211回 政府開発援助等及び沖縄・北方問題に関する特別委員会

2023-04-28

○矢倉克夫君

公明党の矢倉克夫です。
四人の参考人の先生方、大変貴重な御意見、誠にありがとうございました。
まず、中西参考人にお伺いしたいと思うんですが、今ほども話があった人間の安全保障、有識者懇談会の報告書でも、開発協力のあらゆる側面に通底する基本理念というふうにお書きになっておりました。その重要性を改めてお伺いするとともに、あわせて、私たち公明党も、三月十四日に外務大臣に大綱について申入れしたとき、この人間の安全保障を重視すべきだと訴えたんですが、今回の大綱案で私注目したのは、UNDPが報告書で書いていたこの新たな要素としての連帯という言葉を人間の安全保障の新たな要素として加えていたことがあるかと思います。有識者懇談会では連携という言葉はよく出ていたわけでありますが、そことはまた異なる言葉としてのこの連帯という言葉の先生のお考えになる意味合いを。
それに関連して、私は、この連帯というのは、その連帯を実現するためには、自国と他国の成長、幸福が一致する領域をどんどん広げていく、共通の利益になるような領域を広げていく能動的な活動だというふうに理解はしているところなんですが、先生も先ほど、まさに人類公益と国益を一致させていく過程が大事だというふうにおっしゃっておりました。先生のお考えで、レジュメの方でもこういった国益と国際公益の長期的一致という言葉もあるわけでありますが、このお考えと連帯という言葉で重なり合う部分があれば是非御教示をいただきたいと思います。

○参考人(中西寛君)

御質問ありがとうございます。
お話ありましたとおり、人間の安全保障というのが、私が座長を務めた有識者懇談会報告書の中心概念、日本の開発協力の基本理念として改めて掲げるべきだというふうに書き込みました。これは、有識者のメンバー、皆さんいろいろな立場から御参加をされていたんですけれども、初回に皆さんの総括的な御意見を伺ったときに、基本的に全ての委員からそういうような御発言があったというふうに記憶をしております。
人間の安全保障という言葉が何を意味するかということについては、いろいろな考え方があろうかと思います。先ほど若林委員からお考えがありましたけれども、若林委員のような捉え方も一つではあろうかと思いますが、私は、必ずしもそれに限られるものではない。あえて申しますと、まあいささか曖昧であるけれども、人間という言葉と、つまり個人であったり社会であったり、場、様々なつながりでありますけれども、国家ではなくてそうした人間そのものに焦点を当てるということ、そして、広い意味での安全を高めるということについてコンセンサスが得られやすいということが重要だと思います。
例えば、ミャンマーのような民主化が進んでいると思われた国で、その状況が残念ながら後退してしまうということは現在の国際政治では生じてしまうわけですが、そのときに援助を止めてしまうというのも確かに一つの考え方だろうと思います。しかし、現地でその民主化の支援やそうした政治変動で苦しむ人々がいることも確かですので、そうした人々を助け続けるということも日本の開発協力の在り方ではあると思います。
そういう場合に、その政府を支援するのではなくて、人々を助けるんだという理念そのものを維持しながらどのように対応すべきかということをある程度実践的な観点から検討するということが必要ではないかという、そういう御意見もあったかと思います。
今お話にありました連帯ということについて、UNDPがどのような意味で言っているか、私は詳細に残念ながら承知しないんですが、あるいは、従来の、とりわけ西側が言ってきました人権を重視するという考え方は、個人の人権というのを重視するという考え方が根底にあるわけで、それは確かに一つの理念として正しいものであると思いますけれども、世界的に見たときに、必ずしも個人単位で人々の安全というのを考えるわけではなくて、家族であるとかコミュニティーでありますとか様々なつながりの中で個人が安全を得るという考え方もあろうかと思います。
改めて、UNDPがそういう点を見直すことを言うためにこの連帯という言葉を重視するという話であるとすれば、日本が掲げようと我々が提案しました人間の安全保障という考え方と重なり得るものだと思います。

○矢倉克夫君

ありがとうございました。
次に、佐藤参考人にお伺いをしたいと思うんですが、今の連帯というところの続きにもなるんですが、あわせて、佐藤参考人の方でもお話として、例えば自助努力というところから良い依存関係をつくるというこの発想転換が大事、非常に重要なメッセージであると私も思っております。
この先生が込められたメッセージとこの大綱にある連帯という言葉の関係の考えみたいなのを、先生もほかの文献でも、例えば、日本のこれまでについて、人類益と国益の二項対立のはざまでたくましく行き来して折り合いを付けるというようなお言葉もあったわけでありますけど、そういった先生のこれまでの発信も踏まえつつ、この連帯と先生のこの依存、良い依存関係というものの関連性について御教示いただけるところがあれば是非お願いしたいと思います。

○参考人(佐藤仁君)

ありがとうございます。
すごく難しい問いだと思うんですけど、まず、今直前に話題になっていた人間の安全保障の話についてちょっと一言だけ言わせてください。
人間の安全保障を本気でやるということは、相手国政府が嫌だと言ってもやりますかということなんですよね、まあちょっと乱暴に言えば。
日本の援助というのは、御承知のように基本的に要請主義なので、相手国政府から要請が来て、それを大使館やJICA等でもんで、そこに優先順位を付けて、東京で許可を出して、援助を送り出すと。そうすると、じゃ、政府と反対の、政府と対抗しているような勢力からは、基本的にはその政府ルートでは要請は来ないわけですよね。にもかかわらず、そこに物すごく深刻な人間の安全保障のリスクがあるときにそこに踏み込んでいくのかどうかという話だと思うんです。
これは、物すごく、その日本のODAの歴史の中で、もしこれを本当にやるんであればこれは大転換だと思うので、私は、この人間の安全保障というのは理念はもちろん理解しますし、誰もそのことに反対する人はいないと思いますけれども、ODAの仕組み上それをどうやってやるのかということはかなり慎重な検討が必要なんじゃないかなと思っています。
もちろん、日本政府がというよりも、例えば、その人間の安全保障を推進する現地の団体を、あるいは現地でどちらかというと政府と話ができる団体から申請、要請を出させるというような、そういう様々な裏技はあるかもしれませんが、そういうことも含めて考えないと、現在のそのガバメント・ツー・ガバメントの仕組みの中で人間の安全保障が一番深刻に表れている、つまり、その深刻というのは、政府が自国民に対して暴力を働いているときにどうするのかということなんですね。
これは決してレアなケースではなくて、東南アジアなんかでは、スハルトとかマルコスのお父さんとか、あるいは極端な例でポル・ポトとかですね、物すごい暴力を自国民に対して働いていたわけですから、こういうことに対してODA踏み込むのかというのは大問題だと思います。中西先生おっしゃったように、ミャンマーのことについても日本の態度が迫られるところだと思います。
そういった中で、連帯とか依存というのは、どちらかというと、将来困ったときに助け合えるような関係を今からつくっておくと。その今からつくるための触媒の一つとして、それは全てではないですけど、触媒の一つとしてODAを使っていくということであって、何かやっぱり、私の冒頭の発言で申し上げましたけど、自立というと、何か自分で全部、自分ができるようになる、それは推し進めていけば、ある種の孤立というか、ほかと関係がなくてもやっていけるような、そういうニュアンスがあると思うんです、そこまで考えている人は余りいないとは思うんですけれども。
なので、困ったときに助け合えるような関係を日常的につくっていくということで連帯という言葉が使われているのであれば、私はそれは賛成です。
以上です。

○矢倉克夫君

ちょっと続いてもう一つだけ、佐藤先生に。
事後検証というのは非常に重要だと私も思っておりまして、ODAの。先ほど申し上げた党の提言でも、モニタリングと事後評価のシステムを強化すること、ODAについてというようなことは申し上げ、結果を公開することというふうに申し上げたんですけど、今後、具体的に、では、今までのODA、これ事後評価をするに当たって、どういう、誰がどのような形で評価をし得るのか、ちょっと制度設計についてのアイデア、もしございましたらちょっと教えていただければと思います。

○参考人(佐藤仁君)

ありがとうございます。
これは、本当にやろうとするとすごく難しいと思います。
というのは、現状ですと、例えば事後評価というのは三年とか五年でやるわけですよね。それの意味というのは、比較的そのプロジェクトが始まってからそんなに時間がたっていないので、何か変化があったときに、それはプロジェクトによって起こされた変化であるという同定が比較的しやすいというのはあると思いますし、その結果を今オンゴーイングのプロジェクトにフィードバックするということができるようになるということなんですね。
ただ、十年、二十年という時間がたつと、そのプロジェクトの結果何か変化が起きたのか、ほかの要素によって変化が起きたのかというのはだんだん分かりにくくなってくるわけです。そうなってくると、そこで学んだことというのの教訓は、プロジェクトに返すというよりも開発協力全体の在り方について返すしかなくなってくるわけですね。
こういったことについて、今、人が少ないJICAみたいなところが人を割いて、十年、二十年のレビューをやりましょうって一生懸命やってくれるかというと、多分やってくれないと思います。それ、今やっているプロジェクトとか来年の予算に役に立つんですかと言われて、いや、それはちょっと分かりませんといって、なくなっちゃうような話ではないかと思うので、こういったところは、まさに市民社会とか研究者とか、いわゆるODA実務の外にいる人たちがまさに連携をする形で長期的にもモニタリングをしていくということが大事だと思います。
日本では、幸いなことに、いろんな地域の地域研究者がいます。アフリカの例えばウガンダを三十年見ていますとか、ラオスの専門家ですとか、そういう地域研究者を、地域をずっと見ている人たちをうまく使いながら、長期的に開発が持つ意味というのを検討して、その検討結果を実務機関と共有するような仕組みというのがいいんじゃないかなと思います、JICAにやらせるというよりも。

○矢倉克夫君

大変ありがとうございます。
若林先生に、今、市民社会の言葉も出ておりましたが、人間の安全保障というものを実現していく上で、社会的に、市民社会の役割について先生の御所見をもしお伺いできればと思います。

○参考人(若林秀樹君)

ありがとうございます。
今の御質問の流れの中で、連帯ということを市民社会としてどう捉えるかというところを含めてお答えしたいんですけれど、例えば、我々の団体は中国のNGOと連帯しています。国際的に二国間ではテンションが高くてまともな話もできないという中で、市民社会の役割というのは、国境を越えて人間の安全保障というところでつながるんですね。彼らも日本の経験を知りたい、日本に、取られている政府との関係、国際協力をどうやっているのかと。その前提は、彼らも人間なんですよ。彼らも大事にしているのは基本的な人権なんです。その重要性は彼らも分かっている。だから、我々は連帯をして、いろんな交換をしたりだったり、いろんなイベントをやったりして共有をしていると。最終的にどういう政治体制を選ぶかは彼らなんです。
ですから、その前に我々はできることは、国境を越えて政治観を超えて、市民社会としてつながって連帯して、国際平和、人権たる、何物か、どういう形が望ましいのかという経験を、それをベースに話す、で、最終的に向こうが選ぶというのが今の我々の役割ではないかなという意味では、連帯ということは非常に重要な言葉ですね。我々の役割はそこに発揮できるんじゃないかなと思っています。
よろしいでしょうか、以上です。

○矢倉克夫君

私もそのとおりだと思います。
最後、時間ですかね、失礼しました。
じゃ、済みません、焼家参考人、ちょっと食品ロスとかの関係の日本の課題とかもお伺いしたかったところはあったんですけど、時間ですので、申し訳ありません。
本当に様々な、特に、あともう一件だけ。あと、先ほどの紛争の地でのやっぱり安全を確保されるということは非常に重要だと私も思っていて、そこについての政府としての役回りなどもまた私たちもいろいろ検討しながら、しっかり安全も確保して、共に世界の安全に、確保に、食料飢餓を、困難回復に尽くしていきたいと思いますので、よろしくお願いします。
済みません、以上でございます。ありがとうございます。

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