軽減税率の議論を振り返り(その3)

2015-12-24

矢倉かつおです。

引き続き軽減税率についてお送りします。

よくあるご意見のうち二つ目は、「軽減税率は、財政再建に反する」という一方的なご批判です。軽減税率導入により、1兆円規模の減税となるわけですが、1兆円分の税収減は、国の財政を危うくするというご意見です。

これはおかしな議論です。まるで、軽減税率は、せっかく確保した消費税収を減らすものでけしからん、という風に聞こえます。

しかし、「軽減税率なくして消費増税なし」です。「現在の生活への不安」を軽減する軽減税率があってこそ、税率1%毎平均で約2兆円もの消費税収増(当初の5%から考えると約10兆円もの税収増)が望めます。軽減税率=税収減と単純に捉えるだけの見解は、税をあげることに対する国民理解を得るうえで、軽減税率が果たす役割を見過ごしたものです。

しかも、軽減税率は消費増税による消費の冷え込みをおさえ、景気対策にもなる政策です。軽減税率がない場合に比べ軽減税率により1兆円の負担軽減になった場合の効果につき、個人消費を0.18%押し上げ、実質GDPも0.09%押し上げるという試算もあります。景気の押し上げは、税収増にもつながるものです。

最後、三つ目は、「与党は、軽減税率の財源捻出のため社会保障費の削減をするつもりであり、福祉切り捨て、本末転倒だ」との意見です。

これは、事実に反する議論です。そのようなことはありません。

この「与党による『軽減税率財源捻出のための社会保障費の削減』」の例として、医療、介護、保育などの自己負担総額に上限を設ける「総合合算制度」の取りやめ、がよく報道されるようです。

しかし、「総合合算制度」の見送りであり、廃止するといった議論は、現時点で私の認識する限り、ありません。

「総合合算制度」には個人の所得等の把握が不可欠ですが、そのために必要なマイナンバー制度の普及が未完成であり、したがって「総合合算制度」はその実施を見送るという意見はあります。その見送りで浮いた財源(4000億円)をどう使うか、という議論はあると理解しています。ひょっとしたら、その議論が『軽減税率財源捻出のための社会保障費の削減』と誤解されているのかもしれません。

ちなみに、「軽減税率の財源捻出には社会保障費の削減しかない」といった意見を当然の前提であるかのように主張される向きもありますが、何ら合理性のない意見です。

この議論は、主に霞ヶ関から、軽減税率の対象品目の絞りこみをかけるという目的をもって意図的に生まれたものです。「削減できる社会保障費は限られている」から「軽減税率の対象は限定的だ」といったことを言うための巧妙な議論でした。

ある人は、この意見を評し、「まるで、高齢者はシルバーシートにしか座ってはいけないと主張し、シルバーシートのなかでのいす取り合戦を強いているかのような違和感がある。」と仰っていました。

軽減税率の財源は、社会保障の削減ではなく、国の政策全体を検討し削減すべき歳出はないか幅広く英知を結集し検討すべきものです。軽減税率導入の時期は、再来年の4月(消費税10%と同時に)です。与党の責任をもって、しっかり財源は議論していきたいと思います。

以上、軽減税率に関する誤解三点ほどにつき意見を述べました。

軽減税率をめぐっては、いろいろな思惑で様々な議論がなされています。なかには、わざと誤解を招くよう誘導しているものも見られるのが現状です。

しかし、軽減税率は、消費税を含めた社会保障の基盤制度に対し、将来にわたって国民理解を得るために不可欠な制度であることは間違いありません。冒頭、申し上げたように、「将来への不安」と「現在の不安」にバランスよく配慮するための制度の枠である軽減税率を、公明党は、責任と覚悟をもって推し進めさせていただきます。

どうか引き続きのご意見を是非宜しくお願い申し上げます。

*年内最後のメルマガとなります。

本年、様々お世話になり、本当にありがとうございました!!

明年、大飛躍の年にいたします。

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