217回 法務委員会

2025-05-15

○矢倉克夫君

公明党の矢倉克夫です。よろしくお願いします。
私からは、主に電磁的記録提供命令について、確認の意味を込めて最後御質問をしたいと思っております。
まず大臣に、改めての部分もあるんですが、伺いたいんですが、今回、電磁的記録提供命令創設、これによってどういった人権が制約され得るか、また、例えばこの電磁的記録提供命令、これは手続の簡便さを図ることで安全、安心な社会を実現する、全体の利益を実現するという趣旨だと思いますが、当然ですけど、過度な人権制約を行われないのは当然であり、この手続の円滑化という趣旨、目的と人権制約の比較考量から考えても命令の執行は謙抑的であるべきと考えますが、大臣の御意見をまず伺いたいと思います。

○国務大臣(鈴木馨祐君)

この刑訴法全体といたしまして、当然、第一条の規定ということで、刑事事件につき、公共の福祉の維持と個人の基本的人権の保障とを全うしつつ、事案の真相を明らかにし、刑罰法令を適正かつ迅速に適用実現をすること、これが目的となります。
そうした中にあって、電磁的記録提供命令、これは、提供される電磁的記録の内容に応じて、憲法第二十一条第二項の通信の秘密であったり、あるいはプライバシー権、これを制約し得る処分、これはそういうことでもあります。
そうした中で、先ほど申し上げましたこの刑訴法第一条、この趣旨、これを踏まえながら、やはり不当な権利侵害、これを生じないような適正な運用、これ極めて重要であろうと考えております。
この法案、改正法として成立をした場合には、捜査機関においてもこの電磁的記録提供命令、この適切な運用、これ極めて重要でありますので、その在り方、これを検討していく、捜査機関においてもそういう適切な運用の在り方を検討していくものと考えておりますけれども、私どもといたしましても、通達等々によりまして捜査機関に対して制度内容の十分な周知を行う等々をしながら、必要な方策をしっかりと講じてまいりたいと思っております。

○矢倉克夫君

適正な運用ということを強調されて、極めて重要ということでありました。謙抑的ということを改めて強く申し上げたいと思います。
その上で、電磁的記録提供命令を受けた者、政府参考人に伺いますが、局長に伺いますが、電磁的記録提供命令を受けた者が負う義務は、これは特定された電磁的記録を提供することに尽きるのか、当該電磁的記録の復号化に協力することにまで及ぶのか、伺いたいと思います。

○政府参考人(森本宏君)

電磁的記録提供命令により電磁的記録を提供させる方法としては、電磁的記録を記録媒体に記録させて当該電磁的、当該記録媒体を提出させる方法等がありますところ、ここに言う「記録させ」には、暗号化された電磁的記録を復号させた上でこれを他の記録媒体に記録させることも含まれるものと考えております。
そのため、例えば捜査機関として、パスワードが掛けられている電磁的記録について、裁判官の発する令状に基づく電磁的記録提供命令によりパスワードを解除してその内容を知ることができる状態で提供することを命ずることもできまして、そのようにして提供をすることを命じたにもかかわらず、命令を受けた者がパスワードを解除せずに当該電磁的記録を提供し、提供を受けた者においてその内容を知ることができない場合には、命令を履行したこと、すなわち必要な電磁的記録を提供したことにはならないというふうに考えておりまして、このように、電磁的記録提供命令自体により、被処分者が暗号化された電磁的記録を復号した上でこれを提供することを義務付けられる場合はあり得るものと考えております。

○矢倉克夫君

先ほど来もずっと同じような議論はありまして、供述の内容がどうかとか、そういう概念の部分はあります。
ここで改めて私も申し上げたいところは、その上で、憲法上の権利である自己負罪拒否特権、これも実質的に侵害することがないような適正な対処、先ほど大臣からも、謙抑的という私の質問に対して適正な運用ということを繰り返していただいたわけでありまして、そこはしっかりと確保するようにということは改めて強調をいたしたいと思います。
その上で、ちょっと次に、済みません、ちょっと一問飛ばしていただいて、これから、何度も話があるこの電磁的記録提供命令についてであります。
参考人質疑のときにも成瀬参考人にも同様の質問をしたんですが、これは今までも、捜索差押えとはまた前の段階でとか、様々な、違うフェーズというか新しい取組、命令でもあるんですが、例えば運用として、これ今までもある特定性とか関連性がないものを取ってしまう可能性のあるリスクの在り方としては、捜査機関が令状に基づいてサービスプロバイダーからデータの提供を受けたり、ハードディスクドライブを押収してデータを取得した後に、更に被疑事件との関連性を精査して選別の上、関係ないと、関連ないと判断された場合は返還する、消去する、こういった仕組みということの運用も考えられるのではないかと思いますが、局長からの答弁求めたいと思います。

○政府参考人(森本宏君)

本法律案における改正後の刑事訴訟法においては、裁判官が発する電磁的記録提供命令の令状に提供させるべき電磁的記録等を具体的に特定して記載、記録することとしており、捜査機関が提供を命ずることができる電磁的記録は、制度上、裁判官が被疑事件等との関連性を認めて令状に記載、記録したものに限定されます。
さらには、電磁的記録提供命令については、現行の差押えと異なり、被処分者に電磁的記録の提供を命ずる処分であり、そうした処分の性質上、被処分者において何を提供すればよいのかが判断できるようにする必要があることから、一般的には、令状における提供させるべき電磁的記録は、現行の差押えにおける差し押さえるべき物に比べてより具体的に特定されることになるものと考えております。
その意味でも、電磁的記録提供命令については、制度上、被疑事件と関連性のない情報が収集されることにならないと考えておりますが、他方、現行の刑事訴訟法におきまして、捜査機関が捜査の過程で収集し、保有する証拠について、被疑事件との関連性が乏しいことなどを理由として廃棄や消去等をすることができるとする規律は設けられておりません。
実質的に見ましても、捜査の過程で収集した証拠と被疑事件との関連性の有無や程度では、先ほど大臣からも御答弁がありましたように、捜査の進展や争点等に応じて変化し得るものでありまして、捜査のある段階でさほど重要でないと思われていた証拠が後に有罪方向か無罪方向かを問わず事案の解明に重要となる場合もあり得ることなどからすると、収集した証拠につきましては、弁護人等への開示も含め、刑事手続における利用に備えて適切に保管することが相当であるというふうに考えております。
したがいまして、御指摘のような消去の規律を設けたり、そうした運用を行うことについては慎重な検討を要するものというふうに考えております。

○矢倉克夫君

現行の構造との比較というか、そこの考えとはまた違う新しい環境下にこれからもう入るわけですので、そこはよく理解もした上で今後の運用を検討いただきたい。
また、ほかのものに使われるかもしれない、けど一方で全く関係のないものまで入り込む余地もある。だから、それについては明らかに関係ないものは別途消去をするとか、そういうものもまた今後の運用で是非、これは引き続き議論をしたいと思いますが、考えていただきたいことをまず申し上げたいと思います。
それで、今局長からも特定の話があったのですが、これ、成瀬参考人からも、今回の改正を受けて、今後、疎明資料を相当具体的に出す必要があるとの発言もありました。今回の改正を受けて、この電磁的記録提供命令に係る令状はこれどのように請求していくのか、これをまず警察の方に求めて、裁判所としては、抽象的にしか疎明できないのであれば令状請求却下すべきという指摘もあるわけでありますが、この点、改めて確認をしたいと思います。

○政府参考人(松田哲也君)

お答えいたします。
ただいまの法務省の答弁と重なる部分も一部ありますが、電磁的記録提供命令は被処分者に電磁的記録の提供を命ずる処分であるところ、その処分の性質上、提供させるべき電磁的記録については被処分者において何を提供すればよいのか判断できる程度に特定させる必要があるため、一般論として申し上げれば、現行の差押えにおける差し押さえるべき物に比べてより具体的に特定されることとなると考えております。
令状の請求に当たっては、具体的な事実関係、証拠関係等を踏まえまして、裁判官に対し、被疑事実等の内容や捜査状況についての資料を提出し、提供させるべき電磁的記録やその命令の必要性等を適切に疎明できるようにする必要があると考えております。

○最高裁判所長官代理者(平城文啓君)

お答えいたします。
裁判所といたしましても、一般論として申し上げれば、発付のための要件が具体的に疎明されていない場合においては、請求どおりに令状が発付されることはないというふうに認識しております。

○矢倉克夫君

警察の方からも、要は、被処分者の方は事件の概要も御存じないわけでありますから、そういう方に対してもしっかりと、じゃ、何を出せばいいのかということを見えるようにするには、適切にというふうにおっしゃったので、この適切にというのはどういうふうにしていくのかということは、今後もまたしっかりと、内部の徹底も含めていただきたいと思いますし、党としても引き続き協議をしていきたいと思います。裁判所も今ありました。
ちょっとその後は、包括的な電磁的記録の提供を命じることにならないように周知徹底ということも伺いたいと思ったんですが、先ほど高村副大臣からも御答弁ありましたので次に行きたいと思いますが、国民のプライバシーの権利を保護するため、電磁的記録の事前規制だけではやっぱり不十分であり、事後規制を適正にすべきだと、それにおける裁判所の役割の重要性ということが河津参考人の方からも御意見があったわけであります。また、これについての見解、その役割を果たすために何が必要と考えているのか、裁判所の方の意見を求めたいと思います。

○最高裁判所長官代理者(平城文啓君)

お答えいたします。
電磁的記録提供命令に対する事後規制として裁判所が関わりを持ちますのは、不服申立ての場面ということになると考えております。そのような場面においても、当然のことながら、本法案に対する修正案附則四十条、係る附則の趣旨等を踏まえた判断がされていくものと認識しております。

○矢倉克夫君

是非、附則の、それぞれの個々の裁判官の判断の部分もあるということかもしれませんが、附則の趣旨ということはしっかり徹底するように裁判所としても是非お願いしたいと思います。
秘密保持命令の話に次に行きたいと思うんですが、秘密保持命令の必要性が認められるのはどのような場合なのか、捜査の密行性という言葉で安易に秘密保持命令というのが発することにならないように、例えばアメリカでは、生命又は身体への加害、逃亡、罪証隠滅、証人威迫その他著しい捜査の妨害又は裁判の遅延が生ずると信じる理由がある場合というように要件がされておりますが、日本ではまた同じような事情が必要性として考慮され得るのかを確認したいと思います。

○政府参考人(森本宏君)

秘密保持命令は、電磁的記録提供命令の被処分者として捜査に協力的でない者等も想定される中で、そのような者が命令を受けたことや命令により電磁的記録を提供したことなどを犯人等に伝えることにより、犯人等が罪証隠滅行為や逃亡に及ぶおそれがあることに鑑み、捜査に重大な支障が生じることを防止するために創設するものでございます。
必要があるときということについてどのような場合がこれに当たるかは、個別の事案ごとに判断される事柄ではございますが、例えば、通信事業者等が顧客の通信に関する情報を第三者に提供したときに当該顧客にそのことを通知すべき契約上の義務を負っており、その義務の履行として捜査機関から電磁的記録提供命令を受けたこと及び提供を命ぜられた電磁的記録を提供したことを顧客に通知することにより罪証隠滅行為等が行われるおそれが大きい場合などは、必要があるときに当たり得るものと考えております。
その上で、一般論として申し上げますと、先ほど委員が御指摘になったような諸事情も、いずれも裁判官による必要があるときに当たり得るか否かの判断に際して考慮され得るものであるというふうに考えております。

○矢倉克夫君

では、一方で、秘密保持命令が必要なくなったと判断するには具体的にどのようなときなのか。これは当然ですけど、捜査機関の裁量ではないと思いますが、改めて確認したいと思います。

○政府参考人(森本宏君)

本法律案による改正後の刑事訴訟法第二百十八条第七項における、その必要がなくなったときとは、電磁的記録提供命令を受けたこと等の漏えいを秘密保持命令により防止する必要がなくなった場合を意味するものと考えております。
具体的にどのような場合がこれに当たるかにつきましては、これも個別の事案ごとに具体的な事実関係、証拠関係を踏まえて判断されるべき事柄でありますけれども、捜査、公判が進展し、電磁的記録提供命令を受けたこと等を被処分者以外に知らせても罪証隠滅行為等が行われるおそれがなくなったときなどはその必要がなくなったときに当たり得ると考えておりまして、また同項は捜査機関に対し、秘密保持命令をした場合において、その必要がなくなったときはこれを取り消さなければならないというふうに規定しておりますことから、捜査機関は必要がなくなったときには命令を取り消す義務を負っていることとなります。

○矢倉克夫君

義務を、まさに義務を負っているということは、これは義務であり、必ず取り消さなければいけない。秘密保持命令、当然ある以上、そのまさに情報の関係する主体の方のプライバシーということ、場合によっては、先ほど裁判所の方でも事後規制の中で不服申立てというところがありましたが、場合によっては、通知が行かないことでその事後規制としての不服申立ての実効性も図れなくなる可能性もある。取り消すときにはしっかり取り消すということが義務であるということを改めて強調もさせていただいて、その責務があるということも是非捜査当局も御理解をいただきたいと思っております。そこもしっかり、また今後の運用も含めてよく見ていきたいと思います。
そして、もう一つ、電磁的記録提供命令を受けた者が電磁的記録にアクセスすることが不可能であり、その結果、当該電磁的記録を提供することができない場合、電磁的記録提供命令に問うことはできないという場合も理論的にはあり得ると。
では、電磁的記録提供命令を受けた者が電磁的記録にアクセスすることが不正アクセスに該当するような場合に、不正アクセスになることを理由に電磁的記録提供命令を提供しないことは罰則の対象となるのか、これも確認したいと思います。

○政府参考人(森本宏君)

まず、捜査機関による電磁的記録提供命令は、捜査に必要な電磁的記録を保管する者又はそれを利用する権限を有する者に対してすることができるものでございまして、一般に裁判官による令状審査においては、被処分者とされている者がこれらに該当するかということも含めて審査されることになりますことから、御指摘のような電磁的記録提供命令を受けた者が提供を命じられた電磁的記録を取得することが不正アクセスに該当するという事態はまず基本的には想定し難いとは考えておりますが、その上で、あくまで一般論として申し上げますと、改正後の刑事訴訟法二百二十二条の二第一項においては、正当な理由がなく、電磁的記録提供命令に違反した者に対する罰則を規定しておりますところ、この正当な理由がなくとは違法にという意味でございまして、正当な理由には、法律上明文の規定によって電磁的記録提供命令の拒絶権が認められる場合のほか、実質的に違法性を欠くと認められる場合も含まれると考えられます。
どのような場合がその成立するか否かについては、個別具体的な事案ごとに証拠によって判断されるべきことではございますが、一般的には、被処分者において不法な手段を用いなければ当該命令を履行することができないような場合には正当な理由に該当し、同罪の成立が否定され得るものと考えております。

○矢倉克夫君

ありがとうございます。
じゃ、最後に大臣に伺いたいんですが、この法案そのものと併せて、やはり一つ法案が議論になる背景には、捜査機関による証拠の捏造や情報の改ざんなどへの懸念、つまりその背景には、有罪立証が成果になっているような文化があるのではないかというような御意見もあります。そのような文化の有無にかかわらず、そういう文化が生まないようにするためには、大臣としては今後どういう方策を取るとお考えになっているのか、答弁を求めたいと思います。

○国務大臣(鈴木馨祐君)

今、有罪立証というところの文化ということ、御指摘もありましたが、私どもとして、その有罪を得ることを成果とみなすような姿勢で職務を行う、そういった文化があるとは考えてはおりません。
例えば、「検察の理念」等々においてもそういったこと、それは具体的に、あたかも常に有罪そのものを目的とし、より重い処分の実現自体を成果とみなすかのごとき姿勢となってはならない等々のそうした記述もあるところでありまして、そういったことはないと考えております。
ただ、やはり検察の活動、これは適正に行われているのか、そういった厳しい御指摘、この国会の場も含めていただいている状況でもあります。やはり、検察の活動、これは当然のことながら、国民の皆様方の信頼の上に立っていなければいけない。検察権の行使の適正さ、ここに疑いが出るようなことがあれば、これは活動の基盤を揺るがしかねないということがありますので、ここは検察の捜査、公判活動、これ適正に行われていかなくてはならないと考えております。
当然のことながら、法と証拠に基づいて、さらには「検察の理念」に示された検察の精神及び基本姿勢を指針として適切に今後とも対応していかなくてはいけないと思いますし、また同時に、この法案成立した場合には、やはりそうした、この運用についても適正な運用が確保されるように、これは捜査機関も含めてでありますけれども、しっかりそうしたことは、通達等々様々な規定を含めて、しっかりとこれは私どもとしてもそうした取組をしていきたいと思っております。

○矢倉克夫君

私、大川原化工機事件の、逮捕されて、その後勾留中に亡くなられた相嶋静夫さんの御遺族の方、亡くなられた後に起訴が取り消されたということで、本人は無罪だということが、起訴は適当じゃないということを分からない状態のままお亡くなりになられた方の御遺族お会いしました。
今、内容に特に触れるべきではないとは思っておりますが、ただ、御遺族の方から言われたのは、この文化というものに対する怒りというものがありました。これがあるかどうかは、また今お話があったんですけど、私たちとしてはタイミングを見て、じゃ、どういう文化があるのかというのはまた検討はしたいと思います。ただ、一言、ないというふうに決めるよりは、そういうリスクがあり得るということを含めてどういう制度がいいのかということを常に考えていく姿勢というのは、私は大事だと思います。
今回の法律を踏まえて、また今後もそういう意識を共に共有し合いながら、より良い制度の運用の在り方を考えていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
じゃ、以上で質問を終わります。

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