【対談】世界人権宣言から70周年 一人一人が輝く社会に

2018-12-08

ヒューマン・ライツ・ウォッチ日本代表 土井香苗さん × 公明党参院議員 矢倉かつおさん(参院選予定候補=埼玉選挙区)

12月10日は、国連で「世界人権宣言」が採択されてから70周年の節目を迎えます。今なお世界各地で局地的な紛争が続き、日本を含む先進国でも新たな人権問題が浮かび上がっています。一人一人の人間の尊厳を守り、新たな共生社会を築くために何が求められているのか。国際人権NGO(非政府組織)ヒューマン・ライツ・ウォッチ日本代表の土井香苗さんと、国際弁護士の経歴を持つ公明党の矢倉かつお参院議員(参院選予定候補=埼玉選挙区)に語り合ってもらいました。

土井 困窮家庭の支援へ力結集

矢倉 教育負担を軽減格差防ぐ

矢倉 ヒューマン・ライツ・ウォッチは、世界最大級の人権保護団体です。土井さんは、その日本の中心者として、国内外の人権問題の解決に向け、活躍されてきました。

土井 私たちの団体は、世界の紛争地や独裁国家における人権侵害を監視しています。その中で最も心を痛めているのが、女性や子どもなど、戦闘に関係ない一般市民の人権が虐げられている実態です。弱い立場の人たちの人権を守るべく、日本を含む各国政府への働き掛けを続けています。

矢倉 現在、力を注がれている取り組みの一つが、それぞれの国での「学校保護宣言」ですね。

土井 はい。学校が軍事拠点などに利用されれば攻撃目標となり、子どもは教育を受けられなくなります。この宣言は、子どもの命と教育を受ける権利を守るため、各国政府が、武力紛争下での学校の軍事利用に「反対」を表明するものです。公明党では矢倉参院議員に最初に動いてもらいました。

矢倉 土井さんらの要望を受け止め、公明党は宣言の趣旨に賛同し、党内で勉強会も開いてきました。政府に働き掛けるなど後押しをしています。

土井 現在、82カ国が宣言とガイドライン(指針)を支持していますが、日本はまだです。一日も早い支持を望んでいます。

矢倉 「子どもの貧困」問題に取り組む上でも、教育の視点が不可欠です。家庭の経済力による教育格差を放置すれば、その子どもが大人になった時だけでなく、次世代にも大きく影響します。“負の連鎖”を断つ必要があります。

土井 子どもにとって、家庭の存在は大きなものです。しかし、経済的に苦しい、ひとり親家庭をはじめ、児童虐待やネグレクト(育児放棄)といった問題を抱え、子どもを守ることができない“弱い家庭”があります。日本は、そうした弱い家庭を支える取り組みが、まだ十分ではなく、対策が急がれます。

矢倉 私も小学生の頃に父の事業が失敗し、貧しい家庭で育ちました。奨学金を利用できなければ、大学進学を諦めていたでしょう。

まずは、自治体レベルの支援が重要です。例えば、私の地元の埼玉県は県議会公明党の推進で、困窮家庭を対象に、教員OBらによる学習支援を先進的に行っています。地域の中で、貧しい家庭の子どもたちに寄り添った支援を積極的に後押しします。国レベルでも給付型奨学金制度の拡充など家庭の教育費の負担軽減を、さらに進めなければなりません。

土井 子どもが成長する上で家庭と教育は車の両輪であり、そこがしっかりしていれば、子どもは自分の能力を最大限に伸ばすことができます。家庭と教育にどれだけ政治の力を結集できるかに、日本の未来が懸かっています。

矢倉 それには、行政の力だけでなく、NPO(特定非営利活動法人)など民間の協力も欠かせませんね。社会問題解決のために資金を集めるソーシャル・インパクト・ボンド(社会貢献型投資)など、さまざまな支援の環境づくりを進めていく決意です。

矢倉 ヘイト解消法の制定を実現

土井 差別問題“わがこと”と捉えて

土井 近年、不安視しているのは欧米でのポピュリズム(大衆迎合主義)の台頭です。移民・難民といったマイノリティー(少数派)を排除する排外主義的な勢力が伸びています。

矢倉 排外主義は、自らの政治勢力を拡大するため、人々の心の中にある不安をあおります。日本でも、在日外国人に向けられるヘイトスピーチ(憎悪表現)が問題になりましたが、根底は同じだと思います。

私は議員立法でヘイトスピーチ解消推進法の制定(2016年5月)に尽力してきました。「不当な差別的言動は許されない」とする理念法です。これを根拠として、自治体が規制条例や相談体制の整備に乗り出すようになりました。

土井 その効果もあって日本国内のヘイトスピーチの状況は、改善されています。この法律が果たしている役割は大きいと思います。

矢倉 また、法律の制定をきっかけに、「ヘイトスピーチは許さない」という社会全体の意思を明確に示したことも重要でした。

土井 差別や人権の侵害は社会の分断の溝を深めてしまう負の影響があります。世界で相次ぐ紛争は、人種・民族や宗教の差別が原因であることが多い。いみじくも世界人権宣言の前文で、人権の保障が「平和の基礎」とうたっている通りです。

矢倉 その世界人権宣言の精神は、国連で15年9月に採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」に脈々と受け継がれています。「貧困をなくそう」「質の高い教育をみんなに」「気候変動に具体的な対策を」――など17項目にわたり持続可能な社会の構築をめざすものですが、その理念には「誰一人取り残さない」が掲げられています。

土井 この考え方は、人権とは何かを、分かりやすく言い換えています。

「開発」という言葉からは、GDP(国内総生産)のような経済的イメージが先行して、一人一人の幸せまで結び付きにくい面があります。SDGsは、それを個人の尊厳に置き換えた場合の目標も指し示しているのではないでしょうか。

矢倉 その通りですね。日本では行政の政策や企業の経済活動のほか、高校生などの個人が、SDGsを“わがこと”と捉えて、「いじめを報告しよう」「環境に優しい製品を使う」など、社会問題の解決へ具体的な行動に移してくれる動きが出ています。

公明党SDGs推進委員会の事務局長として、その潮流を確かなものにしていきたいと思います。

土井 “わがこと”として捉える視点は大切です。先ほどの差別の問題でも、“他人ごと”として無関心であれば、どんどん社会が荒廃し、いつしか自分も巻き込まれてしまう。他人の人権や尊厳を守るということは、ひいては自分も含めた社会を守るということです。

矢倉 共生社会が叫ばれる中にあって、一人一人が人権に改めて向き合う必要があります。人権の党・公明党として、日本の人権政策をリードしていきます。

土井 公明党は人権問題に積極的で、さまざまな相談がしやすい政党だと感じています。これからも人権保護・促進の活動に期待しています。

どい・かなえ 1975年生まれ。東京大学法学部卒。在学中、司法試験に最年少(当時)で合格後、NGOの一員として、アフリカの最貧国エリトリアで1年間の司法ボランティア。2000年に弁護士登録。06年にヒューマン・ライツ・ウォッチの米ニューヨーク本部のフェロー、08年9月から現職。
やくら・かつお 党埼玉県本部副代表。元農林水産大臣政務官。日本、米ニューヨーク州で弁護士。東京大学卒。参院議員1期。43歳。