2015-04-07
○矢倉克夫君
公明党の矢倉克夫です。よろしくお願いいたします。
まず、お配りさせていただいた資料を御覧いただきたいと思います。今日は、難民認定の関係を御質問させていただきます。
別表一という紙に書いておりますが、難民認定申請数の推移、御覧になって分かりますとおり、平成十七年、三百八十四名であったのが、その後、しばらく千名前後で推移をしておりました。しかし、平成二十二年、千二百二名、その後、平成二十三年に千八百六十七名と急激に増加をして、平成二十四年には二千五百四十五名、そして平成二十五年には三千二百六十名、さらに平成二十六年には五千名を突破するという、急激な増加がこのグラフからは読み取れるかと思います。
まず、難民申請者の方々がこのように増加をした背景、とりわけ平成二十二、三年以降から急激に増加をしている背景について御説明をいただきたいと思います。
○政府参考人(井上宏君)
お答え申し上げます。
委員御指摘のとおり、近年、難民認定申請者数は急増の傾向にございまして、昨年の申請数は五千件に達したところでございます。実際、このような難民認定申請者の中には、明らかに難民条約上の難民の要件に該当しない事由を申し立てて申請に及ぶ者や、不認定とされた前回申請と同様の事情を申し立てて繰り返し申請に及ぶ者などが見受けられるところでございます。
その背景につきまして、特にここ数年間の急増のことを考えますと、正規在留者である申請者に対しまして難民認定申請から六か月が経過すれば就労が可能な在留資格を与えるという現在の取扱いが、これ一部の外国人の間で、日本で難民認定申請をすれば就労できるというような形の情報となって広がっていった結果、我が国での就労を企図して難民認定制度を濫用する者の増加につながったものではないかと考えられるところでございます。
○矢倉克夫君
今日は表にはしておりませんが、今説明のありました正規滞在資格を持った人の難民申請の推移というのもありまして、平成十七年には百九名であったのが、平成二十五年には二千四百四名まで増えました。平成二十六年には三千七百名、これ十一月段階の数ですが、これまで増えているという、この数値も今の説明を少し裏付けるものではあるかと思います。
ただ、私、冒頭ちょっと申し上げたいことは、まず、正規の滞在資格を持った方が難民申請をするということ、これ自体は必ずしも普通ではないということではないということ。とりわけ、難民になる方の難民ビザというものはないものですから、大体本当に緊急の場では、まず短期でも滞在できるような観光ビザであったりビジネスビザであったり、また短期滞在のビザをまず申請して、その後安全なところに行った上で難民申請をするということ、これは正常の話でもあり、そのような方法全てが偽装難民だと言うこと自体はおかしいという点は、まず冒頭申し上げておきたいと思います。
私が今ちょっと問題点にしたいと思うのは、非常に濫用している案件も増えていることはこの数値の異常さからも非常に見えている。ただ他方で、背景ですけれども、だからといって、この偽装難民の問題が増えているから難民認定自体を厳しくしなければいけないんだというような論調にすぐ行ってしまうのも非常に問題であるかなと。むしろ、議論すべきは、何かこの日本の難民認定制度にやはりもっと改善すべき点があり、それが改善されていないことが制度を悪用されるような、助長を生むような状態になっている部分もあると。難民認定自体を厳しくするという論調よりは、日本の難民認定制度をもうちょっと改善するということで議論を進めていかなければいけないんじゃないかというような部分の話をやはりしていきたいという点がまず今日の問題意識であります。
今説明のありました、申請後六か月を、難民申請を、六か月を超えた場合に一律に就労を認めるというこの特別滞在という部分での対応であるかと思いますが、このような運用にされた部分での趣旨、その辺りについてまた御説明をいただきたいと思います。
○政府参考人(井上宏君)
お答え申し上げます。
委員の御指摘は、平成二十二年の三月にそのような一律に就労を認める、六か月たてばですね、取扱いに変更したということでございます。このような取扱いに変更した趣旨は、真に庇護を求める難民認定申請者の生活の安定に配慮することを目的としたものでございましたが、先ほど申し上げましたように、結果としてこれが我が国での就労を企図して制度を濫用する者の増加につながってしまったものと認識してございます。
そこで、法務大臣の私的懇談会である第六次出入国管理政策懇談会やそこの下に設けられました難民認定制度に関する専門部会から昨年末に提言を受けてございまして、現在、濫用防止策を含めた難民認定制度の見直しの検討を行っているところでございます。
ただ、すぐに難民認定を厳しくするというのではなくて、一律に就労を認めることがどうかというところの検討をまずしているところでございまして、この点につきましては、一定の条件を設けて個別にその許否を判断していく枠組みとするのが基本的な方向と考えてございまして、その具体的なところにつきましては、現在、鋭意検討しているところでございます。
○矢倉克夫君
趣旨は、その難民申請をする人の経済的困窮、まさに人道的配慮の部分もあるかと思います。その内容は正しい方向であると思う。ただ、あとは運用をどのようにするのか、また難民申請をする人の経済的困窮というのをまた別途の方向で経済的援助をする枠組みというのも考えていかなければいけないと思うし、その点は引き続き御検討をいただきたいというふうに思います。
私、その上で、もう一つこの問題が大きくなっている背景というのが、やはりこの審査期間というものが全体として長くなっている。要は、今六か月申請した後に経過した人が、審査期間が、判断がされるまで就労を認められるというようなことが立て付けになっております。それが、審査期間が長期化しているということが更にその方向性を使って就労しようという温床になっている助長でもあるかと思っております。
その前に、まず前提として、今の難民認定の平均的な審査期間、こちらは異議申立ての部分も含めて御説明をいただきたいと思います。
○政府参考人(井上宏君)
まず、難民認定申請がありました最初の審査、第一次審査とも申しますけれども、これにつきましては、当局の方ではいわゆる標準処理期間として六か月というものを想定して努力しておるところでございますが、近時、申請数の急増に伴いまして、直近の三か月間、平成二十六年の十月から十二月までの三か月間を取りますと、七・三か月と標準処理期間をちょっと超える方に長期化の傾向が現在進んでおります。
なお、第一次審での不認定に対して不服がある場合には、大臣に対する異議の申立てができます。これを異議審と申してございますが、こちらの方は難民審査参与員の関与なども求めまして慎重な手続になってございますので、そちらの方の平均的な処理期間は、二十六年度を通じまして二年五か月余りとかなり長期になってございます。
○矢倉克夫君
確認ですが、難民申請をした後六か月を経過したらまず就労できると。それが、異議申立て期間、判断が出るまで就労できるということ、今のお話ですと、異議申立て期間の判断の期間も含めて三年ぐらいは掛かっているということですので、正規に滞在していた人が難民申請をする、その後六か月経過したら自動的に三年間ぐらいは就労できるというような状態になっているということでまずよろしいでしょうか。
○政府参考人(井上宏君)
結果としてそのような状態になっている例が多うございます。
○矢倉克夫君
その上で、さらに、現状の制度の前提ではございますが、私の理解では、この難民認定、まず申請があれば、例えば明らかに問題が難民として該当するような事由でなければ、必ず受けなければいけないというのがまず前提としてある。その上で、一回申請がされて、それが何らかの判断がなされたものであっても再度繰り返し申請がされるというような制度設計になっているかと思います。
それを前提にしますと、先ほど、三年間まず就労ができる、その後、更に再申請をすれば、同じような事案の申立てであっても、まず審査はしなければいけないし受理しなければいけない、それがまた三年間経過をする。そういうような状態で何回も何回も何回も繰り返されて、結果的には半永久的に就労できるというような状態に制度の構造としてなってしまっているというような理解でおりますが、この点認識は正しいか、また御説明いただきたいと思います。
○政府参考人(井上宏君)
委員の御指摘のとおり、まず六か月が経過した後には本人の希望に基づいて就労を認める取扱いをしまして、それはその期間は何回も更新をして、その判断が出るまで更新を続けるわけでございますが、その判断で不認定となりましても再度の申請を認めてございますので、その結果、かなり長い間続けて在留し、その間働けるという実情につながって、それがまた申請数の増加にもつながっているものと考えてございます。
○矢倉克夫君
このような在り方というのは、国際的にはどのようなものなのか。一般的なものなのかそうではないのか、ちょっとその点、お答えだけいただければと思います。
○政府参考人(井上宏君)
諸外国の取扱いにつきまして網羅的に調べ上げられているものではございませんけれども、主要国を見ますと、再申請をおよそ受け付けないというところはございませんけれども、新たな事情を求めるとか、一定の範囲に絞って再申請を認めているところが多いように認識してございます。
○矢倉克夫君
今御説明ありました、全く例えば申請者が難民性を主張していないような事案であったり、難民認定の要件に該当しないような事情のみを主張する場合、また主張に明らかに根拠がないような事案、また多くの申請者が同じようなストーリーを申し立てたりとかするような事案、そのような事案であっても、今の現状の日本の制度はやはり同じようにまず受けなければいけない。
諸外国は、その辺りをしっかり選別をしているような運用もかなり広がっているかとは思います。そして、例えばヨーロッパなどでは、やはり最初の申請と同じような理由での再申請というものは却下といいますか、その点の判断は一事不再理のような形でしっかり判断もするというような制度の枠組みがある。他方で、そういうようなのがないような日本の今の在り方というのは、果たして国際的にも合うのかどうか、少し特異なのではないかというような部分はあります。
今日は、今これを改めてお訴えしているのは、偽装難民というふうに言われている問題、これが、先ほど申し上げた六か月以降の就労を実質的に認めるという制度の立て付けと、今の日本の難民申請の少し特異な部分、この申請を受けるその辺りの構造が合致をして、本当に悪用しようとする人には悪用しがいのある、やりやすいような構造になっているのではないかと。それをまず断ち切るためには、日本の運用の部分、在り方をしっかりまず再検討することが大事であるというふうに思っておりますが、大臣は、この辺り、申請の受理の仕方等を含めてどのようにお考えか、大臣から御所見いただければと思います。
○国務大臣(上川陽子君)
現在の日本の難民の認定制度につきましては、初回の申請の折に難民として要件に該当するかどうかということを審理した上で、その後、事情の変更によりまして新たな申請要件にかなうということになりましたならばということで、一律に再申請を認めないという制度にはしていないものでございます。
しかし、再申請を認めていること自体が、先ほど来のお話がございましたとおり、制度濫用につながっているという実態が見受けられるということでございまして、先ほど局長からの答弁の中で、第六次出入国管理政策懇談会、そして難民認定制度に関する専門部会の方から報告書が提出されたところでございまして、こうした制度につきましては見直しをすべきではないかと、こうした提案でございました。こうした提案がございましたので見直しをしているところでございますけれども、制度全体としての公正性ということについて欠くような結果にならないようにということで、保護すべき対象は何かと、さらに、専ら我が国での稼働を目的とした者等の保護に値しない対象と、このところにつきましては区別をして対応していくということが重要ではないかと考えているところでございます。
難民認定制度につきましては、真に庇護する者に対しましては十分に配慮しながら、また濫用につきましては防止するという、このための方策につきましてしっかりと検討をしてまいりたいというふうに思っております。
○矢倉克夫君
大臣、今おっしゃってくださったとおり、これ、真に保護すべき者とそうでない者をしっかり明確に分ける。その上で、やはり大事な部分は、保護すべき難民の数は国際的にも非常に増えている、そのような運用をまた改善をする中で、本当に真に保護すべき人が保護されないような状態になるような改善というのはなすべきではないという点であるかと思います。
ちょっと時間の関係もありますので用意した質問はまた次回に回させていただくとして、最後、大臣にもう一点、再度今の確認なんですが。
今の日本の難民認定の状態は、そのような制度の問題もあり、濫用されている傾向にもある。そして、もう一方の課題として、そのような改善もしつつ、やはり真に保護すべき難民というのはしっかり保護するという体制をより良く作っていかなければいけない。今、それが濫用されているという事態で、真に保護すべき難民まで保護しないような方向に議論が行ってしまうのではないかというような危険性もあるかと思います。
その辺り、日本の難民認定制度、まさに先ほど申し上げてくださったように、しっかり真に保護すべきところは真に保護すべきという観点の下で基準もしっかりしていくというところを、大臣よりその方向でやるという部分を改めて御意見をいただければと思います。
○国務大臣(上川陽子君)
こうした国際化の時代の中で、難民の認定制度そのものにつきましてもたゆまぬ改善、見直しをしていく必要があるというふうに考えております。
真に難民である方、そして庇護すべき者、そしてその方をしっかりと庇護するための対策ということについては十全なる対応をしていくべきだというふうに考えておりますので、そうした見直しも含めまして、今後もしっかりと検討してまいりたいというふうに思っております。
○矢倉克夫君
ありがとうございます。
終わります。