196回 経済産業委員会

2018-05-15

○矢倉克夫君
 公明党の矢倉克夫です。よろしくお願いいたします。
法案の審議、いよいよ佳境に入ってきたなという思いでおります。とりわけ、よく議論もされているサンドボックス制度、こちらの範囲というか、有用性を議論する上で、私、前提として、まず今日は、中小企業金融、少し問題提起をしたいなというふうに思っております。
先日、私の国会の部屋に東京情報大学の教授の堂下先生という方がお越しくださったんですが、その方、昨年の我が党の財政・金融部会でも、フィンテック時代に適合した新しい金利の体系の在り方という講演をしてくださった方であります。
まず、その堂下先生とお話ししていく中で、やはり議論になったというか、意見が一致したのは、特に事業性の短期金融であります。主に、もう無担保で無保証で短期に決裁をしてすぐに融資ができるような、そういうローンの在り方というのも非常に重要であるかという議論もありました。
確かに、私も地元入っていろいろと、いろんな業者と話をしているんですが、通常の運転の場合であっても、例えば支払サイトが長いような旅客であったりとかは、売り掛けが立った後も実際それが回収されるまで時間が長くなる、その間のつなぎ融資をどうしても運転継続していくためには必要だというのはよくある話でもありますし、農業関係とかでいえば、問屋さんなんかは、取引が多いところはやはりそういうような融通というのも非常に重要になってくる。
突発的に来る顧客からの要望に対しても対応するためにどうしてもつなぎの融資が必要になってくるということは、現実の中小取引でもこれ間々あることだと思うんですが、まずは経済産業省に対して、そういう中小企業の事業用の短期資金の重要性やこういうつなぎ融資を含めた短期資金の供給に対してどのような対応をされているのかをまずお伺いしたいというふうに思います。

○政府参考人(安藤久佳君)
 お答え申し上げます。
中小企業の皆さん方に限らないと思いますけれども、事業全体としては成り立っているんだけれども、その時々のキャッシュフローとの関係でショートしてしまうと、こういうようなお話がよくあるわけであります。したがって、そういった段階のときに弾力的かつ柔軟に短期資金を速やかに供給させていただく、こういった機能は大変大事だというふうに認識をさせていただいております。
一例を申し上げますと、昨年の中小企業の信用保険法などの改正の際に、信用補完制度につきまして新たに金融機関と信用保証協会の連携規定というものを置かせていただきました。この連携に基づきまして、現実に、私どもと金融庁がアレンジをさせていただきまして、金融機関と信用保証協会の適切なリスク分担によって、金融機関によるいわゆる事業性の評価、こういったものを行った融資や適切な期中管理、そして経営支援を促進をするということをさせていただいております。また、中小企業の多様な資金需要に一層対応するため、逆に、信用リスクの高い創業あるいは小規模事業者の皆様方について利用可能な一〇〇%保証の上限額を拡充する、こういったような制度の見直しを行ったところでございます。
いわゆる事業性評価の融資も様々な種類がございますけれども、例えば一例申し上げますと、一つ一つの担保を設定するのではなくて、仕入れや在庫といったような商流全体を把握をさせていただいて融資を行ういわゆるABLといったような手法とか、あるいは、あらかじめ設定した一定の貸出額の範囲内におきまして金融機関が企業の短期資金をスピーディーに融通をするいわゆる当座貸越し、こういったような融資制度がございます。
まだまだ金融機関の皆様方、リスクをなかなかお取りになれないということで、十分まだこういった融資が行われているというところまでは行っていないわけでございますけれども、少しずつでもこういった融資制度が普及をするように全力を挙げてまいりたいと、このように思っております。

○矢倉克夫君
 今、事業性評価のお話と、またありました。事業性評価をする、要は、こういう小口のものであっても即座に融資をするための評価の在り方という部分での事業性評価であろうと思います。これはまた後ほどフィンテックの関係で、そういった財務データにかかわらず評価し得る技術が生まれたというところのまた文脈でも話関わるところだと思いますが。
その上で、堂下先生とも、今中小企業庁からいろいろと対応いただいていることをお伺いしたんですが、そういういろんな工夫をされている中ででもやはり広がらない仮に理由があるとしたら、これは金利の上限規制というものもやはりあるのではないかというようなところが意見があったところであります。
御案内のとおり、貸金業法改正等も経た上で、今は、かつてのグレーゾーン金利をなくす趣旨の下で、利息制限法の利息にあって百万以上の融資であっても上限一五%、こういう金利の下でのみ貸し出すことができるというような体制になっております。
例えば小規模の事業者の短期金融というのはどれぐらいの額かといえば、何百万とかそういう額というのは頻繁に融通は行われるときはあると思うんです。例えば百万の融通をお願いして、その分で今の一五%、仮に二〇%だとしても、じゃ金利はどうなるかといえば、一日大体六百円ぐらいであります。それが二か月間、三か月間ぐらいの貸出しでもどれくらいの金利収入になるかといえば、大した金利にはならない。結局、そうなると、貸し出す人がなかなか貸し出さないというような事態になるというようなことはよく言われていることであります。
金融庁さんに今日来ていただいているのでちょっとお伺いもしたいんですが、金融庁さんの方でも、平成二十二年の六月のいろいろ内部での検討におきましても、ヒアリングで、零細事業者から、短期のつなぎ資金なので金利が高くても負担を感じることはないといった御意見や、また他方で、平成二十年の内閣府の規制改革会議の生活基盤タスクフォースとかの議論の中でも、上限金利の引下げを受けまして貸金業者の急激な貸し渋りが発生をして、中小零細事業者の中でも倒産や廃業が目立つようになったというような政府内部の議論もあったというふうにお伺いもしておりますが、金融庁として、この貸金業法の改正によって、金利の上限規制などにより、小口の短期資金の供給についてはどのように理解をされているのか、まずお伺いしたいと思います。

○政府参考人(水口純君)
 お答え申し上げます。
平成十八年に成立しましたいわゆる貸金業の規制等に関する法律の一部改正法、貸金業法でございますが、によりまして、出資法の上限金利の引下げ、それと、利息制限法の水準の上限金利といたしますことで資金需要者の金利負担の軽減というのをなされたところでございます。
こうした中、中小企業の資金繰りの状況について見ますと、例えば平成三十年三月の日銀の全国企業短期経済観測調査、短観によりますと、資金繰りが楽であるとされている中小企業は、苦しいとする中小企業に比べまして一二ポイント高うございます。そして、金融機関の貸出態度が緩いとする中小企業は、厳しいとする中小企業に対しまして二二ポイント高いという結果になってございまして、実際、足下では、銀行、信用金庫、それから信用組合、各業態の中小企業向け貸出残高というのは増加を続けているという状況でございます。
また、平成二十六年八月に全国財務局が各都道府県の商工会議所を対象に実施したアンケート調査によりますと、中小企業の資金繰りが悪化した要因としてこの改正貸金業法の影響というのを挙げた中小企業の割合はゼロであったところでございまして、貸金業法の改正による中小企業の資金繰りに与える影響というのは限定的であるというふうに考えてございます。
ただ、いずれにしましても、金融庁としましては、引き続き、中小企業を含む資金需要者の状況というのをよくフォローしてまいりたいというふうに考えてございます。

○矢倉克夫君
 今、現状の認識をいただきました。
他方で、今後の景気状況によっては、また金利の状況いかんによっては、今おっしゃっていただいたような事実が仮にそうだとしても、しっかりした小口の事業性の融資というのをやはりこれ考えていかなければいけない事態が来るかというふうに思います。そのための制度の実証というのもやはり重要な意味もあるかなというふうに思っているところです。
私、大臣に、改めてこの中小企業の金融とサンドボックス制度についてちょっとお伺いもしたいと思っているんですけど、今の上限金利の話なども、これは制度としてはまさに今そうなっているので今の金融庁さんのおっしゃっていただくような形に当然なると思うんですが、やはりサンドボックス制度の中でどういうふうにより良く変えていける動きがつくれるかというところも一つ例があるかなというふうに思っています。
今の金利の在り方というのは、例えばその議論も見ても、やはり消費者金融というところを中心に想定をされている。私、当然その部分では今の金利の制限というのはあるべき姿であると思うし、ここは一切動かしてはいけないというふうに思っているんですが、他方で、金融も、消費者金融もあれば事業者金融もあり、今はそういうのはもう一律で、金融の動きにも限らないで一律な金利規制になっているところであります。
今言った事業者金融の側面から見れば、小口、消費者金融にしたら百万円以上は当然大口なんですけど、事業性の金融としたら、百万ちょっとを超えるぐらいでもよくある金利の話だと思います。そういうものであっても、全て年利換算されて上限が掛かる。本来であれば、事業者としてももう少し利息を払ってでももらいたいというようなニーズがあっても、上限金利のせいで駄目だというような事態が今後も起こり得る可能性もあるかというふうに思っています。
そういうときこそ、規制の中でのグレーの部分をある解釈という部分でも新しく何か試みをしなければいけないんじゃないかというような例としてこの金利の問題というのも考えられると思いますし、その上で、ちょっと前置きが長くなって恐縮ですけど、例えばトランザクションレンディングという形で、今のITの技術を使って、即決でもういろいろ融資もできるような体制も今後生まれてくると思います。
そういう技術進展を踏まえて、今後は、このサンドボックスの制度を使った上で、新しい上限、事業性金融についての取組というものも実証し得る範囲内としても考えられるのではないかというふうに思っておりますが、大臣のその辺りの御所見と、もし、また加えて、そういった取組が社会に与えるインパクトを大臣の中で御所見があればまたおっしゃっていただければというふうに思います。

○国務大臣(世耕弘成君)
 今、トランザクションレンディングというお話がありました。これは、大手のネット通販のプラットフォーマーなどが、そこに出店している人たちの、例えば彼らは取引データですとかそういったことが全部分かるわけですから、それをベースにして即断即決でつなぎ資金を融資していくという、そういう仕組みなわけであります。ただ、現状では、御指摘のとおり、上限金利の範囲内で行われている、あるいは金融機関が行っている、あるいはそういったプラットフォーマーが上限金利の範囲内で行っているという状況ですけれども、新しいファイナンスの形態として注目すべき点はあるというふうに思っています。
また、委員御指摘のように、これを、じゃ、サンドボックスの中でその一五%の上限金利を外したようなサービスがあり得るのかどうかということですが、このサンドボックス制度というのは、私も何度も答弁していますように、事前に何か形態を決めているわけではありませんので、トランザクションレンディングで上限金利が今の貸金業法の規制を上回るようなものを申請していただくことは可能であります。
ただし、じゃ、これ今度審査する段階で、この上限金利規制というのがなぜ入ったのか、やはりいろんな事件とか社会問題が起こった結果として上限規制金利が入っているわけですから、そういった規制が保護しようとしているような権利利益が損なわれないことがきちっと担保できるのかどうか、これは少し議論をしてみないと分からないということになるんだろうというふうに思います。
そういったことをチェックの上、それが可能である、しかも、適宜ここでも議論になっているモニタリングも含めて、実行中の監督もしっかりできているということであれば認定されるということになっていくんではないかと思っています。

○矢倉克夫君
 ありがとうございます。
大臣のお考えに全く同意でありまして、新しい分野として実証し得るものも当然ある、この部分は非常に私、有用だと思います。他方で、大臣もこの前御答弁いただいたとおり、この制度の目的は、既存の法律の目的が更に適切に実現され得るような実証をしっかり努めていくということであるかなというふうに思います。
そういう趣旨の下で、安易な実証が、弊害が起こらないようにちゃんと制度の中でチェックをしていくという在り方、これも制度の中では私はしっかりとできているところもあるかなという理解もさせていただいて、是非こういう形ででの実証も進めれるような運用もまた広げていっていただきたいというふうに思っております。
こちらのこの件に関しましては、ちょっと一点だけ、例えば金利の問題にしても、既存の法令に全く没却するような実証というのはやはりあるべきではないと思うんですが、いろんな工夫の仕方、金利ではなく、また手数料であったりとか、そういういろんな名目の下でという動きもあるかもしれませんが、そういうのも含めて、社会のいろんなアイデアが出ていく、その中でシャッフルしていって、既存の法令の趣旨に反しないようなものをしっかり採用していって、実証していって、それが制度に変わっていくというような大きなダイナミズムが生まれるようにこの制度については改めて御期待をしたいという点だけは申し上げておきたいというふうに思います。サンドボックスについては以上で終わりたいというふうに思います。
続きましては、もう一つの法案の産業競争力の強化法、こちらについて幾つか質問をしたいというふうに思います。
午前中の参考人の質問でも、松田参考人などは、とにかく今の状況については、ITというものの進展によって産業構造が大きく変わったということを強調されていました。また、第四次産業革命による新たな産業構造の転換、これは業態別、業務別のものではやはり遅れてしまう、そのために横串を刺すような産業構造というのがやはり起きているというようなことをおっしゃっていただいて、非常に今の時代のダイナミズムを的確におっしゃっていただいたというふうに私も理解したところであります。
この産業競争力の強化法の改正というのは、まさに今起きている産業構造の転換、これにしっかりと、企業の動きも含めて、経済全体の動きも含めて適用するための法案だというふうに理解もしておりますが、まず経済産業省の方に、経済産業省としては、この産業競争力の強化、これに向けて産業構造をどのようにこれから今後動いていくというふうに捉えていらっしゃるのか、その点まずお伺いしたいのと、その上で、特に法案ではMアンドAという手法を強調した形で産業構造の転換ということを一つ重視をされているわけであります。その今の流れの中でMアンドAという手法が果たす役回りをどのように捉えているのかを御答弁いただきたいというふうに思います。

○政府参考人(中石斉孝君)
 お答えいたします。
委員御指摘のとおり、第四次産業革命の中、IoTや人工知能という新しい技術が既存の産業と組み合わせて新しい製品、サービスが生まれてきたということでございます。この中で、産業構造を、これまで、例えば自動車産業とかあるいは電子製品産業、製造業とか、あるいはサービス業といった縦割りの区分でありましたけれども、今後は、業種の垣根を越えて、経営資源を組み合わせて、例えばモビリティーですとかスマートライフですとか、そういう新しいものが生まれてくるというふうに考えております。
そして、この産業構造の変化は極めて速い流れになっておりまして、国際的にもそのトレンドがくるくる変わるぐらいに大変激しくなっております。この中で、日本企業も、迅速に経営資源を戦略的に組み替えて、そして外部の経営資源をどんどん取り込んでいくことが不可欠になっています。
この事業再編を迅速に行う手段として、我々は、今回、MアンドAは極めて有効な手段というふうに認識しております。事業再編の円滑化については、これまでも税制上の支援措置や会社法の特例措置等を講じてきましたけれども、今回の産業競争力強化法等の一部を改正する法律案では、大胆な事業再編を機動的に行えるよう、今回新しく、自社株を対価としたMアンドAを円滑化する措置を講じるなど、事業再編を促す各種支援措置を整備することと考えております。
こうしたような支援措置を活用して、今後とも産業競争力の強化に取り組んでいきたいというふうに思っています。

○矢倉克夫君
 ありがとうございます。
法案の審査ですので、ちょっと法案の重要な定義とかの内容についてちょっと確認の上でまたお伺いしたいというふうに思います。
今審議官の方から、自社株を対価にしたMアンドAというようなお話、答弁をいただきました。このまさに株対価のMアンドAの対象としては、特別事業再編という法文がありまして、これを一定程度の要件の下、認定をするという手続になっているかというふうに思います。
この内容そのものが今おっしゃったものの対象になるというふうに思っているんですが、この内容について、認定対象としてどのようなものを想定をされているのか、そして、その要件については省令や告示に委ねられている部分も多いかと思いますが、今の現状で、お答えできる範囲で具体的にどのようなものを想定されているのかを答弁いただければと思います。

○政府参考人(中石斉孝君)
 お答えします。
自社株式を対価とするMアンドAにつきましては、平成三十年度税制改正におきまして、産業競争力強化法に基づき特別事業再編計画の認定を受けた場合に、買収に際し譲渡した買収対象会社の株式の譲渡損益に対する課税の繰延べをすることが認められました。
これを受けまして、今回、この株価MアンドAの対象となる認定要件を今検討しているところでございますけれども、現在のところ三類型ほど考えておりまして、一つ目には、今後成長が見込まれる事業分野において革新的な技術などを用いて行うもの、二つ目には、幅広い事業者に利用されるプラットフォームを提供するもの、三番目には、事業ポートフォリオを転換を進めるものというのを考えています。そして、生産性の著しい向上が見込まれ、また、買収対価の額が買収会社、買う方の会社の余剰資金の額を超えているというものも一つの要件に考えています。
さらに、その詳細につきましては、委員御指摘のとおり、今後、省令及び実施指針で定める予定ではありますけれども、省令では、さらに余剰資金の額の具体的な算定方法など、あるいは、実施指針では、一つ目の対象類型で先ほど申し上げました事業分野として、例えばフィンテックなど、様々な戦略分野というのを未来投資戦略などを活用しながら定めていこうというふうに考えております。

○矢倉克夫君
 ちょっと、じゃ、更問いで大変恐縮ですけど、最後、今、省令の方で未来投資戦略に基づいた五分野というのを想定されたんですが、それ以外のものも入り得るようなものまで想定されていらっしゃるんでしょうか。

○政府参考人(中石斉孝君)
 やはり重点分野ということを考えておりまして、その際に、やはり、未来投資戦略というのを今回また改定いたしますけれども、それが主にメーンと考えています。
ただし、この重点戦略分野というのは非常に幅の広いものを今回ターゲットとしておりますので、そういう意味では、有望な分野についてのカバレッジは相当広く考えてございます。

○矢倉克夫君
 その五分野の部分を割と幅広にというような御趣旨だと今捉えましたが、それではもう一つ、MアンドAというところで今回幅を広げたところでは、再編を通じた事業承継の加速化に係る部分で、経営力向上計画について措置をされているというふうに思っております。
経営力向上計画をそのような趣旨で、MアンドAも含めた形で措置をされたというふうに理解もしておりますが、これについても、認定の対象としてどのようなものを想定されていて、また、要件としては、省令や告示に委ねられている部分もあると思いますが、これ、具体的にどのようなものを考えていらっしゃるのかを答弁いただければと思います。

○政府参考人(吾郷進平君)
 御指摘のとおり、中小企業が抱える事業承継あるいは後継者問題の解決策としても、MアンドAは重要な選択肢であると考えております。このため、今回の法改正では、高齢化や後継者不在等の事情により将来的に事業の継続が困難となることが見込まれる中小企業の経営者からMアンドAを通じて事業を承継した上で生産性の向上をする計画、これを経営力向上計画の対象に追加することとしております。
そして、認定要件というお尋ねでございましたが、この計画の認定要件といたしましては、従来の経営力向上計画と同様、事業所管大臣の定めた事業分野別指針あるいは基本方針に沿ったものでありまして、MアンドA等によって獲得する経営資源を十分に活用して、原則として、買手企業の労働生産性を三年間で一%以上向上させること、そして単なる人員削減を目的とした再編ではないこと等を確認することとしております。

○矢倉克夫君
 ありがとうございました。
今、それぞれの要件的なものもお伺いもしたところなんですが、今のそのMアンドAのいろいろ企業再編等、今度は、次はちょっと中小企業の関わりを少しお伺いしたいなというふうに思ったんですが、質問前にいろいろとレクを受けて、今、二つ、MアンドAの関係では認定を受けた制度の設計があるわけなんですけど、中小企業の関わりというところですと、どうしてもやはり後者の方の事業承継、承継がこのままだとできないからという文脈でやはり中小企業って出るのが非常に多いかなという印象が正直ありまして、最初の方の、まさにこれからの新しい経済構造に向けた主要なプレーヤーとして、最初の方のMアンドAにも中小企業というような思いというかイメージがなかなか伝わってこなかったところがあったんですが、経済産業省としては、今後の株対価のMアンドAに係る会社の特例措置、今回設けているわけでありますが、こういったものに対して、こういったものを使って、今まさに産業競争力を強化するためにいろいろ手配をして産業構造を変えるという大きな動きの中、対応しようとされているわけですけど、その中で中小企業がこういった措置をどのように活用していくということをこれ想定されているのか、答弁をいただければと思います。

○政府参考人(中石斉孝君)
 お答えいたします。
自社株式を対価とするMアンドAは、買収会社にとって、多額の金銭の流出を伴わずに、また、買収対価が会社の余剰資金を超えたとしても規模の大きな買収を実施することができると、そういう意義があると思っています。
それは、例えば急速な成長を目指すベンチャー企業ですとか、同じく急成長を上げています中小企業、こういった企業ではなかなか資金の制約が大きいわけですけれども、この自社株式を対価として使えば、自社株式の対価というのは、成長するときは特にまた対価が高く評価していただけるわけですけれども、積極的なMアンドAを仕掛けることができて、他社の革新的な技術や事業の獲得を進めることが可能となると考えています。
例えば、海外でのケースで私ども一つ念頭に置いていますのは、例えばグーグルなどは、急成長する過程でユーチューブを買収したりということは全てこの株価対価を使っておりまして、やはり急成長、ユニコーンを生むためにも一つの大きな道具であるというふうに考えております。
そして、これまで、産業競争力強化法では、会社法の特例措置、すなわちこの株価対価につきましては、株式公開買い付け、いわゆるTOBを行う場合のみを対象としておりましたけれども、したがって、買収対象は上場企業に実質限られておりました。しかし、今回の改正では、その特例措置の対象に相対取引を追加いたしまして、言わば非上場でも可能にするということを考えました。これによって、非上場会社同士の買収も支援することができ、そういった意味では、中小企業、ベンチャーにも使いやすい制度になったのではないかというふうに考えております。

○矢倉克夫君
 まず、中小か大企業かという区分けですとなかなかあれかもしれないですけれども、どんなベンチャーもやはりスタートのときは中小だったりするわけであります。そういう創業精神にあふれる中小に対しての期待というのも今お伺いできたかなと。
TOBだけではないというところで、非上場のものも含めたというような趣旨も踏まえたということも今お伺いもした。そういった中小企業も含めた、今回の制度のしっかり活性化を図って、とりわけ、今、中小企業の文脈で言っていますので、中小企業がこの制度を使いしっかりとMアンドAも通じた形でこの産業構造の変化に対応できていくためにやはり必要なのは、そういう中小企業がしっかりとMアンドAのマーケットにもちゃんと入れるような体制をつくることもやはり必要かなと。大企業同士のMアンドAとかですと、中に投資銀行が入ってとか、いろいろそういう仲裁する仕組みというのが既にあるわけでありますが、特に中小の場合ですと、そういう仲裁するサービスというのもなかなか民間ではないかもしれない、マッチングというのもなかなか難しい、そういった課題もあるかなというふうに思っております。
それ以外にも、当然ですけど、株価の評価の問題であったりとかそういった問題も含めて、私としては、やはり中小企業がMアンドAを行う上での課題というのを認識した上で、中小企業向けのMアンドAマーケットというのもしっかり育成、整備していく必要があるかなというふうに思っております。
その辺り、大臣から、どのようなお考えであるかをお伺いしたいと思います。

○国務大臣(世耕弘成君)
 事業承継といっても、親族だけの承継ではなくて親族外の承継も増えてきておりまして、中小企業のMアンドAを推進するということは非常に重要でありますので、今回の法案でも、税制の支援ですとかあるいは金融支援、こういったものを講ずることにしております。
ただ、やはり中小企業のMアンドAについては、なかなかこれ民間での担い手というのが存在しない。今おっしゃったように、大規模なMアンドAであれば、投資銀行が間に入って、当然、手数料ビジネスも成立をしているわけでありますけれども、この小規模なMアンドAについてはなかなか担い手が少ないというのが実情だというふうに思っています。
そこを埋めるという意味で、我々は、事業引継ぎ支援センターというのを全国に設置をしておりまして、ここには年々、相談件数、マッチング成約件数が増加をしているところであります。まだまだ少ないですけれども、相談件数でいけば、二十六年度二千八百件だったものが、二十九年度二月末の時点で七千七百件まで増えております。成約件数も、二十六年度は百件程度でしたけれども、二十九年度、これも二月末ですが、千三百件という形でマッチングの成約も増えているというところであります。
さらに、事業引継ぎ支援センターが一定程度データベースを持っていますので、このデータベースと民間の金融機関ですとか民間の支援機関が持っているデータベースをしっかり連携をさせて、このマッチングの精度を更に高めていくということもやってまいりたいというふうに思っております。
これからも、いろいろ案件の掘り起こしですとかこのマッチングのやり方を更に磨き上げるなど、引き続き努力を続けてまいりたいというふうに思っています。

○矢倉克夫君
 ありがとうございます。
冒頭の話で、産業構造の変化に適応するための再編というのは、やはり業態を超えた再編だということであると思います。その業態を超えてお互いがシナジーを生むような連携というのは中小企業の世界でもやはりしっかりしていかなければいけないなと思いますし、今、引継ぎの文脈でおっしゃっていただきましたが、引継ぎということは、より良くそれが、ほかのところの事業がほかのところに移ればより良くなるという、そういう意味も当然含んだものであり、是非、その事業引継ぎセンターのマッチングの在り方というのも、それぞれの承継するところと譲り受けるものの本来持っている価値がくっつくことで更により価値が生むというようなマッチングの在り方も更に追求をしていただいて、中小企業連合による更なる日本の元気、構造改革というところも視野に入れてまた制度をつくっていただきたいというふうに改めて思っております。
残りのお時間を使って、あともう一つ、もう二点ほどだけちょっとお伺いしたいなというふうに思うんですが、午前中の参考人の質疑でもちょっと出ました産業革新投資機構、こちらについてであります。
産業革新投資機構についてでありますが、この投資について、私も松田参考人にも同じような問いを実はお願いしたんですが、松田参考人のお言葉からは、事業の評価についても包括的長期視点でというようなお話がありました。
その上で、私、政府の方にもお伺いしたいんですが、やはり産業革新投資機構による支援の成果というのを事後検証するためにも、それぞれの個別案件についての検証というのもやはりしっかりしなければいけないというふうに思います。その検証をした上でそれを後に生かしていくというこのサイクルをつくる、そういう前提を込みで午前中の松田参考人は総括長期的視点というようなこともおっしゃったんだなという理解もしているんですが、政府として、この産業革新投資機構の支援成果を事後検証するための情報開示の在り方というのはどのようにお考えかをまず答弁いただきたいというふうに思います。

○政府参考人(糟谷敏秀君)
 産業革新機構は、国からの資金が投入されているわけでございますから、情報開示が適切に行われることは非常に大事であるというふうに考えております。
これまでの情報公開については、毎年度の事業報告書でありますとか、個別案件の支援決定ごとの記者会見やプレスリリース、また、半年ごとに機構全体の投資活動や収支の状況、一部個別投資案件の損益等に記者会見を行っているということをやってまいりました。個別案件の損益等については、個別企業の投資対象企業への影響ですとか、譲渡先の検討に際して一定の制約が生じる可能性があることなども踏まえて、なかなか一律に開示、全て開示というわけにはいかず、慎重に判断されるべき面もあるというふうに考えております。
ただ、その中でも最大限の積極的な情報開示を行うべく、本年から株式売却案件の開示項目を見直しをいたしまして、過去の株式売却案件の全てについて新たな項目での開示を行うとともに、IPO銘柄とか譲渡先企業が開示を行っている場合は、これは個別案件ごとの損益についても公開されておりますので、こういうものについてはしっかりと公開をすることにしておるところでございます。
経済産業省としては、積極的な情報開示を行うべく不断の見直しが行われるよう適切に指導を行ってまいりたいというふうに考えております。

○矢倉克夫君
 引き続きよろしくお願いします。
午前中の参考人の御意見は、そういう部分でも非常に参考になるような御意見だったと思います。参考人の御意見に応じた形での開示というものも是非引き続きお願いしたいなというふうに思います。
最後、ちょっと大臣にお伺いしたいというふうに思います。この産業革新投資機構による投資に対して政府の関与をどういうふうにすべきかという御視点をちょっと最後お伺いをしたいなというふうに思います。
午前中、松田参考人からは、この革新投資機構、投資機構となりますけど、投資機構による投資について、まず、やはり長期資金というものは不可欠だと、長期資金をしっかり出し手を確保するということは非常に重要である、そしてその長期資金の担い手としての機構の在り方については、やはり民業圧迫ではなく民業強化の誘い水になるようにというような御視点がまず一つございました。そして、先ほども申し上げた急激な資金の変動に対しての資金の出し手として期待をされているということであります。
こういった参考人の御意見に対してもし御所見があればお伺いしたいのと、今回の法の立て付けでは、投資基準というものが、まず産業革新投資機構が準拠するものである、これがどのようなものを想定されているのか。
そして、問題意識としては、私は、これ、時代の変化の速度は非常に速いわけであり、政府が投資の基準というのを非常に決めることもいいんですが、それが余りに硬直過ぎるとかえってこういう大きなダイナミズムを妨げてしまうことにもなり得るのではないかと。そこ辺りのバランスをどのように取られるのかという文脈から、政府の関与をどの程度にすべきかということを、最後、大臣にお伺いをしたいというふうに思います。

○国務大臣(世耕弘成君)
 この産革機構というのは、幾つかある官民ファンドの中の一つであります。日本ではなかなか投資ファンドがしっかり育たないという中で、この官民ファンドという形態で、まさに民間の投資の呼び水になるという思いで幾つか官民ファンドが設立をされてきたんだろうというふうに思います。
ただ、官民ファンドというのは、非常に性格が分かりにくいんですね。国のお金を扱っているものですから一つたりとも失敗は許されないんじゃないかという考え方もあれば、あくまでも投資運用機関なんだから、多少の失敗があってもうゼロになっちゃうようなものがあっても、全体としてポートフォリオがちゃんと組まれていて一定程度の利回りが確保されていればいいんじゃないかという考え方もある。一方で、やっぱり官がやっているんだから民業を圧迫しちゃいけないし、そして、実は、目的はもうけではなくてやはり政策目的の方であって、多少損が出ていても掲げた政策目的がしっかり達成されていればいいんじゃないかとか、いろんな少し見方があって、この官民ファンドの考え方というのは、非常に私、これ官房副長官時代からずっと悩んできて、どういうふうにやればまともなものになるかというのをずっと取り組んできているんですけれども、そういう中で、産革機構をできる限りきちっとした民間の投資機関と同じような立場のものにしていきたいというのが今回のガバナンス改革です。
しかし、一方で、官民ファンドとしての性格はしっかりと踏まえて、政策目的を外されては困るというふうに考えておりまして、このまさに政策目的の達成というのがこれが投資基準であります。これ、民間のファンドであればいわゆる運用方針ということになるんだろうと思いますけれども、政府の政策目的を踏まえたこの投資基準というのをしっかり決めていくということにさせていただいたわけであります。
しかし、それが過度に投資判断を縛るというようなことになってはまたファンドとしての活力を奪うことになりますので、この投資基準が定める事業分野については、余りがちがちの事業分野を絞るのではなくて、重点的に政策対応が必要な分野をある程度幅広く領域を示すという形にしていきたいというふうに思います。
また、投資基準も一回決めたら終わりではなくて、動きの速いビジネスの世界ですから、これ適宜見直しを行っていくということも極めて重要だと思っておりまして、毎年度機構が行う実績評価の報告を踏まえて、必要に応じて投資基準を変更するというのも定めさせていただいているところであります。

○矢倉克夫君
 ありがとうございます。
この前ちょっと中国へ行ってきて思ったんですけど、ちょっと前までは自転車のシェアリングとかも日本でも話題になっていたんですけど、今中国に行ったら、もうその辺りはもう完璧に市場が固まって、もう次に新しいビジネスの方に話が向いている。どんどん、ちょっと前まで話題になっていたものがもう既成のものになって、今度はまた更に革新的なものをという形でいろいろ動いている、本当に時代の速さを感じました。これにしっかり合わせていくためにどうすればいいかという官民一体の動きはやはり重要であるかなと、その上で、今大臣がおっしゃった視点が本当に大事かなと思っております。
そういうバランスの観点も踏まえて、民業強化の誘い水としてのファンドというところはいい言葉であるかなというふうに思っておりますので、是非そういう形での運用をお願いしたいことを申し上げまして、質問を終わりたいというふうに思います。
ありがとうございました。

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