2023-05-19
○矢倉克夫君
公明党の矢倉克夫です。
お二人の参考人の先生方、貴重なお話、大変にありがとうございます。
まず、脇参考人、本当に、これまでも、またこれからも、長きにわたり日本の領土である北方四島を取り返すこの活動に対して改めて敬意を表して、本当に感謝を申し上げたいというふうに思っております。
先ほど、墓参と自由訪問、とりわけ墓参についてはロシアも特に否定はしていないという話があった。それも踏まえまして、公明党としても、しっかり政府と実現に向けてどのような対応ができるかというのがまず協議をしていきたいということはお伝えを申し上げたいというふうに思います。
まず一点お尋ねをしたいんですが、今も話ももう出ているこの千島歯舞諸島居住者連盟、理事長を務められていらっしゃる、こちらに対してロシアが望ましくない団体に指定をした。これ、歴史的経緯を一切無視した許されないものである、これは私も全く同感であるというふうに思っております。
これについての所感というところでありますが、とりわけ、先ほども、連盟としては平和裏にというふうにおっしゃった。連盟の動きがこの現地のロシア人住人との交流なども通じた人と人のつながりをつくった上で、その先に四島返還というのを当然見越した上での活動であるわけでありますが、そういう蓄積がある、そういう活動をしているある意味連盟に対してこういうような指定をしたということ、これについての御所見、これまで対人交流でどういう成果があったかということも踏まえて改めてお伺いをできればというふうに思いますので、よろしくお願い申し上げます。
○参考人(脇紀美夫君)
ありがとうございます。
望ましくない団体という指定されたことにつきましては、先ほども申し上げましたように大変受け入れ難い話ですし、残念に思っております。それで、ましてや、我々は今まで、現在住んでいるロシアの元島民と交流を深めてまいりました。特に青少年にあっては、どんどんどんどん交流が深まるにつれて友達もできました。そういう中では、非常に、人と人とのつながりという部分では非常に深化しているんですが、このことについては、もちろんこのウクライナ侵攻によってということになってくると政治的な問題になってくると思っています。
したがって、我々元島民の立場で政治的な分野にまで、これについてなかなかコメントしづらいんですが、あくまでも我々は、純粋に、北方領土、これは我々のふるさとなので返還してほしいというふうに訴え続けていることでありますから、今後もこのウクライナ戦争、ウクライナ侵攻によってこの問題が左右されることのないように我々は頑張っていきたいというふうに思っております。
○矢倉克夫君
ありがとうございます。
まさに、人と人で営々とつなぎ続けられてきたものを、ある意味政治的な思惑でこういうような形で行ってくるということは、やはり許し難いものであるなというふうに私自身も改めて思うところであります。
もう一つ、脇参考人にお伺いをしたいと思うんですが、まさにこの北方領土の問題というのは、島民、元島民の皆様、またローカルな問題ということではなく、国の主権の問題として国民全体でやはり考えていかなければいけない問題だと、全くそのとおりであるというふうに思います。特に若い世代に対して、こういう問題があるということ、そしてそれをある意味自分事として捉えていくということは非常に重要であるなというふうに思います。
それらについての啓発として、教育の現場でもどういう取組があるのか、また、場合によっては、例えば既に取組もあるかもしれませんけど、北方領土の密接地域への研修旅行とか修学旅行とか、そういう取組もあったりとかするわけでありますが、それも含めまして、若い世代に対して、この問題に対してより身近に感じて、考えるきっかけを与える取組としてどういうものがあるのか、具体のものがあればそれも踏まえて、啓発ということで御意見があれば是非御指導いただければと思います。
○参考人(脇紀美夫君)
ありがとうございます。
戦後七十七年経過する中にあって、最近になってようやくといいますか、国の方、国の方というか、教科書にも取り上げられるようになりました、この北方領土問題。それ以前は教科書にも全くこのことについては言及されてございませんでしたけれども、ようやく教科書にも載るようになりました。それから、ある場面によっては、就職試験にもこの北方領土問題が取り上げられるようにもなりました。それで、加えて今、非常に有り難く思っているのは、修学旅行生がどんどんどんどん現地の、現地というか、北方領土が見える、特に根室管内の方に来ていただいているということであります。最近ではもう、羅臼だけでも三十校くらいもう今年の予定が入っております。
したがって、修学旅行生の若い方々がこの北方領土を間近に見て実感してもらえるという中にあっては、非常に効果があるものだというふうに思っていますので、これについては今後も全国的に修学旅行ということについて拡大していただければ大変有り難いと思っていますし、そういう面では、今後、我々元島民は八十七歳を超えているわけですから、なかなかもう体力的にも能力的にも気力的にも限界に達しているという中にあって、やはり二世、三世、この若い世代の方々にこの運動を引き継いでいってもらわなければならないというふうに思っていますので、そういう面では、こういう若い人たちのこういう取組というのは非常に有り難く思っていますし、今後とも広めていっていただきたいというふうに念願しております。
○矢倉克夫君
ありがとうございます。
その引き継いでいかなければいけないという思い、我々もしっかり共有して、また議論も含め、活動していきたいというふうに思います。ありがとうございます。
山添参考人にお伺いをしたいと思うんですが、ロシアにとっての北方四島の位置付け、もう既に同じような質問は出ているところもあるかとは思うんですが、改めての問いなんですけど、先生の著作とかでも、このロシアの行動というところ、その大国構想というものからいろいろな活動を規律しているというような発想もあったかというふうに思います。
この北方四島というのが、このロシアの大国構想というものの中で位置付けられるものとしてロシアも位置付けているのか、それとも、並立するかもしれませんけど、安全保障上の問題として何か位置付けを考えているのか、若しくは経済的な部分なのか。ロシアにとってのこの北方四島というのはどういう位置付けになっているのかということを、ちょっと抽象的な質問になるかもしれませんが、先生の御意見をもしいただければというふうに思います。
○参考人(山添博史君)
御質問ありがとうございます。
私が先ほど御案内のあった参考資料の中で述べた大国構想というのは主に旧ソ連の空間においてのことで、これはもう、ロシアが一番人口も集中している西の方、ヨーロッパの東部、こちらの、本来ロシアはこれぐらいであったと、本来こう戻るべきだというような、大きな民族の統合とか領土の回復とかそういったもの、それを、大国であるアメリカとかイギリス、フランスでありますとか、もちろん中国にも認めさせたいと、そういう発想であります。
太平洋でもアメリカと対峙はしているわけで、それの一環として、確かに軍事拠点として択捉島、国後島というのをロシアは使っております。これは、ソ連時代の後半に潜水艦を運用するようになって、オホーツク海を潜水艦が行動をすると、それによって、核兵器をもし先にどこかから撃たれたとしても、その潜水艦からは核兵器をもって反撃ができると。そういうものが安全保障の根幹であるという考え方に基づくので、それは北極海にも、バレンツ海ですね、にあるのが第一で、第二としてオホーツク海がある、その一部としての択捉、国後というのがありますので、それについては、やはり安全保障の観点からは今の段階では譲り難いという考え方は非常に強くあると思われます。
以上です。
○矢倉克夫君
その位置付けを踏まえた上で、では、具体的にどうやって取り戻していく交渉をしていくのかという方策について、何かアドバイス等があれば教えていただければと思います。
○参考人(山添博史君)
ありがとうございます。
非常に今申し上げたことからは難しいというのがまず出発点にはなるのですけれども、ただ、歴史を遡ると、海軍が反対していた島を日本に譲り渡したということがありまして、これは一八七五年の樺太千島交換条約のときに、カムチャツカの次のところ、幌筵島と占守島ですね、この辺りの部分をロシア海軍は日本に渡してはいけないと言っていた。ですが、これは、交渉、ロシア皇帝アレクサンドル二世と外相ゴルチャコフが、今ここで決着をして彼らのサハリン島を確保し、日本と問題は決着させるんだという決断でもって、ロシア海軍の言い分は今回は譲りましょうというふうに決着した。
こういう事例はあると言えばあるので、安全保障だから絶対に譲れないということではなくて、それよりもロシアにとって必要な利益が何か、例えばこのときに日本との経済協力、それから外交支援が是非とも必要だという状況になれば、安全保障の考慮というのは絶対的ではなくて相対的な考慮になる、それは考え得るとは思います。それは、その後、これから後の歴史の流れによると思います。
以上です。
○矢倉克夫君
お二人の参考人、大変ありがとうございました。しっかり参考にさせていただきたいと思います。
ありがとうございます。