196回 経済産業委員会

2018-06-19

○矢倉克夫君
 公明党の矢倉克夫です。大臣以下、皆様よろしくお願いいたします。
今日は法案審査、法案質疑ということであります。
ちょっと質問に入る前に要望でありますが、昨日、大阪中心に大地震が発生をいたしました。本当に甚大な被害でございます。経産省といたしましては、これからライフラインの復旧などもございます。とりわけエネルギーの関係であるとか是非御尽力をいただきたいという点をお願い申し上げるとともに、この震災で被害に遭った企業、とりわけ中小企業の支援等も含めて、大臣を先頭に是非陣頭指揮を執っていただいて、よろしくお願い申し上げます。これは、まずは御要望を申し上げたいというふうに思います。
その上で、今日は二十分お時間をいただきました。オゾン層、これはモントリオール議定書の改正を踏まえた今回の法改正であります。それについて、法の趣旨とともに、この国際的な義務を、履行を含めて日本がどのように世界に貢献していくのかという観点も踏まえて、何点か御質問をさせていただきたいというふうに思います。
まず、今回のオゾン層の改正法案の目的なんですが、これ従来はオゾン層を破壊する特定フロンを規制しておりましたが、今回の改正法案では、オゾン層を破壊しませんが地球温暖化に悪影響を与える代替フロンについて新たに規制対象に加えている法案であります。すなわち、これまでの法案の趣旨がオゾン層の保護であったのを、これ代替フロンを規制するというのは地球温暖化の防止にあるという点で、従来の目的から法目的が広がるというふうに理解もできるところであります。
それについて、代替フロンを新たに規制対象とするに当たりまして、目的規定にオゾン層の保護を図るに当たり気候に及ぼす潜在的な影響に配慮することが追加されておりますが、改めて、このように目的規定を改正した趣旨をまずは御質問したいというふうに思います。

○政府参考人(多田明弘君)
 お答え申し上げます。
これまでモントリオール議定書におきましては、オゾン層の保護を目的といたしまして、オゾン層を破壊する物質である特定フロン、これの生産、消費を規制してきたところでございます。これによりまして特定フロンから代替フロンへの転換を図ってきた、こういうことでございます。
しかしながら、その代替フロン、これがオゾン層は破壊しないものの高い温室効果を有して地球温暖化に影響を与えると、こういうことから、一昨年の十月に、モントリオール議定書の前文に規定されております気候に及ぼす潜在的な影響に配慮するという趣旨を踏まえまして代替フロンを規制対象に加えることが国際的に合意されまして、締約国の全会一致により採択されたというのが今回のモントリオール議定書の改正、いわゆるキガリ改正でございます。
このような議定書改正の趣旨及び経緯を踏まえまして、この条約の国内担保法でございますオゾン層保護法におきましても、代替フロンを規制対象に加えるに当たりまして、オゾン層の保護を図る上で気候に及ぼす潜在的な影響に配慮するということを明らかにするための目的規定の改正を行うこととしたものであります。
逆に申し上げますと、今回この目的改正を行いませんと、オゾン層保護の観点からは特に問題のない代替フロン、実際にこれまでは特定フロンの転換先であったものでございますが、これをこの法律の枠組みの中で規制対象とすることは法制的に困難と、こういうことで、この認識に立って今回の改正をお願いしている次第でございます。

○矢倉克夫君
 分かりました。目的は非常によく、明確になったところであります。
簡単で結構ですので、この代替フロンが高い温室効果を有するということを少し御説明またいただければと思いますが。

○政府参考人(多田明弘君)
 お答え申し上げます。
代替フロンでございますけれども、どうして温室効果が高いのかということでございますが、これは、二酸化炭素が吸収しないような波長帯の赤外線を吸収するという性格をまず持っております。その上で、この代替フロンは、HFCでございますけれども、一般に安定した物質でございますので、一度放出されますと大気中に長期間にわたって存在する、これによりましてその高い温室効果を継続すると、こういう性質を持っている、このことから温室効果が極めて大きいと、このような次第でございます。

○矢倉克夫君
 分かりました。ありがとうございます。まあ穴を埋めるような形ですかね、それで温室効果が生まれてしまうというようなイメージかなというふうに今思ったんですが、ありがとうございます。
続きましてですが、今回の法改正による様々な影響について改めて確認をしたいというふうに思います。
そのような目的に立った上で、今回、法改正によりまして、いわゆるキガリ改正、これに定める代替フロンの生産量や消費量の削減義務、これ国が課されているわけでありますが、これを果たすために、代替フロンの製造はまずは経産大臣の許可制、そして輸入は承認制とすることになります。そして、各事業者は個別に製造量や輸入量の割当てを受ける必要になるわけであります。
その個別の事業者への義務の部分でありますが、法案の説明資料では、これは実績を踏まえてというふうに書かれております。この具体的な方針について確認したいんですけど、これ、キガリ改正の削減義務を果たしていくためには、各事業者への製造量であったり輸入量、これの割当てについてどのように運用をされるのか。実績を踏まえてということであれば、当然実績があるところのみに割当てがあるということになり、今後また新規に参入しようというところが入口のところでシャットダウンされてしまうような懸念も生じてしまうわけであります。
義務の履行の上では必要かもしれませんが、新たな競争というものも生まれなくなってしまう、既得権というような部分も生まれてきてしまうのではないかという懸念が一部あるかと思いますが、こういう中で新規の参入者はどのように扱われるのか、答弁をいただければというふうに思います。

○政府参考人(及川洋君)
 お答えいたします。
今回のモントリオール議定書の改正によりまして、二〇二九年以降は基準値から七〇%削減というより厳しい削減義務を我が国は負うことになります。このため、現時点から国、産業界、ユーザーなどの関係者が一丸となって、新たなグリーン冷媒への代替技術の開発やその導入を計画的に進めることが重要と考えてございます。
その上で、お尋ねのありました割当てにつきましては、各事業者の安定供給の確保や事業の継続性に留意しつつ、議定書上の義務を遵守すべく、個別の事業者に対してその前年実績をベースに一定の削減率を掛けた数量を割り当てるというふうにする予定でございます。
他方、将来の日本全体での代替フロンの一層の削減を図る観点からは、画期的に温室効果の低い冷媒を製造、輸入する事業者に対してインセンティブを付与することも重要と考えてございます。具体的には、議定書の義務の上限と事業者への割当て数量との差分を使いまして、こうした画期的な冷媒の製造、輸入を行う事業者に対して追加的な割当てを行うことを考えてございます。
また、新規参入者につきましては、代替物質の状況や価格面などの観点で確認を行い、その新規参入に合理性が認められる場合にありましては、それまでに製造、輸入の実績のない事業者に対しても国全体の基準限度の範囲内で割当てを行うことを考えてございます。

○矢倉克夫君
 更なる削減義務達成のためには、技術革新も含めて進めていかなければいけないという大きな目的の下、新規参入者も排除しないというような御趣旨であったかなというふうに思います。
そちらについては改めて、開発については後ほどまた改めて確認をしたいというふうに思いますが、次の質問に行きたいというふうに思うんですが、キガリ改正に基づけば、代替フロンの生産量や消費量は、これ二〇一九年以降、特に段階的な削減が求められて、特に二〇二九年以降、この以降に求められる義務というのは基準値から七割削減という、これ非常に厳しい義務に直面することになります。代替フロンというのは、エアコンであったりとか業務用冷蔵庫など幅広く利用されているわけであります。この厳しい義務を履行する一方で、様々な企業の動きに制約を設けないようにすることも非常に重要かというふうに思います。
その上で、キガリ改正による代替フロンの削減義務により国内の産業にどのような影響が生じるのか、特に二〇二九年以降の大幅な削減義務を達成するために政府はどのように取り組まれるのか、答弁をいただければと思います。

○政府参考人(及川洋君)
 今回の改正によります新たな規制の直接的な対象は代替フロンの製造や輸入を行う事業者でございますが、日本での代替フロンの用途はその多くが冷凍空調機器の冷媒用途で占められておりまして、冷凍空調機器の製造メーカーや機器を使用するユーザー等にも影響は及ぶと考えてございます。
フロン排出抑制法に基づきまして経済産業大臣が定める日本の代替フロンの使用見通しを踏まえますと、二〇二八年度までの基準値から四〇%削減という義務に関しましては、現行の削減努力の継続で達成することが可能と考えております。それがゆえに、産業界への影響も限定的と見込んでおります。
一方で、先生御指摘のとおり、二〇二九年以降は基準値から七〇%削減というより厳しい削減義務となっているため、この達成に向けて、新たなグリーン冷媒への代替技術の開発やその導入を計画的に進めていく必要があると考えてございます。
具体的には、経済産業省といたしましては、新たなグリーン冷媒の選択肢の拡大に向けて、温室効果の低い代替冷媒を冷凍空調機器に用いる際の燃焼等に関するリスク評価手法を確立するための技術開発を本年度から五年間の計画で支援していく考えでございます。また、環境省におきましては、導入コストの高い省エネ型の自然冷媒機器について補助金による導入支援を行ってございます。
これらの支援によりまして、代替フロンからグリーン冷媒への転換を円滑に進め、二〇二九年以降の厳しい削減義務を達成するための取組を進めてまいりたいと考えてございます。

○矢倉克夫君
 ありがとうございます。
今、一部答弁もいただいたところもあるかもしれませんが、グリーン冷媒の技術開発された分野でも、やはりコストが高くて普及がなかなか進まない分野があるというふうに聞いております。
六月六日の衆議院の方の委員会で、我が党の國重議員が、環境省による答弁の中で、二酸化炭素冷媒を用いた冷凍冷蔵倉庫については、代替フロン冷媒の機器に比べて下がってきたとはいえ、いまだに一・七倍程度の価格とのデータが紹介されております。
代替フロンに代わるグリーン冷媒技術が既に開発されている分野であっても、導入は更に加速していく必要があると思いますが、今日、環境省さん来ていただいておりますので、改めて、この取組について環境省にお伺いをしたいというふうに思います。

○政府参考人(小野洋君)
 お答え申し上げます。
今回のキガリ改正が採択されたことを踏まえまして、脱フロン化を図る上で、グリーン冷媒を用いた機器への転換を図っていくということが非常に重要だと考えてございます。グリーン冷媒を用いた機器のうち、冷凍冷蔵倉庫やショーケースの分野については、二酸化炭素などの自然界に存在する物質を冷媒として用いる、いわゆる自然冷媒機器の技術が開発されております。委員御指摘ございましたけれども、ただし、フロン冷媒を用いた機器に比べると、導入費用が高いということが課題となってございます。
こうした中、去る六月十五日に閣議決定されました経済財政運営と改革の基本方針二〇一八、いわゆる骨太の方針、あるいは未来投資戦略二〇一八におきまして、グリーン冷媒技術の開発、導入、国際展開の推進が位置付けられております。
環境省といたしましては、関係省庁と連携をいたしまして省エネ型の自然冷媒機器に対する補助事業を進めているところでございまして、今後とも、これによりまして自然冷媒機器に一定の需要を生み出し、機器の低価格化を図ることで更なる導入の推進と加速化を図ってまいりたいと考えております。

○矢倉克夫君
 是非、両省連携して、引き続きよろしくお願い申し上げます。
また、次の質問に行きたいというふうに思うんですが、衆議院の方の審議を見ますと、グリーン冷媒のうち、フッ素系の冷媒については、人工物であることを理由として人体や環境への影響について特に十分な評価が必要とする一方で、アンモニアであったりとかCO2とかイソブタンなど自然冷媒は、それは自然であることを理由にして優先して普及すべきという御主張もありました。
温室効果の低いグリーン冷媒については、人工物と自然物、これを分けて扱って、その中で自然物のみを優先すべきというお考えもあるわけでありますが、これについては経済産業省の見解を伺いたいというふうに思います。

○政府参考人(多田明弘君)
 お答え申し上げます。
御指摘のとおり、グリーン冷媒には、元々自然界に存在する物質を冷媒といたします自然冷媒、それに人工物であるフッ素系冷媒、これがいずれも含まれるわけでございます。
その中で、自然冷媒でございますが、例えばCO2におきましては、冷凍冷蔵ショーケースなど温度域の低い分野で性能を発揮する一方で、比較的温度域の高いエアコン用途では冷却能力が大幅に低下し、また、アンモニアにおきましては毒性を有するため厳格な管理が可能な大型機器での使用に限定される、このような形で、自然冷媒にも能力や用途が限定されると、このように認識をいたしております。
このため、機器や用途に応じましてフッ素系冷媒の活用も図ることが求められると。仮に自然冷媒のみに依存いたしますと、現在見通せる技術を前提とする限り代替フロンの大幅な縮減は進まないと、このように認識をいたしております。
重要なことは、代替フロンを着実に縮減させることと認識しておりまして、その代替先であるグリーン冷媒として自然冷媒とフッ素系冷媒のいずれを使用するに当たりましても、人体や環境への影響について必要な評価を行った上で、適切な利用がなされるよう努めていくことが重要と考えております。
こうしたことから、私どもといたしましては、フッ素系冷媒よりも自然冷媒を優先すべきという合理的な理由は存在しないものと認識をしております。

○矢倉克夫君
 自然か人工か、それぞれ用途の違いなどもあり、それぞれ適用すべき分野もまたあるし、違いがあるのかなというところであります。重要なのは、私も思いますけど、科学的評価に基づいてやはり必要な評価を行っているかどうかというところであって、自然か人工かというような、そのカテゴリーの感覚だけで判断するべきではないかなというところだけは私からも指摘をしておきたいというふうに思います。
その上で、大臣にちょっと最後お伺いしたいというふうに思いますが、二〇二九年以降の厳しい削減義務をクリアするためには、今回のキガリ改正を契機として新たなグリーン冷媒とそれを利用する機器の技術開発を加速してイノベーションを起こしていくということが非常に必要であるということは、今までの経産省からの答弁も含めて非常に分かってきたことであります。
これが、各国も同じ義務をやはり負うわけであります。そういう中で、やはりそういった国々に日本発の技術や製品を国際展開して、我が国の産業のビジネスチャンスへとしっかりつなげていくための戦略というのも必要であるかなと思います。日本のためでもそうですし、これは世界全体のためにとっても、日本の優れた技術を展開していこうということが日本に求められているところであるかなというふうに思います。
そういう新たなグリーン冷媒とそれを利用する機器開発を加速する方策、その成果を国際的に展開していく戦略について、最後、大臣にお伺いしたいというふうに思っています。

○国務大臣(世耕弘成君)
 確かに二〇二九年以降の日本の削減義務というのは大変厳しいものがあるわけですけれども、しかし、これは他のいわゆる先進国と言われている国も同様の義務が課されるわけでありまして、そういう意味では日本が世界の新たな市場を獲得するチャンスでもあるというふうに思っています。
二〇二九年を見越して、今からグリーン冷媒技術、その冷媒そのものを開発する技術とそれを使いこなす機器の開発、こういったものに産学官が一体となって取り組んでいく必要があるというふうに思っています。
まず手始めにというか、グリーン冷媒は非常に温室効果は低いんですけれども、一方で燃焼性が高いというものが多いわけでありまして、万が一漏えいした場合の着火リスクというのを考えていかなければいけないわけですが、その着火リスクの評価手法というのはまだ確立をしておりません。このため、経産省では平成三十年度から、この燃焼性に関するリスクの評価手法を世界に先駆けて確立する産学官のプロジェクトを開始したところであります。これによって日本企業の技術開発を加速をして、国際競争力を強化をしていきたいと思います。
そしてまた、技術を開発するだけではなくて、この開発した評価手法は、冷媒に係るISO規格ですとか機器に係るIEE規格など国際標準への反映をしっかりと図って、日本の優れた技術を海外に展開することを目指していきたいと思います。済みません、機器に係るIEC規格であります。海外展開を目指していきたいと思います。これによって日本企業の新たな市場獲得につなげるとともに、世界の温暖化防止にもしっかりと貢献してまいりたいと考えております。

○矢倉克夫君
 ありがとうございます。
最後、大臣がおっしゃった国際標準化の取組は、今国会でこの委員会でも非常に審議をしたところであります。オールジャパンで世界に日本の技術を、世界のためにしっかりと進めれる体制づくりを是非進めていただきたいことをお願い申し上げまして、質問を終わります。
ありがとうございます。

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