189回 予算委員会(水素エネルギー社会の実現)

2015-04-02

○矢倉克夫君
公明党、矢倉克夫です。よろしくお願いいたします。
時間の関係もあり、早速質問に入らせていただきます。
水素社会という言葉が希望を持って語られております。宮沢経済産業大臣より、まずこの水素社会実現の意義を御説明いただきたいと思います。

○国務大臣(宮沢洋一君)
水素は、まず様々なエネルギー源から製造することが可能でありますし、また利用段階ではCO2を出さないということで、エネルギーセキュリティーの向上や環境負荷の低減につながる将来の有力なエネルギー源、エネルギーの一つであると認識をしております。
先般、昨年決定いたしましたエネルギー基本計画におきましても、将来の二次エネルギーでは、電気、熱に加え、水素が中心的な役割を担うことが期待されるとの方針を示しております。加えて、燃料電池車を始めといたしまして、燃料電池分野での競争力、我が国は大変高いものがありまして、産業政策の観点からも水素のエネルギーの利活用は大変意義あるものだと考えております。
こうした水素の利活用に向けまして、昨年六月、経産省といたしましても、産学官の役割分担や具体的な取組を明確化した水素・燃料電池戦略ロードマップを取りまとめたところでございます。これに従いまして、燃料電池自動車を始めとして、足下で実現しつつある燃料電池技術の拡大をしていくとともに、将来、再生可能エネルギーや海外の未利用エネルギーを用いて製造した水素を安価で安定的に供給するシステムを確立することを視野に入れ、今から必要な技術開発などを着実に進めていこうと考えております。

○矢倉克夫君
水素社会実現に向けた第一歩は、水素技術を利用した製品の実用化、商品化の促進であると思います。
目下、一番取組がなされているのは、エネファームと燃料自動車、特にこの燃料自動車については、御案内のとおり、トヨタがいち早くミライ、市場投入をいたしました。燃料自動車をめぐる国内外の自動車メーカー等の動きについて御説明をいただきたいと思います。

○政府参考人(黒田篤郎君)
お答え申し上げます。
燃料電池自動車は、航続距離や燃料の充電時間についてガソリン車と同程度の利便性を持ちまして、走行時にはCO2を排出しない有力な次世代自動車でございます。自動車メーカー各社、実用化に向けて取り組んでおります。
昨年十二月、トヨタ自動車が新型の燃料電池自動車ミライを発売いたしました。今後は、ホンダが二〇一五年度中に、また日産自動車は早ければ二〇一七年中に、それぞれ燃料電池自動車の発売を予定してございます。また、これら我が国自動車メーカーは、二〇〇五年から二〇〇九年における燃料電池関連の特許出願件数で世界上位五社中三社を占めるなど、国際的にも強い競争力を有しているところでございます。

○矢倉克夫君
技術は、トヨタ始め日本が先行しているということを理解をいたしました。ただ、日本の課題は、やはり売る力、優れた技術がガラパゴス化しないように先手を打たなければいけないと思います。今、特許のお話等もありました。鍵となるのは、企業のマーケティング力強化と、もう一つ、特に燃料自動車はさらに水素ステーションの関係もありますが、部品も含めた関連製品が国際市場の標準となること、つまり国際標準化であると思います。
標準化といいますと二つ意味がありまして、ここで問題としているのは、官民一体の取組としては、かつてマイクロソフトのウィンドウズがそうであったように、市場経済競争を勝ち得た結果としての事実上の国際標準化、デファクトスタンダードではなく、ISOなど公的な機関による認定を通じた標準の国際化、いわゆるデジュールスタンダード、これを目指す動きが大変に重要であるというふうに思っております。
私の問題意識としては、日本はこの分野において他国、とりわけ米欧よりは遅れているという、問題意識が薄いという理解もありますが、現状の政府の一般的な取組についてお伺いをしたいと思います。

○政府参考人(片瀬裕文君)
お答え申し上げます。
我が国の技術を広く世界に普及させるためには国際標準化への戦略的な取組が必要だということで、御指摘のとおりでございます。こうした観点から、具体的に今、第一として、研究開発段階から標準化に一体的に取り組むということで、我が国にとって重要な技術を早期に見定めて他国に先んじて標準化提案を行っていくということを行いましたり、第二に、欧州内で規格が統一される前に欧州の一部の国と連携して標準化を進める、あるいはアジア諸国と連携して標準化提案をする、そういった形で戦略的に国際標準化活動を実施しております。
これらの取組によりまして、日本の国際標準化活動は国際幹事引受数などにおきまして欧米に並びつつあるということでございますし、個別技術分野におきましても、超電導あるいは光触媒、LED、生活支援ロボットといった我が国が非常に得意な技術の標準化、この戦略的な標準化に成功しているところでございます。
こうした取組を更に強化をするため、昨年五月に、官民トップが参加する標準化官民戦略会議におきまして標準化官民戦略を取りまとめたところでございます。これに基づきまして、官民が緊密に連携して、国際会議で幹事を務める標準化人材の育成、それから、業界団体に加えて優れた技術を持つ個々の企業を含めた官民の連携強化、あるいはアジア諸国との国際標準の共同開発等を通じて取り組んでまいりたいと思っております。

○矢倉克夫君
今政府参考人から説明のありました、国際幹事引受件数の増加という話がありましたが、表にまとめております。お手元の資料を御覧をいただきたいと思います。数としては非常に、右側の資料なんですが、日本の数がどんどん今増えている。また、標準の提案数もどんどん増えているという状態であります。
私、幸いにも、この分野、前職で少し関わる機会も得まして、とりわけEUのISOに対する影響力の強さというのはよく言われています。EUはEU規格というものをつくって、それをISO規格にする術に非常にたけております。特に、ISOというのは一国一票制度でありまして、EUは規格をEUでつくった時点でもう既に加盟国分投票権があると。EUは二十八票これ持っているわけなんですよね。対して日本は一票と。そういうような状況で、このEU規格との戦いというのは最初から不利であるわけですが、今現状、政府としてもその問題を認識した上でいかにこの分野で勝っていくのかということを、着実に成果を上げられているという認識は今させていただきました。
それでは、先ほど申し上げた水素技術におけるこの分野での取組、改めて御説明をいただきたいと思います。

○政府参考人(片瀬裕文君)
お答え申し上げます。
水素技術分野は、今後産業化が急速に進んでいく新しい分野であるということで、研究開発と一体的に戦略的に標準化を進めるということが国際標準化の主導権を握る上で非常に重要だと思っております。
このような観点から現在取組を進めているところでございますけれども、その結果、水素技術関連の国際標準化は、国際標準機構、ISOにおきましては二つの専門委員会で行われているわけでございますけれども、まず燃料電池自動車分野を扱う専門委員会、この場ではこれまで七つの規格が開発されましたけれども、そのうち五つの規格については我が国の提案がそのまま採用されているということでございまして、残りの二つの規格につきましても我が国の技術を十分反映したものになっているというふうに認識しております。
また、もう一つの専門委員会である水素の品質や水素ステーションなどを扱う委員会におきましては、二十四の作業グループで現在まだ標準化作業が進められているところでございますけれども、そのうち五つについては我が国が座長を務めるということで主導権を持っております。残りの作業グループにおきましても、日本からは規格の専門家のみならず、特別に技術の専門家を積極的に派遣するということをやっておりまして、日本の技術を十分に反映した形で国際標準化をするべく積極的に取り組んでいるところでございます。

○矢倉克夫君
着実に進めていただきたいと思います。
御案内の方も多いかもしれませんが、WTOのTBT協定というのがありまして、その二・四条等におきましては、WTO加盟国は、国内の強制規格等を定めるに当たりまして、関連する国際標準をその基礎として用いなければならないという趣旨の規定が定められています。これは、つまり製品の国際標準を押さえさえすれば、途上国を含めたWTO加盟国の国内規格はそれに準ずることになりまして、世界市場を席巻するのに有力な力になるということです。
今日は質問等はいたしませんが、経産大臣におかれましては、この国際標準化戦略というのがマーケティング戦略と関わる優れた産業政策であるということを改めて御理解、御認識をいただければと思っております。
さて、次に行きたいと思います。
燃料自動車の普及の話を更に進めたいと思いますが、この燃料自動車普及の最大の課題の一つは、インフラである水素ステーション、この普及であります。この両者は卵と鶏の関係のようなもので、もうどちらかが進まない限りどちらも進まないという。この点、この普及をどうされるのか。環境省所管の小型水素ステーションの普及も含めまして、経産省、環境省よりいただければと思います。

○政府参考人(木村陽一君)
水素ステーションの整備でございますが、平成二十七年度中には百か所程度整備するという目標を掲げてございます。官民一体となって取組を進めているところでございまして、政府としても整備に対する予算措置を講じております。現時点で五十四か所分につきまして補助金の交付決定を行っております。現在整備中ということで承知をしてございます。
水素ステーションの整備に当たりましては、やはり整備に係る費用をまず低減していかなくちゃいけません。あわせまして、水素ステーションの用地を確保していくということも必要でございます。このため、例えば既存のガソリンスタンドを活用する水素ステーションでございますとか、あるいはスペースを取らない、あるいは低コストな一つのパッケージに必要な装置を収めたパッケージ型でございますとか、あるいは移動式の水素ステーション、そういったものを機動的に活用しながら普及を進めていきたいというふうに考えてございます。
こうした整備に当たりましての課題、一つ一つ克服しながら支援策を講じてまいりたいと考えてございます。

○政府参考人(三好信俊君)
お答え申し上げます。
環境省における水素ステーションの整備の取組方針でございますが、私ども環境省では、低炭素社会の実現の観点から燃料電池車を始めとする次世代自動車の普及促進を図っているところでございます。今御答弁ございました中に平成二十七年内に百か所程度の水素ステーションの整備という目標がございました。私どもも、この目標を受けまして、環境省といたしましては、地域で水素の製造が可能となる再生可能エネルギー由来の水素ステーションの整備を支援するための予算を平成二十七年度本予算に盛り込まさせていただいているところでございます。
経済産業省とも連携をいたしまして、燃料電池車の普及促進に向けまして全国的に水素ステーションの整備の促進に努めてまいりたいというふうに考えております。

○矢倉克夫君
この燃料自動車の関係ではトヨタの特許無償化も話題となりました。面白いと思ったのは、特許を無償化した中でこの水素ステーション関係の特許だけは無償化を無制限としているというところなんですよね。それだけ、インフラである水素ステーションは建設が急務であり設置も急務であって、より多くのプレーヤーを入れ込むこと、重要性があるということを認識をしている、示すことであると思います。この分野、更にしっかり進めていただきたいと思います。
一点だけ要望させていただきたいのが、水素ステーションの設置に当たりましては、既存のガソリンスタンド、この活用も図っていただきたいという点。昨年四月のエネルギー基本計画でも、この分野におけるガソリンスタンドの多様な役割、言及もされております。この点は是非、御協力をしっかりまたいただきたいというふうに思います。
最後、また経産大臣にお伺いをしたいんですが、お手元の資料を一つまためくっていただきたいと思います。
私の地元のさいたま市、ここにおける小型水素ステーション導入の取組が出ております。ごみ発電を伴う廃棄物焼却施設とまた水素製造をマッチしたような形なんですが、再生可能エネルギーに由来する水素を二次エネルギーとして活用するということ、これはまさに究極の二酸化炭素フリーであります。これなどが典型でありますが、水素社会が生み出す価値の一つというのは環境負荷をやはりなくしていくこと、これが大きな意味があると思います。また、再生可能エネルギーという部分に関しますと、この再生可能エネルギーは元々時間変動があるわけですが、それによって生まれた余剰電力、これを利用して水素をつくっていくということ、これは再生可能エネルギーの弱点克服にもなるかと思います。
この再生可能エネルギー等を由来とする水素製造を進めることを水素社会の実現の一つの目的としていただきたいと思うんですが、これに向けた研究の課題と展望を大臣よりいただきたいと思います。

○国務大臣(宮沢洋一君)
水素社会を実現するためには、やはり水素をどうやって製造するかというのは大変大事な問題であります。その中で、今委員御指摘のように、再生可能エネルギー由来の電気を用いて水素を製造するということにつきましては、まさに製造段階を含めてCO2を排出しないエネルギー源とするということでございまして、極めて重要な技術であると考えております。また、今おっしゃいましたように、天候の変化等による発電量の変動という再生可能エネルギーの課題の一つにつきまして、この変動を水素製造によって吸収するということも大変大事なことだろうと考えております。
ただ、問題は、この技術を本当に実用化するためには極めてコストが今高いということでありまして、低コストで効率的、安定的に水素を製造する電気分解装置の開発などの研究開発が必要であります。
このため、経産省といたしましては、二〇一三年度から十年計画で革新的な水素製造技術の研究開発に取り組んでおります。計画期間終了後の二〇二二年度には、再生可能エネルギー由来の水素を現行の水素と競合可能な価格で製造する基礎的な技術を確立することを目標として、これからも研究開発をしっかりと進めてまいります。

○矢倉克夫君
ありがとうございます。
これで終わりますが、今、再生可能エネルギーに関しては大臣おっしゃったコストがやはり問題だと思います。それをしっかりと克服する技術の粋を集めて、是非積極的に更に推進していただきたいことを御要望いたしまして、質問を終わります。
ありがとうございます。

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