2016-11-30
矢倉かつおです。
「環太平洋パートナーシップ協定(TPP)」をめぐる議論の舞台が参議院に移り、二週間が経過しました。
私も大臣政務官として答弁に立っております。先日は同僚の平木議員より鋭い質問をいただきました。
アメリカ次期大統領であるトランプ氏のTPP「離脱」発言の影響や、日本のあるべき交渉姿勢について気になるところですが、その詳細は、次々回発送のメルマガ(明後日あたりに配信する予定です)にてお伝えします。
一点だけ申し上げれば、そもそも、TPPはまだ発効しておらず(効力が生じていない)、そこから「離脱」するということはありません。
今は、協定に署名した各国が、合意に基づきお互いの国内手続きを踏む段階にあります。
トランプさんの「離脱」発言は、アメリカ政府が各国に対し約束した国内手続きの推進を「もう、しません」と言っているに過ぎません。
であれば、日本は、ともにTPPを進めた国としてトランプ次期米国大統領に対し、国内手続きを「する」ように説得する責任があります。日本のリーダーシップがより期待されます。
そこだけお伝えし、今日と明日のメルマガでは、改めて、TPPとは何か、日本企業、特に中小企業にどういった利点があるのか考えたいと思います。
TPPとは、大まかにいえば、日本、アメリカ、オーストラリア、シンガポール、ベトナムなど世界の経済規模の4割を占める国の間で合意、署名された「『国境なき経済』を実現するための『国どうしの約束』」です。
その第一の特徴は、世界各地での公正な経済活動を確保する基本ルールであることです。こちらは、次々回にてお伝えします。
第二の特徴は「『モノ』の動きに立ちはだかる『国境の壁』(典型は、国境を越えるときにかかる税金、つまり関税)を可能な限りなくすことにあります。
特にこの第二の特徴に関連し言えば、こういった、関税を削減する「約束」は世界で数多く、これまで、およそ300存在します。
ただ実は、日本はこの分野で、乗り遅れていました(様々な背景があるのですが省略します)。
日本が締結し発効した約束の数は16ですが、これは、日本の貿易総額の22.7%しかカバーしていません。結果、日本企業が外国とやりとりする「モノ」の動きの7割以上で、税金がかけられてしまっています。
ちなみにお隣韓国では、その貿易総額のうち67.4%において、関税がかからないか低くおさえられており、中国もすでに貿易総額の38.0%をカバーしています。
つまり、日本にいる企業より外国にいる企業の方が、無税か低い関税で世界と戦える、有利な環境にある、ということです。
TPPは、日本企業がおかれたこの不利な状況を、一部解消します。
まず、TPPにより、日本の貿易額のうち、関税が撤廃されるか低く抑えられる割合は一気に39.5%となります。日本企業が海外と取引する際の条件が、今より改善されます。
しかも、日本は粘り強い交渉により、実は関税撤廃について、一番有利な条件を勝ち取りました。日本が最後に交渉参加した、にもかかわらずです。
日本がアメリカ含む外国に輸出する「モノ」にかかる税金(関税)はほぼ100%撤廃されますが、その逆、日本に輸入されるもので撤廃されるのは95%のみとなります。
つまり、TPPがつくる「国境なき経済」の恩恵を、関税面で一番うけるのは日本なのです。
日本国内では一時期、「TPPは、アメリカのための協定だ。」といった趣旨の発言が多くなされました。しかし、最近はそれも少なくなりました。そもそも、TPPがアメリカのための協定であれば、トランプさんだけでなくクリントン候補もTPPを批判することはないとも言えます。
次回は、TPPがとりわけ中小企業にいかなる利益をもたらすか、考えたいと思います。