安全保障に政治はいかに向き合うか その1

2015-07-17

矢倉かつおです。

昨年の7月1日、安全保障に関する閣議決定がなされました。そこから約1年が経過した先日7月16日、衆議院において安全保障法制が可決されました。

衆議院における総審議時間は116時間に及びます。その大半である約92時間が、野党に割り当てられました。しかし、一部野党は、委員一人あたり7時間以上もの質疑時間が確保されながら、法案の具体的内容に踏み込まず、国民の聞きたいことも聞かず、ひたすら「戦争法案」であるとのイメージを膨らませることだけに注力した質問を繰り返しました。強く猛省を促したいと思います。委員会採決時、カメラ目線で、あらかじめ用意したプラカードを掲げた姿は、「議論」ではなく「演出」に熱心なその姿勢を象徴するものでした。およそ言論の府の人間がなすべきことではありません。

強行採決との批判が、報道機関の一部からも当初あったようですが、採決方針であることは理事会で決せられたものであり、本会議にも野党は参加し討論もしています。審議の途中で突然に、採決動議を提出したものではなく、強行採決には全くあたりません。

ただ、法案に対する国民の皆様の理解が進んでいないことはまぎれもない事実であり、それが採決の強行といった誤解を生んでしまっている原因であることは確かだと思います。舞台は参議院に移ります。野党がしっかり質問しないのであれば、与党である私たち公明党が分かりやすい質疑をし、期待に応えていきます!

参議院での審議開始を前に、今日はあらためて、この安全保障法制が「紛争予防法制」である意味をお伝えしたいと思います。

そのうえで来週早々にも、メールを別途配信し、政治家としての私自身がこの法案に向き合うにあたり掲げた決意、信念を三点、具体的には、①問題が発生してからでないと動かない日本政治に「予防」の観点を導入する、②抑止力による紛争予防の前提である「徹底した外交重視」の姿勢を確立する、③国際法上の概念に支配されていた憲法9条の議論を真正面から問い直し、「自衛の措置」とは何かを追及しつつ「憲法9条を死守する」、以上の各点をお伝えし、参議院における徹底した審議に向けた誓いに代えたいと思います。

本来であれば、すべての皆様に直接会ってご説明したいところですが、週に数度の党員会等に参加をし、ご説明するのが精一杯の状態です。今回も、複雑かつ長文のメールとなってしまいますが、支援者の方々がご友人から「公明党を信じたのにどうしたのか」と言われることのないようにしたい、という思いからでもあります。どうかご容赦いただきたいと思います。

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そもそも、なぜ、この法制が紛争を未然に防ぐことにつながるのでしょう。

キーワードは「抑止力」です。

「抑止力」と言う言葉の響きからは、相手を屈服させ従わせるような印象があるかもしれません。しかし、実は各ご家庭でも、この「抑止力」は機能しています。その典型が防犯設備です。

頑丈な「鍵」や「警報システム」等、「備え」をしっかりしている家に泥棒は入りにくいです。頑丈な鍵に歯が立たない、ということもありますが、さらに大事なことは、泥棒に「あそこは鍵も頑丈だし、うかつに侵入すると「警報」が鳴るぞ」と思わせ、あきらめさせることが出来ることからです。このように、備えをすることで犯罪をはじめとした行為を起こさせる気持ちを「抑止」させる力、これが「抑止力」です。

残念ながら、日本の安全保障環境は変化しています。

前回のメルマガでもご紹介した森本敏教授(元防衛大臣)は、国会で、「2006年ごろから東アジアにおける構造的な変化が起きて」いると具体的に言及されました。特に、北朝鮮のミサイル技術は進歩著しく、すでに日本の上空を飛び越え遠くまで飛ばすことができます。国際関係などの研究で著名なアメリカのジョンホプキンス大学は、その北朝鮮について、2020年までには弾道ミサイル一千発とともに最大百発の核弾頭が製造可能となり、小規模な核兵器を製造し、それをミサイルに搭載する能力を確立する可能性がある、との調査結果を出しています。日本が核の標的になりうる脅威が現実にあるのです。

米ソ冷戦の時代も、当然、緊張は高かったのですが、米ソともに勢力が拮抗しており、いわば両すくみ状態のため、紛争の発生可能性という点からは安定していました。西側諸国の一員である日本が注意すべきことは、この東西均衡のすき間となり全体のバランスを崩さないようにすることでした。

しかし、冷戦終了後20年以上が経過した今、先ほどの北朝鮮をはじめ急速に軍事技術や能力を向上させる例が多くなり、とりわけ日本の近隣における勢力の均衡が崩れだしています。また全世界的にみると、テロ組織のように、国家以外組織による脅威も増大しました。これらを踏まえ、日本自身が自らの安全保障をしっかり考えないといけない状況になりました。

日本は自らの責任で戸締まりを厳戒に、警報システムなども備える必要が残念ながら増しています。

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では、日本にとっての「備え」となる「鍵」や「警備システム」は何か、それが日米同盟の強化です。安全保障法制は、日米の切れ目無い協力体制を「法律」の形で整備し強化することで、「備え」とします。法律をつくることによりはじめて、平素から訓練その他共同することが可能となり、信頼関係が醸成されます。いざというときのための平素からの連携が生まれます。

そして安全保障法制の最大の目的は、日米同盟の強化により、「日米でしっかり対処しています。」ということを内外に示すことが可能となること、その結果、泥棒が犯罪をあきらめると同じように、近隣の国は日本の危険を侵害するような行為にでることを諦めさせることです。

つまり、この法案の精神は、どこまでも、戦争をさせないことなのであり、その目的を達する範囲に自衛権を確定・限定することです。

アメリカに日本防衛の義務を課している日米安保条約の精神を前提とし、「日本を守る他国」と共同し日本を守る姿勢をより鮮明にすることで紛争を回避するための法案、それが安全保障法制であり、日本が無限定に他国の戦争に介入していく戦争法案などでは断じてありません。また、世間で言われているような徴兵制の復活など、この法案を契機になされることなど断じてありません。法案のどこの部分が徴兵制の復活につながるのかを指摘もせず、ただイメージを膨らませることに執着する野党の手法はひどいと感じます。

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公明党はどこまでも戦争のない世界、社会を目指します。

国民を守るという、政治が当然に追うべき責務を果たすために与党としてこの法案を積極的に進めますが、究極のゴールは、このような法案も必要ない戦争の無い社会です。これには、政治のみならず、教育、文化、宗教その他あらゆる力を総動員する必要があります。世界の現実からは、まだまだ遠い理想かもしれませんが、この目的を果たすことこそ、公明党の使命です。私はそのために政治家として命をかけて取り組む決意です。

いよいよ参議院での審議が始まります。私も質問にたつ可能性が高いです。分かり易く、皆様に安心していただける審議・議論を行ってまいります!引き続き、よろしくお願いいたします。

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