2018-05-31
○矢倉克夫君
公明党の矢倉克夫です。
三人の参考人の先生方、貴重な御意見、大変ありがとうございます。
時間が限られておりますので、早速質問に入らせていただきたいというふうに思いますが、まず、田辺参考人にお伺いをしたいんですが、資料の四ページにも書かれてあるとおり、エネルギーミックスの省エネ対策の下では五千三十万キロリットル程度の省エネ実現、これは家庭の消費量より更に超えるという、もうまさに改めて見ると大変な目標であるかなと思っております。今の私の理解では、その五千三十万のうち家庭は千百六十万キロリットルということでまず目標を掲げているというふうに思っているんですが、十ページの例えば建築などの基準、これを実現することも、これが達成することで千百六十万という理解であるかなというふうに思います。
まず、この十ページですが、確かに建築物の在り方による省エネ、非常に重要だなというふうに思います。ここに書かれている実現を目指すために、その制度とまた技術面でどういうところが更に改善が必要であるのか、御所見をいただければというふうに思っております。
○参考人(田辺新一君)
お配りしている資料の二十二ページというのをちょっと参考資料で見ていただきたいんです。私が作った資料なんですが、日本の住宅全ての面積に対して、現在新築されている面積は一・五%しかありません。この逆数が大体住宅が何年もつかという数字になります。今七十年ぐらい要はもつような住宅になっているということです。三%になると三十三年になります。ということは、普通の物の家電製品の商品だと三年とか五年サイクルで省エネへ入れ替わってくるんですけど、住宅はとにかく長い年月掛けないと入れ替わっていかないと。
ですから、まずは新築をきっちり良いものにすると。それでも、古いものがいっぱいありますから、その古いものに対する修理、修繕するというその技術が一気に変わっていかないんですね。ですから、住宅建築制作をするときには新築から変えていかないといけないんですけど、修理に使えるような部品とか設備とか窓とか、そういうものが良いものしか手に入らないようにマーケットを変えていくというのが実は非常に重要じゃないかというふうに思っています。
一方で、非常に断熱性も悪かったり、必ずしも日本の住宅が世界に誇れる住宅ではないことから、質を上げていく、一方で健康対策とか質を上げていくことを省エネのもう一つの目標にすべきではないかというふうに考えております。
○矢倉克夫君
ありがとうございます。
今その部品、良いものがマーケットに広がるようにするための具体的な政策としては、標準化とかそういうものも含めたということでよろしいんでしょうか。何か具体的に更にあれば教えていただければ。
○参考人(田辺新一君)
先ほど申し上げましたが、五年、六年前に、住宅トップランナー、建て売り住宅の方々に、中央値で基準を守ってくださいと、三割しか守れていなかったのが九十何%になりました。それから、ゼロエネルギーハウスが昨年多分四万棟ぐらい建っていると言われていますけど、そうすると、そこで使われている住宅部品は非常に質の高いものになります。それがマーケットの真ん中になってくると値段もこなれてきますから、特に窓なんかは非常に安くなっていまして、そうすると普通の人も改修などで簡単に使えるようになると。こういう好循環を生むことが非常に重要ではないかというふうに考えます。
○矢倉克夫君
ありがとうございます。大変参考になりました。
もう一点だけ田辺参考人にまたお伺いしたいんですが、新しい省エネの概念というところ、それ非常に重要だなというふうに思います、私も。これをどういうふうにしていくのか、またちょっと抽象的な質問で恐縮なんですけど、使うのを少なくするから操るという形にする、そのためには制度とまた技術の面でどういうところを更に変えなければいけないのか、更に詳しく教えていただければと。
○参考人(田辺新一君)
既に行われていますけど、例えばVPP、バーチャルパワープラントといいまして、もしあるときに少し電気を市場から調達するときに、発電事業者から調達するのか、省エネ量として調達することもできます。例えば、ビルで既にガスと電気を一緒に使ってビル用のエアコンを動かすようなシステムもありまして、電気が足りないときはガスの方で動かせば電気減るわけです。その量が売れるようになってきていますから、そういったシステムですとか、ディマンドレスポンスとか、昼間に太陽光があるときにお湯を沸かす、ヒートポンプで沸かせば、昼間の温度が高いので夜お湯作るより効率いいんですね。
こういったことを、今までだと使うんで駄目だと言われたことを認めていくことが、次の省エネ、ひいては、これ、実は技術競争としても極めて世界中で厳しい競争になっていますので、省エネの新しい概念の投資として研究や開発を行っていくべきだというふうに思います。
○矢倉克夫君
その技術競争とともに、そういうものに対する投資を促進するという政策もそうだと思いますし、あとは、使う側の消費者がそういうものを選別するために誘導する、誘導するという言葉は良くないですけれども、それがいいというふうに思わせる、更に良くない言葉を使ってしまいましたけれども、そういうようなことを選んでいただけるような環境整備をするためにはどういう政策がよいのか、また教えていただければと思います。
○参考人(田辺新一君)
住宅を例に取りますと、実は自分の家が寒いと思っていらっしゃらない方がいっぱいいらっしゃるんですよね。マンションに住むと、ああ、暖かかったとか、私は体験してもらうということは非常に重要だと思っています。
例えば、ゼロエネルギーハウスをデモで造ってそういうところに泊まっていただくとか、あるいはビルも、働きやすいビルで私は適切な温度にして働ける環境で働いてもらえば、ああ、こういうところで働けばよかったんだとか、我慢しなくたってよかったんだと。
我々のデータで、コールセンターという、電話のオペレーターが働いているところで一年間取ったデータがあるんですが、快適温度から三度高いと六%電話を受ける数が減るんです。これ、三十分残業しないと駄目なので、三十分のエネルギーも掛かりますから、効率をよくして早く帰って省エネ機器を使うというのは、これは働き方にも極めていいんじゃないかというふうに思います。
○矢倉克夫君
ありがとうございます。大変興味深いお話をいただきまして、ありがとうございます。
続きまして、大野参考人にお伺いをしたいと思いますが、資料にありますところの下で、省エネということについての経営陣の意識を巻き込まなければいけないという御視点はそのとおりだなというふうに思いました。まず、裏を返せば、これまでは現場だけの感覚が強かったということかなと私理解したんですが、これまで現場だけの課題となって経営陣まで行かなかったその背景みたいなのをもし教えていただければと思うのと、あと、その経営陣をどういうふうに意識させるかということで、総量の削減義務であったり、排出量というようなある程度義務化を前提にした上での経営陣に対する意識付けというところの御視点だったと思うんですが、例えば、経営陣を巻き込んだ形、何かインセンティブを与える、政策としてどういうものが考えられるのかというのを御視点いただければ、御示唆いただければと思います。
○参考人(大野輝之君)
なぜ現場止まりになってしまうかということなんですが、これはよく、エネルギーコストが上がる、やっぱり電気料金が上がると非常に大変であるという話でよく出るんですけれども、これは、エネルギー多消費型産業、電気だとかガスとかこれをたくさん使う産業ですね、ここは確かにそうなんですけれども、実は、一般的に多くの産業の中では、エネルギーコストが経営に占めるコストって極めて小さいんですね。そんなに大きくないんです。ですから、そこが例えば一〇%上がったとしても、経営全体のコストに掛かるウエートは余り多くないんですよ。そうすると、経営陣にとっては、電気料金がどうかとかガス料金がどうかとか、そういうことよりもっともっと投資判断に大きな影響を与えるものがあるので余りそこに関心が行かないんですね。ですから、そういう、現場の人は省エネのことを知っていても、なかなかそういうところまで目が行かないというのが実態だと思います。
大企業の場合でもそうですし、特に中小企業の場合なんかは、自分の工場がどれぐらい電気料金を使っているか、エネルギーを使っているか、それ自体を知らないということがございます。ですから、そういう意味で、自主的な対策をするということだけ言ってもなかなか進まないという状況です。
したがって、そういうことを義務化をすることによって、この問題が、もし仮にこれ遵守をしなければやはりこれ企業名が公表されるとか、そういうある意味ペナルティーをやることによってやっていこうというのが一つでございます。
それから同時に、もう一つは、メリットを入れるというお話ですけれども、現在は、キャップ・アンド・トレード制度というのは、一方で削減の義務が掛かりますけれども、同時に、もっとその削減を義務以上にすることによってより大きな削減をした場合には、その削減する権利のようなもの、排出する権利を売買できるということで経済的メリットもございます。
ですから、キャップ・アンド・トレードは、一面では厳しい規制という面がございますが、同時にインセンティブという面もございます。そういう意味では経済的手法も活用しているものでございまして、そういう観点から世界的には利用が進んでいるということかなと思います。
○矢倉克夫君
ありがとうございました。
経営の観点から、コスト面的な視点からすると意識が少なくなるという事実は、ああ、なるほどと今思いました。
あとは、今お伺いして思ったんですけど、それであれば、企業に投資する人たちがそういう部分を更に重視して投資をするというような意識になっていけば、それに反応して経営陣もまた変わっていくのかなというようなことも考えました。ちょっと時間があれば、また後でお伺いしたいというふうに思いますが。
ちょっとその次に、大島参考人にお伺いしたいんですが、再生可能エネルギーは私も拡大はしていかなければいけないなというふうに思っております。それで、いただいた資料の八ページ目に、目標が低過ぎるということをおっしゃっていただきました。これからは、分散型のエネルギー社会、それをやっぱりしっかりつくっていくのは再生可能エネルギーだと思いますし、資源のない日本にとっては再生可能エネルギーをやっぱり広げていかなければいけないなと本当に心から強くも思っているんですが、この再エネの目標を今までのトレンドをこのまま延長すればこうある、それに比べればちょっとやはり低過ぎるんじゃないかというようなお話であったかと思います。
例えば、これを延長し得るための課題であったり、どういうところを更に改善しなければいけないかというところを、もし御視点あったら教えていただければ。
○参考人(大島堅一君)
このグラフは、先生御指摘のように、そのまま線形に延ばしたものでありまして、再生可能エネルギーの普及というのは、むしろ、こういう線形に増えるというよりは、幾何級数的にといいますか、もう少しカーブが上向きになるものですので、かなり控えめに私は書いたつもりでございます。
再生可能エネルギーは、もう世界的な価格は非常に下がっておりまして、再生可能エネルギーが高いから、何でしょう、普及が進まないというような議論はもはやなくなってきております。
日本の課題は、やはり幾つかの今までの電源の使い方が最も合理的になるような制度がございますので、再生可能エネルギーを中心とする分散型エネルギーを利用することを前提にしたインフラ整備であるとか、あるいはそのルールの設定というのが必要なのではないかというふうに考えてございます。昨今指摘されております系統運用におけるルールでありますとか、あと電気の優先的な使い方ですね、エネルギー基本計画では原子力や石炭に関してベースロード電源というような規定がございますが、そういったことをあらかじめ国として決めるのではなくて、やはりそのときそのときの経済的な合理性に従って使うというのが重要でありますので、もうベースロード電源、ミドル、ピークというようなやり方はやめて市場で判断させていくと。それによって再生可能エネルギーが増えていくというようなことになるのではないかというふうに私は思っているところです。
○矢倉克夫君
三人の先生方、大変に貴重な御意見ありがとうございました。法案審査及びエネルギー政策にしっかりと反映していきたいというふうに思います。
ありがとうございました。