186回 文教科学委員会(著作権法案 出版文化の保護等)

2014-04-24 国会質問議事録

○矢倉克夫君

公明党の矢倉克夫です。よろしくお願いいたします。
これまでの議論を聞きまして、改めて、議論の焦点は、出版者による企画、編集など、出版文化の中核を成す貢献がこれまでも含めて正当に評価されているのかという問題があると思います。これは、今回の法改正の可否だけに懸かるようなものでもないかと思っております。議論の前提といたしまして、先ほど石橋委員からも出版というものについての意味合い、質問がありましたが、より形式的な法律条文解釈、二、三点確認したいと思います。
まず、現行の出版権の内容ですが、著作権法八十条によりますと、著作物を販売する目的を持って原作のまま複製する権利であります。出版というと、企画、編集を中核とした一連の行為を一般的に捉えるんですが、事法律的な出版権という言葉が持つ響きからもそのようには感じるわけですけど、実際の条文から見える出版権は、既に企画、編集を経て、創作、実在している著作物が目の前にありまして、それを前提にそれをコピーする権利を認めているものであるというふうに理解をしております。
例えば、Aという人が企画、編集して成立した著作物を、Aとは別人であるBが複製、すなわちコピーすることを捉えても出版権というふうに構成をしているという理解でございます。しかも、出版権を許諾できるのは、厳密には著作権者ではなく、著作物の企画、編集などに関与もしていない複製権者であります。
つまり、条文だけ見ると、出版権との関係では企画、編集行為の価値は必須とされていないというふうに確認せざるを得ない部分ではあるんですが、この辺りの理解の確認をさせていただきたいと思います。よろしくお願いします。

○政府参考人(河村潤子君)

御指摘のとおり、現行法において、出版権の内容は、「頒布の目的をもつて、その出版権の目的である著作物を原作のまま印刷その他の機械的又は化学的方法により文書又は図画として複製する権利」でありまして、企画、編集の内容は含まれておりません。
ただ、出版権制度全体の趣旨としては、企画、編集等を通じて出版物を作成し世に伝達するという出版者の役割の重要性に鑑みて設けられたということから、出版を引き受け、企画、編集等を通じて出版物を作成し世に伝達するという役割を担う者がこの設定を受けることが制度趣旨にかなうということで御説明をさせていただきたいと存じます。

○矢倉克夫君

次に、今回の改正の具体的内容の確認であります。時間の関係もありまして、二点まとめて質問させていただきたいと思います。
まず、法案の八十条一項二号規定のいわゆる二号出版権の内容たる公衆送信ですが、電子媒体の言わば複製、コピーであり、一号出版権である有体物の複製と二号出版権、行為としてはこれ対応しているという理解でおります。共通の基盤として主に言えることは、公衆への伝達を果たすという部分での基盤があるという理解であるか、これがまず一点でございます。
二点目は、もう一点目の確認として、今回の改正以前から著作権者がいわゆるプラットフォーマーと直接電子書籍の出版について独占的な出版権の許諾契約を結ぶこと、これまでは否定はされておらず、もっとも、これはいわゆる債権的利用権であり、出版権といった準物権的利用権ではないわけですが、いずれにしろプラットフォーマーが電子書籍に関する権利を独占するという懸念、これ自体はこの改正以前、今現時点からもう既にある問題であり、これに対して、企画、編集等を行った出版者といえども必ずしも対抗することは難しかったという理解であります。
以上二点について、御意見いただければと思います。

○政府参考人(河村潤子君)

まず最初のお尋ねでございますけれども、紙の出版権について出版者が対抗要件を備えて独占的な出版を確保するということで、それからさらに、有効な海賊版対策を行うに当たって必要となる準物権的な権利を特別に専有させる観点から、頒布目的の複製権が出版者に専有されることとなっております。それの複製権、伝達の形式として複製権ということになっておりますけれども、今回の改正はそれに当たる部分を公衆送信といたしたという、御指摘のとおりでございます。
また、プラットフォーマーとの関係でございますけれども、いわゆるですけれども、いわゆるプラットフォーマーが著作権者と独占的な利用許諾を締結することなどの方法によりまして電子書籍の配信について独占的な権利を取得することは、現行法上も可能でございます。したがいまして、今回の改正によって新たにいわゆるプラットフォーマーが電子書籍を独占的に出版するということが初めて可能になったということではございません。

○矢倉克夫君

そこで本題ですけれども、これまで企画、編集といった価値に対しての保護は、もちろん編集行為そのものが著作権と認められれば別なんですが、明示にはやはり認められていなかった、保護はされていなかったのではないかという理解であります。全体として、趣旨として確認をするというような話が先ほど参考人からもありましたが、条文だけ見るとなかなか見えてこない。ですので、私としては、著者に加えて編集者や校閲者などを交えて質の高い作品を生み出してきたというこの出版文化の実態から考えると、特に時代状況変わっていったということも考えると、やはり一層の考慮というのが必要なのではないかなというふうに思います。
特に今、これまで紙媒体の著作物だけだったときは企画、編集した出版者が事実上ほぼ一〇〇%出版権を保持をいたしまして、企画、編集に対してなされた労力等の投下への回収がなされる、回収できるというような状態であったわけですが、電子書籍というものの技術革新を契機にして、企画、編集していない者であっても電子媒体の複製たる公衆送信することにより利益を上げることができるようになってしまった。これは今回の改正というよりは技術革新によってそういう事態が生じてしまったということであるかと思います。
大事なことは、やはり企画、編集した者の労力などが経済的価値として見合った収益を上げる体制をつくることであり、単に市場に委ねるという手法とはまた別に、しっかりと国としても経済活動の正常化を図る上では必要であるかと思います。この点に関しまして、大臣から御所見をいただければと思います。

○国務大臣(下村博文君)

御指摘のように、著作物が出版物として世に出るまで、著作者と出版者、それぞれの寄与のありようは様々ではありますけれども、出版者が企画や編集等、相当な努力をされている例が少なくないということは承知をしております。
現行出版権制度は、出版を引き受け、企画、編集等を通じて出版物を作成し世に伝達するという出版者の役割の重要性に鑑み特別に設けられたものであり、その趣旨は今回の改正案においても変わってはおりません。このため、従前の紙媒体に係る出版の場合と同様に、電子出版を引き受け、企画、編集等を通じて電子書籍を作成し世に伝達するという役割を担う者が電子出版に係る出版権の設定を受けることが制度趣旨にかなうものと考えられます。
御指摘のように、企画、編集等の役割を担い尽力された出版者がその努力に見合う利益を得られるようにするためには、当事者間の信頼関係に基づき適切な契約を結ぶという慣行を形成していくことが重要であるというふうに考えます。我が国の出版文化は、著作者と出版者との間の信頼関係に基づく企画、編集等の一連のプロセスから、出版事業がその基盤にあるということから、文部科学省としては、法律改正後も、当事者間における契約慣行の形成状況を見つつ、新たな出版権制度が効果的に活用されるよう取り組んでまいりたいと思います。

○矢倉克夫君

ありがとうございます。引き続きよろしくお願いいたします。
続きまして、次の質問に移らせていただきます。
国際的な海賊版撲滅に向けた取組となります。私、中国に滞在した時期があるんですが、外に出回ると、海賊版のDVD、出版ではなくDVDになるんですが、例えば一枚百円とかで売られているというような状況を見てまいりました。国内の著作権の改正があってもやはりそれは海外にはなかなか適用がなくて、本来的な意味での海賊版撲滅のためにはやはり国際的な枠組みというのをしっかりつくっていく必要はあるかと思います。
特に、ちょっと今、質問時間が関係ありますので私の方からこれまでの中国に対する関わりというのを幾つか言いたいと思うんですが、二国間協議等で日中で侵害発生国への法整備等の要請もされたということ、また中国の職員を対象にした研修事業も実施をされている、また権利者向けのセミナーの開催など様々な取組を行われてきたということをお伺いはしておりますが、ここ数年はなかなか動きがないという事実もまたお伺いもしております。
今後の一つの在り方としては、やはり日本が主導をしてこの海賊版対策等も含めた国際的な枠組み、ASEAN等を中心にした、特に、実体的な権利の部分ではなく、知的財産保護の執行体制整備のための助言や人材交流などをする枠組みをつくっていきまして、それに対して中国等もしっかりと入れていくというような在り方も必要かなと思いますが、この辺り、政府の方針等を御意見いただければと思います。

○副大臣(西川京子君)

先生御指摘のとおりでございまして、国内で幾ら整備をしっかりやっても、実際に海賊版がいろいろと中国その他で出て、被害を受けているのは現実でございますから、早急にその国際間の枠組みをしっかりと構築することが一番大事だと思っております。文部科学省としては、アジア地域を中心とする途上国を対象として著作権制度の整備を促進する、もうこのことが一番今大事なことと思っております。
具体的に、WIPO、これは世界知的所有権機関との共催によりまして、アジア地域著作権制度普及促進事業、これを平成五年から行っております。主にアジア太平洋地域でのシンポジウムの開催、途上国の政府職員や著作権管理団体職員等を対象とする研修の実施、これは主に東京でやっております。それから、途上国の国民を対象とした著作権の重要性に関する啓発を目的としたセミナーの開催等を毎年実施しておりまして、このシンポジウムと研修には、ASEANはもちろんですが、中国からの参加者も来ております。
引き続き、このような多国間の枠組みを使いまして、関係者や民間団体等も共に連携しながら、アジア地域における著作権制度整備への、主に日本が大きなリーダーシップを持って取り組んでまいりたいと思っております。

○矢倉克夫君

ありがとうございます。
以上で終わります。

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