IR法を契機に依存症撲滅を

2016-12-27

矢倉かつおです。

国会閉会後も、予算編成や鳥インフルエンザ対応、地元を含めた現場まわりなど動いております。

このメールでは当初、国際時代における農業について書く予定でしたが、終盤国会の激しい動きのなか、別に書かなければいけないテーマが出来てしまいました。

IR法(統合型リゾート推進法)です。

この法律の賛否について、公明党内も意見が割れたこともあり、ご懸念のお声も頂いているところです。

賛成・反対それぞれ何を背景に決断したかなど、後ほど考えを書きますが、その前に、少し丁寧に、この法律の中身を追ってみたいと思います。「カジノ解禁法」という呼称が一人歩きしている印象がありますので。

 

〇IR法は、直ちに「カジノ」を解禁するものではありません。

まず誤解されがちですが、IR法は、それだけでカジノを「解禁」したものではありません。

カジノ含むIR(統合型リゾート)を解禁するにはどういった要件が必要か、関係省庁に検討するよう指示をだしたものです。

その指示も「丸投げ」ではありません。

「統合型リゾートの敷地に占めるカジノの面積割合は限定する」「地方議会の同意を要件とし、公聴会などを開催する」「数は厳格に少数(日本で2か3くらいと言われます)にする」「ギャンブル依存症対策のため十分な予算を確保する」「入場制限をかける」など、16項目にもおよぶ付帯決議により、縛りをかけています。

解禁に厳しい制限をかけるため、今後、1年以上かけて議論します。

ただ、そうはいっても、いわゆる賭博である「カジノ」が将来的に「解禁」される可能性を開いたことは確かです。重大な政策転換です。

 

〇IR(Integrated Resort=統合型リゾート)とは?

そこで立ち止まり、ここでイメージしている「カジノ」とは何か、考えたいと思います。

アメリカのギャング映画の舞台になったようなものを想定される方も多いと思います。マフィアが取り仕切り、イカサマが横行、負けが込んだ客は身ぐるみはがれてしまうような。

しかし、ここで想定されている「カジノ」は違います。

数千室規模の高級ホテル、映画館、世界各地の食べ物が並ぶレストランゾーン、ショッピングゾーン、国際会議場などを備え、国際会議や展示会、見本市などで海外の人との商談をするビジネスマンや、観光を目的とした家族連れなどがターゲットの「統合型リゾート」、その一角にある「カジノ」です。

運営するのはマフィアではありません。ちゃんとした会社です。

意外に思われる方も多いのではないでしょうか。

よく例としてあげられるのがシンガポールの「マリーナベイサンズ」です。

テレビのCMにもでていました。

3つのホテルをまたがって、その屋上に連なる帆船型のプールが印象的なリゾート施設です。「カジノ」は、全体面積の5%ほどです。こういったカジノが認められている国は世界で140カ国あります。

IR法が、単純な「カジノ解禁法」ではないことはお伝えできたと思います。

 

〇公明党は何故自主投票としたのか?

では、なぜ賛否がわかれたかについて、です。

経済効果をめぐる判断の違い、などもありますが、もっとも重要な点は、「ギャンブル」をはじめとした「依存症」をなくすにはどうすべきか、その手法をめぐる判断の違いだと思います。

この法案に反対した人は、依存症蔓延の危険を更に高めると主張することで、依存症の脅威についての国民理解を進めました。

では、法案に賛成した立場の人が依存症蔓延を放置するのか。決してそうではありません。

むしろ、この法案の成立を契機に、国が「依存症」の問題に本格的に取り組む体制をつくろうとした点が賛成派の思いだったと感じます。

なぜ、そういえるか。実は、私が、その思いで「賛成」したからです。

 

〇各種依存症対策こそがこれからの重要課題です。

実のところ、日本はすでに多くの依存症にむしばまれています。

ギャンブルだけでなく、アルコール、薬物、そしてパチンコや競輪、競馬(これらは「ギャンブル」とはみなされていません)などです。これらの依存症に苦しむ人や家族その他が大勢いらっしゃいます。

私はこれまで主に再犯防止の観点から、「薬物依存症」の問題に取り組んできました。

そこで感じたことは、日本は依存症対策について未整備だ、という点です。専門の医療機関も相談体制も全く足りていません。唯一、アルコール依存症については基本法がありますが、それ以外は、国の方針すらあまり定まっていないのが現状です。

ただ、いくら訴えても、なかなか予算は増えません。

主張は正しくても、「時」あるいは「機運」というものがないと多くの人は動かないというのが実感でした。

そんなとき、この法案が提出されました。

はじめは反対するつもりでした。

しかし、提案者を中心とした賛成派の議員で、これまで、依存症にそれほど関心を持たなかった方も、真剣にこの問題に取り組む必要性を認識するようになりました。私は、そこに与野党こえて依存症対策に踏み出すエネルギーを感じ、問題解決への「機運」を感じました。そして、最後は、その「機運」を信じ、賛成することを決意しました。

このように、反対派は、依存症撲滅の「声」を残すことを選択し、賛成派は、悩みながらも法律を成立させ、依存症撲滅の体制を国に求める「機運」をつくり「力」を得ることを選択しました。しかし、その根底にある、「依存症をなくしたい」という強い思いは、賛成も反対の人も一人残らず共有しているのです。

その両方の声をうけ、今回、ギャンブルを含めた依存症対策のための予算は、28年度予算額が1.1億円であったものが、29年度予算案では5.3億円となり、なんと5倍になりました。また、全国で5カ所しかなかった依存症の指定専門医療機関も、一気に67カ所に増やし、全ての都道府県のみならず政令指定都市にも設置することとなりました。

大事な点は、ギャンブル依存症対策は、カジノだけではなく、公営競技や風営法上の遊技も含めた総合的対策を講ずる必要があるという点です。

IRを推進するにあたっては、このような社会的問題を排除し、最小限に抑制することこそ最重要の課題であると認識しています。

法律が成立した以上、これをテコに、今後はどれだけ依存症対策(ギャンブルに限らず)を打ち出せるかが勝負です。とりわけ、私を含め「賛成」した人間の責任はより重いと感じています。頑張ってまいります。

 

次号は、一年を振り返りメールを送る予定ですが、鳥インフルエンザの対応などのため、あるいはこれが最後のメールとなるかもしれません。

皆様、本年、大変にお世話になりました。どうか良いお年をお迎えください。

ありがとうございました。

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