189回 平和安全法制特別委員会(専守防衛等)

2015-08-04

○矢倉克夫君
公明党の矢倉克夫です。よろしくお願いいたします。
まず、政府の外交姿勢について。
公明党は、政権発足直後の一昨年の一月、山口代表が当時の習近平総書記と会談をしたことを始め、政府外交を補完する形で様々な活動を行ってまいりました。それもありましてか、自公政権誕生以降、近隣諸国、特に日中、日韓、この関係の対話のパイプというのは非常に強いものになっている、このように認識をいたしております。
先日も、国交正常化五十周年を迎えた韓国から国会議員団約四十名の方がいらっしゃいました。私も参加をさせていただいたんですが、一日掛けて両国間の懸案事項をしっかりと審議をする機会も与えていただきました。また、日中関係におきましては、安倍総理、二回、習近平国家主席とは会談をされまして、また実務者レベルでも会談の機会が非常に増えている。とりわけ防衛担当者間ですね、いろんな機密も抱える中での会談ではありますが、防衛担当者間が四年ぶりに会談をするというような機会、日中関係で進展もいたしました。
この外交関係において、とりわけこちらの意図をきちんと相手に伝えていく、これがこれから議論をさせていただく抑止力の大前提でもあるかと思っております。政府におかれましては、今後、より一層更に対話による外交重視の姿勢というのを是非貫いていただきたい、このようによろしくお願い申し上げます。これは御要望であります。
その上で、本題であります今日の平和安全法制について、総理もお越しいただいた席でもございますので、まず、そもそもの必要性論というものをしっかりと議論をしていきたいと思います。国民の皆様にとっては、まだこの平和安全法制が日々の暮らしの中にどのように関わっているのか、なかなかイメージが持てない。具体的にイメージを持っていただくことが非常に大事でございます。
まず、パネルを御覧いただきたいと思います。(資料提示)
憲法前文、また十三条でございます。前文、平和的生存権、そして十三条、幸福追求権、赤字のみ読ませていただきますが、平和的生存権、「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。」。また、十三条、「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、」、「最大の尊重を必要とする。」と。政治の最大の使命は、国民の安心、安全を守ることであります。危機が起きることを防ぐ、危機を起こさない、未然に防ぐということ、これが我々政治家に課されている最大の大きな使命である。そして、その憲法上の根拠がこの平和的生存権と幸福追求権であります。
今議論をさせていただいている平和安全法制は、まさに我々が政治の使命を果たす、平和的生存権、幸福追求権という憲法の価値を、これが脅かされる事態というのを未然に防ぐんだと、この憲法価値を実現するためのものであって、憲法破壊ということでは絶対ないと、これはまず申し上げたいというふうに改めて思っております。
では、いかなる事態であるのか。これについては、安全保障環境の変化というふうに言われております。主に二つございます。
一つは、パワーバランスの変化です。米ソ冷戦時代は、御案内のとおり、アメリカとソ連、こちら両方とも、勢力がそもそも均衡し合うようなこの二つがにらみ合っていた。しかし、力が同じであったので、なかなか手出しができないような状態であった。この冷戦期時代に比べまして、今はソ連というものもなくなりました。アメリカも相対的な力というのが落ちてきた。その中で、力を付けた勢力が、この力の空白、生まれている、この隙をしっかり突いて、力によって現状変更しようというような、そういうような状態に今なっているわけでございます。
そして、もう一つが、この力による変更をこれは裏付ける部分でもあるんですが、軍事技術の高度化であります。特に、我々のいるこの東アジアについては、民主党時代に防衛大臣も務められた森本拓殖大学の特任教授、衆議院におかれまして参考人としてこういうふうにおっしゃっています。「二〇〇六年ごろから東アジアにおける構造的な変化が起きていて、」と、時期を明示しておっしゃってくださっているわけでございます。
こういった安全保障環境の変化、特に軍事技術の飛躍的な向上について、典型的な想定例として挙げたいのが北朝鮮による核、ミサイルの脅威でございます。まず、これに対する政府の認識をお伺いしたいと思います。
パネルを御覧いただきたいと思います。
北朝鮮の弾道ミサイルの進化の過程についてのパネルになります。古い順に、左からトクサ、スカッド、ノドンとなります。このノドンにつきましては、射程は約千三百キロメートル、日本のほぼ全域を射程に収める。そして、その後、右に行きまして、開発中のものとしては、ムスダン、テポドン2、そしてKN08となります。この配備完了が確実に確認をされているのはノドンまででございますが、右三つの脅威というのは、これはないということではございませんで、とりわけテポドン2は、二〇〇六年と二〇〇九年と二〇一二年、日本に向けて、日本の上空を二〇〇九年はとりわけ飛びまして、発射をされたというような実績もございます。
では、次のパネルを御覧いただきたいと思います。
これは、北朝鮮の射程範囲拡大の推移をまとめたものです。こちらは、先ほどの各種ミサイルについて射程範囲のイメージを分かりやすく、平壌を中心にして、仮にそこから発射された場合はどこまでが射程範囲として広がるかというところを円にして表しています。中心から二つ目の少し紺色の輪っか、こちらがノドンの射程範囲です。北海道を除いてほぼ日本が射程に入る。これは既に配備はされているミサイルです。
さらに、次のパネルをお願いしたいと思います。
技術的精度が上がったことを示す図でありますが、少々見にくいんですが、この小さな白い四角い枠がございます。これは、北朝鮮がミサイルを撃つときに大体二〇〇九年頃から、ここら辺に向かって撃つぞというようなことを予告してから、人工衛星という形ではありますが、発射をしております。この二〇〇九年の四角い枠、ここが北朝鮮が撃つぞと言っていた地域であるわけですが、二〇〇九年の四角い枠では、大体枠の端っこの方に落ちている。二〇一二年の方を見ていただくと、枠の真ん中の方をほぼ間違いなく落としていっているという状態なわけですね。精度というのが確実にこれは上がっている。落とすと言っているところにしっかり落とせるような状態になっている。しかも、それが日本の全土をほぼ射程に収めているわけでございます。
その上で、まず中谷防衛大臣にお伺いをしたいんですが、この北朝鮮の弾道ミサイル能力の向上について、今申し上げた点、それに加えまして政府として今注視している点はどのような点であるのか、御答弁をいただきたいというふうに思います。

○国務大臣(中谷元君)
委員御指摘のとおり、北朝鮮は一九八〇年代に弾道ミサイルの研究開発に着手をして以降、長射程化ですね、長く飛ばす、また高精度化、確実に狙いを定めるといった点で非常に顕著に能力を向上させてまいりました。
一方、北朝鮮は、これらに加えて発射方式の多様化、また弾道ミサイルの運用能力の向上、これを追求をしております。この発射方式の多様化といいますと、従来はミサイル発射台に据えていたのを、最近は発射台付きの車両、これTELと言いますけれども、これを活用することで詳細な発射位置、またタイミングなどの発射兆候を事前に探査されにくくするようなことを追求をしていると。このTELにつきましては、ノドン用だけでも最大五十両もの多くの車両を保有をしていると指摘をされておりまして、多数の弾道ミサイルを様々な地点から同時に発射することが可能であると。
さらに、本年はSLBM、つまり潜水艦発射弾道ミサイル、これの試験発射の実施、これを公表いたしておりまして、今後とも打撃能力の多様化と残存性の向上を追求していくものと考えられます。
もう一点、弾道ミサイルの運用能力、これにつきましても二〇一四年以降、多数の弾道ミサイルをTEL、発射台付きの車両、これを用いて朝でも夜でも任意の地点、任意のタイミングで発射をしておりまして、奇襲的攻撃能力を含む運用能力の向上が示されているというようなことで、非常に研究開発のみならず運用能力の向上を図る動きを活発化されているということで、弾道ミサイル脅威が更に高まっているというふうに認識しております。

○矢倉克夫君
今御答弁いただいたとおり、車で、移動式で発射台が動いていく、これはどこからでも飛んでくるというわけですよね。今ノドンについては五十の車、発射台があると。これは要するに、一つに一基ミサイルを搭載すれば五十発、それぞれいろんなところで同時に発射できる可能性もあり得るというところであります。
また、潜水艦による発射も開発をされている。潜水艦ということですと海からですから、陸上からであれば、当然ですけど、北朝鮮はどこの方向にあるかは分かりますから、その方向にレーダーをしっかりと当てればいいわけですが、海からですとどこから飛んでくるか分からない、捕捉をするというのが非常に大変になってくるわけなんです。どこから飛んでくるかというのが非常に分からないようなぐらいに北朝鮮の弾道ミサイル技術というのは格段に精度を上げているというところであります。
そこで、更にもう一つ確認したいのは、じゃ、この弾道ミサイルに一体何を載っけて発射をしていくのかというところであります。やはり、核の、核兵器の脅威というのは、これはしっかりと認識をしていかなければいけない脅威であると思います。
今、私、手元に少し分厚い英文の報告書をこれは二冊持っているわけですが、これは二冊ともジョンズ・ホプキンス大学の高等国際問題研究所、通称SAISと言われている、日本の官僚の方も大変多く留学をされているところでありますが、そこの北朝鮮問題のグループの報告書であります。
こちらの一冊の中での十七ページから二十二ページぐらいには、このようなことが分析として書かれている。北朝鮮は二〇二〇年ぐらいまでには最大で核兵器百発、これを配備する、小型化してしっかりとミサイルに載っけていくことが可能となるということも書いてありました。著者はジョエル・ウィット、元アメリカ国務省北朝鮮担当官であります。
委員の皆様には、もう一冊の違う冊子の方に書いてある表をお配りをしております。赤字で書いてあるところが今私が申し上げたところを少し広げているところであります。
そもそも北朝鮮は、核実験を今もう三回やっているわけでございます。中国が核をしっかり配備する前には何回核実験を、これをしたかといいますと、これも三回ですね。三回やったというところで、中国、それを経て小型化して配備をしていったわけですが、蓋然性として、北朝鮮が小型化をしてミサイルに、弾道ミサイルに配備をするという可能性は決して否定できないレベルにこれはあるのであるというふうに改めて確認をしたいと思っております。
そこで、中谷大臣にお伺いをしたいんですが、このように弾道ミサイル技術というのが北朝鮮は非常に進展をしている、さらに、核、この技術、核兵器の技術というのも進展をしている蓋然性が非常に高いわけでございます。危険性は現にこれは存在しております。国民を守る政府としまして、このような点に関して真剣に考える必要があると思います。今の情勢を政府はどのように御認識をしているのか、国民の皆様に分かりやすく御説明をいただきたいと思います。

○国務大臣(中谷元君)
北朝鮮の核兵器の弾道ミサイルの搭載の可能性につきまして、これ、断定的なことは申し上げられませんが、二〇〇六年以降に既に三回の核実験を実施していることを踏まえますと、北朝鮮が核兵器の小型化、弾頭化の実現に至っている可能性、これも排除できないと考えておりまして、依然として北朝鮮は核兵器計画、これを継続をするという姿勢を崩していないことを踏まえますと、時間の経過とともに我が国が射程内に入る核弾頭搭載弾道ミサイル、これが配備されるリスクが増大をしていくものと考えております。
他方、核兵器以外の大量破壊兵器につきましても、韓国政府によりますと、北朝鮮は現在、化学兵器を二千五百から五千トン保有をし、炭疽菌、天然痘などの生物兵器の製造能力も有していると推定されております。特に化学兵器につきましては、シリアにおいて地対地ロケットに搭載され、使用されたと見られているように、弾道ミサイルに搭載して使用できる可能性があると認識をいたしております。

○矢倉克夫君
極めて厳しい状況にあると思います。
核の部分、可能性としてある一方、今もお話もあった生物化学兵器というのは、これはほぼ搭載することが可能であるのは確実であると思っております。
今炭疽菌のお話もありましたが、サリンというものも考えられる。そして、今韓国のお話も少し挙げていただいたんですが、ある情報によれば、今北朝鮮にある化学剤は最大で五千トンぐらいあると、これを全部使えば最大百二十五万発、弾道ミサイルに載っける、製造部分の弾頭が造られるという、このような部分もある。
そして、北朝鮮は、御案内のとおり、政情が非常に不安定であります。能力、配備した上でこれを政情が安定していない状態で発射をするという可能性も十分あるわけでございます。今、現状況としては、粛清に次ぐ粛清で非常に体制が不安定であることの裏返しのような状態でありますが、やはりこれが、また、一部の中で核による脅威というものを増幅させるような外交姿勢を仮に不満に思っているような人の口もやはり塞いでしまうと、そのまま突っ走ってしまうというようなこともあり得ます。どんどんエスカレートしていくということもある。
またさらには、核は技術の流出の問題もあるかと思います。そのような中で、この弾道ミサイルの脅威、しかも核の脅威についてどのようにこれに対処していくのか、これこそまさに安全保障環境の変化でございます。
それについて今政府がどのように対応されていらっしゃるのか、パネルを通じて確認していきたいと思います。弾道ミサイルに対する日米共同対処、これをイメージでまとめました。
まず、弾道ミサイルが発射されてロケットエンジンが燃焼している段階をこれブースト段階というふうにいいます。パネルの中では半円に描いたような形で軌道が載せてあるわけですが、その後、燃焼が終了いたしまして大気圏外においてそれまでの慣性に応じたような形で動いているのがミッドコース段階。そして、その後、大気圏に再突入をして着地をしていく、その段階がターミナル段階でございます。
日本は、このうち二段階、ミッドコース段階において海上のイージス艦等からミサイルに対して撃墜をしていく、そしてその後、そこで駄目であればターミナル段階において、落下してくるこのロケットをペトリオットPAC3でこれはしっかりと撃墜をしていくというような体制になっております。
大事なのは、先ほどもお話もありました、どこから飛んでくるか分からない、であるので、ミサイルの軌道をしっかりと情報として捕捉をしていく体制であると思っております。これについては、パネルの中央辺りに、航空自衛隊の警戒管制レーダーというのが書かれています。そして、これが地上からロケットの軌道などの情報を探知をする、その情報が自動警戒管制システム、通称JADGEと言われているわけですが、そちらにつながりまして、ここからイージス艦やPAC3等に伝わっていく。もちろんイージス艦自体も情報処理能力は非常に高いわけですので、私も横須賀の海上自衛隊の基地に行ってイージス艦の中を見学させていただいたんですが、大変な性能であるということを確認をさせていただきました。
もう一つ重要なのが米国の動きであります。アメリカの方は、これはパネルの左の方に、文字で恐縮ですが、早期警戒情報、SEWというもの、これ米軍、人工衛星等を使って発射をしっかりと情報収集をしているわけでございます。そして、それが熱源等をしっかり把握をして、どこからミサイルが飛んできて、それがどこら辺に落ちるのか、いつ頃落ちるのかというのを、第一報として先ほど言ったJADGE等に伝えていくというシステムがこれでき上がっています。これは米軍にしかないもの。そしてまた、米軍にしかないものとしては、右側の方にありますTPY2レーダーというのがあります。これは弾道ミサイルのみに対応する専門のレーダーでありまして、こちらも米軍だけが配備をしているものであります。そもそもイージス艦もアメリカが開発したものであります。
これにつきましては、今このような形で、改めて政府より、この弾道ミサイル防衛というのは日米共同対処でできなければならないということを確認をいただきたいと思っております。今米国と日本で共同で対処をしているわけでございますが、そのような形を取っている意義は何であるのか、日本にとってのどのようなメリットがあるのか、装備等、また運用、訓練などの観点から端的にお願いをしたいと思います。防衛大臣、よろしくお願いします。

○国務大臣(中谷元君)
御指摘のように、日米のミサイル防衛システム、切っても切れない関係にありまして、この図に示されたとおり、まず、海上自衛隊がSM3ミサイル搭載のイージス艦四隻による上層、これはミッドコースですね、これの迎撃、そして航空自衛隊、これはPAC3ミサイルによる下層、これはターミナル段階と言いますけれども、ごく地上に近い段階で迎撃をする、これを組み合わせた弾道ミサイル防衛システムを構築しておりますが、この日米の協力関係、これについて言いますと、まず、今年四月に新ガイドラインが確認をされましたが、この際改定をされまして、弾道ミサイル防衛に関して協力を行うということをまた確認をいたしております。
このため、日米間では、平素から米国の早期警戒情報、SEW、これは発射情報ですけれども、これを始めとする必要な情報の共有、これを行っているほか、米国は嘉手納飛行場などにペトリオットPAC3を、車力通信所と経ケ岬通信所にTPY2レーダー、Xバンド、これをそれぞれ配備をするとともに、横須賀にSM3搭載ミサイル艦五隻、これを展開をしているところでございます。さらに、共同訓練などによる日米共同対処能力の向上、維持、検証なども積極的に行っておりまして、こうした日米協力の強化、そして我が国の弾道ミサイル防衛システムとが相まってミサイルの脅威への抑止力、対処力を高めております。
したがいまして、我が国としましては、同盟国たる米国と緊密に連携をいたしましてBMDのミサイル防衛協力、これを一層推進をしてまいる所存でございます。

○矢倉克夫君
ここまで時間を掛けて明らかになりましたことは、安全保障環境の変化、これによりまして、日本を守るということ、これのためには日本とアメリカが一体となって共同で対処しなければいけない必要性というのが非常に増している、その典型例が弾道ミサイル防衛対策であるというところであるかと思います。
この弾道ミサイル防衛については、もう日米は今御説明いただいたとおり完全に一体化をしている、よく分かります。この日本を防衛するための日米共同対処というのは隙間なくつくられている、これに隙間ができれば全体の運用が狂ってしまうという状態になっているわけです。特に相手は十分間で千キロ飛ばしてくるミサイルでありますから、ちょっとの隙間はもう本当に致命傷となります。
そこで問題となるのは、この日米共同対処の一体である米国、米軍、これに対しまして、日本を守っている米軍に対して攻撃があった場合どうなるのか。先ほど来も説明もありました、米軍のみが配備している設備もございます。また、イージス艦も、日本のイージス艦だけではなくアメリカのイージス艦も配備をされている。日本のイージス艦六隻のうち四隻が弾道ミサイル対応でありますが、またアメリカは五隻がしっかり対応している。これらが修繕等も兼ねて交代交代でしっかり対応をしているわけでございます。そういうようなこの日本を守っているアメリカ、とりわけ、公海上で守っているアメリカのイージス艦等に攻撃があったときに日本は何ができるのか、これが今我々が問われている大きな問題、日米共同対処で守るためにはどうすればいいかという観点でございます。
それで次に、パネルをお願いしたいと思います。こちらは平和安全法制の全体図です。
何度かもう公明党としても提示をさせていただいているパネルでありますが、上段の部分が日本の安全を守るための法制、下段は国際社会の安全を守るため、平和の安定を守るための法制であります。左から右に行くたびに事態が緊急度が増しているというところであります。今話題としている弾道ミサイル防衛対応は、これは上段の話となる、このように理解をしております。
そこで、総理にお尋ねをしたいと思うんですが、日本の防衛のため、もう今までるる説明をしましたこの必須な弾道ミサイル防衛における日米の共同対処システム、それへの侵害を抑止すること、それが本法案の重要な目的、また必要性の一つであると考えております。今回の法制におきましてこの日米共同対処は守ることができるのか、これは総理より御答弁をいただきたいと思います。

○内閣総理大臣(安倍晋三君)
ただいま委員が説明をしていただいたように、弾道ミサイルが発射されれば千キロを僅か十分間という高速で飛翔、落下、また、そのミサイルに核兵器や化学兵器のような大量破壊兵器が搭載される場合もあり、このような兵器による攻撃への対処は我が国の安全保障上極めて重大、重要な課題であり、国民、子供たちを守る上においても極めて重要であります。
弾道ミサイルに対しては、横須賀に展開している米軍のイージス艦が自衛隊と協力して弾道ミサイル発射の早期探知やミサイルの迎撃に当たるなど、日米が共同で対処することとなります。本年四月に策定された新ガイドラインにおいても、ミサイル防衛に関して日米間で平時から協力を行うことを確認をしています。
このように、弾道ミサイル防衛は日米が緊密に協力することが不可欠であり、米国のイージス艦への攻撃を放置すれば我が国も甚大な被害を被る可能性があります。今回の平和安全法制が実現すれば、平素から自衛隊と連携して弾道ミサイルの警戒といった我が国の防衛に資する活動に現に従事している米軍の艦艇を武力攻撃に至らない侵害から防護することができます。
そしてまた、新三要件を満たす場合には、これまでは個別的自衛権ではできなかった弾道ミサイルの警戒に当たっている米国のイージス艦の防衛を実施することが可能となるわけでありまして、弾道ミサイルの脅威に切れ目のない対応を行うことが可能となり、日米同盟の抑止力、対処力は一層強化されることになります。まさに、相手国に対しましても、こちら側は隙がない、そして同盟のきずなはより強化されているということを認識させることが相手にもできると、このように思います。
このように、弾道ミサイルの脅威に対しても日米同盟は完全に機能する、そのことを世界に発信することによって日本が攻撃を受ける可能性は一層低く、なくなっていくと考えております。

○矢倉克夫君
今御説明いただきました、まさに、平素からしっかり連携を組んでしているんだということ、日米共同でしっかり対処をしているんだということを示せる体制をつくっていけることができるというのは大きなことであると思います。
今総理より、また弾道ミサイル防衛の場合を念頭に法案の必要性について具体的に御答弁をいただいたわけであります。
とりわけ、例えばパネルの方の自衛隊法改正による部分については、武器等の防護というところで、武力の行使に至らないような米軍に対する攻撃があったら、それに武器等防護をするというようなことも可能となってまいります。
その他も含めていろんな対処があるわけですが、今改めて、日本の防衛に全く関係ない法律、他国の戦争にこれは巻き込まれる法案ではないということ、これが今確認をさせていただいたところであると思います。
どこまでも日本を共に守っている他国、米国、米軍であったり、それに対する攻撃があって、それが日本に対して明白な危険となっている、そういうようなときにどうするのかというようなことがこちらの法案で今問題になっているところであります。弾道ミサイル防衛の日米共同対処がこれの典型でもあるかと思っておりますが、そのための法案であるということは国民の皆様にも伝わったものと思っております。
このような状況にもかかわらず、何らの対処も不要であると。今現に危機があるわけです。それに対して日本を守るための日米共同対処、それが危機にさらされるような部分ができたときにはどう対処すればいいのかと。そのようなことも考慮もないような形になれば、これは日米同盟放棄を言うに等しいものでもありますし、また、現実の日本の危険、また国民の皆様に対する危険というものを、これ目をつぶってしまう、そのようなものでもあると思います。この現実にどう対処するかという対案を持たずして安全保障を語ることはこれはできないと、私は非常に確信を持ってこのように思っております。
その上で、公明党は、この現実に対処をいたしまして、冒頭申し上げた平和的生存権、また幸福追求権を守る政治の責務を果たすためには一体どうすればいいのか、これを考え、他方で、憲法九条、この理念をしっかり守るためにぎりぎりの交渉というのをさせていただきました。その結果こそが昨年七月一日の憲法解釈変更に関する閣議決定でございまして、今回法文にも盛り込んでいただいた新三要件でございます。今パネルも既に提示をしていただいております。特に、この第一要件のうち、我が国と密接な関係にある他国以下のところ、これが一部限定的な集団的自衛権と言われているポイントの部分にございます。
他方で、無限定な集団的自衛権ではなく、これはもう無限定な集団的自衛権というのは他国の戦争に入っていくということでありますから、そうではなくて、あくまでも我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある、まさに先ほど来から申し上げている弾道ミサイルのような危機、これが日米共同対処を侵すような状態でございます。そのような厳格な要件を今付しております。
他方で、これに対しましては、日米共同対処を守っていく、その前提の話でもありますが、今回の弾道ミサイルの対応との関係で、このような我が国と密接な関係にある他国に対するという部分、これは要らないのであると。例えば、先ほど来の話にもありました共同対処に対して、公海上のアメリカのイージス艦に攻撃があったとき、これはどう対処すればいいのか。それに対しては、これは米艦に向けられた攻撃であっても、日本に向けられた攻撃と同視できる場合が大半であるからよいのだと、日本への攻撃としてこれは対処すればいいのではないか、法律はこの点では改正する必要はないんだというような御意見もあります。専門的に言えば、個別的自衛権でこれは対応できる場合があるという御見解、限定的とはいえ、集団的自衛権というものはこれを認める必要はないんだという御見解であります。
総理にお伺いをしたいんですが、今回、なぜ、個別的自衛権で対処可能だという見解、これではなく、新三要件という形での対処をされるのか、改めて御見解をお願いしたいと思います。

○内閣総理大臣(安倍晋三君)
そもそも、個別的自衛権の行使の前提となる我が国に対する武力攻撃とは、基本的には我が国の領土、領海、領空に対する武力攻撃をいうものであり、これはこれまで政府が一貫して述べてきた考え方であります。したがって、公海上にある米国の艦艇に対する武力攻撃は、基本的には我が国に対する武力攻撃の発生と認定できるものではありません。また、実際上、米国の艦艇への攻撃を我が国への武力攻撃の着手であると認定することは難しいものと考えられます。
また、本来は集団的自衛権の行使の対象となるべき事例について、個別的自衛権を我が国独自の考えで拡張して説明することは国際法違反のおそれがあります。また、いわゆる先制攻撃を行ったと評価されかねないものでありまして、この委員会においても様々な議論がなされているわけでございますが、個別的自衛権、集団的自衛権、これは言わば国際法的には明確でありまして、我が国に対する攻撃、今申し上げました領空、領海、そして領土、他国のものであればこれはまさに他国に対する攻撃であって、それに対して自衛権を発動するのは、これは明確に、まあこれは要請、同意があればでありますが、集団的自衛権の行使に当たるわけでありまして、このように、これまでも繰り返し説明している米艦防護の事例については、個別的自衛権での対応に限界があるため、新三要件を満たす場合には、限定的な集団的自衛権の行使として米国の艦艇を守る必要があると考えているものでございまして、個別的自衛権で対応できないかということについては、安保法制懇においても様々な議論がなされたのでございますが、これは、国際法上はそれはむしろ非常識となり、先制攻撃と国際的にはみなされる可能性が十分にあるとの結論に至ったところでございます。

○矢倉克夫君
今おっしゃってくださったとおり、個別的自衛権で対処しようとして、実際は要件を満たさないまま集団的自衛権の行使という形になってしまうのは、やはり国際法上も問題もあるという部分もあるかと思います。
また、これ、できる場合もある、個別的自衛権で対応できる場合もあるんだと、こういうような形で法制度というものをしっかり整備しないまま仮にいった場合は、じゃ、平素からの連携というのが、これ枠組みがしっかりつくれるのかどうかというところ、これも非常に重要な問題なのではないかと思います。
その辺りについて総理はどのようにお考えか、お聞きしたいと思います。

○内閣総理大臣(安倍晋三君)
かつて、これは政府答弁において、できる場合があるという法制局長官の答弁があるわけでございますが、これは、状況によってはあり得るのではないか、法理として排除されないということを述べているわけでありますが、例えば、たまたま日本の艦艇よりも近接する形で前に米艦があって、日本に攻撃をするといいながら、これが弾が米艦に当たったということになれば、それは法理上はありますが、現実問題としてはそんなことは起こり得ないわけでございまして、実際には、それを想定して、そもそも先ほど委員が御説明されたような、弾道ミサイル防衛に対して、その一翼を担っているイージス艦に対する攻撃をそれで解釈をするのは全く無理な話であろうと、こう思うわけでございまして、そして、こうした形でまさに平素から共同で対処できるということになれば、平素においての訓練において様々にそういう事態を想定した、法的根拠ができれば、想定した訓練等もでき、より素早い密接な対応が可能となる、まさに日米同盟による対応は完璧なものになっていくと、このように思うわけでございます。

○矢倉克夫君
まさに、平素から緊密に連携してこそ初めて完成する日米共同対処というもの、枠組みをしっかりつくることで更にそれを連携を深めていくというところも、今回、個別的自衛権ではなく、限定的でありながら集団的自衛権という形を取った根拠の一つであるというふうに私も今理解をさせていただきました。
その上で、国民の皆様がやはり御不安に思っているところは一つ確認をさせていただきたいと思います。それは、この憲法九条、解釈は一体どこまで広がっていくのかというところでございます。
そもそも自衛権の存在というものも、これは解釈によって生まれたものであります。政府の今までの見解を見ると、当初自衛権というものはないと言っていたものがあるとなった。これこそまさに百八十度の転換であったわけです。そこから昭和四十七年の集団的自衛権は認められないという解釈、そして昨年の閣議決定というふうに、まさに憲法九条に向けてのこの自衛権の解釈というのは、これ拡大の歴史であったわけでございます。
今回、この新三要件というもの、これは憲法九条の下で日本を守るためのぎりぎりの自衛の措置の限界を定めたものであります。今後、憲法解釈で自衛権というのが広がることはないんだと、この点、総理から改めて御見解をいただきたいと思います。

○内閣総理大臣(安倍晋三君)
憲法第九条の下で許される、国民の命と平和な暮らしを守るための必要最小限度の自衛の措置としての武力行使のみであります。
今回、新三要件を満たす場合には限定的な集団的自衛権の行使を容認しましたが、これはあくまでも自衛の措置に限られ、他国を防衛することそれ自体を目的とする集団的自衛権の行使一般を認めたものではないわけであります。
現行憲法の下では、世界各国と同様の集団的自衛権の行使一般を認めるなど、今回の解釈を超えて自衛権を広げるような解釈を採用することは困難であり、その場合は憲法改正が必要となると考えております。

○矢倉克夫君
ありがとうございます。
最後、質問させていただきたいと思います、端的に。日本は専守防衛の国であります。自国を守るためにしか自衛権というのは行使できない、これを改めて確認をさせていただきたいというふうに思います。
日本が戦争をする国にならないというのは、装備面でもしっかりと担保をされているところであります。衆議院の質疑で参考人として御出席くださった小川教授などは、雑誌の寄稿の中などにおいて、自衛隊は侵略戦争を行う能力、具体的には、爆撃機等も持たず、海を渡って数十万規模の陸軍を上陸させたり、そのような能力を持たないと、自衛隊は装備能力面においても専守防衛のために動くということを言っております。
最後に、総理にお伺いしたいのですが、自衛隊は今後も戦争をする国になるための能力、装備は一切これは持たない、今も防衛大綱であったり中期防であったり、確認はしているところでありますが、さらには予算についても、今後いろんな方が防衛費が二倍、三倍と膨れ上がるんじゃないかというようなイメージ、これを持っていらっしゃるわけですが、今回は自衛隊が今持っている能力をしっかりと活用できなかったところを活用する、そういう法制であります。そういう形で、予算がわあっと広がるというものではないということを総理から最後確認をさせていただきたいと思います。

○内閣総理大臣(安倍晋三君)
まさに戦後七十年の平和国家としての歩みは寸分も変わりはないわけであります。そして、平和安全法制は、戦争をするためのものではなく、あくまでも戦争を未然に防ぐためのものでありまして、今後とも自衛隊が戦争をする国になるための能力や装備を持つことは一切ないわけであります。国民の命と平和な暮らしを守る、そして国際社会の平和と安全に貢献するという自衛隊の任務には全く変わりはありません。
法整備の主眼は、このような任務を切れ目なく、そしてより一層効果的に果たすことができるようにすることにあります。このため、基本的に新たな法制により全く新しい装備が必要になったり、装備の大増強が必要になるということはなく、ましてや防衛予算が二倍、三倍と膨れ上がるということは全くありません。
今後とも、厳しい財政事情を勘案し、一層効率化、合理化を徹底した防衛力の整備に努めていく考えであります。そして、専守防衛の上においての防衛力整備を行っていくという基本的な考え方には全く変わりはございません。

○矢倉克夫君
終わります。

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