2022-05-20
○矢倉克夫君
公明党の矢倉克夫です。質問の機会を与えていただき、委員長、理事各位始め皆様に感謝申し上げます。
法案の柱の一つである大学への編入学資格の対象への職業能力開発短期大学校の追加、こちら、長野県、熊本県、山形県などの申請内容からもうかがえるように大事な視点であり、全国展開も視野に入れるべきものだとして賛成であります。
その上で、今日は、日本の職業訓練の在り方を、法案の観点も踏まえつつ別の視点からお尋ねをしたいと思います。
先に問題意識をお伝えすると、諸外国に比べて、日本は企業外での職業訓練、制度整備が遅れているのではないかなと思っております。背景にあるのが日本固有の終身雇用でありますが、就職ならぬ就社型で人を囲い込んで、OJTを通した組織の風土に合った人材を育てると。これ非常に利点も多かったわけでありますけど、社会全体で人材育成する仕組みやシステムというのが欠如していた。
その結果、この終身雇用から外れた大変多くの非正規の方は職業教育を受ける機会も逸してしまったわけでありますし、また、この日本型のOJTによる人材育成で育まれる人材、組織内で既存の制度やサービスを、これをサービスの低コストで高い品質でという、そういうことができる人材は育成できても、組織外の観点から新たなアイデアやノウハウを取り組んで、これまでにない組合せで新しい製品やサービスを創造するこのイノベーションという点では立ち遅れてしまったところがあると。そして、終身雇用制度も崩壊をしている。
こういったことを背景にして、やはり今は、全ての人が生きていくために必要な職業スキルを得るという個人の幸福の観点と、あとイノベーションを可能にする人材をつくって日本の成長力を強化する、まさに社会全体で職業訓練をする仕組みの構築を急ぐべきであるというのが問題点であります。
その上で、まずお伺いしたいのが、この法案でも取り上げられている職業能力開発短期大学校であります。このような実務的な能力を身に付ける機関の位置付けについて、政府としてはこの職業能力開発短期大学校は日本の会社内のOJTだけでは限界のある部分を補う機関としてどのような役割を果たしているとお考えか、まず答弁を求めたいと思います。
○政府参考人(岡崎毅君)
お答え申し上げます。
職業能力開発短期大学校は、主に高卒者を対象といたしまして高度の職業訓練を行う職業能力開発施設でございます。
この施設においては、これに加えて、地域のニーズに対応した在職者向けの職業訓練も実施しております。この在職者に対する人材育成でございますけれども、これを支援するため、職業能力開発短期大学校に加えまして、国の機関としては全国四十六か所のポリテクセンターにおいて在職者向けに業務の改善、効率化に必要な専門的知識や技術等を習得するための訓練等を実施しております。
さらに、四十七都道府県に設置されております生産性向上人材育成支援センターにおいて、企業の人材育成に関する相談支援や企業の課題に合わせた人材育成プランの提案、職業訓練の実施まで中小企業等の人材の育成に必要な支援を一貫して行っているところでございます。
これらの取組によりまして、企業における人材育成を支援してまいりたいと考えております。
○矢倉克夫君
今答弁ありましたとおり、在職者向け、また企業におけるというような基調でありました。これも大事なんですけど、もっと広く全ての人に向けての人材育成という観点から是非また更に発展的に考えていただきたいなというふうに思っております。
その上でまた、法案について、今の問題意識についてまた引き続き掘り下げたいと思いますが、冒頭申し上げたとおり賛成なんですけど、もう一つ、一つだけ懸念しているのが、今回の大学の編入学の対象を加えるというこの方向性、大事でありますけど、他方で、この職業能力訓練短期大学校も大学を頂点とする教育システムの中に組み込まれることになる。
これ、後ほども少しお話もしますけど、今の法制度だと学校教育と職業訓練というのはこれは分けているわけでありますが、私の冒頭の問題意識だと、これから社会全体で職業訓練をしっかりつくっていく仕組みをつくらなければいけない、その軸にこの職業短期大学校なども必要であるというふうに考えたときに、今回の学校教育の中に組み込まれることでこの独自性が失われてしまうようなことがないのかというような懸念が、まず私も思いました。
そうならないためにはどうすればいいかというのが私の関心事なんですけど、ここでは具体的に、例えば、職業能力開発短期大学校を卒業して大学に編入しない方のスキルの評価の枠組みや、就職に向けた制度構築の在り方を今後どのように充実させることを考えているのか、政府の答弁を求めたいと思います。
○政府参考人(岡崎毅君)
御質問ありました件でございますけれども、職業能力開発短期大学校の設立目的であります、技術革新に対応できる高度な知識、技能を兼ね備えた実践技能者の育成を、養成を実現し、地域の物づくり企業に送り出すために、例えばジョブ・カードというものを活用することによりまして在学中からきめ細かな就職支援を実施しておりまして、これによりまして、例えば令和二年度の修了者の就職率でございますけれども、九八・二%というふうになっております。
このジョブ・カードでございますけれども、自身の持つ職業経験の振り返りやスキルの見える化を図るものでございまして、厚生労働省におきましては、短期大学校の関係者に限らず、労働者等の個人への就職支援やキャリアコンサルティングに当たってジョブ・カードの活用を推奨することによって就職の支援を行っております。
○矢倉克夫君
今、現状の御説明を中心に話があったわけでありますが、今後更にどう充実させていくのかということもまた一緒に考えていただければなというふうに思います。
ジョブ・カード、このスキルの見える化というのは非常に重要な観点で、その上で、今問題意識だけお伝えします。これは答弁は特に求めないんですが、これ、見える化したスキルを、じゃ、どう評価されて採用につながっていくのかという、そこの仕組みづくりがやはり重要であるなというふうに思います。
こういった、ジョブ・カードで評価されたスキルの見える化が人事システムにしっかり組み込まれて採用システムにも持っていくというそのシステムづくりそのものが、例えば今も検討されているジョブ型雇用というものも本当の意味で推進する上では必要だというふうに思いますし、具体で言えば、ちょっと外れるかもしれませんけど、やはり、キャリアを持っていた女性の方とかが例えば出産、育児とかで一回離れて、そうしたら、その後戻るときには自分のスキルに合った仕事がなかなか就けずにパートでというような方もたくさんいらっしゃるわけであります。
そういった全ての人に適用されるようなスキルの評価システムというのがあれば、そういう方に対しての仕事のマッチングというのもやっぱりできるわけでありますから、冒頭申し上げたような問題意識にとって、そういうようなことも含めて、引き続き更なる充実というところも含めて考えていただきたいというふうに思います。
ちょっと時間の関係がありますので、もう次に行きたいというふうに思いますが、冒頭申し上げた、社会全体で職業訓練をする制度という観点からもう一つ質問をさせていただきたいと思いますが、資料用意をいたしました。こちらは、日本総研の副理事長である山田久先生が公明党の勉強会で講演をしてくださった際に使用された資料の一部で、スウェーデンの例を挙げつつ、産学官連携による職業訓練制度の方向性を示してくださったものであります。
スウェーデン、職業大学制度の整備が充実をしていて、今の、産学官、公労使の密接な連携でマッチングした実務訓練ができると。左側の方にある図というのは、スウェーデンの産業協会が企業をヒアリングをして、現在及び将来必要になるような職業をマッピングしているわけなんですよね。このマッピングに基づいて、右にあるように、政府も枠組みに入った職業教育訓練システムにしっかりと組み込まれて実際の就職に導いていると。
感銘を受けたのが、このスウェーデンでは、教育訓練プログラムの策定や指導員の派遣又はインターンなど企業での実地訓練実現など、人材育成に産業界が横断的に一体となって連携をして関わっているということであります。横断的というのがポイントで、これは会社を超えて求められるスキルを持った人材の育成にもつながっていて、まさに日本に欠けているところを補充するものではないかなというふうに思います。
それで、またお伺いをしたいんですけど、日本でもこういう業界横断的に統一的な人材育成の組織を産業界においてもつくり、そこと職業訓練大学校などスキル向上を専門とする教育機関との連携を密にするなど、会社という枠を超えた人材育成のための連携の仕組みを政府が働きかけてつくっていくべきではないかというふうに思いますが、御意見を伺います。
○政府参考人(岡崎毅君)
議員御指摘のとおりでございまして、海外の取組事例も参考にしまして、産業界と教育訓練実施機関が連携し、人材育成を積極的に行う視点が今後ますます重要になってくるというふうに考えております。
これを受けまして、本年三月に法改正しました職業能力開発促進法によりまして都道府県単位の協議会を法定したところでございます。協議会におきましては、地域や業種等で異なる人材ニーズを職業訓練にきめ細かく反映するため、産業界や教育訓練実施機関等の幅広い関係者に参画していただき、地域のニーズを反映した訓練コースの設定を促進することとしております。さらに、訓練効果の把握、検証をしっかり行いまして訓練内容の改善を図るというようなことも行うこととしております。
厚生労働省といたしましては、この協議会を通じまして、関係者と連携しつつ、地域のニーズをしっかりと把握して効果的な人材育成が実施できるよう取り組んでまいりたいと考えております。
○矢倉克夫君
是非、この協議会には期待をしております。業界横断的なものも含めて、会社の中だけで生きるスキルより、更にもっと普遍化できるようなスキルを社会全体でつくっていって、また、それを持っている人を評価できるような人事システムもしっかりつくっていくということは是非御検討をいただきたいと思います。
最後に、最後の問い、大臣にちょっとお伺いをしたいというふうに思いますが、構造改革特区という行政の在り方に関しての分野も所管されている野田大臣に、今回の法改正が職業訓練における省庁連携という観点からどのような意義を有するかを御質問したいと思います。
今の質問は、産業界と職業訓練学校との連携なので厚労省と経産省の連携になるわけでありますが、日本においては、職業訓練の充実を考えるにもう一歩考えなければいけないのは、この連携に教育界、文部科学省も加えていくと、今ほどのスウェーデンの例はまさにそれをしっかりと実現できているところであるかなというふうに思います。
職業能力開発促進法などを見ると、例えば、職業訓練は学校教育法による学校教育との重複を避けという文言があったりして、ここは二つは分けているのが日本の法の立て分けになっているというふうに思うんですが、やはり冒頭申し上げたとおり、社会全体で職業訓練をしていくという仕組みをつくる上に当たっては、この教育界もしっかりと職業訓練の輪に入っていくというのは非常に重要かなと。
そういう意味では、今回の法律はこの大学の編入学の対象を追加するという文脈ではありますけど、学校教育法と職業能力開発促進法、これ文科省と厚労省の法律がつながり合ったという点では非常に大きな意味もあるかなと思っておりますし、先ほど斎藤議員もおっしゃっていました、学ぶという人の立場からしたらどうやってつなげていくのかという観点、私はそういう御質問だというふうに思ったんですけど、非常に重要な視点だなというふうに思います。
以上を踏まえまして最後に大臣にお伺いしたいんですけど、この学校教育と職業訓練の垣根を越えるという意味において、この法案が有している意義をどのように評価されるのか、あわせて、本法案を受けて職業訓練を通じた人材育成という点について、文科省と厚労省の連携はどうあるべきと考えるか、大臣の御見解を求めたいと思います。
○国務大臣(野田聖子君)
お答えいたします。
構造改革特区における学校教育法の特例は、地域産業を担う高度人材を育成するため、一定の要件の下、現在認められていない職業能力開発短期大学校から大学への編入学を可能とするものであります。省庁間の垣根を越えた意義深い特例と考えております。
矢倉議員御指摘のとおりで、人材育成については、文部科学省、厚生労働省、経済産業省など関係省庁がしっかり連携して取り組む必要があると考えますが、連携に当たっては、時代の変化や国民目線に立って、施策の垣根を越えて一体となって取り組む、そのことが重要なものだと考えています。
○矢倉克夫君
ありがとうございます。
時代の変化と国民目線、その学ぶ人の立場、そういうのも含めて様々な生き方の多様性もあると思うし、そういうものに合わせてしっかりした職業訓練の仕組みというのもつくっていただきたい。
野田大臣には、今回は構造改革特区ですから地方活性化のための規制改革でありますけど、行政改革という意味合いも当然あるわけでありますし、何よりも省庁の縦割りという部分をしっかりリーダーシップを発揮していただける方として是非御期待を申し上げまして、質問を終えたいと思います。