187回 法務委員会(国際訴訟の対応等)

2014-10-28

○矢倉克夫君
おはようございます。
上川大臣、就任おめでとうございます。
御就任早々大変恐縮ではございますが、新任閣僚の方々への様々な報道が相次いでいることを公明党としても大変残念に思いますし、また、与党の一角として国民の皆様に大変申し訳なく思っております。政治への信頼を取り戻す正念場であるかと思っております。大臣には御期待を申し上げたいと思っております。
改めて、大臣から御決意をいただければと思います。

○国務大臣(上川陽子君)
ただいま先生から御指摘がございました今の状況ということにつきまして、私自身も、突然の任期途中の就任ということで、大変このような事態が起きたことについて責任を感じているところでございます。国民の皆様から信頼が損なわれかねないことで、大変迷惑を掛けているということに対しても申し訳なく思っております。
一日も早くこうした審議が迅速に進むことができるように、私自身も、副大臣、政務官と力を合わせて信頼回復を図るためにも頑張っていかなければいけないということで、身の引き締まる思いでございます。これからもそうした視点をしっかりと持って頑張っていきたいと思いますので、よろしく御指導いただけますようお願い申し上げます。

○矢倉克夫君
よろしくお願いいたします。
それでは、前回の質問の確認も含めて幾つかお尋ねしたいと思います。大変恐縮なんですが、質問通告、最初、再犯防止をする予定だったんですが、ちょっと最後に回していただきたいと思っております。
まず、法テラスについて、前回、主に後見過疎の問題を取り上げて、福祉分野における司法の役割の充実、拡充を提起いたしました。大臣も所信で言及されております高齢者や障害者等の法的ニーズの掘り起こしについて、私、これ既に法的問題が顕在化した後の事後処理では意味がなく、やはり事前予防であるべきだと考えております。例を挙げれば、社会的弱者の多重債務の問題など、債務がもうどうしようもなくなった状態で任意整理をしたり破算処理するような事後対応では間に合わないわけでして、その状態を引き起こした当事者の判断能力の問題や、またこれに付け込んでいる第三者の問題なども、危険な要素を事前に察知してどう法的にプロテクトしていくのかというのが非常に大事であると思っています。
問題は、こういうことについて、普通はこのような事前の段階から司法に一般の人から話が来ないということで、普通の感覚では、法律の出番というのは、にっちもさっちもいかなくなって訴訟をせざるを得ないような状態になって初めて来ると。私も弁護士だったときも、もっと早くに言ってくれればみたいな話もよくあったりとかしたんですが。それで、早くから当事者の情報に一番触れている自治体や福祉事業者に、ちょっとでもおかしな話が出てきたら、法律に関わるかどうかは分からないけど、まずは弁護士等に連絡してみようかと思わせることが大事であろうかと思っています。そのためには、もう待っているだけでは司法の側も当然駄目で、常日頃から定期的に意見交換するなど、よほど緊密に連携を取らなければいけないというふうに思っております。
ちょっと長々と話してしまったんですが、私、その連携の核になるのが給与制のスタッフ弁護士のいる法テラスであるという認識をしております。この点、大臣も所信の方では法テラス等の充実、訴えられていたんですが、同じような思いであると思いますが、この辺り、大臣、いかにお考えか、お考えをいただければと思います。

○国務大臣(上川陽子君)
委員御指摘の点につきまして、私も全く同感でございます。
そもそも、法テラスの制度ということにつきましては、国民に身近な司法をということで制度設計されたものでございまして、まさに司法が、垣根が低くて、そしていろんな課題に対して相談をすることができる、そういう役割を社会の中で果たしていくべきだという中から生まれてきた制度であるというふうに思います。
その意味で、法テラスが今後、高齢者の方とか障害者の方たちの様々な悩みやそして課題に対しまして、法律という視点から適切に行動することができ、またそれを解決に向けてつなげていくことができるような、そうした拠点としての業務ということについては大変大事だというふうに思っております。
ニーズにつきましては本当に多岐にわたるということでありますので、できるだけ多くの関係する機関と、福祉の機関でありますとか、最近は地域の包括ケアのシステムということにつきましても充実をしていこうということでありますので、そうしたところとうまくネットワークを結びながら、その中で、先ほど御指摘がありましたように、常勤の弁護士さんが本当に身近なお気持ちに立って、相談をして、そしてそれに対して適切に対応することができるような、そうした新しい仕組みに向けての努力ということについては、今まさに求められているのではないかというふうに思っております。

○矢倉克夫君
法テラスの重要性は、法務省の設置している法曹有資格者の活動領域に関する有識者懇談会においても、泉先生や田島先生など多くの専門家の方が指摘をされているところであります。
大臣も所信で述べられていた司法ソーシャルワーク、この拡充という側面においても法務省だけではなく厚生労働省なども巻き込むべきだと、このようなことも含めて、法テラスの重要性と絡めて懇談会では話もあります。特に、この他省との連携、この部分についても大臣から御説明いただければと思います。

○国務大臣(上川陽子君)
今回の所信で司法ソーシャルワークに向けた体制整備につきまして言及をさせていただきましたけれども、平成の二十七年度の概算要求につきましても、このことの整備のための予算ということで要求をさせていただいているところでございます。
そして、この法テラスの件につきましては、他省、つまり福祉的な様々なニーズというものも関係しているということでありますので、その一つずつの問題に対して解決すればそれで終わりということではなくて、障害者や高齢者の皆さんがいろんな課題や問題に対してシームレスに取り組んでいくことができるように、他省との連携、とりわけ厚生労働省との連携というのは非常に大事なものだというふうに思っております。そういう意味で、法テラスの役割というものは、一つの拠点、核としての役割を更に充実強化していくことが必要であるというふうに考えております。

○矢倉克夫君
大臣おっしゃったシームレスな対応、これは非常に大事であると思います。どうぞ引き続きよろしくお願いいたします。
次に、法務省の役割について、主にルール構築という観点からお尋ねをしたいと思います。
前回の質問のとき、自民党の三宅理事の質問に対しまして松島前大臣から、法務省が各省に対し言わば顧問弁護士みたいな形で、会社に顧問弁護士がいるように各省の政府の顧問弁護士という役割を果たすという答弁がありました。私、非常に重要な視点であるかと思っております。今、組織機構的なものも含めて、この点に関してどのような試みがなされているのか、改めて大臣から御説明いただければと思います。

○国務大臣(上川陽子君)
ただいまの御質問でございます、松島前大臣から、言わば顧問弁護士というような役割ということでございました。
国の利害に関係する争訟、訴訟は法律上法務省が行うということになっているところでございます。そしてその訴訟の結果が、国の政治や行政、経済に大変重大な影響を及ぼす訴訟が増加しているということも昨今の課題でございます。国として、これらの争訟、訴訟に適切かつ迅速に対応していく必要性がますます深まっているというふうに考えております。
同時に、委員の御指摘でございますが、法律の専門家を多数抱えておりますので、訴訟が起きてから対応するのではなくて、訴訟が起きる前に関与をし、そして行政の法適合性を高めていく、そのことによって国民の権利利益に資するような行政とすると。これにつきましては、松島前大臣は顧問弁護士というお話もございましたし、また、言い換えてみれば、政府のコンプライアンスの機能を高めていくという意味での大変大事な役割もあるというふうに思っております。
訟務組織の充実強化ということで先ほど来お話ししましたけれども、予算概算要求につきましても、この点につきましても十分に対応することができるように努力してまいりたいというふうに思っております。

○矢倉克夫君
ここにも事前予防の観点、同じような側面もあるかと思います。
今のは国内の話ですが、視点を変えまして、国際的なルール構築に向けてお尋ねをしたいと思います。
この分野、各国が主導権争いをしていることはあえて言うまでもないことであるかと思います。TPPなどもその一環というふうに私も理解もしております。
その裏返しとしまして、国際的な問題は公開の法廷類似の機関でルールに基づいて決するという流れもまた出てきているのかと思います。この前のICJの判決などもそうではありますし、これは非常に政治化しやすいような問題であってもルールに基づいてまたしっかりと議論もしていくという部分、必要な部分でもあるかとは思っております。例えばWTOなども、ラウンドとしては今非常になかなか進展もない一方ではあるんですが、紛争処理機関としては着実に非常に実績も成果も上げてきているところではあるかと思います。
ただ、問題意識として、日本の体制、こういう国際訴訟についての体制というのはまだ脆弱であるかとは思っています。例えば外務省など、今話もしましたWTOの関係、このスタッフがでは今外務省はどれくらいいるかとなりますと、室長が一人と、あとは専門のスタッフが大体四名のみ、担当官が三名、常勤調査員一名、これだけで今担当をしているという、非常にほかの各国と、アメリカとかに比べれば全然体制も弱いということを非常に感じております。
公明党は、本年四月に、経産、外務に加えまして法務省を含めた形で、国際的な法的紛争に対して一元的に対応するための国際訟務部門、これを設置することが非常に有益である、このような旨の提言も提出させていただきました。私の個人的な経験からも思うんですが、やっぱりリーガルマインドというのは、国内と国際というのを何か特別に区別があるわけでもなく、法的素養がある人というのは、国内だけではなく国際にもしっかりと伝わっていく経験と知識というものがやはり備わっているということではあるかと思っております。こういう点からも、法曹資格者が非常に多い法務省こそ、この国際法の分野、訴訟の分野においてもより積極的に動くべきであるというふうに考えています。
この点、法務省の方でも今、訟務局を新設するという動きがあると聞いております。日本を被告とする国際訴訟なども含めた対応を、いかに法務省が持っている知見を確実に活用していくのか、こういう点では非常に良い方向性でもあると思いますし、私も応援したいと、このように強く思っているところではありますが、大臣から改めて、国際的な法の支配、ルール構築に向けまして、法務省、今後どのように取り組まれるのか、御説明をいただければと思います。

○国務大臣(上川陽子君)
大変重要な御指摘をいただきまして、ただいま国外の訴訟ということでございますが、これまでは法務省は関与をしていないというのが実情でございます。しかし、国際化の進展ということ、あるいは国際取引が飛躍的に拡大しておりまして、これらの訴訟が非常に増加するということが予想されるわけでございます。
そこで、法務省といたしまして、これらの訴訟への関与の在り方につきましてまず検討をしていく必要があるのではないかというふうに認識しているところでございます。訟務組織の充実強化を図るためにも、平成二十七年度の予算概算要求におきましては訟務局の新設をお願いしているところでございます。
このような国外の訴訟に対して対応策の検討も、この組織を強化する上での一つの課題であるというふうに考えております。

○矢倉克夫君
引き続きしっかりよろしくお願いいたします。
それでは、冒頭申し上げました再犯防止につきまして、前回、いわゆる自立準備ホームに対し更生委託費が件数ごと、つまり施設に入居している人ごと、定額支給されているということを確認いたしました。この自立準備ホームというのは、一部屋に大人数を一緒に住まわせるところであったり、また一軒家を借りて出所者に個室を割り当てているところなど様々あるようでございます。
前回、約三億円の予算について、登録事業者の特性を見定めながら予算の適正な執行を行うという御答弁でしたが、この適正な執行を確保するための具体的な対応策、どのようになされているのか、御説明いただければと思います。

○政府参考人(片岡弘君)
お答えいたします。
自立準備ホームへの予算の執行の関係でございます。自立準備ホームへの宿泊等の委託の関係では、仮釈放者につきましては保護観察ということになります。満期釈放者等については更生緊急保護という手続によることになります。いずれにいたしましても、当該施設の受入れ対象、例えばホームレスを対象としている、あるいは障害者を対象としている、あるいは高齢者を対象としているというような受入れ対象に照らしてその施設が適切であるかどうかなどを勘案して委託先を決定しているところでございます。また、当該施設については、保護観察官が実際に委託先を訪ねて生活状況等を確認するなどしているところでございます。
このように、委託先の施設につきましては、保護観察や更生緊急保護の目的に鑑みて適切に運用されているかどうかを確認した上で委託の決定をしているところであります。今後も引き続き、各施設の特性や実情等を踏まえて委託を決定するなど、その適正な予算の執行に努めてまいりたいと考えております。
以上であります。

○矢倉克夫君
しっかり対応されているところ、効果を上げているところにはより手厚くという部分も含め、めり張りある執行をよろしくお願いいたします。
松島前大臣からは、この再犯防止について予算獲得に向けて決意が述べられました。上川大臣も引き継いでいただきたいと思っております。
そのために必要なことが、やはり何といっても、再犯防止における経済的効果というのがどの程度か、これも試算もしていくことであると思っています。私、議連の申入れで麻生財務大臣にお会いしたとき、財務大臣から強調されたのがまさにこのことでありました。この点について法務省としてどのようになされるのか、大臣からいただければと思います。

○国務大臣(上川陽子君)
ただいま御質問の経済的な効果ということについての試算をということのお話がございましたけれども、そもそも個々の犯罪者による再犯を防止することで得られる経済効果を正確に数字ではじき出すということについてはなかなか難しいということではあるというふうに考えておりますが、一般論といたしまして、再犯防止に向けた取組によりまして刑務所出所者等による再犯が減少いたしますと、刑事司法手続の各段階におきましての新たな支出ということにつきましては抑制されるという効果があるというふうに考えております。また、刑務所の出所者等が再犯をしなかったことによりまして、こうした方々が、再犯事件を原因とした新たな犯罪被害が生じないようにすることによっての効果もあろうかと思います。さらに、社会においてお働きになったり、あるいは消費をしたり納税をするという形で経済活動の主体となるということによっての効果もあろうかというふうに思っております。
いずれにしましても、世界一安全な日本を構築するに当たりまして、再犯防止対策につきましては果たすべき役割が極めて高いというふうに考えているところでございますので、御指摘のところも踏まえまして、国民の皆様方に再犯防止対策の効果につきまして分かりやすくお示しをし、そして御理解をいただくことができるように全力で努めてまいりたいと思っております。

○矢倉克夫君
予算の獲得の過程でも非常に必要な資料にもなってくるかと思いますので、民間ベースでいろんな試算があるものですから、法務省として、より多くの方が信頼できるような試算というのも是非やっていただきたいと思います。
時間が参りました。今申し上げた再犯防止の件、また法テラス含めたこの司法と福祉の連携という点、そして私の思いとしても、また国際法務戦略という、戦略という言葉が適切かどうかも含めましてではありますが、しっかりその辺りも含めて、是非引き続きよろしくお願いいたしたいと思います。
以上で終わります。ありがとうございました。

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