211回 本会議

2023-05-24

○矢倉克夫君

公明党の矢倉克夫です。
私は、会派を代表し、ただいま議題となりました我が国の防衛力の抜本的な強化等のために必要な財源の確保に関する特別措置法案につきまして、総理並びに財務大臣、防衛大臣、経済産業大臣に質問をいたします。
ロシアによるウクライナ侵略は、世界各国が築き上げてきた国際秩序を危機に陥れるものです。また、我が国周辺の安全保障も、北朝鮮の度重なるミサイル発射や中国による尖閣諸島周辺海域における繰り返しの徘徊や領海侵入など、厳しさ、複雑さを増しております。かかる懸念、脅威から国民の生命と平和な暮らしを守るため、戦略的に第一に重要な要素は外交力であり、その趣旨は国家安全保障戦略にも記載のとおりであります。
まず、総理に、さきに成功裏に終了をしました広島G7サミットの結果、我が国及び国際平和を守るため必要な日本の外交力がいかに強化されたとお考えか、お伺いをいたします。
また、今回のサミットの結果を踏まえ、総理が掲げる核なき世界の理想実現に向け、いかに現実的で実践的な責任あるアプローチを図るか、いかに日本としてリーダーシップを発揮し、核なき世界を実現されるか、併せてお伺いをいたします。
その外交力と表裏の関係を持ち、それを補完する役割を有するのが防衛力であり、その強化、防衛予算の増額は、現下の情勢を踏まえると不可欠であります。
本法律案では、税外収入を防衛力の強化、整備に充てるため、新たに防衛力強化資金を創設いたします。必要な財源を年度予算ごとに確保するのではなく、あえて特別の資金を創設して将来の防衛費の財源をプールすることとした理由を財務大臣にお伺いをいたします。
また、本法律案に講じられる税外収入確保のための特別措置は、令和五年度に実施する措置に限られます。令和六年度以降、同資金への繰入れ財源を具体的にどう確保していくのか、こちらも併せて財務大臣にお伺いをいたします。
次に、財源確保策のうち決算剰余金の繰入れについてお伺いをいたします。
財源確保策が防衛財源として想定をする決算剰余金は年〇・七兆円程度、五年間計三・五兆円ですが、この三・五兆円を確保するため、政府はどのような方策が必要とお考えでしょうか。毎年の決算剰余金が幾らになるかは予測できるものではありません。防衛予算確保のための安易な国債増発による決算剰余金のかさ上げなど決してあってはならないことは当然でありますが、その点も含めて、財務大臣にお伺いをいたします。
続いて、歳出改革についてお伺いをいたします。
衆議院での本法律案に対する我が党の代表質問の際の総理答弁から、社会保障費は歳出改革の対象とならないということは確認済みでありますが、少子化対策、子育て支援予算の削減はないことを改めて総理に確認をさせていただきます。また、本法律案で政府が示した将来的な防衛予算の財源確保に向けた決意は、少子化対策、子育て支援予算においても同様に求められるものであります。少子化対策、子育て支援予算に関する財源について、あらゆる手段を尽くして確保するとの総理の決意を求めます。
さらに、令和五年度予算で防衛費の財源として建設国債が充てられることに関連をし、今後の公共事業についてお伺いをいたします。
今回、自衛隊・防衛省の施設整備や船舶建造に係る経費を財政法第四条における公共事業費として整理し、建設国債の発行対象と整理したと理解をしておりますが、この整理によって従来からの公共事業費予算が減額されることはないということでよろしいでしょうか。また、道路網整備などインフラ整備は、いざというときの自衛隊の輸送路などにもなることで安全保障面でも重要でありますが、今その老朽化対策が急務となっております。国民生活、経済、防災はもとより、防衛の観点からも必要な公共事業、特に道路の老朽化対策費について従来以上に確保すべきと考えますが、総理の御答弁を求めます。
次に、防衛予算増による国内防衛産業育成が経済や財政に与える影響についてお伺いをいたします。
防衛大臣は、四月十九日の衆議院財務金融委員会安全保障委員会連合審査会において、防衛関係費における国内向け支出額の防衛関係費全体に占める割合は約八割と答弁をされておりますが、これら国内向け支出が国内中小企業の基盤強化に与える効果についてどのように分析をされているのか、防衛大臣にお伺いをいたします。
この国内防衛産業育成の意義について、例えば、三月二十日の参議院予算委員会における私の日英伊の次世代戦闘機共同開発に関連した質問に対し、防衛大臣からは、次世代エンジニアの育成やサプライチェーンの強化を図る点であるとの答弁がありました。特に、この共同開発の経験を生かした次世代エンジニアの育成は、民生分野を含めた航空機の全機開発、機体、エンジンを含めた全機設計能力の向上や、あるいは今回の三菱スペースジェットの事業撤退で明らかになった、日本の弱点とも言える各国の認証取得に向けたノウハウ不足を解消する上でも重要と理解をしております。私は、日英伊の次世代戦闘機共同開発を含めた国内防衛産業育成を通じ、従来、ボーイングなどからの部品発注の受注の立場が主なものだったと言える日本の民間航空機産業を一段の高みに押し上げるとともに、それを通じ、部品数三百万点とも言われる民間航空機産業を自動車に並ぶ新たな裾野産業と育成することが日本の中小企業の存続のためにも重要と考えます。経済産業大臣の御所見をお伺いいたします。
また、防衛設備などの更なる国産化は、国内中小企業をそのサプライチェーンに取り込むことにより、国内雇用の確保とともに税収増加にも資するものです。これについて、財務大臣の御所見をお伺いいたします。
防衛費増額と国民理解についてお伺いをいたします。
まず、国民理解を得るために重要なことは、今回積み上げた防衛費が適正か否かを事後的に精査する仕組みがあることであります。この点、総理は、三月六日の参議院予算委員会における我が党議員の質問に対する答弁で、関係省庁において第三者による専門家会議を設置する可能性について言及されましたが、是非実行をしていただきたい。その際、外交、防衛のみならず、経済や科学技術など様々な分野の専門家を構成員とすべきと考えます。総理の御見解をお伺いいたします。
最後に、税制改正大綱でも言及された増税の実施時期については、国民との徹底した議論が必要であります。防衛力強化の財源を安易に増税に求めることは避けるべきであります。仮に実施せざるを得ない時期に来た場合、総理におかれては、自ら国民一人一人と対話する思いで国民の中に入り切り、真摯に説明し、徹底的に議論されることを強く求めます。
真に防衛力の強化を図るために必要なことは、防衛という国民全体の共通の利益に対する国民の主体的な理解と納得であり、その形成のためにも、防衛予算の財源を決するプロセスは丁寧さに丁寧さを重ねる必要があります。防衛は国民全ての共通の利益の最たるものの一つであり、その共通の利益のためにお金を拠出し合おうと国民に御理解いただくこと自体は、真の防衛力の強化にも資するとも言え、その合意形成は政治の責任です。
他方、仮に、国民が唐突感を抱くような形で拙速に増税時期決定のプロセスを経てしまうこととなれば、それは防衛力そのものが毀損、破壊されるほどの意味を持ちます。防衛力強化の観点、これも含め、国民一人一人の対話と時間を掛けた説得のプロセスを一層強く、重視をしていただきたい。防衛予算確保に向け、国民との徹底した議論の必要性について、総理の所見と決意をお伺いいたします。
以上、本法律案によって確保した財源を活用して必要な防衛力の強化が果たされるとともに、国民の皆様が安心して生活を送ることができる社会の実現のため、我が国の外交力の更なる強化が図られることを念願して、私の質問を終わります。
御清聴ありがとうございました。(拍手)

○内閣総理大臣(岸田文雄君)

矢倉克夫議員の御質問にお答えいたします。
G7広島サミットの結果を受けての日本の外交力及び核兵器のない世界に向けてのアプローチについてお尋ねがありました。
国際社会が歴史的な転換期にある中で開催された今般のG7広島サミットでは、日本が議長国として中心に立ち、G7の揺るぎない結束を改めて確認することができました。
G7首脳は、分断と対立ではなく、協調と連携の国際社会の実現に向けて、第一に、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を守り抜くこと、第二に、いわゆるグローバルサウスと呼ばれる国々を始めG7を超えた国際的なパートナーへの関与を強化すること、こうした二つの視点を柱とし、積極的かつ具体的な貢献を打ち出していくことを確認いたしました。
広島サミットでのこうした成果は、世界における日本のリーダーシップの強化、今回の招待国を始めとする国際社会のパートナーとの関係の深化にも結実したと評価しており、我が国の外交力の強化につながったと考えています。
これらを踏まえ、また、核軍縮に関する初めてのG7首脳文書となるG7首脳広島ビジョンの発出により、今次サミットは、核兵器のない世界に向けた国際社会の機運をいま一度高める機会になったと考えています。これを強固なステップ台とし、ヒロシマ・アクション・プランの内容を一つ一つ実行していくことを通じて、現実的で実践的な取組、継続、強化していきたいと考えております。
防衛力強化のための財源と少子化対策の財源についてお尋ねがありました。
防衛力強化のための財源としての歳出改革については、社会保障関係費以外の経費を対象としていることはこれまで申し上げているとおりであり、子育て支援に関する予算を削減することとはしておりません。
また、少子化対策に関して、加速化プランの財源確保については、まずは全世代型社会保障を構築する観点から歳出改革の取組を徹底するほか、既定予算の最大限の活用を行ってまいります。そして、こうした歳出改革の徹底により、国民の実質的な負担を最大限抑制していきたいと考えております。今後、六月の骨太方針に向けて、こども未来戦略会議において議論を進め、将来的な子供予算倍増に向けた大枠、これをお示しいたします。
公共事業費の確保についてお尋ねがありました。
今般、防衛省・自衛隊の施設整備や艦船建造費を建設国債の発行対象経費として整理をしましたが、これにより従来の公共事業費を減額することはありません。
その上で、自然災害等から国民の命と暮らしを守るため、あるいは我が国の経済成長や地域社会を支えるために必要なインフラについては、着実に整備していく必要があります。また、インフラの老朽化が進行しており、老朽化対策は喫緊の課題です。このため、今後とも、中長期的な見通しの下、安定的、持続的な公共投資を推進してまいります。
防衛力の抜本強化に係る専門家会議についてお尋ねがありました。
議員御指摘のとおり、三文書の策定後も、国民の理解を得ながらその内容を適切に実施していく必要があり、関係省庁において第三者による専門家会議を設置し、様々な分野の有識者の下で議論を行うこともその方策の一つです。引き続き、政府としては、国民の理解と協力を得られるよう努めていくとともに、そのための方策についても検討していきます。
防衛力強化に係る税制措置についてお尋ねがありました。
防衛力の抜本的強化については、その具体的内容、予算、財源を一体的に国民にお示しするとの方針を昨年の通常国会から一貫して申し上げており、その方針に沿って、国家安全保障会議四大臣会合、有識者会議、与党ワーキングチーム、与党税制調査会など、活発な議論を積み重ねてまいりました。その集大成として、政権与党としての方針を三文書や税制改正大綱の閣議決定の形でお示しをしました。
実施時期については、令和九年度までの過程において、行財政改革を含めた財源調達の見通し、景気や賃上げの動向及びこれらに対する政府の対応を踏まえて、閣議決定した枠組みの下で税制措置の実施時期等を柔軟に判断してまいります。
こうした防衛費増額の財源確保に向けた内閣の方針について、国民の皆様に御理解いただけるよう、国会での議論も含め、引き続き丁寧な説明を行ってまいります。
残余の質問については、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)

○国務大臣(鈴木俊一君)

矢倉克夫議員から、まず防衛力強化資金を創設する理由等についてお尋ねがありました。
防衛力強化のための財源確保に当たっては、税外収入の確保などに最大限取り組むこととしておりますが、税外収入等につきましては、年度によって変動が生じ得るものであり、必ずしも当該年度に必要となる防衛力強化のための歳出額と見合うものになりません。
このような税外収入等を防衛力の整備に安定的、計画的に充てられるようにするためには、このタイミングのずれについて年度を超えた調整を行う必要があるため、特別の資金である防衛力強化資金を新たに創設することとしたところです。
令和六年度以降については、令和五年度予算において、今後五年間の防衛力強化のための経費に充てられる税外収入四・六兆円を確保したことも踏まえ、年平均〇・九兆円程度の税外収入を確保できるように、引き続きその確保に努めていきたいと考えております。
次に、決算剰余金についてお尋ねがありました。
今般の防衛力強化のための財源確保に当たっては、国民の皆様の御負担をできるだけ抑えるべく決算剰余金を活用することとしており、過去の実績を踏まえた合理的な根拠に基づく金額を財源として見込んだところです。
その上で、決算剰余金は、予算を執行していく中で結果として生じた歳出の不用や、税収や特例公債等の歳入の増減により金額が確定するものですが、特に、特例公債については、特例公債法の規定に基づきその発行を最大限抑制するよう努めてきたところであり、今後ともこうした方針に基づいて対応してまいります。
最後に、防衛施設などの国産化による経済効果についてお尋ねがありました。
防衛産業は、中小企業を含め多数の下請企業から成るサプライチェーンを構成していると承知しており、防衛装備品等の国内調達により国内生産の拡大等につながるものであれば、国内雇用の確保や税収増にも貢献し得るものと考えています。
新たな防衛力整備計画においては、我が国の防衛生産・技術基盤を言わば防衛力そのものと位置付けた上で、その維持強化を進めることとしており、政府としてこの計画に基づきしっかりと取り組んでいくことが重要であると考えております。(拍手)

○国務大臣(浜田靖一君)

矢倉克夫議員にお答えいたします。
防衛予算増による国内防衛産業育成が経済や財政に与える影響についてお尋ねがありました。
昨年末決定した防衛力整備計画の防衛力整備の水準は、四十三兆円のうち約八割程度が国内向け支出です。防衛産業は、プライム企業のみならず、多数の中小企業の下請企業から成るサプライチェーンを構成をしております。関連する産業も含めて波及効果や雇用創出の効果があると予想されます。
また、例えば、F2戦闘機の開発において向上したレーダー技術が高速道路のETCなどに応用される事例のような他分野への波及効果も期待できると考えているところであります。(拍手)

○国務大臣(西村康稔君)

矢倉議員からの御質問にお答えいたします。
次期戦闘機開発の航空機産業育成の観点からの重要性についてお尋ねがありました。
まず第一に、御指摘のように、航空機産業は高い技術力と広い裾野を有する重要な産業であり、我が国としては、これまでも、哨戒機P1、輸送機C2などの防衛用途の航空機開発や、民間機では三菱スペースジェットの開発などを通じて、完成機開発の経験を蓄積するとともに、経済安全保障の観点からの技術開発やサプライチェーン強化など、その基盤強化に向けた取組も進めることとしております。
その上で、現下の航空機産業は、グリーン化、いわゆるGXや、デジタル化、いわゆるDXなど、大きな変革期を迎える中、我が国の技術力を生かす可能性が広がってきております。また、経済安全保障の観点でも重要性が高まっている中、将来に向けて航空機産業を育成強化していくことは極めて重要であると認識しております。
こうした中で、次期戦闘機開発は、民生、防衛の双方を担う航空機産業の基盤の強化につながる極めて重要なプロジェクトであると考えております。
経済産業省としては、これまで蓄積した航空機開発の経験を次期戦闘機開発にも十分に生かしていくとともに、これが国内航空機産業の更なる発展にもしっかりとつながっていくよう、防衛省など関係省庁とも連携し、取組を進めてまいります。

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