186回 文教科学委員会(地方教育行政法案 首長と教育委員会の連携等)

2014-06-10

○矢倉克夫君
公明党の矢倉克夫です。
今日は、総合教育会議についてお伺いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
まず、大臣にお伺いいたします。総合教育会議の趣旨は、これまで何度も確認されておりましたが、首長と教育委員会の連携を図るという点であります。それで、そもそもなぜ連携が必要であるのか。裏を返せば、これまで連携がなかったことでどういう不都合があったのかという問いにもなると思いますが、その点について御所見をいただければと思います。とともに、過去に比べてより連携が必要となった事情があれば、それも併せて御意見をいただければと思います。

○国務大臣(下村博文君)
首長は、現行制度におきましても、私学や大学等の事務を所管するとともに、予算の編成及び執行や条例案の提出を通じて教育行政に大きな役割を担っておりますが、首長と教育委員会の意思疎通が十分でないため、地域の教育の課題やあるべき姿を共有できていないという指摘があります。これは制度上はありませんが、実際は首長とそれから教育長、教育委員会メンバーが意思疎通をしている自治体もかなりあるというふうには聞いておりますが、制度上は担保されているわけではないということであります。
また、近年の教育行政におきましては、いじめや児童虐待防止、キャリア教育、地域における子育て支援、放課後子どもプラン、また、この四月からは、文部科学省、省令改正いたしまして、土曜学習、土曜授業の推進を教育委員会の判断でできるようになるということをいたしましたが、これは、首長がこれに対してどういう思いを持っているかどうかが、結果的にそこの教育委員会がどの程度実施をするかどうかにも相当影響しているところもございます。
こういうような分野において、首長の所管する行政分野と密接に連携する必要性が高まっております。こうしたことから、首長と教育委員会が相互の連携を図りつつより一層民意を反映した教育行政を推進していくため、総合教育会議を設置することとしたものであります。

○矢倉克夫君
大臣、御答弁いただいたとおりかと思います。連携がなかったことでまず形骸化が起こったという点もそうでありますし、今大臣から、キャリア教育や土曜授業等のお話もされておりました。
先週静岡で行われた公聴会においても、公述人のお一人が、生涯教育の比重等が高まったこと、これによって、これまで首長と教育委員会の権限がそれぞれ別にあったものが重なる領域もどんどん増えてきたと、これが今総合教育会議というものも求められる背景の一つであるという御意見がありました。今大臣がおっしゃった御答弁もそのラインに沿う部分であるかと思います。
それで、この総合教育会議において、これまで度々議論となりましたのが、調整事項とは何かという点であります。今申し上げた総合教育会議設置の趣旨から考えますと、調整とは、首長と教育委員会それぞれが権限に属する事項、これ重なり合う部分について双方同じ立場で協議をし結論を出すものという理解であります。つまり、首長から教育委員会への働きかけという一方向のものでは必ずしもないという理解をしております。
調整事項は何かという問いに対して、政府はこれまで、教育委員会の権限に属する事項のうち予算や条例等の首長の権限に関わる事項に限定されるという御答弁、何度もいただいておりますが、この発言の御意思もこの双方向性というものを踏まえたものである、このように理解もいたしております。後ほど、もし御意見があればいただければと思うんですが、そのまま続けさせていただきますけれども、事実、総合教育会議の機能としましても、教育委員会から首長に働きかけを行うことも期待をされているという理解もしております。
先日の地方公聴会でも、例えば、教育委員会が予算編成の過程においてもこれまで以上に関与することができるようになったと、これが一つ総合教育会議における意義であるというような発言も、興公述人であったと思いますが、発言もされておりました。
それで、問題は、この総合教育会議において、教育委員会が今言ったような主導権といいますか働きかけをするために必要な制度的担保がどのようになされているかという点であるかと思います。今現状の改正案では招集権や議題設定権は教育委員会にないわけですが、この前提で、教育委員会がその会議の場においても首長に対して働きかけをする制度的担保がどこにあるのか、この辺りを文部科学省から御意見をいただければと思います。

○政府参考人(前川喜平君)
改正案におきましては、教育委員会は、その権限に属する事務に関して協議する必要があると考える場合には、首長に対し協議すべき事項を示して総合教育会議の招集を求めることができるとしているところでございます。
総合教育会議は、首長の側からだけではなく教育委員会の側からも、例えば教職員定数の確保、教材費や学校図書費の充実など政策の実現に予算等の権限を有する首長との調整が特に必要と考える場合には、積極的に会議の招集を求めることができるものでございます。

○矢倉克夫君
今挙げていただいた一条の四の四項は総合教育会議の招集を求めることができるという、これはできるという権限規定であり、これに対して、当然ですが、首長が応じる義務があるかどうかというところは明記はされておりません。これはいろんな配慮があってこのようにされていると思うんですが。九項において、前各項に定めるもののほか、総合教育会議の運営に関し必要な事項は総合教育会議が定めると規定もされております。
この点、その招集の在り方にしても、基本的には教育委員会の方から招集求めるような要請があれば基本は応じるというような形での運用も今後しっかりと文科省としても通知をしていただきたい。これは意見としてお伝えをしたいと思います。
今ありましたとおり、総合教育会議についてもう一点の不安は、首長による教育委員会への介入の場になるのではないかという点が一部あるわけですが、これを払拭し、会議が趣旨のとおり機能するためには、やはり必要なことは議事の公開であると思っております。
改正案は、議事録について、小規模自治体の負担を勘案し努力義務とすることとされております。通常、議事録という場合は、個々の発言を逐一記載するものである、このように理解をしております。そのような議事録であれば、この小規模自治体の負担軽減という趣旨、合理性はあるものと思っております。ただ他方で、詳細な議事録ではなく簡単な概要等を作ることは、これはできるのではないかと。あと、特に協議をした項目全て、こういう項目を協議したというようなことは、しっかりと記録に残して住民の方々全てに見ていただく。それを通じてしっかり透明性のある、また特に不当な介入等もない、しっかりした会議運営がなされていたということを住民の皆様を巻き込んで監視をするというような体制もつくる必要はあるかと思います。
この辺りの概要メモや協議の項目の作成について御意見をいただければと思います。

○副大臣(西川京子君)
教育委員会の議事録の公開につきましては、平成二十四年度の文部科学省の調査におきまして約半数、四八・七%の市町村教育委員会が公開をしておりません。全ての教育委員会に対して議事録の作成、公表を義務付けることは、先ほど先生がおっしゃったように、事務局人数の少ない市町村教育委員会においてはかなり厳しい事務負担となるだろうということで努力義務にとどめたわけでございますが、文科省の調査は議事録の公開状況のみを一応調査しておりまして、作成状況までは調査していないんですね。
そういう中で、実は現行の地教行法が成立いたしました昭和三十一年当時、文部省が各地方公共団体に示した教育委員会規則案においては、会議録、議事概要ですね、を作成しなければならないという規定が明記されておりますので、先生がおっしゃった簡単な項目をメモした議事録とか、簡単な議事録は恐らくある程度の教育委員会で作成しているだろうということは推測できるわけです。そういう中で、簡単な議事録概要のみを公開している市町村教育委員会が二三・一%、今でもあります。
そういうことでございますので、住民への説明責任をやはり果たしていかなければいけませんし、この教育行政の透明化、そういういろんなことは大変重要でございますから、法案が成立した暁には、やはり施行通知や説明会などの機会を活用いたしまして、可能な限り議事録を作成し、公表するように指導してまいりたいと思います。

○矢倉克夫君
ありがとうございます。
今、施行通知というふうなお話もいただきました。やはり、この総合教育会議、しっかり運営なされるかどうかというのは、議事等も公開した上で、住民の方を巻き込んでその監視の下に置くという部分は非常に大きな要素であるかと思います。引き続きよろしくお願いいたします。
次に、総合教育会議の機能について、具体例も挙げまして、空き教室を利用した放課後児童クラブの問題に関連をしてお尋ねしたいと思います。
安倍総理も先日、共働き家庭などの小学生を放課後に預かる放課後児童クラブの定員数をこの五年間で三十万人拡充するという方針を打ち出されました。その目的達成のためにも、先日も委員会で指摘させていただいたんですが、空き教室、これを利用して放課後児童クラブをこれ拡充していくということは非常に重要であるかと思っております。
ちなみに、平成二十五年五月時点で、放課後児童クラブとして空き教室が利用されている割合は二八・一%。これは、文部科学省所管の放課後子ども教室で空き教室が利用されている割合が七一・三%に比べると少ない数であるかと思っております。
この点、先日の委員会で大臣より、放課後児童クラブの空き教室利用が進まない理由は教育と福祉の意識の壁である、このように御答弁いただきました。ただ、大臣からまた、しかし総合教育会議を設けることによりこの壁を取り払う契機となるとの御趣旨の期待が述べられたと記憶をしております。
問題は、政府、これまで何度も空き教室利用ということを促進をいろいろ促してきた部分はあると思うんですが、なかなか先ほどの数字のような形の状態ではありました。これまでなかなか功を奏しなかったところが総合教育会議を設置することでなぜできるようになるのか、このような効果の部分を、総合教育会議の機能を明らかにする意味でも、大臣より御答弁をいただければと思います。

○国務大臣(下村博文君)
御指摘のように、学校の余裕教室等の活用状況につきまして、現在、放課後児童クラブ全体の約五〇%、放課後子ども教室全体の約七〇%という数字になっております。
小学校の近くに児童館などがある場合には余裕教室等の活用が必要ないこともありますが、活用が進まない主な理由として、一つは、放課後児童クラブの多くは福祉部局が担当しており学校を所管している教育委員会との連携が必ずしも十分でないこと、また、学校施設の放課後の活動への利用が管理上の理由から教育委員会や学校の理解が得られにくいことなど、教育と福祉の関係者間における意識の壁があるのではないかと考えております。
文科省としては、ただいま御審議いただいている地教行法改正案において設けることとしております総合教育会議を活用し、首長と教育委員会が十分協議することによりまして、このような意識の壁を越え、児童や保護者など関係者の立場に立って連携を深め、放課後の活動について学校の余裕教室等の積極的な活用が促進されるものと期待をしているところでございます。
また、放課後児童クラブ等への学校の余裕教室等の活用につきましては、厚労省と共同で一体型を中心とした放課後児童クラブと放課後子ども教室の整備等を推進していく方向でありまして、教育委員会がその当事者となり一体型の運営に責任を持つようになるということによって余裕教室等の活用促進が一層図られるよう促してまいりたいと考えております。

○矢倉克夫君
大臣、御答弁いただいたとおりであると思います。
意識の壁があった部分を、今回大臣から関係者の立場に立ってというお話がありましたが、やはり総合教育会議を設けることで、そこに様々な地域のボランティアの方であったりPTAの方であったり、そういう住民の方々をそこに巻き込むことで、これまで壁があったものを取り払う効果がやはり私はあるかと思っております。法律でも、一条の四の五項のところで、関係者からも意見を聴くことができると。この関係者としてまさに地域住民の方にその総合教育会議の場に入っていただいて、いかにこれまでなかなか壁があってできなかった空き教室の利用が大事なのであるか、その意識を教育委員会等もしっかりと理解をしていくという過程は非常に重要であるかなと私は思います。
他方で、放課後児童クラブを学校の、保育用に空き教室を利用するということは現場教員の負担を増やすことになるという懸念も一部ございます。それに対しては今後どのように対処されるおつもりであるか、また御意見をいただければと思います。

○副大臣(西川京子君)
放課後対策を学校の余裕教室で活動する場合でありましても、これは当然その実施主体が、あるいは責任は学校ではなくて、放課後児童クラブが市町村の首長部局、そして放課後子ども教室は市町村の教育委員会が言わば責任者ということでございますので、放課後児童クラブのそして指導をする方も専任の指導員がいらっしゃいますから、直接教員の負担になるものとは考えておりません。ただ、放課後に児童が校内に残っているということで、安全面などで学校から、教員の負担につながるのではないかと、そういう懸念の声があることも承知しております。
文部科学省といたしましては、厚生労働省と連携いたしまして、今後、一体型を中心とした放課後児童クラブと放課後子ども教室について学校内への整備などを推進していくに当たって、責任の主体をより明確化していくことが必要であると考えております。そのために、地方公共団体に対して実施主体や責任の主体が首長部局や教育委員会であることをより明確に示していくことによりまして、先生方の負担が増えることのないように留意してまいりたいと思っております。

○矢倉克夫君
引き続き、よろしくお願いいたします。
引き続き、また総合教育会議の機能についてお尋ねいたします。
議論による首長との連携、これ教育委員会が通じることによって教育委員会が保有する情報が厚くなるとともに、教育委員会の視野が広がる、このような意見があります。先週の地方公聴会でも、こういう面がまた総合教育会議の機能であるというような意見が公述人からもございました。この件について大臣はどのようにお考えか、御意見をいただければと思います。

○国務大臣(下村博文君)
総合教育会議におきまして、大綱の策定を通じて、当該地方公共団体の教育の振興に関する総合的な施策の目標や施策の根本となる方針を首長と共有したり、重点的に講ずべき教育施策について、予算の編成・執行権限や条例の提案権を有する首長と教育委員会による調整や保育と幼稚園、青少年健全育成と生徒指導、放課後子どもプラン等の首長と教育委員会の事務の連携が必要な事項について首長や有識者等と議論をしたりすることによりまして、教育委員の視野の拡大や教育委員会の活性化そのものにも資するというふうに考えております。

○矢倉克夫君
教育委員と首長それぞれが総合教育会議という場で連携し合うことで、お互いのノウハウを共有し合って能力を高め合うという意義は非常に大きいと思います。
そのような上のレベルにまた限らず、更にその下にある、例えば首長の下といいますか、スタッフとして頑張っていらっしゃるのは知事部局である、また教育委員会はこれから教育委員会事務局という形、それぞれがそのレベルでもまたしっかりと人事交流などで交流し合ってノウハウも共有し合っていくという、この方向性もまた大事であるかと思っております。
これについて、知事部局と教育委員会事務局の人事交流の必要性、どのようにお考えか、文部科学省より御意見いただければと思います。

○政府参考人(前川喜平君)
教育長や教育委員を支える事務局職員の資質の向上に向けまして、教育委員会におきましては、教員出身者のみならず、教育行政の専門性を有する行政職員の計画的な育成が重要であり、一般行政部局との人事交流も含めまして、適切な人材育成が行われる工夫が必要であると考えます。
今回の改正案が成立いたしました場合には、各地方公共団体の首長部局と教育委員会事務局との人事交流がより充実したものとなるよう取組を促してまいりたいと考えております。

○矢倉克夫君
ありがとうございます。
今、知事部局と教育委員会の事務局の人事交流について、一つ具体的なところからいくと、以前も私、委員会で質問させていただいた私学のいじめ問題について、現場の声の一つに、この私学のいじめの対処に当たってですが、教育委員会の管轄ではない、じゃ知事部局が管轄であるわけですけど、そこに相談を持っていくとどういう事態が生じるかというと、このいじめというものに対しての対処のノウハウがなかなか蓄積されていないというような現場のお声がありました。そういうような事案に対応する意味でも、やはり知事部局と教育委員会事務局の人事交流やノウハウの共有というのは非常に重要であるかとは思っております。
その意味で、大臣から、このいじめという観点からまた含めたこの人事交流の必要性についてどのようにお考えか、御意見をいただければと思いますが。

○国務大臣(下村博文君)
私立学校におけるいじめ問題に的確に対応するためには、知事部局の私立学校担当部署に教育に関する専門的知見を有する職員を配置することが望ましいと考えております。このため、知事部局と教育委員会事務局の人事交流も一つの有効な方策であるというふうに考えます。
なお、平成十九年の地教行法改正におきまして、都道府県知事が必要と認める場合には、都道府県教育委員会に対し、学校教育に関する専門的事項について助言、援助を求めることができるとされたところでありまして、この規定を活用することも可能でございます。

○矢倉克夫君
ありがとうございます。引き続き、よろしくお願いいたします。
以上で終わります。

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