204回 憲法審査会

2021-05-19

○矢倉克夫君
 公明党の矢倉克夫です。
 日本国憲法及び憲法改正国民投票法を巡る諸課題について、会派を代表し、意見を申し上げます。
 まず、憲法改正について、日本国憲法がうたう国民主権、基本的人権の尊重、恒久平和主義という三つの原理は、人類普遍の理念であり、これからも堅持されなければなりません。原理は単なる原則と違い、例外を許さないものと理解をいたしております。
 公明党は、この三原理を有する現憲法を、我が国の民主主義を進展させ、戦後日本の平和と安定、経済発展に大きく寄与、日本の礎を築いたすばらしい憲法であると評価をいたします。憲法改正議論に当たり、この日本国憲法を改正することそれ自体を目的とすべきではありません。
 他方、このすばらしい憲法をより良くするための改正に向けた議論はあってしかるべきです。新たに憲法に盛り込むにふさわしい価値を見出せるのであれば、あるいは現行の規定のままでは不都合が生じており憲法改正でしか解決できない課題が明らかになっているのであれば、憲法の基本原理をあくまで維持しながら、新たな条文、新たな理念、価値を加えるべきと考えます。いわゆる加憲です。
 加憲において大事なことは、何が加えるべき新たな憲法価値か、決めるのは国民であり、そのために憲法に関する充実した国民的議論が欠かせないということであります。これまで、憲法に関する国民的議論はどの程度存在をしていたでしょうか。従来の憲法議論というと、政治家や専門家による交わることのない意見の言い合い、時に政争の具と言ってもいいような姿といった印象が拭えないということは否定できないところであります。個性あふれる強い考えがぶつかればぶつかるほど、国民は憲法を遠く感じてしまっていたのかもしれません。
 憲法に関する真摯な国民的議論は、一人一人が憲法を自分のものとして捉え直すきっかけとなります。それが、これまで当たり前と思っていた憲法の様々な価値、特に三原理を真に国民のものとすることにつながる、憲法を守るためにも議論が必要である、私はそのように思います。加憲論にはその国民的議論を導く力がある、そう確信をいたします。
 以上の認識の下、憲法改正国民投票法改正案について申し上げます。
 この法案は、投票環境の向上に関するものであり、国民が憲法議論をするために必要な手続法です。憲法改正に関わる以上一切認めないでは、国民の議論する権利を奪い、国民から憲法を遠ざける結果となります。改正の内容は、平成二十八年の公職選挙法改正で措置済みのものと同様です。憲法改正国民投票の投開票に関する部分については、公職選挙法並びでもよいと考えます。本院においても速やかに結論に至ることを御期待いたし、議論にしっかり参画してまいりたいと思います。
 この場をお借りいたしまして、加憲の議論の対象となり得る項目について、幾つか個人の見解も含めて申し上げたいというふうに思います。
 まず、デジタル社会への対応です。AIや情報通信技術の発展、発達などによるデジタル化の進展は、社会全体に大きな利益をもたらしています。しかし、個人に関するデータの収集やその利活用の方法によってはプライバシー等の人権が侵害され得ることに加え、AIを使った心理的プロファイリング等は個人の主体的な生き方に影響を与え、個人の尊厳を脅かすおそれがあるとも指摘されております。
 デジタル社会の到来に際し、個人情報の保護と適切な利活用の適切なバランスや、プロファイリングによる個人の意思形成過程のゆがみなどについて、憲法上の対応が必要かという観点からの議論が必要であると考えます。
 また、現在進行中の地球温暖化は、平均気温の上昇のみならず、大雨、干ばつなどの気候の変化をもたらしております。その影響は将来、より深刻になると予測されます。良好な環境の下で健康で豊かに暮らすことは、今を生きる我々だけでなく将来を生きる全世代にとっても重要な価値であり、将来世代に良好な環境を残すことは将来世代の基本的人権を保障することにもなります。
 このような観点から、地球環境の保全を明記することも検討に値すると考えます。もっとも、地球環境の保全を明記するといっても、これを国民の権利又は責務どちらで構成するか、その他など、議論することは多くあります。
 このほか、国会議員のオンライン出席の可否に関する出席概念など、検討すべきテーマはこのほかにも多くあります。国民のための憲法論議が政局から離れて深められることを期待し、私の意見表明を終わります。

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