2017-09-21
矢倉かつおです。
一昨日、昨日に引き続き、農林水産大臣政務官としての1年間を振り返りつつ、農業を夢のあるものとし、日本の食を守るため必要なことをお伝えします。これが最後です。
三つ目ですが、生産者の協同であり、その要(かなめ)たる農協への期待です。
模範的な農業としてよくオランダが例に挙げられます。九州ほどの面積で、輸出額は世界二位というのはすごいと。
ただ実は、日本が参考にすべきオランダ農業の本当のすごさは、EU統合による競争激化という危機に対処するため、生産者が連携、団結をし、協同した点です。輸出はその結果に過ぎません。
具体的には、ザ・グリナリーという生産者組合をつくり、配送やパッケージ、商品開発なども一貫して行いながら、巨大な小売業者との価格交渉を有利に進めました。
さらには、民間の農業コンサルタントと契約をし、生産者への技術指導を行うだけでなく、大学や企業とも連携をし、高度化・複雑化する農業生産技術の進歩に対応するなど、どこまでも徹底して生産者のための活動を行いました。
農業を夢あるものとするための大前提は、生産者の所得向上です。そのため必要なものはまさに、このオランダのような、生産者協同のための組織活動だ、それが私の1年間の結論の一つです。
では、それを担うのは誰か。その有力な一つに農協があると、私は思います。
北海道を訪れたとき、地元の農協の姿に感動しました。
組合長は80歳を超えていらっしゃいますが、ますます意気軒昂です。
野菜栽培に不利だった地で、一体何をつくるべきか。農協が主導し「長いも」と決め、生産者の品質向上への努力が高まるよう販売方法などにも工夫をこらすとともに、農業機械会社や関係機関と連携しながら、機械の改良も行いました。
また、海外で求められる長いもとは何か調査をし、アメリカや台湾などに販路を拡大するとともに、隣接する農協などと連携し一大産地を作り、安定した供給を確保しました。
次の手は、夢ある農業のためにも、「宇宙食の原料を提案する」ことです。
この組合長が抱く「どこまでの生産者のために」との思いこそ、農業を支える力だと感動しました。
農協改革の議論のなか、農協がなくなれば農業はよくなる、といった意見を言う方までいるのですが、私はそうは思いません。むしろ、いまほど、農協の力が求められているときはないのです。
農協は国民の期待をうけ、是非、自己改革の徹底を進めていただきたい、生産者協同の組織として原点にかえり発展する農協こそ、農家の所得向上のため必要だと確信しています。
三日間かけて三つお伝えしました。連日、長文のメールで申し訳ありません。これだけでは収まらない思いが実はあります。農業だけでなく林業や水産業についても学び、感じたことは多くあります。それは、別の機会があればそのときにでもお伝えします。
振り返り、この1年間は、農林水産省で働く素晴らしい方々と過ごした、本当に貴重な時間でした。
退任後も、私との1年間を懐かしがってくれる方もいます。ありがたいです。
農林水産行政に関わった経験を活かし、これからも未来に残すべき農業の伝統を守ります。