2013-11-26
○矢倉克夫君
公明党の矢倉克夫です。
質問に入る前に、冒頭一言。前回の委員会で私学のいじめ問題、質問させていただきました。下村大臣また西川副大臣、大変に誠実に御回答いただきまして、早速相談者の方にお伝えをしましたら、国が対応してくれたということで感動をしてくださって、登校拒否になっていたお子さんも高校進学に向けて一生懸命勉強を頑張ると、今度私の国会事務所の方にも来たいというふうにおっしゃってくださっていました。一言、この前時間がなくて余り御礼できなかったんですが、御対応いただいてくれたことに対して、御礼とともに、より一層しっかりと御対応いただければと思いまして、冒頭、御挨拶させていただきました。ありがとうございます。
それでは質問に入らせていただきます。
所得制限を掛けることをいろいろ議論をされております。いろんな議論があるんですが、私は、今回の所得制限を掛けられたことに、法案の意義というのは、前提はやはり親の収入や格差によって教育を受ける権利を奪われかねない子供がいる、それを何とか救っていきたいという思いがありまして、ただ財源の問題もあり、どうしても子供の教育のために将来的に現役世代に負担を掛けるような国債増発等もなかなか難しい、限られた財源の中でどうすればいいかというやりくりの中で、やはり、高所得者の方には大変申し訳ないんですが、その御負担の下、社会全体で支えるという思いも込めて、この所得制限、決断をされたというふうに認識をしております。
通告とはちょっと若干順序が違うんですが、まず冒頭、大臣から、その所得制限を掛けられたことを、そしてそれを財源をどうやって生かしていくのか、その点を含めてちょっと御答弁いただければと思います。
○国務大臣(下村博文君)
御指摘のように、国の財源が豊かであれば、これは高校だけではありませんが、幼児教育の無償化含め、あるいは大学教育の公財政支出をすることによって、より負担を軽減することによって、どんな家庭の子供であっても、貧しい家庭の子供であっても、意欲と志があれば大学や大学院あるいは海外まで留学できる、そういうチャンス、可能性をつくっていくということは、この国の将来を考えた場合に大変重要なことだと思いますし、是非そういう方向性を目指していきたいというふうに思います。
ただ、高校においては、今の制度において、無償化前から授業料が全額免除されていた低所得者にとって恩恵がなかったこと、また私立高等学校の低所得世帯の生徒には授業料を中心に依然として大きな負担がある、こういう課題があり、低所得者世帯の生徒に対する一層の支援と、それからもう一つは、公私間の教育費格差の是正を図る、こういう必要があるというふうに考えているわけであります。
そこで今回の改正においては、文部科学省としては、所得制限によって捻出された財源を活用して、一つは、奨学のための給付金制度の創設、二つ目に、私立学校の就学支援金の加算の拡充、三つ目に、特定扶養控除の縮減により負担増となった特別支援学校や定時制、通信制高校の生徒の支援、これらを実施することによって現行制度の課題に対応してまいりたいと考えております。
○矢倉克夫君
ありがとうございます。
既に与党の政調会長同士も合意をされたその趣旨にのっとって、今回の所得制限で浮いた財源をしっかりと低所得者のまた子供に対しても振り向けていく非常に具体的なお話であると思います。
私自身も、実は小学校三年生のときに父が事業を立ち上げ、失敗もし、非常に借金がずっと続いた状態で、それでも自分の思いとして私立に行きたかった思いもあり、親に何とか頼み込んで授業料等も捻出してもらった、父親も働いたお金をそのまま予備校代に出してきて、生活費を消費者金融で賄ったりとか何かはありました。親が収入がなかなかない中でも、一生懸命学校に出してくれた親に対して感謝する思いとともに、私立に行った、授業料も高いのは当然なんですけど、例えば定期代を親に出してもらうというのが非常に心苦しくて、そのために毎回毎回お金をもらうのが大変申し訳ないなという思い、そういう思いもあって御飯をよく抜いたりとかして、そこで少しだけでも浮いていこうとか、そういうような思いもしたことを今改めて思い出しております。
先ほど大臣の方から、まず低所得者、これまで恩恵を受けなかったまさにその低所得者世帯に対しての奨学のための給付金というふうにおっしゃってくださいました。今申し上げましたとおり、教育費という点でなかなか授業料がすぐに浮かぶ部分もあるんですが、私、今手元にある文部科学省の子供の教育費調査という資料なんですけど、平成二十二年、ちょっと今日はお手元には配れなかったんですが、それを見ますと、例えば平成二十二年度で全日制の公立の高等学校教育全体で掛かるお金というのは、授業料ゼロという前提であっても、学校教育費で二十三万、年間ですけど、二十三万七千六百六十九円、修学旅行やまたPTAの会費その他が掛かると。また、学校外活動費でも十五万五千七百九十五円掛かる。私立になりますと更にそれ以上掛かるというような数値もあります。授業料という部分の負担とはまた別に、やはりそれ以外の部分での教育費の負担というのもそれぞれ低所得の家庭では大変な部分もあるので、それに対してしっかりと附帯をされるというのは非常に重要な点であるなと思います。
ただ、今回、法文では明文化されることはなかったと思うんですが、その辺りの経緯の御説明とともに、改めて具体的な制度について、御説明を大臣からいただければと思います。
○国務大臣(下村博文君)
私も小学校三年生のとき父が交通事故で亡くなりまして、それ以来母子家庭で、たまたま高校に入るときにあしなが育英会の前身である交通遺児育英会ができて、日本育英会、当時は給付型があったんですね。この日本育英会と交通遺児育英会の奨学金二つを貸与なり給付することができるので高校進学することができたと、そういう経緯がございます。
さて、委員が御指摘のとおり、今回、これは真に公助が必要な方々のための制度とするものでありまして、そういう意味で、現下の厳しい財政状況の下、低所得者支援や公私間格差を是正するための財源を捻出すべく所得制限を設けることにしたわけでございますが、この所得制限によって捻出された財源については、八月二十七日の与党間合意で、低所得者支援としての奨学のための給付金制度の創設、それから公私間格差是正としての就学支援金の加算拡充、また特定扶養控除縮減への対応等に充てるということを踏まえまして、文科省としてこれまでも財務省と調整を行ったところでございます。
今後の予算編成過程においては、当然、この与党間合意が守られるものであるというふうに確信をしておりますが、さらに、低所得者支援等の施策の実現に向けまして、先頭に立って努力をしてまいりたいと思います。
○矢倉克夫君
ありがとうございます。よろしくお願いいたします。
あと、公私間格差の是正という話もありました。なかなか、一般のイメージですと、私立に通う御家庭というのは高所得な方が多いんじゃないかと。私も、私立と公立の格差を是正する必要はないんじゃないかというようなお声も実は聞いている部分はあるんですが、今、手元ですと、例えば年収四百万未満の御家庭で公立の小学校に、小学校、中学校の話をまずしますが、公立の小学校に通っている御家庭は一六・三%、私立は二・九%、非常に差はある。公立の中学校は一四・四%、私立の中学校は二・八%。公立の高校になりますと一五・四%通うんですが、私立の高校も九・五%と。この数字から見ると、収入が低い御家庭でもやはり私立の高校に通わざるを得ない方がいらっしゃるということであると思います。
今回、具体的には、地方でもやはり公立の競争力が激しくて、収入が低くても私立に行かざるを得ない、高い授業料の私立に行かざるを得ないというような御家庭があるというような話もお伺いしておりますが、今回、公私間格差是正というふうに政策向けられている趣旨、背景というのはそういう辺りもあるというように理解しておりますが、いかがでございましょうか。西川副大臣、よろしくお願いします。
○副大臣(西川京子君)
先ほどから矢倉先生のお話を聞いていて、本当に、そういう中から頑張って国会議員になられたってすばらしいなと思いまして、頑張っていただきたいと思います。
おっしゃるとおり、実は、都市部においては富裕層があえて非常に難関校を目指すというような私立志向というのはあると思うんですが、地方においては本当に、むしろ所得が公立へ行っている子より低い家庭が結構あるというのは現実です。就学支援金制度においても、私立学校に通う生徒のうち二割程度が加算措置を受けている年収三百五十万未満程度の世帯であるということが分かっております。
そういう中で、御指摘のとおり、高所得者世帯の人たちが私立高校に行っているというのは、ある意味では地方においては当たらないと思いますので、私立学校への支援というのはしっかりしていかなければいけないと思っております。
○矢倉克夫君
ありがとうございます。是非よろしくお願いいたします。
先ほど大臣もおっしゃってくださいました今回の所得制限というのは、やはり真に公助を必要としている子供たちのための政策であると認識をしております。であるからこそ、浮いた財源は当然そちらに向けなければいけないわけでありまして、それに対しては、今後財務省とのいろいろ御折衝も、既になされていると思いますけど、重要な部分もあるかと思います。
もう一言大臣に、財務省との折衝も含めて御決意を御答弁いただければと思っております。
○国務大臣(下村博文君)
これは予算関連法案でございますので、財務省の立場からすると、予算編成の過程において現段階で明言できないということであるかもしれませんが、先ほどから答弁させていただいているように、与党間の政調会長合意について誠実に履行するということについては財務省は国会答弁でも述べておりますので、これは必ず、所得制限で捻出された財源は低所得者や公私間格差の是正等に使われるのは当然のことですし、またそれに向けて全力で対応してまいりたいと思います。
○矢倉克夫君
ありがとうございます。是非よろしくお願いいたします。
それで、具体的な法文にちょっと入らせていただきたいと思うんですが、今回出されている法案、制度設計としては、高校無償化という原則を一旦外した上で就学支援金を支給するという形になっていると思います。やはり、今まで無償化になっていた、今回の所得制限に入らなかった御家庭に対して、同じような状況をしっかり担保するというのは、法文上も、その就学支援金の額がこれまで無償とされていた月額授業料と同額であるということをしっかりと担保する必要はあるかと思っております。
法案の五条の三項なんですが、「第一項の支給限度額は、地方公共団体の設置する高等学校、中等教育学校の後期課程及び特別支援学校の高等部の授業料の月額その他の事情を勘案して定めるものとする。」、「その他」という文言がございます。この「その他」というのは、その前に書かれていた月額をマイナスする要因というふうには理解しておりませんが、その理解でよろしいでしょうか。
○政府参考人(前川喜平君)
先生御指摘のとおり、この法案の第五条第三項には「その他の事情」という文言が出てくるわけでございます。この就学支援金の支給限度額につきましては、現に公立の高等学校等で徴収される授業料の月額、その実態をまず勘案するということでございますけれども、それに加えて、その他の事情もあり得るだろうということで「その他の事情」という文言が入っているわけでございますけれども、これは決してその標準的な授業料額を下回るように支給限度額を設定するための規定ではございません。
現に、公立の高等学校と比べまして、定時制、通信制の高校におきましては私立の高等学校の授業料は高いわけでございますが、こういった事情を勘案するということでございまして、具体的には、現在、公立の定時制、通信制高校の授業料はそれぞれ月額二千七百円と五百二十円となっているわけでございますけれども、これをそのまま私立の定時制、通信制の支給限度額とするのはこれは問題があるということで、私立の定時制、通信制高校につきましては全日制と同じように月額九千九百円に上限を引き上げるということとされております。
このため、そのその他の事情を勘案するということが全国の標準的な授業料額を下回る額を設定するということに使うということは想定していないわけでございます。
○矢倉克夫君
ありがとうございます。明快な御答弁、ありがとうございました。
また、さらに、制度の内容に入りたいと思うんですが、与党の政調合意では所得制限の額として九百十万という金額が出ております。なかなか報道ではその九百十万という金額が先走りしているところもあるかもしれないんですが、合意の中でもこれは基準額として九百十万というふうに書かれている。
ただ、九百十万という額で仮にぴったり切ってしまうと、この教育費に掛かる負担の感覚というのも、お子さんが何人いらっしゃるかとか、そういうところで家庭ごとにいろいろ事情も違ってくる部分はあるかと思います。単純に所得だけで区切るということはいかがなものかというようなお声もあるんですが、その辺りに対してはどのような配慮をされているのか、御答弁いただければと思います。
○政府参考人(前川喜平君)
この所得制限に係る所得の把握につきましては、現行の就学支援金の低所得者加算における場合と同様に、市町村民税の所得割額を使用するということにしているわけでございます。この市町村民税所得割額は、これは控除の対象となる家族の構成が反映される形になるわけでございますので、教育費のかさむ高校生や大学生といった子供を持っている家庭につきましては、この市町村民税所得割額を使うことによりまして、その子供の数を含めた家族構成が勘案されるということになります。
例えば、夫婦片働きで高校生一人の家庭でありますと年収九百十万ということになるわけでございますけれども、これが高校生一人にプラスして大学生一人であるということでありますと九百六十二万円まで基準額が上がります。また、更に高校生二人、大学生一人という三人の子供を持っている家庭でありますと年収が一千万円というところまで基準額が上がると。これはいずれも市町村民税所得割額が三十万四千二百円なんでございますけれども、この家族構成が控除に反映されることによりまして、実際の年収額に引き直しますとこういった違いが出てくるということで、子供の多い家庭、特に教育費のかさむ子供の多い家庭にはそういった事情が反映されるという基準になっているわけでございます。
○矢倉克夫君
ありがとうございます。
あと、所得制限の関係でいいますと、やはり所得の判断の基準の在り方といいますか、先ほど来からも質問が出ていたので改めて確認なんですが、やはり前年度所得を参考に無償化適用があるか否かを判断されておられるということで、収入の激変などによって授業料負担が、前年は九百十万以上だったものが急に減って、本来であればその減った収入基準であれば無償化適用の場合にあるかもしれないんですけど、収入の激変によって、授業料を払わざるを得なくなっているというような状態が仮に起きた場合、それに対してどのような対処をされるのか、御答弁いただければと思います。
○政府参考人(前川喜平君)
御指摘のとおり、就学支援金の支給につきまして、所得制限等の基準、これの所得確認につきましては、前年度の市町村民税の所得割額、これを使うわけでございますけれども、その場合、当該年度において家計が急変したという場合に直ちに対応できない、こういう問題がございます。これは現在の私立高校への就学支援金の加算においても同じことが起こっているわけでございますけれども、こういったことにつきましては、私立高校につきましては、現在既に各都道府県の行っております家計急変への対策につきまして国としての補助をしているわけでございますが、この新しい制度を実施するに当たりましては、公立高校も含めまして家計急変への対策を取ってまいりたいと考えております。
具体的には、これは各都道府県がどのような判断をするかということでございますけれども、家計急変につきましては、失職やあるいは死亡あるいは病気といったことの事情を勘案いたしまして、収入が大幅に減ったということについて、それをカバーする緊急の措置というふうに理解しております。そういったものにつきまして国の補助をするという仕組みを設けることによりまして、急激な変化に対する対応をしてまいりたいというふうに考えております。
○矢倉克夫君
ありがとうございます。
今後、制度が動き出したときにやはりまた問題になり得るのは、収入の把握についての現場の事務負担がやはり増えるのではないかというような部分もあるかと思います。その辺りについてはどのように御対応されるのか、御答弁いただければと思います。
○政府参考人(前川喜平君)
この制度の改正によりまして、所得確認の事務など地方自治体での事務負担が増えるということは御指摘のとおりでございます。特に所得の把握に当たりまして、現行制度における就学支援金の加算あるいは都道府県が行う授業料減免措置の対象者の判断におきまして、多くの都道府県が採用しております保護者の市町村民税所得割額の合算額によって支給の有無、支給額を判断するということでございます。この市町村民税所得割額で判断するというのは、これは一律に三十万四千二百円という数字で判断するということでございますので、この所得の確認につきましては最も簡素で容易な方法であるというふうに考えております。
また、この事務の実施に係る経費につきましては、各地方公共団体の状況に応じまして、予算の範囲内で必要な支援を行ってまいりたいと考えております。
今後、学校現場や地方公共団体の御意見も十分お伺いしながら、可能な限り更なる手続の簡素化を検討してまいりたいと考えております。
○矢倉克夫君
ありがとうございます。
最後に、法案とは少し離れますが、幼児教育の無償化。
幼児教育の重要性は非常に、皆様御案内のとおりであります。また、幼児をお持ちの世帯の所得というのはやはり低いというふうに推定もされる部分もありますし、幼児教育、今後、小学校、中学校、高校ともう様々な教育費の負担というのが潜在的に増えるという、そういうようなお子さんを持っている御家庭に対してのやはり教育関係の無償化というのは非常に重要であるなと思っております。
与党もこの六月に無償化に関する関係閣僚・与党実務者連絡会議で基本方針を取りまとめて、五歳児を対象とした無償化を実現することを視野に置いて二十六年度から段階的に取り組むとしておりますが、財源確保への対応も含めて、今後の無償化への取組、決意について、下村大臣、最後によろしくお願いいたします。
○国務大臣(下村博文君)
御指摘のように、幼児教育は生涯にわたる人格形成の基礎を培う重要なものでありまして、特に先進諸国は、この幼児教育における投資というのはその人にとってだけでなくその社会、国にとっても大変な先行投資として社会発展に寄与する、そのための無償化ということを各国も進めているわけでございます。
委員が御指摘のように、今年の六月に幼児教育無償化に関する関係閣僚・与党実務者連絡会議におきまして今後の取組の基本方針が取りまとめられ、無償化に関する環境整備と財源確保を図りつつ、まずは五歳児を対象として無償化を実現することを視野に置いて平成二十六年度から段階的に取り組むこととされました。この基本方針を踏まえまして、先ほど説明申し上げましたが、幼稚園と保育所の負担の平準化を図る、こういう観点から、幼稚園の就園奨励費補助において低所得世帯、多子世帯の保護者負担について保育所と同様の軽減措置を行うということを決めまして、平成二十六年度の概算要求を今行っているところでございます。
引き続き、幼児教育の無償化に向けた取組を財源を確保しながら段階的に進めてまいりたいと思います。
○矢倉克夫君
ありがとうございました。よろしくお願いいたします。
以上で終わります。