2016-05-24
○矢倉克夫君
おはようございます。
今日は、裁判所職員定員法、一部を改正する法律案の質疑でございます。私からは、主に裁判所の方にお尋ねをしたいと思います。
先日の大臣の趣旨説明で、今回の法案の説明、内容をるるいただいたわけですが、まず裁判所書記官等を四十人増員する、この内訳は、事前にお伺いしている限り、書記官については三十九名で事務官については一名という内訳であると理解しております。昨年と同じ数値であるわけですけど、まず、書記官について三十九名増員ということですが、一般的にこの書記官というものの仕事をどのような意義として捉えられているのか、そしてまた、今回の増員の背景について最高裁の方から御答弁いただきたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(中村愼君)
お答えいたします。
書記官の活用についてのお尋ねということでございます。
まず、裁判所書記官という職種は、法律の高度な専門職種といたしまして裁判手続を公証する事務のほか、裁判官と連携、協働して裁判手続を行っていくということで、その手続進行において極めて重要な役割を果たす職種だというふうに考えております。
最近の事件動向からいたしますと、家庭事件については成年後見事件が累積的に増加しております。民事訴訟事件については、事件数は昨年に比べてやや増加という程度でございますが、事件の複雑困難化が進んでいることから、これらの分野についての充実強化が重要であるというふうに考えておりまして、裁判所書記官についてはこの二つの分野を中心に活用することを考えております。
もう少し具体的に御説明申し上げますと、成年後見関係事件については、後見関係事件の増加に伴いまして近年後見人等による横領等の不正事案が増加しているということから、裁判所による後見事務の監督を大幅に強化するために、各手続段階における後見人等の提出書類の一次審査や事件関係者に制度を理解するための説明を行うといった役割を果たしていくということになりますし、民事訴訟事件につきましては、審理の充実促進を図るために、事件に適した解決方法を選択するための必要な情報収集、裁判所から訴訟関係人への求釈明事項の伝達、準備書面や基本的な書証提出に係る期限管理を行うといった役割を果たしていくということになると考えております。
○矢倉克夫君
今御説明いただいた、主に家事と民事に両方説明があったわけですけど、とりわけやはり家事の分野、成年後見、非常に増えているという背景はあると思います。
成年後見に関しての裁判所の関与は、後見開始と、あと後見監督処分と、そして報酬決定という部分だと思いますけど、とりわけ監督処分については、今も指摘があった後見人の濫用の部分もそうですけど、後見人等の申請書をチェックする作業はこれ書記官がやるわけですし、その後、裁判官からいろいろな事前調整なども指示も受けて実際現場の関係者の方と調整するのもこれは書記官であると。
特に後見制度というのは、開始などはそれぞれ開始したその開始手続をやれば終わりなんですけど、監督処分に関しては、過去に開始したものが定期的にこれは監督していくわけですから自然的に累積をしていく、時間がたてばたつほど数は非常に増えていき、書記官の負担というものもやはり多くなってくるという背景はあると思います。そういう意味でも、書記官の方を増やしていくという方向性は、私はこれは妥当であるかなと思っております。
これは要望なんですけど、今後の体制について、家事について更に書記官を増やしていくということでありますけど、やはり大規模庁のところなどは後見の専門の分野、部門などもつくっているところはあると思います。今後はまた地方にもそういった分野もしっかりとつくっていき、それにちゃんと対応するような書記官の対応というのもこれはしていく、特に地域の方が更に成年後見の事案で複雑な部分も出てきたりとかする部分もありますので、そういったことを体制的にもすることで現場の市民の方と書記官の交流もまた更によくしていき、ノウハウの共有などにも是非つなげていっていただきたいというふうに、御要望だけさせていただきたいというふうに思います。
じゃ、続いて事務官の方なんですが、こちらは一名のみということで、国家公務員の女性活躍とワーク・ライフ・バランス推進のために一名ということですけど、この一名増やすということの効果について、端的にまた最高裁からお答えいただければと思います。
○最高裁判所長官代理者(中村愼君)
この裁判所事務官の増員の関係につきましては、今御指摘になりましたように、女性活躍とワーク・ライフ・バランス推進のためという定員上の措置でございまして、平成二十七年から本省に当たる最高裁において開始したばかりの措置でございます。
そういうことで、育児等の事情を持つ職員が一つの庁に固まっているわけではなく全国各庁で勤務しているということから、全ての庁で一人前以上の勤務時間ということになるわけではないというようなこと、また、職務の特性及び組織の特殊性を踏まえて考えていく必要があるということから、平成二十八年度についての要求というか増員は一ということにしたわけでございますが、この定員措置の拡大については更に検討してまいりたいということを考えております。
効果ということを御指摘になりました。本定員上の効果につきましては、例えば、育児のための制度の利用に支障が生じていないか、当該部署の事務処理が円滑に行われているかどうか、超過勤務が増加していないか等の観点から分析をしているところでございますが、これまでのところ、育児時間を積極的に利用しながら勤務時間内に円滑に事務処理が行われておりまして、仕事と育児の両立を図ることが可能になっているというふうに認識しているところでございます。
今後も、このような点を注視しながら、裁判所職員が育児等のために制度をためらいなく利用し、その上で活躍できるような職場環境の整備等を進めてまいりたいと考えている次第でございます。
○矢倉克夫君
試験的にということですけど、本来の趣旨に沿った形での更なる制度の拡充を是非お願いもしたいと。
それを踏まえて、女性の活躍とワーク・ライフ・バランスの推進ということですけど、最高裁として今は一名の事務官増員ということ、これは効果も、また試験的でもあるし、一部限定的なところもあるかもしれませんが、今言ったような目的に基づいたわけですけど、もっと大きな視点で全体としてどのような政策を取られているのか、またこれも最高裁からお答えいただきたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(堀田眞哉君)
お答え申し上げます。
裁判所におきましては、これまでも女性の活躍、とりわけ女性職員の登用拡大や職員のワーク・ライフ・バランスの推進に取り組んできておりまして、この三月にはいわゆる女性活躍推進法に基づいて特定事業主行動計画を策定したところでございます。これからも、女性職員の登用拡大や職員のワーク・ライフ・バランスの推進に向けて、職場での仕事の進め方の見直しや職員の意識の改革、男性職員による育児休業取得の促進を始めといたします仕事と家庭生活の両立に向けた支援や環境整備、女性職員に対する職務経験の付与等に取り組んでまいりたいと考えているところでございます。
○矢倉克夫君
特に、統計上、裁判所の方は男性職員の育児休業が通常の企業よりも取っていらっしゃる割合が高いということも私、統計目にしたこともあります。そのようなことも更に推進して、是非モデル的な部分を示せるような取組をしていただきたいと思います。
もう一点だけ。他方で、技能労務職員、これ削減されているわけですけど、主に守衛さんであるとか、そういう方が削減をされるというふうにもお伺いもしております、また清掃の方であるとか。特にこの守衛さんの関係ですと、やはりテロの脅威部分、守るべきところはしっかり守る、そのようなことが穴が空かないような形での対応というのは別途どのようにされているのか、御答弁をいただきたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(中村愼君)
技能労務職員の定員の削減につきましては、委員から御指摘のあった職種について行っているところでございますが、定年等の退職に際しまして、裁判所の事務への支障の有無ということを考慮しつつ外注化による合理化等が可能かを判断し、後任を不補充とした上で、その後問題が発生していない状況が継続しているということが確認できた場合に定員の削減を行っているところでございます。
司法行政事務の合理化、効率化ということは、裁判事務への支障の有無を慎重に検討する必要があるということから、際限なしに事務の合理化や効率化を行うことができるわけではないというふうに考えております。こうした観点も踏まえつつ技能労務職員の削減を行っているということでございますが、現時点で業務の支障は生じていないというふうに思っております。
先ほど守衛のところの御指摘がございました。裁判所においては様々な利害が対立する事件を日常的に取り扱っているところでございまして、そのような中で適切な裁判を実現していくためには、来庁される国民が安全かつ安心して裁判所を利用できるようにするため、庁舎内の安全を確保するということが重要な責務の一つというふうに考えているところでございます。
この点、法廷内におきましては、裁判所職員が訴訟指揮の下に対応したり、警備側に配慮すべき場合は警察官への派遣要請を行うなどして対応しているところでございますが、裁判が公開されているという観点で誰でも入庁できるという建物である反面、警備の必要性も高まっていくということを踏まえまして、警備に支障がないよう万全を尽くしてまいりたいと考えている次第でございます。
○矢倉克夫君
よろしくお願いいたします。
じゃ、次は裁判官なんですけれども、裁判官も今回増員ということですけれども、民事は事件としてはこれ減少傾向ですね。平成二十一年は訴訟二十四万件だったのが平成二十六年は十五万件、このような形で減っているわけですけれども、減っているのに増員するこの理由というものを、こちらも最高裁からお答えいただきたいと思います。
○最高裁判所長官代理者(中村愼君)
二十二年以降、民事事件の事件数が減っていることは御指摘のとおりでございますが、これは比較的短期間に終了していた過払い金返還請求事件の減少によるところが大きいところでございます。
他方、その過払い金請求事件を除く民事訴訟事件は、内容が複雑困難化しているとともに、その対立が激化しているところでございまして、持ち込まれる事件は社会経済活動の複雑化、多様化ということを反映して、まさにそれが訴訟の形で現れているというふうに考えております。建築関係事件、医事関係事件、労働関係事件などの専門的な訴訟や非典型的な損害賠償事件は平成十九年から平成二十七年までの間に約一万件増加しているところでございまして、これらの平均審理期間はほぼ一貫して一年を超えているところでございます。
こうした複雑困難化した訴訟に対応して裁判所が判断するということは、社会や経済活動への大きな影響を及ぼし得るものということを考えておりまして、この種の事件について適正かつ迅速に判断していくためには、様々な経験、知見を有する三人の裁判官が合議体によって充実した審理を実現する体制を整えていかなければならないというふうに考えているところでございまして、以上のようなことから、今の事件動向を踏まえましても判事の増員が必要であると考えている次第でございます。
○矢倉克夫君
過払いは、私の理解ですけれども、過払いですと審理期間はある程度短いかもしれないけれども、複雑化していくものはそれだけ長くなる部分での負担もあると思います。今少しお話のあった合議制という形でおっしゃっていた部分は、過払い等であれば単独で済んだものが、複雑になるとやはり裁判官三人で合議でというところも出てくる、そういった背景があるのかなというふうに今答弁聞きながら理解をさせていただきました。
あともう一つは、やはり数字上で出るのは、家事事件が増えている。平成二十年では五十九万ほどであったのが平成二十七年では七十八万という形、これは審判事件でですけど、そういったことの対応ということで裁判官を増員ということだと思いますが、家事事件における裁判官の役割というものをどのように御認識をされているのか、また最高裁から答弁いただければと思います。
○最高裁判所長官代理者(村田斉志君)
お答え申し上げます。
家事事件には、今事件数について委員からお話のございました裁判官が審判という形で判断を示す家事審判事件と、それから、それとは別に、裁判官が調停委員とともに当事者による紛争の自主的な解決として話合いによる解決を図る家事調停事件、この二つが大きく分けますとございます。近時の事件動向を踏まえますと、いずれにつきましても裁判官の役割はより一層重要なものになってきているというふうに考えております。
まず、家事審判事件でございますけれども、近年、お話にございましたとおり、成年後見関係事件を中心に事件数が増加してきております。このように増加しております家事審判事件を適正かつ迅速に処理するためには、裁判官が事案に応じて関係機関との連絡調整等も行いつつ、必要十分な審理を行って速やかに判断を示すということが求められていて、これこそが裁判官の役割であろうというふうに承知をしております。
また、もう一方の家事調停事件についてでございますけれども、近年は、離婚した両親の間で子供の引渡しを求めたりですとか面会交流を求めるといった対立の激しい子供の監護をめぐるような調停事件が増加をしております。
このような対立の激しい事件に適切に対応して家庭裁判所の紛争解決機能を強化して国民の期待に応えていくというためには、裁判官が、対立している当事者双方に対して、法的観点を踏まえつつも紛争の実情を的確に把握して、解決の方向性を示すことによって当事者が建設的な話合いができるようにこれを促していくということが重要であると承知しておりまして、このような役割を裁判官が担っているというふうに認識しております。
また、このような子供の監護をめぐる紛争につきましては、子供の意思を確認したりですとか監護状況等を的確に把握するといった必要性がございますが、調停手続の主宰者であります裁判官が、調停委員、裁判所書記官、家庭裁判所調査官といった調停手続に関係する職種をどのように活用するのが効果的なのかということについて的確に判断をした上で、職種間の連携を適切に図りながら調停手続を進めることが必要であると承知しておりまして、これも重要な役割であるというふうに認識をしております。
以上のように、近時の事件動向を踏まえますと、家事事件における裁判官の役割はより一層重要なものになっていると考えております。最高裁判所といたしましては、家庭裁判所の裁判官がその役割を十分に発揮できるよう、引き続き十分な支援をしてまいりたいと考えておるところでございます。
○矢倉克夫君
裁判官が、出された双方の主張を見て決定するだけではなくて、やはりいろんな調整もしなければいけない、意見の調整もある。今、子供の件でおっしゃっていたとおり、当事者だけの話ではなくて、やはり子供にとってどうかというような観点が家事はとりわけ強い。そうすると、後見的な観点からのやはり感覚というものも持った形での多様な役割というのをこれ担っているんだということであると思います。
特に判事の方々に対しては、いろんな法律の解釈という部分でも知見もある方である。私個人としては、そういった知見を、また役所の方の仕事とかにも出向で入っていったりとか、国際機関の方で、私も一時期専門にしたWTOの関係とかでもしっかり上級委員として入っていただいたりとか、そういうことも含めて是非可能性も広げていただきたいと思います。
最後、一点だけちょっと法曹人口について簡単にお答えいただきたいんですけど、裁判官については今お伝えしたとおりであるんですけど、やっぱり法曹人口がどんどん増えていき、増えていきというか、修習生としての形のものが増えていく。その方々の能力を、今の判事という部分と含めてですけど、判事、検事だけではやはり拾い切れず、弁護士事務所にも就職もできないという人がいる。そういう方々についての能力開発、生かし方をどのように考えていらっしゃるのかお答えをいただいて、質問を終わりたいと思います。
○政府参考人(萩本修君)
法曹あるいは法曹の資格を有する者が、裁判関係だけではなく、今委員御指摘のとおり、社会の様々な分野、国の機関、地方自治体、企業、さらには国際機関など国際的な分野などで活躍することは、その法的素養が内外の社会経済活動の様々な場面で発揮され、社会の法的需要に十分に応えることになるという意味で重要であると認識しております。
また、現在、法曹志望者数の減少に歯止めが掛からず、その回復が喫緊の課題となっている中で、法曹の活動領域の拡大に伴って法曹という職業がより魅力的なものとなれば多くの有為な人材が再び法曹の世界を目指すことにもつながり得る、そういう意味でも非常に重要であると考えているところでございます。
このような認識の下、法務省では、法曹有資格者の活動領域の拡大に関する有識者懇談会等を通じてその活動領域の拡大を図る方策を検討するとともに、試行的な取組を行ってまいりました。昨年六月の法曹養成制度改革推進会議決定におきましても、こうした取組を継続することが必要とされたところでございます。
この決定を踏まえまして、法務省では、文部科学省とともに必要な連絡協議等を行うための連絡協議会を開催しておりますが、本年三月には、多くの関係機関や団体、国の機関ですと内閣人事局や人事院、地方自治体関係ですと全国知事会、全国市長会、全国町村会、企業の関係ですと日本経済団体連合会、経済同友会などなど、多くの関係機関、団体にも出席していただいた上で、この法曹有資格者の活動領域の拡大を議題として連絡協議会を開催いたしました。その上で、現在の取組の状況や今後の取組に向けた意見交換を行ったところでございます。
法務省としましては、引き続き、社会の様々な分野において法曹有資格者を活用しようという動きが加速されるよう、関係機関、団体の協力を引き続き得まして、必要な役割を果たしてまいりたいと考えております。
○矢倉克夫君
是非、社会に有益な人材の力を生かすということを目標をしっかり定めて、引き続きよろしくお願いいたします。
以上で終わります。