夢ある農業のため何が必要か(その2)

2017-09-20

矢倉かつおです。

昨日に引き続き、農林水産大臣政務官としての1年間を振り返りつつ、農業を夢のあるものとし、日本の食を守るため必要と感じたことをお伝えします。

二つ目は、ときに世界的視野で「売り先」を探す積極性です。

農業が直面する最大の課題は、人口減少です。

「人」の「口」が減ることは、農作物の売り先が減少することを意味します。

全員が国内市場だけをみていては、縮むパイを奪い合う結果にしかならず、農業の未来のため海外への輸出が必要なことは、もはや議論の余地がないでしょう。

ただ、農作物の輸出というと、否定的に捉えられる時期もありました。最近は理解がすすみましたが、特に「米の輸出」ではまだ、「所詮、夢物語にすぎない。」と冷めた意見が現場から聞かれることもあります。

事実、米の国内生産量800万トンのうち、輸出にまわっているのは、2014年からの3年間平均で7000トンほど。率にして、0.1パーセント弱です。なかなか難しいのが現状です。

そんななか先日、齋藤農林水産大臣から、「日本のお米を年間5000トン以上買い上げ、香港に売り込む、輸出する!」と意気込む人の話を聞きました。

聞けば、香港で「日本米によるおにぎり」専門店を開店して短期間で20店舗以上に拡大している30代前半の若者とのこと。「自分一人で、いまの日本の米輸出量ぐらいは担うぞ!」―そう宣言する姿、すごいな、と率直に感動しました。

成功の秘訣は、「日本米」という食物とともに「おにぎり」という食文化を広めた点でしょう。新しい食文化が広まれば広まるほど、新しい「売り先」が生まれます。まさに無限大です。

その拡大を支えたのが、世界マーケットを分析し、どこを自分はとりにいくか、自ら「選ぶ」積極的な姿勢でした。忙しいビジネスマンも多い香港なら、健康的な「ファストフード」ともいえる「おにぎり」がうけるはず、富裕層が増えたので高い価格設定でも大丈夫、そう分析し選んだ姿勢は、単純に「海外はダメ」と決めつける発想と真逆です。

もとより、輸出といっても生易しいものではありません。農家の方にとって、国内で売るほうが、コスト面でも、また政府から補助金が出ることを含め、得になることが多いのです。

ただ、国内の米需要は残念ながら毎年8万トン単位で減少しています。米粉普及など国内需要を増やす取り組みをする一方、10年後の日本の農業を考えたとき、より輸出への動きを加速させる必要があります。

「一人で5000トン以上売る。」という若者の発想を、ただの「夢物語」と捉えるか、「未来への希望の光」とみて積極的に応援するか、どちらの姿勢をとるかに、農業が活きるか否かがかかっています。農業を夢あるものとするのは、後者の意識であると感じます。

農林水産省は先月、米の輸出量を米加工品も含め2019年までに10万トンにする、という政策を発表いたしました。

私が政務官の任についていたときの議論が一部反映されたものであり、かなり野心的なものです。

政府は前面にたって必ず達成していただきたく思います。米の市場を広げようと挑戦する農家の期待を拾い上げ、関係者間のつながりをつくり、ときに、外国と交渉する必要もあります。私も関係者と引き続き協働いたします。

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