2023-02-10
○矢倉克夫君
公明党の矢倉克夫です。
参議院の在り方と合区について意見を述べます。
まず、参議院の在り方について二点。
一つ目は、緊急集会についてです。
近時の甚大な自然災害の増加や安全保障上の緊急事態の発生可能性の増大を踏まえると、今後、参議院の緊急集会の意義はますます高まるものと考えられます。
前提として強調したいのは、日本国憲法が参議院の緊急集会を認めていることは、参議院が衆議院と同じ全国民の代表であることを表したものであるということです。近時、参議院を都道府県選出の地方代表の議院として位置付けるべきとの見解が唱えられることがありますが、この緊急集会の意義との関係に加え、そもそも現行でも比例選出議員がいることなどとも整合性が取れるのか、疑問の余地はあります。
この緊急集会の開会要件については、憲法は明文上、衆議院が解散されていることと国に緊急の必要性があることの二つを規定しております。前者の点について、憲法の規定はあくまで衆議院が存在しない例として衆議院の解散を定めたにすぎないとする説が多数説となっております。根拠は、解散によるものであれ任期満了によるものであれ、衆議院が存在しないという点では両者で質的な差異がないという点です。これによれば、解散時のみならず、任期満了時も参議院の緊急集会を開催できることとなります。これは、大規模自然災害等における衆議院議員の任期延長の是非という議論にも影響を与えるものですが、傾聴に値すると考えます。
次に、国に緊急の必要性があることについて、この判断は内閣に専属するものか、また緊急集会においてとり得る措置は内閣提出のものに限られるのかといった点についても更なる検討が必要であります。
参議院の独自の判断による緊急時における行政監視機能の必要性を考えると、現行の内閣提出案件中心の仕組みは再検討されるべきとも言えます。緊急集会は参議院の独自性の観点から重要な権能であり、以上の諸論点について参議院の院の自律権の問題として真摯に議論することが重要であります。
参議院の在り方に関する二つ目の論点は、行政監視機能です。
行政監視こそ参議院が中心となるべきです。良識の府参議院は、公共の利益の実現を目指し、党派を超えて努力すべきことを期待されており、しかも解散がなく、六年という長い任期を与えられていることから、長期的観点から行政の組織や人事に関する、対する統制を行うことができます。
これまで、行政監視委員会の設置や決算審査の充実などの改革を行い、着実にその成果を上げてきたのですが、引き続き参議院の行政監視機能を充実強化すべく、更なる検討が必要であります。
次に、合区について意見を申し上げます。
確かに、選挙区選出議員の地域代表的性格を強調した場合、各都道府県から少なくとも一名の議員を選出すべきとの見解も成り立ち得ます。しかし、平成二十四年の最高裁判決にもありますように、都道府県は参議院議員の選挙区の単位としなければならないという憲法上の要請はありません。
さらに、先ほど言及しましたように、衆議院が解散されて存在しない場合でも、参議院に国会の権能を代行させるために、憲法上、参議院の緊急集会の制度が設けられております。これは、上下両院の二院制を取る諸外国の中でも極めて珍しい制度であると言われておりますが、このような重大な仕組みが可能であるのは、参議院も衆議院と同様に全国民の代表であるからであり、また、地方代表の議院ということを強調し過ぎることは、現行憲法が予定している参議院の権能そのものを参議院自ら否定してしまうおそれもあります。憲法上も法律上も衆議院とほぼ同等の権能を有する根拠は、憲法の要請である投票価値の平等が参議院においても当てはまることであるということも十分に留意が求められます。
したがって、選挙制度改革を進めるに当たって、較差を拡大するような改革は、いかなる政策的目的ないし理由があったとしても、少なくとも現行の憲法を前提とする限りは許されないものと解します。もちろん、最高裁の言うように、投票価値の平等が選挙制度の仕組みを決定する唯一、絶対の基準となるものではありません。問題は、憲法が求める投票価値の平等という価値と、衆議院とは異なる参議院の独自性といった価値をどう調和させるかであります。
私どもは、このような観点から、従来より、全国を十一のブロック単位とする個人名投票による大選挙区制を提唱しております。これは、憲法が求める議員一人当たりの人口較差の更なる縮小と、参議院独自のブロックを単位とする地域代表的な性格を両立、調和させることを通じて、参議院全体としての全国民の代表としての性格を堅持する方策であります。特に、投票価値の平等の要請をより満たすことになりますから、参議院の権限の縮小が求められることはありません。
現在、参議院改革協議会において議論が進められており、座長からは、選挙制度改革を集中的に議論する専門委員会の設置の提案がなされております。今後、着実に議論がなされることを強く御期待を申し上げまして、私の意見表明といたします。