2018-12-13
矢倉かつおです。
臨時国会が閉会しました。
多発する災害に対応するための補正予算を組むことができたことは大きな成果です。
終盤で問題になった一つが水道法の改正です。実は、1年半以上も前から国会に提案されているものでした。
大阪北部地震などの教訓から益々、水道管の老朽化問題等が明らかになりました。対処のための法律ですが、誤解が多いようです。
主要なところを六点にわたり、ご説明いたします。
その1.水道法の改正は、水道事業の完全民営化に道を開くものではなく、公の関与を強くした形での自治体選択肢を追加するものです。
実は、いまの水道法でも完全民営化は可能です。
しかし、完全民営化では、不測のリスク発生時に責任を負えないと、自治体から要望があり、法改正により、新たな選択肢を追加しました。それが、後述する「コンセッション方式」です。
その2.改正水道法で認められる「コンセッション方式」ですが、水道設備の所有権は地方公共団体にあり、水道事業者も自治体です。運営だけを民間に委ねます。
イギリスのような完全民営化とは違います。海外との単純な比較はできません。
しかも、すべての自治体に導入することを求めるものではなく、民間の活用が、住民サービスの向上や業務効率化などの観点からメリットが大きいと考える自治体が、自らの判断で選択する制度です。
その3.改正水道法での「コンセッション方式」は、地方公共団体に給水義務を課し、水の安定供給、安心安全な水の質の確保だけでなく、災害時に復旧することも求めます。民間への丸投げではありません。
実は水道事業に「コンセッション方式」はすでに認められています(PFI法)。しかも、民主党政権時代に、です。改正水道法は、従来のコンセッション方式より、公の関与をむしろ強めています。
その4.「コンセッション方式」による民間委託にあたり、民間には成果を求めます。いわゆる成果主義です。
水道事業の運営は、例えば、今も、浄水場の管理や料金徴収事務などを民間にお願いしていますが、従来の民間委託は「仕様発注」といって、運営のあり方など行政が定めるやり方に制約されるため、民間の創意工夫が限られてしまいます。コンセッション方式は、「成果発注」といって、仕様発注のようにやり方を細かくは決めませんが、一定の成果、結果を出すことを民間に求めます。
その5.水道料金が民間に勝手に決められてしまう、ということはありません。
水道料金が上がってしまう、というお声もありますが、条例で料金の上限を定めることが出来ます。条例で定めるということは議会の意思が反映されるということで、民間の言いなりではないということです。これは、フランスなどにはない制度であり、この意味でも単純な海外との比較は適当ではありません。
その6.改正水道法は、広域連携により、人口の少ない自治体、過疎地域がスケールメリットを活かせる枠組みを可能にします。
最大の課題は、老朽化が進む水道施設を維持するためのお金がないことです。特に、人口減少に悩む自治体では水道料金収入の減少が著しく、そのため、水道事業を運営する自治体は、小さなところほど苦しんでいます。
今回の水道法改正によるコンセッション方式の導入は、この解決の方法の一つを提示しています。例えば宮城県は、県と県内の市町村が連携を組み、県が運営権契約を交わした運営権者に市町村が行う水道事業、下水道事業を受託させることで、人口減少地域にもスケールメリットを享受できるようにすることを計画しているそうです。
これは、都道府県を軸とした新たな広域連携の枠組みであり、改正法が可能とする先進的な取り組みの一例だと思います。人口の少ない自治体が独立でやるには水道事業は採算があわなくなってきている以上、改正後の枠組みにより、新たな連携が生まれることに期待します。
いかがでしょうか。聞いた話と違う、と思われた方も多いと思います。
野党は、水道料金収入の減少、水道施設の老朽化といった課題は理解し共有しているのですから、政府が提示した提案に対し、より良い改善策は何か、提案する義務はあると思います。
しかし、最近、特に顕著ですが、すぐに、政府が外国資本と結託して国を売り渡そうとしている、といった陰謀論めいた話に結びつけます。しかし、政府にそんなことをするメリットがあるでしょうか。あるはずがありません。
ただ、それをマスコミが面白がって取り上げてしまう。
さらに問題は、今の政治がそれをまた利用し、思い込みや事実に立脚しない議論にすり替え不安を煽ることです。
こういった大衆の不安を利用する政治は悪です。変えないといけない。審議の過程をみて改めて決意いたしました。