2016-12-01
矢倉かつおです。
前回、TPPがいかに日本に利益をもたらすかについて、主に関税の側面から考えました。
このTPPについて「大企業優遇だ」との批判のお声が根強くあります。
「関税削減といっても、利益をうけるのは、『製品』をつくり輸出している大企業だけだろう。」というものです。
しかし、これは違います。
まず、製品をつくるのは大企業だけではありません。
加えて、例えば、今回のTPPでは「部品」(例えば自動車などの)にかかる関税も、多くは即時に撤廃されます。そして、その部品(関連品も含む)の多くをつくっているのは中小企業です。
TPPは、そんな日本の優れた中堅・中小企業が、「日本に居ながらにして」、より世界と「面的につながる」ことを可能とします。
ここで強調したいことが、「供給網(サプライチェーン)」のグローバル化という、世界経済の動きです。
今の経済活動は、一つの「完成品」をつくるために必要な無数の材料の調達、部品づくり、組み立て、そして消費者への販売などそれぞれを、異なる複数の国でつくり行う、いわば分業が進んでいます。
例えば、iPhoneなどスマートフォンは、液晶はA国、チップはB国、指紋センサーはC国、という形で部品製造段階において分業され、それらが「網の目」のようにつながり「供給」され組み立てられることで一つの完成品となり、消費者の多い市場に輸出されたりします。
こういった世界的に広がる面的な分業体制が「供給網のグローバル化」です。
TPPは、12カ国の力を「面的につなげ」結集し、巨大な「供給網」をつくる取り組みです。域内人口だけで8億人という「巨大なマーケット」をつくり、その人々を中心に完成品を届ける、そのための壮大な「供給網」をつくります。
その「供給網」の中心に日本の優れた中堅・中小企業、付加価値の高い部品をつくる中堅・中小企業をおくということが、TPPを推進する日本の戦略の一つです。
日本がTPPの枠に入ることにより、日本の中小企業は「日本に居ながらにして」巨大な供給網にはいるメリットを享受します。
それは、TPPに加盟していない国との間で有利に競争を進めることを意味します。長期的にみれば、これまで日本内外の大企業が、日本以外の企業に頼んでいた仕事を日本の中小企業に取りもどすことも可能となります。
まさに、日本の中小企業が世界で勝つための戦略の一つこそ、TPPを中心とした通商戦略なのです。
政府は、このTPPの効果を最大限、日本の中堅・中小企業が活かせるよう万全の体制をとっています。
特に、商工会議所や商工会、自治体、金融機関、ジェトロなどを幅広く結集し中小企業を支援する「新輸出大国コンソーシアム」を結成、この半年間あまりで、すでに2300社ほどに対し、専門家を割り当て、支援を開始しております。
改めて、TPPは大企業優遇などではなく、大企業と中小企業を含めた日本の企業が、ともに世界で勝つために必要なものなのです。
次回は、アメリカの動向を探りつつ、TPPのもう一つの特徴から、世界の経済秩序としてのTPPの側面を考えたいと思います。