2022-12-14
新法の正式名称は「法人等による寄付の不当な勧誘の防止等に関する法律」。法律の柱は、法人などを対象に、霊感を用いて不安をあおり個人を困惑させる不当な寄付勧誘のほか、借金や住居の売却、田畑や工場といった事業用資産の処分による寄付金調達の要求などを禁止することです。
被害者救済の観点から、寄付の取り消し権を行使できる期間は、寄付の意思表示から5年間(霊感を用いた場合は10年間)可能としました。国は禁止行為の停止を勧告・命令でき、命令違反には罰則として1年以下の拘禁刑か100万円以下の罰金が科されます。
特に、勧誘の際の禁止行為を明確に定めたことは大きなポイントです。具体的には、▽退去の求めに応じない▽勧誘を受ける人を退去させない▽霊感を用いて不安をあおる――などの六つです。これにより悪質な寄付勧誘を行う団体を取り締まることができ、違反すれば罰則を適用できます。
また「個人の自由な意思を抑圧しない」などの配慮義務も規定。配慮義務を怠ったケースで、裁判所が違反と認めた場合などには勧告や団体名の公表ができるとしており、不当な勧誘の抑止効果が期待されます。
国会審議では、岸田文雄首相が新法に禁止行為と配慮義務が盛り込まれた意義について、法体系の中で許される最大限の規定になったとの認識を示し、「被害の防止や救済に高い実効性が期待できる」と述べました。
このほか、被害者の子や配偶者の救済については、民法の規定である「債権者代位権」の特例を導入し、親などに代わって将来分も含めた生活費などの範囲内で寄付を取り戻せるようにしました。
一方、消費者契約法の改正では、霊感などによる告知を用いた勧誘に対する取り消し権の適用要件を拡大し、権利の行使期間も最長10年に延長するなど使いやすくしました。国民生活センター法の改正では、裁判外紛争解決手続き(ADR)の迅速化を図り、相談機能を強化します。
被害救済・再発防止を巡り公明党は、消費者問題対策本部(本部長=古屋範子副代表)を中心に6回にわたり、被害者を支援している弁護士や有識者などから意見を聴取するなど、対策強化へ積極的に取り組んできました。
10月17日の衆院予算委員会で高木陽介政務調査会長は、相談体制の強化に加え、新たな被害の防止に向け「既存の消費者関連法の見直しだけでなく、悪質な寄付の要請を規制する新たな立法の検討を」と強調。同28日には党対策本部が岸田首相に、重ねて再発防止への新法検討を促すなどの提言を提出しました。
一連の取り組みを通じ、政府が閣法を国会提出する流れが確立し、予算措置を通じた相談体制の強化にもつながっています。
また、実効性のある被害者救済に向け、悪質な寄付勧誘には厳正に対処する一方で、健全な寄付勧誘を萎縮させないようにする観点から、与野党協議や国会審議に臨むなど、新法の早期成立に力を尽くしてきました。
新法は、与野党協議を通じて野党の意見も可能な限り反映させた実効性ある法律であり、被害防止・救済へ向けた取り組みが大きく前進します。
今後は法律が適正に運用されるかが重要です。まずは動向を注視しつつ、必要に応じて改善していく方針です。
岸田首相(中央)に提言を手渡す古屋本部長(左隣)ら=10月28日 首相官邸
今回の新法成立に関してマスコミなどで評価する論調が出ています。
新聞各紙は、「一連の法整備で、悪質な勧誘に対する一定の抑止効果はあるだろう」(10日付「日経」)、「被害の救済に向けた第一歩である」(11日付「毎日」)などと報じています。
また有識者の声として、7日付の「読売」では「不当な寄付勧誘の防止という点で意義がある。マインドコントロール下にある寄付を取り消せるよう十分くんだ内容ではないか」(桜井義秀・北海道大学教授)との見解を紹介しています。
さらに、7日に行われた衆院消費者問題特別委員会での参考人質疑では、中央大学大学院の宮下修一教授が、今回の法整備について「被害者救済の観点から一歩前進だ」と評価。「まず立法という形で第一歩を踏み出し、より良いものに発展させていくことが大事だ」と述べました。