方針を決定しているわけではありませんが、委員の御指摘や業界の意向なども踏まえ、関係省庁と連携して検討を進めてまいりたいと思います。
これとは別に、トラックドライバーの確保対策については、物流の関係閣僚会議において六月上旬を目途に取りまとめる政策パッケージに実効性のある具体策を盛り込めるよう、スピード感を持って関係省庁と議論を深めてまいりたいと思います。

○矢倉克夫君

非常に問題もかなり複雑化して、深刻化しているところであります。関係省庁と連携は必要でありますが、まず国土交通省として、現場の声をしっかり聞いて、こういう課題解決も必要だということを積極的に対応していくことも必要だと思いますので、大臣のリーダーシップを是非よろしくお願いを申し上げたいと思います。
あわせて、ちょっと次の質問にまた移りたいと思いますが、先日の参考人質疑でもモーダルシフトという話がありました。これもまた大臣にお伺いしたいと思うんですけど、温室効果ガスの排出量を削減し、カーボンニュートラルを推進するため、トラック輸送からCO2の少ない大量輸送機関である鉄道輸送等への転換、いわゆるモーダルシフト、国交省としても進めており、桜井参考人なども積極的に評価をされておりました。
これは、環境負荷低減の面に加えまして、これも先日の参考人質疑でも出ておりましたが、全国的な物流ネットワークというのも、維持管理というのもこれ含めた意味合いもあると思いますし、緊急時の自衛隊の物資輸送等の安全保障の面、さらには物流の労働力不足への対応という面もあるなど、多面的な機能を有していると理解もしております。
これら多面的機能、まさにクロスセクター効果と言えると思いますが、これらを有する鉄道網については、例えば先日の参考人質疑でも森参考人が、こちら何度も今この委員会でも出ておりますけど、交通というのは公共財だと、まず思い切って公費投入をして、ポジティブに社会資本の質を上げるためという公費投入が必要だというふうにおっしゃっておりましたが、まず国の施策を進める上で必要な鉄道路線をこれを指定するなどして路線の維持のために国として支援をしていくべきではないかというふうに考えております。
この点について大臣の御見解をお伺いしたいと思います。

○国務大臣(斉藤鉄夫君)

この点についても午前中からいろいろ議論があったところでございます。
貨物鉄道は環境に優しい大量輸送機関であり、またドライバー不足が課題となっているトラック輸送の受皿としてもますます大きな役割を担っていくことが期待されます。
昨年、国土交通省に設置した地域モビリティ検討会では、貨物列車が現に走行している線区、災害時や有事において貨物列車が走行する蓋然性が高い線区については、我が国の基幹的鉄道ネットワークとして引き続き維持を図っていくことが強く期待されることが提言されています。
今後、こうした考え方を地域公共交通活性化再生法に基づく基本方針や新たな国土形成計画に盛り込み、貨物鉄道がその機能を十分に発揮できるよう、ネットワークの強靱化やトラック輸送との連携強化等に向け、国として必要な支援を行っていきたいと、このように思っております。

○矢倉克夫君

大臣から支援というお話がありました。地域公共交通を支援するためのこの財源についてまたお伺いもしたいと思います。
地方の財源としては、国の地域公共交通確保維持改善事業などもありますが、多くの地方自治体の財政状況も厳しい中、地域公共交通を長期的に支援していくための財源の確保というのが課題になっていると思います。
諸外国を見ますと、先日も桜井参考人が例に挙げていらっしゃったドイツでは、連邦からの補助金がある、これはエネルギー税が財源となっているということで、気候変動対策などとも多面的に考慮した上でだと思いますが、ほかにも、フランスなどは公共交通の特定財源として都市交通税があり、これが公共交通への投資の財源となっております。
国土交通省としても、まさに諸外国に学べというような先日の参考人のお言葉もあったわけでありますが、この地方への支援財源の確保についてどのように考えているのかをお伺いしたいと思います。

○政府参考人(鶴田浩久君)

お答えします。
まず、今般の予算におきまして、社会資本整備総合交付金などの新たな枠組みも含めて、財政支援を質、量共に大幅に拡充したところでございます。国土交通省としましては、まずはこれをしっかりと執行していくとともに、必要な予算の確保に努めてまいります。
その上で、本年二月の交通政策審議会の中間取りまとめにおきまして、更なる課題として安定的財源の確保が示されていることも踏まえまして、これについても中長期的な課題として幅広い観点から検討してまいりたいと考えております。

○矢倉克夫君

先ほどの午前の答弁にもあった中長期的な課題として検討していくというのは大事でありますので、是非引き続きやっていただきたいと思いますが、あわせて、関連してちょっとお伺いしたいんですけど、先日の森参考人がこれもおっしゃっていたんですけど、まさに公共交通維持の財源のため新しい歳入を得る方法について国の関与をもっと大きくすべきであるといった趣旨の御発言もされていらっしゃいました。
是非、森林環境税なども例として挙がっていたわけでありますが、総務省ともより実務レベルで積極的に議論すべきとも考えておりますが、これについての国土交通省の見解を伺いたいと思います。

○政府参考人(鶴田浩久君)

御指摘ありましたように、森参考人から、森林環境税を例に挙げて、地方の交通を維持するための財源について国の関与を大きくしてほしいという御発言ございました。
先ほど申し上げましたように、中長期的な課題として幅広い観点から検討を進めてまいりますが、その際には必要に応じて総務省も含めた財政当局ともよく協議してまいりたいと考えております。

○矢倉克夫君

是非実務レベルでも、その上で、合意形成という点で我々政治もしっかりと責任を果たしていきたいと思いますので、是非連携して、とにかく地域公共交通を支えるにはどうすればいいかということを、国民の理解を得るための具体的な政策をどんどん連携を進めていただければと思いますので、よろしくお願いいたします。
またもう一つ、参考人の御意見にも絡むところではあるんですが、また、現行法で道路運送高度化事業というのが規定をされております。それについては、例の一つとしてはBRT、これが挙げられているわけでありますが、参考人からもいろいろ御評価も、批判的な否定的な御評価も一部あった中で議論がされているところではありました。
まず、これについて、これまで導入されたBRT転換による事業の収支や利用者の増減等について国土交通省としては認識をどのように持っていらっしゃるのかをお伺いしたいと思います。

○政府参考人(堀内丈太郎君)

お答え申し上げます。
BRTは、連節バス、バス専用道、バスレーン、公共車両優先システムなどの幾つかを組み合わせることで、定時性の確保や速達性の向上、輸送能力の増大を可能とする機能を備えた輸送システムでございます。令和五年四月一日現在、全国二十九か所で導入をされておりまして、うち五か所が鉄道からの転換によるものとなっております。
BRTが導入されております各路線の収支につきましては運営を行っている事業者から公表されておりませんが、そのうちの一部の事業者が行った利用者アンケートによれば、運行本数、スピード、運行の安定性など、運行のサービスの水準については利用者から高い評価を得ているものと聞いております。
国土交通省といたしましては、BRT含め、地域のニーズに応じた交通システムの整備を積極的に支援することによって、地域公共交通の維持、活性化を図ってまいります。

○矢倉克夫君

是非、メリットやまたデメリットも含めて引き続きしっかり検証をしていただきたいと思います。
このBRTにも絡む議論として、午前中も、貨物によるネットワーク維持ということもあります。それも推進すべきであると思いますし、なかなか、他方で、全て貨物でということも難しい場合はBRTの選択肢というのも当然あり得るかと。
これも午前中、局長からお話があったように、これ単なる鉄道の代替ということではなく、また新たな交通経路も考えるなどして、是非地域の足を維持するためにもこの効果というものもしっかりと説明できるように検証をして更に推進をしていただきたいというふうに思いますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。
次に、今の少し挙げた道路運送高度化事業ということでもう一つだけお伺いしたいんですが、今回の法改正でAIデマンド交通がこれ加わったと理解もしております。
資料今日お配りしておりますが、これはさいたま市の浦和美園という地区の、予算委員会などでも私も議論もさせていただいたものなんですけど。過疎地ではないです、都市部の中でありますが、この都市部の中であっても交通弱者というのは当然多いことを踏まえたいろいろ取組として、私も視察なども行かせていただいた、地域でしっかり一体となって頑張っている、交通を地域の暮らしと一体で捉えて民間事業者と行政が連携して取り組んでいる取組であるというふうに思っております。
先ほども話があった共創型、共に創る共創型交通のプロジェクトとしてしっかりこれも推進すべきものであるかというふうに思っておりますが、こちらのさいたま市の取組について国土交通省の評価をお伺いしたいと思います。

○政府参考人(鶴田浩久君)

御指摘の浦和美園の取組は、商業施設や子育て支援施設など日常生活に必要な施設が分散立地をしていると、これらの施設を利用する際の移動手段が不足していると、こういう課題に対しましてAIオンデマンド交通を実証運行している事業でございます。子育て世代を含む女性の御利用が多いと承知しています。
本事業につきましては、まちづくり団体と商業施設運営者を含めまして、地域の関係者が連携して取り組んで、これらの事業者から協賛金を募ると、そういった仕組みを構築するなど、今般の改正法案に盛り込んだ共創の具体的な事例であると評価しております。
引き続き検討を続けていただいて、優良なモデルとなっていただくことを期待しております。

○矢倉克夫君

協賛金の仕組みと、また民間事業がビジネスモデルとして経営がしっかり成り立つようなことも考えられているので、是非いろいろ引き続き発信をしていただきたいと思います。
ちょっと最後に、法案の関係で、再構築協議会について通告していた質問を何問かまとめてちょっとお伺いをしたいと思いますが、こちらについて、まず、複数の自治体にまたがっている場合に一つの自治体だけで組織をすることが要請できるか。一部の地方自治体がこの再構築協議会、反対することに対して、そういう場合にどのように対応するのか。また、関係者相互の議論がなかなかかみ合わない状況が想定される場合、どのように国として対処をしていくのか。最後に、先ほども議論ありましたけど、昨年のモビリティ刷新検討会では三年と書いておりましたが、期間について、今回提出した改正案では期限の設定がないのはなぜなのかということを御答弁をいただければというふうに思います。

○政府参考人(上原淳君)

お答えいたします。
まず、国が再構築協議会を組織する場合、この要請は一つの自治体のみで行うことができますが、国は、協議会の設置に際しましては、ほかの沿線自治体からも意見を聴取することといたしております。
その結果、一部の自治体が反対している場合には、協議会の設置及び再構築方針の協議は事実上困難な状況となります。国としては、対策が必要と認めた場合には、協議会の設置に反対している自治体からその理由も聴取をしながら、広域行政組織である都道府県とも連携して粘り強く調整していきたいというふうに考えております。
また、それぞれの関係者の意見が対立している場合に、私どもとしましては、協議会の主宰者といたしまして、事業者にデータの開示を求め、調査事業、実証事業の結果を用いてデータとファクトに基づく議論を促し、またこれをできるだけ住民の皆さんにも情報共有をしていただく、そうしたことを通じまして、関係者の合意形成に向けてしっかり取り組んでまいりたいというふうに考えております。
さらに、協議期間につきましてでございますが、モビリティ検討会の提言では、三年以内を一つの目安として合理的な期限内に対策を決定すべきとされたところでございます。これは、地域公共交通としての利便性と持続可能性を改善するということで、協議会での議論がいたずらに長引かないように一定の合理的な期限を設けるべきとの考えに立ったものと承知いたしております。
他方、三年という期限はあくまでも目安の一つでありますので、期限あるいは検討スケジュールは協議会の構成員の総意に基づき議論していくべき、個別に協議会ごとに議論していくべきものというふうに考えておりますので、法に基づく一律の基準とはせずに、地域公共交通活性化再生法に基づく基本方針にこの基本的な考え方を盛り込んでいきたいというふうに考えております。

○矢倉克夫君

先日、森参考人が、行間を読むと、いい計画がまとまれば国がしっかり支援すると、対立しているものも国が調整をして、財政的にも負担も国が一定程度関与する、そうでないと意味がないというふうに言い切っておられました。是非機能するように国の関与をよろしくお願い申し上げまして、質問を終わります。
ありがとうございました。

【矢倉かつお】参議院 憲法審査会2023/04/12

2023-04-12 矢倉かつおチャンネル

211回 憲法審査会

2023-04-12 国会質問議事録

○矢倉克夫君

公明党の矢倉克夫です。
本日のテーマである参議院の緊急集会について、衆議院では緊急時における議員任期延長の前提的な議論として議論が進んでおりますが、私たち参議院の院の自律権の問題も絡むものであり、参議院において、より真っ正面からしっかり議論すべきものであるとまず考えます。
本審査会で議論すべき課題を私なりにまとめると、六つあるかと思います。
まず、発動要件として四つ。第一に、適用場面です。明文で衆議院が解散されていることとされていることとの関係となります。第二に、衆議院解散から特別国会の召集まで最大でも七十日程度の期間を想定したものであるかという期間要件に関して。第三に、国に緊急の必要があるときといった要件はどこまでを示すのかという緊急性の要件。第四に、内閣の求めによって開かれるため、審議対象も内閣提出の案件とこれに関連する案件に限られるのかという案件の四つであります。
これら発動要件に関係する議題に加えまして、効果について二点議論すべき課題がございます。一つは、緊急集会には首班指名などを行使し得るのかということ。もう一つは、事後に衆議院の同意がない場合の効力をどうするかであります。
これら議論のポイントは、緊急集会は二院制の例外である以上、抑制的であるべきという要請と、緊急時対応という実際の必要性から全国民の代表たる参議院に託された世界でも類を見ない制度、権能であり、参議院の独自性という観点も踏まえ、過度に抑制すべきではないという要請をいかに調和するかという観点であると考えます。
これら諸点について、緊急集会はあくまで二院制の例外である以上、厳格に解すべきと考えた場合、明文に沿った厳格なものとなり得ます。
他方、前述の全国民の代表制に加え、阪神・淡路大震災や東日本大震災による地方選挙の実施困難による選挙任期、任期延長を経験してきた現下の状況などを併せ考えたとき、国政選挙においても同様の事態が起こり得るわけであり、解釈で広げる余地は十分にあります。現に、第一の適用場面に関して、衆議院解散時に限らず任期満了時にも類推適用できるという学説が唱えられており、もはやこのような解釈は多数説となっております。衆議院の不在という根本的な点において同じだからであります。
この点を敷衍すると、第二の点である期間についても、必ずしも七十日にこだわらない解釈の余地もあり得るかと思います。
さらに、第四の要件である案件について、国会法改正によってこれらを緩和し、幅広い案件を審議できるようにすることも検討に値すると思います。
もっとも、緊急集会は二院制の例外である以上、安易な緩和には慎重であるべきとの指摘もございます。その調整の一つのアイデアとして、衆議院の同意要件の強化というものも提唱されております。衆議院が同意しなかった場合の効果については、一般に、既に行われた行為には影響を及ぼさない、将来効と解されていますが、衆議院の例外要件の緩和を二院制の趣旨を踏まえた衆議院の同意要件の強化によってバランスを取るという発想からは、遡及効を持たせることもなお検討項目ではないかという見解もあります。ただ、緊急集会の意義からは慎重に議論すべきものと考えます。
なお、公明党は、二院制の趣旨から、全国民の代表である参議院に衆議院と異なるべき権能を付与すべきであり、具体的には参議院の行政監視機能を強化すべきと従来より主張をしております。この主張とも相まって、例えば緊急時を想定した緊急集会にこそ、権力の監視、統制といった観点から、より積極的な意義付けを与えるべきではないかといった議論もこの二院制の趣旨からも可能であるということを付言いたしたいと思います。
以上、解釈による緊急集会の拡大を軸に述べてまいりましたが、この緊急集会の意義付けは衆議院で進む憲法改正による議員任期延長にも影響し得るものであり、参議院の憲法審査会において、今日挙げさせていただいた六つの点も含め、憲法学者などの意見も拝聴しつつ議論を深めるべきであり、これが衆参それぞれの真摯で建設的な検討に資することを申し上げまして、私からの意見といたします。

【矢倉かつお】政府開発援助等及び沖縄・北方問題に関する特別委員会(ODA沖北特委)2023/04/07

2023-04-07 矢倉かつおチャンネル

211回 政府開発援助等及び沖縄・北方問題に関する特別委員会

2023-04-07 国会質問議事録

○矢倉克夫君

公明党の矢倉克夫です。
質問に入る前に、昨日消息を絶った陸自所属のヘリ、迅速な捜索とまた一日も早い救助を是非お願いをしたいというふうに思います。よろしくお願いいたします。
それでは、質問に入らせていただきます。
岡田大臣にお伺いをいたしたいと思いますが、本年一月十八日に委員派遣で理事として視察した沖縄県で、副知事などと協議をいたしまして、私からも、沖縄県がお一人当たり県民所得が全国最低であるということの対策、これを問いまして、議論をいたしました。観光など潜在力が非常に大きい沖縄でありますが、なぜであるか。私も普天間飛行場などを視察した際に実感をしたことは、経済活動に優良な場所が米軍基地として位置付けられているということも、その最たる理由の一つであるというふうに考えました。
移設・返還問題を解決するためにも、政府として、返還後の跡地利用を沖縄県としっかり連携をしてより具体化しなければいけないというふうに思っております。
まず、大臣に、この跡地利用、どのような経済効果があると考えておられて、県民の所得向上につなげる方策であるか、具体策を大臣にお伺いをいたします。

○国務大臣(岡田直樹君)

お答え申し上げます。
基地の跡地は、その地域によって利用可能な空間が新たに生まれることになり、これを有効に活用していくことは沖縄の将来発展のために大変重要であると認識をいたしております。中でも、委員御指摘の普天間飛行場は、四百七十六ヘクタールという極めて広大な面積であること、また宜野湾市の中心部に立地しておることから、この跡地を有効に活用することは、宜野湾市のみならず、沖縄県全体の振興にとっても極めて重要な課題と考えております。
昨年七月には、沖縄県と宜野湾市において、普天間飛行場の跡地利用計画の策定に向けて、全体計画の中間取りまとめ第二回が作成されたところでありまして、跡地の有効な活用に向け、着実に検討が進められていると考えております。
また、普天間飛行場の経済効果については、平成二十七年の沖縄県の試算によれば、返還前の年間百二十億円と比較して、返還後はその約三十二倍となる三千八百六十六億円と試算されております。基地跡地の有効な活用は、この経済効果の面からも大きく期待されるところであると考えております。
どのような跡地利用がよいか、それは沖縄の地元で今後一層具体的に検討されると存じますが、この普天間飛行場の跡地利用が沖縄の地元における経済効果が十分に発揮されるものになるよう、国としても引き続き、地元自治体と密に連携しながらしっかりと支援をしてまいりたいと考えております。

○矢倉克夫君

国と県が一体となって、そこに県民一人一人が入って共に考えることが大事であると思います。県民一人一人の所得向上につなげるという政府の強い意思と決定が移設、返還の進展になるかというふうに思いますので、大臣のリーダーシップ、強く御期待を申し上げたいというふうに思います。
引き続いて、資料を御覧いただきたいと思いますが、同じ視察で一月十七日にお伺いしました久米島で、現地でいただいたものであります。
この久米島での海洋深層水利用は、島嶼地域のエネルギー、水、食料の自給モデルとして太平洋島嶼部からも注目を浴びており、行政視察件数は沖縄で、二〇一八年ということでありますが、一位と。
政府は、この取組を一層支援し、また育成をして、日本のソフトパワーとして諸外国に発信すべきであるというふうに考えますが、政府の見解を求めたいと思います。

○政府参考人(水野敦君)

お答え申し上げます。
ただいま委員から御指摘いただきました久米島町の沖縄県海洋深層水研究所につきましては、農業及び水産分野における海洋深層水の利活用に関する研究を実施し、クルマエビや海ブドウの養殖に活用しているほか、海洋温度差発電の研究を行っておられるというふうに承知してございます。こうした取組は、海洋深層水という言わば海洋資源を活用し沖縄の産業振興に役立てているということで、大変有意義な取組であると考えてございます。
また、内閣府におきましても、過去、ソフト交付金を通じまして、沖縄県がここで実施する海洋深層水を利用した発電の実証実験を支援してきたところでございます。
内閣府といたしましても、地元自治体においてこうした海洋深層水の利活用の取組を広く発信される際には、地元の御要望なども踏まえつつ、機会を捉えてサポートしていきたいと、このように考えてございます。
以上です。

○矢倉克夫君

サポートされるということで、是非、他省も巻き込んで、エネルギー関係であれば経産省とかも関わると思いますが、他省との連携の下で更に発展、支援をしていただきたいというふうに思いますので、よろしくお願い申し上げます。
ODAの方にまた質問も移らせていただきたいと思います。
ODAに関しての開発協力大綱の案が四月五日にまとめられて、今パブコメ中であるというふうに理解もしております。
武井副大臣にお伺いをまずしたいと思いますが、公明党は、三月十四日付けの外務大臣宛てのODAの開発協力大綱改定に向けた提言におきまして、人間の安全保障を全ての基軸にと訴えました。これへの政府の受け止めをまずお伺いするとともに、あわせて、この人間の安全保障につきましては、UNDPの報告書が、新時代の新たな脅威を考慮に入れたものとして、新たな要素として連帯というものを加えました。
公明党もこのUNDPとの会合でその意義を確認したわけでありますが、この連帯の意義についての外務省の受け止めと、同趣旨が先日まとめられた新しい開発協力大綱の案にどう反映されているのか、見解をお伺いしたいと思います。

○副大臣(武井俊輔君)

近年、ウクライナ情勢によります人道危機や、また地球規模課題の複雑化、また深刻化など、世界は複合的な危機に直面をしているところであります。こうした中、一人一人の生命と尊厳を守るこの人間の安全保障という理念でございますが、これはまたこれまで以上に重要になってきていると認識をしております。
複雑に絡み合います諸課題の対処には、多様な主体が共通の目標のために連帯をしていくという取組、不可欠であるというふうに考えております。公明党から頂戴をいたしました提言も、まさにそのような政府との思いと、認識と軌を一にするものであるというふうに思っております。
先日公表いたしました開発協力大綱案におきましても、個人の保護や能力強化といった人への投資に加えまして、様々な主体との連帯を重視する新しい時代の人間の安全保障を我が国のあらゆる開発協力に通底する指導理念と位置付けをしているところであります。
引き続き、御党を始め幅広い関係者の皆様の御意見を頂戴しながら、新しい時代にふさわしい開発協力大綱を作成してまいりたいと考えております。

○矢倉克夫君

副大臣、ちょっと更問いで恐縮ですけど、連帯を広げる上での決意を改めて伺いたいと思うんですけど、連帯というのはただ呼びかけるだけではなくて、やはり自己と他者、自国と他国というものの幸福が一致する領域を共通の利益とするというこの領域の広がり等、これが結局、他国のため働くということがまた自国の利益にもなるというこの実感にも広がってこそ、連帯というのは生まれてくると思います。それが世界を覆う分断のエネルギーに対する対抗軸にもなるというふうに私は理解しております、例えば気候変動などもそうでありますが。
改めて、この開発大綱に連帯を書き込むことは共通領域を広げるために日本が不断の努力をしていくということであるという決意であるというふうに理解もしておりますが、一言で結構ですので、副大臣の決意をいただければと思います。

○副大臣(武井俊輔君)

連帯ということの意味というのは、まさに今委員からもお話ございましたとおりでございますけれども、直近でも、例えば国連でも、二〇二一年六月からの国連人間の安全保障のフレンズ会合、これ四回開催をされているわけであります。また、二〇二二年、UNDPでもこういった同趣旨のものを発表しているわけでありまして、そういう意味でも、まさにこれは世界の中でも共通、思いを一にして取り組んでいるものでありまして、当然我々といたしましても、その思いを我が国としても更に進化、発展をさせていきたいと、そういう決意で臨んでまいりたいと思います。

○矢倉克夫君

是非、日本が主導して進化、発展いただければと思います。
そのODAでありますが、外交政策の重要なツールということでいろいろなところでも発信があるわけでありますが、改めてですが、ODAにより達成しようとする外交政策というのはどういうものであるか、政府にお伺いしたいと思います。

○政府参考人(遠藤和也君)

お答え申し上げます。
現在、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序が重大な挑戦にさらされているという状況にございます。複雑化する国際情勢と地球規模課題の深刻化の中で、多くの開発途上国は経済成長の減速、国内外の経済格差に見舞われていると。そうした中におきまして、我々の擁護する国際秩序が世界の人々の信頼に足るものであるために、気候変動、エネルギー、食料、保健、開発等のグローバルな諸課題への対応を主導していくという必要があろうかと思います。
こうした中で、今御指摘のとおりでございますけれども、ODAは外交の最も重要なツールの一つでございまして、その戦略的、効果的な活用によってSDGsの達成や自由で開かれたインド太平洋の理念の実現に向けた外交的取組を加速し、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の下で、平和で安定し繁栄した国際社会の形成に一層積極的に貢献するということと同時に、我が国と国民の平和と安全を確保し、経済成長を通じた更なる繁栄を実現するといった国益に貢献する、その双方の実現を追求してまいるという考えでございます。

○矢倉克夫君

繰り返しですけど、国際益と国益が両立し得る共通の領域というのが、先ほど言った連帯の基盤になるかと思います。そこをしっかり広げて、共に共存し合える関係なんだということを国際社会に発信する材料としても是非ODAを使っていただきたいと思います。
ちょっと済みません、一問飛ばしていただきまして、引き続きODAに関係しますが、総理が三月二十日にインド世界問題評議会、ICWAで演説されました。オファー型協力というのをこれは打ち出しをされていらっしゃいます。
副大臣にお伺いをしたいと思いますが、このオファーの具体的内容を決するに当たっての原理原則を確認するとともに、従来、要請主義というふうに言われております、この要請主義との関係性どう整理するか伺う、あわせまして、公明党の先ほど申し上げた提言では、このオファー型支援に当たって現地の持続可能性に配慮するように求めておりますが、こちらをどう捉えて今後の運用に反映されるのか、副大臣の受け止めをお伺いしたいと思います。

○副大臣(武井俊輔君)

我が国の開発協力は、開発途上国の経済社会開発を目的に、先ほど委員よりお話もございましたが、被援助国などからの要請に基づいて実施をしているところであります。
その上で、この新たな開発協力大綱の改定では、このような要請主義は維持しつつも、ODAとOOF等の様々なスキームを有機的に組み合わせ相乗効果を高めていくこと、そして、日本の強みを生かし、協力メニューを積極的に提示をするオファー型の協力を打ち出す考えであります。公明党からも、現地の持続可能性に配慮したオファー型の支援の推進を御提言をいただいているところでございます。ありがとうございます。
我が国といたしましても、この開発協力におきましては、開発途上国との対話と協働により相手国に合ったものを共につくり上げていくという姿勢を重視しているところであります。引き続き、能動的かつ戦略的な開発協力を進めてまいりたいと考えております。ありがとうございます。

○矢倉克夫君

オファーの原理については明確にはなかったんですけれども、ほかの答弁で反映されているというふうに理解もしましたが、対話と協調、大事であると思います。共に創るという共創というところで、やはり相手の自立性を高めていく支援というのが大事だというところで、我々も持続可能性と申し上げましたが、間違えても押し付けという形にならず、また、債務のわなに陥らせるようなことがないような、そこの対応はしっかりやっていただきたいというふうに思っておりますので、よろしくお願い申し上げます。
引き続いて、副大臣、恐縮ですが、また答弁求めたいと思いますが、三月二十七日の本会議における谷合正明議員のODA実績のGNI比〇・七%の達成に関する総理に対する質問で、総理は、官民協力など様々な形でODAを拡充するというふうにお述べになりました。この拡充には、民間資金のみならず、当然に国の予算も拡充含むと理解もしておりますが、政府、副大臣の見解を求めたいと思います。

○副大臣(武井俊輔君)

ODAの実績の対GNI比〇・七%というこの国際目標につきましては、開発協力大綱案におきましても、この目標を念頭に置くとともに、我が国の極めて厳しい財政状況も十分に踏まえつつ、様々な形でODAを拡充し、開発協力の実施基盤の強化のために必要な努力を行うという旨を記載しているところであります。この開発協力大綱案におきましては、官民連携の強化や積極的な提案に基づくオファー型協力を含む戦略性の一層の強化などが示されているところであります。
このような方針を踏まえまして、我が国の外交の最も重要なツールの一つであるODAの戦略的な活用を一層進めていくとともに、その具体的な拡充の在り方につきましては、引き続き、幅広い関係者の皆様の御意見を踏まえ、官民の資金を含め政府部内で検討してまいりたいと考えております。

○矢倉克夫君

官民協力、民のお金を増やすということ、そこで、じゃ、官がお金を増やす必要がないかというとそういうわけではないわけで、またちょっと一言だけ、その上で、国の予算としてこのODA予算をしっかり拡充していくという外務省としての決意を、副大臣、一言でお願いします。

○副大臣(武井俊輔君)

まさに委員が御指摘をいただいたとおり、もちろん官民の連携を深めていくわけですけれども、それは別に民に頼るということではなくて、共に協働していくということですので、その意味ではODAの予算というものも含めて、しっかり我々もこれからも拡充していくよう努力してまいりたいと思います。

○矢倉克夫君

その方向性はしっかり我々も支援をしていきたいと思います。
また、引き続いて、今々民間のお金というような話もありましたが、政府の方にお伺いしたいと思うんですけど、同じ総理のインドの演説で言及された民間資金動員型の支援、これどのようなものであるか。あわせて、公明党の提言でも、この支援により具体的な民間資金の呼び込みにつながるよう、民間資金の動向や投資運用に関する高い知見、見識が必要であると訴えたところであります。人材育成の点も含めてどのように備えるのか、政府にお伺いをいたします。

○政府参考人(遠藤和也君)

お答え申し上げます。
委員御指摘の演説におきましては、新たに民間資金動員型の無償資金協力の枠組みを導入するということについて総理から表明いただいたというところでございます。この支援は、途上国におきまして開発課題に取り組む現地のスタートアップを相手国政府の、相手国政府への無償資金協力と技術協力を通じて支援しつつ、民間資金を動員する新たな協力の枠組みとすることを考えておりまして、現在具体的な事業の形成に取り組んでいるというところでございます。
民間資金の動員やスタートアップへの支援には高度な知見、専門性を必要とするということから、委員御指摘の御提言も踏まえまして、JICAとも連携して事業の実施に必要な人材の確保や育成にも当たっていくという所存でございます。

○矢倉克夫君

官の資金がまた呼び水となって民間を呼ぶ、そこに引かれるぐらいの提案を官が出せるかというところも重要かと思いますので、人材育成も是非よろしくお願いを申し上げたいというふうに思います。
残りの時間で、またOSAに関係してちょっと御質問させていただきたいと思います。
昨年十二月の改定の国家安全保障戦略で、同志国の軍に対する支援の新たな枠組みについての打ち出しがありました。これは、政府は今般OSAとして概要を固めたというふうに理解もしております。
改めてでありますけど、このOSAとODAの違いについて伺いたいと思います。とともに、OSAではどのような支援を行うのか、政府からの答弁を求めたいと思います。

○政府参考人(石月英雄君)

お答え申し上げます。
我が国は、戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に置かれております。そのような中、力による一方的な現状変更を抑止して、特にインド太平洋地域における平和と安定を確保し、我が国にとって望ましい安全保障環境を創出するためには、我が国自身の防衛力の抜本的強化に加え、同志国の安全保障上の能力、抑止力を向上させることが不可欠でございます。
こうした観点から、OSAは、開発途上国の経済社会開発を主たる目的とするODAとは別に、同志国の安全保障上の能力、抑止力の強化を目的とする支援枠組みとして導入されたものでございます。ODAとは全くその意味で異なるものでございます。
OSAの支援内容につきましては、法の支配に基づく平和、安定、安全の確保のための能力向上に資する活動、人道目的の活動、国際平和協力活動等の国際紛争との直接の関連が想定し難く、本支援の目的の達成にとって意義のある分野に限定して、資機材の供与やインフラ整備等の支援を行う考えでございます。

○矢倉克夫君

他国への人道開発支援であるODAと違って、日本の抑止力を高めるための戦略的枠組みであるというふうに理解をいたしました。抑止力を高めるという目的の下での先ほどの支援内容である、当然その前提でしっかり支援内容を固めていくということを改めて強く求めていきたいというふうに思います。
その上で、今ほど目的と枠組みが違うという話がありましたが、その上で、OSAは、平和国家としての日本の歩みにいささかもそごがあってはいけない、そのような運用があってはいけないというところはもう論をまたないところであります。
副大臣に、改めて平和国家としての日本の歩みにそごがないような形でこのOSAどのように進めていくのか、答弁を求めたいと思います。

○副大臣(武井俊輔君)

ただいまの委員の御指摘は、まさに基本、最も重視していかなければいけないことであるというふうに考えております。
まさに今回のこのOSAでございますが、同志国の安全保障能力、抑止力の強化を目的としてこの支援行うわけでありますが、我が国が平和国家としての歩みを引き続き堅持しつつ、同志国の安全保障上のニーズに応えていくということがまさに大前提であります。それを踏まえまして、先般、そのための実施方針を定めたところであります。
実施方針におきましては、供与する資機材が防衛装備に当たるか否かを問わず、防衛装備移転三原則及び同運用指針の枠内で支援を行うこと、国際紛争との直接の関連が想定し難く、本支援の目的の達成にとって意義ある分野に限定して支援を実施すること、国連憲章の目的及び原則との整合性の確保等について定めているところでございます。
引き続き、先ほどの委員の御指摘をよく肝に銘じまして取り組んでまいりたいというふうに思います。

○矢倉克夫君

日本の抑止力向上のためにも重要であるということを一層強調いただくとともに、今おっしゃっていただいた平和国家としてのそごがないような動きというのを是非お願いしたいというふうに思います。
最後、またOSAの関係でありますが、OSA予算として二十億円が今年度予算に計上されております。今後、例えば補正予算編成の際に、これまでのODA予算を削ってOSAに充てるというようなことはあってはならないというふうに考えております。
これに対しての政府の所見をお伺いしたいというふうに思います。

○政府参考人(石月英雄君)

お答え申し上げます。
御指摘のとおり、ODAとOSAはその目的等が全く異なる支援枠組みでございます。外務省といたしましては、いずれの予算につきましても、その重要性に鑑み、プライオリティーの高いものと考えております。それぞれの支援の目的やニーズに応じ、適切に予算要求を行っていきたいと考えております。

○矢倉克夫君

OSAとODAもプライオリティー高いという位置付けの下で、今後もしっかり財務省にも予算折衝などをしていただきたいと思います。それについては改めて私たちもしっかり支援をしていきたい。
改めて、ODA予算については対GNI比〇・七%、これをしっかり求めて、私からの質問を終わらせていただきたいというふうに思います。
ありがとうございました。

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