2023-04-12
○矢倉克夫君
公明党の矢倉克夫です。
本日のテーマである参議院の緊急集会について、衆議院では緊急時における議員任期延長の前提的な議論として議論が進んでおりますが、私たち参議院の院の自律権の問題も絡むものであり、参議院において、より真っ正面からしっかり議論すべきものであるとまず考えます。
本審査会で議論すべき課題を私なりにまとめると、六つあるかと思います。
まず、発動要件として四つ。第一に、適用場面です。明文で衆議院が解散されていることとされていることとの関係となります。第二に、衆議院解散から特別国会の召集まで最大でも七十日程度の期間を想定したものであるかという期間要件に関して。第三に、国に緊急の必要があるときといった要件はどこまでを示すのかという緊急性の要件。第四に、内閣の求めによって開かれるため、審議対象も内閣提出の案件とこれに関連する案件に限られるのかという案件の四つであります。
これら発動要件に関係する議題に加えまして、効果について二点議論すべき課題がございます。一つは、緊急集会には首班指名などを行使し得るのかということ。もう一つは、事後に衆議院の同意がない場合の効力をどうするかであります。
これら議論のポイントは、緊急集会は二院制の例外である以上、抑制的であるべきという要請と、緊急時対応という実際の必要性から全国民の代表たる参議院に託された世界でも類を見ない制度、権能であり、参議院の独自性という観点も踏まえ、過度に抑制すべきではないという要請をいかに調和するかという観点であると考えます。
これら諸点について、緊急集会はあくまで二院制の例外である以上、厳格に解すべきと考えた場合、明文に沿った厳格なものとなり得ます。
他方、前述の全国民の代表制に加え、阪神・淡路大震災や東日本大震災による地方選挙の実施困難による選挙任期、任期延長を経験してきた現下の状況などを併せ考えたとき、国政選挙においても同様の事態が起こり得るわけであり、解釈で広げる余地は十分にあります。現に、第一の適用場面に関して、衆議院解散時に限らず任期満了時にも類推適用できるという学説が唱えられており、もはやこのような解釈は多数説となっております。衆議院の不在という根本的な点において同じだからであります。
この点を敷衍すると、第二の点である期間についても、必ずしも七十日にこだわらない解釈の余地もあり得るかと思います。
さらに、第四の要件である案件について、国会法改正によってこれらを緩和し、幅広い案件を審議できるようにすることも検討に値すると思います。
もっとも、緊急集会は二院制の例外である以上、安易な緩和には慎重であるべきとの指摘もございます。その調整の一つのアイデアとして、衆議院の同意要件の強化というものも提唱されております。衆議院が同意しなかった場合の効果については、一般に、既に行われた行為には影響を及ぼさない、将来効と解されていますが、衆議院の例外要件の緩和を二院制の趣旨を踏まえた衆議院の同意要件の強化によってバランスを取るという発想からは、遡及効を持たせることもなお検討項目ではないかという見解もあります。ただ、緊急集会の意義からは慎重に議論すべきものと考えます。
なお、公明党は、二院制の趣旨から、全国民の代表である参議院に衆議院と異なるべき権能を付与すべきであり、具体的には参議院の行政監視機能を強化すべきと従来より主張をしております。この主張とも相まって、例えば緊急時を想定した緊急集会にこそ、権力の監視、統制といった観点から、より積極的な意義付けを与えるべきではないかといった議論もこの二院制の趣旨からも可能であるということを付言いたしたいと思います。
以上、解釈による緊急集会の拡大を軸に述べてまいりましたが、この緊急集会の意義付けは衆議院で進む憲法改正による議員任期延長にも影響し得るものであり、参議院の憲法審査会において、今日挙げさせていただいた六つの点も含め、憲法学者などの意見も拝聴しつつ議論を深めるべきであり、これが衆参それぞれの真摯で建設的な検討に資することを申し上げまして、私からの意見といたします。