2016-03-23
○矢倉克夫君
公明党の矢倉克夫です。よろしくお願いいたします。
今日は予算委員会の委嘱ということで、私の方からは法務行政に必要な資金の規模、これに関して幾つかお尋ねをしたいと思っております。
私、法務委員会の方に在籍をして二年間、感じることは、本当に法務行政というのは非常に広がりがどんどん広がってきているなというところであります。再犯防止に象徴されるように人の更生という部分まで考えて、従来であれば収容であったのが、さらに住まいであったり職業であったり、そういう司法の部分が福祉のところにまでしっかり関与をしなければいけないという広がりがやはり出てきたと。
他方で、高齢化社会にもあるわけですけれども、成年後見制度に対しての期待であったり、また法テラスなど、司法ソーシャルワークというんでしょうか、従来は福祉の分野でもあったものが、より司法的な分野もやはり関与しなければいけないというような形になってきた。ここから言えるのは、法務行政というのを支えていくためにお金というのがこれどんどんどんどん必要になってくるなという意識はございます。
ただ、そんな広がりのある法務行政の予算でもあるんですけれども、これを見てみると、率直に言うと少ないなと、これだけ必要な分野がいっぱいあるはずなのに桁がほかのところとやはり違うんじゃないかなというところは、私、率直な感想としてあるところであります。規模としては七千億強ではあるんですけれども、しかも、その予算の内訳というか特徴として言えることが、まず人件費がこれほとんどを占めると。今、手元の資料ですと、六七%がこれ人件費であります。しかも、人件費以外の物件費と言われているような分野の方のことに関しても言えることは、この内訳ですけれども、例えば一般官署の光熱費であったり、あと矯正施設、被収容者に食費を出したりとかするわけですけれども、そういうものであるとか、これはなかなか支出が必須となってしまうようなやはり経費というのが非常に多いと。
要するに、お金がこれから必要になるんですけれども、じゃ、どこかから、ほかのところから持ってきて新しく必要なお金の方に振り分けるとか、そういうのがなかなかできない、スクラップ・アンド・ビルドと言っていいのか分からないですけれども、そういうものがやはりできないような規模である。そうすると、やっぱり法務行政に必要なお金の規模全体を大きくしないと課題解決にはならないのではないかなというふうに思っているところであります。
それで、大臣には後ほど、法務予算というのをいかに広げていくのか、これ決意はいただくといたしまして、まずは資料を御覧いただきたいんですが、民間資金をどうやって使っていくのかというこれ知恵もやはり大事かなと。
こちら一枚目の方に、ソーシャル・インパクト・ボンドというなかなか聞き慣れない資料でありますが、社会的課題解決のために民間の資金をいかに取り入れるかというこれ取組であります。ボンドといっても債券ではなくて、成果に連動した形の投資契約。何に投資しているかといえば、再犯であったり医療費の問題、貧困の問題、あと認知症だとか、社会的課題を解決する事業に対してのこれは投資でありまして、その成果に対してリターンを受けるというものであります。
二枚目の方は、これはイギリスの方の、世界で初めてのソーシャル・インパクト・ボンドと言われている、これは再犯防止がプロジェクトとなっているものであります。
そこで、これは予算委員会の方でも質問はさせていただいたんですが、法務省の見解として、こういうアメリカとかイギリスで主に採用されているソーシャル・インパクト・ボンドの取組についてどのように御見解を持たれているのか、答弁いただければと思います。
○政府参考人(高嶋智光君)
お答えいたします。
ソーシャル・インパクト・ボンドと呼ばれます新しい社会的投資スキームにつきましては、最近、アメリカやイギリスで導入され始めている取組と認識しております。
このソーシャル・インパクト・ボンドというのは、従来行政が担ってきた社会政策実施制度を民間投資を導入して実施すると、こういうスキームだというふうに聞いておりますが、再犯防止との関係におきましては、今委員が御指摘されましたとおり、イギリスにおいて第一号の事例があるというふうに承知しております。これは、短期受刑者に対する刑務所内でのプログラムあるいは出所後の更生プログラムについて導入したものというふうに聞いているところでございます。
この民間資金を導入したプログラムということにつきましては、我が国についても従来からPFIの手法などの形で公的分野に活用する取組が進められてきておりますが、法務省としても、このソーシャル・インパクト・ボンドがどういう仕組みであるのか、関心を持っているところでございます。
このスキームは、民間資金の活用という点ではPFIと同じ、類する面を有しておりますし、また、再犯防止対策におきまして民間の知恵やノウハウを活用する、そういう契機となり得るという点で注目しているところでありますが、我が国への導入ということを考えるに当たりましては幾つか検討しなくちゃいけないことがあるだろうというふうに考えております。
一つには、民間資金を導入して利益を上げるという仕組みがこの再犯防止という分野において国民感情から見てなじむのかどうかという、こういう問題でございます。それから第二に、資金を提供する民間投資家に対する償還の基準の設定や評価の方法、これらが実際できるかどうか、あるいはできるとしてどういう仕組みとするのがいいのか。ここは大変難しい問題があるというふうに考えております。さらにもう一つは、このソーシャル・インパクト・ボンドは複数年を想定した社会的投資スキームでありますが、我が国の予算は単年度予算というふうになっていることとの整合性でどういうふうな仕組みをしなくちゃいけないのか、こういった問題がございます。
これらを含めて様々な観点からの検討が必要であるというふうに考えておりますが、法務省におきましても、我が国における先行事例があると聞いておりますので、その状況把握、それから外国の先例についても把握していきたいというふうに考えております。
○矢倉克夫君
今、我が国においての先行事例というふうにおっしゃってくださったのは、資料三で書かれているものであると思います。法務省内でも検討を開始されたということ、これは前進であるかなというふうに思います。
今、課題の一つとして、やはり成果をどうやって評価していくのかというところがありました。これについては、前回も委員会の方でも御質問を関連としてさせていただいたところはあるのですが、例えば再犯防止に関しては、厚生労働省のホームページなどでは、一人再犯者が起きなければどういった費用的な効果があるのかというところで、被収容者に対して与える食費の観点などから一日千七百四十六円であるとか、それに関連する施設の維持費であるとかも含めれば一日七千五百七十六円とか、そういった具体的な数値も出ているところではあるんですが、こういった見解に対して法務省としてはどのような見解を持っていらっしゃるのか、答弁をいただければと思います。
○政府参考人(高嶋智光君)
再犯防止の効果をできる限り見える形で示していくことは大変重要なことだと考えておりまして、ただいま委員が御指摘された受刑者等の食費等、あるいは一人当たりの管理費がどうなるかということが大事な一つの数値であるというふうに認識しております。
再犯防止の効果一般につきましては、これまでも御議論いただいている中で二つの点、すなわち社会的負担の減少と、それから社会的利益の増大、この二点について考えられるとお答えしているところでございますが、先ほど御指摘のありました被収容者一人当たりの食費あるいは一人当たりの運営経費、これは社会的負担の減少の方に分類されるものでございますが、このほか、非常に大事なコストとしましては犯罪自体が社会に与える負のコスト、これもございます。
こういった再犯防止による社会的な負担の減少というものを算定することは、特に最後の犯罪による社会的コストそれ自体を金額的に評価することは非常に難しい面がございますが、委員の御指摘も踏まえながら、再犯防止の効果をできる限り見える形にしていきたいというふうに考えているところでおります。
これに関連しまして、現在、法務省では刑事情報連携データベースシステムの開発を進めているところでございます。今後、このシステムを活用するなどして施策の効果を検証し、施策の効果を国民の皆様に説明していくことによりまして一層の御理解と御協力を得られるよう努めてまいりたいと考えております。
○矢倉克夫君
ありがとうございます。
一人の犯罪を犯した人に対しての与える効果であるとかを数値にするのはなかなか難しいのかもしれませんが、例えば資料二の、これイギリスの事例なんかはどういうふうにやっているかというと、受刑者を三つのグループに分けて、一つのグループでも再犯率がプログラムを受けなかった同種の犯罪者と比較して一〇%低下するか、グループの平均で七・五低下すれば償還するというような、要するに見える化というのが大事でありますから、こういう事業プログラム等の影響を受ける人たちをグループ化して、そのグループの事業プログラムを受けた前と後をこれ比較対照してどういう効果があるのかとか、いろんな成果の見え方等あると思います。
見える化というお話もあったので、そこら辺は是非、今お話もいただいた刑事情報連携データベースシステム、これも、今後の情報連携、再犯を犯した人が今後どうなるのかとかそういう情報までトレースできるようになれば、また更に評価価値、評価の基準としても上がってくると思いますので、いろいろこちらも是非活用をして更に研究を進めていただきたいというふうに思っております。
大臣から、今民間活用というところも言ったところでありますが、冒頭申し上げたとおり、法務予算というのは非常に少ないと、これから需要が非常に多くなるところでありますので、是非これの更なる拡大等に向けて、また御決意等をいただければと思います。
○国務大臣(岩城光英君)
御指摘のとおり、法務省の予算の約七割が人件費であります。また、物件費につきましても、毎年必ず予算計上せざるを得ない経費が大部分を占めております。したがいまして、新たな政策課題に対応するための予算の確保、これが極めて大切な課題だと承知をしております。
財政事情は引き続き厳しいわけでありますが、法務行政の果たすべき役割はますます重要性を増しております。したがいまして、関係各方面や国民の皆様方の御理解、御支援をいただきながら所要の予算の確保に努めますとともに、御指摘のソーシャル・インパクト・ボンドという新たな民間資金の活用方策等につきましても、各方面における実施状況等を注視してまいりたいと考えております。
○矢倉克夫君
私も、法務委員会として法務行政に関わらせていただく機会を与えていただいた人間として、より良く、この分野がいかにお金が必要かというところもまたどんどん発信してお力添えをさせていただきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
もう一点、今のところとも関連するんですが、私、もう一つ強調したいのは、これは法務の分野、特に法務省というところの特色として挙げられるのは、行政の内容も広がっているところはあるんですが、法務省そのものも霞が関の中でやはり独特の専門家集団であるなと。この法務省がいかに霞が関全体、さらには国民全体に便益を与える、利益を与える集団かというところもここはしっかりとアピールをして、また予算という部分での獲得というのにも影響していかなければいけないというふうに改めて理解もしているところであります。
先日も大臣所信の中でもいろんな政策のことをおっしゃってくださったわけですけど、その中で、今の観点から私やはり大事だなと思ったところの一つが、今、法務省が推進されている予防司法機能の強化というところであります。これは、まさに法務省でしかできないような部分でもあるかなというふうに思っております。この点を、意義と具体策についてまた御答弁をいただければと思います。
○副大臣(盛山正仁君)
今委員が御指摘いただきましたように、法務省は言わば政府の顧問弁護士といったような形で、訴訟が起きる前から法的に関与するということで行政の法適合性を高め、政府のコンプライアンス機関としての役割を果たしていくことが重要であると考えております。
そういった中、昨年四月に法務省に訟務局が設置されましたが、その目的の一つがこういった予防司法機能の強化ということでございます。今、我々の訟務局におきましては、訴訟が起きる前から法的な問題点について相談を受ける、いわゆる霞が関リーガルコンシェルジュと言われる取組を行っています。
また、昨年の五月には内閣官房に全府省庁の官房長による連絡会議が設置されておりまして、法務省は、同連絡会議を通して各府省庁における予防司法の取組の積極的な活用を促進しているところでございます。
これまで一年間で約二百四十件の相談が我々のところに参っております。それらの相談に訟務局が法律専門家としての意見を回答することによりまして、政府全体のコンプライアンス機能の強化、これを着実に図っているものと考えておりますが、今後とも、委員の御指摘のように、まずは予算の獲得、そしてそれに伴って人員の養成、こういったことも含めまして予防司法機能を更に強化をしていき、国と国民の権利利益の保護に寄与するよう取り組んでまいりたいと考えております。
○矢倉克夫君
是非、引き続きよろしくお願いします。
紛争等になって不利益を受けるのはやはり国民の皆様でありますから、そういったことの予防を事前にするべく、このコンプライアンス機能というのをしっかり果たしていく顧問弁護士的な役割というのは非常に重要であるし、国民全般に利益が及ぶ大事な大事な役割でもあると思っております。我々もこれはしっかりまたアピールというか強調させていただいて、広く国民の皆様に知っていただくように訴えていきたいと。
もう一個思ったのが、やはりまたおっしゃっていらっしゃる国際訴訟への対応というところであります。TPPなども今、議論等もこれからされる部分もあるかもしれません。また、かつては捕鯨の問題であったりとか、そういうような問題もございました。法曹資格を持っている専門家の方々が国際分野でも活躍をするという視点は大事であると思います。
これは、例えば国際訴訟において、いろいろと訟務局の知見、ノウハウはあるわけですけど、これが国際訴訟においてどのような効果を発揮するのか、この辺りも御答弁をいただければと思います。
○副大臣(盛山正仁君)
委員が今御指摘していただきましたように、国際訴訟あるいは国際紛争というものが増加をしているという環境の中、我々訟務局のメンバーが法に基づいて適正に解決していくというところにお手伝いをすることができると思いますし、また、それが我が国の国益、利益を守ることにつながると私たちは考えているところです。
我々の訟務局には、長年にわたる国内での裁判に関する法解釈論や主張立証についての知見やノウハウの蓄積がございます。こういった国内裁判への対応によって培われた知見、ノウハウは国際訴訟等での法解釈の手法や実際の国際機関の法廷等における主張立証活動に十分に活用できるものと考えておりますが、これから、これまで以上に一層我々のノウハウあるいは知見を高めていきたい、そんなふうに考えております。
○矢倉克夫君
やはり法曹としていろいろ職務等を担われた方は、手続の話でもあったり、また未知な法律にぶつかったときのリーガルマインドと言われているものも備わっていると思います。それが国際訴訟に生かされるものとしては非常に大きなものでもあると思っておりますので、この分野も是非更に拡大をしていただきたいというふうに思っております。
法務省、これからの法務行政の広がりもそうですし、こういった特色ある行政を担うところとしてまたしっかり予算も更に取っていくというような御覚悟も、必ず取っていただけた上で、是非適切、的確な法務行政を進めていただきたいというふうに念願申し上げまして、質問を終わりたいと思います。
ありがとうございます。