【矢倉かつお】法務委員会(質問)_20160419

2016-04-19 矢倉かつおチャンネル

【矢倉かつお】法務委員会(答弁)_20160419

2016-04-19 矢倉かつおチャンネル

190回 法務委員会(ヘイトスピーチ解消法案答弁)

2016-04-19 国会質問議事録

○矢倉克夫君

ただいま議題となりました本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律案につきまして、発議者を代表いたしまして、提案の趣旨及び主な内容を御説明申し上げます。
近年、本邦の域外にある国又は地域の出身であることを理由として、適法に居住するその出身者又はその子孫を我が国の地域社会から排除することを扇動する不当な差別的言動が行われ、その出身者又はその子孫が多大な苦痛を強いられる事態が頻発化しております。かかる言動は、個人の基本的人権に対する重大な脅威であるのみならず、差別意識や憎悪、暴力を蔓延させ地域社会の基盤を揺るがすものであり、到底許されるものではありません。
もとより、表現の自由は民主主義の根幹を成す権利であり、表現内容に関する規制については極めて慎重に検討されなければならず、何をもって違法となる言動とし、それを誰がどのように判断するか等について難しい課題があります。
しかし、こうした事態をこのまま看過することは、国際社会において我が国の占める地位に照らしても、ふさわしいものではありません。
本法律案は、このような認識に基づき、憲法が保障する表現の自由に配慮しつつ、本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組について、基本理念を定め、及び国等の責務を明らかにするとともに、基本的施策を定め、これを推進しようとするものであり、いわゆるヘイトスピーチを念頭に、本邦外出身者に対する不当な差別的言動は許されないとの理念を内外に示し、かかる言動がない社会の実現を国民自らが宣言するものであります。その主な内容は次のとおりです。
第一に、前文を置き、我が国において、近年、不当な差別的言動により、本邦の域外にある国若しくは地域の出身である者又はその子孫であって適法に居住するもの、すなわち本邦外出身者が多大な苦痛を強いられるとともに、地域社会に深刻な亀裂を生じさせており、このような事態を看過することは、国際社会において我が国の占める地位に照らしてもふさわしいものではないという本法律案の提案の趣旨について規定するほか、このような不当な差別的言動は許されないことを宣言することとしております。
第二に、本邦外出身者に対する不当な差別的言動の定義を置き、専ら本邦外出身者に対する差別的意識を助長し又は誘発する目的で公然とその生命、身体、自由、名誉又は財産に危害を加える旨を告知するなど、本邦の域外にある国又は地域の出身であることを理由として、本邦外出身者を地域社会から排除することを扇動する不当な差別的言動をいうこととしております。
第三に、基本理念として、国民は、本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消の必要性に対する理解を深めるとともに、本邦外出身者に対する不当な差別的言動のない社会の実現に寄与するよう努めなければならないこととしております。
第四に、本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組に関する施策の実施について国及び地方公共団体の責務を規定することとしております。
第五に、基本的施策として、国は、相談体制の整備、教育の充実等及び啓発活動等を実施することとしております。また、地方公共団体は、国との適切な役割分担を踏まえて、当該地域の実情に応じ、これらの基本的施策を実施するよう努めることとしております。
以上がこの法律案の提案の趣旨及び主な内容であります。
本邦外出身者に対する不当な差別的言動が許されず、その解消に向けた取組が必須であることについては、参議院法務委員会において、実際にかかる言動が行われたとされる現地への視察や真摯な議論を通じ、与野党の委員の間で認識が共有されたところであると考えます。
何とぞ御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。

○委員長(魚住裕一郎君)

以上で趣旨説明の聴取は終わりました。
これより質疑に入ります。
質疑のある方は順次御発言願います。

○仁比聡平君

日本共産党の仁比聡平でございます。皆さん、おはようございます。
我が党は、ヘイトスピーチの根絶は政治の重大な責任であって、立法措置を含めた国会での大いな議論を求めてまいりました。そうした下で、このヘイトスピーチを社会的に包囲し、根絶の先頭に立つという政治の責任も強調をしてきたわけですけれども、昨年来、当委員会で議題となってきた、当時の民主党の皆さん始めとした野党の提出法案に続いて、今日こうして与党案が提出をされ、実質審議に入るということになったわけです。
これは、このヘイトスピーチを根絶をしようという運動、何よりヘイトスピーチによる被害の深刻さと当事者の皆さんの身を振り絞るような声を受けて行われているものであって、そうした意味で本当に大きな歴史的な意味を持っていると理解をしております。私たち参議院の法務委員会のこうした取組がヘイトスピーチ根絶の実りを上げるように、我が党としても力を尽くしていきたいと思うんです。
こうして与党の案が提出をされた下で当委員会を中心にして各党の協議が始まるに当たって、今日は、この与党案の意味するところについて様々な立場からの御意見が寄せられている中で、今日は与党案のその趣旨、意味というものをできる限りまず確認をさせていただきたいと思うんですね。特に三点について、法案の柱について御質問したいと思っております。
まず、その第一は、理念法の法たるゆえんということに関してです。先ほどの趣旨説明でも明らかですが、法案は、不当な差別的言動を、あってはならず、そして許されないことを宣言すると、そうした趣旨を前文で規定をされるとともに、第一条で本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消が喫緊の課題であるという認識を規定をした上で、第三条、基本理念として、国民の言わば努力義務という趣旨なのかと思うんですけれども、努めなければならないという規定ぶりで基本理念を記しておられるわけですが、このような規定にされた理由は一体どういうことでしょうか。

○西田昌司君

仁比委員の質問にお答えさせていただきます。
まず、この法律は、理念法という形で、禁止という形を取っておりません。その一番大きなのは、要するに、憲法上の表現の自由の保障をしっかりしなければならない、これは、やっぱりどうしてもこれは一番守らなければならない、そういう価値であるということを考えた結果、我々がこういう前文において本邦外出身者に対する不当な差別的言動は許されないということを宣言をし、更なる人権教育と人権啓発などを通じて国民に周知を図り、その理解と協力を得つつ不当な差別的言動の解消に向けた取組を推進するものであります。
表現内容を規制するのは、先ほども言いましたけれども、表現行為の萎縮効果をもたらすおそれがありますから、このような不当な差別的言動の禁止や、その禁止に違反した場合の罰則を定めるということはあえてしていないわけであります。もっとも、御指摘のとおり前文で不当な差別的言動を許されないと宣言しましたが、法律でそういうメッセージを発信すること自体が非常に私は重要な意義があるものだと考えております。
さらに、三条においては、国民に周知を図ってその理解と協力を得つつ、不当な差別的言動の解消に向けた取組を推進することとすることを受けて三条は書いているわけでありますけれども、この中で、いわゆる憲法の保障する表現の自由に関わる問題でありますから、警察などの公権力、ここで規制をして強制的に進めるのではなくて、まず国民全体が、国民一人一人が理解をしてそういう差別的言動のない社会の実現に寄与していくと、そういうことを図るべきであるということをこの法律によって示すことによって、国民にもその努力義務があるということを示させていただいているわけであります。
この効力でありますけれども、これらの規定と併せて、国に本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組に関する施策の実施義務や、地方公共団体にその実施の努力義務がまた掛かることになります。
この法律は、こうした結果、表現の自由に萎縮効果が生じないようにするためにこのような内容にしたものでありまして、禁止規定がないからといってヘイトスピーチを認めるとか、また我々与党側がヘイトスピーチに対して及び腰でやっているとかそういう姿勢ではなくて、憲法の保障する表現の自由との兼ね合いの中で最大限効果が発揮でき、国民にも理解を求めていくと、そういう趣旨でこの前文と併せて作ったということを御理解いただきたいと思います。

○仁比聡平君

今、自民党西田発議者からは、禁止規定は置いていないのであるというまず御発言が、御説明があっているわけですけれども、この点について強い意見がとりわけ当事者団体から上がっているのは御承知のとおりだと思います。
例えば、私たち国会議員に在日本大韓民国民団の主催をされる緊急集会が呼びかけられていますけれども、その呼びかけ文には、ヘイトスピーチによって自らの尊厳を傷つけられた当事者である私たちとしてはこの法案内容に対する極めて深い失望感を禁じ得ません、罰則規定を設けないいわゆる理念法であるにしてもヘイトスピーチが違法であるという明確な規定が不在だからであり、これではとても容認できないのですというくだりがあるんですけれども。
先ほど、公明党矢倉発議者からの趣旨説明の中では、ヘイトスピーチといいますか、この法が対象とする言動というのは違法であるという前提の認識が示されているようにも思うんですね。つまり、先ほどの提案理由説明の第三段落目ですが、何をもって違法となる言動とするのかということがこの法案の提出の意義として語られているわけですけれども。
この禁止規定は置かないということと、この法案が対象とする言動が違法であるということとの関係というのは、これはどういうふうに理解をしたらいいんですか。

○矢倉克夫君

ありがとうございます。
こちらの趣旨説明において何をもって違法となる言動としという文言は、そもそも表現の内容についての規制をするとき、我々認識しているヘイトスピーチというのは具体的にイメージできるんですが、規制となるとどこが外延かというのがやはりどうしても見えなくなるという問題があると思います。そのような表現の内容を、禁止という形で規制をすることに内在している本質的な問題が、やはり違法となるというところがどこまでかという問題であるので、そのような問題があるというところであります。
これをもって、今回、理念法で違法かどうかという判断をこれは提示をしたという趣旨ではないというふうに御理解をいただければと思います。

○仁比聡平君

ここ、これからの法案の議論をしていく上で極めて大事だと思うんですけれども。
提案者は、つまり与党は、定義の明確性、つまり違法かそうでないかという外延が明確であることが重要であるというのはそのとおりだと思うんです。その外延が明確であるという定義をすることができるのであれば、その定義に当たる言動、これは法違反である、違法であるという、その書きぶりはいろんな書きぶりがあるのかもしれませんけれども、違法であるということは宣言する、あるいは法で定めるべきであると、そういうお考えなんでしょうか。

○西田昌司君

そこが一番大事なこの法律の核心部分なんですけれどもね。
我々の与党側の考え方といいますのは、要するに、このヘイトスピーチを厳格に定義をして、それを国が例えば認定をして、違法行為であるからこの行為はすべきでない、禁止規定になってくるわけですね。また、禁止規定、罰則がなくても、そういう認定を公権力がするということはできないというのが我々の発想であります。
といいますのは、それについては、違法であるか違法でないか、それがヘイトになるかどうかというのは結局は司法の場で判断されるべきもので、公権力の行政側のところでこの部分は違法だということをしちゃいますと、かつての、これは戦前のいわゆるあの治安維持法のように、国の方が決めた言論や思想や表現にたがうようなことをすればたちまち取締りになると。若しくは、禁止規定がなくてもそのことを国が違法性を認定してしまいますと、様々なことが行政の方からそのした本人にいろんな形で圧力と申しましょうか、掛けられるわけです。
もちろん、そういう規定があった方がヘイトスピーチそのものには禁止ができて、圧力が掛かっていいじゃないかということはもちろんあると思うんですよ。しかし、同じように、ヘイトかどうか微妙な部分のところで、そこを国が規定して、そしてまた国の方がその個人に関与しているということになりますと、違う事態が想定されますね。つまり、ヘイトだということを理由に行政の方が違う形で市民に圧力を掛けてくるということが、ほかの法律でも同じような枠組みで作られることも考えられます。
我々は、そういう公権力が個人の表現の自由や内心の自由に関わるようなところに入っていくべきではないというのが自民、公明のこの法律を作る上での一番最初の入口の部分であります。そして、その部分は、ヘイトであったかどうかという認定は、これはむしろ裁判の場で、司法の場でやっていただくんです。
じゃ、この法律は一体何の意味があるのかというと、こういう理念を掲げて、そもそも国民がこういうヘイトはすべきでないんだと、また、そういう差別のない社会をつくるのが国民も努力していかなければならない、そしてそのことを国と地方公共団体が教育や啓発、相談などを通じて広げていこうということを示すことによって行政側が様々な判断するときの一つの指針になるのではないかと思います。
もちろん、その指針によって、された行為、例えばデモをやっていたり、道路使用許可を止めろとかいう話も当然出てくると思いますよね。そのときに仮にそういう指針によって止められたら、逆にやった側がこれはおかしいじゃないかということを訴えることも当然想定されます。しかし、そのことを彼らが訴えて、結局それがヘイトであったかどうかというのは最終的に司法の場で判断をしていただかなければならないと思っているんです。それをまず第一義的に行政の方が線引きをしてここから先はヘイトだどうだという、公権力側にその権力行使を与えてしまうと、私は違う事態が出てくるということを大変恐れているわけでございます。そのことを御認識いただきたいと思います。

○仁比聡平君

我が国において、とりわけ国家権力によって思想、表現が抑圧、弾圧された歴史があり、そして、戦後、憲法が公布されてから七十年に至りながら、法を濫用した行政、警察による人権侵害というのは後を絶たないわけです、今日現在も。その認識というのは私は前提にもちろんあるわけですけれども、ですが、この法でヘイトスピーチの許されないということをどう規定するかということは、その定義の明確性と併せて真剣な探求が必要だと思うんですよね。
今の西田発議者の御答弁で、つまり、この法案が民事裁判や行政処分を争うそうした裁判においての法規範たり得るということをおっしゃっているんだと思うんですけれども、それはつまり許されないとされる言動が法違反であるという前提認識に立ったものなのであって、これはヘイトスピーチはしてはならないなどの、これを禁止という用語を使うのが与党としていろいろごちゅうちょがあるのかもしれないんだけれども、このあってはならないとか、許されないという表現、文言ではない書きぶりというのはこれはあり得るのではないかなとも思うんですが、これは今、西田委員に伺いましたので、矢倉発議者、いかがですか。

○矢倉克夫君

ありがとうございます。
まず、今、西田委員がおっしゃった部分というのは、これまでは特定人に対しての規制というものはあった、ただ、今回我々は不特定人に対してのこのような言動も許されないものであるという理念を、これにより明確にしたわけであります。それがいろんな裁判の場で出てくる。場合によっては、損害賠償であるとか、そういうような民法の規定の文脈などで違法等の話が出てくるかもしれないですけれども、そういう文脈での違法を判断するときに、この法律により、許されないものであるということを理念として表した、国として姿勢を表したということが裁判所の判断に影響を与えるだろうという部分の説明であると思います。このような意味合いで、これを違法判断かどうかというところはまた違う考慮があると思いますが、いずれにしろ違法判断に対してある程度影響を与える判断にはなるであろうというところであると思います。
書きぶりの問題なんですけれども、これは、してはいけないという禁止規定にしますとどういうことになるかといえば、先ほども申し上げたとおり、表現内容の規制という形にやはりこれはなってしまう。それはどういうことをいうかといえば、憲法の検閲の禁止などにも抵触する可能性も出てくる。また、表現内容は、御案内のとおり、憲法上は非常に厳格な基準がない限りは合憲とならないというような、そのような制約があり、してはならない言論が何かということを定義付けなければいけない。じゃ、その概念がどこまでかということもこれは明確にしなければいけないというような制約も出てくるところであります。そのような判断から、してはいけないというのは、憲法の問題を克服できないというところで、我々は取るべきではないという判断をいたしました。
他方で、実効性を確保する意味では、やはり許されないものだということを宣言して、その許されないものを排除する社会を、国民全般がこれをつくっていこうということを主体的にうたっていくという在り方の方が、むしろ実効性は上がるのではないかということで判断をしたところであり、この表現が我々としては正しいというふうに認識をしております。

○仁比聡平君

少し議論をしてしまうことになるんですけれども、そうした憲法上の表現の自由の保障との関係も十分考慮をされた上で全国で様々な取組がされてきていると思うんです。その一つの例として、大阪市ヘイトスピーチへの対処に関する条例における対象行為の定義規定についての評価を今のお話の流れで矢倉さんにお尋ねしたいんですが、この大阪市条例はヘイトスピーチとされる表現活動を具体的に三つの条文に分けて規定をしているわけです。
第一は、次の三つの目的のいずれかを目的とすること。つまり、人種若しくは民族に係る特定の属性を有する個人又は当該個人により構成される集団を社会から排除すること、あるいは権利又は自由を制限すること、憎悪若しくは差別の意識又は暴力をあおることのいずれかを目的として行われ、表現の内容又は表現活動の態様が相当程度侮辱し又は誹謗中傷するものであること、脅威を感じさせるものであることのいずれかに該当すること、そして三つ目に、不特定多数の者が表現の内容を知り得る状態に置くような場所又は方法で行われるものであること、こうした定義によって外延を明確にしていると思うし、私はその規定ぶりというのはよく理解ができるというふうにも思っているんですが、矢倉さんはいかがですか。

○矢倉克夫君

大阪のヘイトスピーチの条例について、こちらが詳細に定義をしたというのは、やはり効果との関係から考えなければいけないと思うんですよね。これ、大阪市長が表現活動について拡散防止の措置及び公表措置をとることにしたと、そのような行政権、公権力が関係するようなことを前提にしている以上は、やはり定義を明確に厳格にしなければいけないというところもあるかと思います。
これは出発点の問題もあり、先ほど西田理事からもお話もあったとおり、むしろ我々としてはこのような、何かこれがいけない言論だということをある程度定義をして公権力が規制をするというような話ではなくて、むしろこのような不当な言動、地域社会から排斥するような言動があってはならない、そういう社会をつくるんだという理念を定めて、そのような社会に向けた国民全体の協力義務というものをこれを規定する、そのような理念法を定めた上で、それを全体で実現していこうという理念を定めた法律であり、そういう部分での概念の定め方というところの出発点がそもそも違うというところは御認識をいただきたいというふうに思います。

○仁比聡平君

その点はよくこれから議論をしていく必要があるのかなと思うんですね。
少し先ほどの西田発議者の御答弁に戻りますと、行政がこの表現あるいは言動の違法的方法を直接審査するのかどうかという、そうした問題をおっしゃったわけですけれども、仮にそうした措置を置かないとしても、国民の皆さんに、こうした言動はあってはならない、してはならないというふうに呼びかけるのかどうか、違法であることをはっきりさせるのかどうか、これはつまり社会的に根絶していく上で極めて重要だと思うんです。そうして、この法案によっても、努力義務とはいえ、そうしたものを課すわけであり、この外延を明確にするということはとても大事なことなのではないかと思うんですね。そこはどうお考えですか。

○西田昌司君

外延をまず定義、つまり定義を明確化してやっていくとかいう話になってきますと、新たな問題が実は出てくると思うんですね。といいますのは、定義した、定義を明確にすればするほど、その定義の外側に隠された言葉は、じゃいいのかと。つまり、ここからここまでは駄目だけれどもここから外側はいいんだよということを、逆にヘイトスピーチをする方々にお墨付きを与えるようなことにもなりかねないんです。ですから、我々、そこは全体の文脈の中で判断すべきことだと思っております、そもそも。だから、そういうことも含め、禁止規定を設けたり定義をまた明確にしたりすると、そういったまた別の次元の問題が出てくるわけですね。
もっと言いますと、我々はこのヘイト問題というのは、実際に現場を見たり、また映像を見たりもしておりますけれども、断じて許すことはできないと思っております。そして、この法律が、我々が法的措置をしましても、それに対して彼らは挑戦的な行動をするかもしれませんよ。だから、そのことも含めて我々は、彼らがやってくる行動は最終的にはこのヘイト法によって抑え込まねばならないと思いますけれども、最終的にはやっぱり裁判の場でこれを、彼らの行動は恥ずべき行為であるのだと、行政のやった措置がこれは適法だったのだという、そういう形のやっぱり文脈になっていくと思うんです。
したがいまして、そういう意味で我々は、禁止規定ではなくてまずモラル、それから啓発、教育、こういうことは恥ずかしいことなんだということをやっぱり国民全体でこれ共有して、そしてそういう意識の中で国が、また地方公共団体が啓発活動していく、そこが一番大事だと思うんです。つまり、やっている人間が、自分たちがやっている行為は恥ずべき行為なんだという、やっぱりそういう認識に立ってもらわないと、これはヘイトスピーチというのはなくならないんです。
そして、現に私は視察に行って感じましたのは、在日一世、二世、いろんな方の話を聞きましたけれども、我々が小さいときも、戦後、いわゆる在日韓国・朝鮮人の方に差別的な言動があったり、目の当たりに見たりしましたよ。しかし、今やっぱりどんどんそういうのは少なくなってきたというお話をされました。しかし、この二十一世紀、平成の時代になって、またもう一度突然こういったヘイトスピーチを公然として扇動していくような目に余る行為が出てきたわけですよね。
だから、我々は、こういったことは改めて恥ずべき行為だということを宣言すると同時に、やっぱり教育、啓発、この効果というのを大いに私は期待しなければならないし、そのことを通じてしか私はヘイトというのは根源的になくすことはできないのだと思っているんです。

○仁比聡平君

この禁止あるいは違法という法の規定のありようについて、これもっともっと議論が必要だと改めて明らかになってきているように思うんですけれども、ちょっと残る時間が五分ほどになってきているので、法案について具体的に、定義に関わってお尋ねしたいことがあります。三点、ちょっとまとめて質問します。
先ほど来お話のある本邦外出身者という規定が第二条に置かれているわけですが、一つ目の質問は、この本邦外出身者という、我が国領域を言わば基本的な概念にした内外というこの考え方は、人種差別撤廃条約の理念と異なるのか、それとも含んでいるのか。国籍あるいは民族、人種というものによる差別ということを意味しているのかどうなのかということが一点。よろしいですかね。
二点目は、そうした下で、専ら適法に居住するものという規定ぶりになっています。これは、例えば在留の適法性が争われているというオーバーステイだったり、あるいは難民申請が政府の不当な判断によって認められなかったりといった方々に対するヘイトスピーチが許されるというものではまさかないと思うんですけれども、あわせて、アイヌ民族に対するヘイトスピーチということも公然と行われています。これを許すというものではないと思うんですが、この適法に居住するということの意味がどうかが二つ目。
最後、三つ目は、そうした本邦外出身者を地域社会から排除するというふうにお書きになっておられるんですが、私たちが視察で訪ねた桜本のような集住地域ではない場所、大都会の例えば銀座だとか新宿だとか、こうしたところで発せられる言動というのはこの地域社会から排除するということに当たるのかどうなのか。
この三つが御質問ですが、いかがでしょうか。

○西田昌司君

まず、いわゆるこのヘイトスピーチですけれども、現在も問題となっているヘイトスピーチ自身は、いわゆる人種差別一般のように人種や人の肌とかいうのではなくて、特定の民族、まさに在日韓国・朝鮮人の方がターゲットになっているわけですよね。ですから、そういう立法事実を踏まえて、この法律に対して対象者が不必要に拡大しないように、立法事実としてそういう方々が中心となってヘイトスピーチを受けているということで、本邦外出身者ということを対象として限定しているわけでございます。
したがいまして、先ほどのアイヌの問題ありますけれども、我々は実は、アイヌに対するヘイトスピーチがあるという、そういう立法事実を今、問題把握しているわけではございません。ですから、この中にはアイヌの話は入っておりませんが、もとよりアイヌ民族に対するヘイトが許されるものではないということは申すまでもございません。
それからもう一点、何でしたっけ。

○仁比聡平君

在留が違法な場合。

○西田昌司君

それと、在留の話ですけれども、適法にというのは当然の話でありまして、例えば不法に入国したりした場合は、当然入管法によりましてこれは本国に送還される、そういうことになるわけでございます。ですから、そういう方々は本来不法に滞在していたら本国に、我が日本にはおれないわけでございますし、その方々は当然戻ってもらわなきゃなりませんので、ヘイトスピーチのこの法律の対象にはなっておりません。しかし、その方々に対するもちろんヘイトスピーチを肯定するものでもございません。
それから、いわゆる難民認定をされている、その今手続中であるとかそういう方々は、これはここで規定する適法に居住する方々に該当すると考えております。

○仁比聡平君

地域社会の話はないの。

○矢倉克夫君

例えば、銀座から出ていけとかそういうものですよね、桜本とかではなく、居住しているところではなく、ただそういう一定の場所から出ていけというような話でもあると。
今回の我々が捉えている不当な差別的言動というのは、要するに、ある方々の存在自体を否定して、そこから出ていけというような、その存在を否定するという理解の下で出ていけというようなことを扇動するような言動というふうに理解をしています。
具体的な地域社会かどうかというのはやはり前後の文脈等も見ながらということになると思うんですが、そのような趣旨に合うような発言であれば該当するというふうに理解はしたいと思っています。

○委員長(魚住裕一郎君)

仁比君、時間ですが。

○仁比聡平君

あともう一点質問したかったのは国、地方公共団体の責務に関わるものなんですが、もう時間が参ってしまいました。
いよいよ、もっともっと議論が必要だというふうに思うんですね。とりわけ、不法入国の場合などの議論もありましたけれども、そうした場合だからといって法の保護が与えられないということには私はならないと思うんですね。一層の議論を求めて、質問を終わります。

○小川敏夫君

民進党・新緑風会の小川敏夫です。
時間がないので端的にお尋ねしますが、三条で努力するということが定められていますけれども、努力をするつもりがない人あるいはそもそもその努力に反する行動を取ろうとする人に対してはどういうふうに効果が及ぶんでしょうか。

○矢倉克夫君

まさにそういう人が出ないようにするということで理念を訴えているところであると思います。
この前も視察に行きましたときに、視察でお話をされた方がおっしゃっていたのは、昔は例えばヘイトスピーチのようなことが起きても対抗するような方がいらっしゃらなかったけれど、最近やっぱりそういうような声を上げてくださる方がいるようになったと、これは日本が成熟している社会であるということをおっしゃっていたと思います。
今回の法律は、まさに国民全体、国民の中でも当然このヘイトスピーチが良くないことだということは頭では分かっていても声を上げられなかったという方がやっぱりいらっしゃる、そういうような方も含めて国民全体でこういうのがない社会をつくろうという理念をしっかりとうたって、前向きに、さらに主体的に動いていこうということを宣言する、それをすることで、今おっしゃったような、努力をする気持ちもないような方もそういうような渦に巻き込んでいって変えていくというようなことをうたっているというふうに御理解をいただきたいというふうに思います。

○小川敏夫君

いや、御理解できないですね。
要するに、多くの国民はこういうヘイトスピーチは好ましくないということは分かっていて行動しているし理解しているわけですよ。だけど、そういう理解を全く無視して今ヘイトスピーチが行われているわけですよ、国民の気持ちを無視して。
だから、私が聞いているのは、そのうちに国民が理解すればそういう人たちに及ぶでしょうなんという話じゃなくて、法律の効果として、努力するつもりがない人、努力に反する行動を取る人に対してどういうことが対応できるのかと聞いているわけです。法律の効果を聞いているわけです。

○西田昌司君

小川委員の御質問でございますけれども、努力のする気がない人にどうするのかと、それを法律で強制できるのかということだと思うんですね。まさにそれを強制してしまうことが戦前の治安維持法に通ずる、公権力が個人の思想、信条、そういうところに介入してきて、結局はヘイトスピーチをそれで止められたとしても重大なこれ人権侵害という事案になってしまう可能性があるわけなんです。
そしてまた、そういう法制度を我々がつくり上げていくと、同じように気に食わないことがあったら、このヘイトスピーチだけに限らず、様々な法律、これを法律で作ってやめなさいと、その一つ一つの事実は正しい正義によるものかもしれません、しかし、結局正しいか悪いかというその線引きの部分でまた微妙な、ケース、ケースによって事態が出てくるわけですね。一瞬、一見するとそういう差別的言動であったけれども、実はその方々とのその裏にあったのは非常に愛情を持った行動であったということもあるかもしれません。そういうふうに事態、事態によって違うわけなんですよね。
ですから、一概にこのヘイトを禁止してやっていくということにやってしまうと、これは違う問題が出てくる、人権侵害になってくる。弁護士、そしてまた検事、裁判官、法曹の三つの仕事をされてきた小川委員なら御理解いただけると思います。

○小川敏夫君

全く理解はできませんですね。私の質問は、この法律の効果を聞いているんです。この法律によって、ですから、努力をするつもりがない人、そもそも努力に反する行動を取ろうとする人に対してどういう効果がありますかと聞いているわけです。
私は、結局はそういう人に対しては法律上の効果は何もないというのがこの法律だと思うんです。そうしますと、もっと端的に言いますと、全く努力するつもりもない人、今もそういう国民の気持ちに反して、地域の人の気持ちに反してやっているわけですよ、ヘイトスピーチ、ヘイトデモが。そういうヘイトデモを規制することもできないわけですね。ですから、この法律が通ってもヘイトデモは全くやまないと、こういう状況になるんじゃないですか。

○西田昌司君

それは、そうではないと思いますね。
具体的に言うと、恐らく先ほど私、仁比委員のときにも答えましたけれども、今ヘイトをやっている方は、この法律ができてもヘイトをする可能性はございます。当然、彼らは挑戦してくるかもしれませんね。そのことをおっしゃっているわけですよ。
しかし、この法律ができたことによって、行政側が、国権の最高機関としての国会が、このヘイトというのは許されない行為であるということを決め、そして宣言し、そしてそのことを、国民とともに差別のない社会をつくろうという、そういう姿勢を、国としての、国民としての姿勢を示した以上、やっぱりそこは行政側が我々のこの法律に、指針を受けて行政判断をしていただけると思うし、そしてそのことによって、例えば行政側がヘイトを禁止する行為をしたとしましょう。したときに、今度はヘイトをした側が、それは我々の表現の自由を何で行政側が制限するんだ、何でデモを許可しないんだと、内容でするのはおかしいじゃないかという当然裁判になると思いますよ。その裁判になってきたときにも、結局は、我々が出したこの法律が成案したことにより、裁判所も我々の、国権の最高機関のこの法律、この成案をベースにした判断がされるものと私は期待しております。
そして、そういう判例が積み重なっていくことによって、公権力がいわゆるヘイトかヘイトでないかというそこの線引きをするのではなくて、司法の場でそういうものが確定されてくる。そして、結局は、そういうことが積み重なってくると、ヘイトスピーチをしようと思っても、行政側が仮に道路の使用許可を出さないと、そういう判断をして、そしてそれが裁判になり、その裁判が行政側の勝訴になった、それが確定していくと。これは今後、そういうヘイトスピーチをしようと思ってもできないということが司法と行政によって確定してくるわけなんですよ。
だから、そういう手続を踏んでいかなければならないということなんです。その手続を経ずに、司法の手続を経ずに、先に行政側の方が公権力行使で禁止をして云々という規定になると、私はまた別の人権侵害というのが出てくる可能性があるから、我々はその人権侵害のないように、また新たなヘイト事案が出ないように、こういう形の規定をしているということを御理解いただきたいと思います。

○小川敏夫君

ですから、全く理解できないんですよ。裁判、裁判、行政が何らかの処分をするから裁判というけれども、行政が何らかの処分をするための根拠となり得る法律なんですか。だから聞いているわけです。努力する義務がある、じゃ努力する義務を守らなかった人に対して行政がこの法律を根拠に何らかの処分ができるんですか。何らかの処分ができるんだったら、その処分に対して不服申立てという裁判になるけどね。
これ、行政が何らかの処分をする、じゃ、もっと端的に聞きましょう、もっと分かりやすく。ヘイトデモが行われるときのデモの許可申請がある。それに対して、この法律を根拠に公安委員会はデモを不許可にすることができるんですか。

○矢倉克夫君

今、小川委員がおっしゃったようなことは、要するに、何が禁止される表現かどうかを解釈する権限を行政に与えるということだと思うんですね。それこそ、我々の価値判断としては、そのような規制、私たちがイメージしているヘイトデモ、これはもう許されないし絶対禁止すべきだということはあるわけですけど、そこに法規制になると解釈が出てくるわけなんです、どうしても文言ですから。その解釈権限を行政権に与えるということが危険だという理解でまず発しています。
ですので、そうではなくて、そのような形の文言ではなく、実効性を担保する上では、このような理念法として、国民全体でこういうような社会をつくるために全力でやっていこうと、許されないということを宣言するというところから入ったということであります。
出発点がそもそもそのような形で、何が表現内容、許される内容かどうかということを行政権が判断するということは憲法上問題があるというところ、そこがまず出発点であり、そこがちょっと認識として違うところであるというふうに思っております。

○小川敏夫君

ですから、最初の質問と同じことで、答えが出ていないから何回も何回も聞くわけです。
まず、答えを言ってくださいよ、先に。すなわち、この法律ができても、この法律を根拠にデモを不許可にすることはできないんでしょう。できないという前提で、そのことを答えないで、何かいろいろ、やれ表現の自由だとか何かあれこれあれこれ言うから分からない。
まず、私が聞いているのは、この法律ができたら、この法律を根拠にヘイトデモの不許可を、許可をしないという処分を公安委員会ができるのかどうか、できるのかどうかをまず答えてください。

○西田昌司君

これは、今、我々提案者側の方ですから、これは公安委員長、警察側が答弁すべきことだと思いますけれども、原則的な話で言いますと、今、矢倉委員がお話ししましたように、要するに、事前にこの表現内容、デモ内容にチェックして道路使用許可を与えるかどうかという仕組みには今なっておりません。しかし、この法律ができましたからといって直ちにこのヘイトスピーチやるんだったら禁止だという話にはならないと思います。
しかし、大事なのはそこから先でして、こういう理念法、これ宣言することによって、我々は行政も含めてこういうことはさせてはならないと。そうすると、実際にはいろんな法律がまだまだあるわけですよ。その法律の運用規定につきましても、例えば騒音防止条例とかそれから名誉毀損とか、様々なものがありますよね。そういうことも含め、我々はヘイトスピーチを公然とやっていることを許すことはできないという、このことを宣言することによって、様々な法律の解釈の指針も、また我々は指針を与えることになると思っています。そういう合わせ技を含めて、行政がこのヘイトスピーチに対して抑止力を発揮できるものだと考えております。

○小川敏夫君

法律の提案者が、この法律ができたときに公安委員会が不許可にするかどうか、それは自分は知らない、公安委員会が決めることだと言われちゃ困るんですよ。法律の提案者ですから、この法律の効果はどこまで及ぶかということは大変重要なことです。
今日は、熊本での大地震ということで、公安委員長が防災担当大臣ということで、本来ならこの席に来て答弁していただくところを出席しないということになったわけでありますけれども、その公安委員長が先般言っておりました。ヘイトデモ、何で不許可にしないんだと、その質問に対して公安委員長はこういうふうに言っていました。不許可にする根拠の法律がないからしようがないんだと、これが公安委員長の答弁でした。ですから私は聞いているわけです。公安委員長は、不許可にする根拠となる法律がないから不許可にできないんだと。だったら、不許可にできるその根拠となる法律を作ればいいじゃないかという議論になるわけですけれども、この法律はそういう根拠には全くならない法律だと私は思います。
であるならば、元々国民の多くの声を無視して、世論からどんなに批判受けても堂々と法律に違反しないからといってヘイトデモを繰り返している、この人たちが更にこの法律が通った後もヘイトデモを繰り返すときに何の規制もできない、何の効果も法的には及ばないですねと私は聞いているわけです。

○矢倉克夫君

まず、そもそも不許可にするにしても、表現内容を理由にして不許可にするということは、これは憲法上許されないということは改めて申すまでもないことだと思います。
仮に不許可にするとしたらどういう場合かというと、時とか場所とか時間とかそういう外形的なところを判断の材料としてやると。その判断、これはいろんな法律の文脈もあるかと思います、今、西田発議者からもお話もあった。その判断をする際に、このヘイトデモの時、場所等の判断をする際にこれが禁止されるべきものかどうかということを判断するしんしゃく材料として、この理念法が、許されないものであると言うところが、どのような態様のものが許されないかというところの判断に当然しんしゃくされる部分はあるかと思います。ただ、これがあるからこれだけを根拠にして禁止する、表現内容を根拠にして禁止するということはあってはならないというふうに思っております。

○小川敏夫君

この法案に対して本当に多くの質問するべき事項がございます。だけど、今日は一点のことしか議論できませんでした。大変残念ですけれども、また改めて機会があると思いますので、そのときに質問させていただきます。
今日は終わります。

○有田芳生君

民進党・新緑風会の有田芳生です。
まず、お二人に端的にお聞きをします。
四月八日にこの法案が提出されて以降、当事者である民団あるいは長くこの問題に携わってきた外国人人権法連絡会あるいはヒューマンライツ・ナウなど、少なくとも十の団体が与党案についてのコメントを出しておられます。評価をしつつも、実効性がないのではないかというような指摘がありますが、その様々な団体のコメント、お読みになりましたでしょうか。そしてまた、そこに何が書かれていたか、どのように理解されているのかをまずお二人からお聞きをします。

○西田昌司君

そういうような意見が表明されているということは大まか知っておりますけれども、個別的な話は、つぶさに見ておりませんので、承知しておりません。

○矢倉克夫君

私も、直接民団の方等と話をされた方からいろいろ話も聞いたり、私も聞いたりはしております。ただ、どういうような文書があるかとかそういうのは詳細は把握はしておりません。

○有田芳生君

事務所に送られていると思いますので、是非お読みをください。
さらに一方で、これまでずっとヘイトスピーチを続けてきた、例えばアドルフ・ヒトラー生誕百二十五周年を祝うそういう日本版ネオナチなどは与党案に対して大歓迎であると、お墨付きをもらったというふうにコメントを出しておりますが、御存じですか。お二人、お答えください。

○西田昌司君

それも有田委員から教えていただきまして、そういうことがあるのは知っておりますけれども、つぶさには詳細は知りません。

○矢倉克夫君

私も詳細には知りません。ただ、お墨付きをあげた法案では絶対ありません。

○有田芳生君

御自身が積極的に出された法案ですから、様々な関係団体及び一方のヘイトスピーチを繰り返し今でもやっている人たちのコメントを是非お読みになっていただきたいというふうにお願いしたいというふうに思います。
おととい、岡山市内でも、在特会の前会長が来て、ヘイトスピーチのデモと集会、街宣が行われました。江田五月議員と私もそこに抗議のために参加をしましたけれども、彼らは端的にこう言っておりました、自分たちは適法的にデモと集会を申請をしてやっているんだと。言っていることはもうヘイトスピーチのオンパレードですよ。
じゃ、そういうものを本当に制限できるようなものになるのかということを与野党一致してこれから充実したものにしていかなければならないと思いますが、日本版ネオナチと私はあえて言いますけれども、ナチスそれからアドルフ・ヒトラーを今でも称賛している人物は、与党案に対してこう語っております。この定義の中に、つまり与党案の定義の中に適法に居住するものの文言が盛られたことは大きい、なぜならば、このように決まった以上、適法に居住していない外国人に対しての言動はヘイトスピーチに当たらないことになります。もう少し紹介します。我々は、これまでイラン人追放やカルデロン一家のフィリピン送還を訴えてきましたが、そのような活動はこの与党案ではヘイトになりません。
あるいは、別の常習的なヘイトスピーカーがこう言っております。在留資格を有さない不法滞在外国人であれば、子供であろうと老人であろうと、日本からの排除を主張し又は扇動しても決して差別、ヘイトには該当しないというお墨付きだと、そのように書いております。
あるいは、別の差別の扇動を今でもやっている人物。我々レイシストにとって一番良い状態ができ上がる、やりたい放題である、笑い。その後とんでもないことを言っています。在日シナ・チョンは首つって死ね。これは、彼らが、公明党の有力な議員がこの法案についてツイッターで書き込んだその下にこういう文言を書いておりますが、どのように思われますか。

○西田昌司君

今おっしゃったような発言は、私、聞くだに本当に吐き気がするほど恥じるべき言動だと思っております。もちろん、ですから、この法律の中で、いわゆる違法にオーバーステイされているとかそういう方々に対する、不法滞在だから、これヘイトスピーチをしても我々の言っていることは適法とされるというか認められるということには当然なりません。
これはもう全体の文脈で考えるべきものでありまして、この法律を元々作ったのは、立法事実として、いわゆる在日韓国・朝鮮人の方々、その方々に対する不当な差別的な言動があったということから作っておりますけれども、しかし、だからといって、その方々以外の方に何を言ってもいいんだとか、そんなことには当然ならないわけでありまして、一番大事なのは、ここで言っているのは、理念法でやっているわけですよ。理念法でやっているというのは禁止規定もなければ何もないじゃないかとおっしゃるけれども、しかし、逆に言うと、そういう理念を掲げているからこそ、我々はそういうヘイトスピーチは不法滞在者に対してやっていいんだという形で限定されてこない、むしろ、もっとそういう理念を生かして、教育も啓発もそうだし、行政が様々な判断するときの指針として扱ってくれるものと考えております。

○有田芳生君

今、西田委員は、在日韓国・朝鮮人の方々に対する差別扇動、ヘイトスピーチをなくすための法案だとおっしゃいましたけれども、この二〇〇八年以降、例えば在特会が日本で行ってきたヘイトスピーチの実態というのは、在日コリアンの方々だけではなくて、一番目立った最初の時点は二〇〇八年に埼玉県蕨市で行われたフィリピン人一家に対する追放デモなんですよ。在日コリアンだけではなくてフィリピン人、中国人、あるいはアイヌ民族などなど、様々なヘイトスピーチが吹き荒れてきたというのが現実なんですよね。
これだと、在特会が行ったフィリピン人一家追放デモというのは不当な差別的扇動に当たらなくなってしまうんではないですか。先ほどヒトラー、ナチス礼賛者が言っていたように、不法と付ければ差別してよいというお墨付きを与えられるんだと、むしろ差別の扇動を推進してしまうことになりませんか。

○西田昌司君

これは、特定の人に対してそういうことをすると当然別の法律で罰せられることになってきますよね、いわゆる名誉毀損なり侮蔑的なことをやってきたりすると。ですから、そうじゃなくて、もう少し大きなくくりでこの法律はヘイトスピーチを規制するためにやっているわけです。
いずれにしましても、私たちは、有田理事がおっしゃいますように、そういうことを本当に、ヘイトをするのが楽しみのようにやっている人間がいるんですよね。これ許されるべきものじゃありません、本当に恥ずべき行為でありますけれども。しかし、それを強制力を持って法律で排除するということが、なかなか現実問題、この憲法の保障している基本的人権を考えるとできないわけなんですよ。
じゃ、我々が何ができるかというと、立法府の中でこの議論をして、そういうやっている人間というのが、本当に恥ずべき行為であって、そしてまた一般の社会の中からも当然認められるものではないと、そういうことを我々がお墨付きを与えることによって、彼ら自身が言動に自ら恥じ入る行為はしないように持っていくということ以外なかなか、その表現内容、言っていることで直ちにそれで取り締まって禁止をしてという形にはなれないと、むしろ逆さまの、それが、そういう規定があれば違うことに使われてしまう。
これは、民進党、旧民主党が出された人種差別撤廃法に対して参考人質疑をさせていただきましたけれども、そのときに参考人の方々が指摘されていたということを皆さん方も覚えておられると思いますけれども、予期せぬ、本来ヘイトをやめさせようと思ったその禁止規定行為が逆にほかのことに使われてしまって公権力の暴走につながってしまうと、それを我々、一番警戒しなければならないと思っております。同時に、その枠の中でいかにしてヘイトを止めるかと。
ですから、これは、まずこの法律を作って、そして国が宣言することによって国民のモラルを高めていくという、そういう方法で我々はヘイトを抑え込んでいきたいと思っております。

○有田芳生君

第二条、定義のところにある適法に居住するというところなんですけれども、もう一度具体的にお聞きをしますけれども、在日コリアンに対する差別的表現の本質というのは、国籍ではなくて民族的出身に基づく排除であるというのは京都朝鮮第一初級学校襲撃事件の最高裁判決でも明らかなことですけれども、それは何度も強調をされております。ましてや、在留資格というのは無関係じゃないですか。

○西田昌司君

在留資格無関係というのは、つまり、私が言っているのは、適法に居住している人は当然ここで、日本の国に居住する権利があるわけでございます。しかし、適法でない方は、これは国の法律によって本国に送致されてしまうという形になるわけであります。ですから、法律がしっかり機能していますと、本来不法な方はおられない形になってくるわけなんですね。
今現在またやっているのも、現実問題起こっている立法事実としては、適法に住んでおられる在日コリアンの方々がそういうヘイトスピーチの被害を受けておられると。ですから、そういう立法事実に鑑みこの法律を作っているわけでありまして、もとより、だからといって、先ほどから言っていますように、適法に住んでいない方々にヘイトスピーチをやってもいいとか、そういうことを言っているわけではもちろんございません。

○有田芳生君

先ほどの仁比委員への答弁だったと思いますけれども、難民認定申請中の方はそれは当たらないというお話でしたけれども、それは法務省は知っているけれどもヘイトスピーチをやる連中は知らないわけですから、これまでどおり排除のデモをやるということを、それを止めることはできないというふうに思います。
もう一点、人種差別撤廃委員会の一般的勧告の三十第七項にはこう書かれております。人種差別に対する立法上の保障が、次です、出入国管理法令上の地位に関わりなく市民でない者に適用されることを確保すること、及び立法の実施が市民でない者に差別的な効果を持つことがないよう確保すること。
与党案ではそれに反することになりますので、人種差別撤廃条約の違反だと、そういう国際的な指摘がなされる可能性があると思いますが、いかがですか。

○矢倉克夫君

まず、与党案がというか、人種差別撤廃条約上の義務というのは、もう既に現行法で担保されているという理解であります。そもそも一般的勧告ですので、これは特定人、特定国に対しての勧告ではないという理解でありますが、どの部分を指していらっしゃるのかはちょっと定かではないんですが、今回の法律がこれに違反するというような認識には立っておりません。

○有田芳生君

そういう認識に立ってもらわなければ困ります。
もう一点最後に、時間が来ましたので、アイヌ民族に対するヘイトスピーチです。
二〇一四年からずっと続いております。二〇一四年八月十一日、アイヌ民族、今はもういない、二〇一四年八月二十二日、アイヌ利権がある、二〇一四年の十一月八日には銀座でアイヌをターゲットにしたヘイトスピーチデモが行われました。そういう事態が現実にあるわけですから、これはもうアイヌ民族へのヘイトスピーチについては立法事実があるんですよね。ところが、与党案では外国籍者あるいは外国の出身者が不当な差別的言動の対象になっておりますけれども、アイヌ民族については除外されている。
やはり、人種差別撤廃条約の定義に基づいて民族というものを外してはならないのではないかというのがこのヘイトスピーチ問題の核心的部分だと思いますが、いかがでしょうか。

○西田昌司君

我々側としましては、今目の前で行われてきたこの在日コリアンの方々に対するヘイトスピーチをいかにして食い止めるかという、そこを立法事実としてこの法律を作ってきたわけでございます。
もとよりアイヌの方に対する差別が、またヘイトが許されるものではありません。しかし、そこはこの法律を議論していく中で、いわゆる行政のこの法律の運用面含めて、この国会の議論の中で、アイヌの方々も含めヘイト許されないということは運用面で、運用面と申しましょうか、要するにこれ理念法でございますから、宣言することによって可能ではないかと思っております。附帯決議始め、そこにも当然含まれるんだと、そういう御意見は是非先生方からお寄せいただいて、実りある立法にさせていきたいと思っております。

○有田芳生君

時間が来たので終わりますけれども、小川委員からも多くの質問、残したままになっております。今、西田委員からも、この法案を審議する過程でとおっしゃいましたので、是非とも今日で終わりにすることなく、与党案をより良いものに変えていき、日本からヘイトスピーチをなくしていく、その大きな力にしていきたいという思いを表明して、質問を終わります。

○三宅伸吾君

おはようございます。自由民主党の三宅伸吾でございます。質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。
質問の少し順番を変えまして、今ずっと議論になっておりますこの定義と申しますか、この法律は第一条に目的書いてありまして、本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組について、基本理念を定め、及び国等の責務を明らかにするとともに、基本的施策を定め、これを推進することを目的とすると、こういうふうに書いております。
この法律の肝は、もう何度も議論になっておりますけれども、「本邦外出身者に対する不当な差別的言動」、これがキーワードでございます。法案のタイトルを含めまして法文全部で十四回この言葉が出てまいります。この「本邦外出身者に対する不当な差別的言動」が何かということが一番大事なことでございまして、これは皆さんも御案内のように、第二条にこの定義の規定がございます。
ただ、この定義規定、じっくり読みませんとなかなか難しいのではなかろうかと思います。もう何度も読み上げられておりますけれども、ちょっともう一度読みますけれども、第二条、「この法律において「本邦外出身者に対する不当な差別的言動」とは、専ら本邦の域外にある国若しくは地域の出身である者又はその子孫であって適法に居住するもの(以下この条において「本邦外出身者」という。)に対する差別的意識を助長し又は誘発する目的で公然とその生命、身体、自由、名誉又は財産に危害を加える旨を告知するなど、本邦の域外にある国又は地域の出身であることを理由として、本邦外出身者を地域社会から排除することを煽動する不当な差別的言動をいう。」と、このように第二条書いてございます。
この第二条の肝は、私二つあると思いまして、まず第一は、第二条で言うと四行目でございますか、「本邦の域外にある国又は地域の出身であることを理由として、」、これが第一の要件ではなかろうかと思います。そして、第二の要件が次の「本邦外出身者を地域社会から排除することを煽動する不当な差別的言動」と、こういうふうに書いてございます。
じゃ、この第二条の最初の方に書いてあるものはこれ何だということでございます。最初の方には、専らから始まりまして、いろいろ書いてありますが、最後に、名誉又は財産に危害を加える旨を告知するなどと書いてございます。これは、典型例をここに示して、これを中核として、その中核の行為を含んで、本邦の域外にある国又は地域の出身であることを理由として、本邦外出身者を地域社会から排除することを扇動する不当な差別的言動と、こういうふうに私は読むんであろうと思うんですけれども、発議者の矢倉さん、いかがですか。

○矢倉克夫君

ありがとうございます。
今、三宅理事から、これ典型例だというふうにお話もありました。まさに理念法として、我々が理念として掲げているのは、あのような不当な差別的言論があることで地域社会、共生社会を分断する、そして暴力を誘発するような社会があってはいけないと、まさにそういうようなものをなくしていこうというところであります。でありますので、概念として広く逆に捉えることもできる。これが、先ほど来からの話ですと、禁止規定とかですと、公権力がどこまで介入できるかということをきっちり決めなければいけないので、逆に言うと反対解釈というようなことも余地が出てくる。それ以外のところは公権力が介入していいんだというような反対解釈があるわけですけど、そのようなことはこのような法案ではないと。
今おっしゃったような形で、理念の下で、我々としては、まず大きなくくりとして、本邦の域外にある国又は地域の出身者であることを理由とした本邦外出身者を地域社会から排除することを扇動する不当な差別的言動ということを挙げました。それを表す典型例として、今申し上げたような話も申し上げたわけであります。
でありますので、じゃ、ここに公然と書いているから、それ以外のものが全く差別的言動をしていいものかというような解釈があるわけではなく、当然、文脈上、我々が理念として掲げている社会、それを侵害するような言動であればそれは許されないという方向の解釈になるかと思います。
具体例ということでありますが、例えば公然でないということでありますので、その公然でないような状況での言論ということになる。ただ、その前後の文脈で、最終的に地域社会の分断となるような言論であればそれは対象になるという方向に行き着くというふうに理解しております。

○三宅伸吾君

私の次の質問までお答えいただきまして、ありがとうございました。
私が次にお聞きしようとしたのは、この専らから告知するなど、これが典型例だと、要するにここの部分は誰がどう考えてもけしからぬヘイトスピーチの表現行為だろうということを確認をさせていただいた上で、この典型例の中を読みますと公然とという言葉があるものですから、じゃ、公然じゃないものはもう関係しないのかと。そうじゃないという可能性も典型例であるならば、例外として公然でない差別的言動もあるんではないかという御質問に対するお答えを今、矢倉発議者からいただいたというわけでございます。
じゃ、この関係でもう一点お聞きさせていただきます。この典型例の中に適法に居住するものという、適法にという言葉が入っております。先ほど来、西田委員が、違法に日本に入ってきた方はどうするんだということに対して、原則ということでお答えになったと理解をしております。
ただ、極めて例外的なことを私これから申し上げます。これは、専ら適法にという方々をこの概念のコアとして例示をしているわけでございますので、原則、適法に日本に住んでいる方に対するヘイトスピーチは良くありませんよというのはもう当然でございますし、それを前提に西田委員がお答えになったのもよく分かりますけれども、ちょっと重箱の隅をつつくようなことを申し上げますけれども、この第二条をきちっきちっと重箱の隅をつつくような目で読みますと、適法に居住していないものを対象にしても、場合によっては不当な差別的言動にはならないんでしょうか。

○矢倉克夫君

適法でないものに対しての言動が不当な差別的言動になる、今申し上げたとおり、これはその文脈によって、ただ、ヘイトスピーチ、不当な、じゃ、適法にいない者に対してこのような非常に許されないような態様でやっていいかということを、お墨付きをあげているものでは当然ございませんで、それは全て文脈上によると。この定義というか、我々が理念としている、地域社会の分断とかそういうものを許されてはいけないという、そういうようなものに該当し得るものであればやはりそれは該当し得るし、ただ、正当な言論として、これはいろいろな言論はあると思いますし、政治的な表現として様々な意見もありますので、そういうようなものに該当するというような判断がなされればそれは当たらないということであると思います。
ただ、当然ですけれども、何度も言います。今、ヘイトスピーチをやっているような人たちがこれに反対解釈をして、そのような人たちに対してのヘイトスピーチを、これお墨付きを与えたものだということは、これは一切当たらないというふうに改めてお伝えしたいと思います。

○三宅伸吾君

まさに今、矢倉委員がおっしゃったとおりだと思うんですね。ここに「専ら」と入れて典型例だというふうに書いておけば、典型例以外のものも極めて例外的には差別的言動に当たると、こう読めるわけでございますので、禁止規定がないからといってお墨付きを与えているわけではないというふうに私は解釈をした次第でございます。
それで、ちょっと第三条でございますけれども、本法案は、いわゆるヘイトスピーチの解消を目指して新法の制定を目指す法律案であります。法律である以上、公権力に対して何らかの作為、不作為の行為規制をかけたり、国民等の権利と義務について新たな法的規範を創設したりするのが普通の法律案だろうと思うわけでございます。
この法案が成立すれば国民にとってどのような権利義務の変更があるのか、第三条を踏まえてお答えいただけないでしょうか。

○矢倉克夫君

ありがとうございます、三宅理事がおっしゃっていた、権利義務というふうにおっしゃっている念頭のものは、恐らく公権力等、一般的な概念でいえば、公権力等が国民の権利を、行為を抑止させるであるとか、そういうような部分の文脈であろうかと思います。そういう意味合いの上での権利義務というところであれば、これは変更はないというふうに理解はできるところであります。
他方で、この三条にのっとってという話ですが、三条は、先ほど来からも申し上げましたとおり、やはりヘイトスピーチというものがない社会を、これは許されないという価値判断をまず宣言した上で、そのようなものがない社会を国民がしっかりつくっていく、主体者となってしっかりとつくっていくという、これは宣言であります。既に先ほどもお話もしたところですけれども、国民の大多数の人はこのようなヘイトスピーチは許されないということをこれは理解はされているわけですが、それを更に一歩進めて、行動にもつながるような行為をしていってこれを根絶していこうという、それを一体としてつくっていこうというその宣言である。
そういう意味での、このような社会をみんなでつくっていこうということを、方向性を国民の行為として定めたものとしては、義務という形よりは努力義務という形になるかもしれませんが、規定をさせていただいたということになります。

○三宅伸吾君

次に、第四条から七条についてお聞きをしたいと思います。
四条以下は国と地方公共団体について定めたものでありますけれども、国につきましては、第四条一項で、最後の文末のところですけれども、「措置を講ずる責務を有する。」と書いてございます。第五条を読みますと、「必要な体制を整備する」、第六条、第七条は、最後、「取組を行う」とあります。これは国に関する規定でございますけれども、一方で、地方公共団体については、第四条から七条の二項全ての文末が「努めるものとする。」と、こういうふうに書いてありまして、大分ニュアンスが違う書き方をしております。
国に対する法律の要請対象と地方公共団体に対する法律の書きぶりと違う書きぶりをしてありますけれども、この国と地方公共団体の書きぶりの違いはどういう意図を持たれているのか、御説明いただけますでしょうか。

○矢倉克夫君

国においては、例えば、法務省を中心に本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた様々な施策を実施する責務を有するということであります。とりわけ啓発活動でありますとか、これも理念としてこういうヘイトスピーチは許されないということを初めて国としてうたったわけであります。その方向性に従って、啓発活動とかその他の人権擁護施策等は、これ広く国民一般に向けられたものとして国が主体的にやる責務があるというところであります。
他方で、地方公共団体等、その本邦外出身者の方が人口の中でどれくらい占めるかとか、もろもろな事情もあります。あと、こういう言動が行われている頻度等もある。そういった実情に応じて、その解消に向けた取組に関して施策を講じるように努めたと。これは、要するに、国と地方公共団体が果たすべき役割の違いを踏まえて書き分けを行ったというところであります。
ただ、その上で、この前も視察に行って現場の方がおっしゃっていたのは、地方公共団体とかに話を持っていっても、やはり国が何かしら方向性を示していないから我々は何もできないんだというようなお声があったというところもあります。
今回、このような形で理念法として、国の法律としてヘイトスピーチは許されないという姿勢をしっかり表したことは、今後、地域の住民の方が地方自治体に対して様々な施策を訴えるときの後押しをすることにはなるというふうに理解もしております。

○三宅伸吾君

ありがとうございました。
私は、この法案は、ヘイトスピーチに対する我が国、そして国民の取組を加速する貴重なリーガル・イノベーションの一歩だというふうに高く評価をしたいと思います。
最後に、ヘイトスピーチをめぐって様々な裁判例等が過去もあったと思いますけれども、野党提案の法案も含めまして、一つの契機となった事件があったと思います。もう有田委員が何度もこの委員会で取り上げていらっしゃる京都での朝鮮人学校に対する示威活動に関する裁判例でございます。これ、学校関係者を原告として、在日特権を許さない市民の会などを被告とする損害賠償と街頭宣伝差止め請求事件が民事の分野では提起をされて、判決ももう確定しているところでございます。
私がこの判決を読ませていただいて、またニュースも読んで一つだけ、余り話題になっていないことを一つ取り上げたいと思います。平成二十五年の京都地裁判決によりますと、朝鮮人学校に対する三回目の示威活動は実は仮処分の決定を無視してなされております。その仮処分の内容は、学校の北門中心点から半径二百メートルの範囲内での示威活動はやるなという仮処分が出ておったんでございます。しかし、それを明白に認識した上で、無視してやっちゃえというような事実認定が判決に書いてあります。
最高裁にお聞きしたいんでありますけれども、我が国では、裁判所の命令を無視しても、その命令無視それゆえをもって身体拘束をされたり罰金を科す制度がないと私は理解をいたしております。一定の金銭を支払わせる民事執行法の間接強制というのはありますけれども、これは後日の損害賠償の保証的な制度だと理解をしております。
英米法では法廷侮辱罪をもって裁判所の権威を守り、司法判断を維持していると。日本は英米法体系とは違いますので、まあ英米の話かなと思っておりましたけれども、実は大陸法のドイツにも同じような制度がございます。若干アメリカとは違いますけれども、罰金刑、身体拘束も可能でございます。それから、中国においてもドイツと似た制度があるというふうに聞いております。
そこで、最高裁判所にお聞きいたします。
仮処分命令が無視される状況は過去どのぐらいあるのでございましょうか。例えば、私が知っているだけでも、日教組とあるホテルの会場を使う使わないという問題がございまして、あのときも仮処分命令を無視して使わせなかったということがございました。その司法判断の無視される事案ということは、司法の権威を軽んじているというか、ちょっと言葉は下品でございますけれども、裁判所がというか、日本の司法権がなめられているんじゃないかというふうにも受け取れるわけでございます。
その仮処分命令が無視される状況の程度と、それから、こうしたことが起きていることについてどのように最高裁として受け止めていらっしゃるか、御所見をお聞きいたします。

○最高裁判所長官代理者(菅野雅之君)

お答え申し上げます。
裁判所の仮処分命令に違反する事例につきましては統計がございませんので把握しておりませんが、委員御指摘のとおり、公刊物に登載されている裁判例の中に仮処分命令違反があったことがうかがわれるものがあることは十分承知しているところでございます。
一般論といたしますと、裁判所の仮処分命令の効力が生じている以上はこれが遵守されるべきことは当然であり、仮処分命令に違反する事例が存在することにつきましては誠に遺憾であると申し上げるほかないところでございます。

○三宅伸吾君

遺憾でなかったら困るわけでございます。遺憾であるだけでとどまって、果たして司法改革をしようとずっと二十年近くやってきたこの日本国政府はこれでいいと思っているのかどうか、ちょっとお聞きしたいと思うのでございます。
ちょっと法務省にお聞きいたしますけれども、法廷等の秩序維持に関する法律というのが既にあるんでございますけれども、この法廷外での不作為等を内容とする仮処分決定とか差止め判決を無視する行為は本法の対象にならないということをまずちょっと確認をさせていただいた上で、対象外であるなら、先ほど最高裁の方から遺憾であるという御発言がございましたけれども、遺憾である状態がずっと続いているわけでございますけれども、司法の権威を守る何らかの法制度整備の必要性について法務省としてどう考えているか、お聞かせいただけますか。

○政府参考人(萩本修君)

御紹介のありました法廷等の秩序維持に関する法律、この規定に沿って御説明しますと、この法律は、第一条で、民主社会における法の権威を確保するため、法廷等の秩序を維持し、裁判の威信を保持することを目的としておりまして、第二条で、裁判所又は裁判官が法廷又は法廷外で事件につき審判その他の手続をするに際し、その面前その他直接に知ることができる場所で、秩序を維持するため裁判所等が命じた事項を行わず若しくはとった措置に従わない行為又は不穏当な言動で裁判所等の職務の執行を妨害し若しくは裁判の威信を著しく害する行為を制裁の対象としているものでございまして、委員御指摘のような裁判所の仮処分決定に従わない、無視することにつきましては、この法律の制裁の対象に当たらないというように考えております。
御指摘のとおり、司法の権威を守るという観点からは、これも御紹介がありましたが、英米法における法廷侮辱、裁判所侮辱のこの思想を参考に、我が国でも裁判所の仮処分決定や判決に当事者が従わない場合に制裁を科す制度を導入すべきという意見が、意見といいますか見解があることは承知しております。
もっとも、我が国の民事裁判手続におきましては、一方当事者が裁判所の仮処分決定や判決に従わない場合に、裁判の実効性を確保をする方策としましては、その相手方当事者の判断により仮処分決定や判決に基づく執行手続を取ること、別途損害賠償請求訴訟等を提起することなどが予定されているところでございます。
このような法体系の下で、司法の権威を守ることを目的として裁判結果に従わないことにつき制裁を科す制度を導入することにつきましては、制裁までの必要があるかどうか、司法の権威を制裁によって保持することが手段として適切、妥当か、司法の権威は国民の理解と信頼に支えられるべきではないか、そういった種々の観点から慎重に検討を要するものと考えております。

○三宅伸吾君

ありがとうございました。
ヘイトスピーチの対策関連法を含めても、その法律を作りました、しかし、最後一番大事なのは、その運用、それから執行、最後は司法救済でございますけれども、その司法救済の司法判断が無視されるようなことではそもそも良くないのではないかということでございます。
今おっしゃいましたその民事分野の日本の法体系の過去のいろいろ積み上げはあるというのはよく分かりますけれども、そんなことを言っておりましたら裁判員制度はできなかったということになりますし、ロースクールもできなかったということになります。それから、可視化法案もできなかった。それから、様々な司法改革、二十年間のこの議論の前と後とは、私は世界が本来であれば違うべきではなかろうかと思っております。
裁判所の権威をいかにして守るか。ちょっと言い過ぎかもしれませんけれども、二割司法とか日本社会の日陰、片隅で、司法はそれでいいんだと、余り出しゃばるなという世界であれば、私は、今法務省の方がおっしゃったような、これまでの体系の上でやっておればよかったということかもしれませんけれども、少しずつ世界が変わってきているように思いますので、また機会を見てこの点は議論をさせていただきたいと思います。
今日はありがとうございました。

190回 法務委員会(刑事訴訟法改正案)

2016-04-19 国会質問議事録

○矢倉克夫君

公明党の矢倉克夫です。
四人の参考人の先生方、貴重なお話、大変にありがとうございました。
主に可視化についてお伺いをしたいと思うんですが、私のこの問題に対しての基本認識をちょっと一言申し上げると、可視化は、その趣旨は、まずはやはり捜査の適正化だと思います。可視化をすることで捜査機関に心理的ないろんな要素等も与えて、やはり適正な捜査手続というものをしていくと。もう一方で、可視化した証拠、可視化することで供述証拠の任意性の立証が資すると。この二点があるんですけど、私の感覚としてもやはり前者の方を基調にしなければいけないと。供述調書の任意性立証のための可視化という位置付けはやはり良くないし、小池先生がおっしゃったとおりの、実質証拠としての頻発するというような事態になるという事態は良くないと思います。
その上で、この法案自体は、河津参考人がおっしゃったとおり、まさに第一歩として、今申し上げた捜査の適正化に資するための第一歩として非常に評価をするところであるし、他方で、今後、運用で捜査の適正化に資する形でしっかりと全面可視化ということをやっていかなければいけない、そのセットをもってやらなければいけないという理解であります。
その上で、ちょっとお伺いしたいのは、大澤参考人に三点ほどお伺いしたいんですが、先ほど小池参考人がおっしゃっていたところ、部分可視化というものの弊害というところは非常に重要なポイントでもあるかと思います。これを、どのようにこの弊害をなくしていくのかという部分の理解がやはり必要かなと思っておりまして、まず一点目ですけれども、先ほど小池参考人が弊害となる法律上の今回の改正法の根拠として、やはり例外事由のところであるというふうに挙げられていたと思います。具体的には、私の理解では被疑者の拒否の条項ですよね。拒否という明文のみならず、その他の被疑者の言動により、記録をすると被疑者が十分に供述できないと認めるときという文言があった。
先ほど、大澤参考人のお話だと、これは後に捜査機関の方でこの部分を立証するという、その立証の部分で担保できるからというお話だったんですが、この条文の解釈そのものもやはり拒否というものに準ずるようなものでなければいけないという解釈がやはりあるべきであると。明示に拒否したわけではなくて、録画はしてはいいけど、その代わり録画したら私はしゃべらないよとか、そういうようなことを言う被疑者の方もいたりとかする。
そういった録画によって結局捜査が進展しないというようなこともある場合に、どういうようなことなのかというような事情もやはりあると思うんですけど、まずお聞きしたいのが、その他の被疑者の言動により云々、これが裁量の余地がないようにやはり拒否というものと準ずるぐらいの厳格な定義であらなければならないというような解釈はあるべきだと思うんですけど、その辺り、どのようにお考えでしょうか。

○参考人(大澤裕君)

拒否を受けて、その他被疑者の言動とされているわけですから、それはやはり拒否に相当するようなということかと思います。
ただ、供述できないというのが、大事なことは、私は黙秘しますから供述しませんというのではなくて、やはり録音されているから供述したくてもできませんと、そういうふうに取れるような拒否なりあるいは言動だ、もう一つ、後ろの方からの掛かってくる部分もあるのかなというふうに思っております。

○矢倉克夫君

ありがとうございます。
じゃ、二点目、また済みません、大澤参考人に引き続きなんですが。
先ほどの小池参考人の御意見の中ですと、全面可視化というところでありますけど、結局、録画請求の場面では、やはり自白調書が作成されたとき、そこに関係するところだけ録画請求というような、要は裁量で一部分だけを表に出してきてというようなことがあるんじゃないかというようなお話もあったところであります。これについては改正法の中でどのように担保をされているか、その濫用のおそれをなくす担保をされているのか、あと運用上どういう工夫が考えられるのかという点について御意見賜れればと思います。

○参考人(大澤裕君)

自白の取調べが請求された場合に任意性が争われたというときには、その自白が獲得された取調べについて録音、録画の取調べ請求をせよということになっていますが、もちろん、任意性を疑う事由というのがその当該取調べよりも例えば前の取調べの中にある、そのように被疑者、被告人の側から主張をしていく、そういう場合というのは当然あるんだろうと思います。
その場合については当然そこが争点ということになってきますから、その点をきちっともし言っていって公判前整理手続ということになっていけば、恐らく争点関連証拠としてそこの部分の録音、録画というのが弁護人側に開示されるということにもなってくるでしょうし、また、それが弁護人の側で検討をして任意性を争う証拠として使えるということになれば、弁護人の側からそれを請求していくということもあり得るのかもしれません。
あるいは、ここの部分でこういう任意性を疑わせる事情がありましたと、当該取調べよりも前の部分にあって、それがずっと影響してきているんですということになれば、検察が、訴追側としては、そこにそういう本当に何か問題のある取調べがあったのかどうか、なかったのか、その点を立証する、あるいは、仮にあったとしても、それは当該取調べにはもはや影響していないんだということを立証するのか。それを立証していかなければいけないということになると思いますが、その際には、やはりその間の取調べの録音、録画というのは非常に有力な資料になるだろうと思います。
ですから、必要があれば検察側から取調べ請求をするということもあるでしょうし、先ほど申し上げましたように、はっきりと被告人側からその点に争いがあるんだということで公判前整理に持っていけば、それは証拠開示の対象にもなっていくんではないかというふうに認識しております。

○矢倉克夫君

今、弁護人の動きというものもお話あった。後ほど河津参考人にも、弁護人としてどのようにこの辺り実効性を確保していくのかということはちょっとお伺いしたいと思うんですが、ちょっともう一つ、大澤参考人に、済みません。
先ほど小池参考人がおっしゃっていた別件逮捕、これは対象事件じゃない、別件としては対象事件じゃないわけですけど、その別件の取調べのさなかに対象事件である余罪の取調べが開始をされる、このような事案があったわけですけど、今政府の答弁などでも、そのような別件逮捕中に余罪が、対象事件が取り調べられたときにもこれは録音、録画の対象になるというようなことはあったわけであります。ただ、どこからどこまでが切り分けが難しいかというようなお話があったというふうに理解しています。
先ほど大澤参考人、供述の中で録音・録画義務がない場合も任意性を立証させるためには録音、録画しないといけないという方針をお話をされていたんですけど、例えば今のような場合を想定すると、何といいましょうか、別件で取り調べている最中に対象事件の余罪が取り調べられるようになったというようなときに、そこから余罪を切り分けというのが難しければ、最初からそういうのを想定してできる限り幅広く録音、録画をしておくというような運用をすべきだというような意見もあると思うんですが、その辺りについてはどのようにお考えでありますでしょうか。

○参考人(大澤裕君)

もし捜査機関の側が初めから余罪を取り調べるつもりであったのだとすれば、それはやはり撮っておかなければいけないという方向になるんだろうと思います。
ただ、いきなりぽろっと出てきたとかいう場合については、ぽろっと出たものについて撮っておけというのはこれはなかなか難しいわけで、しかし、ぽろっと出たことについて更に今度はそこについて聞いていくということになれば、これは対象事件についての取調べだというふうに仕切っていかざるを得ないということでしょうから、一旦そこで止めて、もしそれについて更に聞くということならば録音、録画をしていくということになるんだろうと思います。
小池参考人が恐らく言われたようなケースというのは、余罪とそれから対象事件とがかなり密接に関連していて、実は余罪について質問していることが対象事件にも関わりを持ってくるような場合ということなのかもしれません。ここの部分はなかなか切り分けが確かに難しいということになりますけれども、結局どっちについて聞いているのかということで考えていくしかないということではないかと思います。

○矢倉克夫君

ありがとうございます。
では、河津参考人に、やはり法曹三者の中でどういうふうにこの適正化のための運用をしていくのかというところが大事だと思うんですが、とりわけ今の、先ほど小池参考人や桜井参考人の方からも部分可視化の危険というようなお話もあった。それは弁護人の立場から、どのようにそういうのがなくなるように実務を行っていくべきとお考えか、ちょっと御意見をいただければと思っております。

○参考人(河津博史君)

まず、やはり部分可視化が危険であり全面的な可視化がされるべきであるという点について、私もお二人と意見を同じくしております。
ただ、全面的な可視化がなされない、あるいは例外規定に当たるなどの理由で可視化されていない部分があるときにどのような弁護活動を行うのかということについて、私どもは専門家集団として検討しなければなりません。
具体的には、録音、録画された取調べの中に任意性を疑わせるような何か事情が記録されている場合には、私どもは当然、記録媒体について証拠開示請求をして開示を受け、その部分の証拠調べ請求をすることになるだろうと思います。
逆に、録音、録画されていない取調べにおいて任意性に疑問を生じさせるような言動等があった場合、例えば私どもは弁護人の接見記録であるとか、被疑者から受け取った手紙であるとか、あるいは被疑者ノートなどを活用して、そこで問題のある取調べがあったということを公判で立証していくことになるだろうと思います。
先ほど村木厚子さんの事件を御紹介しましたが、その事件の中では被疑者ノートというのが証人の供述の任意性、あるいは信用性の証拠として重要な役割を果たしました。

○矢倉克夫君

ありがとうございます。
桜井参考人にお伺いをしたいと思います。
先ほどのお話、やはり警察というものの潜在的な考えなければいけない点というのは、本当に胸に迫るようなところもあったと思います。これについて、職務として警察もやっている、ただ、それがなぜそういうような形になってしまうと思われるのか、率直に御意見がありましたら。

○参考人(桜井昌司君)

警察の側に立ってみますと、犯罪者ってうそつきなんですよね。私もちょっと昔悪いことをしたのでよく分かるんですけどね。そういう人を日常的に相手にしていると、多分真実を言う人の真実を見抜けなくなってしまうんじゃないかと思います。
警察官って人を信じませんよね。多分ここの表に立っている人も、誰か悪いことするやついないかって立っていますよね、あの連中は。いつもいつも人を疑う人格というのは、残念ながら、正義の思いを持って警察官になってもゆがんでしまうと、私これ確信を持っていますね。ですから、一人の警察官の正義感とか警察官の善意というのを疑うわけじゃないんです。あの方たちが組織に入ってしまったら、その組織に、論理にはまらなくちゃ生きていけないんですよ。
そして、多分、私これが一番大きな原因だと思うんですけど、あの方たちは逮捕したことをもって一〇〇%犯人と確信します、愛媛県警から流出したあの捜査規範でもお分かりになると思うんですけれども。その一〇〇%目の前の人間を犯人と思った場合が、この人を犯人にするのが社会正義、我々は正義を守る、だから多少の悪いことはしてもいい。社会の人も思いますよね、どうせ逮捕されたような人は何か悪いことをしているんだもん、少し厳しくしてもしようがないよと。私自身も実は逮捕されるまでそう思っていました。
ですから、警察という組織というのは残念ながらこういう違法行為を行ってしまう組織なんだと思うんですね、日常的な思いで。ですから、その部分に法律的なちゃんとした歯止めがない限り、こう解釈できる、ああ解釈できるというような法律では、多分この全面可視化とかいろんな部分で冤罪が防がれるような法律にはならないだろうなと思います。

○矢倉克夫君

濫用のおそれというのがないように運用していくというところがやはり非常に大事であるなというふうに改めて感じたわけですけど、最後、小池参考人と大澤参考人と河津参考人に、改めてこの可視化の部分について、それぞれのお立場はあると思うんですが、このような形でまずは一歩として法定義務化をしたということについての評価を一言ずついただければと思います。

○参考人(小池振一郎君) 先ほど大澤参考人が言われたことについてちょっと触れさせていただきたいと思うんですが、任意性立証のためにということで、録画されたよりもその前の録画を出すということでいいではないかという趣旨の御発言がありました。その前の録画を出すことによって、公判前整理手続の中で要求して、それを弁護側が出せばいいんだというお話がありました。もちろん、それはそうしなければならないと思うんですが、実は、しかしそれは録画があるという前提での話であって、録画がない場合はどうするんでしょうか。
先ほど愛媛県警の捜査マニュアルの話が出ましたけれども、この人が真犯人だと思えば、もう徹底的に気迫を持ってやれと、被疑者を弱らせるまでやれというのがその捜査マニュアルなんです。そういう場面、録画しませんよ。そういうときにどうするんですか。こんなのは公判前整理手続で録画出せと言ったって、ないものは出せませんよね。そういうときの対応ができなくなるというふうに思われます。
ということで、今回の法案はいろいろな抜け道、そういう場合にペナルティーがないわけですね、今のような場合に。全過程可視化していないから一つでも供述調書を出しちゃ駄目というのなら分かるんですが、そうでない限りは、この法案では欠陥があると言わざるを得ないと思います。

○参考人(大澤裕君)

今の点について一言だけ私も申し上げさせていただいてよろしいでしょうか。
仮に、そこの部分についてなかった、しかし被告人側からそこの部分にこういう問題があったというふうに言われたときに、そこが任意性立証の一つの争点となったとしますと、そこに正当な理由がないにもかかわらず録音、録画がないということは、これは多分訴追側にとってはかなり立証上大きなダメージになることではないかというふうに考えています。
その上で、今回の録音・録画制度ですけれども、先ほど来、特に警察の取調べが問題なんだということが御指摘がございました。
現在、運用あるいは試行という形で検察ではかなりの程度に録音、録画が行われつつあります。それに対して、警察の方はなかなかそこまで付いていっていないという状況です。そういう状況の中で、一定の限定された事件についてではありますけれども、原則全面的に録音、録画をする。そこにも、しかし、取調べが重要な証拠収集手段だからその機能を損ないたくないということで一定の例外がありますけれども、しかし、例外を残しつつも、一応原則としては全過程の録音、録画だ、それを警察についても導入することになっている、そこが一つこの法案の非常に重要な点であろうかと思います。私は、そういう点で一歩前進であろうというふうに思っているところです。

○参考人(河津博史君)

現在、六法を開いて刑事訴訟法の全ての条文を見ても、取調べの録音・録画義務というのはどこにも規定されていません。したがって、捜査機関が幾ら運用で録音、録画をしているといっても、彼らがある事件でしなくても、それは直ちに違法の評価を全く受けないということになります。しかしながら、今回の法律案が成立し、一定の限られた事件とはいえ録音・録画義務が刑事訴訟法の中に書き込まれれば、録音、録画をしないことは違法の評価を受けることになります。
しかも、今回の法律案では、対象事件については身柄事件に限定されていますけれども、全過程が原則という形で規定することになっています。これは恐らくほとんどの事件で多くの取調べが録音、録画の対象になるはずです。そうであるとすれば、それらの録音、録画されている取調べの中で不適正な行為が行われることは相当抑止できるはずです。そうであるとするならば、第一歩としてこの法律案を成立させることが重要であると私は考えております。

○矢倉克夫君

ありがとうございました。

【矢倉かつお】法務委員会_20160414

2016-04-14 矢倉かつおチャンネル

認知症高齢者の事故責任を明確に

2016-04-14 ニュース

公明新聞:2016年4月14日(木)付

米村東大准教授が党プロジェクトチームで講演

 

 

 

 

 

米村東大准教授が党プロジェクトチームで講演

公明党「認知症高齢者の支援と補償のあり方に関する検討プロジェクトチーム(PT)」(座長=佐藤茂樹衆院議員)は13日、参院議員会館で会合を開き、東京大学大学院の米村滋人准教授から、認知症高齢者による列車事故で、家族に損害賠償責任がないとした3月1日の最高裁判決に関する講演を聞いた。

米村准教授は、今後の課題として「認知症高齢者が関わる事件や事故で誰が責任を負うかという範囲を明確にすべき」と指摘した。

190回 法務委員会(刑事訴訟法改正案)

2016-04-14 国会質問議事録

○矢倉克夫君

こんにちは。
刑事訴訟法審議入りということで、先日、可視化の状況とまた通信傍受の関係、視察へ行きまして、様々示唆をいただいたわけであります。今日は時間の関係もあり、通信傍受の方をお伺いしようと思っております。質問の通告、ちょっと順序を変えまして、まずは通信傍受の必要性、最後の方に予定していたところからお伺いをしようと思っています。
質問に入る前に一言ですが、当然、刑事裁判の原則というのは、十人の真犯人を逃すとも一人の無辜を罰するなかれと、十人真犯人が仮に逃れたとしても一人の無罪の人を罰してはいけないというのがこれ大原則だと思うんですが、悩ましいのは、私も刑事訴訟法を考える上で一つ考えているところは、やっぱり立法府にいる限りはそれだけではいけないのかなと。当然一人の無実の人も罰してはいけないわけなんですが、やはり国民に対しての安心、安全を守るという意味合いでは両方、人権保障と真実発見、これをやらなければいけないと。要するに、十人の真犯人を決して逃すこともなく一人の無罪の人も決して罰しないと、両方やらなきゃいけないというのはやはり悩ましい、難しいところであるなと。そういう制度設計をどうすればいいのかというところが課された課題であると思っています。
今回の刑事訴訟法についてですが、まず無罪の方を、無実の方を罰しないということのためには何が課題だったかといえば、やはり供述調書の過度な依存、これが自白強要、先ほど人質司法といいますか、そういうお言葉もあったわけですが、そういうようなものを排除するために今回可視化をやった。ここが第一の起点であって、他方で、それをやることで、従来は首謀者の人とかを検挙するにはやはり取調べしかなかったという経緯があってそういう取調べの過酷さが出たわけですけれども、今回それを可視化することで、他方で、取調べに依存していた部分を今度は合意制度という形で対応もし、また様々な事情に応じた通信傍受の拡大というところもやり、真実発見というところもしっかりと担保もする。手続的な適正は弁護人が様々な国選弁護についても関与する対象を広げるという意味合いでは、全体として見れば、冒頭申し上げた真実発見と人権保障というところを両方しっかりやっていくという、パッケージとしては非常にバランスの取れた法制になっているのではないかなというふうに私は個人的には理解をしているところであります。
以上申し上げた上で、冒頭申し上げたとおり、まず警察の方にお伺いをしたいんですが、今回の通信傍受、この必要性、とりわけ、従来対象犯罪は四種に、薬物、銃器、集団密航、組織的犯罪にこれ限定していたわけですけれども、今回これを拡大するというところになると思います。
私も、この四個に限定をしていた経緯部分、当然様々いろんな御意見がある中で、その当時にやはりとりわけ必要性を感じられたものに限定をしていたという経緯はあるというふうに認識しています。集団密航などもまさにそうであったと思いますが、ただ他方で、そうであれば、時代の流れに応じてこの必要性というものが更に広がっていけば、それに応じた考えも広がっていくというところは理解もできるところである。
それを前提にした上で、今回は特におれおれ詐欺、特殊詐欺を一つ、そして暴力団であったりあとテロ組織による組織犯罪を二つ目、最後、児童ポルノ、これが念頭にあるというふうに理解をしておりますが、それぞれについて拡大をした理由、その妥当性についてどのようにお考えか、警察庁、答弁をいただきたいと思います。

○政府参考人(三浦正充君)

まず、組織的な犯罪一般ということで申し上げますと、組織的な犯罪におきましては、その準備及び実行が密行的に行われまして、犯行後にも証拠を隠滅したり実行犯を逃亡させたりするといった工作が組織的に行われることも少なくなく、それらを実行するための手段としてしばしば携帯電話等の通信手段が悪用されております。また、末端被疑者を検挙しても、組織による報復等を恐れて、組織実態や上位者の関与の状況について供述を得ることは容易ではなく、通常の捜査手法によっては犯行の全容解明や真に摘発すべき犯罪組織中枢の検挙が困難であるといった捜査の実情がございます。
例えば、特殊詐欺につきましては、首魁や中核メンバーの下で掛け子、受け子等の複雑な構造の犯行グループにより組織的に敢行をされているわけでありますが、掛け子、受け子といった末端被疑者についてはある程度の数検挙できるわけでありますけれども、なかなかその上位の者、特に首魁、中核メンバーといったところの検挙がなかなか難しいというのが現状であり、それが、なかなか被害の拡大が収まらないという、そういう原因になっているというように認識をしております。
また、殺傷犯関係で申しますと、取調べにおいて自己や組織の上位者の関与について否認をすることが多いということでありますし、また、児童ポルノにつきましては、海外のサーバーに販売サイトを持つ、頻繁にアドレスの変更を行うなど被疑者らの特定や追跡が困難であるという事情がございます。
また、連続爆破テロのテロリストグループが更なる犯行を予告している場合や、テロに関連する爆発物原材料の組織窃盗を認知した場合等において通信傍受を捜査に活用することも想定をされるところでありますが、テロ組織につきましても、組織による報復のおそれ、あるいは組織的な隠蔽工作を行うために供述や情報を得にくいという実情がございます。
こうした理由から、通常の捜査手法だけでは犯罪組織中枢の検挙が困難であるという捜査の現状がございまして、通信傍受の対象犯罪をこうした犯罪類型にも拡大をしてその全容解明に資する証拠の収集を可能とする必要があると、このように考えているところでございます。

○矢倉克夫君

高齢化とともにいろんな、振り込め、おれおれ詐欺で被害に遭われた方も増えている。テロの世界的な脅威というのもありますし、また通信技術高度化で児童ポルノの問題もある。それぞれ御説明があったと思います。
今、一つ、上層部に対しての捜査というところがありました。他方で、携帯電話等を使うのは、まさに上層部の人が使うわけではなく、最末端でもないにしても、それよりもちょっと上ぐらいの人がというような部分もある。上層部に果たして検挙できるのかというようなところもあります。
警察庁にお伺いしますが、今までの通信傍受でどのような形で上の方にまでしっかりと捜査が行ったのか、過去に例があればお伝えいただければと思います。

○政府参考人(三浦正充君)

通信傍受の施行から平成二十七年までの間に、通信傍受を実施した事件に関して逮捕した人員数は計六百四十人でございます。その中で、これは網羅的に把握をしているものではございませんけれども、平成二十五年から二十七年までに警察が通信傍受を実施した事件に関して二十六年及び二十七年中に逮捕した人員数は二百十八名であったところ、そのうち、暴力団の幹部に当たるとして都道府県警察から報告を受けた者は三十名でありまして、通信傍受が暴力団等の犯罪組織中枢の検挙や組織の実態解明に一定の効果を上げていると考えております。
ちなみに、この逮捕人員数に占める暴力団幹部の割合は約一四%でありますが、刑法犯における暴力団員等被疑者検挙人員のうち幹部の占める割合の過去三年の平均が約八%でございますので、こうしたものと比べても、通信傍受によって幹部を比較的多く検挙できているという実績がございます。
あと、若干の事案で申し上げますと、この通信傍受を行った事案については、公判や捜査への支障等もございますのでなかなか具体的に申し上げることは難しいのでありますけれども、少し概略的に申しますと、例えば暴力団による薬物密売事案におきまして、組織的に複数件にわたって薬物密売を繰り返している実態を解明をするなどし、組長を始め配下の構成員等計二十六名の逮捕に至ったものを始めとして、大掛かりな薬物密売事案におきまして、組長を始めとする多くの構成員を逮捕した事例などがあるところでございます。

○矢倉克夫君

今、データと一般的な例を挙げて御説明いただきました。
他方で、もう既に議論もあるとおり、やはり通信傍受、一番の問題はプライバシーの問題、これ憲法上の問題でもあると思います。これについてはどのように担保をされていらっしゃるのか。無関係な会話等も混入しないような、不必要なところで通信傍受はしないようなというところでありますが、制度を設計されている法務省にお伺いもいたしますが、こちらについては、まず補充性という要件が一般的に課されております。これは従来もある要件ですけど、他の方法では著しく困難な場合でのみこのような手法が許されるというところですが、どのように認定をされるものであるのか、答弁いただければと思います。

○政府参考人(林眞琴君)

現行では、この補充性というものは、他の方法によっては、犯人を特定し、又は犯行の状況若しくは内容を明らかにすることが著しく困難であると、こういった場合に限り傍受をすることができるとされておるものでございます。
〔委員長退席、理事西田昌司君着席〕
この場合の他の方法によってはという部分でございますけれども、これは、犯人を特定したり犯行の状況若しくは内容を明らかにすることが著しく困難という場合に、その傍受令状請求の時点までにこの事案に応じて可能な限り取調べあるいは捜索、差押え、各種の照会、こういった捜査手段を尽くしてその捜査を行ってきたけれども、なおこの犯人を特定し、又は犯行の状況若しくは内容を明らかにするに至っていないと、そして、今後も通信傍受以外の手段によってはこういった犯人を特定したりすることができない、またあるいはそれが著しく困難であると、こういった場合をいうことになります。
この要件を満たすかについてどのように判断するかにつきましては、やはりそれまでにどのような捜査手法で具体的にどのような証拠が収集されどのような事実までが明らかになっているか、こういったことを踏まえまして、さらに、欠けている、それまで明らかになっていない部分というものを考えまして、それらを裁判所に対して具体的な事情に即して疎明資料で疎明をすることによって初めてこの補充性が満たされるかどうかが認定されるということになります。

○矢倉克夫君

今、どのように認定をするか、これまでどういうような証拠で認定をされたかとか、そういう情報の蓄積とか、そういう部分を前提にした上で、やはり内部でもしっかりこれは指導を徹底しなければいけない話であると思います。その辺りは今日は質問するわけではありませんが、別途、引き続きしっかりと体制を組んでいただきたいというふうに思います。
もう一つ要件として今回新たに加えられたのが、これは組織性の要件であります。これについては、あらかじめ定められた役割の分担に従って行動する人の結合体でなければいけないという要件にこれはなっている。これは法務省にまたお伺いしますが、なぜこれが必要であるのか、この認定はいかに図るのかを答弁いただければと思います。

○政府参考人(林眞琴君)

まず、この組織性の要件を改めて付け加えた部分につきましては、これはやはり通信傍受というものにつきまして、これが組織犯罪における対応をすると、そういった法の趣旨を全うするためにこのようなものを付け加えているわけでございます。
〔理事西田昌司君退席、委員長着席〕
その上で、当該罪に当たる行為があらかじめ定められた役割の分担に従って行動する人の結合体により行われるものということの意義でございますけれども、まず一つには、その対象犯罪が人の結合体、すなわち二人以上の者が結合して形成された集団により行われるものであること、そして次に、人の結合体を構成する者が、犯罪の実行に限らず、その準備や証拠隠滅等の事後措置も含めまして犯罪の遂行に向けて必要となる役割を分担し、またそれに従って行動すること、さらには、その役割分担があらかじめ定められたものであること、こういった三つの要件が必要となるものと考えております。

○矢倉克夫君

今のに関連してもう一つだけ林局長にお伺いしますが、例えば、今回、暴力団、テロ、そちらについての組織犯罪も入ったわけですけど、特に最近のテロ組織とかは、昔アルカイダなどは中央の指令があってそこから組織的に指令をするという、そういう縦の組織というのがしっかりしていたわけなんですけど、この前のベルギーの件なども、よく巷間言われているところでは、テロが起きたわけですけど、やはり現地ですよね。最近のテロ組織というのも思想を媒体にした緩やかな連合体みたいな形になっていて、やはりもう、ホームグローンと言われているんですけど、現地でその思想の感化された組織が動かしたと。後で犯行声明があったわけですけど、後付けのような犯行声明だったというふうに言われている。要するに、中央からの指揮命令系統というのがしっかりしていない中での連合体のようなものがあるわけですけど、そういうようなものが今の組織体という要件の中ではどのように評価をされるのか、これ一般論で結構ですけど、御答弁をいただければと思います。

○政府参考人(林眞琴君)

先ほど申し上げました組織性の要件の中で、まず一つ、通常、組織の場合の上下における指揮関係、指揮監督関係があるかどうか、こういったことについては今回のこの組織性の要件の中には含まれておりません。したがいまして、上下での指揮監督関係がなくても、先ほど申し上げた三つの要件の組織性の要件を満たせばこの要件に該当するということでございます。
また、組織ということで、継続的な結合体であることまでは要しておりません。したがいまして、例えば構成員の一部の変更が集団の同一性に影響を及ぼさないという意味での継続性までは不要と考えております。そういった意味におきまして、臨時的に形成される結合体ということでも、この今回の組織性の要件は満たすということになります。

○矢倉克夫君

現実の部分もそうですし、あと、今言ったような形の解釈であると思います。他方で、広がり過ぎないような形で、これは傍受令状に対しての疎明の在り方とか、そういう部分でしっかり指導をしていくというところであると思いますので、是非よろしくお願いいたします。テロの問題に対処するという意味合いでの必要性はあるというふうに私も理解もしております。
じゃ、次に、質問に移りたいと思います。これもまた法務省の方にお伺いもしたいと思うんですが、通信傍受手続の合理化についてになります。
冒頭申し上げましたとおり、全体の中で人権保障と真実発見というのをこれは確保する上での位置付けとして、通信傍受というのはこれ非常に必要であると思います。時代の状況に応じて必要性の部分があるので、当然濫用を避けなければ、やらなければいけない話なんですが、今まで通信傍受が、じゃ、どれくらい行われていたかというと、これ平成二十五年では実施事件は十二件という、諸外国に比べればやはり少なかったということがあります。
これはどういう背景かといえば、法制度上できなかったというよりは、法制でできた部分もあるけど、実際、現実なかなかできなかったというところがある。それは、なかなか立会人の方の負担であるとか、やはりそういうようなものもあったのではないかと、事実上の制約というところでありますね。そういう、現行が、今行っている通信傍受手続から生じた事実上の制約というものをどのように今回捉えられて、改正法によってどういうふうに対応されているのか、説明をいただければと思います。

○政府参考人(林眞琴君)

御指摘の現行法の運用上の問題点等につきましては、まず一つとしましては、現行法では通信傍受を実施する間は例外なく通信事業者が常時立ち会うということが必要とされておりまして、傍受の実施場所や立会人をする職員等の確保が一つには通信事業者の大きな負担となっている点がございます。また、傍受の実施場所や立会人の確保等のために、傍受を行う数週間前から捜査機関と通信事業者とで協議をする必要がございます。これが一つには通信傍受を迅速に行うことの上での障害ともなっている実情がございます。さらには、捜査員や立会人は、実際に立ち会いますと、実際に通話が行われるまでの著しく長い時間を多くは待機、電話が掛かってくる間の待機のために費やすと、こういった極めて非効率的な事情が生じているわけでございます。
そこで、今回は通信傍受法施行後の通信暗号技術の発展を踏まえまして、この手続の点で合理化、効率化を図るということを考えたものでございまして、これが実際に、一つには一時的な保存を命じて行う通信傍受という一つの方式でございますし、さらには特定電子計算機を使う場合におきましては、通信事業者の施設ではなくて捜査機関の施設においても、これを一つにはリアルタイムで特定電子計算機を用いて行う通信傍受、あるいは同じく特定電子計算機を用いて一時的保存を行いつつ行う通信傍受、こういった形で、現行も合わせますと四つの手法で行うことができるようにすることにしまして、この手続合理化あるいは効率化を図ることとしているものでございます。

○矢倉克夫君

今四つのというふうにおっしゃいました。一つが現行で、残りは、一つは一時的保存方式、残り二つはいわゆる特定装置を用いるものでありますが、特定装置を用いるリアルタイムの方式と一時的保存方式であると思います。ただ、他方で、現行はリアルに、まさにずっと立会人が常駐をしているということがあった、今回それが外れたというのはやはり一つ大きな変わり方であると思います。
また法務省、局長にお伺いもしたいんですが、この現行方式における適正化担保の手法の最たるものは、これは立会人であります。様々立会人が果たされた役割、これからも果たしていく役割はあると思うんですが、その役割について御説明いただければと思います。

○政府参考人(林眞琴君)

現行の通信傍受法におきまして、この立会人の役割でございますが、具体的に申し上げますと、一つは、傍受のための機器に接続する通信手段がこの傍受令状により許可されたものに間違いがないか、これを確認すること、二つ目には、許可されている期間、傍受令状で許可されている期間というものが実際に守られているのかどうか、三つ目には、該当性判断のための傍受が適正な方法で行われているかどうか、四つ目が、傍受をした通信等について全て録音等の記録がなされているかどうか、こういった四つの事項につきましてチェックするということがまずございます。それから、さらには、傍受の中断又は終了の際に裁判官に提出されることになります傍受をした通信を記録した記録媒体につきまして、改変を防止するために封印を行うこと、これが役割とされております。
以上の役割を果たすことによって、通信傍受の実施についてその適正を確保することとされております。

○矢倉克夫君

今、封印とともに、現場の傍受の適正化を立会人がまさに五感をもって図るというようなお話であったと思います。
とりわけ、いわゆるスポット傍受と言われているものであります。これもまた局長にお伺いもしますが、この前視察に行って現場見させていただいた。捜査官がヘッドホンで聞かれるわけですけど、捜査官が聞かれているところで立会人が近くでこれを見ているわけですけど、やはり現状、距離が離れている中において、本当にスポットで傍受をしているのかというところは果たしてすぐに見えるのかどうかというところは一つ多くの方が思われるところだと思うんですが、このスポット傍受をそういう形で外形的にチェックをしているということですけど、これ実際、本当に何をしているのか分からないというような確認できないような状態で、どのようにその適正化担保の手法を立会人の方が果たされているのか、その辺りについて御説明いただければと思います。

○政府参考人(林眞琴君)

現行の通信傍受法の下で、立会人は外形的にいわゆるスポット傍受、これは具体的にはその機器のスイッチのオン、オフをしているかどうか、こういったことをチェックしているわけでございますけれども、御指摘のとおり、仮に捜査官が傍受機器のスイッチのオン、オフを行っていないことをこの立会人が認識してそのことを指摘することができるという場合があるにしましても、実際に必要最小限で該当性の判断をするという、そのいわゆるスポット傍受が適正に行われているのかどうかということにつきましては、最終的にはこれは通信の内容を踏まえなければ判断できないわけでございます。
したがいまして、現行通信傍受法のやはりこの該当性判断のための傍受の適正というものは、基本的には傍受をした通信はこれは全て傍受の原記録に記録されて、それが裁判所にそのまま提出されて保管される、そのことを通じて事後検証が可能になるということによって初めて担保されているものと考えております。

○矢倉克夫君

まさに、その場ですぐに、例えば傍受の内容がどういうものかとか立会人も聞けるわけではありませんので、すぐになかなか判断できない、最終的には事後チェックだというような部分もあったかと思います。
それも後ほど、その事後チェックの辺りはまた後ほどお伺いもするといたしまして、他方で、また、そのような形での事後チェックの運用というのはしっかりこれ確保しなければいけないんですが、もう一つ、立会人の方がいらっしゃることによる効果というものでよく言われるのは、やはりその場に人がいるということが現場の捜査官に心理上の抑止、事実上の抑止になると。法的にいろいろと事後的にチェックをするという部分での抑止もあるんですが、そこに人がいるということで捜査官の心理にも働きかけて適正な傍受をするという事実上の抑止があるというような話もありますが、これについて、これも含めまして、立会人の今回果たした役割というのはどのように代替されるとお考えであるのか、これ局長にお伺いをしたいと思います。

○政府参考人(林眞琴君)

これまでの立会人の役割というものが、今回、特に特定電子計算機を用いる通信傍受の実施手続においてどのように代替されていくのかということでございますけれども、これにつきましては、まずは一つは、この特定電子計算機を用いる通信傍受の実施手続におきますと、通信事業者が傍受令状により許可された通信手段を用いた通信を、その令状で許可された期間に即して特定電子計算機へ伝送するということとされております。これによりまして、先ほど申し上げました立会人の役割のうち、傍受のための機器に接続する通信手段が傍受令状により許可されたものに間違いないかどうか、あるいは許可された期間が守られているかどうか、こういった点の適正はこれによって担保されると考えております。
また、現行通信傍受法におきまして、立会人が傍受をした通信等について全て録音等の記録がなされているかをチェックして裁判官に提出する記録媒体の封印を行うという、この役割につきましては、特定電子計算機で、法律で定めた仕様によりまして、傍受をした通信の全てとその傍受の経過を含めて、これが自動的に、かつ改変できないように暗号化されて記録される、こういったことによって担保されると考えております。
さらに、先ほど申し上げました、立会人は外形的な形で、実際にスポット傍受のための機器のスイッチのオン、オフを行っているかどうかということを外形的にチェックしているわけでございますが、この点につきましては、この特定電子計算機を用いる通信傍受の実施の手続におきまして、その該当性判断のために傍受したものも含めて、傍受をした通信が全て改変できない形で自動的に記録媒体に記録されて裁判官に提出される、それによって事後的に検証され得るということが確保されますので、立会人がいる場合と同様にその傍受の実施の適正が確保されるものと考えておりまして、こういった形で、立会人がいなくても通信傍受の適正を担保できる手当ては、この現行通信傍受法との比較におきまして手当てはなされていると考えております。

○矢倉克夫君

原記録のチェック、事後的チェックということですが、またこれ局長にお伺いしますけど、それを手続的に機会としてどのように確保されているのか、それも御答弁いただければと思います。

○政府参考人(林眞琴君)

裁判官が保管する原記録の事後的な検証でございますが、幾つかの場面がございます。
まず一つは、職権による審査という場合がございます。通信傍受法におきましては、他の犯罪の実行を内容とする通信の傍受が行われた場合、傍受の実施状況を記載した書面の提出を受けた裁判官は、職権で当該書面に記載された通信が現行通信傍受法の十四条に規定する通信に該当するかどうかの審査を行うこととしております。その際には、提出されております傍受の原記録などが用いられるということになります。
続きまして、通信当事者等による審査の場合がございます。これは、傍受をされた通信の当事者は、裁判官に提出された傍受の原記録を聴取、閲覧し、あるいは複製を作成して、この原記録から捜査官が不適正な傍受を行っていないかどうかをチェックすることができるわけでございます。
さらには、不服申立てに基づく審査がございます。検察官若しくは検察事務官又は司法警察職員がした通信の傍受に関する処分に不服がある場合、その者は裁判所にその処分の取消し又は変更を請求することができまして、その際、当該裁判所におきましては、提出された傍受の原記録を用いるなどして通信の傍受の適正か否かを審査することとなります。
さらには、公判手続を通じた審査がございます。これは、検察官が傍受記録の内容を公判手続において証拠として用いようとする際には、その事件の被告人やその弁護人は傍受記録の正確性の確認などのために傍受の原記録の聴取等をすることができ、その際、不適正な傍受が行われていなかったかどうかがチェックされ得ることとなります。そして、公判手続におきましては、傍受の過程に重大な違法があった場合には、違法収集証拠と判断されて傍受記録を証拠とすることができないこととなり得るわけでございます。
こういったことで、現行通信傍受法におきましては、各場面におきまして傍受が適正に行われたか否かを提供されている傍受の原記録を用いるなどして事後的に審査する手続を整備しているところでございます。

○矢倉克夫君

最終的には証拠の扱いとしてもチェックがあるということでありますが、一つ挙げていただいた不服申立ての件数です。これ最高裁にお伺いしたいと思うんですけれども、件数といいますか、不服申立てについてどのような件数があるのか、お答えいただければと思います。

○最高裁判所長官代理者(平木正洋君)

お答え申し上げます。
平成二十四年一月一日から平成二十八年三月十五日までの期間における通信傍受法二十六条に基づく不服申立ての件数を調査しましたところ、平成二十四年がゼロ件、平成二十五年が二百五十六件、平成二十六年が三件、平成二十七年及び平成二十八年がいずれもゼロ件となっております。

○矢倉克夫君

今、ゼロであったり二百五十六であったりかなり変動が、二百五十六件ですね、ゼロであったり、かなり変動があるというところであります。
いろんな要因があると思うんですが、今回、これも踏まえた上で衆議院の方でも修正があったかと思いますが、特に通信傍受に関しての当事者に通知すべき事項を加えたということであります。この趣旨をまた法務省の方から御説明いただきたいと思います。

○政府参考人(林眞琴君)

現行通信傍受法及び今回の最初の政府案におきましては、この通信の当事者に対する通知の際に、傍受記録の閲覧、聴取等をすることができる旨を通知することとはしておりません。これに対しまして、今般の修正におきまして、通信当事者に対する通知を行う際には、傍受記録の聴取、閲覧等ができること、傍受の原記録の聴取、閲覧等もできること、また不服申立てができること、こういったことを併せて通知することとしたものと理解しております。
この修正は、傍受の実施の適正を一層確保するという観点からのものであると理解しておりまして、捜査機関としては、当然のことながらこの規定に従いまして通信当事者に対する通知を適切に行うことになるものと承知しております。

○矢倉克夫君

事後チェックがやはり必要である、そのための手続、担保のための手続であるというふうに、妥当な修正であるというふうに思います。
今回、特に通信傍受の手続の合理化でこれ一番変わるのは、従来であれば通信事業者の施設のみだったのが、これ捜査機関の方の施設でも行えるというところが変わりであると思います。四六時中、捜査員がほかの人がいない中で作業をするというところです。
これを受けて、警察庁にお伺いしたいんですけれども、警察庁としても、通信傍受の開始前、実施期間中、そして終了の各段階における必要に応じた必要な指導を行うということを各種答弁でおっしゃっているんですけれども、それ具体的にまた改めて御説明いただきたいと思います。

○政府参考人(三浦正充君)

まず、前提として申し上げておきたいと思いますのは、警察施設で通信傍受を行う場合でありましても、全ての傍受結果を機械的かつ確実に暗号化処理をして記録するなどの特定電子計算機の有する機能によりまして現行法で立会人が果たす役割は漏れなく代替をされることから、傍受の適正性は確実に担保をされるというふうに考えております。
もっとも、新たな方式による通信傍受におきましては技術的に高度な機器を使用することなどから、その適正かつ効果的な実施を担保するため、専門的知見を有する職員が必要な指導を行う体制を整えるということを検討をしております。体制や指導方法を含む具体的な運用の在り方につきましては今後検討をしてまいりたいと考えておりますけれども、例えば、警察本部の適正捜査の指導を担当する警察官等で通信傍受を実施する事件の捜査に従事していない者、その事件を直接担当していない者に、必要に応じて、傍受の実施の現場等において法令、手続面の指導や機器の設定、接続等技術面の指導を行わせることなどを想定をしているところでございます。

○矢倉克夫君

内部での監視監督体制徹底という部分もそうですし、また、いろんな第三者からもしっかりとチェックを受けるような体制というのもやはりちゃんと取っていただきたいと思います。
その上で、次、特定電子計算機と言われているものに関連してちょっと御質問をしたいと思うんですが、先ほど通信傍受の手続の合理化で四種挙げていただいたうち、一つは現行、もう一つは一時的保存方式ですが、もう一つはその特定電子計算機、これ二つあります、それを利用したものであると。特徴としては、通信事業者の施設で傍受をされたものをこれ暗号化して、それを捜査機関の方に送るという形になります。
通信データをこれ送信して捜査機関の施設で傍受できるわけですけれども、これは警察庁の方にお伺いをいたしますが、送信時に通信が漏れないようにするにはこれはどのように工夫されているのか、工夫される予定であるのか、御答弁いただければと思います。

○政府参考人(三浦正充君)

警察におきましては、個人情報を始め多くの機密情報を保有をしておりますけれども、それらを取り扱う業務に用いるネットワークはそもそもインターネットとは接続をしておりません。したがいまして、近時大きな問題となっている標的型メール等のセキュリティーリスクとは遮断をされております。
新たな方式による通信傍受では、いわゆる閉域網というものを用いまして、ネットワークのインターネットからの分離等、これらの措置を講じることに加えまして、送受信される通信傍受に係る情報それ自体にも強固な暗号化を行うこととなっておりまして、セキュリティーについては万全を期しているところでございます。
なお、こういった方式につきましては、その安全性について、先日御視察をいただきましたように、IT技術を専門とする民間コンサルティング会社であるデロイトトーマツコンサルティング合同会社に調査研究を委託して確認を求めましたところ、情報漏えい対策の観点についても技術的に実現可能であり、これによる対策を漏れなく取ることによって通信傍受の適正性の担保が可能と結論付けられたものと承知をいたしております。

○矢倉克夫君

ありがとうございます。
法務省にまたお伺いしたいと思うんですけれども、やはり現場でいろいろと改ざんされるおそれもある部分はある、人がやることでありますので。それをどう制度的に担保するかというところですが、今回それを特定電子計算機の機能の部分でいろいろ担保されているという制度設計であると思います。法務省として、改ざんの危険性に対して今回の機能がどのように適正化を図るとお考えであるのか、御答弁いただければと思います。

○政府参考人(林眞琴君)

先ほど来申し上げましたように、傍受の適正を最終的に担保するものが、この原記録がそのまま、傍受した内容が全て原記録に記録されて、それが裁判官に提出される、そして保管されると、これが非常に最終的な担保でございますので、その間での原記録の改ざん防止というのは非常に重要な点でございます。
この点につきましては、現行法では立会人が封印をするというような形でこれを担保しているわけでございますが、それに代わるものといたしまして、今回法律案の中に特定電子計算機が備えるべき機能というものを法律で定めることとした上で、これによりまして、傍受した通信の内容と傍受の経過、こういったものを併せて記録媒体に自動的に記録する、そしてそれが即時に裁判所の職員が作成する暗号によって暗号化されて、その後、捜査機関がその改変を不可能とする機能、こういったものを法律に定めまして、こういった法律の定める機能を持つ特定電子計算機によって傍受を実施することによりまして改ざん、改変というものを防止するということとしておるところでございます。

○矢倉克夫君

警察庁にお伺いしますが、先ほど三宅理事の質問の中で、事後チェックがやはり大事である、であれば直接に裁判所の方に原記録をというような質問であったと理解もしておりますが、それに対して法務省の方からの答弁が、やはり今とかぶる部分は、自動的に暗号化しているから大丈夫であると、要するに機械が改ざんを許さないような形で設計されているから必要はないというような答弁であったと思います。
他方で、今回もう傍受が捜査機関の施設の中で行われている以上、理論的には、信頼性がある機械であってもそれを改造する可能性も当然ある、幾ら技術的、機能的に適正化を担保しても、その機械自体が改造されて機能を無力化するようなことが仮にあったとしたら問題であると思うんですけれども、それに対しては警察はどのようにお考えでしょうか。

○政府参考人(三浦正充君)

特定電子計算機の機能は通信傍受法改正法の第二十三条第二項に列挙されているわけでありまして、これは法定の要件ということでございます。
したがいまして、実際に通信傍受に使用する特定電子計算機にはそれ自体にも強固なプログラムの改変防止措置が講じられるわけではございますが、このほか、裁判所も関与する暗号システムなどとも連動をするものでございまして、したがって、警察において装置の改変やすり替えを行うといった余地はないというように考えております。また、よしんばそうしたことが行われたとしても、通信事業者との正常な暗号の送受信等ができなくなるわけでありまして、通信の傍受自体を行うことができない仕組みとなっております。
そうしたことで、そうした改ざん、機械の改変ということは物理的にも行われ得ないものというように考えております。

○矢倉克夫君

また警察にお伺いしますけれども、実際の機械が正常な機械であるかどうかというところ、これを裁判所が判断するには、警察としては裁判所の判断の前提としてどのようなことをされるのでしょうか。

○政府参考人(三浦正充君)

警察庁としましては、信頼できるメーカーにその機器の製造を発注をするとともに、仕様書どおりに当該機器が製造され、必要なセキュリティーシステムも導入をされていることなどについてメーカーから証明書を発行してもらうことを検討をしております。
通信傍受を実施する場合には、捜査機関は裁判所に対し、通信傍受に使用する特定電子計算機等の技術的な事項を含め、裁判官が新たな傍受の方法を許可するのが相当であると判断するに足りる資料を提供することが求められているところ、メーカーから発行された証明書などを用いてこれを説明することを想定をしております。
機器の適正性について、説明を受けた裁判官におきまして、当該機器の信用性、適正性について御判断をいただくこととなると考えております。

○矢倉克夫君

ちょっと最後の質問になりますけれども、通信事業者の負担についてであります。
法務省にお伺いしますけれども、今回、対象事件が拡大することによって負担も当然増える一方で、常時立会いの必要がなくなるわけであります。その部分では負担は減少するわけですけど、総じて事業者の負担というのをどのようにお考えになっていらっしゃるか、答弁いただければ。

○政府参考人(林眞琴君)

まず、今回の新方式の導入によりましては、特定電子計算機を用いる場合におきまして、現行法で必要とされている常時立会いというものが不要になりますので、その立会人となる職員の負担、あるいは立ち会わせる職員を確保する通信事業者の負担、あるいは傍受の実施場所を提供する通信事業者等の負担というものがなくなるものと考えております。
また、一時的保存というものを命じて行う通信傍受の実施手続におきましては、立会いの時間というものが、その待機時間が省かれますので大幅に短縮されることになりまして、こういった面での人員面等での負担は大きく軽減されるものと思います。
他方で、一方で、あわせて、対象事件が拡大するということに伴う負担がどのように増加するかということにつきましては、やはりこの点につきましては、対象事件の発生件数については様々な事情に左右されますので、それについて一概に確たることを申し上げることは困難であると承知しております。

○矢倉克夫君

最後、警察庁に。
今、制度としての事業者に対しての負担をどう考えるかというところありましたが、例えば具体的には、今回、特定装置を用いた方式もある、そうすると送信装置などいろんな設備的な投資の部分も出てくるわけですけど、このような設備負担について警察庁としては事業者負担をどのようにお考えか、最後、答弁いただいて、質問を終わりたいと思います。

○政府参考人(三浦正充君)

特定電子計算機を用いる通信傍受を実施するためには、裁判所が用いる鍵の作成装置でありますとか捜査機関が用いる特定電子計算機のほか、通信事業者が通信の暗号化や伝送に用いる機器や伝送のための回線等のシステム整備が必要になります。
これらの整備すべきシステムの中には、これはもとより国で負担、整備をすべきものもございますし、また通信事業者に一定程度の負担をお願いせざるを得ないものもあると考えておりますけれども、通信事業者にお願いをする場合には、その負担が過度なものとならないように配慮をいたしまして、事業者との十分な協議、調整を行ってまいりたいと考えております。

○矢倉克夫君

終わります。

認知行動療法が有効

2016-04-13 ニュース

公明新聞:2016年4月13日(水)付

東本特任助教から話を聞く党PT=12日参院議員会館

東本特任助教(左手前から4人目)から話を聞く党PT=12日 参院議員会館

党再犯防止PT
性犯罪対策で意見交換

公明党再犯防止対策強化プロジェクトチーム(PT、遠山清彦座長=衆院議員)は12日、参院議員会館で性犯罪者の再犯防止に向けた取り組みの実情と課題について、千葉大学社会精神保健教育研究センターの東本愛香特任助教から話を聞き、意見交換した。

性犯罪者の再犯防止に向けた取り組みについて東本特任助教は、刑事施設で実施されている、犯罪傾向の強い考え方や行動の改善を図る認知行動療法に基づいた再犯防止プログラムに言及。「再犯防止に効果が出ている」と指摘した。

一方、東本特任助教は、課題として、プログラム実施者の育成や、性犯罪傾向の強い人が早い段階でプログラムを受けるための仕組みづくりなどを挙げた。

【矢倉かつお】法務委員会_20160405

2016-04-05 矢倉かつおチャンネル

190回 法務委員会(差別撤廃法案)

2016-04-05 国会質問議事録

○矢倉克夫君

公明党の矢倉克夫です。よろしくお願いいたします。
昨月の三十一日、私も法務委員会の理事として、川崎の桜本地区、視察に行かせていただきました。現地で様々なお声を聞いて、これは本当に解決しなければいけない問題だということを改めて痛感もした次第であります。
今、有田理事からも、与党と一緒にという話もありました。これ、与野党でしっかりと、こういうことは絶対許せないんだというメッセージをしっかりと発する、そのような合意を作っていかなければいけないというふうに改めて決意をした次第であります。
視察を通じて感じたことは後ほどまた御質問するとして、まず、その視察に行く途中に車中で、先日法務省の方から公表をいただいた実態調査の件、御説明をいただきました。公明党が昨年政府の方に提言をして、そしてまた実行をさせていただいたものでもございます。そちらのデータ等もございます。
結論としては、平成二十七年にヘイトスピーチは相当程度減少する傾向にあるが、鎮静化したとは言えないと。二十五年には三百四十七、公開情報で認識されたものがあったのが、翌年には三百七十八になり、二十七年には通年では二百五十三ぐらいの予定であるということでありますが、その二十七年も四半期に分ければ、一、二期に比べれば三期はまた増えていると、そういうような状態である。決してこれは鎮静化したとは言えない状態であり、対策というのは更に必要であるということであるということがこれデータからも言えているかと思います。
この調査が更に重要だったところは、関係者の方の尽力にも敬意を表したいんですけど、こういう数値とかの部分だけではなくて、行政の方でしっかりとこれは現場にも行き、そして聞き取り調査をしたということであります。これは、行政がやはりしっかり現場に行って現場の方々の目線に立つんだということを、これを目的として私は調査をされたのであるというふうに認識をしております。
いろいろ調査等でも表れたこともあるかと思います。行政の立場から、被害者の方の思いに立ったとき、ヘイトスピーチの一体何が脅威であるのか、率直にまず御説明をいただきたいというふうに思います。

○政府参考人(岡村和美君)

私ども法務省人権擁護局では、ヘイトスピーチの主な対象とされている在日韓国・朝鮮人の方々やデモ等が行われた地域の住民の方々からの聞き取り調査を行ったところでございますが、その中でも、在日韓国・朝鮮人の方々からは、ヘイトスピーチを受けたことによる恐怖、怒り、悔しさなどを詳細に語っていただけました。
その一部を御紹介いたしますと、例えば、日本から出ていけなどという言葉は自分たちの存在そのものを否定する言葉であり、怒りや悲しみを感じたという声、殺すぞなどという言葉を聞くと、日常生活においても中傷や批判の対象になったり身体的に傷つけられるのではないかという恐怖を感じたという声、さらに、民族を蔑称で呼ぶなど属性を理由としておとしめるような言葉は反論ができなくなり、抑圧的であるという声などがございました。

○矢倉克夫君

視察に行きまして住民の方々ともお話もしたんですが、生まれたときから自分のアイデンティティーも隠さなきゃいけないような悔しい思いもされていたということもお伺いもしました。
今、出ていけというように言われたというようなお話もあったんですが、聞き取り調査の方でも、例えば朝鮮人出ていけと言われても、出ていけないからいるのであって、ちゃんと歴史を勉強してほしい、自分たちの歴史であったりとかいうものも全く理解もしないで出ていけ出ていけと、そこにいることが、存在すら、そのものもやはり否定もされているというような悔しさ、何で理解をしてもらえないんだろうという悔しさみたいなのも、私も現地に行って改めて実感もしたところであります。
何としてもこういうような思いをされる方をなくしていかなければいけない、このように決意をしたところでありますが、法務省からまた改めて、ヘイトスピーチを特徴付けている大きな要素というものはこれは何であると考えているのか、御説明いただきたいと思います。

○政府参考人(岡村和美君)

ヘイトスピーチの定義は必ずしも確立したものではございませんが、今般の調査においては、一般的にヘイトスピーチとして指摘されることの多い内容として、一、特定の民族等に属する集団を一律に排斥する内容、二、特定の民族等に属する集団の生命等に危害を加える内容、三、特定の民族等に属する集団を蔑称で呼ぶなどして殊更に誹謗中傷する内容を念頭に調査を行ったものでございます。聞き取り調査においても、多くの方々がヘイトスピーチと聞いてイメージするものとしてこうした内容を挙げられていたものと認識いたしております。

○矢倉克夫君

今様々な要素を挙げられたわけですが、私も調査の結果を聞いた限りだと、特に特定の民族や国籍に属する集団を一律に排斥する内容のスピーチも非常に多いと。この地域社会から出ていけと、こう言っていく、あなたたちはそこの人間ではないんだ、出ていけと、こういうふうに排除をする、そういうような内容も多かったというようなことも聞いております。
私も桜本地区お伺いをして改めてびっくりしたんですが、本当に日常生活のあるど真ん中のところのすぐ近くにデモが行われたんだなということ、訪問させていただいたふれあい館、公営で日本人と外国人が触れ合う場として初めて設立された、非常に崇高な理念の下につくられた場所でありますが、そこを出発して、そうしたら隣の家に初老の方がいらっしゃって、私たちに声を掛けてくださった。本当にほのぼのとした雰囲気であったわけですけど、そこからもう歩いて数分行ったらデモが行われた場所であったと。
こんな閑静な住宅街、もう住宅、人が普通に生活をしている場所のすぐ近くのところであんなに卑劣なデモが行われたのかという思いは、本当に私もそのときいた方々の思いが全部分かるわけではないんですけど、そういうような目に遭ったら、自分たちのふだんの平穏な生活というのがいかにじゅうりんされているのか、本当に悔しかったであろうなということを改めて感じたところであります。しかも、やってくる人がそこに住んでいる人ではなくて、外部からやってきてがなり立てる、大きな声を立ててがなり立てて、出ていけ出ていけ出ていけと、こう言っていくというところであります。
改めてですけど、この例えば聞き取り調査の中でもこういったお声もありました。殺気立っている人たちがあれだけ人数でまとまってやるから自分の感情がコントロールできなくなる、あの声が怖いとかそういうことじゃなくて、自分の感情がコントロールできなくなるようなところが怖いと。お互いに潰し合いになることを想像して怖くなるというような声もあった。あのようなものを見て現地の方がどういうふうに思われるのか、住民の方がおっしゃっていたんですけど、戦争になるんじゃないかというようなこともおっしゃっていた。
戦争になるという言葉に一瞬ぎょっとしたんですけど、やはりああやって排除の論理というものを掲げていって平和な生活を壊していく、それによって人と人との間の気持ちを分断していくという作用があるわけなんですよね。それこそがやはり戦争の原因でもある。もうまさに物の本質を捉えた、もう人が争うように誘導するということに持っていくその行為の卑劣さというものも、私も改めて現地に行ってお伺いもしたところであります。
このようなヘイトスピーチというもの、改めて法務省としてはヘイトスピーチが社会にもたらす悪影響というものをどのように認識されているのか、答弁いただきたいと思います。

○政府参考人(岡村和美君)

ヘイトスピーチは、対象とされた人々に怒りや恐怖感、嫌悪感を与えるだけでなく、人としての尊厳を傷つけたり社会における人々の間に差別意識を生じさせることにもなりかねず、決してあってはならないものと認識いたしております。

○矢倉克夫君

決してあってはならないもの、その認識はまさにそのとおりであります。
私が改めてこのようなことを申し上げているのは、今このようなヘイトスピーチの悪影響によって私たち何を考えなければいけないかというと、やはり日本の社会の在り方というのがこれしっかり問われているのであるなと、こんな社会でいいのかと国民全般がしっかりとこれは考えなければいけない問題だということであると思います。
聞き取り調査等でも様々なお声がありました。韓国人のジェノサイドみたいな感じがする、それが日本で社会的に問題であることが残念でしようがない、先進国で日本は世界でもトップのいい国というイメージを持っていたのにそういう問題が起きるのは理解できない、また、周りの日本人は傍観していた、日本はこういう世の中なのだと思った、日本にとっては対岸の火事なんだ、悪気があるわけではなくて歴史を学んでいないから蔑視の対象とする、同情すると言われることはあるけれども、同情ではなくて理解してほしいと、こういうような声もありましたところであります。
やはり、日本社会がこのような少数の方々がおびえて暮らさなければいけないような社会であってはいけないという共通認識にこれはしっかりと立って国民全般で考えていかなければいけない、これを全体で恥ずかしいと思うような状態もつくり、思うだけでなく、そういうような社会でないようにするにはどうすればいいかと、これは行動していかなければいけないということであると思います。
そういう意味でも、政治また行政はそういった社会をどうやってつくっていくのか、その社会形成に向けての責任があるということは改めて強調するまでもないことでもありますし、国民一人一人もそういうような責任がある、全く一定のところで行われているものではなくて、これは誰もが共有して考えなければいけない問題だということは、私は改めて強調をしたいと思っております。
それも踏まえて、後ほど大臣からはいろいろとまたお伺いをしたいと思うんですが、ちょっと質問を先に行かせていただきたいと思うんですけれども、その上で、現地に行って思ったんですけれども、現地で住民の方といろいろお話もしたことでありますが、そういった日本の社会が分断というものを生じるような雰囲気が出てきているようなところであって、あるお子さんから言われたことが、ヘイトスピーチを見た日本人の子供から、その方、子供からこういうふうに言われたと。その方は在日韓国人の方のお子さんで、非常にしっかりした発言をされる立派なお子さんであったわけですけれども、その方が日本人の子供から言われたと。ヘイトスピーチというものは、何かこんなことになってごめんということを言われたと。子供から子供に謝罪をされたということであります。
私、それも聞いて改めて愕然としたわけなんですけれども、純真な子供たちの意識からはやっぱり共生をしようという意識があるのに、本当に卑劣な大人が全くみっともない姿をそういうふうに子供にさらしている、こういうようなことは本当に許せないというふうに改めて思うところでもあり、そういうような認識も持たなければいけないところでもあるかと思います。
また、やはり共に歩んでいくというところ、これが教育の分野においても、国際化イコール共に歩むということでもあると思います。そういった教育現場にそのようなヘイトスピーチのような汚い姿を見せて、そこで一緒に学んでいる子供たちが謝らなければいけないような環境に置かれているということ、これは大きな大きな問題でもある、次代の子供たちにとっても大きな影響も与える問題であるかと思っております。
そのような点について、文部科学省から、どのようなところが問題で、どのように対処をしていくおつもりか、御答弁をいただきたいと思います。

○政府参考人(浅田和伸君)

特定の民族や国籍の人々を排斥する差別的言動、いわゆるヘイトスピーチは、人としての尊厳を傷つけたり差別意識を生じさせることになりかねず、許されるものではありません。
文部科学省としては、従来から、人権教育及び人権啓発の推進に関する法律等を踏まえ、学校教育を通じて、児童生徒一人一人の発達段階に応じ、人権尊重の意識、理解を高める教育に努めているところでございます。
今後とも、全国の都道府県教育委員会等の人権教育担当者を集めた会議等の場を通じて、例えば、法務省が作成している啓発資料を活用し、特定の民族や国籍の人々に対する偏見や差別を助長するような言動は許されないということを学校教育の場でもしっかりと教えてまいりたいと思います。

○矢倉克夫君

是非、教育の現場でもしっかりと、こういうものが良くないんだということをもう更に進めていっていただきたいと。国民全般でこれを共有をしていくという部分はやはり大事であると思います。
やはり同じお子さんが言っていたのは、ヘイトデモの状況を見て、警察がヘイトスピーチをする人を守りながら、朝鮮人が一人残らず出ていくまで首を絞めると言った人を警察が守っていたと、こういうようなお声もありました。当然、現場の警察官の方がそういうのを、卑劣な集団を守りながらというようなことを目的としてされていたわけではないと思いますが、純真に子供の目から見て、警察がいかにも守っているかのように見えてしまったというのは、これはやはり問題であると思います。
そのような部分、どのようなところに課題があって、それに対してはどういうふうに対処をされていくおつもりであるのか、これも御答弁いただきたいと思います。

○政府参考人(斉藤実君)

お答えいたします。
いわゆるヘイトスピーチのデモに際しましては、これまでも、それに抗議をする者がデモの現場に集まり、時にはトラブルに発展し、中には刑事事件に及ぶこともあったものと承知をしております。したがいまして、この種デモが行われるのに際しましては、デモの参加者とそれに抗議をする者が接触をすることのないように必要な部隊を配置するなど、中立性、公平性を念頭に置いて警備をしているところでございます。
一方、個々の警備現場におきましては、デモの関係者とこれに反対、抗議をする者との間で、その接触により違法行為が起きることを避けるために、警察部隊がデモを行う団体とともに移動をしながら警戒をするという局面がございます。これが、委員御指摘のように、警察がいわゆるヘイトスピーチを行うデモを守っているとの誤解を与えることになっているものと認識をいたしております。
ただ、こうした警備手法が違法行為を未然に防止をする上で必要と考えられる場合には、デモを行う主体がいずれの主義主張に基づくものであっても同様のことを行っているということを是非とも御理解いただきたいわけであります。
いずれにいたしましても、議員御指摘の点も踏まえながら、引き続き中立性、公平性を念頭に、現場の状況に応じた適切な警備が行われるよう都道府県警察を指導してまいります。

○矢倉克夫君

現場の中立性というところでもあり、いろいろ御意見はあるかもしれないですけれども、現に被害を受けた方が危害にさらされるような状態にある、そこを守っていくというのもやはり警察であると思いますので、その辺りはしっかりと責任として意識をして、どういうような在り方がいいのか。そして、警察に対しての信頼もこれは損なうような事態でもあると思います。そういう部分はちゃんと対処等もこれからも検討していただきたいというふうに改めて強く要望をしたいと思います。
その上で、先ほども申し上げました、やはりヘイトスピーチの問題をどう対処をしていくのか、これは国民全体でそのようなことがなくなるような社会をどうやってつくっていくのかという、その思いとともに、行動をしっかり伴うような体制をやはりつくっていかなければいけないというふうに思っております。
視察に行ったときに住民の方から言われたことが、ヘイトスピーチはいけないというところは多くの方は分かっているかもしれない、しかし、例えば自治体に話を持っていくと、法律がないから何もできないというようなこともよく言われるというようなところがありました。これは、自治体が、国の姿勢が明確でないことをやはり理由として対策に一歩及び腰、そうでないかもしれないですけれども、やはり何もしない理由として、そういうような制度がないということも一つ挙げていることもあるんじゃないかというふうに思っております。
このように、自治体を一歩先に進めるためにはどのようなものが必要であると大臣はお考えか、大臣からお答えいただければと思います。

○国務大臣(岩城光英君)

自治体に一歩踏み出させる、そういう意味でどういったことが必要かということでありますけれども、ヘイトスピーチが許されないものであるということを社会全体で明確にしていく必要があろうと思います。そのために政府としてあらゆる機会や場面でそのことを鮮明に示していく必要があると考えております。
法務省といたしましては、引き続き粘り強く、かつ地道な啓発活動に努めてまいる所存でありますが、今般実態調査をいたしまして、その結果を受けまして、法務省としてのこれまでの取組に見直す点はないのかどうか、今後新たに推進すべき施策はないのかといった観点から報告書をしっかり精査し、必要な検討も行ってまいりたいと考えております。また、現在国会や各党で行われている御議論について、その状況を見守ってまいりたいと考えております。

○矢倉克夫君

先ほどもあった、いろんな聞き取り調査でお話もされた方々のお声の中で、やはり多くの方が傍観をされていたと。それは、いろいろ混乱の中で御自分の体を守るためにというような部分もあったかもしれないですけど、やはり問題は、いけないことだとみんな分かっていても、それに対して多くの方が自分とは関係ないことだと思って無関心になっている方もいらっしゃるかもしれないと。そういうのではなくて、やはりこれは日本社会がどういう社会であるべきかという大きな問題でもあり、全員、日本に住む人全ての人のこれ問題なんだという思いに立って、一歩踏み出す行動を取るための勇気や後押しもやはりこれは必要であるんじゃないかなというふうに思っております。
自治体付近に行ったときにお伺いして、あっ、そうだと思ったのは、ある方が、このようなデモが起きているわけですけど、やはり感動もしたことがあるというふうにおっしゃっていまして、やはりデモに対して声を上げる方もどんどん増えてきているというようなこと、昔はそういうようなこともなかったかもしれないけど、そのような声を上げる方も非常に増えてきた、自分たちの問題だけじゃなくて、もっと全体の問題としてしっかりと主張をしていこうという、対抗していくような方々もやはり増えてきたということ、これは日本社会が成熟してきていることなんじゃないかというふうにおっしゃっていた方もいらっしゃいます。
その方がおっしゃっていたのは、やはりいけないことだということ、これがしっかりと制度として存在するということがやはり抑止力になっていくんだと、それも踏まえた上で、自治体なんかも、もうそのようなヘイトスピーチというのはこれいけないものだということが国の姿勢としてしっかりと明確になっていけば、それがしっかりと前に進んでいく動きにもなるし、やはり抑止力という言葉も使われていましたが、そのようなものにもなっていくんじゃないかというようなお話もございました。
私も改めて大臣にまたお聞きしたいと思うんですが、ヘイトスピーチの問題は、何度も申し上げますけど、国民全般がこのようなものがないようにする社会につくるんだということを強く前に踏み出していく、自分たちが主体者としてつくっていくんだという共通認識、ただ悪いと言うだけじゃなくて、自分たちがそういうのをなくしていくような社会につくっていくんだという自覚と責任を持って動けるかどうかというところが大きな問題であると思っております。
分かっていながらなかなか声を上げることができない多数派の方、自治体も含めてですけど、そういうようなことを一歩踏み出させる意味合いでも、ヘイトスピーチ根絶へのやはり政府の方針としても、従来の教育、啓発というのも非常に重要な部分もある。それをしっかりやりながら、他方で、それに限らず、やはり根絶のためにはしっかりとあらゆる政策を取っていくというような国の決意も必要であると思います。その辺り、大臣からいただければと思います。

○国務大臣(岩城光英君)

矢倉委員から御指摘がありましたとおり、このヘイトスピーチの問題につきましては、国民全体がそれぞれヘイトスピーチのようなことがあってはならないという認識をしっかりと持っていくことが大事だと思っております。そのためには、何度も重ねて恐縮でございますが、啓発活動を粘り強く行いますとともに、あらゆる機会、あらゆる場面で政府の態度としてヘイトスピーチは許されない、こういうことを明確に示していく必要が重要であると、そのように考えております。

○矢倉克夫君

ありがとうございます。是非そのような御決意でいただければと思います。
ヘイトスピーチ、様々な外延がなかなか見えないところがあると思いますが、やはり本質として言えるのは、平穏な地域社会というものを、これを、その中を分断させて、心のきずなを分断させて、その中でしっかりと生活をされている少数者ではあるけど生活者の方々を排除する、それを扇動するというところがやはり大きな要素であると思います。
先日の参考人質疑のときにも、参考人として来られていた金教授も、ヘイトスピーチの本質は扇動であるというふうにおっしゃっていた。やはりそういうものが悪いことなんだということをしっかりと宣言をする政治の姿勢というのはこれは大事であるし、そのための理念をしっかりと高らかにうたう私は法律は絶対にこれは必要であるというふうに思います。
その上で、そのような理念をしっかりと実現をする社会を、これは国は、また地方自治体は当然つくるべく責任を持っていく必要もあるし、国民それぞれがそういう社会をつくるためにもしっかりと前進をしていくというような法律というものもやはり私は必要でないかと。
国民全般がこのようなことがないような社会をつくっていくという理念をしっかりとうたっていく、そのための与野党の合意というのをしっかりと私も尽力して作っていくためにも全力で頑張っていきたいということだけをお伝え申し上げまして、質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。

農政新時代勉強会

2016-04-02 ブログ

昨日、参議院議員会館にて、公明党の埼玉県本部所属の地方議員の方々約70名ほどとともに、農政新時代に向けた勉強会を開きました。
埼玉県の公明党議員の約3分の1が参加!
これだけ大人数が国会に集まることはめずらしいです。
分かるようでなかなか分かりにくい政府のTPP対策を農水省の担当者から説明してもらいました。

例えば米について、今回のTPP合意により新たにアメリカ、オーストラリアからの輸入枠が設けられたましたが、その輸入量と同じ国産米を政府が備蓄米として買い入れることで、市場にでまわる米の量を一定におさえ米の値段に影響を与えない、といった基本的なところから丁寧に。また、日本の農産品の輸出戦略についても。

質疑もいれて約2時間、会場の都合で休憩時間もなくノンストップとなりましたが、皆さん、熱心に参加されていました。
また、2017年を目処に法制化を目指している収入保険制度についても説明がありました。これは、度重なる公明党の主張をうけ制度創設に着手したものです。国会では、私の知る限り、井上幹事長が一昨年1月に代表質問をし、また横山参議院はじめ多くの国会議員が質問しております。
https://www.komei.or.jp/news/detail/20141103_15371
https://www.komei.or.jp/news/detail/20150410_16682
https://www.komei.or.jp/news/detail/20151124_18579

同様の制度に農業共済がありますが、自然災害で収穫量が平年に比べ減った場合などが典型であり、農家の経営努力ではいたしかたない収入減少には対応していません。しかも、野菜や鶏などは対象品目とならず、TPP後の農業基盤を維持するうえで不十分なものでした。これとは別に、今回、農業経営全体に着目し、価格低下を含めた収入減少を補填する制度をつくります。
ネットワークの力をいかして、地域で頑張る農家の方々の不安を払拭し、TPPとそれに関連した新たな農政により、農業を元気にしていきたいと思います。

ヘイトデモ現場を視察

2016-03-31 ブログ

朝8時から、与党のワーキングチームにてヘイトスピーチへの対策にむけた法案を議論。
そののち、ヘイトスピーチをめぐる実情調査のため、参議院法務委員会理事として、川崎の桜本を視察。ここは、ヘイトデモが行われたところです。生活圏のど真ん中にある商店街を中心にデモは行われました。
その後、住民の方々と懇談。

地域の方々は、国籍問わず「ともに生きる」思いを共有しています。その社会の雰囲気を外から分断する動きは許せないと感じます。中学1年生の「普通の生活をまもってください」との言葉が印象的でした。
ヘイトスピーチというものが根絶される健全な社会づくりのため、まずは与党内の合意を急ぎたいと思います。
これから本会議です。

自民、公明5氏に推薦状

2016-03-29 ニュース

公明新聞:2016年3月29日(火)付

安倍首相と懇談する伊藤、里見、西田、三浦、高瀬の各氏=28日 国会内

安倍首相(中央右)と懇談する(右から)伊藤、里見、西田、三浦、高瀬の各氏=28日 国会内

西田、三浦、里見、伊藤、高瀬氏
参院選選挙区

今夏の参院選で埼玉(定数3)、神奈川(同4)、愛知(同4)、兵庫(同3)、福岡(同3)の5選挙区に挑む公明党の予定候補者5氏は28日夕、国会内で安倍晋三首相(自民党総裁)、高村正彦副総裁、谷垣禎一幹事長ら自民党執行部と会い、各選挙区の自民党推薦候補者として推薦状を受け取った。公明党から井上義久幹事長、斉藤鉄夫選挙対策委員長が同席した。

公明党の予定候補者5氏は、現職の西田まこと参院幹事長(埼玉)と、いずれも新人の三浦のぶひろ青年局次長(神奈川)、里見りゅうじ労働局次長(愛知)、伊藤たかえ(兵庫)、高瀬ひろみ(福岡)の両女性局次長。

安倍首相は各予定候補者に「頑張ってください」と激励した。自民党は24日に、公明5氏への推薦を決めていた。

西田まこと国政報告会(草加)

2016-03-28 ブログ

草加市で国政報告会!西田まこと参議院議員とともに。
草加、八潮、三郷の皆様がお集まりくださいました。
会場いっぱいの方々、1100名以上が参加。
党員支持者の皆様が半分、残り半分はそのご友人方です。本当にありがとうございます!!

地元選出(埼玉3区)の自民党の黄川田衆議院議員もかけつけ、温かいエール、外務大臣政務官として世界中を駆け回っているなか本当にありがとうございました。

草加の田中市長、八潮の大山市長、そして三郷の並木副市長もお越し下さいました。本当にありがとうございます。
いよいよ今週には、予算もあがり、軽減税率も法律が成立する見込みです。
通常国会後半戦!!がんばります。

埼玉県比企郡へ

2016-03-27 ブログ

埼玉西13区選出の小久保県議(自民党)主催による「比企から埼玉を変える会」に出席しました。
小川町の山口町議、高橋町議、嵐山町の畠山町議、ときがわ町の小島町議とともに。

美しい自然に囲まれ、歴史も深く、文化も豊かな比企郡(滑川、嵐山、小川、ときがわ)の可能性は大きいです。さらにアクセスをよくし、人を呼び込む環境を、町と県と国でつくっていきたい。同い年の小久保県議とも連携していきたいと思います。

中華全国青年連合会

2016-03-27 ブログ

中華全国青年連合会(全青連)派遣団と交流。24日の木曜日です。日本の政党では公明党のみとのこと。
政府部門の人間だけでなく、企業家や芸術家など様々。女性の数も多く、半数ほどいらっしゃいました。
この日は夜まで語らいました。楽しくいい時間でした。
私より若い人が多かった印象です。未来のために、今からこの世代との交流をはかっていきます。

さいたま市見沼区へ

2016-03-27 ブログ

党員の皆様にお会いすることが一番のエネルギー源です。
先日(23日の水曜)は、小森谷市議とともに見沼の皆さまと。
写真ではみえませんが、「まこぽん」(の絵)も一緒に。
いつも本当にありがとうございます!

【矢倉かつお】法務委員会_20160323

2016-03-23 矢倉かつおチャンネル

法務委員会質問

2016-03-23 ブログ

昨日も今日も法務委員会で質問。
昨日、法務委員会でヘイトスピーチ問題について議論。
野党提案の法案を議題とし、参考人の方より意見を聞きました。
少数者がおびえ命の危険すら感じてしまう、それを見過ごす社会であってはいけません。いかに共生できる社会をつくるか、これは日本の社会のあり方の問題だと感じます。

ヘイトスピーチは許さない、その理念を踏まえた法律をいかにつくるか、昨年来より法務委員会理事として、与野党での合意を作るべく動いていますが、引き続き尽力したいと思います。

本日は、「司法と福祉の連携」が進むなか、拡大する法務行政に必要な資金をいかに手当てするか(国家予算だけでなく民間資金も活用して)議論するとともに、法曹資格者の多い法務省の果たすべき役割を、国内行政のコンプライアンスの観点と、国際訴訟への対応の観点から議論しました。
時間が短いので、かなり急いだ議論になりましたが、、

190回 法務委員会(委嘱審査)

2016-03-23 国会質問議事録

○矢倉克夫君

公明党の矢倉克夫です。よろしくお願いいたします。
今日は予算委員会の委嘱ということで、私の方からは法務行政に必要な資金の規模、これに関して幾つかお尋ねをしたいと思っております。
私、法務委員会の方に在籍をして二年間、感じることは、本当に法務行政というのは非常に広がりがどんどん広がってきているなというところであります。再犯防止に象徴されるように人の更生という部分まで考えて、従来であれば収容であったのが、さらに住まいであったり職業であったり、そういう司法の部分が福祉のところにまでしっかり関与をしなければいけないという広がりがやはり出てきたと。
他方で、高齢化社会にもあるわけですけれども、成年後見制度に対しての期待であったり、また法テラスなど、司法ソーシャルワークというんでしょうか、従来は福祉の分野でもあったものが、より司法的な分野もやはり関与しなければいけないというような形になってきた。ここから言えるのは、法務行政というのを支えていくためにお金というのがこれどんどんどんどん必要になってくるなという意識はございます。
ただ、そんな広がりのある法務行政の予算でもあるんですけれども、これを見てみると、率直に言うと少ないなと、これだけ必要な分野がいっぱいあるはずなのに桁がほかのところとやはり違うんじゃないかなというところは、私、率直な感想としてあるところであります。規模としては七千億強ではあるんですけれども、しかも、その予算の内訳というか特徴として言えることが、まず人件費がこれほとんどを占めると。今、手元の資料ですと、六七%がこれ人件費であります。しかも、人件費以外の物件費と言われているような分野の方のことに関しても言えることは、この内訳ですけれども、例えば一般官署の光熱費であったり、あと矯正施設、被収容者に食費を出したりとかするわけですけれども、そういうものであるとか、これはなかなか支出が必須となってしまうようなやはり経費というのが非常に多いと。
要するに、お金がこれから必要になるんですけれども、じゃ、どこかから、ほかのところから持ってきて新しく必要なお金の方に振り分けるとか、そういうのがなかなかできない、スクラップ・アンド・ビルドと言っていいのか分からないですけれども、そういうものがやはりできないような規模である。そうすると、やっぱり法務行政に必要なお金の規模全体を大きくしないと課題解決にはならないのではないかなというふうに思っているところであります。
それで、大臣には後ほど、法務予算というのをいかに広げていくのか、これ決意はいただくといたしまして、まずは資料を御覧いただきたいんですが、民間資金をどうやって使っていくのかというこれ知恵もやはり大事かなと。
こちら一枚目の方に、ソーシャル・インパクト・ボンドというなかなか聞き慣れない資料でありますが、社会的課題解決のために民間の資金をいかに取り入れるかというこれ取組であります。ボンドといっても債券ではなくて、成果に連動した形の投資契約。何に投資しているかといえば、再犯であったり医療費の問題、貧困の問題、あと認知症だとか、社会的課題を解決する事業に対してのこれは投資でありまして、その成果に対してリターンを受けるというものであります。
二枚目の方は、これはイギリスの方の、世界で初めてのソーシャル・インパクト・ボンドと言われている、これは再犯防止がプロジェクトとなっているものであります。
そこで、これは予算委員会の方でも質問はさせていただいたんですが、法務省の見解として、こういうアメリカとかイギリスで主に採用されているソーシャル・インパクト・ボンドの取組についてどのように御見解を持たれているのか、答弁いただければと思います。

○政府参考人(高嶋智光君)

お答えいたします。
ソーシャル・インパクト・ボンドと呼ばれます新しい社会的投資スキームにつきましては、最近、アメリカやイギリスで導入され始めている取組と認識しております。
このソーシャル・インパクト・ボンドというのは、従来行政が担ってきた社会政策実施制度を民間投資を導入して実施すると、こういうスキームだというふうに聞いておりますが、再犯防止との関係におきましては、今委員が御指摘されましたとおり、イギリスにおいて第一号の事例があるというふうに承知しております。これは、短期受刑者に対する刑務所内でのプログラムあるいは出所後の更生プログラムについて導入したものというふうに聞いているところでございます。
この民間資金を導入したプログラムということにつきましては、我が国についても従来からPFIの手法などの形で公的分野に活用する取組が進められてきておりますが、法務省としても、このソーシャル・インパクト・ボンドがどういう仕組みであるのか、関心を持っているところでございます。
このスキームは、民間資金の活用という点ではPFIと同じ、類する面を有しておりますし、また、再犯防止対策におきまして民間の知恵やノウハウを活用する、そういう契機となり得るという点で注目しているところでありますが、我が国への導入ということを考えるに当たりましては幾つか検討しなくちゃいけないことがあるだろうというふうに考えております。
一つには、民間資金を導入して利益を上げるという仕組みがこの再犯防止という分野において国民感情から見てなじむのかどうかという、こういう問題でございます。それから第二に、資金を提供する民間投資家に対する償還の基準の設定や評価の方法、これらが実際できるかどうか、あるいはできるとしてどういう仕組みとするのがいいのか。ここは大変難しい問題があるというふうに考えております。さらにもう一つは、このソーシャル・インパクト・ボンドは複数年を想定した社会的投資スキームでありますが、我が国の予算は単年度予算というふうになっていることとの整合性でどういうふうな仕組みをしなくちゃいけないのか、こういった問題がございます。
これらを含めて様々な観点からの検討が必要であるというふうに考えておりますが、法務省におきましても、我が国における先行事例があると聞いておりますので、その状況把握、それから外国の先例についても把握していきたいというふうに考えております。

○矢倉克夫君

今、我が国においての先行事例というふうにおっしゃってくださったのは、資料三で書かれているものであると思います。法務省内でも検討を開始されたということ、これは前進であるかなというふうに思います。
今、課題の一つとして、やはり成果をどうやって評価していくのかというところがありました。これについては、前回も委員会の方でも御質問を関連としてさせていただいたところはあるのですが、例えば再犯防止に関しては、厚生労働省のホームページなどでは、一人再犯者が起きなければどういった費用的な効果があるのかというところで、被収容者に対して与える食費の観点などから一日千七百四十六円であるとか、それに関連する施設の維持費であるとかも含めれば一日七千五百七十六円とか、そういった具体的な数値も出ているところではあるんですが、こういった見解に対して法務省としてはどのような見解を持っていらっしゃるのか、答弁をいただければと思います。

○政府参考人(高嶋智光君)

再犯防止の効果をできる限り見える形で示していくことは大変重要なことだと考えておりまして、ただいま委員が御指摘された受刑者等の食費等、あるいは一人当たりの管理費がどうなるかということが大事な一つの数値であるというふうに認識しております。
再犯防止の効果一般につきましては、これまでも御議論いただいている中で二つの点、すなわち社会的負担の減少と、それから社会的利益の増大、この二点について考えられるとお答えしているところでございますが、先ほど御指摘のありました被収容者一人当たりの食費あるいは一人当たりの運営経費、これは社会的負担の減少の方に分類されるものでございますが、このほか、非常に大事なコストとしましては犯罪自体が社会に与える負のコスト、これもございます。
こういった再犯防止による社会的な負担の減少というものを算定することは、特に最後の犯罪による社会的コストそれ自体を金額的に評価することは非常に難しい面がございますが、委員の御指摘も踏まえながら、再犯防止の効果をできる限り見える形にしていきたいというふうに考えているところでおります。
これに関連しまして、現在、法務省では刑事情報連携データベースシステムの開発を進めているところでございます。今後、このシステムを活用するなどして施策の効果を検証し、施策の効果を国民の皆様に説明していくことによりまして一層の御理解と御協力を得られるよう努めてまいりたいと考えております。

○矢倉克夫君

ありがとうございます。
一人の犯罪を犯した人に対しての与える効果であるとかを数値にするのはなかなか難しいのかもしれませんが、例えば資料二の、これイギリスの事例なんかはどういうふうにやっているかというと、受刑者を三つのグループに分けて、一つのグループでも再犯率がプログラムを受けなかった同種の犯罪者と比較して一〇%低下するか、グループの平均で七・五低下すれば償還するというような、要するに見える化というのが大事でありますから、こういう事業プログラム等の影響を受ける人たちをグループ化して、そのグループの事業プログラムを受けた前と後をこれ比較対照してどういう効果があるのかとか、いろんな成果の見え方等あると思います。
見える化というお話もあったので、そこら辺は是非、今お話もいただいた刑事情報連携データベースシステム、これも、今後の情報連携、再犯を犯した人が今後どうなるのかとかそういう情報までトレースできるようになれば、また更に評価価値、評価の基準としても上がってくると思いますので、いろいろこちらも是非活用をして更に研究を進めていただきたいというふうに思っております。
大臣から、今民間活用というところも言ったところでありますが、冒頭申し上げたとおり、法務予算というのは非常に少ないと、これから需要が非常に多くなるところでありますので、是非これの更なる拡大等に向けて、また御決意等をいただければと思います。

○国務大臣(岩城光英君)

御指摘のとおり、法務省の予算の約七割が人件費であります。また、物件費につきましても、毎年必ず予算計上せざるを得ない経費が大部分を占めております。したがいまして、新たな政策課題に対応するための予算の確保、これが極めて大切な課題だと承知をしております。
財政事情は引き続き厳しいわけでありますが、法務行政の果たすべき役割はますます重要性を増しております。したがいまして、関係各方面や国民の皆様方の御理解、御支援をいただきながら所要の予算の確保に努めますとともに、御指摘のソーシャル・インパクト・ボンドという新たな民間資金の活用方策等につきましても、各方面における実施状況等を注視してまいりたいと考えております。

○矢倉克夫君

私も、法務委員会として法務行政に関わらせていただく機会を与えていただいた人間として、より良く、この分野がいかにお金が必要かというところもまたどんどん発信してお力添えをさせていただきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
もう一点、今のところとも関連するんですが、私、もう一つ強調したいのは、これは法務の分野、特に法務省というところの特色として挙げられるのは、行政の内容も広がっているところはあるんですが、法務省そのものも霞が関の中でやはり独特の専門家集団であるなと。この法務省がいかに霞が関全体、さらには国民全体に便益を与える、利益を与える集団かというところもここはしっかりとアピールをして、また予算という部分での獲得というのにも影響していかなければいけないというふうに改めて理解もしているところであります。
先日も大臣所信の中でもいろんな政策のことをおっしゃってくださったわけですけど、その中で、今の観点から私やはり大事だなと思ったところの一つが、今、法務省が推進されている予防司法機能の強化というところであります。これは、まさに法務省でしかできないような部分でもあるかなというふうに思っております。この点を、意義と具体策についてまた御答弁をいただければと思います。

○副大臣(盛山正仁君)

今委員が御指摘いただきましたように、法務省は言わば政府の顧問弁護士といったような形で、訴訟が起きる前から法的に関与するということで行政の法適合性を高め、政府のコンプライアンス機関としての役割を果たしていくことが重要であると考えております。
そういった中、昨年四月に法務省に訟務局が設置されましたが、その目的の一つがこういった予防司法機能の強化ということでございます。今、我々の訟務局におきましては、訴訟が起きる前から法的な問題点について相談を受ける、いわゆる霞が関リーガルコンシェルジュと言われる取組を行っています。
また、昨年の五月には内閣官房に全府省庁の官房長による連絡会議が設置されておりまして、法務省は、同連絡会議を通して各府省庁における予防司法の取組の積極的な活用を促進しているところでございます。
これまで一年間で約二百四十件の相談が我々のところに参っております。それらの相談に訟務局が法律専門家としての意見を回答することによりまして、政府全体のコンプライアンス機能の強化、これを着実に図っているものと考えておりますが、今後とも、委員の御指摘のように、まずは予算の獲得、そしてそれに伴って人員の養成、こういったことも含めまして予防司法機能を更に強化をしていき、国と国民の権利利益の保護に寄与するよう取り組んでまいりたいと考えております。

○矢倉克夫君

是非、引き続きよろしくお願いします。
紛争等になって不利益を受けるのはやはり国民の皆様でありますから、そういったことの予防を事前にするべく、このコンプライアンス機能というのをしっかり果たしていく顧問弁護士的な役割というのは非常に重要であるし、国民全般に利益が及ぶ大事な大事な役割でもあると思っております。我々もこれはしっかりまたアピールというか強調させていただいて、広く国民の皆様に知っていただくように訴えていきたいと。
もう一個思ったのが、やはりまたおっしゃっていらっしゃる国際訴訟への対応というところであります。TPPなども今、議論等もこれからされる部分もあるかもしれません。また、かつては捕鯨の問題であったりとか、そういうような問題もございました。法曹資格を持っている専門家の方々が国際分野でも活躍をするという視点は大事であると思います。
これは、例えば国際訴訟において、いろいろと訟務局の知見、ノウハウはあるわけですけど、これが国際訴訟においてどのような効果を発揮するのか、この辺りも御答弁をいただければと思います。

○副大臣(盛山正仁君)

委員が今御指摘していただきましたように、国際訴訟あるいは国際紛争というものが増加をしているという環境の中、我々訟務局のメンバーが法に基づいて適正に解決していくというところにお手伝いをすることができると思いますし、また、それが我が国の国益、利益を守ることにつながると私たちは考えているところです。
我々の訟務局には、長年にわたる国内での裁判に関する法解釈論や主張立証についての知見やノウハウの蓄積がございます。こういった国内裁判への対応によって培われた知見、ノウハウは国際訴訟等での法解釈の手法や実際の国際機関の法廷等における主張立証活動に十分に活用できるものと考えておりますが、これから、これまで以上に一層我々のノウハウあるいは知見を高めていきたい、そんなふうに考えております。

○矢倉克夫君

やはり法曹としていろいろ職務等を担われた方は、手続の話でもあったり、また未知な法律にぶつかったときのリーガルマインドと言われているものも備わっていると思います。それが国際訴訟に生かされるものとしては非常に大きなものでもあると思っておりますので、この分野も是非更に拡大をしていただきたいというふうに思っております。
法務省、これからの法務行政の広がりもそうですし、こういった特色ある行政を担うところとしてまたしっかり予算も更に取っていくというような御覚悟も、必ず取っていただけた上で、是非適切、的確な法務行政を進めていただきたいというふうに念願申し上げまして、質問を終わりたいと思います。
ありがとうございます。

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