日本への信頼広げる 自衛隊の国際貢献

2015-09-05

公明新聞:2015年9月5日(土)付

石川博崇 防衛大臣政務官に聞く

憲法の枠内で持ち味発揮
世界の平和へ協力は当然
石川博崇 防衛大臣政務官に聞く

民生施設整備、海賊対処など 現地や各国から高い評価

現在審議中の平和安全法制の関連法案には、海外での自衛隊の活動を拡大する内容が含まれています。その意義や自衛隊の海外活動の現状などについて、防衛大臣政務官の石川博崇参院議員(公明党)に聞きました。

―自衛隊は国内では、国を守る任務のほか、東日本大震災のような災害派遣などでも活躍していますが、海外ではどんな活動をしていますか。

石川政務官 自衛隊の海外における活動は大別して、(1)国連平和維持活動(PKO)協力法に基づく活動(2)国際緊急援助隊派遣法に基づく被災地などへの支援活動(3)必要に応じて制定する特別措置法に基づく人道復興支援などの活動(4)海賊対処法に基づく活動―があります。

自衛隊は過酷な環境下でも、自分たちで活動できる「自己完結性」を持っていることから、さまざまな分野で国際社会に貢献しています。カンボジアのPKOに初めて参加した1992年以降、海外に派遣された自衛隊員は、延べ5万4千人を超えています。現在、自衛隊員が海外で主に従事しているのは、南スーダンのPKOとソマリア沖・アデン湾での海賊対処活動です。

―今年5月には、両活動の拠点を訪れましたね。

石川 現地で活動の実情を視察し、厳しい環境の中で活動する隊員を激励しました。南スーダンでは、宿営地に宿泊し、自衛隊員と一緒に食事をしたり、風呂に入ったりしながら、活動の実情を聞きました。

南スーダンは2011年にできたばかりの世界で一番新しい国で、各国が協力して支援に取り組んでおり、自衛隊の施設部隊も参加しています。道路の敷設や港の整備、難民の受け入れ態勢づくりなどに汗を流し、南スーダン政府や各国から高い評価を得ています。

隊員たちは、道路敷設のための砂利など資材の品質が良くない中で、研究を重ねながら任務を確実に遂行していました。現地では、中国やネパール、欧州各国などの要員が一緒に仕事をしていますが、日本の自衛隊の仕事ぶりはさすがだと評判になっているそうです。

海賊対処行動の活動拠点はジブチにあります。自衛隊はそこから、重要な国際航路であるソマリア沖・アデン湾に出向き、英国や韓国などと協力しながら、パトロールを行っています。09年の派遣当初、200件を超えていた海賊事案の発生件数は、昨年が11件、今年は8月末時点でゼロ。海洋国家・日本の自衛隊の能力が大きく貢献していると評価されています。

現地への訪問を通じて、自衛隊が海外で各国部隊と一緒に汗を流しながら任務を遂行し、交流を深めることは、日本への信頼感を高め、日本の安全保障につながっていると、あらためて実感しました。

―特措法に基づく活動では、外務省職員としてイラク人道復興支援に携わった経験をお持ちですね。

石川 はい。04年から1年半、イラクのサマーワの自衛隊宿営地を拠点に、人道復興支援に従事しました。当時、この支援活動は「イラク戦争になぜ参加するのか」などと批判されましたが、実際は戦争に参加したわけでも、戦闘行為を行ったわけでもありませんでした。

市民と信頼関係を築きながらきめ細かく協議し、学校や病院の修復、給水活動、道路の敷設などを通じて、市民生活の回復、向上に貢献したというのが活動の実像です。実際に、現地でとても評価され、撤収の際には大変に惜しまれました。「もう少し残って力を貸してくれ!」というデモが街中で起こったほどでした。その様子を目の当たりにして、私自身、感慨深いものがありました。

国際平和支援の一般法 海外派遣3原則で歯止め

―自衛隊が海外で活動する意義は何ですか。

自衛隊による南スーダンでのPKOを視察する石川政務官=2015年5月

石川 安全保障環境が変化する中で、日本の平和と安全を脅かす存在にどう向き合うか。憲法9条の枠の中で、万が一の時の対処のあり方を決め、日ごろから万全の準備をしておくとともに、国際社会と協力しながら、日本周辺、そして世界の緊張緩和に向けて、各国と共に努力していくしかありません。世界の平和なしに日本の平和や安全はあり得ません。世界の平和へ、日本が可能な分野で貢献することは当然です。

―今回の平和安全法制の関連法案では、自衛隊の海外での活動はどうなるのですか。

石川 PKO協力法に基づく活動については、同法を改正し、国連が設置したPKOだけでなく、国際社会(例えば欧州連合)が実施するPKO類似の活動にも参加できるようにします。ただし、「紛争当事者間の停戦合意の成立」などPKO参加5原則の下で参加するというルールは従来と変わりません。

一方、テロ対策特措法に基づく給油活動など、これまで特措法に基づいて実施してきた他国軍隊への後方支援などについては、新たに一般法として「国際平和支援法案」を提案しています。一般法の制定により、国連などから派遣要請を受けた場合、速やかに自衛隊の能力にふさわしい役割や地域を調整し、隊員の安全に配慮しつつ、自衛隊の持ち味を生かした貢献が可能となります。

―自衛隊の海外派遣が無制限に広がりませんか。

石川 国際平和支援法案には、公明党の提唱で「自衛隊の海外派遣の3原則」として、(1)国際法上の正当性の確保(2)国民の理解と国会の関与など民主的統制(3)自衛隊員の安全確保―が盛り込まれ、歯止めが掛かりました。特に「国会の関与」については、「例外なき事前承認」を義務付けました。

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