法務委員会で電磁記録提供命令について参考人質疑
2025.05.08 22:47(2か月前) ブログ国会質問 |矢倉かつお
議事録
第217回国会 参議院 法務委員会 第7号 令和7年5月8日
矢倉克夫君 公明党の矢倉克夫です。
三人の参考人の先生方、今日は本当に貴重な御意見またいただきまして、心から感謝申し上げます。ありがとうございます。
私からは、まず成瀬参考人にお伺いしたいと思うんですが、先ほど御説明いただいた中で、電磁的記録提供命令、こちら、これまでの記録命令付差押えとかとの違い、今までは言わば記録媒体としての有体物、それと今回の無体物としての情報の違い、前者は記録媒体である以上、それ特定の必要があるというお話があったと思います。その上で、また令状主義との関係で、このデータについても、裁判所、裁判官が関連するものとして限定をしているということが、ある意味、許容性としてだと思いますが、述べられていたんですが、これをいかに制度としてその関連性が限られるかというところを担保できているかというところが法案にとっても重要だと思うんですけど、改めて、この法案でどういうふうに制度としてそれが担保されているとお考えなのか。
もう一つ、関連してですけど、例えば欧米など他国で、執行時に関連のない電磁的記録ができる限り収集しないようにするための制度としてこういうものがあるというところで、御存じのところがあれば教えていただきたいなと思います。
参考人(成瀬剛君) お答え申し上げます。
まず、電磁的記録提供命令において取得するデータが関連するものに限られるようにどう制度上担保されているかという点でございますが、今回、まず裁判官の事前の令状審査をかませるという仕組みになってございますし、その際の要件というのは、これまで差押えや記録命令付差押えで要求されていた要件と全く同じものが要求されているわけです。
更に申し上げますと、今回の電磁的記録提供命令というのは、被処分者にデータを選別していただいて出していただくという形になりますので、捜査機関が捜索差押えの現場で選び出すという作用とは異なってまいります。すなわち、事件の概要を御存じない被処分者の方にデータを出していただかないといけませんので、通常の捜索差押えと比べても、更に特定性を高めた形で提供させるべき電磁的記録というものが限定されて令状が発付されるものと考えております。
さらに、事後審査として不服申立ても可能になっておりますので、万が一、その裁判官が出す令状が被疑事実と関連しないデータまで提供させるべきデータに含まれているというような事態であれば、それに対して事後審査として不服申立てでチェックもされるというふうな仕組みが取られているところでございます。
他国、外国におきまして、このような無関係のデータを取得しないような仕組みとしてどのようなものがあるかという御指摘だったかと思いますが、例えば私が専門にしておりますアメリカなどでは、日本と同様に、裁判官に事前の審査をさせた上で被疑事実に関連するデータに限って令状を発付し、その下で提供命令を執行するというふうな仕組みが取られておりますので、今回我が国が採用する制度というのは、例えばアメリカなどと比べても遜色ない内容になっているというふうに認識しております。
矢倉克夫君 ありがとうございます。
続いて、成瀬参考人に、また今のこの捜査機関が令状によって電子データ取得する手続の関係ですけど、今おっしゃったアメリカの方の連邦刑事訴訟規則九十一条で、それで書いている限りだと、アメリカの方では、捜査機関が令状に基づいてサービスプロバイダーからデータの提供を受けたり、ハードディスクドライブを押収してデータを取得した後、その中から令状の対象となるデータを期限付で選別する、で、この選別されたデータのみを取得するという手続があるというふうに聞いたことがあるんですが。
こういう実行困難な方法によることなく捜査機関の手元に保存されるような情報を限定するというこの手法、先ほど、秘密保持命令の関係でもこの今回の電磁的記録提供命令というのは捜索差押えよりも前の段階でというような御趣旨もおっしゃっていた、そういうことも踏まえると、今言ったような、提供した上で限定したものだけを取ってそれを返すというやり方も一つ参考になるところだと思うんですが、その辺りについての御意見をいただければなと思います。
参考人(成瀬剛君) 今委員が御指摘のとおり、アメリカは五十州ございますし、連邦もあるということで、法域ごとにかなりルールが異なるわけでございますが、一部の法域においては、データを提供させるに当たっても、まず第一段階として事業者からデータを提出させて、その上で更にそのデータを選別する過程を二段階目として設ける法域というものもございます。
ただ、それはアメリカの全法域で一般的に行われているものではなくて、私自身が認識している限りでは、アメリカも多くの法域においては、日本と同様に、一度裁判官の令状審査をかませてデータを提供させて、その上で被疑事実に関連するデータを捜査機関側で精査し使っていくという一段階の仕組みになっているというふうに認識はしております。
矢倉克夫君 ありがとうございます。
ちょっと、じゃ、次にまた済みません、成瀬参考人、また引き続きで恐縮ですけど、先ほど、電磁的記録の保管、消去の部分で、これ刑事訴訟法体系全体を考える問題である、その趣旨をまた詳しく教えていただきたいのと、一方で、河津参考人からは、これに関連したところで、要は有体物を想定している今の下でこの消去の規定がないということが、じゃ、今回のような無体物、情報データを想定しているもの、同じようになくていいという話じゃないというような御意見があったと思うんですけど、それについての成瀬参考人の御意見をいただきたいなと。あわせて、それについて河津参考人からもその後ちょっと御意見いただくことができればなと思います。
参考人(成瀬剛君) お答え申し上げます。
刑訴全体の趣旨に関わるというふうに申し上げた点について、敷衍して説明をさせていただきます。
まず、通常の有体物を差し押さえた場合というのを念頭に置いていただきたいんですけれども、例えば被疑者の自宅にあった日記帳を差し押さえたという場合には、多くの場合、警察官はその日記帳原本を触ると証拠を破壊してしまうリスクというものもありますので、それを直ちにコピーを取った上で、そのコピーの方を捜査で活用するというような形になっております。その日記帳の差押えが違法だという形で取り消された場合には、当然、日記帳は相手方に返すことになるわけですけれども、その日記帳のコピーを廃棄するのかと言われますと、それは、現行刑訴法上、廃棄すべきという規定は存在しません。
同じように、記録命令付差押えというものが現行法上ありますけれども、その際に電磁的記録媒体という形で提供された電子データがあるわけですが、その電子データについても、その物自体を捜査に活用するとまた破損するリスクがありますので、コピーを取った上で捜査に活用するというのが実情でございます。記録命令付差押えの場合、相手方の記録媒体である場合には、違法な処分であった場合には記録媒体は返しますけれども、そのコピーを取ったデータを廃棄するということにはなっていないわけです。
ですので、現行刑訴法におきましては、基本的な考え方としましては、違法な処分があったとしても、当該物は返還するとしても、その複写のものまで全て廃棄するという規律にはなっていないわけでございます。
先生が御指摘の電磁的記録提供命令の場合には、データが来るのであるから、データの処分が取り消された場合には、データを消去しろということになりますと、今申し上げた前提の部分、現行法上の規律との整合性が問題になってまいりますので、その部分も全て変えるのかということになりまして大掛かりな検討が必要になるというふうに意見を申し上げた次第でございます。
以上です。
参考人(河津博史君) 附則四十条でまさに定めていただきましたように、デジタル社会において個人情報保護の重要性がより社会的に認知されるようになっているということを踏まえる必要があるだろうと思います。
今回のデジタル法案は、旧来の刑事訴訟法全般をデジタル化していこうというものですから、それにふさわしい国民のプライバシーを保護する仕組みをつくる必要があるだろうということです。
先ほども申し上げましたけれども、通信傍受法には既にその記録を消去する仕組みというものが設けられていますし、いわゆる撮影新法におきましても、電磁的記録の消去、さらにそれには複写物を含めた消去の仕組みというのが設けられています。
したがって、今後、国民のプライバシー情報というのを捜査機関が大量に収集するおそれがあるという状況の中で国民の権利を守っていくためには、そういったデジタルデータの消去の仕組み、そのコピーを含めた消去の仕組みというものをつくっていく必要があるでしょうし、そういった国民の権利保護というものをまず第一に考えたときは、捜査機関の中においてもこのデータの複写等をどのように取り扱って管理していくのかというところから考えていかなければいけないのだろうと思います。
仮に、そういったデータの捜査機関における、捜査機関内部でのデータの取扱いというものが捜査機関だけに委ねることは適切でないというのであれば、さらにはそれを監督する独立した機関の設置も検討すべきであろうと思います。
そういう意味において大掛かりな検討が必要になるという趣旨であれば私も同意いたしますけれども、先ほども申し上げましたが、これまで我が国においては、国民の権利を保護する法制度の整備というのは先送りにされがちであったということもございますので、是非この問題を解決するための具体的な道筋を付けていただきたいと考えております。
矢倉克夫君 大変参考になりました。お二人、誠にありがとうございます。
また、ちょっと、じゃ、河津参考人に。問いだけになってしまうかもしれません。
電磁的記録命令を受けた者が当該電磁的記録にアクセスすることが不正アクセスに該当するというような場合、不正アクセスを理由として当該電磁的記録を提供することが罰則の対象となるかどうかについて、何か御意見があれば伺いたいなと思うところですが。
参考人(河津博史君) 電磁的記録提供命令を受けた者がその電磁的記録を提供することが不正アクセスに該当してしまう場合にその義務を履行する必要があるのか、あるいは履行することが許されるのかということについて、法務省の方でどのようにお考えになっているのかというのは私も聞いてみたいと思います。
ただ、実際、この命令を受けた時点でこの電磁的記録を利用する権限を有していない、ただし、事実上この電磁的記録を利用するために必要な情報を有しているという場合に、この電磁的記録にアクセスすることがいわゆる不正アクセスに該当してしまう場合というのはあり得るように思われます。
私は、この法は不法な行為を強いるものではないと思われますので、そのような場合には、当該電磁的記録を提供することはできず、しなかったとしても処罰されるべきではないと考えております。
矢倉克夫君 ありがとうございます。
また成瀬参考人に伺いたいと思うんですが、申し訳ありません、これ例えば、あと、またこの電磁的記録提供命令を受けた者が負う義務が、特定された電磁的記録を提供することに尽きる、それ以上に電磁的記録の復号化や解読に協力することにまで及ぶかどうかというところはちょっと教えていただきたい。
先ほど、自己負罪特権の関係からちょっと話が違うんですけど、この新たなものを提供するときに自己負罪特権というところとの関係があると。既に存在しているものを出すのは違うという話。それを考えると、復号化とか解読というのは新たなものを提供することにもなり得ると思うので、そうすると、電磁的記録提供命令を受けた者がそれに協力する義務まで及ぶのかどうかというところは、そこの判断も関わるのかなと思ってちょっと今お伺いしたところですが、ちょっと御意見いただくことができればなと思いました。
参考人(成瀬剛君) 今委員御指摘いただきましたように、この電磁的記録提供命令というのはあくまでも既に存在する電磁的記録の提供を命じるものでございます。パスワードのロックが掛かっているとしても、そのデータ自体は既に存在するということになります。
捜査機関としては、ロックが掛かっていたら中身が見れませんから、ロックを解除した状態で提供してくださいということは命じることができるわけですけれども、それは捜査機関にそのパスワードを直接教えてくださいというわけではなくて、被疑者の側でロックを解除して、解除された状態のデータを出すだけですから、あくまでもこれは既に存在する電磁的記録を提供しているにとどまるものだというふうに考えており、自己負罪拒否特権の侵害にはならないというふうに理解しております。
矢倉克夫君 ありがとうございました。
済みません、渕野参考人には、ビデオリンクによる証人尋問の関係で、検察官が請求した証人に対して弁護人が反対尋問を行う場合の、ある意味どういう影響があるかということをお伺いしたかったところだったんですが、申し訳ありません、時間がちょっと来てしまいましたので、また引き続き御指導いただくことができればと思います。
今日は、改めて三人の参考人の先生方、大変貴重な御意見ありがとうございました。
以上で終わります。
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