「与党の責任」(下)

2013-12-23

特定秘密保護法については、「採決を急ぎすぎなのではないか」とのご意見を多くいただきます。
「強行採決」とご批判を受けた姿を、メディアを通じ、皆様に見せてしまったことは本当に残念ですし、反省すべきことだと思います。
その反省の上に立って、やはりお伝えしないといけないことは、「必要性の認められる法律」すら党略に使う野党、特に民主党の姿勢です。

衆議院段階までは順調にいっていたかに見えた法案の修正過程ですが、法案が参議院に送られてきて状況は一変しました。
野党との信頼関係をつくることができなかったことが大きな原因です。
特に民主党は、まるで、与党の「強行採決」を待っているかのようでした。
与党の1年生議員として実感したことは、特定秘密保護法のように、丁寧な説明を要する法律について、野党が最初から議論を戦わせることを放棄し、「強行採決」を演出することだけに戦略を集中すれば、それは高い確率で成功してしまうということです。

そもそも、この特定秘密保護法は、平成20年の第一次安倍内閣時に始まり、政権交代後の菅内閣や野田内閣なども政府の方針として公式に進めていました。
つまり民主党も、この法律の必要性を理解していたのです。
しかし、今国会での民主党、特に参議院の民主党の姿勢は、与党時代を忘れたかのようにただ反対だけの反対を繰り広げていました。
一番、不思議に感じることは、政府案に対する対案を民主党は作成していたはずなのに、特に参議院では、その対案をぶつけて審議し内容を明確にする姿勢など最初からなく、難癖をつけるような質問ばかりしてきたことです。
会期の最後のほうでは「与党は秘密に関する統一ルールが無かったというが、あったじゃないか、嘘つきだ」という質問ばかりを繰り返していました。

政府がいくら、「ルールはあったけれども政令であり、しかも網羅的でないので各省バラバラな運用だった。だから法律をつくるのだ」と答弁しても、「嘘をついた、立法の必要はない」の繰り返しです。
大声をはりあげる野党議員の姿だけが報道でながれ、それでイメージはつくられていきます。
およそ、与党時代に法律の必要性を検討していた党の質問とは思えません。

会期終盤に行われた地方公聴会について、民主党などは、「突然、地方公聴会を決めて勝手に進めるなど、強行採決へのアリバイ作りに過ぎず認められない」と批判しましたが、地方公聴会をやるように要請していたのは言うまでもなく民主党と、その他の野党です。
野党こそが求めていた公聴会ですが、与党は忘年会シーズンで難しい中、会場確保に奔走し、ようやく12月2日に設定することができました。
その日にすぐ民主党理事に伝え、民主党側は了承したにも関わらず、翌日になって「こんな横暴は許せない。こんな急に人は呼べない」とテレビの前で態度を変えてまくし立ててきました。
ここから結局は、どなたを呼ぶかもあらかじめ何の準備もしておらず、ただ「公聴会を開け」と叫んでいたことが明らかになったと思います。

この法律に対する民主党の姿勢を象徴的に示したのは、最後の本会議での民主党議員の動きです。
本会議での法案審議に入ったら、いきなり民主党議員は全員退席します。
あとから聞くと、退席をすることで「強行採決だ」という印象を与えようとしたとのことですが、その結果、法案に対する反対討論をする貴重な機会を自ら放棄することとなりました。
反対討論をして国民に訴えるよりも、退席をして、強行採決を印象づけるパフォーマンスを選んだ訳です。

その後、民主党内からも、このやり方に対して異論がでたため、一度退席した本会議場に、民主党の全議員がまた戻ってきました。
しかし、突然退席して議事を混乱したことには何ら言及しないまま、今度は採決方法をめぐって議論を提起し、時間稼ぎをするなど、本当に誠実さを欠く姿勢でした。
どこまで本気でこの問題に向き合っているのだろうと、憤りすら感じました。
隣の共産党の人も「まとまりがない党なら、解散しろ」と野次をいれていました。他の野党にも失礼だと思いました。
最大野党として民主党は、最初からまじめに議論する気などなく、「強行採決の横暴のなか、必死に抵抗した自分たち」という姿をいかに残すか、それだけを考えていたと思います。

余談ですが、民主党は、この臨時国会において、福島の方々の損害賠償請求権の時効期間を延長する法案についても委員会を欠席し、採決も棄権しました。
当初、この法律について賛成の意思を表明していたにも関わらずです。

話を特定秘密保護法に戻します。
もとより、この法律は早く通す必要がありました。
一番の理由は、緊迫した東アジア情勢です。
昨今、話題となりました、中国の「防空識別圏」設定の問題はこの事情を端的に示しています。
仮に、日本の航空自衛隊も出てこざるをえなくなると、一歩間違えれば戦争にもなりかねません。
また北朝鮮の動きも緊迫しています。
ナンバー2が処刑され、政権内部でこれまでにない大きな動きが起きています。
ひょっとしたら、今後の政権維持に影響がでてくるかもしれませんし、軍部が暴発して日本に被害がおよぶ可能性も否定できません。
こうした諸外国の重要な情報を収集する必要があります。

特に民主党の方々は、こういう事情があることをよく知りながら、無駄に時間だけをかけ、あまり実りのない質問ばかりを繰り返し、時間切れを狙って廃案に追い込もうとしました。
およそ政権を担ったことのある政党の姿ではありませんでした。

みんなの党の動きも不可解でした。
衆議院では修正協議に応じていたのに、参議院では、まるで違う党のようでした。
結局、参議院で主に議論を主導していた議員の方々は、その後、離党をします。
党内の勢力争いが、みんなの党における「衆参ねじれ」となり、この法案での対応の違いになったのかもしれません。

参議院での議論は日を追うごとに混乱の度合いを増しました。
「継続審議にして、次回国会にまわすべきだったのでは」とのお声もありますが、民主党などはどこまでも強行に廃案を求め、建設的な議論となりません。
法案に対する明確な質問もしないで、テレビを前にドタバタをみせることだけを目的に動く野党、特に民主党の動きをみていると、継続審議にしても、議論が正常にもどるのは絶望的に思えました。

結果、採決か、継続審議とするかの判断を迫られた与党は、最終的に法律の必要性を考慮し、採決することを決定しました。
混乱した姿をお見せしたことは、本当に申し訳なく思います。
現場にいた人間の感覚として、事実は、与党が数で押し切ったのではなく、野党の「強行採決」を演出する戦略に与党が押し切られた格好です。
しかし、円滑な議事ができなかったことは、与党としてお詫びをしなければいけないと、私は思います。

また、「第三者委員会」の内容など、これから決めることが多すぎて、そんななか法律をつくっていいのか、というお声もあります。
たしかに、今後の宿題はまだまだ多いです。
それでも、情報漏洩を防止し、秘密に関するルールの枠組みをつくることがまず大事であると考えます。

今回の修正をへて、秘密管理や情報漏洩防止について制度の大枠は出来ました。今後は詳細な制度設計の段階となります。
多くの意見を集約し、結論をだしていく政治の世界において、詳細な制度設計が決まるまで「何も決められない」「大枠すら決められない」ということを繰り返していたら、結局、何も進みません。
これは、国会にはいり、私が実感したことでもあります。

繰り返しになりますが、この法律はあくまで出発点です。
この法律がしっかりと機能し、秘密の無限定な拡大を抑え、情報の漏洩を防止する枠組みをつくるための詳細な制度をつくることがこれからの課題となります。
しっかりと議論し、結果を出してまいります。

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