217回 法務委員会

2025-05-13

○矢倉克夫君

公明党の矢倉克夫です。よろしくお願いします。
情報通信技術の進展等に対応するための刑事訴訟法の一部を改正する法律案、略して刑事デジタル法ということになるかと思いますが、こちらについても伺いたいと思います。
趣旨説明の方でも趣旨を述べ、目的の中で、まず、刑事手続円滑化、迅速化、そして関与する国民の負担軽減ということが書いておりました。こちらで書いてあるこの関与する国民というのが具体的に誰で、軽減すべき負担としてはどういったものを想定しているのか、誰一人取り残さない、全ての人が享受できるようにどういう負担の軽減というのを目指しているのかを、まず法務省に伺いたいと思います。

○政府参考人(森本宏君)

まず、本法律案におきましては、証拠書類の電磁的記録化等によりまして、弁護人が電磁的記録である証拠書類について裁判所や検察庁においてコピーの手間なく謄写をすることを可能とすること、それから、身体拘束に対する申立て、不服申立て等をオンラインにより迅速に行うことも可能とすることなどとしておりまして、これらを通じまして、被疑者、被告人、それから弁護人側の防御上の負担が大幅に軽減されることが期待されるというふうに考えております。
また、犯罪被害者等が被害者参加人として公判廷以外の場所に在席してビデオリンク方式により公判期日における手続に参加することを可能とするところとしておりまして、これを通じまして、犯罪被害者等の精神的負担が軽減されることも期待されます。
さらに、本法律案におきましては、証人尋問をビデオリンク方式により実施することができる範囲を拡充し、例えば多忙な医師に専門家としての証言を求める場合等におきまして、ビデオリンク方式による証人尋問を可能とすることとしているところでございまして、これを通じて証人の出頭に伴う業務上の負担等も軽減されることが期待されております、期待されます。
このように、本法律案は、捜査機関だけではなくて、被疑者、被告人、弁護人や犯罪被害者、証人等の刑事手続に関与する様々な方々の多様な負担を軽減することを期待しているところでございます。
そして、本法律案が改正法として成立した場合には、各制度の内容や趣旨等を周知徹底してその適正な運用を図り、手続に関与する様々な立場の方々の負担軽減の効果が十全に発揮されるように努めてまいりたいと考えております。

○矢倉克夫君

訴訟、被疑者、被告人、弁護人のほか被害者等もということで、負担軽減ということでありますが、これは法案としては、手続の円滑化ということもあり、その上でまた、議論するに当たってまた今後の課題かもしれませんけど、デジタル社会においていかに国民全体の例えば裁判を受ける権利とかも含めた権利、これをどうやって保護していくのかという観点もまた私は重要であるなというふうに思います。
その上で、今話があった関与する国民、それぞれの負担軽減ということで、例えば、警察、弁護士、検察、裁判所などの関係者が使用する環境によってこのデジタル社会においては必要なパソコンとか通信インフラに性能差がある、こういうデジタル化を進めるに当たっては、国民負担軽減という目的を果たす上でも、こういう性能差による時間や対応に差があってはいけないと思いますが、この点についての答弁を求めたいと思います。

○政府参考人(森本宏君)

刑事手続のデジタル化を実現するための新たなシステム等の環境整備につきましては、機微な情報を取り扱い犯罪事象への迅速な対応が常に求められるという刑事手続の特性に鑑み、高い情報セキュリティーの確保を前提とした上で、手続において取り扱う書類を電子データ化し、関係機関等との間で円滑、迅速にオンラインで発受することなどを可能とするものとなるよう、警察庁や最高裁判所等の関係機関及び設計開発業者と緊密に連携し、日本弁護士連合会とも協議を行いつつ検討を進めております。
御指摘のように、情報通信技術格差による支障が極力生じないようにすることも含めまして、刑事手続等の各場面において手続の円滑化、迅速化及びこれに関与する国民の手続軽減が図られるものとなるよう、今申しましたような関係機関と検討を進めて、そういった支障が生じないようにという形で努めてまいりたいと考えております。

○矢倉克夫君

これは手続の、刑事手続の話のみならず、今言ったようにデジタル社会における権利をどういうふうに守っていくかという重要な視点もこの法案の中には入っていると思います。
その上で、大臣に伺いたいんですが、この目指すべきデジタル化というために必要な予算、これは確保する、ただ、法務省の予算というのは人件費がかなり掛かる、いろいろ裁量的な部分というのは限られているところもあり、その上でこのデジタル社会における刑事に関係する権利を保護する、そういう意味でも政府全体が進めるデジタル化推進のための予算というのも更に獲得するためにも法務省としても推進力が必要かと思いますが、これについての大臣の御見解を求めたいと思います。

○国務大臣(鈴木馨祐君)

政府全体ということのお話もございましたので若干触れますと、昨年の六月二十一日閣議決定をされましたデジタル社会の実現に向けた重点計画、この計画では、デジタルにより目指す社会の姿、あるいは理念、原則、そしてデジタル社会の形成のために政府が迅速かつ重点的に実施すべき政策等が定められているところであります。
今回、我々として、私どもとして提案をさせていただいておりますこの刑事手続のデジタル化、これこの計画の重点政策の一つでありまして、刑事手続のデジタル化の実現のための法整備をし、刑事手続のデジタル化に向けた取組を推進をする、これ政府全体の方針にも合致をしていることだろうと思っております。
方で、これ衆議院でも参議院でも、様々議論の中でも若干指摘もされておりますけれども、やはり、この刑事関係の情報、これかなり機微にわたるというかプライバシーのことも含めて、大変これは取扱いも大変な、慎重を期さなくてはいけない状況でありますし、そういった意味でいうと、どのようなシステムをつくっていくのか、その堅牢性ということも極めてこれ大事になっていくと思います。
そうした中でいえば、今回、この刑事手続のデジタル化、これシステム構築を今、これは今、関係の業者等も含めて専門家等とも相談をしながらシステム設計を行っておりますけれども、まさにそこできちんとこうした不備がないように、そこは万全を期していく必要が特にあると思っておりますし、そうした観点から必要な予算要求、これも行わせていただく中で、デジタル社会の推進、これをきちんと実現をしていきたい、そう考えているところでございます。

○矢倉克夫君

是非必要な予算の確保をよろしくお願いします。
次に、オンライン接見について伺いたいと思いますが、このオンライン接見については、全国一律実施に向けて予算面なども課題があるということで、権利化ということについては政府もまた意見があるところでありますが、国民負担軽減という観点からオンライン接見、これ最大限進めるべきと考えますが、政府の見解を求めたいと思います。

○政府参考人(森本宏君)

法務省におきましては、実務的な運用上の措置として行っているオンラインによる外部交通につきまして、弾力的にその実施を拡大していくべく、現在、関係機関及び日本弁護士連合会との間で協議を実施しております。その協議会を踏まえまして、法務省におきましては、本年度、オンラインによる外部交通を実施するための環境整備経費を計上しておりまして、今ほど大臣からも御答弁ございましたが、今後もそうした予算等の獲得に努め、各地域の実情に応じて順次拡大することとしております。
法務省といたしましては、必要性の高い地域において迅速に環境整備を行うことが必要と考えておりまして、御指摘の観点も踏まえまして、引き続き、日本弁護士連合会等と協議して、一層その取組を加速してまいりたいと考えております。

○矢倉克夫君

電子化による負担軽減、捜査機関に対する負担軽減もあり、それとの比較の意味でも、刑事訴訟法の主体である被告人や弁護人に対する負担軽減というのは同様にしっかり図っていかなきゃいけないと思います。
このオンライン接見については、都道府県をまたぐニーズもありますが、都道府県をまたぐオンライン接見が禁止されるべき理由はないと理解してよいでしょうか。これも政府からまた求めます。

○政府参考人(森本宏君)

オンラインによる外部交通につきまして、今ほど申し述べたような方針で日弁連等と協議しておりますが、その拡大の対象となる地域について、日本弁護士連合会や関係機関と協議の上、被告人等が収容されている刑事施設等が遠方の地域や、管内の弁護士数が少なく、遠隔地の弁護士が受任せざるを得ない地域など、その必要性の高い地域から選定することとしておりまして、先生おっしゃったような都道府県をまたぐというものも、別にそれから除かれているというわけではないんですが、他方で、そういったニーズがどこまであるのか、その日弁連等と協議する中で高いと言えるのかどうかという点を考えていく必要があると思っております。
法務省といたしましては、御指摘のような選択肢ももちろん視野に入れつつ、引き続き日弁連等と協議してまいりたいと考えております。

○矢倉克夫君

衆議院において、オンライン接見については、全国で設備が整っていく過程を見て、今後法制化を目指すことが確認をされました。
全国に設備が整うことが滞りなく進んでいるか、また、法制化に足りる段階に至っているのではないかを検証する機会を設定する必要があり、例えば五年後に検証するなども考えられると思いますが、参考人からまた、政府から答弁を求めたいと思います。

○政府参考人(森本宏君)

いわゆるアクセスポイント方式によるオンラインの接見につきまして、法制審議会において、全ての刑事施設等でオンライン接見を実現する見通しが立たないのに権利化してしまうと、大部分の施設において被疑者等が法律上認められた権利を行使できないという状態が長期にわたって続くことになるといった指摘がなされたことなどを踏まえまして、本法律案においては権利として規定するところまではしておりません。
もっとも、法務省において、実務上の措置として、弾力的にその拡大を図るべく協議を、日弁連等と協議しているのは今ほど述べたとおりでございます。また、衆議院における修正後の本法律案の附則においても、身体の拘束を受けている被告人等と弁護人等との間における映像と音声の送受信による通話を可能とするための運用上の措置について、地域の実情を踏まえ、被告人等と弁護人等との間の秘密の確保に配慮するとともに不正行為等の防止に万全を期しつつ、必要な取組を推進するものとすると規定されたところであります。
こうした点を踏まえまして、引き続き一層取組を加速していきたいというふうに考えておりますけれども、その上で、オンライン接見の法制化につきましては、今後、ただいま申し上げたオンラインによる外部交通に係る取組の進捗状況を見ながら検討を行っていくこととしており、一定の期間が経過した段階での検証の機会を特別に設ける必要まではないのではないかと考えておりますけれども、いずれにいたしましても、法務省としては、附則四十一条の規定や御指摘の、あるいは衆議院における附帯決議等々も踏まえまして着実に取組を推進してまいりたいと考えております。

○矢倉克夫君

これは、負担軽減というか、冒頭申し上げた権利保護というところからも必要なところだと私は理解しているので、是非また引き続き協議をし、また、私自身も随所にまた確認をしたいと思います。
オンライン接見については、弁護士との接見のみならず、専門家との面会にも拡大していくべきではないか、また、接見とは違いますが、家族との面会についても、オンラインなどを今後拡大していくべきではないかと思いますが、これも政府から答弁を求めたいと思います。

○政府参考人(小山定明君)

一般論といたしまして、未決拘禁者につきましては、刑事訴訟法の規定によりまして接見が許されない場合などを除きまして、他の者から面会の申出がありましたときはこれを許すものとされておりまして、その機会については適切に保障されるべきものであると認識しております。また、福祉関係者等の専門家に関しましても、入口支援の対象となっております未決拘禁者につきましては、実務上可能な範囲で面会時間への配慮等も行われているところでございます。
他方、刑事収容施設法におきましては、未決拘禁者の外部交通といたしましてオンラインによる方法を定める規定はございませんで、刑事施設等における人的、物的な制約もございますことから、アクセスポイント方式によります弁護人等と未決拘禁者との間の外部交通を実施する運用につきましては、被告人等であります未決拘禁者の防御権への特別な配慮といたしまして、関係機関との協議を経て行っているものでございます。また、従来から、通訳人につきましては、アクセスポイント方式によります弁護人等と未決拘禁者等との間の外部交通に同席することができるものとされているところでございます。
いずれにいたしましても、以上の事情に鑑みれば、運用として行われておりますこのような外部交通を他の専門家や家族等といった弁護人等以外の者に対して拡大することにつきましては、刑事施設等の人的、物的な体制が限られる中におきましては慎重な検討を要するものと考えております。

○矢倉克夫君

デジタル社会、技術の進展等も踏まえて、必ず拡大できるところはしっかり拡大できるということは随時検討を是非いただきたいというふうに思います。
四月一日、ちょっと大臣にお伺いしたいと思うんですが、四月一日の衆議院法務委員会で、大臣の方からは電子データを記録した記録媒体の閲覧を認めることについても前向きな御回答があったと理解もしております。これ、できるところから電子データによる閲覧を検討するということ自体は異論ないということでよろしいでしょうか。

○国務大臣(鈴木馨祐君)

弁護人から身体拘束中の被告人等に対して電子化をした証拠書類を記録した記録媒体が送付をされ、それが刑事裁判の遂行上必要不可欠と認められる場合ということでありますが、そういった場合に、被告人等による自傷他害のおそれを含む施設の規律、そして秩序の維持、あるいは管理運営上の支障、こうした個別具体的な事情を踏まえてこれは慎重に検討を行い、支障の程度が小さいと考えられる場合には裁量的にその閲覧を一時的に認める余地はあると、そういった趣旨で御答弁を申し上げております。
先日の答弁でも申し上げましたように、このような裁量的な取扱い、これは個別具体的な事情を踏まえて刑事施設等において検討、判断するということになりますけれども、可能な範囲で被告人の防御権にも配慮をした上で対応がなされるよう、私どもといたしましても、引き続き運用上の検討、これを行ってまいりたいと考えているところでございます。

○矢倉克夫君

是非よろしくお願いします。
刑事訴訟法上、検察官請求証拠については、同意するか否か等の意見を述べる主体はこれ被告人でありますけど、今後、電子的記録である証拠は格段に増える、電子的記録で開示されるようになる、電子的記録で開示されるようになるにもかかわらず、身体拘束されている被告人が電磁的記録で証拠を授受し検討できないというのはデジタル化を進める趣旨とも相違するのではないかという意見もあるわけですが、これについて政府の見解を求めたいと思います。

○政府参考人(小山定明君)

弁護人等から身体拘束中の被告人等に送付されました電子化された証拠書類を記録した記録媒体が刑事裁判の遂行上必要不可欠と認められます場合などにおいて、被告人等による自傷他害のおそれを含む施設の規律及び秩序の維持や管理運営上の支障について、個別具体的な事情を踏まえて慎重に検討の上、支障の程度が小さいと考えられますときには、裁量的にその閲覧を一時的に認める余地はあるものと考えております。
その上で、身体拘束中の被告人等による電磁的記録の授受や閲覧を権利として位置付けることにつきましては、法制審議会の議論において、授受や閲覧に用いる機器等を被告人等が破壊するなどして自傷他害行為に用いる可能性があるなどの問題点が指摘されまして、答申に盛り込まれなかったという経緯があるということを承知しておりまして、このような経緯に鑑みますれば、電子化した証拠書類の取扱いにつきまして、個別具体的な事情を踏まえて可能な範囲で裁量的な取扱いを検討、判断することをもって直ちにデジタル化を進める趣旨と相違するものではないというふうに考えております。
いずれにいたしましても、個別具体的な事情を踏まえまして検討、判断するということになりますが、可能な範囲で被告人等の防御権にも配慮した対応がなされますよう、引き続き運用上の検討を行ってまいりたいと考えております。

○矢倉克夫君

攻撃防御に関わるところで、けど、それが裁量で、まあ相手方の裁量というか、そういうところで認められなくなるというところはまた課題もあるかというふうに思います、検討しなきゃいけないところかと思います。いずれにしろ、可能な範囲でということでありますが、より積極的にこれは認められるように引き続き検討をお願いしたいというふうに思います。
身体拘束された被告人が電磁的記録を授受し検討できるような設備の整備をこれ進めるべきではないかと、直ちに一斉に対応できないとしても計画的に整備を進めるべきだと思いますが、これについても答弁を求めたいと思います。

○政府参考人(小山定明君)

例えば、電磁的記録の授受や閲覧に用いる機器につきましては、市販されております一般的な機器を使用させる場合、仮に何らの措置もとらなければ、これが悪用されて不正な通信が行われたり、自傷他害行為が行われたりするなどの弊害が生じるおそれがありますことから、通信機能の制限や自傷他害行為の防止等の観点からの十分な対応が必要になると考えられます。
また、電子データの情報量が膨大でありましたり、映像データが含まれていたりします場合には、これらについて、罪証隠滅の防止や規律、秩序の維持のために行う検査を適切に行う観点からも、特別な対応が必要になるというふうに考えております。
これらの課題につきまして、直ちに関係機関等とも協議を重ねつつ検討を行うことも要するなどの点から、解決の道筋を示すということはなかなか難しいところではあろうとは思っております。
そのような中、個別具体的な事情を踏まえて慎重に検討の上、可能な範囲で被告人の防御権にも配慮した対応がなされますよう、引き続き運用上の検討を行ってまいりたいと考えております。

○矢倉克夫君

しっかり引き続き対応をお願いしたいと思います。
ちょっと一問飛ばしまして、デジタル化を進める上で切っても切り離せないのがこれセキュリティー対策になります。こちらについてちょっとお伺いしたいと思いますが、個人情報の流出等が決して起こらないような万全の対応策がこれ必要と考えます。
昨今、情報流出事件がこれ相次いでいるわけですけど、内部からの流出への対処、外部攻撃からの対処など検討されている対策はあるか、政府に答弁を求めます。

○政府参考人(森本宏君)

委員御指摘のとおり、システムのセキュリティー対策等々について万全を期すことは極めて重要だというふうに考えております。
御指摘の内部からの個人情報の流出や外部からの攻撃への対処につきましては、まず機微情報へのアクセス制限や、あるいは刑事手続専用の閉域回線を通じて警察及び裁判所とデータを送受信することを含め、情報セキュリティー対策に万全を期すべく検討を進めているところでございます。
刑事手続につきましては、関係者のプライバシー、名誉に多大な影響を及ぼしかねない機微な情報が取り扱われることになりますから、万が一にも情報の流出等によって関係者の権利利益が侵害されることがないよう、万全を期してまいりたいと考えております。

○矢倉克夫君

今回の法改正では、これまで情報が記録された有体物たる差押物件とかが対応になっていたのが、これ無体物たる情報そのものが対応になることも一例だと思いますけど、これは今やはり局面も、プライバシーという点でもまた違う局面にあることは考慮しなきゃいけないと。だから、これまでの対応の延長ではやはりいけない。新たな局面を迎えるに当たって、どういう前提でどういうふうに情報を守っていくのか、これも新しい視点が大事であるというふうに思っております。
そういう観点から、また大臣にお伺いし、改めてしたいと思うんですが、確認の意味で。
今申し上げたように、無体物たる情報そのものが捜査機関を始め関係各所に提供され、保持されるということがプライバシーに与えるリスクというのは、これあり得ます。これをどういうふうに考えていらっしゃるのか、今回の改正によってプライバシーへの侵害の度合いというのは高まり得ると考えるのか、大臣の見解を求めたいと思います。

○国務大臣(鈴木馨祐君)

捜査機関においてこの電磁的記録提供命令によって提供を命ずることができる電磁的記録でありますけれども、これは、有体物を対象とする現行の差押え等の場合と同様、制度上、裁判官の方で被疑事件等との関連性を認めて令状に記録、記載をしたものに限定をされるということがまず大前提であります。
一般的に、電磁的記録につきましては、先ほどの御指摘にも関係しますけれども、紙媒体等の有体物と比べて、それ自体では人の知覚によって認識することはできないということ、あるいは複写が容易である、そうした性質はありますが、その一方で、そのことによって電磁的提供命令の令状による特定、提供させるべき電磁的記録の特定は困難になるということではないと私どもとしては考えているところであります。むしろ、電磁的記録提供命令の令状におきましては、被処分者に電磁的記録の提供を命ずる、そうした処分の性質上、被処分者において何を提供すればよいか判断をできるようにするために、提供させるべき電磁的記録が現行の差押許可状における差し押さえるべきものに比べてより具体的に特定をされることになると私どもとしては考えております。
そうしたことから、電磁的記録命令の創設、これによりまして個人のプライバシー等の権利がより広範に制約をされるということにはならないのではないかと私どもとしては認識をしているところであります。
もっとも、本法律案がこの改正法として成立をした場合に、やはり捜査機関、これが捜査の過程で取得、作成をした電磁的記録について、やはりこの適切な管理あるいは不適切な利用の防止、必要な期間経過後の確実な廃棄、これを図っていくということ、このことはプライバシー等の関係も含めてこれ極めて重要であると私どもとしては考えておりまして、そのために、規定あるいは通達等、こういったことでそうしたことを担保すべく、その整備に向けて具体的な検討、これを行っていきたいと考えているところでございます。

○矢倉克夫君

電磁的記録命令についてはまた改めて別にと思いますが、大臣後半の方でおっしゃっていた、情報の取扱いというか、そういうことについての関連ではプライバシーにも大きな影響はあるというふうな御答弁だったと思います。
これ、事件捜査によって集めた電子データのうち、裁判に使用されるものは裁判所で保管がなされて、検察でも保管がなされるわけでありますが、これ最も多く電子データが集まり、かつ保管されている警察ではどのような扱いになるのかを答弁を求めたいと思います。

○政府参考人(松田哲也君)

お答えいたします。
今回の改正で創設される電磁的記録提供命令により提供される電磁的記録は、これまで警察において証拠物件として管理してきた有体物とは異なる保管、管理が求められることとなると考えられるところであります。
現行の運用では、電磁的記録の捜査資料については、当該電磁的記録やそれらを保管している共有フォルダ等にアクセス制限を行うなどの措置をとることによって適切な管理に努めており、捜査の終結等の観点から保管の必要がなくなったと認める場合には確実に廃棄又は消去するよう、犯罪捜査規範や通達で規定しております。
電磁的記録提供命令の創設後に取得した電磁的記録の取扱いについては、法務省等の関係機関とも協議することとなりますが、現行のこうした取扱いを参考にしつつ、必要な規定の整備を検討してまいりたいと考えております。

○矢倉克夫君

では、警察と検察における電子データの保管期間を伺いたいと思います。
まず、検察はどうでしょうか。

○政府参考人(森本宏君)

捜査の過程で収集した電磁的記録につきましては、刑事訴訟法、刑事確定訴訟記録法といった法令等の規定に基づきまして保管年限等が定められております。
したがいまして、検察といたしましては、裁判所から返ってきた確定記録も含めまして、そういった規定やその趣旨に従い、定められた必要な期間を保管した後は廃棄するなど適正に取り扱っているものと承知しておりますけれども、本法律案が改正法として成立した場合にも、押収した記録媒体に記録された電磁的記録や、電磁的記録提供命令により提供された電磁的記録につきましても、それら法令等の規定や趣旨に従い、必要な期間保管した後は廃棄するということを想定しております。

○矢倉克夫君

では、警察はどうですか。

○政府参考人(松田哲也君)

お答えいたします。
現行法下において、捜査資料のうち、犯罪事実の有無や事案の解明に必要なものについては、刑事訴訟法等の関係規定に基づき、適切に検察官に送致し、捜査の終結、公判の維持等の観点から保管の必要がなくなったと認める場合に、確実に廃棄又は消去することとしております。
刑事手続のデジタル化後における電子データについても、現行と同様に、犯罪事実の有無や事案の解明に必要なものについては、刑事訴訟法等の関係規定に基づき、適切に検察官に送致し、捜査の終結、公判の維持等の観点から保管の必要がなくなったと認める場合に、確実に廃棄又は消去することとなるものと考えております。

○矢倉克夫君

方向性についてより具体的にと思うんですが、衆議院法務委員会において、池田参考人が、電磁的記録に着目した保管、管理の仕組みは設けられてもよいというふうに発言されていました。
大臣に伺いたいんですけど、大臣も四月四日に、データの適正な取扱いに関する規定等の整備が必要だと答弁されています。今後、具体的にどのように検討を進めるのか、具体的な道筋を示していただきたいと思います。大臣、よろしくお願いします。

○国務大臣(鈴木馨祐君)

この電磁的記録、この適切な保管、管理、さらには不適切な、不適正な利用の防止をするということ、そして必要な期間保管した後に、これはしっかり確実に廃棄をする。こうしたことについて、適正な取扱い、これに努めていくこと、これ極めて重要である、そうした趣旨で先般も発言をしたと承知をしております。
その適正な取扱い等に関する規定等の整備につきましては、私どもといたしましては、そうした規定あるいは通達ということの整備ということを考えておりますけれども、まさにその具体的な規定の内容、この法案審議、こちらの委員会も含めてこの法案審議の状況、これも踏まえながら検討しておりますが、きちんとそこは速やかに今後検討を進めてまいる所存であります。

○矢倉克夫君

ちょっと済みません、一問飛ばしまして。
これ、主に違法に収集された電磁的記録の保管、消去を念頭に、先日の参考人質疑のときには、成瀬参考人から、現行刑事訴訟法の構造は、違法な処分があったとしても、物は返しても複写は返さないであるとし、その構造との整合性から、違法な処分により収集した無体物たるデータの消去、課題が多いといった趣旨の御意見があったと思いますが、これまでとは取り扱うものも違う、また、新たな制度も創設される、だからこれまでの構造との整合性だけでは論拠としては少し弱いように思うんですが、政府としてはそのほかどういう理由があるのか、何か意見があればと思います。

○政府参考人(森本宏君)

現行刑事訴訟法の下では、捜査機関が証拠を押収した場合に、その押収処分が事後的に取り消されたとしても当該証拠の複製等を廃棄、消去することとはされておらず、直ちに裁判において証拠として利用することはできなくなることともされておりません。
最高裁判例におきましては、令状主義の精神を没却するような重大な違法があり、これを証拠として許容することが将来における違法な捜査の抑制の見地からして相当でないと認められる場合に初めて証拠能力が否定されるという取扱いが確立しております。
このいわゆる違法収集証拠排除法則は、証拠物は押収手続が違法であってもその証拠価値に変わりはなく、その押収手続に違法があるとして直ちにその証拠能力を否定することは事案の真相解明に資するものではなく相当でないと考える一方で、事案の真相解明も、個人の基本的人権の保障を全うしつつ、適正な手続の下でなされなければならないと考えられることを踏まえたものであり、刑事裁判実務上確立しているものであります。
また、強制処分が違法であるとして事後的に取り消される場合であっても、その違法の程度は比較的軽微なものから令状主義の精神を没却するような重大な違法なものまで様々であり、違法と判断された強制処分により取得した証拠物の複製等を一律に廃棄、消去しなければならないとすることは、ただいま申し上げた現行刑事訴訟法における仕組みや判例法理に照らし、相当でないと考えております。
また、捜査や公判に必要なものとして取得された証拠は、捜査中から刑事事件終結後に至るまで、例えば後の再審請求審における利用等に備えてありのまま記録として保管、保存されるべきものであり、それが現行制度の基本的な考え方であるところ、このような取扱いは刑事手続の適正かつ円滑な遂行のために相当なものと考えております。
本法律案による改正後の刑事訴訟法においては、こうした我が国の刑事法の基本的な考え方との整合性を考慮し、実質的な相当性にも配慮して、違法であるとして取り消された電磁的記録提供命令により取得された電磁的記録の消去の規定は設けていないところでございまして、今述べたような点から、その理由が弱いというふうには考えておりません。

○矢倉克夫君

証拠能力の点という部分はあるかもしれないけど、無体物たる情報がそのまま残っているということそのものが、いろんなところに複製され得る、さらにプライバシーというところからもまた考えなきゃいけない問題は多いかと思います。
その上で、大臣にも伺いたいと思うんですが、この無体物たる情報そのものを取り扱うリスクを認識、それを認識した上で、それに合った管理の仕方というのをこれ真剣に考えなければいけないと思います。仮にそれが自主的にできないということ、難しいということであれば、先日の参考人、河津参考人も監督する第三者機関ということもおっしゃっておりましたが、これは私自身も、与党の議員としても検討すべき部分はあるかというふうに思っております。
大臣の御意見を求めたいと思います。

○国務大臣(鈴木馨祐君)

捜査機関におきましては、一般に、捜査の過程で取得をした書類あるいは個人情報、これにつきましては、刑事訴訟法あるいは刑事確定訴訟記録法といった法令等の規定あるいは趣旨に従って適正に取扱いをしていると我々としては承知をしているところであります。
今御指摘のまさに第三者機関ということでありますけれども、まさにこの捜査機関による電磁的記録あるいは個人情報の取扱いを監督するに当たりましては、個々の電磁的記録あるいは個人情報と被疑事件等との関連性の有無、程度、さらには被疑者等の防御上の必要性の有無、程度、そうしたものを、それらが捜査の進展あるいは争点に応じて変化をする可能性、こういったものも考慮をしながら適時的確に判断をして対処する、そういったことが求められることになると思います。
そういった意味において、一般に、実際に捜査を行っていない外部の機関がそのような判断を適切に行うということが果たしてどの程度実際できるのか、そうした観点からも、やはりこれ極めて困難であると私どもとしては考えているところであります。
そうしたことから、御指摘のような第三者機関、これについては慎重な検討が必要というのが私どもの考え方でありますし、また、現行の規律の中でもしっかりとそうしたことについては適正を期すことができると私どもとしては考えているところであります。

○矢倉克夫君

個々の捜査上とか裁判上の前提知識があるかないかということで、それはなし得ないという御意見だったと思うんですけど、要するに、ちゃんと制度としてこの捜査機関も含めた関係のところがそれを侵害しないような体制が組めるかどうかという、そこの部分、制度論、制度の在り方、情報の管理の仕方というのもちゃんと監視というか監督するような、そういう機関というのも必要だと思うんですね。
機関かどうかは別にしても、そこをしっかりと意識をして、内部でも少なくともちゃんと規律を図っていくという意識はしっかり持っていかなきゃいけないというふうに私自身は思っておりますし、それと、最終的には国民の監視の下でという体制がよりつくれればいいかなというふうに思うところです。
その上で、じゃ、少なくともデータの一層の適正管理のためには、従来の内部規則、これ見直していく必要は、これはあると思います、この法案をまた契機にして。それについてはどのように思われているのか、政府から答弁を求めたいと思います。

○政府参考人(森本宏君)

捜査機関が収集した電磁的記録が不適正に利用されることのないようにするために必要な事項について規定を整備すること、これは重要であるというふうに認識しておりまして、先ほど大臣からも御答弁申し上げたところでございますので、改正案が成立した場合には、そういったものを整備するということで、その具体的な在り方については、法案審議の状況などを踏まえつつ、検討してまいりたいというふうに考えております。

○矢倉克夫君

じゃ、是非しっかりと引き続き検討していきたいと思います。必ず、内部規定どういうふうにあるかということは非常に重要なところだと思いますので。
その上で、ちょっと今日最後で、改めて、この前、前回の参考人の質疑の中で、例えば、河津参考人は、今回のデジタル法案は旧来の刑事訴訟法全般をデジタル化していこうというものであり、それにふさわしい国民のプライバシー、これを守るべきだという御意見もありました。
また、成瀬参考人からは、これは川合理事の御意見に対しての御答弁だったと理解しておりますが、証拠あるいはデータの管理の在り方については、現代の情報社会において今までどおりでよかったのか、刑訴法全体を見直しながら抜本的に考えていくことが中長期的な議論であるというお言葉もありました。
これら、今回の、これは今回の法案が一つの訴訟の手続というところもありますが、より国民の権利を守っていく、裁判を受ける権利とともに、今回の法案によって、侵害され得る権利というのをいかに守るかという観点からもより考えていくべきであると思うし、刑訴法の在り方含めても今後長期的にもまた考えなきゃいけないと思いますが、この点について大臣の最後答弁を求めて、今日は質問を終わりたいと思います。

○国務大臣(鈴木馨祐君)

矢倉先生の今の御指摘、私としても十分共感をするところでもあります。
そういった中で、捜査機関におきまして、私どもとしての思いでありますが、一般に捜査書類あるいは証拠物について、法令等の規定あるいは趣旨に従って適正に当然取扱いをしていると我々としては承知をしているところであります。
ただ、その上で、やはり本法律案、改正法として成立をした場合に、この捜査の過程で作成、取得をした電磁的記録につきまして、やはり先ほど申し上げましたけれども、適切な管理あるいは不適正な利用の防止、必要な期間経過後の廃棄等を内容とする適正な取扱い、ここに関する規定あるいは通達、これを整備をしていくということ、これは極めて重要であると私どもとしても考えているところでありまして、そうしたことに向けての具体的な検討、これをしっかりと進めていきたいと考えております。
また、この法律案が改正法として成立をした場合には、まずはこの改正法の規定等が適切に運用されていくということ、これは極めて重要でありますけれども、捜査の過程で収集された電磁的記録の取扱いに関しましては、こちらの委員会でもそうですし、国会においても、立法府において様々な御議論があった、それは我々としても承知をしているところであります。そうしたことを踏まえまして、今後とも、実務の状況、あるいは関連する議論、この動向について我々としても関心を持って注視をしてまいりたいと考えているところでございます。

○矢倉克夫君

新たな視点でまた更に発展させていく契機として是非いただきたいということを申し上げて、質問を終わります。
ありがとうございました。

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